ハ～ヒ

羽有　ハアリ　与野に存す。

梅　バイ　吉見に存す。ウメ参照。

梅阿弥　バイアミ　忍城士にて、武家事紀に「永禄九年、成田長泰の臣梅阿弥」と見ゆ。

灰尾　ハイオ　浦和、大宮等に存す。

灰賀　ハイガ　上尾、桶川等に存す。

灰垣　ハイガキ　和光に存す。

灰方　ハイカタ　蓮田に存す。

灰川　ハイカワ　浦和に存す。

配川　ハイカワ　和光に存す。

羽井佐　ハイサ　鳩ケ谷に存す。

拝崎　ハイザキ　所沢に存す。

羽石　ハイシ　吉川、熊谷等に存す。ハネイシ参照。

葉石　ハイシ　上福岡に存す。

拝司　ハイシ　上尾に存す。

拝師　ハイシ　深谷に存す。

灰島　ハイジマ　行田に存す。

拝島　ハイジマ　足立郡深井村寿明院寛政九年寄附帳に「上宮内村（北本市）・拝島松之助」あり。現存無し。

配島　ハイジマ　各市町村に存す。神奈川県小田原市四十三戸あり。

一　入間郡古谷上村（川越市）　古谷本郷八幡社明治三十八年碑に古谷村配島三之助あり。一戸現存す。

蓜島　ハイジマ　ハイシマとも称す。

一　足立郡与野町　明治三十五年下駄商蓜島銀次郎あり。

二　同郡二ツ宮村（大宮市）　当村に此氏多く存す。氷川社文政十三年水鉢に蓜島源七.。円阿弥村日枝社慶応二年算額に二ツ宮村蓜島角蔵。私塾師匠名主蓜島勝五郎・明治七年没。明治九年副戸長蓜島茂右衛門・天保十一年生、副戸長蓜島平蔵・天保十一年生、副戸長蓜島綱太郎・文政十二年生。飯田村足立神社明治初期水家碑に二ツ宮蓜島重次郎・蓜島要蔵。与野町御嶽社明治二十九年碑に二ツ宮・蓜島常太郎・蓜島幸作・蓜島茂十郎・蓜島善松・蓜島赤十郎。明治三十一年染物業馬宮村蓜島金次郎。与野町一山神社明治三十五年碑に二ツ宮蓜島順蔵・蓜島長次郎。当村氷川社明治四十年碑に蓜島善蔵・蓜島忠左衛門・蓜島利吉あり。

三　同郡遊馬村（大宮市）　氷川社明治三十一年碑に配島清三郎・配島源蔵・配島友次郎・配島角蔵・配島孝作あり。二ツ宮村住人か。

四　同郡佐知川村（大宮市）　当村に此氏多く存す。願満堂天和四年庚申塔に蓜島佐兵衛。当村正徳五年庚申塔に蓜島三郎左衛門、元文三年庚申塔に佐知川村蓜島八郎右衛門。願満堂文化十一年地蔵尊に蓜島幸右衛門。原稲荷社明治三十年幟碑に蓜島亀吉・蓜島長蔵、明治四十五年御神燈に蓜島徳蔵・蓜島専助・蓜島為之助・蓜島幸太郎・蓜島久造。与野町一山神社明治三十五年碑に佐知川蓜島善太郎あり。

五　同郡飯田村（大宮市）　足立神社明治四十三年碑に蓜島留次郎・蓜島大三郎あり。六戸現存す。

六　同郡植田谷本村新田（大宮市）　字円城寺八雲社明治三十一年碑に蓜島栄太郎・蓜島栄次郎・蓜島林蔵。

七　同郡並木村（大宮市）　氷川社明治三十八年碑に蓜島伊勢吉あり。

八　川越町　県会議員鉄道職員蓜島照次・大正六年生・東京出身あり。

九　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・蓜島諒・百十円・八十四円、馬宮村（大宮市）・蓜島玉作・百十八円、蓜島富八・十三円・三十九円、蓜島千之助・十円・三十三円、蓜島孝次郎・九円・三十三円、蓜島正雄・九円」あり。

梅壽　バイジュ　春日部に存す。

倍賞　バイショウ　桶川、春日部、本庄に存す。秋田県鹿角市四十七戸あり。

灰田　ハイタ　狭山、飯能等に存す。

拝田　ハイタ　草加に存す。

蠅田　ハイタ　川口に存す。

拝戸　ハイド　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣にて、明治元年川越藩分限帳に「御中小姓・十石二人扶持・亡父半兵衛・拝戸半兵衛・四十三歳」あり。

拝藤　ハイドウ　所沢、深谷等に存す。鳥取県境港市十四戸あり。

背奈　ハイナ　セナ条参照。

生野　ハイノ　川口に存す。新潟県白根市十八戸あり。ナマノ参照。

灰野　ハイノ　浦和、川口、上尾、蓮田、幸手、三郷、川越、深谷、本庄、妻沼等に存す。新潟県西蒲原郡巻町九戸、刈羽郡西山町十八戸あり。

拝野　ハイノ　与野、川越、所沢、皆野等に存す。新潟県新津市十五戸あり。

羽井野　ハイノ　吹上に存す。

生原　ハイバラ　和光、岩槻、春日部、草加、川越等に存す。山梨県東山梨郡春日居町三十三戸あり。

灰原　ハイバラ　越谷、入間等に存す。

拝原　ハイバラ　入間郡増形村字拝原。福島県東白川郡棚倉町十一戸あり。

埴原　ハイバラ　浦和、大宮、志木、和光、日高等に存す。山梨県東八代郡御坂町十六戸、北巨摩郡白州町十九戸あり。ハニハラ参照。

榛原　ハイバラ　浦和、上尾、新座、川越、坂戸等に存す。シンノハラ参照。

一　川越藩松平大和守家臣　慶応元年前橋藩松山陣屋付に「六石二人扶持・榛原嘉幸」あり。子孫健治は東松山市本町に存す。今は無し。

二　川越町　御嶽社明治三十年碑に榛原熊吉あり。六戸現存す。

南風原　ハイバラ　浦和、川口、戸田、狭山、所沢、大井等に存す。

生松　ハイマツ　越谷に存す。

灰本　ハイモト　所沢に存す。

灰谷　ハイヤ 東松山、飯能等に存す。

梅落　バイラク　所沢に存す。

梅林寺　バイリンジ　葛飾郡上高野村（幸手市）私塾師匠菩薩院修験梅林寺栄慶・文久二年没、私塾師匠梅林寺栄明・明治三十九年没六十九歳あり。二戸現存す。

葉内　ハウチ　所沢に存す。

八重尾　ハエオ　三郷に存す。

蠅田　ハエダ　大宮、幸手等に存す。

波江野　ハエノ　川口、入間、川越、所沢、富士見等に存す。

榛松　ハエマツ　足立郡榛松村（川口市）は這松とも書く。

羽尾　ハオ　大宮、入間等に存す。新潟県中頸城郡三和村十二戸あり。

羽岡　ハオカ　川口、松伏等に存す。

羽下　ハガ　大宮、上尾、桶川、越谷、川越、坂戸、所沢、秩父等に存す。新潟県中蒲原郡村松町四十六戸、五泉市三十九戸あり。

羽賀　ハガ　各市町村に存す。○新潟県北蒲原郡水原町十八戸、笹神村十四戸、西蒲原郡吉田町十一戸、南蒲原郡中之島町二十戸、南魚沼郡大和町二十五戸、新発田市二十七戸、五泉市二十八戸、三条市三十五戸、見附市三十戸。○福島県伊達郡月舘町十六戸。○山形県北村山郡大石田町十四戸、米沢市四十戸。○秋田県北秋田郡比内町十五戸。○青森県南津軽郡常盤村十八戸、青森市四十戸あり。

一　比企郡玉川郷　今宮社明治四十五年碑に羽賀志ま。二戸現存す。

波賀　ハガ　朝霞に存す。

葉賀　ハガ　上尾、草加、新座に存す。

芳我　ハガ　朝霞、草加等に存す。

芳賀　ハガ　各市町村に存す。○茨城県北茨城市三十三戸、日立市五十八戸。○山梨県東山梨郡牧丘町十五戸。○新潟県中蒲原郡亀田町十八戸。○福島県石川郡石川町六十戸、浅川町二十八戸、古殿町三十五戸、平田村三十一戸、東白川郡塙町二十六戸、矢祭町十九戸、鮫川村四十七戸、西白河郡矢吹町三十七戸、表郷村十六戸、西郷村二十六戸、岩瀬郡天栄村二十戸、伊達郡伊達町三十三戸、河沼郡柳津町十六戸、南会津郡田島町三十八戸、下郷町三十二戸、伊南村三十戸、舘岩村七十五戸、白河市四十三戸、須賀川市八十二戸、会津若松市百五十戸、郡山市百八十戸、いわき市四百戸、福島市百戸。○山形県西置賜郡白鷹町四十二戸、北村山郡大石田町三十八戸、東田川郡羽黒町二十五戸、寒河江市百六十戸。○秋田県仙北郡西木村二十五戸、北秋田郡比内町二十六戸、大館市八十九戸、能代市四十三戸。○宮城県本吉郡志津川町六十五戸、本吉町八十六戸、栗原郡栗駒町三十八戸、登米郡迫町十九戸、東和町二十三戸、登米町三十戸、中田町二十四戸、米山町二十五戸、石巻市三十六戸、気仙沼市四十六戸。○岩手県東磐井郡室根村二十九戸、胆沢郡胆沢町二十二戸、上閉伊郡大槌町七十三戸、下閉伊郡山田町百十八戸。○青森県南津軽郡平賀町四十二戸、青森市四十五戸あり。

一　下野国の芳賀氏　芳賀郡芳賀郷より起り、芳賀城（真岡市台町）に居城す。太平記巻三十九に「芳賀兵衛入道禅可、我が身は宇都宮に有りながら、嫡子伊賀守高貞、次男駿河守に八百余騎を差副へて、武蔵国へぞ遣はしける」。鎌倉大日記に「貞治二年八月二十六日、於武州岩殿山（東松山市）、芳賀伊賀守高貞以下宇都宮家扶者蜂起す」。桜雲記に「貞治八年八月、基氏・武州岩殿山にて、芳賀伊賀守高貞入道禅可と合戦す」と見ゆ。是は在名にて苗字にあらず。

二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十二俵二人扶持・芳賀柳八」あり。

三　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・百五十石・山形取立・芳賀半曹」。万延二年川越藩分限帳に「御馬廻・百五十石・芳賀兎毛」あり。

四　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御使番・百三十石・芳賀大学、寄合・三人扶持・芳賀虎雄」。明治四年忍藩士族名簿に「百二十石・芳賀熊雄」あり。

垪和　ハガ　川口、桶川、所沢に存す。

塀和　ハガ　垪和、芳賀とも記す。

一　松山城士の塀和氏　小田原北条氏の重臣なり。風土記稿松山城条に「天文十五年四月北条氏康後詰として出馬し、同二十日の夜軍に上杉討負、朝定も討死す。此時城中に上田又次郎政広が留守たりしを、北条氏の軍勢機に乗て乗取、塀和刑部少輔を城代とす」と見ゆ。永禄二年小田原所領役帳に「松山衆知行役、塀和又太郎、三百三十二貫文余・相模国中郡沼部郷（伊勢原市）、四十五貫文余・東郡千足・七ツ木（藤沢市）、十四貫文余・同土棚（藤沢市）、二百貫文・武州小沢郷（川崎市）、三百六貫文・安保之内（埼玉県賀美郡神川町）、七十貫文・鬼石（群馬県多野郡鬼石町）、百十貫文・同浄法寺本郷（鬼石町）、五十貫文・森之内中村郷（藤岡市）、都合千百二十八貫文余」。「松山衆知行役、塀和彦十郎、五十貫文・相模国中郡尾尻（秦野市）」と見ゆ。上杉文書に「永禄十二年、塀和刑部」、「天正十一年、塀和伯耆守康忠」と。足立郡倉田村明星院文書に「庚辰三月十五日（天正八年）、閼伽井坊、奉之垪和伯耆守」。児玉郡倉林文書に「戌三月二十日（天正十四年）、北条家伝馬手形、奉之垪和伯耆守」と見ゆ。日蓮宗信徒にて、鎌倉妙本寺過去帳に「宗顔・垪和刑部丞・三十歳・天正十四年四月」。秩父郡御堂村浄蓮寺過去帳に「妙皈・ハカ・元和三年八月」あり。

二　鉢形城士の塀和氏　前項の一族なり。戦国遺文四六七四に「永禄九年六月十三日、知行方之事、三十貫文・日根雅楽助跡、八貫文・秩父郡野上白岩分（長瀞町）、十二貫文・男衾郡下富田之内（寄居町）、五十貫文・同郡千台之内（江南町）、五十貫文・同郡板屋之内（江南町板井）、以上百五十貫文、垪和又八郎殿、氏邦花押」。風土記稿男衾郡立原村（寄居町）条に「日蓮宗実聞寺は、鉢形の臣塀和信濃守景春が起立なり」。立原村奥文書に「天正十六年八月十八日、塀和信濃守等は立原村日蓮宗城立寺に禁制を発給す」と見ゆ。

三　会津藩上杉氏家臣　一項の一族なり。慶長六年八月米沢移封以前の会津上杉配下禄高表（小鹿野町吉田文書）に「吉田新左衛門組、三百石・芳賀左門、百五十石・松山衆はがの右衛門」あり。

四　尾張藩家臣　士林泝洄（名古屋叢書）に「垪和伯耆守（北条氏康に仕ふ）―与右衛門（松平忠吉君武州忍に於て召出被り、二百五十石を賜ふ。子三人、与右衛門、庄助、次郎兵衛は瑞公御代召出被）、弟角左衛門（敬公御代召出被）」と見ゆ。

五　水戸藩家臣　水府系纂に「垪和善七勝植、姓は源、其先美作国垪和郷に住するを以て氏とす。祖父を伊予守信次と云、小田原北条家に属し駿州興国寺の城主なり。父を左兵衛信之と云、小田原没落の後、秀吉召して千石を賜ふ。勝植は神君に仕へ元和元年威公に奉仕、二百石を賜ふ」と見ゆ。

羽貝　ハガイ　所沢に存す。

羽飼　ハガイ　杉戸に存す。

墓木　ハカギ　比企郡畑中村（川島町）吉祥寺明治九年銅鉢銘に畑中村願主墓木売中あり。住僧か。現存無し。

羽ヶ崎　ハガサキ　三郷に存す。秋田県仙北郡角館町六戸あり。

羽方　ハカタ　草加、所沢等に存す。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御中小姓・十一人扶持・養父四万八・羽方伴五右衛門・六十五歳、父伴五右衛門・羽方竜太郎・二十八歳、御馬廻・十人扶持・亡養父源五郎・羽方俊蔵・三十五歳、御中小姓・十石三人扶持・亡養父国箇名跡・羽方国箇・二十三歳」あり。

羽片　ハカタ　庄和に存す。長野県中野市十一戸あり。

墓田　ハカタ　鴻巣に存す。

伯太　ハカタ　秩父国造の祖・天下春命の後裔にて、和泉国和泉郡伯太村（大阪府和泉市）より起る。神名式に和泉郡博多神社を載す。姓氏録・和泉の部に「伯太首。天表日命の後と云へり。見えず」とあり。

博多　ハカタ　戸田、川越、大井に存す。

博田　ハカタ　浦和、川口、桶川、鳩ケ谷、吹上等に存す。鳥取県岩美郡岩美町二十戸、鳥取市十一戸あり。

羽賀田　ハカタ　坂戸に存す。

博多屋　ハカタヤ　鶴ヶ島に存す。

芳賀沼　ハガヌマ　毛呂山に存す。福島県南会津郡田島町二十二戸あり。

刃金　ハガネ　草加に存す。

羽金　ハガネ　栃木県下都賀郡大平町十六戸あり。

一　与野町　円乗院寛文五年供養塔に与野町波金太郎右衛門、寛文十二年常夜燈に浪金多左衛門。氷川社元文二年御神燈に羽金太兵衛・羽金庄兵衛、寛延三年御神燈に羽金彦三郎。明治五年組頭米穀商羽金勝五郎。明治九年副戸長羽金勝五郎・文政八年生あり。三戸現存す。

袴　ハカマ　浦和に存す。

袴田　ハカマダ　各市町村に存す。○秋田県山本郡山本町五十戸、能代市百九十戸。○岩手県下閉伊郡川井村十戸。○青森県上北郡下田町九十戸、三戸郡三戸町十戸あり。

一　関東郡代伊奈氏家臣　秩父郡太田部村慶長三年検地帳に伊奈備前守手代袴田七右衛門。忠治の家臣に袴田善兵衛あり。

二　浦和町　昭和三年興信録に「袴田輔明・所得税二十六円」あり。

三　本庄宿　天保十三年馬庭念流沼和田村須賀民右衛門の門人本庄宿袴田直吉あり。現存無し。

袴塚　ハカマヅカ　浦和、志木、春日部、大井、熊谷等に存す。茨城県那珂郡那珂町三十二戸、東茨城郡常北町十一戸あり。

葉上　ハガミ　新座郡下新倉村字葉上あり。蓮田に存す。岩手県岩手郡雫石町五戸あり。

羽谷　ハガヤ　和光に存す。

博山　ハカヤマ　深谷に存す。

計　ハカリ　川口に存す。千葉県館山市六戸あり。

秤　ハカリ　川口に存す。

葉狩　ハカリ　和光に存す。鳥取県八頭郡智頭町三十三戸あり。

計谷　ハカリヤ　川越に存す。

計屋　ハカリヤ　越谷に存す。

秤屋　ハカリヤ　川口、新座等に存す。

羽川　ハガワ　浦和、新座、岩槻、越谷、草加、所沢等に存す。栃木県足利市三十三戸、秋田県仙北郡田沢湖町三十二戸あり。

一　浮世絵画家羽川氏　埼玉郡川口村（加須市）名主真中家に生まれた羽川珍重は、俗称を太田弁五郎と云う。珍重は滝沢馬琴祖父の叔父にあたる。宝暦四年没・七十六歳なり。門人に羽川藤水あり。真中条参照。

巴川　ハガワ　越谷に存す。

葉木　ハギ　日本書紀神代上に「神有り。国常立尊（くにのとこたちのみこと）と号す。次に国狭槌尊（くにのさつちのみこと）と曰す。次に豊国主尊（とよくにぬしのみこと）、亦は豊国野尊（とよくにのみこと）と曰し、亦は葉木国野尊（はこくにのみこと）と曰す。葉木国、此には播挙矩爾（はこくに）と云ふ。国常立尊より、伊奘諾尊（いざなきのみこと）・伊奘冉尊（いざなみのみこと）まで、是を神世七代と謂ふ」と。旧事本紀に「一代・天御中主尊、亦は天常立尊。二代・国常立尊、亦は国狭槌尊、亦は葉木国尊」と見ゆ。弥生文化のルーツは出雲だ（安達巌著）に「豊が韓国の古名の一つで、大和朝廷が韓国僧を豊国僧と呼んでいた。加羅斯呂触（ソラボルは新羅の古名）から来た木之葉比等（このはびと）の故地を葉木国（はこくに）と云う。豊国主尊の木之葉比等軍団が隠岐（島前に豊雲野神社がある）をへて、出雲の園の長浜（出雲市）に最初に上陸して、奥出雲の砂鉄を開発した」と云う。葉木国の渡来人居住地は佳字の箱を用いる。また葉木はハギと称して佳字の萩を用いる。箱姓及び萩姓は常陸国に多く存す。また波木（はぎ）と書きナミキに転訛して佳字の並木を用いる。並木姓は武蔵国に多く存す。

萩　ハギ　葉木の佳字なり。比企郡平村に萩日吉社あり。浦和、川口、加須、久喜、三郷、八潮、所沢等に存す。

一　加須町　明治三十五年甘藷商萩惣吉あり。一戸現存す。

二　菖蒲町　明治三十五年荒物商萩喜三郎・砂糖商萩亀之助・魚商萩惣次郎・萩芳三郎あり。現存無し。

八木　ハギ　春日部に存す。ヤギ参照。

羽木　ハギ　上尾、新座、吉見に存す。

波木　ハギ　高力系図に「熊谷直実―直家―女子（波木五郎妻）」。熊谷系図に「熊谷直家―女子（ハキノ五郎妻）」と見ゆ。後世の系図作成者はハギと読んでいるが、ナミキが正訓なり。並木、熊谷、勅使河原参照。

波木井　ハギイ　川口、幸手等に存す。

一　松山城士の波木井氏　天正庚寅松山合戦図に「古郡・柏崎・今泉方面城方・波木井勘解由之介、同方面・目付波木井又兵衛幸長」あり。

萩池　ハギイケ　入間に存す。

萩生　ハギウ　大宮、伊奈、朝霞に存す。

萩生田　ハギウダ　浦和、大宮、和光、庄和、川越、日高に存す。山形県天童市十五戸、岩手県久慈市八戸あり。

萩生　ハギオ　川越に存す。

萩尾　ハギオ　各市町村に存す。

萩岡　ハギオカ　浦和、美里等に存す。

萩小田　ハギオダ　朝霞に存す。

萩木　ハギキ　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣にて、元禄七年岩槻藩分限帳に「五石二人扶持・萩木喜太夫」あり。ハギノキが正訓か。

萩口　ハギクチ　上尾に存す。群馬県邑楽郡大泉町十戸あり。

萩久保　ハギクボ　川口に存す。

一　埼玉郡久下村（加須市）　鷲宮村鷲宮神社嘉永五年狛犬に久下村萩久保初太郎。当村鷲宮社安政七年御神燈に萩久保初太郎あり。現存無し。荻久保氏一戸存す。

萩倉　ハギクラ　所沢に存す。

萩坂　ハギサカ　朝霞、草加、川越等に存す。

萩嵜　ハギサキ　浦和に存す。

萩沢　ハギサワ　川口、大宮、上尾、鴻巣、所沢、大井、東松山等に存す。

一　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御家老・千石・萩沢源太左衛門、御寄合・三百石・萩沢左源太、奥御年寄・二百五十石・萩沢又右衛門」あり。

萩下　ハギシタ　朝霞に存す。

萩島　ハギシマ　浦和、川口、三郷、宮代、入間、坂戸、所沢等に存す。茨城県新治郡新治村二十七戸あり。

一　足立郡並木村（大宮市）　円阿弥村日枝社慶応二年算額に並木村萩島縫三郎あり。現存無し。荻島条参照。

二　入間郡宗岡村（志木市）　志木町敷島社明治初期浅間碑に上宗岡萩島喜平治。明治二十二年埼玉勧業会員萩島保蔵あり。現無し。荻島条参照。

萩嶌　ハギシマ　鶴ヶ島に存す。

萩曽根　ハギソネ　埼玉郡下早見村字萩曽根あり。

吐田　ハキタ　三郷に存す。

萩田　ハギタ　川口、大宮、伊奈、白岡、坂戸、所沢、秩父等に存す。

一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　明治四年忍藩士族名簿に「八十石・萩田将一」あり。

萩平　ハギダイラ　児玉郡萩平村（神川町）あり。秩父郡御堂村字萩平は古の村名にて、常光寺延享四年碑に秩父郡萩平と見え、浄蓮寺過去帳に「妙仙・ハキタイラ・辛酉年十二月。道順・ハキタイラ」あり、小名萩平住人なり。同郡寺尾村字萩平あり。

一　秩父郡石間村（吉田町）　薄村薬師堂明治十七年絵馬に石間村萩平代之助あり。二戸現存す。

萩谷　ハギタニ　蓮田、越谷等に存す。ハギノヤ、ハギヤ参照。

萩津　ハギツ　忍城士にて、成田分限帳に「五十貫文・萩津内膳、十八貫文・萩津肥前」あり。

羽生津　ハキツ　葛飾郡外国府間村（幸手市）雷電宮貞享四年庚申塔に羽生津□右衛門、明治三十二年碑に羽生津熊蔵、明治四十二年碑に羽生津重右衛門あり。一戸現存す。

萩中　ハギナカ　浦和、富士見に存す。

萩庭　ハギニワ　志木、新座、岩槻、越谷、草加、鷲宮等に存す。茨城県那珂郡美和村九戸、日立市三十戸、常陸太田市三十五戸あり。

萩埜　ハギノ　桶川、飯能、川里に存す。

萩野　ハギノ　新潟県西蒲原郡黒埼町二十五戸、柏崎市三十戸、秋田県北秋田郡上小阿仁村四十戸あり。

一　鉢形城士の萩野氏　小鹿野町吉田系図に「軍役書上、御扶持方衆、百五十目七人ふち・萩野助七郎」あり。荻野氏か。上野国住人なり。

二　秩父郡仲山城士の萩野氏　延文二年仲山城主阿仁和兵衛尉直家の臣萩野勝五郎大将にて五十騎は温石の砦を守備す。阿仁和条参照。

三　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御小姓頭・二百石・萩野太郎兵衛、御使番・百三十石・萩野良曹、奥御小姓・十三石三人扶持・萩野左十郎」。明治四年忍藩士族名簿に「百石・萩野正方」。

四　埼玉郡八条村（八潮市）　明治八年縄筵渡世萩野伊之助・麦引割渡世農萩野治助長男藤五郎・九六鍬職萩野紋之助・萩野権左衛門あり。九戸現存す。

五　同郡不動岡町（加須市）　明治三十五年料理店萩野新三あり。一戸存す。

六　同郡鴻茎村（騎西町）　寿昌寺嘉永六年六地蔵に萩野辰五郎あり。現存無し。荻野氏か。

七　入間郡所沢町　薬王寺阿弥陀如来坐像に「永禄十年八月吉日、奉再興、萩野近□、同和□、同藤右衛門、同外記主計」あり。荻野氏多く存す。

八　同郡勝楽寺村（所沢市）　仏蔵院文書に「安永二年世話人萩野治郎左衛門。文政二年世話人萩野次郎左衛門・萩野助右衛門」あり。荻野氏か。

九　同郡下富村（所沢市）　中富村毘沙門堂文化三年宝篋印塔に下富村萩野政右衛門あり。現無し。荻野氏か。

一〇　高麗郡高倉村（鶴ヶ島市）　上組日枝社明治二十八年文書に世話人萩野吉五郎あり。現無し。荻野氏か。

一一　幡羅郡三ヶ尻村（熊谷市）　龍泉寺元治元年馬頭尊に萩野粂三郎・萩野音五郎あり。現無し。荻野氏か。

一二　榛沢郡桜沢村（寄居町）　用土村明治十三年仙元碑に桜沢村萩野萩行操山あり。現無し。荻野氏か。

一三　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「戸田村・萩野新右衛門・十四円、三箇村（菖蒲町）・萩野釣蔵・百六円・十四円、萩野与左衛門・十八円」あり。荻野条参照。

萩野谷　ハギノヤ　各市町村に存す。茨城県那珂郡大宮町十戸、瓜連町百二十戸、那珂町三十二戸、西茨城郡岩間町十二戸、水戸市五十六戸あり。

一　埼玉郡下新井村（岩槻市）　庚申塚元禄七年庚申塔に萩野谷□□□、寛政六年供養塔に萩野谷喜八.。久伊豆社天保四年天神碑に萩谷栄次郎。岩槻町秋葉社天保三年狛犬に下新井村萩谷久右衛門あり。現存無し。

二　入間郡坂戸町　明治三十五年魚商萩野谷伝吉あり。一戸現存す。

三　比企郡高坂村（東松山市）　東光院寛政八年馬頭尊に高坂村萩野谷氏とあり。現存無し。

萩原　ハギハラ　各市町村に存す。○千葉県香取郡多古町三十一戸。○山梨県東八代郡一宮町二十七戸、豊富村二十八戸、南巨摩郡南部町二十六戸、山梨市五十戸、甲府市二百四十戸あり。ハギワラ参照。

蘒原　ハギハラ　浦和、大宮、熊谷等に存す。山梨県東山梨郡春日居町十六戸あり。

蘒原　ハギハラ　川口、大宮、春日部、北川辺、秩父等に存す。

萩平　ハギヒラ　桶川、三郷、熊谷等に存す。ハギダイラ参照。

萩村　ハギムラ　草加、吉川、所沢、秩父等に存す。

萩本　ハギモト　下（もと）は浦の意味で、海洋民葉木族なり。ハギ参照。大宮、蕨、和光、杉戸、川越、所沢、飯能等に存す。群馬県邑楽郡大泉町六十五戸、太田市二十五戸あり。

萩元　ハギモト　萩本に同じ。

一　新座郡志木町　明治三十一年中野組萩元亀次郎あり。十二戸現存す。

二　入間郡水子村（富士見市）　当村に此氏多く存す。宝暦十一年弁財天碑に水子村萩元太吉義智。天保六年水宮文書に「般若院講中、水子村世話人萩元泰次、上組・萩元伊之八・萩元半次・萩元市右衛門・萩元与助・萩元嘉左衛門・萩元重蔵・萩元弥兵衛、中組・萩元儀左衛門、下組・萩元沖右衛門・萩元佐源次・萩元林蔵・萩元幸蔵・萩元清七・萩元彦三郎・萩元代吉・萩元五兵衛」。八幡社慶応元年水鉢に萩元喜右衛門・萩元直次郎、中組・萩元卯太郎・萩元吉十郎、下組・萩元音五郎・萩元彦八・萩元卯之吉・萩元藤蔵・萩元五平治・萩元嘉七・萩元金太郎・萩元幸造・萩元沖右衛門・萩元武助。志木町敷島社明治五年泉ヶ滝碑に水子下組萩元卯太吉・萩元彦八、中水子萩元泰治、明治五年不動尊に下水子萩本直次郎・萩本喜十郎。明治五年水子村名主萩元卯太郎。明治九年戸長萩元楢次郎・文政十一年生、副戸長萩元卯太吉・天保十四年生。氷川社明治九年八雲社碑に萩元長蔵・萩元重次郎・萩元宇平治・萩元市右衛門・萩元伊之助・萩元半次郎、明治十三年碑に萩元為吉。大応寺明治二十五年碑に萩元卯太吉・萩元幸吉・萩元庄吉・萩元吉五郎・萩元元治郎・萩元喜三郎・萩元菊治郎・萩元伊之八・萩元五郎吉・萩元茂十郎・萩元半之丞・萩元弥吉・萩元半平・萩元伴蔵・萩元重吉・萩元儀三郎・萩元定吉。与野町一山神社明治三十五年碑に水子・萩元恵左衛門・萩元儀三郎あり。

萩守　ハギモリ　川口に存す。

萩森　ハギモリ　浦和、川口、朝霞、川越、富士見、飯能、三芳等に存す。

萩谷　ハギヤ　茨城県那珂郡大宮町四十五戸、那珂町四十七戸、東海村五十四戸、東茨城郡茨城町八十一戸、常北町二十戸、日立市六十戸、常陸太田市百戸、ひたちなか市四十六戸、水戸市八十戸あり。ハギタニ参照。

一　上杉氏家臣の萩谷氏　弘安二年聖教奥書（金沢文庫）に相州鎌倉二階堂萩谷（はぎがや）とあり、此地より起る。相州兵乱記に「上杉扇谷修理大夫朝興は、子息五郎朝定を初め、三田、萩谷以下の老臣に遺言す」。甲陽軍鑑に「扇谷殿は、上田、大見、太田、萩谷とて四人の老あり」。関八州古戦録に「管領上杉憲政の臣萩谷加賀守」と見ゆ。ハギガヤと註す。後に深谷上杉氏に仕へ、深谷落城後は秋元氏に仕へる。

二　秋元藩家臣の萩谷氏　秋元家譜に「深谷七人衆・萩谷加賀守与五右衛門」。秋元家藩臣秘録に「深谷七騎と云う、一ノ坂に太陽寺、新堀に萩谷、新田に大沼」と。一ノ坂と新堀は深谷城下なり。新田の大沼氏は東大沼村居住なり。秋元家御家臣断絶録に「深谷衆之内御譜代・四百石・萩谷与五右衛門・此家断絶。萩谷は上杉家四老臣之内也」と。庶子家は、明治四年館林藩士族帳に「御馬廻・十三人扶持・萩谷漸」あり。

三　日蓮宗信徒の萩谷氏　秋元喬知が宝永元年十二月川越藩主となり、其の重臣萩谷氏は川越日蓮宗行伝寺の有力な檀徒となる。先祖以来の位牌を供養し、享保頃に断絶となる。行伝寺過去帳に「正岳院道勇・二十一日。了岳院妙勇・二日。信順院法円・十二日。妙種・三日。妙順・十日。妙感・十三日。妙行・十一日。融証院・二十九日。蓮池院妙華日法・十六日。信行院円真日融・十四日。聞法院妙解日悟・十日。自証院道感日応・二十八日。正現院法照日受・十八日。円如院体是日相・十日・菩提。右萩谷氏先祖一族諸精霊菩提、於当寺永々米十五俵宛寄進則当年分、享保二年三四月三七日施入説法奉加金子合二両二歩、為円如院体是日相居士・即幻院日体沙弥・各并毎月忌日廻向」と見ゆ。

萩山　ハギヤマ　小名萩山は、足立郡原山村、入間郡上野村、大谷村、男衾郡千代村等にあり。浦和、大宮、鴻巣、所沢、寄居等に存す。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「御具方・二十俵二人扶持・萩山勝太」あり。

二　小鹿野町　明治十二年雑穀商萩山伊重あり。現存無し。

萩生　ハギュウ　行田に存す。

萩生田　ハギュウダ　大宮、朝霞に存す。

蘒生田　ハギュウダ　浦和に存す。

羽切　ハギリ　川口、上尾、久喜、東松山、玉川等に存す。群馬県多野郡吉井町二十四戸あり。

波切　ハギリ　草加に存す。

萩和田　ハギワダ　男衾郡立原村字萩和田、西ノ入村字萩和田あり。

萩原　ハギワラ　原（はら）は村の意味。葉木族渡来地の集落を萩原と称す。ハギ条参照。小名萩原は、埼玉郡外川村、細間村、幡羅郡葛和田村、八口村、秩父郡浦山村等にあり。此氏は武蔵国・上野国に多く存し、奥州に少ない。ハギハラ参照。○群馬県利根郡片品村九十四戸、吾妻郡長野原町八十三戸、勢多郡北橘村二百七十戸、富士見村四十戸、新里村二十三戸、北群馬郡吉岡町四十戸、子持村三十戸、榛東村五十二戸、群馬郡群馬町三十四戸、榛名町四十三戸、箕郷町三十四戸、倉渕村二十戸、甘楽郡甘楽町二十三戸、碓氷郡松井田町百戸、多野郡鬼石町二十戸、佐波郡玉村町百戸、渋川市百三十戸、安中市二百七十戸、伊勢崎市百戸、高崎市二百七十戸、前橋市五百戸。○栃木県芳賀郡益子町四十戸、下都賀郡藤岡町二十三戸、安蘇郡田沼町二十二戸、足利市百三十戸。○茨城県西茨城郡岩瀬町三十六戸、友部町二十戸、行方郡牛堀町二十四戸、新治郡千代田町四十戸、八郷町九十戸、新治村四十戸。○千葉県香取郡大栄町四十二戸、多古町四十戸、山武郡芝山町四十戸、横芝町二十四戸。○山梨県北都留郡上野原町三十戸、東八代郡石和町二十八戸。○長野県上水内郡豊野町二十戸、北佐久郡御代田町三十三戸、下伊那郡喬木村二十戸、東筑摩郡波田町二十戸、南安曇郡穂高町三十六戸、梓川村二十八戸、松本市百三十戸。○福島県伊達郡梁川町二十戸。○鳥取県八頭郡智頭町三十戸あり。

一　忍城士の萩原氏　成田分限帳に「三十三貫文・萩原半蔵、五貫文・萩原才次郎」あり。別本に荻原と見ゆ。

二　松山城士の萩原氏　百四十二参照。

三　鉢形城士の萩原氏　神流川合戦記に「天正十年六月、鉢形衆萩原左文治」。小鹿野町吉田系図に「軍役書上、御扶持方衆、百五十目六人ふち・萩原雅楽助」、五項参照。鉢形分限帳に「本国甲州山代・風布住・萩原助三郎（一本に左衛門）」あり、分限帳の本国は信用できず。秩父案内記に「鉢形城士萩原甚左衛門・大内沢村土着」。寄居村に屋敷を構えていた寄居十六騎の内に萩原源左衛門、及び風布村住の萩原権太僧都久永あり。百十四、百四十三項参照。

四　深谷城士の萩原氏　成田記に「元亀三年十月末、深谷上杉憲守の臣江黒兵庫助・高津小次郎・萩原某という侍、いづれも壮年にて、忍領を越へて狼藉す」と、竹屋条参照。深谷記に「天正十年神流川合戦、深谷衆萩原佐渡」あり。

五　会津藩上杉氏家臣　小鹿野町吉田系図に「慶長四年十二月晦日、吉田新左衛門実重は会津上杉景勝に仕へ、元鉢形衆萩原雅楽助は新左衛門組に属す」。会津上杉配下禄高表（吉田文書）に「吉田新左衛門組、百石・萩原和泉」あり。雅楽助と同人か。

六　幕府代官大河内金兵衛家臣　埼玉郡堤村（羽生市）延命寺寛永十三年鐘銘に大旦那萩原加兵衛あり。

七　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「銀二百目二人扶持・本国相模生国武蔵・萩原善四郎・二十八歳」あり。

八　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十八俵二人扶持・萩原轍、十三俵二人扶持・萩原片三、十二俵二人扶持・萩原三衛、同高・萩原徳次郎、八両二人扶持・萩原庫太、七両余二人扶持・萩原慶内、同高・医師萩原赤城」あり。

九　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「寄合三百五十石里見源兵衛の家臣萩原繁八」あり。

一〇　忍藩阿倍氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「三十俵二人扶持・萩原郡八」あり。

一一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　明治四年忍藩士族名簿に「一人扶持・萩原宗七、同高・萩原新六」あり。

一二　鳩谷・岩槻藩阿倍氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「二百七十石・萩原五郎兵衛、二百石・萩原新右衛門」。寛文二年岩槻藩分限帳に「十五人扶持・萩原五郎兵衛、二百石・萩原新右衛門、三十五俵・萩原門右衛門」あり。

一三　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「二百石・萩原十郎兵衛、七両五人扶持・萩原加右衛門」あり。

一四　関東郡代伊奈氏家臣　元禄五年に萩原治郎太夫。宝暦九年秩父領御用日記に伊奈半左衛門内・萩原銀右衛門。赤山陣屋屋敷図に「萩原九郎次・一町一畝歩、萩原舎人・七反七畝歩、萩原次郎太夫・拝借四反五畝歩」。寛政年中杉浦文書に「取ヶ方頭取・六人扶持格・萩原猪左衛門、勘定場見習・五人扶持格・萩原銀右衛門」あり。

一五　葛飾郡深井新田村（吉川市）　六社神社宝暦十一年庚申塔に萩原勘六、文化十年庚申塔に萩原清二郎・萩原岩右衛門・萩原七郎兵衛・萩原清助・萩原蔵之介、弘化二年庚申塔に萩原要吉・萩原八五郎、文久元年庚申塔に萩原喜四郎・萩原孫兵衛・萩原清介・萩原市五郎・萩原友七、明治四十年碑に萩原伊右衛門・萩原栄次郎・萩原篤蔵・萩原惣吉・萩原仲次郎・萩原茂助・萩原常五郎・萩原源三郎・萩原喜一・萩原権兵衛あり。七戸現存す。

一六　同郡水角村（庄和町）　水角神社天保三年庚申塔に萩原与七、明治三十五年碑に萩原与吉・萩原喜三郎。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流水角村萩原与吉あり。三戸現存す。

一七　同郡赤崎村（庄和町）　日枝社天保五年普門品に萩原五郎右衛門あり。二戸現存す。

一八　同郡飯沼村（庄和町）　香取社嘉永元年御神燈に萩原勘左衛門。妙善寺元治二年成田山碑に萩原善右衛門あり。二戸現存す。

一九　同郡幸手町　明治九年副戸長萩原貫吉・右馬之助町住。幸宮神社明治四十二年碑に萩原文吉あり。

二〇　同郡平須賀村（幸手市）　観音堂明治十五年寄附に発起人萩原孫八.。香取社明治三十九年狛犬に萩原市郎・萩原孫八あり。二戸現存す。

二一　埼玉郡越ヶ谷宿　浅間社延宝三年水鉢に萩原長兵衛。明治三十五年薬種商萩原勝太郎あり。

二二　同郡川崎村（越谷市）　川崎神社文政十年水鉢に萩原権右衛門、天保三年御神燈に萩原善三郎、弘化二年供養塔に萩原又八.。明治三十年人名録に萩原権左衛門・天保七年生・地租二十三円あり。一戸現存す。

二三　同郡岩槻町　浄安寺明暦二年地蔵尊に萩原九左門。千手院天和三年供養塔に横町萩原権兵衛。加倉村浄国寺元禄三年庚申塔に市宿町萩原利右衛門。荒井新田村宝鐘寺寛延二年地蔵尊に石工岩槻市宿町萩原三右衛門。加納村天神社安永三年御神燈に岩槻市宿町石工萩原利兵衛。久伊豆社安永六年御神燈に石工市宿町萩原利兵衛。上野田村安政九年供養塔に岩付市宿町石工萩原利兵衛。明治三十年所得税下調査簿に岩槻町萩原兼四郎・反別一町八反歩・地租二十円。明治三十五年薬種商萩原兼四郎・飲食店萩原岩吉あり。

二四　同郡表慈恩寺村（岩槻市）　諏訪社文化十四年天神碑に萩原勝次郎、天保五年水鉢に萩原丹蔵・萩原源太郎・萩原吉五郎あり。四戸現存す。

二五　同郡粕壁宿　元新宿八幡社天保四年水鉢に萩原久兵衛。荻原参照。

二六　同郡梅田村（春日部市）　神明社弘化二年水鉢に新田株萩原治左衛門・萩原万五郎・萩原九左衛門。日枝社弘化六乙酉年水鉢に萩原安右衛門・萩原治右衛門、嘉永三年御神燈に西組萩原安五郎・萩原喜惣次、東組萩原清五郎・萩原幸左衛門。内牧村楽応寺明治三十年水鉢に萩原耕夫。明治三十年人名録に萩原耕夫・明治元年生・地租三十二円、萩原喜蔵・嘉永二年生・地租二十六円あり。十一戸現存す。

二七　同郡西谷原村（春日部市）　香取社天保十一年水鉢に六町物萩原寅次郎あり。一戸現存す。

二八　同郡中野村（春日部市）　宝性院寛政十二年庚申塔に萩原喜市・萩原吉十郎あり。一戸現存す。

二九　同郡大場村（春日部市）　当村に此氏多く存す。ハギハラ氏も十戸存す。稲荷社記に「元和頃萩原六右衛門（子孫萩原森三郎）は、豊臣氏家臣にて大坂落城後土着す」と、当村出身の出稼衆なり。香取社享和三年普門品に萩原長蔵・萩原勘五郎・萩原代助・萩原市郎右衛門・萩原兵蔵・萩原勝五郎・萩原源治郎・萩原半助・萩原平三郎・萩原愛蔵・萩原平吉、嘉永六年御神燈に萩原八郎右衛門・萩原庄蔵・萩原仁兵衛・萩原安次郎・萩原徳兵衛・萩原彦市・萩原作兵衛・萩原佐七・萩原浅八・萩原弥平・萩原小七・萩原欣五右衛門、嘉永七年御神燈に萩原藤右衛門・萩原源兵衛・萩原仙之助、明治二十八年碑に萩原新次郎・萩原平吉・萩原艶太郎・萩原蔦次郎・萩原弥市・萩原準三郎。稲荷社文久三年庚申塔に萩原吉蔵、明治四十三年富士嶽碑に萩原森三郎あり。

三〇　同郡百間村（宮代町）　西原組浅間社文久元年小御嶽碑にヒメミヤ萩原宇吉悦行。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に百間東村萩原角左衛門。西原組神外坊明治十七年奉納太刀銘に萩原角之助恵宣。明治二十一年皇国武術英名録に真心影流百間村萩原角之助。明治三十年人名録に百間東村萩原角次郎・地租七十五円あり。四戸現存す。

三一　同郡篠津村（白岡町）　久伊豆社嘉永五年敷石碑に萩原富蔵あり。七戸現存す。

三二　同郡岡泉村（白岡町）　鷲神社天保七年御神燈に萩原留七あり。現存無し。

三三　同郡上野田村（白岡町）　当村安政九年供養塔に萩原権三郎あり。現存無し。

三四　同郡黒浜村（蓮田市）　久伊豆社明治十四年御神燈に萩原音五郎あり。十八戸現存す。

三五　同郡高虫村（蓮田市）　当村寛政十二年愛宕山碑に萩原八十八・萩原茂八.。倉田村明星院文政六年新西国塔に高虫村萩原茂八あり。六戸存す。

三六　同郡上栢間村（菖蒲町）　当村に此氏多く存す。神明社宝永七年御神燈に萩原文左衛門・萩原宗右衛門。

三七　同郡新堀村（菖蒲町）　相州大山阿夫利神社大正五年碑に菖蒲町新堀萩原五郎左衛門あり。二戸現存す。

三八　同郡騎西町　明治三十五年古着古銅鉄商萩原力蔵あり。

三九　同郡根古屋村（騎西町）　前玉神社明治二十七年碑に萩原市五郎あり。三戸現存す。

四〇　同郡戸崎村（騎西町）　諏訪社明治初年碑に萩原幸右衛門・萩原金兵衛あり。現存無し。

四一　同郡戸室村（騎西町）　地蔵堂享保三年地蔵尊に戸室村萩原与四兵衛・萩原佐五兵衛あり。二戸現存す。

四二　同郡中ノ目村（騎西町）　観音堂巡拝塔に「重屋宗鉄信士・天正二年二月朔日、一的秋風信士・慶長六年九月二十日。天明元年・中ノ目村萩原新左衛門」。当村寛延二年庚申塔に中之目村萩原庄左衛門・萩原善左衛門、安政三年馬頭尊に中之目村萩原茂十郎。明治九年副戸長萩原長次郎・天保十二年生あり。七戸現存す。

四三　同郡屈巣村（川里町）　野村玉松堂明治二年入門に久寿村萩原伊勢松あり。五戸現存す。

四四　同郡広田村（川里町）　天正十九年当村開発者新井弥左衛門娘は忍領斎田村萩原氏之次男長右衛門を貰い分地に出候、長右衛門事は実家之家名萩原と名字をなのり申候とあり。新井条参照。鷺栖神社弘化三年碑に萩原清八あり。八戸現存す。

四五　同郡加須町　明治三十五年時計商萩原喜三郎あり。

四六　同郡礼羽村（加須市）　文政七年戸賀崎門人帳に礼羽村萩原伝五郎。

四七　同郡花崎村（加須市）　明治二十年法泉寺文書に萩原卯八あり。二戸現存す。

四八　同郡馬内村（加須市）　諏訪社明治二十二年伊勢講碑に萩原守吉あり。二戸現存す。

四九　同郡阿良川村（加須市）　天神社寛延四年道祖神に阿良川村萩原□右衛門あり。二戸現存す。

五〇　同郡間口村（大利根町）　八幡社明治二十六年碑に萩原春五郎・萩原元左衛門・萩原丈吉・萩原市左衛門・萩原庄蔵あり。六戸現存す。

五一　同郡北大桑村（大利根町）　大願寺文化六年供養塔に萩原喜右衛門。明治九年副戸長萩原惣蔵・文政七年生。香取社明治十六年水鉢に萩原惣助あり。二戸現存す。

五二　同郡平野村（大利根町）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

五三　同郡大曽村（北川辺町）　萩原熊三家天明四年念仏供養塔に大曽村萩原兵右衛門叔父。明治九年副戸長萩原弥吉・天保三年生あり。六戸現存す。

五四　同郡今泉村（羽生市）　長光寺嘉永三年常夜燈に今泉村萩原忠七あり。六戸現存す。

五五　同郡尾崎村（羽生市）　遍照院文政五年廻国塔に萩原武□□・萩原藤□・萩原五□□。鷲宮社文久三年水鉢に萩原巳之助・萩原佐右衛門・萩原富五郎・萩原豊七あり。六戸存す。

五六　同郡喜右衛門新田（羽生市）　無量寺文化三年十九夜塔に神鳥村萩原清六・萩原伊八.。八幡宮文久二年小御嶽碑に萩原勘左衛門・萩原喜八・萩原三郎次・萩原宗吉。明治九年副戸長萩原孫兵衛・天保五年生。明治十六年鯉魚飼育会社発起人萩原留八・萩原喜藤次・萩原源次郎。下川上村愛染堂明治二十七年藍製講に喜右衛門新田萩原孫兵衛あり。八戸現存す。

五七　同郡埼玉村（行田市）　四十四項の斎田村とは当村のことか。前玉神社宝暦十年常燈明に萩原清六・萩原金左衛門。明治二十二年医師萩原敬順。上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡埼玉村下埼玉萩原角次郎あり。十二戸現存す。

五八　同郡馬見塚村（南河原村）　西善院享和元年供養塔に萩原儀八.。明治九年副戸長萩原保二・天保十四年生あり。六戸現存す。

五九　同郡上之村（熊谷市）　上之村神社嘉永三年御神燈に萩原清左衛門。池上村古宮神社明治四年算額に上之村萩原紋二郎枚忠あり。三戸存す。

六〇　足立郡蕨町　明治三年御用会所役員萩原勝之丞。三学院明治十五年水鉢に萩原源太郎あり。

六一　同郡下笹目村（戸田市）　当村に此氏多く存す。慈眼寺寛文九年地蔵尊に萩原六郎衛門、文化六年宝篋印塔に萩原理左衛門、文政十年庚申塔に下笹目村萩原定右衛門・萩原治右衛門。足立区花畑大鷲神社天保四年算額に下笹目邑萩原定右衛門金房。笹目神社天保六年狛犬に萩原増治郎あり。

六二　同郡美女木村（戸田市）　当村に此氏多く存す。妙厳寺明暦二年碑に萩原門左衛門、元禄四年碑に萩原平四郎。薬師堂寛文十三年閻魔像に萩原七郎右衛門。下笹目村慈眼寺安永四年供養塔に美女木村萩原亀右衛門。安養寺寛政五年供養塔に萩原源助。八幡社文化三年御神燈に萩原重兵衛、天保六年狛犬に萩原紋右衛門・萩原磯五郎。明治九年戸長萩原勝之丞・天保四年生、副戸長萩原宇之八・文化四年生あり。

六三　同郡川口町　明治三十五年玩物商萩原三七蔵あり。

六四　同郡木崎村（浦和市）　与野町一山神社明治三十五年碑に木崎萩原寅吉あり。

六五　同郡上野田村（浦和市）　氷川社文政十二年水鉢に萩原宇八、天保九年御神燈に萩原重次郎・萩原清八.。多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡上野田村萩原儀内。鈎上村神明社元治元年碑に上野田村萩原藤馬。代山村成田不動尊安政三年普門品に上野田村萩原茂助・萩原和助、明治四十年碑に上ノ田萩原亦次郎。南部領辻村鷲神社明治四十二年碑に上ノ田村萩原平次郎あり。ハギハラ氏六戸、ハギワラ氏二戸現存す。

六六　同郡松本新田（浦和市）　明治十二年大野文書に松本新田萩原音次郎あり。ハギハラ氏三戸現存す。

六七　同郡与野町　一山神社明治三十五年碑に当町萩原次郎右衛門あり。

六八　同郡小針新宿村（伊奈町）　西光寺寛保元年筆子碑に萩原弥三郎・萩原弥吉郎。倉田村明星院文政六年新西国塔に小針村萩原岩次郎。小針神社天保九年水鉢に小針新宿村組頭萩原岩次郎・萩原勘右衛門・萩原弥五兵衛・萩原惣吉・萩原源蔵あり。四戸現存す。

六九　同郡藤波村（上尾市）　当村に此氏多く存す。密厳院宝暦八年庚申塔に藤波村萩原定右衛門あり。

七〇　同郡川田谷村（桶川市）　字地神天明三年馬頭尊に砂ヶ谷戸萩原林右衛門あり。五戸現存す。

七一　同郡中丸村（北本市）　氷川社明治十六年御神燈に萩原丑五郎あり。五戸現存す。

七二　同郡東間村（北本市）　浅間社明治四十年碑に萩原寅松あり。四戸現存す。

七三　同郡鴻巣町　明治三十五年営業便覧に桶職萩原吉右衛門・桶職萩原軍治・理髪師萩原市五郎・理髪師萩原松五郎・白米商萩原伊之助・萩原重次郎・萩原元五郎あり。

七四　同郡箕田村（鴻巣市）　寛永七年箕田村検地帳に「萩原」と見ゆ。苗字記載者は土豪なり。二戸現存す。

七五　同郡八幡田村（鴻巣市）　八幡寺延享五年庚申塔に八幡田村萩原伝次郎。箕田村明治十八年馬頭尊に八幡田村萩原小伝次あり。四戸現存す。

七六　同郡市ノ縄村（鴻巣市）　八幡社慶応三年水鉢に萩原喜曽八・萩原長太郎・萩原宗七・萩原林蔵・萩原勘蔵、明治十四年幟碑に萩原初五郎・萩原忠七・萩原長三郎・萩原浅右衛門。明治九年副戸長萩原長三郎・嘉永四年生あり。ハギハラ氏二戸存す。

七七　新座郡館村（志木市）　館村旧記に「天文年中、大石四郎殿は常陸国尾山の城へ移りたまひて、四郎殿の別所の跡芝野と成りて、芝野のありし故に中野とは号けたり。中野組、此の処に住す百姓萩原十郎左衛門が先祖を始め、これ芝分の百姓也」。宝幢寺慶安二年鐘銘に萩原十左衛門、嘉永二年地蔵尊に中野邑萩原長蔵。氷川社嘉永六年碑に中野・萩原長蔵・萩原平八.。明治四年古鉄商中野組萩原佐吉。引又河岸跡明治十三年水神講に志木宿萩原万蔵。明治三十年中野組萩原平八・萩原甲子太郎、市場組萩原富蔵・萩原庄吉。明治三十五年志木町菓子商萩原庄助あり。四戸現存す。

七八　同郡上新倉村（和光市）　東林寺文政七年庚申塔に上新倉邑峯講中萩原七右衛門。吹上観音嘉永二年庚申塔に上新倉村萩原七右衛門。安政二年上新倉村勧進帳に萩原忠右衛門・萩原弥五兵衛。明治十九年薪商萩原佐吉。東林寺明治二十六年地蔵尊に峯久保萩原茂兵衛（薪商）。明治四十四年県税届に萩原八左衛門・萩原藤七郎あり。八戸現存す。

七九　入間郡駒林村（上福岡市）　大仙波村浅間社文化十一年水鉢に駒林村萩原仙右衛門。明治六年准副戸長萩原孫三郎。一戸存す。荻原条参照。

八〇　同郡藤久保村（三芳町）　本郷村東福寺明治九年水鉢に藤窪村萩原伊三郎あり。六戸存す。荻原条参照。

八一　同郡亀久保村（大井町）　明治四十四年若者名簿に萩原勘次郎あり。四戸存す。荻原条参照。

八二　同郡下南畑村（富士見市）　志木町敷島社明治五年道標に下南畑村萩原清蔵。明治五年大工職萩原艶吉・屋根職萩原仁左衛門あり。四戸現存す。

八三　同郡鶴馬村（富士見市）　三光院跡延宝三年常夜燈に萩原□右衛門。来迎寺安政五年馬頭尊に谷津下郷講中・萩原庄右衛門・萩原奥右衛門・萩原彦兵衛・萩原代治郎・萩原富八.。志木町敷島社明治五年御神燈に鶴馬村萩原庄左衛門。明治五年組頭荒物商萩原岡右衛門・屋根職萩原奥次郎。明治九年副戸長萩原岡右衛門・文化元年生。明治十三年下組小前惣代萩原庄介。鶴瀬村会議員薬商萩原寛吾・天保三年生あり。

八四　同郡水子村（富士見市）　地蔵院安永十年六地蔵に萩原庄之助あり。

八五　同郡勝楽寺村（所沢市）　大豆土村真光寺宝永四年寄進帳に武州山口領正楽寺村萩原伊兵衛。仏蔵院文書に「天明元年世話人萩原治郎左衛門、文政二年萩原伊兵衛・萩原浅兵衛・萩原市郎左衛門、天保六年萩原次郎左衛門」。氷川村中氷川社安政五年勝楽寺村七社権現碑に萩原新五右衛門・萩原惣兵衛・萩原伊兵衛・萩原次郎左衛門・萩原文右衛門、明治二十九年碑に勝楽寺村萩原勘次郎・萩原友吉・萩原伊太郎・萩原寅吉・萩原音吉・萩原金次郎あり。荻原条参照。

八六　同郡堀口村（所沢市）　天神社明治四十年碑に堀口村萩原伊太郎・萩原音吉あり。

八七　同郡峰村（入間市）　泉蔵院万延二年地蔵尊に萩原源太夫母あり。二戸現存す。

八八　同郡上谷ヶ貫村（入間市）　天保三年狭山茶場碑記に谷ヶ貫村萩原兵衛門安忠。明治十一年比留間文書に萩原小十郎・萩原梅蔵・萩原平左衛門・萩原信太郎・萩原米蔵あり。七戸現存す。

八九　同郡川越町　連雀町熊野社文化二年水鉢に御門前萩原宇之八.。氷川社明治三十三年玉垣碑に萩原源太郎。明治三十五年煎餅屋萩原粂吉・活版所萩原忠蔵あり。荻原条参照。

九〇　同郡中福村（川越市）　今福の沿革史に「慶安四年、萩原八左衛門は中福村開発請人となる」。現存無し。

九一　同郡南田島村（川越市）　明治九年副戸長萩原文蔵・文化十四年生。明治二十二年埼玉勧業会員萩原梅次郎。氷川社明治三十九年碑に萩原金兵衛・萩原庄右衛門あり。九戸現存す。

九二　同郡大満村（越生町）　明治二十八年水神講に萩原貞次郎あり。一戸現存す。

九三　比企郡上大屋敷村（川島町）　明治四年人別帳に萩原藤八郎あり。現存無し。

九四　同郡関堀村（都幾川村）　明治三十六年絹織物業萩原代吉あり。三戸現存す。

九五　同郡石橋村（東松山市）　当村文久三年馬頭尊に当所萩原議五.。明治九年副戸長萩原勘三郎。松山町箭弓神社明治三十一年碑に唐子村萩原勘三郎。唐子神社忠魂碑に萩原藤四郎・萩原勘次郎あり。八戸現存す。

九六　大里郡熊谷宿　宝暦十年新宿南屋敷持主萩原幸助。嘉永元年文書に萩原吉五郎。明治七年熊谷宿惣代人萩原治右衛門。明治三十五年料理店泉州楼萩原半次郎あり。

九七　同郡成沢村（江南町）　赤城社文化五年御神燈に萩原次郎右衛門、天保十一年御神燈に萩原儀四郎・萩原和四郎・萩原勇吉・萩原音次郎・萩原惣右衛門、安政二年水鉢に蘒原幸太郎・蘒原勘助・蘒原彦太郎・蘒原幸次郎・蘒原幸助。明治九年副戸長萩原英政・天保五年生あり。九戸現存す。

九八　同郡御正新田村（江南町）　雷電社明治十三年御神燈に萩原浜吉あり。四戸現存す。

九九　男衾郡露梨子村（寄居町）　用土村明治十三年仙元碑に露梨子村萩原又吉あり。五戸現存す。

一〇〇　幡羅郡三ヶ尻村（熊谷市）　明治二十一年皇国武術英名録に念流三ヶ尻村萩原秋翁あり。一戸現存す。

一〇一　同郡上奈良村（熊谷市）　字植木文政四年庚申塔に「摂津国武庫郡川西邑田口喜左衛門之息也、上奈良郷継於萩原氏、願主綿屋金右衛門」あり。十一戸現存す。

一〇二　同郡中奈良村（熊谷市）　下奈良村明治二十七年東条筆子碑に中奈良村萩原平四郎あり。一戸現存す。

一〇三　同郡妻沼村　聖天旧記に「文禄三年、女沼郷古百姓萩原図書平介」。明治三十五年理髪店萩原政吉・女髪結萩原ノフ・湯屋萩原角平・料理店長谷川楼萩原倭一郎。信州木曽御嶽山清滝新道端昭和五年碑に妻沼町講萩原友次郎あり。七戸現存す。

一〇四　同郡台村（妻沼町）　妻沼村聖天宮文化十五年御神燈に台村講中萩原十兵衛あり。八戸現存す。

一〇五　同郡俵瀬村（妻沼町）　成就院天明八年地蔵尊に萩原弥五右衛門・萩原政右衛門母あり。現存無し。

一〇六　同郡東方村（深谷市）　明治九年副戸長萩原太三郎・嘉永二年生。熊野社明治三十年碑に萩原太三郎・萩原安五郎・萩原高三郎・萩原初五郎あり。五戸現存す。

一〇七　榛沢郡深谷町　深谷町会議員薬剤師萩原宗二・明治三十五年生。

一〇八　同郡高畑村（深谷市）　円能寺明治三十二年筆子碑に萩原愁三郎・萩原八十吉。人見村清水兼七家明治三十五年御嶽碑に高畑萩原八十八.。大正七年金井元治碑に当所萩原品次郎・萩原八十八.。大寄村会議員萩原憲雄・明治三十七年生あり。三戸現存す。

一〇九　同郡新戒村（深谷市）　大林寺文化四年蚕影山に萩原清太郎・萩原七十郎、明治三十五年筆子碑に萩原貞三郎・萩原新三郎。新会村会議員萩原貞三郎・安政六年生あり。五戸現存す。

一一〇　同郡高島村（深谷市）　中瀬神社明治四十一年碑に高島萩原満良あり。一戸現存す。

一一一　同郡西田村（岡部町）　明治四年牧西村森文書に西田村名主萩原平次郎。明治十一年副戸長萩原平次郎あり。五戸現存す。

一一二　同郡沓掛村（岡部町）　榛沢村経蔵院文久二年筆子碑に沓掛村萩原長十郎あり。二戸現存す。

一一三　同郡飯塚村（花園町）　十二社神社嘉永元年馬頭尊に飯塚村萩原斧吉・萩原豊吉。明治九年富田文書に飯塚村萩原豊吉、副戸長萩原峰三郎・天保十一年生。用土村明治十三年仙元碑に武蔵野村萩原峰三郎・萩原豊吉あり。四戸現存す。

一一四　同郡寄居村　鉢形落城後定住鏡に「天正年中鉢形落城後、慶安四年定住、榛沢郡寄居住・萩原左衛門」。三項参照。西念寺元文四年巳待供養塔に寄居村萩原重左衛門あり。五戸現存す。荻原条参照。

一一五　同郡牧西村（本庄市）　天正年間牧西村持高帳に「萩原分」と見ゆ。苗字記載者は土豪なり。現存無し。荻原条参照。

一一六　児玉郡本庄宿　当宿に此氏多く存す。本宿十八軒（旧本庄村）の草分けに萩原氏あり。安養院延宝五年鐘銘に萩原杢左衛門。石川剣道場門下生に天明四年・本庄宿萩原辰五郎。七本木村石川流木村源蔵（天保十年没）門人に本庄宿萩原弁治郎。天保十三年本庄宿組頭萩原杢左衛門。明治二十一年皇国武術英名録に甲源一刀流本庄宿萩原美登。明治五年諸井文書に上町総代萩原利平。明治三十五年糸繭商萩原福太郎あり。荻原条参照。

一一七　同郡北堀村（本庄市）　庄田文書に「地頭柴村様名主萩原勘解由」。先祖は鉢形北条氏の家臣と伝へる。飯玉神社元文元年大黒天碑に公卿塚萩原孝信泉州・奥宮建造とあり、小名久下塚住人なり。私塾師匠名主萩原杢右衛門信桑・明治二十九年没。明治九年副戸長萩原杢衛・天保十一年生あり。十八戸現存す。

一一八　同郡東五十子村（本庄市）　阿那志村河輪神社明治十三年御嶽碑に東五十子村萩原万吉あり。六戸現存す。

一一九　同郡児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に萩原仁兵衛。明治三十五年糸繭商萩原又一郎あり。

一二〇　同郡太駄村（児玉町）　明治三十年中里鳥三郎碑に萩原広吉・萩原常松・萩原亀太郎・萩原儀三郎あり。四戸現存す。

一二一　同郡河内村（児玉町）　児玉町八幡社明治三十五年碑に河内萩原伝吉あり。現存無し。

一二二　同郡新里村（神川町）　明治五年小前議定書に萩原兵九郎あり。三戸現存す。

一二三　同郡関村（美里町）　明治九年副戸長萩原紋平・文政九年生あり。八戸現存す。

一二四　那賀郡広木村（美里町）　常福寺明治期筆子碑に村・萩原辰五郎。ミカ神社明治四十一年碑に当所萩原勇蔵・萩原寅五郎・萩原豊吉・萩原竹蔵あり。二戸現存す。

一二五　賀美郡黛村（上里町）　文政四年名主萩原杢右衛門。万延元年勝場村庚申塔に黛村萩原定兵衛。明治九年副戸長萩原杢衛・文政九年生、副戸長萩原喜平。黛神社明治四十三年水鉢に萩原金平・萩原金本・萩原文平・萩原綏平あり。六戸現存す。

一二六　同郡八町河原村（上里町）　安永五年利根川筋絵図面（倉賀野町須賀文書）に八町河岸船問屋萩原勘右衛門。天保四年同家文書に船問屋萩原勘右衛門あり。一戸現存す。

一二七　同郡七本木村（上里町）　石川流木村源蔵（天保十年没）門人に七本木村萩原浅五郎。明治二十一年皇国武術英名録に真ノ神道流柔術七本木村萩原仲次郎あり。七戸現存す。

一二八　同郡長浜村（上里町）　大御堂村吉祥院天保五年供養塔に長浜村萩原寅松・萩原善右衛門・萩原長五郎あり。五戸現存す。

一二九　秩父郡風布村（寄居町）　三項参照。姥宮神社天保十年御神燈に萩原重□郎・萩原長八・萩原和吉・萩原藤八.。明治九年岩松文書に萩原芳五郎・萩原清次郎・萩原政吉・萩原嘉市・萩原常蔵・萩原広吉。明治九年副戸長萩原芳五郎・天保七年生。国神神社明治三十四年碑に風布萩原才助・萩原嘉市あり。五戸現存す。

一三〇　同郡皆野村　寛保三年香具仲間連名帳（野口文書）に萩原と久・萩原龍太郎。明治八年酒造業萩原丑治郎あり。三戸現存す。

一三一　同郡金崎村（皆野町）　国神神社明治三十四年碑に当所萩原キク・萩原百吉あり。二戸現存す。

一三二　同郡三沢村（皆野町）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

一三三　同郡大宮郷　明治三年饅頭屋萩原重蔵後家いか・洗濯屋萩原むら・餅菓子商萩原卯市あり。

一三四　同郡山田村（秩父市）　宝登山神社明治七年棟札に大工荒船庸芳弟子山田村萩原八太郎あり。ハギハラ氏四戸、ハギワラ氏三戸現存す。

一三五　同郡大野原村（秩父市）　名主萩原左伝次は嘉永四年より新田十六町歩を開発し苗字帯刀御免となり、影森用水を開き功あり。明治十年地主総代萩原太十郎あり。ハギハラ氏十戸、ハギワラ氏三戸現存す。

一三六　同郡栃谷村（秩父市）　当村に此氏の旧家あり。十一戸現存す。

一三七　同郡黒谷村（秩父市）　当村に此氏の旧家あり。十二戸現存す。

一三八　同郡下吉田村　八幡社明治三十八年碑に萩原子之作。現存無し。

一三九　同郡小鹿野町　明治十二年洋物商萩原伝平、上二丁目萩原清太郎・雑穀商萩原伴平あり。八戸存す。

一四〇　同郡飯田村（小鹿野町）　八幡社慶応元年御神燈に中飯田萩原八重松あり。三戸現存す。

一四一　同郡薄村（両神村）　薬師堂万延元年庚申塔に当所萩原定吉あり。二戸現存す。

一四二　同郡御堂村（東秩父村）　風土記稿御堂村条に「常光寺は、文明年中基立のよし云伝ふ。開基は松山城主上田家臣にて萩原五兵衛・法名は常光道秀と称す。没する年月を伝へず」と見ゆ。三戸現存す。

一四三　同郡大内沢村（東秩父村）　峰岸家先祖は、北条氏邦家臣萩原勘左衛門が落城後に当村へ土着し、峰岸姓に改めたと伝へる。萩原氏は現存無し。三項及び峰岸条参照。

一四四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・萩原隆一郎・五十七円、萩原東一・九円・三十三円、美谷木村（戸田市）・萩原寅之助・十五円、川口町・萩原ゆう・九円、大宮町・萩原喜代盛・千百九円、萩原松次・二十九円、桶川町・萩原文三郎・四十一円、三輪野江村（吉川市）・萩原喜一・十円、岩槻町・萩原兼四郎・六十五円・三十四円、羽生町・萩原末吉・二百八十二円・百八十二円、加須町・萩原保之助・十円・二十八円、福岡村・萩原伊三郎・四十六円、熊谷町・萩原義三郎・百六十七円、深谷町・萩原政吉・八十円・九十三円、本庄町・萩原善次郎・二十三円・五十六円、萩原元吉・十五円・四十二円、北泉村（本庄市）・萩原徳治・十一円、賀美村（上里町）・萩原綏平・九十八円、萩原文平・二十円、萩原金平・十七円、高篠村（秩父市）・萩原福寿・十五円、原谷村（秩父市）・萩原佐紋治・四十七円、白鳥村（皆野町）・萩原磯吉・十円・十九円、小鹿野町・萩原源内・九円」あり。

蘒原　ハギワラ　大宮、朝霞、三郷、坂戸、北川辺、行田等に存す。

蘒原　ハギワラ　大宮、岩槻、春日部、入間、小鹿野、両神等に存す。栃木県佐野市十三戸あり。

伯井　ハクイ　川越、坂戸等に存す。

羽喰　ハクイ　三芳に存す。

葉草　ハクサ　幡羅郡下奈良村字葉草及び奈良新田字葉草（熊谷市）は古の村名にて、奈良新田葉草廓享保三年地蔵尊に下葉草村新田と見ゆ。

白座　ハクザ　川口に存す。青森県三戸郡階上町七戸あり。

白澤　ハクサワ　八潮に存す。

白山　ハクサン　古朝鮮時代の檀君神話に出る太白山は今の白頭山で、中国と北朝鮮の国境にある。また、新羅国の江原道と慶尚北道との境界に太白山・小白山あり、白山山脈という。此地より新羅系渡来人が日本へ持ち込み奉斎したのが白山神社であり、白山信仰は我が国最古なり。石川県・福井県・岐阜県の県境に白山比咩神社本宮（石川県鶴来町三宮）あり、全国二七六〇社の総本社なり。白山神社は岐阜県五二五社、福井県四二一社、新潟県二三二社、愛知県二二〇社、石川県一五六社、富山県一〇七社、七番目に埼玉県一〇二社である。アラハバキ条十五項、出雲、シロヤマ条参照。

白田　ハクタ　茨城県東茨城郡茨城町十七戸、西茨城郡友部町三十八戸、鹿島郡旭村三十六戸、新治郡八郷町五十戸、真壁郡協和町十九戸、真壁町二十七戸あり。シロタ参照。

一　埼玉郡行田町　糠田村氷川社明治十一年浅間社碑に行田・白田武左衛門あり。現存無し。

二　足立郡糠田村（鴻巣市）　氷川社明治十三年碑に白田平蔵あり。五戸現存す。

三　入間郡横沼村（坂戸市）　当村寛政三年馬頭尊に横沼村白田常右衛門。勝光寺寛政十二年念仏塔に白田甚右衛門あり。八戸現存す。

四　横見郡一ツ木村（吉見町）　氷川社明治三十七年碑に白田文左衛門・白田武右衛門・白田吉右衛門あり。二戸現存す。

五　幡羅郡妻沼町　明治三十五年足袋商白田彦一あり。現存無し。

六　比企郡伊草村（川島町）　昭和三年興信録に「伊草村・白田源次郎・所得税九円」あり。三戸現存す。

伯田　ハクタ　新座、上里等に存す。茨城県日立市九戸あり。

伯谷　ハクタニ　川越、鶴ヶ島等に存す。

羽口　ハグチ　三郷に存す。

一　忍町　明治三十五年粉商羽口林蔵あり。現存無し。

白戸　ハクト　越谷に存す。茨城県猿島郡総和町三十一戸あり。シラト参照。

白野　ハクノ　川口、白岡、川越、所沢、飯能等に存す。シラノ参照。

白畠　ハクハタ　坂戸に存す。

白間　ハクマ　浦和、上尾等に存す。鳥取県八頭郡智頭町二十二戸あり。

白又　ハクマタ　秩父に存す。

白村　ハクムラ　所沢に存す。

白谷　ハクヤ　松山城士にて、秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「妙法・ハクヤ母・天文十三年九月」あり。現存無し。

伯谷　ハクヤ　大宮に存す。

土倉　ハクラ　新座、草加等に存す。

羽倉　ハクラ　上尾、北本、与野、岩槻、所沢、深谷等に存す。

葉倉　ハクラ　坂戸に存す。

葉栗　ハグリ　榛沢郡末野村（寄居町）に秩父鉄道波久礼駅あり。但し、風土記稿には小名葉栗、波久礼の地名は見えず。地元民が通称として用いていたか。丹党葉栗氏あり、波久礼氏とも記す。武蔵七党系図（冑山本）に「山田八郎政成（岩田、井戸）―七郎家経―葉栗五郎国経（波久礼）―五郎助綱、弟九郎綱国、其の弟十郎有国」と見ゆ。末野村は葉鹿郷と称す。葉栗は葉鹿の書き誤りか。

白竜　ハクリュウ　草加に存す。

馬喰　バクロ　足立郡上尾下村字馬口労新田は古の村名にて、寛政十二年庚申塔に足立郡馬喰新田と見ゆ。

八毛　ハケ　吉川に存す。

羽毛　ハケ　八潮に存す。

峡田　ハケタ　豊島郡峡田領あり、入間郡及び新座郡にまで亘る。新座郡宮戸村・内間木村・田島村の辺は峡田領なりと云う。

八桁　ハケタ　青森県東津軽郡平内町八戸あり。

羽毛田　ハケタ　浦和、鴻巣、蓮田、伊奈、蕨、志木、所沢、入間、飯能、八潮等に存す。長野県小県郡真田町八戸、長門町二十八戸、南佐久郡臼田町九戸、佐久市六十七戸あり。

葉木　ハコ　古代朝鮮は豊国或は葉木国と称す。ハギ条参照。葉木国の渡来人集落は佳字の箱を用いる。

箱石　ハコイシ　榛沢郡末野村鎮守に箱石権現社あり。浦和、川口、与野、越谷、春日部、三郷、所沢等に存す。岩手県下閉伊郡岩泉町五十戸、山田町四十四戸、宮古市三十戸あり。

箱岩　ハコイワ　草加に存す。新潟県新津市十五戸あり。

箱川　ハコカワ　所沢に存す。

箱木　ハコギ　八潮、坂戸、日高に存す。

筥崎　ハコザキ　福島県いわき市三十四戸あり。

箱崎　ハコザキ　男衾郡畠山村字箱崎あり。各市町村に存す。福島県いわき市四百七戸、岩手県紫波郡紫波町三十八戸、花巻市二十七戸あり。

箱島　ハコジマ　埼玉郡稲子村（羽生市）諏訪社嘉永五年碑に箱島栄蔵、明治八年浅間碑に箱島春吉あり。二戸現存す。

箱嶋　ハコジマ　川島に存す。

箱田　ハコダ　田は郡県・村の意味。葉木国の渡来人集落を箱田と称す。埼玉郡箱田村（熊谷市）あり、熊谷文書に見ゆ。熊谷条参照。群馬県高崎市六十五戸、茨城県西茨城郡岩間町二十戸、友部町十七戸、青森県西津軽郡柏村九戸あり。

一　成田氏族箱田氏　埼玉郡箱田村より起る。成田系図（龍淵寺本）に「成田太郎助広―箱田小治郎広能―広忠―三郎兵衛能忠―三郎助忠―四郎能綱」。別府系図に「成田太郎助広―成田小次郎広之（箱田右馬允、於門司関打死）―箱田刑部丞広忠―三郎助忠」と。中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「箱田。藤原姓、本国武蔵、成田太郎太夫助広の男小次郎広能・これを称す」と見ゆ。保元物語に「義朝に相随う手勢の者共は、武蔵国には箱田ノ次郎」。吾妻鑑巻五に「文治元年十月二十四日、頼朝随兵に筥田太郎」あり。子孫は陸奥国宮城郡朴沢村（宮城県泉市）付近を所領とす。朴沢文書に「元弘三年十月、大河戸三郎左衛門尉隆行（朴沢氏先祖）は、元弘三年五月二十二日葛西谷合戦の武州箱田九郎三郎義氏の軍忠を注進す」と見ゆ。

二　佐野氏流箱田氏　常陸国出身の出稼衆にて苗字なり。田原族譜に「小見三郎行秀（武蔵国埼玉郡小見村の小見城に住し、小見武蔵守と称す）―出羽守秀政―下総守正国―伊勢守行国―箱田安房守行吉（上野国藤岡に住す）」と見ゆ。下野国安蘇郡小見村（田沼町）より起り、武州小見村は附会なり。小見条参照。

三　榛沢郡血洗島村（深谷市）　上手計村阿弥陀堂元禄十六年地蔵尊に血洗島村箱田長右衛門あり。現存無し。

八甲田　ハコダ　大宮に存す。

函館　ハコダテ　越谷に存す。

箱根　ハコネ　所沢に存す。茨城県行方郡玉造町七戸あり。

一　比企郡雲瓦村（都幾川村）　平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に雲瓦・箱根百平あり。現存無し。

運　ハコビ　草加に存す。

箱守　ハコモリ　浦和、川口、桶川、戸田、新座、草加、越谷、川越、狭山等に存す。茨城県真壁郡明野町十戸、関城町百戸あり。

箱森　ハコモリ　春日部、羽生等に存す。

箱山　ハコヤマ　浦和、朝霞、鳩ケ谷、越谷、草加等に存す。○長野県小県郡真田町十四戸、丸子町十四戸、上田市五十戸。○岩手県上閉伊郡大槌町八戸あり。

波佐　ハサ　浦和、熊谷等に存す。

羽坂　ハサカ　大宮に存す。

葉坂　ハサカ　草加、寄居等に存す。

葉阪　ハサカ　狭山、富士見等に存す。

羽崎　ハサキ　大宮、朝霞、越谷、坂戸、富士見、熊谷等に存す。秋田県仙北郡田沢湖町八戸あり。

波崎　ハサキ　大宮に存す。千葉県銚子市九戸あり。

馬崎　バサキ　戸田、春日部、八潮、飯能等に存す。マザキ参照。

場崎バサキ　大宮、草加等に存す。

羽迫　ハサコ　所沢、鷲宮等に存す。

狭田　ハサダ　所沢に存す。

羽佐田　ハサダ　大宮、川越、所沢、深谷等に存す。

羽里　ハサト　浦和、朝霞等に存す。

挟土　ハサド　吉見に存す。

枷場　ハサバ　大宮に存す。

迫　ハザマ　岩槻、加須、鷲宮に存す。

硲　ハザマ　各市町村に存す。

間　ハザマ　島根県邑智郡石見町五戸。

一　忍城士の間氏　成田分限帳に「忍籠城の者、御旗奉行間三郎兵衛、間源六郎」あり。ハザマと註す。

狭間　ハザマ　埼玉郡芋茎村字狭間（騎西町）は、延文六年市場祭文写に「太田庄南方はさま市祭」と見ゆ。浦和、川口、上尾、上福岡、所沢、日高等に存す。

挟間　ハザマ　狭山に存す。

挾間　ハザマ　川口、久喜、幸手に存す。

硲間　ハザマ　伊奈に存す。

迫間　ハザマ　入間に存す。

波左間　ハザマ　朝霞に存す。

羽佐間　ハザマ　朝霞に存す。

羽沢　ハザワ　浦和、大宮、上尾、桶川、新座、鳩ケ谷、栗橋、秩父等に存す。○秋田県北秋田郡比内町百二十戸、大館市三十五戸。○岩手県二戸郡安代町三十九戸あり。

羽澤　ハザワ　浦和、大宮、春日部、川越、鶴ヶ島、所沢等に存す。

葉沢　ハザワ　熊谷に存す。岩手県九戸郡九戸村七戸、大船渡市十八戸あり。

葉澤　ハザワ　鶴ヶ島、羽生等に存す。

土師　ハジ　土器を製作する集団を土師部と云う。ハゼ、ハニシとも称す。垂仁天皇三十二年条に「天皇・厚く野見宿祢の功を賞し、亦鍛地を賜ふ。即ち土部職に任ず。因りて本姓を改めて土部臣と謂ふ。是れ土部連等が、天皇の喪葬を主さどるの縁也。所謂る野見宿祢は、是れ土部連等の始祖也」と見ゆ。土部（はじべ）に鍛地を賜うとは、埴土は製鉄の原料で、鉄分の赤くなった土は鉄を抽出できる。土部職は埴輪を製作するだけでは無く、鉄器も製作した鍛冶師でもあった。タタラ製鉄は砂鉄と木炭を炉に入れ、フイゴで風を送って、ケラと呼ばれる鉄の塊を造る。ケラを取り出すために、釜を両脇から壊していく。この土の壁を製作するのも土師の仕事で鍛冶集落に存す。鉱山鍛冶集落の山間部に橋本・高橋の地名及び此の氏族が多い、土師部の本名なり。和名抄の河内国志紀郡土師郷（大阪府藤井寺市道明寺）に土師（はじ）ノ里会館あり。江談抄に「菅家、本姓者土師氏也。河内国土師寺・是其先祖氏寺也」と。金鶏伝説に「菅原一族は土師氏族にて、天満宮は土師神社ともいう。土師氏が宮中の葬送行事及び陵墓の築造に従事していた。菅原道真が筑紫に流されるときに、道明寺（古の土師寺）に行って、トキを告げた鶏のために旅に出たという。古代では、墳墓を定めるときに、黄色いおんどりを連れて行って鶏が鳴いたところに柩を埋めたらしい、鶏も一緒であった。古墳に鶏の埴輪が多いのはそれを意味している」とあり。また、和名抄・河内国丹比郡土師郷（松原市）あり、同郷上田村に反正山（はせやま）あり、古は土師山村と称す。立部村（松原市）は土師村（はぜ）と称し、土師氏（はぜ）十八戸、土師氏（はじ）三戸存す。隣郡の和泉国大鳥郡土師郷（堺市）は波爾之（はにし）と註し、堺市和田に土師氏（はぜ）三十八戸存す。また、伊勢国河曲郡土師村（はせ）に式内社の土師神社あり。播磨国神西郡土師村（はぜ、兵庫県香寺町）、揖西郡土師村（はぜ、兵庫県龍野市）。因幡国智頭郡土師郷（鳥取県智頭町）に土師川（はじがわ）あり。同国八上郡土師郷（はじ、郡家町土師百井）、八上郡橋本村（船岡町）は土師本（はしもと）の佳字なり。また、ハシはワシに転訛して鷲の字を用いる。常陸国茨城郡土師村（はじ、岩間町）。下野国足利郡土師郷（はじ）は大宝三年藤原宮木簡に足利郡波自可里とあり、足利市葉鹿町は土師鹿（はじか）と記す。葉鹿条参照。上野国緑野郡土師郷は波爾之（はにし）と註し、今の藤岡市本郷は古の土師村なり。武蔵国賀美郡肥土村広野神社（神川町）は緑野郡土師村であったが神流川の瀬替により武蔵国に入る。続日本紀・承和七年十二月二十七日条に「武蔵国加美郡人桧前舎人直由加麻呂男女十人が左京六条に貫附される。土師氏同祖也」と見ゆ、緑野郡の土師氏と同族なり。堀込条二項参照。土師氏（はし、はじ）は、○茨城県新治郡八郷町十七戸、鳥取県岩美郡岩美町十二戸あり。橋本、高橋、長谷（はせ）、長谷川条参照。

一　浅草の土師氏　台東区浅草寺縁起に「むかし武蔵国宮戸河（隅田川）の辺に、兄弟の漁夫あり、名付けて桧熊の浜成、竹成といふ。彼の時の土師の真中知、浜成、竹成は今の三所権現・是れ也」と見ゆ。三所権現（浅草神社）神職土師氏は六十二代目という。浜成、竹成の主人である土師真中知の中は津の書き誤りで、神社では真中知をマツチと呼んでいる。近くの浅草七丁目隅田公園を真土山（まつちやま）と称し、今は待乳山（まつちやま）と書く。真土は赤土のことで埴輪の原料となる。

二　多摩郡の土師連　五日市町の阿伎留（あきる）神社は延喜式神明帳に見え、神職阿留多伎家の初代は武蔵国造土師連男塩と云い、現神職は男塩より七十五代目という。

三　土師宮の土師氏　埼玉郡鷲宮村鷲宮神社は土師宮（はじのみや）より鷲宮（わしのみや）に転訛す。祭神は武蔵国造の祖・天穂日命、武夷鳥命（たけひなとりのみこと）にて、土師部の氏神なり。鷲宮神社文書に「足利尊氏御代の時、土師山改鷲山と号す」と。享保十年鷲宮神主大内半左衛門土師朝臣国久と見ゆ。細萱条参照。

四　岩付の土師氏　岩槻宿宮町久伊豆社伝に「欽明天皇の御宇、土師氏・武蔵国埼玉郡岩槻に社頭を建立す」とあり。

五　下総国の土師部　養老五年葛飾郡大島郷戸籍（正倉院文書）に「戸主孔王部志漏の母土師部刀自売」あり。大島郷は杉戸町・鷲宮町付近なり。アナホベ条参照。

橋　ハシ　土師の佳字なり。各市町村に存す。

端　ハシ　土師の佳字なり。越谷に存す。

櫨　ハジ　土師の佳字なり。昭和三年興信録に「忍町・櫨常吉・所得税百四十七円・営業税百二十六円」あり。二戸現存す。

波紫　ハシ　土師の佳字なり。和光に存す。岩手県岩手郡葛巻町九戸あり。

波治　ハジ　土師の佳字なり。越谷、所沢、三芳等に存す。

橋井　ハシイ　橋は二字の制度により橋井と書く。浦和、越谷、川越、鶴ヶ島、熊谷、小川、寄居等に存す。鳥取県西伯郡淀江町七戸、大山町五戸、中山町十八戸あり。

一　寄居町　明治三十五年鍛冶屋橋井伊八あり。二戸現存す。

橋内　ハシウチ　大宮に存す。

橋浦　ハシウラ　浦和、大宮、川口、上尾、鴻巣、春日部、越谷、熊谷、寄居等に存す。宮城県桃生郡河南町二十三戸、名取市八十八戸あり。

波志江　ハシエ　群馬県伊勢崎市波志江より起る。白井長尾氏家臣にて、鎌倉黄梅院文書に「永享十二年十一月二十五日、武蔵守護代長尾景仲は、波志江掃部助・田中島修理亮をして、賀美郡石神村内桜堂在家（上里町）を円覚寺塔頭黄梅院に沙汰し付けしむ」。長享二年赤堀文書には上州橋江郷之内橋江掃部助跡と見ゆ。

走尾　ハシオ　草加に存す。

橋岡　ハシオカ　浦和、大宮、蕨、春日部、越谷、所沢等に存す。

葉鹿　ハジカ　橋下（はしもと）、土師下（はしもと）をハシカと読み葉鹿の佳字を用いる。常陸国東茨城郡上圷村字橋下部（はしかべ）、真壁郡宮山村字橋本、字橋下（はしくだり）あり、土師集団の橋本族居住地なり。下（もと）は浦の意味で海洋民なり。下野国足利郡葉鹿村（足利市）は大宝三年藤原宮出土木簡に下毛野国足利郡波自可里あり、土師下（はじか）にて和名抄の足利郡土師郷に比定す。豊島郡上渋谷村（東京都渋谷区）条に「土師家天満宮あり、菅神の本姓をもて冠し唱うるなるべきに、今誤てハシカの義と思い、麻疹の病を祈るもの多し」と。榛沢郡末野村（寄居町）条に「元亀四年三月五日、葉鹿郷料所分林以下、不可切取之、云々」。末野は陶（須恵）野にて、土師器製作の末野窯跡あり。

橋階　ハシガイ　浦和、大宮に存す。岩手県西磐井郡平泉町二十三戸あり。

橋ヶ迫　ハシガサコ　蕨に存す。島根県浜田市五戸あり。

箸方　ハシカタ　寄居に存す。

初鹿野ハジカノ　足利郡葉鹿村は初鹿とも書く、土師鹿ノに同じ。大宮、川口、新座、春日部、所沢、富士見等に存す。山梨市十五戸あり。

橋壁　ハシカベ　春日部、草加に存す。

橋上　ハシガミ　幡羅郡妻沼村聖天旧記に「文禄三年、女沼郷古百姓橋上宮内太郎兵衛・橋上修理五郎兵衛。寛永二十一年、名主年寄橋上太郎兵衛。延宝二年、禰宜橋上太郎兵衛。文化二年、禰宜橋上山城」。若宮八幡社（大我井神社）延享五年碑に当村若宮橋上五郎兵衛英勝・社主橋上茂右衛門。聖天宮嘉永七年百番供養塔に東岡・橋上五郎平。武蔵志に「妻沼村白髪神社、禰宜四人、高山氏、田島氏、橋上氏、堀越氏、別当歓喜院支配なり」と。私塾師匠叶院修験橋上乗雲・号子来・安政二年没六十一歳、修験橋上良助・明治三十七年没八十七歳、神官橋上福高・大正八年没八十一歳。明治元年聖天宮禰宜橋上宮内。明治三十五年菓子穀商入屋橋上清太郎・穀肥料商橋上定次郎。昭和三年興信録に「妻沼町・橋上喜助・所得税十二円・営業税二十一円」あり。十三戸現存す。

階上　ハシガミ　所沢、飯能等に存す。青森県八戸市十七戸あり。

橋ヶ谷　ハシガヤ　浦和、上福岡に存す。

橋川　ハシカワ　川口、大宮、蕨、朝霞、富士見、吉川等に存す。福島県南会津郡只見町八戸あり。

橋木　ハシキ　蕨に存す。

橋北　ハシキタ　入間郡葛貫村（毛呂山町）に此氏の旧家あり。七戸現存す。

橋口　ハシグチ　各市町村に存す。

橋倉　ハシクラ　秩父郡下吉田村字橋倉は、金剛院文書に橋倉村と見ゆ。同郡大野村字橋倉あり。上尾、新座、岩槻、越谷、草加、川越等に存す。

枦込　ハジコメ　久喜に存す。

橋坂　ハシザカ　上尾、戸田等に存す。島根県邇摩郡仁摩町十一戸あり。

端坂　ハシザカ　浦和に存す。岩手県岩手郡葛巻町九戸あり。

橋崎　ハシザキ　鳥取市十二戸あり。

一　新座郡膝折村（朝霞市）　溝沼村泉蔵寺明治四十四年馬頭尊に膝折・橋崎政吉・橋崎丑五郎あり。三戸存す。

端崎　ハシザキ　浦和、大宮等に存す。

橋迫　ハシサコ　戸田、三郷等に存す。

橋沢　ハシサワ　春日部、川越に存す。

橋澤　ハシサワ　川口、和光、入間、狭山、所沢等に存す。

橋下　ハシシタ　春日部、羽生に存す。

橋芝　ハシシバ　埼玉郡旗井村（大利根町）旗井神社日露戦役碑に橋芝藤太郎あり。現存無し。

橋島　ハシジマ　志木、川越等に存す。

橋尻　ハシジリ　大宮に存す。岩手県岩手郡葛巻町五戸あり。

橋都　ハシズ　日高に存す。ハシツ参照。

橋住　ハシズミ　杉戸に存す。

橋爪　ハシズメ　浦和、春日部、所沢等に存す。ハシヅメ参照。

橋添　ハシゾエ　大宮、岩槻、久喜、狭山等に存す。

橋園　ハシゾノ　東松山に存す。

橋田　ハシダ　入間郡豊田本村字橋田。

一　忍城士の橋田氏　成田分限帳に「四十貫文・橋田市郎左衛門、十貫五百文・橋田惣蔵」あり。

二　川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に橋田新蔵あり。市内に二戸存す。

三　大里郡万吉村（熊谷市）　観音堂文化九年湯殿山碑に橋田弥右衛門あり。現存無し。

外立　ハシダテ　浦和、志木、新座、草加、宮代等に存す。新潟県東頸城郡安塚町二十二戸あり。

槁立　ハシダテ　北本、春日部に存す。

橋立　ハシダテ　秩父郡上影森村字橋立あり。各市町村に存す。新潟県西頸城郡能生町七十六戸あり。

一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　安政四年秩父郡三沢村太幡文書に「秩父代官所橋立庄之進」あり。

架谷　ハシタニ　小川に存す。

橋谷　ハシタニ　浦和、新座、草加、鷲宮、川越、富士見等に存す。鳥取県日野郡溝口町十六戸、東伯郡東伯町十二戸、米子市十三戸あり。

橋都　ハシツ　新座に存す。長野県下伊那郡高森町二十四戸あり。

橋塚　ハシヅカ　風土記稿秩父郡大宮郷条に「妙見社の社人橋塚淡路」。秩父神社日鑑に寛政九年・宮本社人橋塚伊勢と見ゆ。明治三年橋塚嘉兵衛・田畑一町一反歩所有。国神神社明治三十四年碑に大宮町橋塚嘉平。昭和三年興信録に「秩父町・橋塚惣八・所得税十二円・営業税十六円」あり。五戸現存す。

橋爪　ハシヅメ　埼玉郡江面村字橋爪、比企郡上小見野村字橋爪、秩父郡金沢村字橋爪あり。○群馬県吾妻郡吾妻町六十六戸、東村二十五戸、嬬恋村十五戸、群馬郡榛名町二十一戸、箕郷町十五戸、多野郡吉井町十六戸、高崎市四十五戸、前橋市五十戸。○山梨県塩山市四十七戸。○長野県伊那市百八十六戸、飯田市百二十八戸。○新潟県中頸城郡吉川町二十三戸、柏崎市三十戸あり。

一　忍城士の橋爪氏　関八州古戦録に「天正十八年忍城攻めの時、小金井善忠が郎等橋爪孫兵衛は下忍口を守る」。成田記に「小金井勢の橋詰孫兵衛」と見ゆ。小金井条参照。

二　鉢形城士の橋爪氏　小鹿野町吉田系図に「軍役書上、御扶持方衆、百五十目七人ふち・橋爪兵部」あり。上野国出身なり。

三　足立郡飯田村（大宮市）　足立神社明治初期水家碑に飯田・橋爪広吉あり。一戸現存す。

四　入間郡所沢町　昭和三年興信録に「所沢町・橋爪子之四郎・所得税十九円・営業税五十三円」あり。

五　高麗郡鯨井村（川越市）　八坂社明治三十年碑に鯨井橋爪広吉あり。九戸現存す。

六　比企郡福田村（滑川町）　明治九年議定書に地蔵院住職橋爪蚊竜あり。現存無し。

七　児玉郡本庄町　明治三十五年漆師橋爪間右衛門あり。

八　賀美郡七本木村（上里町）　当村に此氏多く存す。本庄宿石川剣道場門下生に寛政四年・賀美郡三間村橋爪角蔵・橋爪菊蔵・橋爪与吉。当村寛政八年碑に橋爪与吉・橋爪久松、寛政十二年碑に橋爪吉蔵。法泉寺文政十一年普門品に橋爪幸蔵・橋爪角蔵・橋爪幸八.。石川流木村源蔵（天保十年没）門人に七本木村三間新田・橋爪弥四郎・橋爪国五郎。字三軒の橋爪家墓碑に「畠山重忠の裔。万治年間、徳太夫・橋爪を姓とす。宝永年間に初代文左衛門此の地に住居を構う。当家五代国五郎文政九年生れ、奥山念流伝来となり、小源次嗣ぐ」とあり。平姓畠山氏後裔と称し、源姓を称するは不可解なり。此氏は万治年間以前よりの土着者なり。橋爪喜太夫の婿養子奥山念流橋爪国五郎源章成・明治四十三年没。上州立石村金毘羅宮安政五年算額に武州賀美郡四津谷村橋爪九重郎由野。明治四年牧西村森文書に七本木村名主橋爪半平。明治九年戸長橋爪半平・文政十一年生、副戸長橋爪甚三郎・安政三年生。西富田村宥宝寺明治十二年玉垣碑に七本木村橋爪甚三郎。明治十九年総代人橋爪力太郎。明治二十一年皇国武術英名録に奥山念流剣・橋爪伊三郎・橋爪新蔵・橋爪吉太郎・橋爪喜太郎・橋爪増太郎。昭和三年興信録・所得税に「七本木村・橋爪甚平・三十二円、橋爪良平・三十一円」あり。

橋詰　ハシヅメ　比企郡腰越村字橋詰、秩父郡河原沢村字橋詰あり。各市町村に存す。○群馬県吾妻郡嬬恋村二十六戸。○茨城県稲敷郡新利根町十八戸。○長野県小県郡真田町十九戸、青木村二十戸、武石村五十九戸、北佐久郡立科町二十七戸、望月町二十三戸、上田市七十八戸。○新潟県中頸城郡板倉町十七戸あり。

橋出　ハシデ　草加に存す。

橋戸　ハシド　新座郡橋戸村（練馬区大泉町）。足立郡下青木村字橋戸（川口市）は古の村名にて、竜泉寺正徳三年庚申塔に下青木村橋戸と見ゆ。小名橋戸は、足立郡吉笹原村、宿篠場村、新堤村、石神村、柳崎村、堀崎村、谷津村、埼玉郡大竹村、柴山村、浮塚村、入間郡新堀村、青柳村、鹿ノ下村、比企郡古池村、瀬戸村等にあり。浦和、川口、上尾、越谷、幸手、鷲宮等に存す。山梨県中巨摩郡田富町九戸あり。

端戸　ハシド　川口に存す。

橋富　ハシトミ　朝霞、三芳等に存す。

半蔀　ハシトミ　越谷に存す。

橋中　ハシナカ　朝霞、和光等に存す。

橋長　ハシナガ　鴻巣、行田、吹上、妻沼等に存す。

橋永　ハシナガ　大宮に存す。

橋西　ハシニシ　三芳に存す。

橋野　ハシノ　各市町村に存す。秋田県鹿角市三十戸、島根県浜田市十三戸。

端野　ハシノ　蓮田に存す。

枦木　ハジノキ　鶴ヶ島に存す。

羽柴　ハシバ　各市町村に存す。○山形県寒河江市十三戸、東根市十八戸。○岩手県和賀郡湯田町十戸、九戸郡軽米町六戸あり。

一　松山城士の羽柴氏　紀州那智山米良文書に「応永十六年閏三月十五日、旦那武蔵国松山内本郷、羽柴名字日本国一円」と見ゆ。橋場氏なり。

橋場　ハシバ　土師を製作する土師場なり。小名橋場は、埼玉郡長野村、足立郡下生出塚村、柏座村、新座郡菅沢村、入間郡上安松村、上奥富村、浅羽村、毛呂本郷、南入曽村、北入曽村、中野村、高麗郡下直竹村、小久保村、横見郡丸貫村、比企郡大橋村、幡羅郡下奈良村、下増田村、榛沢郡荒川村、秩父郡久長村、白久村、金尾村等にあり。○群馬県新田郡笠懸町三十二戸。○長野県下伊那郡松川町三十戸。○秋田県鹿角市二十六戸。○岩手県下閉伊郡岩泉町十三戸、岩手郡葛巻町十六戸、九戸郡種市町十六戸、宮古市三十戸。○青森県上北郡十和田湖町十一戸、三戸郡階上町二十八戸、南郷村十八戸、十和田市二十四戸、八戸市四十八戸あり。

一　忍城士の橋場氏　成田分限帳に「三十貫文・橋場若狭、二十貫文・橋場勘九郎、十五貫文・橋場五郎兵衛」あり。別本に橋葉と見ゆ。

二　入間郡南田島村（川越市）　新河岸日枝社明治八年馬頭尊に南田島村橋場伝兵衛あり。現存無し。

三　高麗郡赤沢村（飯能市）　明治十三年山稼議定書に赤沢村橋場伝八あり。三戸現存す。

四　那賀郡木部村（美里町）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

五　上野国新田郡久宮村　笠懸町久宮は武州児玉郡久々宇村の人々が開発す。久宮村橋場太平（家紋丸に三ツ柏）は久々宇村より移住す。

橋端　ハシハタ　比企郡大橋村字橋端あり。朝霞、越谷等に存す。青森県上北郡十和田湖町七戸、三戸郡新郷村十一戸あり。ハシバとも称す。

櫨畑　ハジハタ　大宮に存す。

榛　ハシバミ　大和国箸喰庄（橿原市）は榛庄とも記す。榛沢郡藤沢村誌（深谷市）に「大谷村は藤田郷萱苅庄榛里と唱う」と見え、ハシバミの里と註す。是は榛沢郡に附会す。

橋原　ハシハラ　川口、伊奈等に存す。長野県塩尻市十九戸あり。

羽島　ハシマ　各市町村に存す。

一　比企郡玉川郷　春日社明治四十年碑に根際・羽島大次郎。昭和三年興信録に「玉川村・羽島太四郎・所得税十八円」あり。現存無し。

羽嶋　ハシマ　川口、入間等に存す。

橋間　ハシマ　高麗郡中山村字橋間（飯能市）は古の村名にて、智観寺安政七年筆子奉額に橋間と見ゆ。川口、越谷、鶴ヶ島等に存す。山形県寒河江市三十六戸あり。

橋見　ハシミ　大宮、蕨、新座、越谷、所沢に存す。山形県新庄市十戸あり。

橋満　ハシミツ　入間に存す。

橋向　ハシムコ　八潮、入間等に存す。

橋村　ハシムラ　各市町村に存す。

一　旗本五味備前守家臣　入間郡小谷田村東光寺延宝二年鐘銘に「小谷田郷領主旗本五味備前守豊直家臣、橋村清兵衛、橋村喜太郎」あり。

二　浦和町　明治三十五年医師橋村三圭。昭和三年興信録に「橋村達三・所得税百六十八円」あり。

三　蕨町　和楽備神社天保三年御神燈に橋村七五郎あり。現存無し。

四　川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に橋村十海（医師）。昭和三年興信録に「橋村聞太郎・所得税九十三円」あり。一戸現存す。

五　高麗郡白子村（飯能市）　長念寺安永二年碑に橋村惣左衛門あり。一戸現存す。

橋目　ハシメ　宮代に存す。島根県邇摩郡仁摩町二十二戸あり。

始沢　ハジメザワ　熊谷に存す。シザワ参照。

橋本　ハシモト　土師本の佳字なり。下（もと）は浦の意味で、土師集団海洋民の集落を橋本と称す。因幡国八上郡橋本村（鳥取県船岡町）は大江川流域にあり、土師族大江氏の居住地にて土師本村と称す。葉鹿、長谷条参照。東国で小名橋本の地名は、群馬県一村、栃木県十村、茨城県九十七村、千葉県二十四村、東京都一村、神奈川県一村、山梨県無し、長野県無し、福島県三十三村、宮城県十二村、岩手県五村、山形県五村、秋田県一村、青森県一村あり。此の集団は太平洋岸に多く土着し橋本の地名を称し、苗字は橋本氏以外の橋場・橋爪・橋戸、長谷川氏等を名乗る者もあり。埼玉県の小名橋本は、葛飾郡新川村、米崎村、埼玉郡上岩瀬村、入間郡藤沢村、小田谷村、高麗郡下直竹村、下赤工村、秩父郡皆谷村等にあり。此氏は武蔵国、常陸国に多く存す。○群馬県新田郡尾島町九十五戸、新田町七十五戸、邑楽郡邑楽町八十戸、大泉町四十五戸、千代田町六十戸、佐波郡境町七十戸、館林市百四十戸、太田市二百五十戸、桐生市百七十戸、高崎市百戸、前橋市二百三十戸。○栃木県那須郡西那須野町四十戸、小川町三十三戸、芳賀郡益子町三十八戸、下都賀郡大平町三十戸、壬生町八十戸、石橋町九十戸、小山市二百五十戸、鹿沼市百三十戸、大田原市百戸、足利市三百四十戸。○茨城県多賀郡十王町四十戸、那珂郡那珂町四十戸、東海村八十戸、西茨城郡友部町八十二戸、鹿島郡旭村三十戸、神栖町三十戸、波崎町四十五戸、行方郡潮来町六十五戸、玉造町三十七戸、新治郡玉里村三十五戸、稲敷郡阿見町七十五戸、猿島郡境町三十四戸、総和町四十戸、日立市百八十戸、鹿嶋市百十戸、ひたちなか市百五十戸、水戸市百五十戸。○千葉県山武郡成東町五十六戸、夷隅郡岬町四十戸、市原市百四十戸。○山梨県北都留郡上野原町三十五戸。○新潟県中蒲原郡亀田町三十戸。○福島県西白河郡表郷村三十三戸、岩瀬郡鏡石町六十九戸、長沼町三十戸、田村郡三春町四百四十戸、小野町五十七戸、大越町三十戸、船引町三百二十戸、安達郡本宮町百戸、白沢村五十五戸、須賀川市二百九十戸、二本松市百二十戸、いわき市三百八十戸、郡山市二千五百戸、福島市二百六十戸。○宮城県亘理郡亘理町三十戸。○岩手県東磐井郡藤沢町三十戸、紫波郡紫波町四十四戸。○山形県西置賜郡白鷹町七十三戸、山形市百三十戸。○秋田県仙北郡西木村五十三戸。○青森県上北郡百石町六十二戸、六ヶ所村百七十戸、下北郡川内町三十九戸、八戸市二百五十戸。○鳥取県（因幡国）岩美郡岩美町五十二戸、鳥取市百六十五戸あり。

一　河原党橋本氏　武蔵志に「河原氏古文書に云。治承四年三月、惣侍列位橋本八五郎、是は河原太郎家の武家法令也」と見ゆ。

二　大館氏の本名橋本氏　上野国新田郡大館村より起る新田源氏大館氏は本名橋本氏なり。幡羅郡間々田村青木文書に「深谷郷之内三十貫文之地可宛行之状仍如件、青木五郎左衛門殿、大館二郎殿、左中将義貞花押」。新田義貞執事船田氏よりの義貞安堵状には「青木刑部殿、橋本民部殿、舟田義昌花押」と見ゆ。大館二郎の本名は橋本氏なり。但し、深谷郷の地名は当時存在していない。此の文書は信用出来ず。深谷条参照。大館氏（本名橋本氏）は新田氏没落後に足利氏に仕へ、足利鑁阿寺文書に「文明九年五月二十六日、大沼郷之内橋本給分之事」と見ゆ。榛沢郡大沼村（深谷市）の領主なり。詳細は大館条参照。

三　小山衆橋本氏　下野国小山領榎本城主近藤綱秀家臣にて、橋本文書（小山市立博物館所蔵）に「天正十一年二月八日、中里郷十貫文之地出し置候、委細遠藤に申すべし候、橋本勘解由左衛門殿、綱秀花押」あり。寒河郡中里村（小山市）か。

四　岩附城士の橋本氏　入間郡金子郷金子文書（宇部市金子豊所蔵）に「金子越中六郎左衛門尉平忠親次男橋本治部左衛門尉正時儀、継橋本家正時」。「北条家は、橋本治部左衛門尉に岩付への参陣を命ず」と見ゆ。入間郡藤沢村の橋本氏か。

五　忍城士の橋本氏　関八州古戦録に「成田氏長の舎弟左衛門次郎泰高より橋本加右衛門と云被官を使者とす」。成田分限帳に「十三貫文・橋本助之進、十貫五百文・橋本内蔵、七貫文・橋本半平」あり。妻沼町史に橋本内蔵は妻沼村の人なりと。

六　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国美濃生国加賀・橋本与左衛門・三十五歳」あり。

七　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御馬廻・十石三人扶持・橋本久太夫、御料理人・七両三人扶持・橋本猪野右衛門」あり。

八　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十九俵二人扶持・橋本直江、十八俵二人扶持・橋本升也、十七俵二人扶持・橋本八十八、十五俵二人扶持・橋本倉太郎、同高・橋本富次郎、十二俵二人扶持・橋本喜十郎、五両余二人扶持・橋本善一郎」あり。

九　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・百石・村上取立・橋本深美」あり。

一〇　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御絵師・十二人扶持・亡父晴園・橋本勝園・三十四歳」あり。晴園養邦の子勝園雅邦は近代日本画の開拓者にて名高し、明治四十一年没す。

一一　忍藩阿部氏家臣　小沢文書に「橋本六左衛門、天正年中に三河国より御共仕候、慶長十五年江戸より引越候、関所番となる」。慶安年中忍藩分限帳に「御馬廻・百五十石・橋本喜兵衛、川俣定番・二十俵二人扶持・橋本六左衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「川俣定番・二十俵二人扶持・橋本六左衛門」。上新郷条に「御関所あり、今橋本六左衛門等と云ふ者土着して事を司れり。是は忍御番城の頃より土着せる関守なれど、寛永十六年阿部豊後守忠秋・忍城を賜はりしより同人預かりの番士となり、後阿部氏の家人となれり」あり。次項参照。

一二　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御馬廻・十人扶持・橋本専次兵衛、川俣関所定番・二十俵二人扶持・橋本六左衛門、御徒・十石二人扶持・橋本新七、武器預り支配・三両二人扶持・橋本熊太郎、同役・五石二人扶持・橋本円平、錠口番・同高・橋本半左衛門、下役・四石余二人扶持・橋本久右衛門、勘定頭支配・二両余二人扶持・橋本専七」。明治四年忍藩士族名簿に「六石四人扶持・橋本重平、同高・橋本茂隆、又者（川俣関所詰）・六石二人扶持・橋本六左衛門、五石二人扶持・橋本龍太郎、同高・橋本長之助、四石二人扶持・橋本亀三、四両二人扶持・橋本喜代太、二両余二人扶持・橋本常太郎」。上新郷白山社安政七年庚申塔に橋本六左衛門、明治十九年御神燈に橋本賢策あり。

一三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「四十俵・橋本長兵衛」あり。

一四　岡部藩安部氏家臣　明治三年岡部藩分限帳に「御中小姓格・七石二人扶持・橋本胖三郎」あり。

一五　関東郡代伊奈氏家臣　天保年間伊奈役所惣人数に「中御徒町・橋本鎌次郎」あり。

一六　葛飾郡長戸呂村（三郷市）　円福寺正徳二年庚申塔に橋本佐兵衛あり。現存無し。

一七　同郡一本木村（三郷市）　信州善光寺本堂北嘉永六年常夜燈に葛飾郡二郷半領一本木村橋本粂太郎あり。五戸現存す。

一八　同郡番匠免村（三郷市）　明治三十年人名録に橋本市五郎・嘉永元年生・地租五十円あり。八戸現存す。

一九　同郡上彦名村（三郷市）　彦倉村延命院宝暦九年勧進帳に上彦名村橋本伊右衛門あり。三戸現存す。

二〇　同郡芦橋村（庄和町）　香取社文化十二年庚申塔に橋本為五郎・橋本岩右衛門、文政九年庚申塔に橋本政右衛門・橋本俊之助・橋本茂八.。明治九年戸長橋本為一郎・天保十三年生。椿村文珠堂明治十五年筆子碑に芦橋村橋本政右衛門。幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に芦橋・橋本為一郎あり。六戸現存す。

二一　同郡倉常村（庄和町）　大塚村宝暦七年地蔵尊に橋本与七・橋本市□衛門。愛宕社寛政六年庚申塔に橋本忠左衛門、文化十年庚申塔に橋本清次郎、文政六年庚申塔に橋本要右衛門。明治三十年人名録に橋本伊惣次・嘉永四年生・地租三十三円あり。一戸現存す。

二二　同郡西金野井村（庄和町）　藤塚村香取社江戸末期御神燈に西金野井村橋本太右衛門。当村香取社文久三年水鉢に橋本多右衛門、明治二十一年御神燈に橋本福次郎、明治三十年寄附碑に橋本清太郎あり。七戸現存す。

二三　同郡八丁目村（春日部市）　上州榛名神社文化十一年御神燈に武州幸手八丁目橋本喜右衛門。香取社文政十年御神燈に橋本喜右衛門、明治三年碑に橋本定五郎、明治二十三年碑に橋本喜右衛門あり。五戸現存す。

二四　同郡清地村（杉戸町）　近津神社明治十六年御神燈に橋本惣右衛門あり。

二五　同郡幸手町　明治三十五年塩魚商橋本源太郎・筆墨小間物商橋本龍次郎・菓子商橋本竹次郎。幸宮神社明治四十二年碑に橋本仙之助あり。

二六　同郡外国府間村（幸手市）　雷電宮安永八年廻国塔に当村橋本伝兵衛、明治三十二年碑に橋本藤次郎、明治三十九年碑に橋本新蔵、明治四十二年碑に橋本徳次郎あり。五戸現存す。

二七　同郡惣新田村（幸手市）　観音院寛政四年庚申塔に高須賀邑橋本市兵衛あり。一戸現存す。

二八　同郡栗橋宿　明治九年副戸長橋本又平・文政元年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に栗橋宿橋本又平。明治三十年人名録に栗橋町長橋本栄・安政四年生、材木商橋本善助。明治三十五年荒物商橋本利助・材木商橋本久次郎・産科医師橋本補橘・呉服商橋本倉次郎・橋本権兵衛。大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に橋本久次郎・明治二十一年生・国税九百八十二円・県下百九十五位あり。

二九　同郡高柳村（栗橋町）　当村に此氏多く存す。香取社前享保六年庚申塔に橋本平□。大日堂文化六年供養塔に高柳村原・橋本藤右衛門。宝聚寺文政十年供養塔に橋本小野右衛門・橋本彦八・橋本甚左衛門・橋本仁左衛門・橋本重左衛門・橋本市右衛門・橋本佐五右衛門。香取社嘉永四年狛犬に橋本八右衛門・橋本新七・橋本伝左衛門・橋本彦八郎・橋本喜内、明治十四年幟碑に橋本弥蔵・橋本和三郎・橋本寅蔵・橋本彦太郎・橋本当三郎・橋本長次郎・橋本八五郎・橋本忠次郎・橋本清次郎・橋本松五郎・橋本多蔵・橋本五郎次。明治九年戸長橋本監三・文政八年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に高柳村橋本監三.。明治三十年人名録に藍玉製造業橋本和三郎・嘉永二年生・地租二十三円。八幡社明治三十九年碑に高柳新田村橋本彦太郎・橋本岩吉。上州榛名神社大正四年御神燈に葛飾郡高柳村島耕地橋本和三郎あり。

三〇　同郡佐間村（栗橋町）　定福院寛延三年供養塔に橋本九五.。八幡社嘉永三年狛犬に橋本文右衛門、安政二年御神燈に□田村橋本伴右衛門、明治十六年伊勢講碑に橋本藤助あり。新田村か。三戸現存す。

三一　同郡松永村（栗橋町）　宝蔵院正徳四年庚申塔に橋本仁右衛門。松永神社文化七年狛犬に橋本吉左衛門・橋本仙右衛門・橋本藤治郎。明治三十年人名録に藍玉製造業橋本重次郎・天保元年生・地租四十一円あり。十戸現存す。

三二　同郡東大輪村（鷲宮町）　当村は新田村と称す。鷲宮村霊樹寺文書に「宝暦十二年より八甫村杉野清右衛門地は新田橋本甚右衛門取添五反九畝十八歩」。西大輪村雷電社文久三年狛犬に下新田村橋本又五郎あり。四戸現存す。

三三　埼玉郡古新田（八潮市）　稲荷社明治十八年絵馬に橋本べん・橋本集太郎・橋本長吉あり。一戸現存す。

三四　同郡越ヶ谷宿　天嶽寺慶安四年庚申塔に橋本佐右衛門あり。

三五　同郡大沢町（越谷市）　明治三十五年薪炭商橋本松之進あり。

三六　同郡瓦曽根村（越谷市）　稲荷社文化元年水鉢に橋本甚蔵あり。四戸現存す。

三七　同郡西新井村（越谷市）　笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に西新井村橋本三右衛門あり。現存無し。

三八　同郡岩槻町　加倉村浄国寺元禄九年庚申塔に市宿町橋本与兵衛。秋葉社天保三年狛犬に渋江橋本重次郎。大龍寺安政五年鐘銘に久保宿橋本源治郎あり。

三九　同郡横根村（岩槻市）　笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に横根村橋本半兵衛・橋本宇左衛門。荻島村五所神社明治九年浅間碑に横根村橋本永藤。明治三十年人名録に橋本宇八・慶応元年生あり。四戸現存す。

四〇　同郡笹久保村（岩槻市）　地蔵院嘉永四年供養塔に当村橋本万蔵あり。三戸現存す。

四一　同郡笹久保新田村（岩槻市）　地蔵堂貞享四年供養塔に笹窪新田村橋本五右衛門。多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に岩槻領笹久保新田橋本惣右衛門。笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に笹久保新田橋本惣右衛門。天満宮文久三年幟碑に橋本米吉。明治四年宗門改帳に「○橋本三右衛門・四十八歳、倅惣太郎・二十二歳。○橋本定次郎・四十二歳、倅米吉・十八歳、定次郎甥金之助・十七歳」あり。三戸現存す。

四二　同郡鈎上村（岩槻市）　神明社安永二年御神燈に橋本勘十郎、元治元年碑に当村橋本甚右衛門・橋本茂吉。玉泉寺元治元年庚申塔に橋本常五郎・橋本伊吉・橋本幸次郎・橋本粂蔵・橋本金平。明治三十年人名録に橋本勝五郎・安政六年生、橋本卯之助・天保十四年生あり。八戸現存す。

四三　同郡鹿室村（岩槻市）　白山社慶応元年天神碑に橋本辰五郎あり。六戸現存す。

四四　同郡表慈恩寺村（岩槻市）　慈恩寺村慈恩寺元禄九年阿弥陀如来に表村橋本利兵衛、弘化四年水鉢に表村橋本辰五郎・橋本岩次郎・橋本太平次。諏訪社天保五年水鉢に橋本杉右衛門・橋本富士松・橋本長右衛門・橋本半兵衛あり。三戸現存す。

四五　同郡大戸村（岩槻市）　増長村観秀院安政二年供養塔に大戸村橋本文平あり。現存無し。

四六　同郡真福寺村（岩槻市）　真福寺文政二年庚申塔に橋本吉兵衛あり。現存無し。

四七　同郡孫重郎村（岩槻市）　笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に孫重郎村橋本宇右衛門あり。現存無し。

四八　同郡粕壁町　春日部八幡社天保十三年御神燈に橋本吉兵衛。東八幡社明治三十四年碑に橋本武治。明治三十五年米穀商橋本又蔵・饅頭屋橋本徳三郎あり。

四九　同郡蓮田村（蓮田市）　明治八年騎西町釜屋文書に蓮田村酒造業橋本千太郎。明治三十年人名録に橋本啓之助あり。五戸現存す。

五〇　同郡彦兵衛新田（白岡町）　爪田ヶ谷村諏訪社天保十五年狛犬に彦兵衛新田橋本文六あり。四戸現存す。

五一　同郡実ヶ谷村（白岡町）　円通院明和四年地蔵尊に橋本七右衛門あり。現存無し。

五二　同郡久喜町　明治四年久喜新町五人組帳に橋本たい・橋本ゆう・橋本伊左衛門。明治三十五年米穀商橋本八右衛門・篩職橋本伊左衛門・篩職橋本慶次郎あり。

五三　同郡六万部村（久喜市）　清久村郷土誌に「観音堂は六万部と称す、寺は南北朝時代迄存せしがついに焼失せり。今なを当時の古石を発掘せらる。観音堂は現今橋本某の所有にして、いつの頃にか納めし額に、お経塚・村の名に呼ぶ六万部、今読みわたす橋本の堂とあり。橋本家は旧家にして、あるいは六万部の住職の子孫ならんかと思われる」と見ゆ。香最寺享保二十年庚申塔に橋本幸左衛門。明治九年副戸長橋本弁蔵・天保十年生。菖蒲町菖蒲神社明治十年神道無念流奉納額に橋本弁蔵・橋本荘次郎。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流六万部村橋本岩五郎あり。十三戸現存す。

五四　同郡台村（菖蒲町）　明治六年富士講着到帳に埼玉郡台村橋本甚次郎あり。四戸現存す。

五五　同郡戸室村（騎西町）　明治九年副戸長橋本歌五郎・文政十一年生。諏訪社明治十四年富士嶽碑に橋本保太郎あり。二戸現存す。

五六　同郡中種足村（騎西町）　明治二十一年皇国武術英名録に北辰一刀流中種足村橋本熊五郎あり。一戸現存す。

五七　同郡下崎村（騎西町）　八幡社宝暦十一年弁財天碑に橋本伊左衛門・橋本米蔵、明和三年碑に下崎村下分橋本治□□あり。七戸現存す。

五八　同郡不動岡町（加須市）　明治三十五年医師橋本浦次あり。

五九　同郡小浜村（加須市）　北小浜村地蔵院元禄八年百番観音に施主小浜村橋本市兵衛。多門寺村文化四年供養塔に小浜村橋本善右衛門。北小浜村八幡社文政六年狛犬に橋本嘉兵衛。加須町光明寺慶応二年筆子碑に小浜村橋本嘉兵衛。明治九年南小浜村副戸長橋本弥三郎・嘉永五年生。多門寺村愛宕社明治十三年算額に小浜村橋本弥三郎光吉あり。北小浜村に二戸現存す。

六〇　同郡三俣村（加須市）　諏訪社文化四年水鉢に本村橋本定右衛門・七釜戸橋本喜左衛門、天保三年狛犬に岩瀬・橋本重治郎・橋本勘助・橋本忠右衛門、学頭・橋本増太郎・橋本忠蔵。龍蔵寺文化九年巡拝塔に当村学頭耕地橋本利八.。正能村諏訪社嘉永五年富士講碑に三ツ俣村橋本彦助・橋本惣蔵。菊地家筆子控に「文久二年、当村青蓮島蔵倅橋本卯吉、同人倅橋本幸五郎。文久三年、当所宗蔵倅橋本倉之助。元治二年、当村正蓮長八倅橋本多次郎・林吉と改め。明治二年、当村学頭宗蔵二男橋本忠八.。明治三年、当村分地升右衛門継子橋本増之助」。明治四年上三ツ俣村紺屋橋本銀蔵。明治五年持高二十二石余・保長橋本喜左衛門・二十九歳。明治九年下三ツ俣村副戸長橋本喜左衛門・弘化元年生。諏訪社明治二十一年伊勢講碑に橋本喜左衛門・橋本倉之助・橋本長八・橋本吉兵衛。明治三十五年料理店橋本たの・桶職橋本常太郎あり。

六一　同郡多門寺村（加須市）　愛宕社天保三年狛犬に橋本藤左衛門、嘉永二年伊勢講碑に橋本藤次郎・橋本亀吉、安政四年伊勢講碑に橋本仙吉・橋本藤八・橋本金右衛門。観音寺嘉永三年供養塔に橋本藤左衛門・橋本亀吉あり。六戸現存す。

六二　同郡北篠崎村（加須市）　医王寺元文元年廻国塔に橋本龍兵衛。当村文化二年庚申塔橋本太金次。熊野社天保十五年狛犬に橋本忠太郎・橋本武平太・橋本金右衛門、文久四年御神燈に橋本石太郎・橋本金右衛門・橋本忠太郎。明治九年副戸長橋本伊之助・嘉永二年生あり。六戸現存す。

六三　同郡大越村（加須市）　徳性寺文政九年常夜燈に橋本直右衛門・橋本八右衛門。明治九年副戸長橋本金助・天保七年生。鷲尾神社明治十八年敷石碑に橋本重蔵。明治二十二年医師橋本弘あり。六戸現存す。

六四　同郡鷲宮村　字下新井稲荷社天保十年碑に橋本正右衛門。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流鷲宮村橋本吉之丞・橋本吉蔵あり。五戸現存す。

六五　同郡中妻村（鷲宮町）　大光寺明和三年鐘銘に中妻邑橋本新五郎あり。三戸現存す。

六六　同郡中渡村（大利根町）　稲荷社享保十六年供養塔に橋本伝八・橋本□太郎、文政四年供養塔に橋本市郎兵衛。北大桑村円満寺明治十三年絵馬に中渡村橋本三之助あり。三戸現存す。

六七　同郡北大桑村（大利根町）　宝蔵寺寛政元年庚申塔に橋本定右衛門あり。現存無し。

六八　同郡新川通村（大利根町）　当村に此氏の旧家あり。十二戸現存す。

六九　同郡阿佐間村（大利根町）　八幡社天保八年御神燈に橋本三平あり。現存無し。

七〇　同郡琴寄村（大利根町）　横沼神社明治二十年狛犬に橋本忠左衛門・橋本石太郎あり。一戸現存す。

七一　同郡中新井村（大利根町）　栗橋宿八坂社文化元年供養塔に川辺領中新井村橋本治右衛門。旗井神社日露戦役碑に橋本信吉あり。九戸存す。

七二　同郡新井新田村（大利根町）　八幡社延享三年供養塔に橋本太右衛門、宝暦十一年供養塔に橋本彦八、寛政六年供養塔に橋本権左衛門、嘉永七年庚申塔に橋本兵右衛門・橋本金右衛門・橋本倉蔵、明治三十一年碑に橋本鷹之丞・橋本国吉あり。現存無し。

七三　同郡柏戸村（北川辺町）　下柏戸村享保四年庚申塔に橋本清右衛門。明治九年戸長橋本要之助・天保六年生あり。七戸現存す。

七四　同郡柳生村（北川辺町）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

七五　同郡羽生町　毘沙門堂宝暦七年常夜燈に杉下組橋本七兵衛、天保十一年石華表碑に杉之下組橋本伊助。下村君村永明寺文久二年仙元碑に上羽生村橋本伊兵衛。明治五年上羽生村傘張橋本新蔵あり。

七六　同郡上村君村（羽生市）　大日堂文化七年文字塔に上村君邑橋本作右衛門。避来矢神社嘉永四年御神燈に上堤根組中・橋本新兵衛あり。一戸現存す。

七七　同郡稲子村（羽生市）　尾崎村遍照院正徳三年地蔵尊に稲子村橋本市五郎あり。現存無し。

七八　同郡常木村（羽生市）　常木神社宝暦十二年水鉢に橋本郷右衛門。下村君村成就院寛政五年棟札に「成就院現住諦仙尚盛・行年三十七歳、俗姓常木村橋本源右衛門子佐平弟」あり。六戸現存す。

七九　同郡下新田村（羽生市）　明治二十一年皇国武州英名録に「神道無念流北埼玉郡下新田村橋本友八郎。我が橋本家は、大納言西園寺公宗の弟俊季・橋本家を嗣ぎ、後醍醐天皇に仕ふ、のち新田義貞に従ひ義貞戦死後、上州新田に居住し伝ふる事十六代後俊季の彦孫伴右衛門武貞・永禄十一年の頃当下新田に土着し、その子要右衛門宗貞、その子作右衛門貞宗、その子宗武に至り岡田十松の門人と成る」と見ゆ。羽黒社天保七年石華表碑に橋本伴右衛門・橋元忠蔵、明治十一年水鉢に橋本友八.。真名板村薬師堂明治十年水鉢に下新田橋本友八あり。現存無し。○太平記巻十三に「西園寺大納言公宗卿、橋本中将俊季。御弟俊季朝臣は、いづちともなく落ちたまひにけり」と見ゆ。西園寺公爵、その一族橋本伯爵両家の家紋は三ツ巴なり。新田郡大館村の新田氏族大館氏の本名橋本氏は丸に三柏を用いる。是等の橋本氏とは無関係なり。二項参照。

八〇　同郡行田町　佐間村天神社天保六年御神燈に行田町橋本喜助。加納村天神社嘉永二年御神燈に行田町橋本茂十郎。行田史譚に「嘉永年中、行田町格式御免橋本茂十郎、格式御免橋本槌三郎、頭立同格橋本茂七」。嘉永六年忍藩分限帳に「五人扶持・町年寄役橋本茂十郎」。棚田神社江戸末期台石碑に忍橋本円平。明治十八年最上農名簿に橋本喜助・安政六年生・耕宅地二十町歩・山林二町三反歩所有。喜助は明治二十五年に手ミシン裁断機を導入し、行田足袋の開拓者となる。明治三十五年足袋製造荒物商橋本喜助・荒物商橋本茂七・同橋本甚五郎・同橋本新八・菓子商橋本源次・綿商橋本新太郎・同橋本末吉・橋本与吉。大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に橋本喜助・明治二十二年生・国税七千六百七十九円・県下七位あり。

八一　同郡荒木村（行田市）　天満宮文政三年塞神碑に橋本与七あり。二戸現存す。

八二　同郡持田村（行田市）　剣神社明治二十五年御神燈に橋本保之助あり。六戸現存す。

八三　同郡小敷田村（行田市）　持田村観音寺嘉永七年敷石供養塔に小敷田村橋本国平あり。現存無し。

八四　同郡下忍村（吹上町）　千手院天保三年宝篋印塔に橋本勇八妻あり。三戸現存す。

八五　同郡袋村（吹上町）　袋神社宝永五年御神燈に橋本五左衛門、寛政九年宇賀神碑に橋本伝右衛門・橋本惣治右衛門。三ツ木村輪光院天保五年馬頭尊に袋村橋本堂済あり。八戸現存す。

八六　同郡下川上村（熊谷市）　当村嘉永六年御嶽碑に橋本平五郎・橋本助八・橋本七太郎。池上村古宮神社明治四年算額に下川上村橋本馬五郎近徃。今井村赤城社明治五年算額に下川上村橋本平□郎。明治九年副戸長橋本美名吉・嘉永五年生あり。六戸現存す。

八七　同郡上中条村（熊谷市）　江戸末期に組頭橋本三郎右衛門あり。二戸現存す。

八八　同郡平戸村（熊谷市）　豪商紀伊国屋文左衛門の番頭は当村出身の橋本長五郎なり。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北埼玉郡平戸邨橋本吉五郎あり。十五戸存す。

八九　同郡戸出村（熊谷市）　金錫寺嘉永六年鐘銘に当所橋本仙之助・橋本又五郎・橋本仙蔵・橋本佐四郎・橋本太郎次。神明社明治十三年富士嶽碑に橋本熊之助あり。四戸現存す。

九〇　同郡小曽根村（熊谷市）　熊谷町賢勝院明治十四年妙法講碑に小曽根村橋本清助あり。十六戸現存す。

九一　同郡上之村（熊谷市）　野原村文殊寺明治二年碑に上之村橋本藤八.。熊谷町賢勝院明治十四年妙法講碑に上之村橋本治兵衛あり。十五戸現存す。

九二　足立郡川口町　明治三十五年鋳物製造橋本儀八あり。

九三　同郡石神村（川口市）　御嶽社慶応元年碑に橋本権六あり。

九四　同郡木曽呂村（川口市）　阿弥陀堂弘化三年供養塔に橋本善治郎。

九五　同郡戸塚村（川口市）　七郷神社明治中期碑に橋本寅蔵あり。

九六　同郡蕨宿　和楽備神社天保三年御神燈に橋本平吉、万延二年御神燈に橋本平蔵。県会議員織物商橋本喜平・明治十三年生・塚越村出身あり。

九七　同郡大宮宿　天正二十年大宮之村検地帳に「橋本分・一町八畝歩」と見ゆ。苗字記載者は土豪なり。明治九年副戸長橋本九十郎、副戸長橋本八五郎。明治三十五年営業便覧に白米商橋本平次郎・石油商橋本伊与吉・青物商橋本八郎右衛門・同橋本金蔵・種物商橋本与兵衛・人形屋橋本角次郎・魚商橋本彦吉・石炭商橋本幸之助・機業橋本宗太郎・橋本かく・橋本熊次郎あり。

九八　同郡大成村（大宮市）　寛永九年検地帳に「隼人（橋本）・一町二反一畝歩」。普門院正徳四年地蔵尊に橋本孫兵衛。八幡社安永九年庚申塔に橋本喜左衛門・橋本幸助・橋本六兵衛あり。

九九　同郡中小村田村（大宮市）　薬師堂正徳三年供養塔に橋本佐兵衛・橋本源左衛門あり。

一〇〇　同郡側海斗村（大宮市）　天神社明治三十九年碑に橋本平次郎。

一〇一　同郡木下村（大宮市）　法光寺明和六年地蔵尊に当村橋本与平治・橋本治兵衛・橋本文左衛門・橋本源左衛門あり。

一〇二　同郡深作村（大宮市）　当村元禄五年碑に橋本徳兵衛・橋本甚左衛門、文化十三年庚申塔に橋本長蔵。氷川社嘉永五年水鉢に橋本石五郎。

一〇三　同郡大間木村（浦和市）　八丁稲荷社安永六年庚申塔に橋本幸助、天保二年幟碑に橋本庄八・橋本久蔵。下山口新田稲荷社天保年間御神燈に大間木新田橋本源治郎。三室村氷川女体社明治二十五年御神燈に大間木橋本金次郎。八丁稲荷社明治三十八年碑に橋本伊勢吉・橋本久蔵。大谷口村氷川社明治四十五年狛犬に大間木橋本富士五郎あり。

一〇四　同郡上尾宿　元和九年上尾宿村水帳に「屋敷二百六十四坪・橋本居、屋敷六百五十八坪・同人抱」と見ゆ。苗字記載者は土豪なり。倉田村明星院宝暦十二年文書に上尾宿世話人橋本伊右衛門。明治三十五年荒物商橋本善太郎・甘藷問屋橋本房吉。愛宕社明治四十四年碑に橋本善四郎・橋本善太郎・橋本勝蔵あり。

一〇五　同郡久保村（上尾市）　久米村天保十四平塚文書に足立郡下久保村橋本富士太郎あり。

一〇六　同郡沖ノ上村（上尾市）　浅間台三丁目元禄十年庚申塔に橋本伊兵衛あり。

一〇七　同郡壱丁目村（上尾市）　当村貞享四年庚申塔に橋本長左衛門母。戸崎村御嶽社明治七年御嶽碑に一丁目村橋本弁吉あり。

一〇八　同郡原市町（上尾市）　明治三十五年白米商橋本政吉あり。

一〇九　同郡小室村（伊奈町）　当村寛政六年碑に小室本村橋本藤兵衛。氷川社安政三年御神燈に本村橋本権右衛門・橋本金右衛門あり。

一一〇　同郡川田谷村（桶川市）　明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流川田谷村橋本信正。諏訪社明治三十九年幟碑に橋本実あり。

一一一　同郡鴻巣町　明治四年旅籠屋橋本権右衛門。上谷新田浅間社明治十六年碑に上谷村新田橋本勝太郎。

一一二　同郡原馬室村（鴻巣市）　原馬室郷獅子舞略縁起（藤井文書）に天正二年五月に山田右京亮・橋本市左衛門勘解由（藤井氏先祖）が神楽舞を伝へると。

一一三　同郡滝馬室村（鴻巣市）　氷川社明治三十九年碑に橋本卓二・橋本勘兵衛・橋本重三郎・橋本岩蔵あり。

一一四　同郡吹上村　吹上神社明治四十三年碑に橋本喜代作あり。

一一五　新座郡志木町　明治三十年市場組橋本茂助・紺屋橋本斧吉あり。

一一六　同郡大和田町（新座市）　明治三十五年魚商枡屋橋本亀蔵あり。一戸現存す。

一一七　同郡野火留宿村（新座市）　橋本朗文書に「覚有宗元信士・俗名橋本次郎右衛門・元禄十一年六月二日没、施主善次郎」。明治五年戸長橋本文次郎・文政十年生。明治四十四年東上鉄道株主に水車業橋本善吉・千三百十株所有あり。

一一八　同郡溝沼村（朝霞市）　当村に此氏多く存す。吹上観音堂嘉永二年庚申塔に溝沼村橋本丹次郎。新倉村明治初年富士講碑に溝沼・橋本増五郎・橋本幸次郎・橋本仙蔵・橋本勝五郎。氷川社明治三十九年碑に橋本米蔵・橋本源左衛門・橋本稲吉・橋本喜代治・橋本利右衛門・橋本徳次郎・橋本友吉・橋本伝五郎・橋本徳左衛門。泉蔵寺明治四十四年馬頭尊に溝沼・橋本茂八・橋本万五郎・橋本三次郎・橋本梅吉・橋本長平・橋本弥五郎あり。

一一九　同郡岡村（朝霞市）　明治九年副戸長橋本喜右衛門・天保三年生。氷川社明治四十一年碑に岡・橋本政之助あり。十戸現存す。

一二〇　入間郡宗岡村（志木市）　志木町敷島社明治五年浅間碑に宗岡橋本由五郎。選挙人名簿に橋本卯太郎・村税九円、橋本辰五郎・村税七円あり。十一戸現存す。

一二一　同郡竹間沢村（三芳町）　泉蔵院明治二十九年碑に橋本長次郎・橋本久米吉・橋本荘五郎あり。五戸現存す。

一二二　同郡鶴馬村（富士見市）　明治十五年共励社発起人橋本斐三郎。

一二三　同郡下南畑村（富士見市）　南畑村之沿革史に「下南畑村の橋本氏は馬場組に住し、相当旧家にして代々平三郎と称し、組頭及び百姓代を務む」。明治五年大工職橋本弥五右衛門あり。五戸現存す。

一二四　同郡南畑新田（富士見市）　南畑村之沿革史に「南畑新田の橋本氏は元文元年既に甚左衛門なる人有りければ、尚以前より同氏の居住せしこと明なり」。上宗岡村大仙寺文化十四年供養塔に十人野橋本長次郎あり。三戸現存す。

一二五　同郡所沢町　本郷村東福寺明治九年水鉢に所沢宿六番組橋本鉄五郎。明治三十五年染物業橋本三之丞あり。

一二六　同郡北野村（所沢市）　正徳四年北田文書に宮座々配・橋本六左衛門。明治三年議定書に小林領・橋本友吉・橋本庄平。天神社明治四十年碑に当所橋本重助あり。

一二七　同郡北野新田（所沢市）　吉祥院明和六年廻国塔に武蔵野新田橋本権左衛門あり。

一二八　同郡三ヶ島村（所沢市）　妙善院弘化二年地蔵尊に橋本平七.。糀谷村八幡社明治二十七年碑に三ヶ島村橋本忠蔵・橋本与七・橋本嘉吉・橋本峰吉。薬王寺明治四十二年碑に二番組橋本峰治郎・橋本珠三・橋本文平あり。

一二九　同郡入間川町（狭山市）　上奥富村梅宮神社前天保十二年敷石碑に田中村橋本久兵衛。明治二十五年地租額調に橋本代助・橋本喜代松・橋本久造・橋本亀吉・材木商橋本文次郎。明治三十五年青物商橋本与三郎・織物製造橋本彦助あり。

一三〇　同郡水野村（狭山市）　当村に此氏多く存す。出羽三山道中記に「文化三年、水野村橋本善兵衛。嘉永二年、水野村橋本清八」あり。

一三一　同郡南入曽村（狭山市）　当村に此氏多く存す。入間野神社文政五年水鉢に橋本与次右衛門・橋本彦右衛門。明治九年地租改正確定書に橋本利三郎・橋本平蔵・橋本平左衛門・橋本国五郎・橋本代次郎・橋本弥左衛門。入間野神社明治四十年碑に入間村橋本善平・橋本彦三郎・橋本勇次郎あり。

一三二　同郡扇町屋村（入間市）　明治三十五年鍛冶職橋本時次郎あり。

一三三　同郡善蔵新田（入間市）　明治二十二年埼玉勧業会員橋本要作。

一三四　同郡下藤沢村（入間市）　当村に此氏多く存す。延宝八年熊野社文書（沢田文書）に地頭朝比奈氏庄屋橋本七郎兵衛、地頭柴田氏庄屋橋本四郎右衛門。高倉村高倉寺観音堂元禄九年地蔵尊に藤沢村橋本八郎右衛門。比企郡大豆土村真光寺宝永四年寄進帳に武州山口領藤沢村橋本甚右衛門。享保十九年下藤沢村名主橋本伊右衛門・組頭橋本重左衛門。当村元文二年供養塔に橋本七郎左衛門。延享五年熊野社文書に氏子連署証文橋本市郎左衛門・橋本重兵衛。上藤沢村宝暦二年供養塔に藤沢村橋本六右衛門。当村宝暦七年馬頭尊に下藤沢村橋本三右衛門・橋本市郎左衛門・橋本長右衛門・橋本半兵衛、明和三年供養塔に橋本平六.。所沢村薬王寺寛政元年棟札に鍛冶屋藤沢村橋本平六.。金刀比羅社天保十一年水鉢に当所橋本郷四郎。天保十四年久米村平塚文書に藤沢村橋本儀平二.。明治三年沢田文書に名主橋本要右衛門。明治九年戸長橋本要作・天保十一年生。明治十五年北広堂碑名簿に橋本儀三郎。明治三十五年織物製造橋本定治・同橋本清蔵。熊野社明治三十九年碑に下藤沢橋本嘉作・橋本啓次。藤沢村会議員橋本政次郎・嘉永二年生あり。

一三五　同郡宮寺村（入間市）　南矢荻橋本家墓地元禄十五年薬師如来に宮寺村橋本八兵衛。明治十五年北広堂碑名簿に橋本岩三郎。明治十六年染物屋橋本八十吉・織物商橋本常右衛門・同橋本清次郎・宮寺村会議員橋本繁蔵あり。十六戸現存す。

一三六　同郡川越町　風土記稿松郷条に「六軒町は昔橋本勘解由と云人始てここに住す。その頃家数わずかに六軒ありしゆへにこの名起る」。御嶽社明治三十年碑に橋本清吉。氷川社明治三十三年玉垣碑に橋本勲・橋本米作（米穀商）。相州大山阿夫利神社佐藤大住家大正三年奉納額に川越境町講社橋本直造あり。

一三七　同郡古市場村（川越市）　古谷本郷八幡社明治十二年水鉢に古市場邨橋本三九郎。橋本銀行を創立し、県会議員を務む。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年醤油醸造業橋本三九郎・安政元年生・国税千九十七円・県下五十五位、大正十四年橋本三九郎・明治三年生・国税千二百五十八円・県下百三十七位あり。四戸現存す。

一三八　同郡古谷上村（川越市）　実相院文久三年敷石碑に橋本半造あり。三戸現存す。

一三九　同郡菅間村（川越市）　お堂文化七年庚申塔に中菅間村橋本半蔵あり。十戸現存す。

一四〇　同郡藤倉村（川越市）　明治二十二年埼玉勧業会員橋本周三.。天神社明治四十一年碑に橋本清三郎・橋本真平・橋本正平あり。三戸現存す。

一四一　同郡池辺村（川越市）　稲荷社明治九年水鉢に池辺村橋本弥五兵衛・橋本栄吉。熊野社明治三十九年碑に橋本弥三郎・橋本惣平・橋本伊之助・橋本馬蔵・橋本弥兵衛・橋本留蔵・橋本伊助・橋本金太郎・橋本弥五兵衛あり。八戸現存す。

一四二　同郡片柳村（坂戸市）　天保十三年休台寺覚に名主橋本吉五郎・寺世話人橋本清助。明治九年副戸長橋本房吉・嘉永五年生、副戸長橋本良作・天保九年生。明治三十年堰場組合に橋本九八郎・橋本角太郎・橋本寅吉・橋本想次郎・橋本兼吉・橋本良作・橋本房吉あり。十一戸現存す。

一四三　同郡森戸村（坂戸市）　明治二十五年開墾台帳に橋本勘次郎あり。三戸現存す。

一四四　同郡黒山村（越生町）　明治三年議定連印帳に橋本芳五郎あり。一戸現存す。

一四五　高麗郡笹井村（狭山市）　明治九年戸長橋本浅治郎・文政七年生。白鬚社明治二十九年御神燈に水富村橋本庄吉、明治四十二年御神燈に水富村橋本順造・橋本代次郎、大正元年碑に笹井・橋本熊平・橋本雅三・橋本治郎あり。十戸現存す。

一四六　同郡藤金村（鶴ヶ島市）　当村安永五年馬頭尊に高麗郡藤金村鹿山村橋本平八あり。一戸現存す。

一四七　同郡飯能町　明治十四年飯能村織物商橋本四郎次・紙塩煎餅商橋本幸次郎、久下分村鉄打物商橋本喜十郎。明治三十五年煙草商橋本熊太郎あり。

一四八　同郡中山村（飯能市）　智観寺安政七年筆子奉納額に中山村橋間・橋本峰吉、明治十七年勧進帳に中山村橋本仙蔵・橋本岩吉あり。

一四九　同郡上直竹村下分（飯能市）　富士浅間社嘉永五年絵馬に橋本吉五郎あり。二戸現存す。

一五〇　横見郡長谷村（吉見町）　当村に此氏の旧家あり。十一戸現存す。

一五一　比企郡中山村（川島町）　信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州比企郡中山村橋本和十郎あり。二戸現存す。

一五二　同郡出丸中郷（川島町）　字関田寛文十三年地蔵尊に橋本吉右衛門、享保四年庚申塔に橋本弥五兵衛・橋本弥兵衛・橋本六左衛門・橋本三右衛門、明和元年馬頭尊に橋本三左衛門・橋本六左衛門・橋本庄右衛門あり。一戸現存す。

一五三　同郡表村（川島町）　広徳寺元治二年伏鉦銘に橋本金造あり。一戸現存す。

一五四　同郡羽尾村（滑川町）　羽尾七騎由来書（小林文書）に「寛文四年古来居屋敷覚。小沢出雲子主水、子半二郎跡断申候、むこ三人有、其の一人に橋本藤右衛門子むこ六左衛門」と見ゆ。現存無し。

一五五　同郡毛塚村（東松山市）　明治五年准副戸長橋本栄三.。明治八年副戸長橋本義重。多摩郡青梅御嶽神社明治二十四年文書に比企郡毛塚村橋本義重あり。二戸現存す。

一五六　同郡早俣村（東松山市）　正代村世明寿寺安永五年半鐘銘に早俣村橋本幸七.。阿弥陀堂天明七年六地蔵に早俣村橋本大治郎・橋本只七・橋本直七.。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州比企郡早俣村橋本半右衛門・橋本真右衛門。明治九年戸長橋本竹治・天保三年生、副戸長橋本喜八・天保十四年生あり。十戸現存す。

一五七　同郡田木村（東松山市）　明治九年副戸長橋本利三郎・天保十一年生あり。四戸現存す。

一五八　同郡岡郷（東松山市）　当村に此氏多く存す。妙安寺観音堂元禄三年庚申塔に上岡村橋本五郎兵。明治十六年古道具商橋本伊勢五郎あり。

一五九　同郡小川町　字平松文久二年供養塔に橋本定次郎あり。

一六〇　同郡下里村（小川町）　上岡妙安寺観音堂天保四年石橋供養塔に下里村橋本金之介あり。二戸現存す。

一六一　同郡原川村（小川町）　当村は竹沢村原川分と称す。駒形社天明七年供養塔に竹沢村橋本宇右衛門。明治十六年常盤連人銘録に俳人橋本完三郎・号完正あり。三戸現存す。

一六二　大里郡熊谷町　賢勝院明治十四年妙法講碑に当駅橋本佐七.。明治三十五年煙草具商藤野屋橋本峰蔵・飲食店橋本兼吉・下駄商橋本兼吉・建具職橋本勝太郎あり。

一六三　同郡和田村（熊谷市）　楊井白髭社安政七年庚申塔に橋本又六・橋本徳次郎。野原村文殊寺明治二年碑に和田村橋本又六あり。一戸現存す。

一六四　同郡冑山村（大里町）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

一六五　同郡中曽根村（大里町）　当村に此氏の旧家あり。七戸現存す。

一六六　同郡箕輪村（大里町）　当村に此氏の旧家あり。十四戸現存す。

一六七　同郡御正新田村（江南町）　当村に此氏多く存す。野原村文殊寺明治二年碑に御正村橋本源兵衛。明治九年戸長橋本広保・天保三年生、副戸長橋本保信・文化十四年生、副戸長橋本源平・安政元年生あり。

一六八　男衾郡本田村（川本町）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

一六九　幡羅郡久保島村（熊谷市）　上野台村光厳寺天保十一年供養塔に久保島村橋本六右衛門あり。一戸現存す。

一七〇　同郡拾六間村（熊谷市）　徳蔵寺文政元年馬頭尊に橋本文左衛門あり。十二戸現存す。

一七一　同郡原郷（深谷市）　上野台村光厳寺文政九年水鉢に原ノ郷村橋本屋治兵衛あり。五戸現存す。

一七二　同郡東方村（深谷市）　熊野社文化十三年御神燈に橋本喜四郎、天保十一年八幡碑に橋本文次郎・橋本藤次郎、元治元年小御嶽碑に橋本文次郎・橋本喜七.。明治四年備前堀史料に東方村組頭橋本文次郎。明治九年副戸長橋本文次郎・文政三年生。熊野社明治三十年碑に橋本来太郎・橋本伊三郎・橋本勝五郎・橋本重吉・橋本伊助・橋本桃太郎・橋本朝次郎・橋本寅吉。原郷楡山神社明治四十二年碑に東方村橋本来太郎あり。十三戸現存す。

一七三　同郡明戸村（深谷市）　上野台村光厳寺天保十一年供養塔に明戸村橋本次兵衛あり。一戸現存す。

一七四　同郡新井村（深谷市）　明治四年備前堀史料に新井村組頭橋本房次郎。明治九年副戸長橋本房次郎・天保九年生。新戒村大林寺明治三十五年筆子碑にアライ橋本亀吉あり。十六戸現存す。

一七五　同郡蓮沼村（深谷市）　信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州幡羅郡蓮沼村橋本金蔵あり。十六戸現存す。

一七七　同郡江原村（深谷市）　明戸村会議員橋本定吉・明治十一年生あり。五戸現存す。

一七八　同郡堀米村（深谷市）　明戸村会議員橋本文雄・明治三十五年生あり。八戸現存す。

一七九　同郡妻沼村　当村に此氏多く存す。聖天旧記に「文禄三年、女沼郷年寄橋本新右衛門式部、古百姓橋本内膳八左衛門。慶長九年、妻沼村橋本式部」。文禄三年名主田久玄蕃御用留帳に「徳川家康は新田郡太田町へ参向の折、玄蕃宅を本陣とし、従者の伊奈備前守は橋本式部宅へ、会田七左衛門は橋本内膳宅へ宿泊す」と見ゆ。聖天宮文政十年門前碑に中町橋本弥惣次、天保十年二十三夜塔に池之上橋本新右衛門、嘉永七年百番供養塔に当所橋本喜右衛門・橋本市郎兵衛、東岡橋本善左衛門、慶応三年石道之碑に当所橋本新右衛門。若宮八幡社天保十一年庚申塔に橋本善左衛門。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州妻沼宿橋本権左衛門・橋本善左衛門。明治十二年副戸長橋本新右衛門。明治三十五年雑穀醤油商橋本松次郎・煙草商橋本準平・塩石油金物商橋本長次郎・土木請負業橋本歌次郎。信州木曽御嶽山清滝新道端昭和五年碑に妻沼町講・橋本喜六・橋本徳次郎・橋本彦四郎・橋本紋三郎あり。五項参照。

一八〇　同郡弥藤吾村（妻沼町）　聖天旧記に「弥藤吾村草分農民にして、延宝年間・橋本茂左衛門。享和二年百姓代橋本房平」あり。一戸現存す。

一八一　同郡葛和田村（妻沼町）　大龍寺安政五年水鉢に橋本兼吉・橋本藤右衛門。明治九年副戸長橋本丈三郎・嘉永二年生あり。六戸現存す。

一八二　同郡日向村（妻沼町）　長井神社寛政十二年御神燈に橋本助右衛門あり。二戸現存す。

一八三　同郡市ノ坪村（妻沼町）　妻沼村聖天宮慶応三年石道之碑に市ノ坪村橋本長三郎。田島村明治八年富士嶽碑に市ノ坪村橋本長三郎。明治十二年戸長橋本長三郎あり。三戸現存す。

一八四　榛沢郡深谷宿　西島村長福寺墓碑に「橋本喜右衛門・天保十三年没、近江国蒲生郡日野十禅寺村」と。日野町十禅寺に橋本氏多く存す。明治三十五年新聞貸本新栄舎橋本定五郎・橋本亀吉あり。

一八五　同郡上野台村（深谷市）　八幡社明治五年筆子碑に当所橋本半七、明治四十四年碑に橋本半七あり。

一八六　同郡内ヶ島村（深谷市）　当村に此氏多く存す。村の上廓（西側）に居住し草分けにて、猪俣党内ヶ島氏発祥以前の平安時代よりの土着者なり。宮ヶ谷戸村無量寺万延元年仙元碑に先達内ヶ島村橋本瀧蔵。明治九年副戸長橋本林蔵・文化二年生。大塚島村明治十三年森田安蔵筆子碑に内ヶ島橋本市五郎・橋本仙吉・橋本弥八.。同村宝蔵院明治二十四年筆子碑に内ヶ島橋本喜作・橋本新三郎・橋本倉吉。人見村清水兼七家明治三十五年御嶽碑に内ヶ島橋本惣太郎。永光寺江戸末期庚申塔に橋本三右衛門、明治二十四年筆子碑に橋本仙・橋本定五郎・橋本啓蔵・橋本隆吉・橋本広吉・橋本勝五郎・橋本兼吉、明治四十年日露戦争戦死橋本富作碑（広吉の三男）に橋本勘作・橋本藤三郎・橋本音松・橋本覚三郎・橋本友吉・橋本健次郎・橋本喜三郎・橋本仙吉・橋本岩吉・橋本民吉、軍友・橋本巳之吉・橋本喜久蔵・橋本正三・橋本浦平・橋本等、実兄橋本喜作・橋本新三郎、親族橋本惣太郎・橋本信次郎・橋本裕太郎。上州榛名神社明治四十年御神燈に武蔵国大寄村内ヶ島・橋本勘作・橋本喜作・橋本弥八・橋本作次郎・橋本新三郎・橋本友吉・橋本惣太郎・橋本喜久蔵・橋本隆吉・橋本覚三郎。大寄村会議員に橋本勘作・明治四年生、橋本正三・明治十七年生、橋本平蔵・明治二十三年生、橋本種蔵・明治二十六年生、橋本文之助・明治二十七年生、橋本浪蔵・明治三十一年生あり。

一八七　同郡矢島村（深谷市）　矢島村史料に「橋本留之助後家ツネ・寛政七年生」あり。現存無し。

一八九　同郡下手計村（深谷市）　当村に此氏多く存す。鹿島社明和四年供養塔に橋本平兵衛・橋本郡七、文政五年御神燈に橋本甚五兵衛・橋本文右衛門・橋本平兵衛・橋本惣八.。字宥前廓文政二年庚申塔に橋本藤九郎・橋本与助・橋本文右衛門・橋本□蔵・橋本源兵衛。明治九年戸長橋本長吉・文政五年生。明治十一年副戸長橋本呈次郎。柏合村明治十三年八海山講碑にテバカ橋本熊五郎・橋本次之助・橋本信太郎。明治十八年最上農名簿に橋本友十郎・耕宅地二十五町三反歩・山林二町八反歩所有。内ヶ島村永光寺明治二十四年筆子碑に下手計村橋本惣八・橋本新三郎。深谷町長・県会議員橋本近・安政六年生・昭和九年没。八基村会議員に橋本呈次郎・弘化二年生、橋本宣太郎・天保十二年生、橋本喜作・明治四年生、橋本昇之助・明治二十年生、橋本盛治・明治三十三年生あり。

一八九　同郡中瀬村（深谷市）　中瀬神社明治四十一年碑に橋本春吉あり。二戸現存す。

一九〇　同郡北阿賀野村（深谷市）　明治九年戸長橋本十郎太・天保二年生、副戸長橋本彦五郎・文化十二年生。郡会議員橋本八郎次・安政三年生。八基村会議員に橋本良平・安政二年生、橋本五郎七・安政五年生、橋本巳之吉・明治二年生、橋本重郎・明治十一年生、橋本昌平・明治四十年生あり。十三戸現存す。

一九一　同郡榛沢村（岡部町）　大寄八幡社文久元年水鉢に橋本善左衛門あり。現存無し。

一九二　同郡後榛沢村（岡部町）　東光寺嘉永二年二十三夜塔に橋本鶴吉・橋本弥七郎あり。六戸現存す。

一九三　同郡武蔵野村（花園町）　天保十一年猿喰土村神明社祠官橋本但馬正藤原安則。明治九年富田文書に飯塚村橋本安右衛門・橋本駒十郎・橋本兵蔵、猿喰土村立会人橋本要七・橋本駒吉・橋本谷五郎・橋本綱五郎あり。十五戸現存す。

一九四　同郡寄居町　極楽寺文化八年常夜燈に橋本重兵衛・橋本平兵衛。明治三十五年糸繭商橋本留吉・料理橋新亭橋本慶次郎あり。

一九五　同郡桜沢村（寄居町）　字金嶽天保四年馬頭尊に橋本忠右衛門あり。三戸現存す。

一九六　同郡牧西村（本庄市）　嘉永元年牧西村絵図に橋本武兵衛・橋本松五郎・橋本利右衛門。明治九年連印簿に橋本安次郎・橋本徳次郎あり。一戸現存す。

一九七　児玉郡本庄町　明治四年諸井文書に七軒町総代橋本虎吉、仲町橋本幸平、本町橋本弥三郎。明治三十五年古物商橋本あさ・貸座敷山幸楼橋本録郎・染物商橋本多仲あり。

一九八　同郡傍示堂村（本庄市）　榛沢郡戸森村明治十四年福田家門人碑にボウジドウ橋本荘蔵あり。四戸現存す。

一九九　同郡下仁手村（本庄市）　明治五年一石二斗積漁船所有に橋本伴七・橋本丈吉・橋本伊三八.。明治九年副戸長橋本丹蔵・嘉永五年生、副戸長橋本伝吉・文政十年生。明治十一年副戸長橋本又七あり。十四戸現存す。

二〇〇　同郡栗崎村（本庄市）　明治九年副戸長橋本国五郎・文政十二年生あり。一戸現存す。

二〇一　同郡児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に橋本仁兵衛、明治三十五年碑に橋本巳之助あり。

二〇二　同郡沼上村（美里町）　長福寺年不詳庚申塔に橋本七郎右衛門あり。五戸現存す。

二〇三　同郡阿那志村（美里町）　明治十年春山文書に酒造業橋本儀平あり。一戸現存す。

二〇四　那賀郡猪俣村（美里町）　二柱神社明治十三年水鉢に橋本清太郎あり。二戸現存す。

二〇五　同郡秋山村（児玉町）　七本木村石川流木村源蔵（天保十年没）門人に秋山村橋本安五郎。秋平小学校明治三十二年碑に秋山・橋本徳太郎・橋本勘三郎・橋本吉五郎あり。一戸現存す。

二〇六　賀美郡石神村（上里町）　石神社文久元年御神燈に橋本茂八.。明治四年山下文書に橋本竹十郎あり。三戸現存す。

二〇七　同郡五明村（上里町）　児玉記考に「旧家橋本吉五郎、先代を小左衛門と云ひ、旧幕の頃は名主役を勤続せし旧家なり」。大御堂村吉祥院天保五年供養塔に五明村橋本小左衛門。富岡市神成新堀神社嘉永二年算額に賀美郡五明村橋本宇兵衛義有。明治九年副戸長橋本高重・弘化四年生。信州木曽御嶽山王滝口登山道明治十三年碑にムサシ五明村橋本岩吉。御嶽神社明治四十一年碑に橋本木治・橋本豊作・橋本近松・橋本倉松・橋本周作・橋本吉五郎あり。六戸現存す。

二〇八　同郡大御堂村（上里町）　宝蔵寺正徳元年地蔵尊に当村橋本住兵衛。吉祥院天保五年供養塔に東・橋本源左衛門。小平村観音堂安政五年算額に大御堂村橋本佐仲豊国。西富田村宥宝寺明治十二年玉垣碑に東大御堂村橋本源次郎あり。四戸存す。

二〇九　同郡三町村（上里町）　明治九年に長浜町・横町・安保町が合併して三町村となる。大御堂村陣屋跡は林虎之助と申者住居と伝へ、長浜町長安寺開基に林虎之助・法名智照院浄誉感清の位牌あり。上里町史に「横町の伊藤林三家不動明王に智照院殿寒清居士・戊寅天八月二十八日と、同家墓誌にもあり。また隣家の橋本進家位牌に智照院殿浄誉感清居士・弘治二巳年同姓に改称・元祖橋本左馬允とある」と見ゆ。弘治二年は丙辰で、戊寅は天正六年である。年代および俗名がはっきりしない。橋本氏三戸現存す。

二一〇　秩父郡大宮町　明治三十五年秩父病院橋本章英あり。

二一一　同郡山田村（秩父市）　当村に此氏多く存す。土豪にて、当所の丹党加治新五郎は土着者の内田・橋本両氏との争いにより天文九年滅亡すと云う。恒持神社文化十四年御神燈に橋本太郎兵衛。明治九年戸長橋本又太郎・安政三年生、副戸長橋本長作・天保三年生。恒持神社明治四十三年碑に新木西組・橋本島作・橋本儀作、中組・橋本源太郎・橋本卯太郎・橋本嘉伝治、大棚組・橋本秀吉、乙中山田・橋本米太郎、社掌橋本又太郎あり。

二一二　同郡金崎村（皆野町）　国神神社明治三十四年碑に金崎橋本貞吉・当所橋本品吉あり。二戸現存す。

二一三　同郡大淵村（皆野町）　寛保三年香具仲間連名帳に大淵村橋本友吉あり。現存無し。

二一四　同郡芦ヶ久保村（横瀬町）　大野村文久三年木曽御嶽講碑に芦ヶ久保村橋本留吉あり。八戸現存す。

二一五　同郡小鹿野町　明治十二年下駄商橋本源平あり。二戸現存す。

二一六　同郡皆谷村（東秩父村）　皆谷新田文政五年山岳碑に橋本仙蔵あり。現存無し。

二一七　同郡北川村（飯能市）　字日影安永三年馬頭尊に北川村之内岩井沢・橋本善太郎あり。一戸現存す。

二一八　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・橋本菊蔵・十三円、橋本明・十二円、橋本十郎・十円、大宮町・橋本富士太郎・二百八十四円、橋本安太郎・百六十三円、橋本次郎・四十七円・十九円、橋本七郎・五十円、橋本潤蔵・十六円・十九円、橋本繁太郎・十二円、橋本惣七・十一円、橋本健次郎・十円、日進村（大宮市）・橋本仙太郎・十一円・二十八円、石戸村（北本市）・橋本忠三郎・十五円・十九円、膝折村（朝霞市）・橋本録三郎・二十九円・三十九円、栗橋町・橋本久次郎・三百九十五円・五十八円、静村（栗橋町）・橋本晃・十七円、粕壁町・橋本吉兵衛・百十一円・二十八円、幸松村（春日部市）・橋本喜左衛門・九円・二十九円、久喜町・橋本善夫・三十六円、鷲宮村・橋本佐市・十一円、羽生町・橋本かつ・十四円、騎西町・橋本杏右衛門・十七円、下忍村（吹上町）・橋本朝七・十一円、東村（大利根町）・橋本仁・十二円、三ツ俣村（加須市）・橋本与三郎・三十円・五十六円、橋本勇八・十六円、橋本松太郎・十円、忍町・橋本喜助・六千三百三十九円・八百五十二円、橋本豊次郎・七十円・八十四円、橋本幸三郎・四十円・八十四円、橋本邦光・二十二円、橋本昂一・十三円、星河村（行田市）・橋本きみ・三十円・五十六円、長野村（行田市）・橋本幸次郎・三十円・六十一円、川越市・橋本定五郎・二百九十九円、橋本四郎・百一円・五十一円、南古谷村（川越市）・橋本三九郎・百十五円、橋本藤吉・九円・三十三円、日東村（川越市）・橋本周三・十円・二十五円、太田村（川越市）・橋本伊之助・十八円・二十三円、橋本惣平・九円、宮寺村（入間市）・橋本要・十円、藤沢村（入間市）・橋本元吉・十円・二十七円、入間村（狭山市）・橋本善平・十円、水富村（狭山市）・橋本信二・十円・二十八円、坂戸町・橋本艶十郎・四十二円、越生町・橋本清・三十四円・五十六円、飯能町・橋本豊次郎・九十一円・四十二円、橋本吉蔵・八十八円、高坂村（東松山市）・橋本惣吉・十三円、小川町・橋本つね・十円・三十三円、熊谷町・橋本藤蔵・百二十一円・百十二円、橋本元義・十八円・五十円、橋本与三郎・六十七円、橋本茂・三十九円、橋本安三・十五円・二十八円、橋本茂三郎・十円・三十円、橋本隆一・二十五円、三尻村（熊谷市）・橋本一三・三十九円、御正村（江南町）・橋本政七・十七円、幡羅村（深谷市）・橋本来太郎・十九円、八基村（深谷市）・橋本近・二百二十五円、橋本巳之吉・十一円、本庄町・橋本録郎・百十九円、仁手村（本庄市）・橋本内蔵太郎・百二十五円、橋本子之七・二十六円、橋本秀作・十四円、橋本丹蔵・十四円、秩父町・橋本章達・二百三円、高篠村（秩父市）・橋本島作・七十一円・五十六円」。

橋元　ハシモト　橋本に同じ。各市町村に存す。宮城県亘理郡山元町十三戸、遠田郡田尻町十五戸あり。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「六両・橋元弥四郎」あり。

二　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「四十俵三人扶持・橋元五次右衛門」あり。

槁本　ハシモト　川越に存す。

箸本　ハシモト　吉川、松伏等に存す。

觜本　ハシモト　川口に存す。

櫨本　ハジモト　大井に存す。

櫨元　ハジモト　浦和に存す。

橋森　ハシモリ　三郷に存す。

箸屋　ハシヤ　吉川に存す。

橋谷　ハシヤ　浦和、川口、草加、鷲宮等に存す。群馬県藤岡市十五戸、茨城県真壁郡明野町九戸あり。

橋屋　ハシヤ　春日部、吉見等に存す。

橋谷田　ハシヤタ　各市町村に存す。福島県耶麻郡西会津町三十五戸、高郷村十三戸あり。

橋矢田　ハシヤタ　川口、草加に存す。

橋山　ハシヤマ　浦和、鷲宮、上福岡、狭山、越生等に存す。東京都八王子市二十六戸あり。

一　秩父郡下吉田村　金剛院明治三十年筆子碑に橋山千一郎。現存無し。

枦山　ハジヤマ　志木、草加等に存す。

櫨山　ハジヤマ　行田に存す。

羽生　バショウ　越谷、毛呂山に存す。

場勝　バショウ　鳩山に存す。

馬生　バショウ　比企郡平村字馬生（都幾川村）は古の村名にて、当村慈眼坊文明十七年文書に「はせうの氏神」と見ゆ。

馬庄　バショウ　入間に存す。

芭蕉　バショウ　浦和に存す。

馬上　バジョウ　草加に存す。福島県石川郡玉川村六戸、平田村五戸あり。

柱　ハシラ　入間、所沢等に存す。

柱生　ハシラオ　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣にて、万治元年川越藩分限帳に「五十石・本国周防生国豊後・柱生又右衛門・三十五歳」あり。正訓不詳。

柱田　ハシラダ　九条家延喜式裏文書の大里郡条里坪付に「柱田里」の地名あり。大里条参照。

走出　ハシリデ　三郷、八潮、狭山等に存す。

羽代　ハシロ　大宮に存す。

橋和田　ハシワダ　富士見に存す。

蓮　ハス　ハチス参照。

一　埼玉郡三田ヶ谷村（羽生市）　八幡社安政六年御嶽碑に蓮市左衛門あり。現存無し。

二　児玉郡下浅見村（児玉町）　児玉町八幡社享保十一年鳥居碑に蓮四郎兵衛。成就院安政七年庚申塔に鉢須善右衛門・鉢須忠太郎、万延元年庚申塔に鉢須由兵衛。当村八幡社明治二十四年御嶽碑に蓮善太郎あり。古はハチスとも称し、現在はハスと称す。十一戸現存す。

羽豆　ハズ　浦和、大宮、狭山等に存す。新潟県佐渡郡赤泊村八戸あり。

幡豆　ハズ　浦和、川越、坂戸に存す。

蓮井　ハスイ　川口、蓮田、新座、春日部、越谷、幸手、草加、所沢、熊谷、妻沼等に存す。長野県南安曇郡穂高町十三戸あり。

蓮池　ハスイケ　各市町村に存す。新潟県柏崎市三十三戸、山形県鶴岡市十三戸あり。

蓮江　ハスエ　埼玉郡真名板村（行田市）薬師堂明治十年水鉢に当所蓮江伊勢松。久伊豆社明治二十八年水鉢に蓮江伊勢松。昭和三年興信録に「太田村・蓮江光三郎・所得税千七百五十五円・営業税三十八円、蓮江梅之助・所得税四百四十二円」あり。一戸現存す。

蓮尾　ハスオ　浦和、上尾、新座、加須、越谷、川越、鳩山、熊谷に存す。

蓮香　ハスカ　川越に存す。

蓮ヶ谷　ハスガヤ　所沢に存す。

蓮川　ハスカワ　越谷に存す。

蓮河原　ハスガワラ　小名蓮河原は、葛飾郡才羽村、埼玉郡恩間村、野牛村、久喜町、中妻村、斎条村、関根村、足立郡伊苅村、宮ヶ谷塔村等にあり。

蓮子　ハスコ　坂戸に存す。栃木県足利市十一戸あり。

蓮田　ハスダ　埼玉郡蓮田村（蓮田市）あり。また、正和四年伊賀氏譲状に「武蔵国閏土（ひき郡の内うるうと村、あらい・にし東）、駒前・みくら、はす田・まこめ」と、比企郡古里村（嵐山町）附近なり、伊賀条参照。小名蓮田は、葛飾郡八子新田、埼玉郡船越村、神戸村、花崎村、足立郡宿篠場村、植田谷本村、柳崎村、入間郡宗岡村、下南畑村等にあり。各市町村に存す。茨城県東茨城郡御前山村二十五戸あり。

荷田　ハスダ　入間郡鴨田村（川越市）八幡社寛政元年棟札に荷田吉兵衛、明治三十九年碑に荷田新太郎・荷田市太郎あり。八戸現存す。

蓮台　ハスダイ　埼玉郡裏慈恩寺村字蓮台（岩槻市）は古の村名にて、慈恩寺村月読神社碑に蓮台・小島長右衛門と見ゆ。

蓮波　ハスナミ　所沢に存す。

蓮沼　ハスヌマ　幡羅郡蓮沼村（深谷市）は、日光輪王寺応永三年大般若経に武州幡羅郡長井庄蓮沼郷金蔵寺と見ゆ。葛飾郡二郷半領蓮沼村（三郷市）、幸手領蓮沼村（杉戸町）、足立郡舎人領蓮沼村（川口市）、南部領蓮沼村（大宮市）、横見郡蓮沼新田（吉見町）あり。小名蓮沼は、葛飾郡金杉村、中里村、埼玉郡神戸村、中渡村、足立郡上中丸村、上下内野村、上常光村、市割村、入間郡古市場村等にあり。○群馬県太田市二十七戸。○茨城県北相馬郡利根町十二戸、真壁郡協和町十一戸。○福島県伊達郡川俣町十二戸、河沼郡会津坂下町五十三戸、耶麻郡塩川町十五戸、喜多方市五十七戸、会津若松市五十三戸あり。

一　斎藤別当実盛家臣の蓮沼氏　幡羅郡蓮沼村より起る。十八人衆といわれる開拓者の子孫に、実盛の臣蓮沼久吾あり。斎藤条参照。

二　猪俣党蓮沼氏　幡羅郡蓮沼村より起る。小野氏系図に「岡部五郎忠綱―内島五郎国綱―蓮沼六郎国家―三郎忠国―三郎兵衛尉行忠、弟四郎」。源平盛衰記に「蓮沼太郎忠俊、同六郎国長」。吾妻鑑巻十に「建久元年十一月七日、頼朝上洛随兵に荷沼三郎」と見ゆ。鎌倉円覚寺文書に「応安七年十月十四日、管領上杉能憲の奉行蓮沼安芸入道」。鎌倉大草紙に「上杉禅秀乱に、犬懸入道禅秀の手に荏原・蓮沼・別府・玉野井・瀬山・甕尻」。「犬懸入道の手には蓮沼安芸守」と見ゆ。竹沢条参照。此氏は在名にて苗字にあらず。

三　肥前国の蓮沼氏　前項蓮沼氏は佐賀郡龍造寺村末吉名（佐賀城下）へ勲功賞により移住す。龍造寺文書に「嘉禄三年三月十九日、肥前国佐嘉御領住人、末吉名惣地頭蓮沼三郎忠国、忠国補任地頭之後、小地頭得分之処を押取る。忠国申云、勲功に依り此の所を給る」。「嘉禄三年八月一日、惣地頭西蓮」と見ゆ。佐賀市に現存無し。本名に復姓して土着す。

四　豊島氏族蓮沼氏　豊島郡蓮沼村（板橋区志村蓮根町）より起る。当村は上蓮沼村と呼れ、荒川の氾濫により台地上の現在地に移住し本蓮沼村（蓮沼町）を称す。紀州那智山米良文書に「文安五年十一月、豊島年貢目録、五百文・蓮沼十郎三郎」あり。

五　古河公方家臣の蓮沼氏　猪俣党蓮沼氏後裔なり。茨城県行方郡玉造町芹沢文書に「足利政氏の臣蓮沼三郎は、忍城責めの時に疵を被り、医師芹沢土佐守に療治される」と見ゆ。

六　新田氏家臣の蓮沼氏　古代より上野国新田庄居住の苗字にて、武蔵国猪俣党の在名蓮沼氏後裔説は附会なり。太平記巻三十一に「観応三年閏二月八日、新田義宗・義興は、西上野に兵を上げる。これを聞きて国々より馳せ参りける人々、まづ一族には江田・大館・堀口等、外様には南木十郎（甘楽郡南牧村）・西木七郎（同郡西牧郷、下仁田町）・蓮沼、児玉党、丹の党、猪俣党、都合その勢十万余騎、所々に火を懸けて、武蔵国へうち越ゆる」と見ゆ。正木文書に「康正三年六月二十九日、新田御庄内浜田郷（太田市）、為御志渡給候、沼尻和泉守殿、蓮沼右衛門尉宗員花押」と、岩松持国の奉行なり。新田郡細谷村（太田市）蓮沼要三家系図に「小野姓猪俣党にて、武蔵国幡羅郡蓮沼村より起り、蓮沼掃部入道が新田義貞の家臣となり、その後金山城主由良氏に仕へ、天正十八年金山落城後に細谷村に帰農す。家紋は丸に剣片喰」と。子孫は代々名主を勤続す。細谷村に十戸現存す。当村出身の出稼衆にて幡羅郡蓮沼村は地名附会なり。

七　松山城士の蓮沼氏　天正庚寅松山合戦図に「古郡・柏崎・今泉方面城方・蓮沼徳兵衛」。二十一項参照。

八　葛飾郡吉屋村（吉川市）　香取社明治三十九年碑に蓮沼義邦あり。一戸現存す。

九　同郡富新田（吉川市）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

一〇　同郡松石村（幸手市）　神道無念流文久四年入門帳（戸島村小川文書）に松石村蓮沼安兵衛。千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に松石邨蓮沼新兵衛。明治九年副戸長蓮沼伝右衛門・天保元年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に松石村蓮沼伝右衛門。香取社明治二十九年碑に蓮沼賢二郎・蓮沼伊勢太郎、明治三十一年碑に蓮沼伊勢三郎。昭和三年興信録に「行幸村・蓮沼賢次郎・所得税三十六円」あり。三戸現存す。

一一　埼玉郡千疋村（越谷市）　伊南理神社明治四十二年御神燈に蓮沼元次郎・蓮沼八蔵・蓮沼清太郎あり。現存無し。

一二　同郡岩槻町　加倉村浄国寺元禄九年庚申塔に市宿町蓮沼市郎左衛門あり。

一三　同郡荒井新田村（白岡町）　稲荷社明治三十九年碑に蓮沼善吉あり。一戸現存す。

一四　足立郡川口町　昭和三年興信録に「蓮沼弁次郎・所得税百十八円・営業税百六円」あり。

一五　同郡舎人領蓮沼村（川口市）　古は毛長堀沿いにあったが洪水のため現在地に移住す、四方が本郷村に囲まれる。文化文政期に村高九十四石・家数十三軒の小村なり。普門寺明治十五年普門品に蓮沼庄之輔・蓮沼清太郎・蓮沼庄兵衛・蓮沼吉太郎・蓮沼金輔・蓮沼清蔵・蓮沼幸吉・蓮沼孝太郎、明治三十八年碑に蓮沼与左衛門・蓮沼留五郎・蓮沼甚蔵・蓮沼松太郎・蓮沼伊三郎・蓮沼忠七あり。十戸現存す。

一六　同郡谷古田領本郷村（川口市）　蓮沼村普門寺明治二十五年碑に東本郷蓮沼甚右衛門。氷川社明治三十三年碑に蓮沼幸吉・蓮沼八左衛門あり。三戸現存す。

一七　同郡舎人領遊馬村（草加市）　西願寺墓碑に「貞享四年・蓮沼三四郎、宝永三年・蓮沼八三郎、享保九年・蓮沼山三郎。弘化三年供養塔・蓮沼鉄二郎」。多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡舎人領遊馬村蓮沼権太郎。明治九年副戸長蓮沼源蔵・嘉永四年生あり。十四戸現存す。

一八　同郡谷古田領柳島村（草加市）　当村享保十八年馬頭尊に蓮沼三郎兵衛。大日堂跡天保十二年供養塔に蓮沼源蔵・蓮沼彦蔵あり。三戸存す。

一九　同郡谷古田領新里村（草加市）　泉蔵院元禄四年六地蔵に蓮沼伝兵衛あり。四戸現存す。

二〇　同郡大間木村（浦和市）　三室村氷川女体社明治二十五年御神燈に大間木蓮沼平次郎あり。一戸現存す。

二一　横見郡蓮沼新田（吉見町）　風土記稿蓮沼新田条に「里正政次郎が祖先蓮沼徳兵衛といへるもの開墾して新田とす」。東大塚村天保二年供養塔に蓮沼新田村蓮沼政次郎。明治九年副戸長蓮沼吉五郎・文政十一年生あり。五戸現存す。尚、蓮沼徳兵衛は幡羅郡蓮沼村から正田氏（三戸存す）・小林氏（六戸存す）の祖先と三人で船乗り稼業をしながら今の蓮沼新田に土着すと伝へるが地名附会なり。七項参照。

二二　大里郡石原村（熊谷市）　明治三十五年鉄打物商蓮沼兵七あり。一戸現存す。

二三　同郡久下村（熊谷市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

二四　同郡原島村（熊谷市）　養平寺文政十二年馬頭尊に蓮沼栄次郎・蓮沼丑五郎。三ヶ尻村幸安寺慶応二年権田門人碑に原島村蓮沼丑五郎。当村慶応三年馬頭尊に原島村蓮沼建三郎あり。二戸現存す。

二五　幡羅郡三ヶ尻村（熊谷市）　龍泉寺元治元年馬頭尊に蓮沼弥二郎・蓮沼里五郎。幸安寺慶応二年権田門人碑に蓮沼関太郎・蓮沼常五郎、孫弟子蓮沼富士太郎、慶応三年小御嶽碑に蓮沼弥二郎。長在家村稲荷社明治六年筆子碑に三ヶ尻村蓮沼浜三郎あり。二戸現存す。

二六　同郡西野村（妻沼町）　長井神社天保五年大黒天碑に蓮沼惣左衛門あり。二戸現存す。

二七　榛沢郡小和瀬村（本庄市）　稲荷社明治四十四年碑に蓮沼幸平あり。三戸現存す。

蓮野　ハスノ　伊奈、岩槻、吉川に存す。

蓮場　ハスバ　上里に存す。

蓮原　ハスハラ　浦和、与野、加須等に存す。

蓮間　ハスマ　浦和、蕨等に存す。

弭間　ハズマ　越谷、草加、杉戸、行田等に存す。山形県鶴岡市十三戸あり。

蓮実　ハスミ　栃木県那須郡黒羽町二十五戸、大田原市十七戸あり。

一　菖蒲町の土豪蓮実氏　紀州熊野那智大社旦那帳（室町時代）に「武蔵国、一きさい之郡ノ内、一しゃうふ、一やすミ・江戸・太田・川越・角田。上方ニてハやすミ、関東ニてハはすミとなのる」と見ゆ。蓮実は八角（やすみ、はすみ）の佳字か。埼玉郡菖蒲町の蓮実氏は筆頭に記されており、相当勢力ありし土豪なり。

二　埼玉郡戸ヶ崎村（菖蒲町）　古は菖蒲町と通称され、明治十年に菖蒲町と改称す。吉祥院文化九年供養塔に戸ヶ崎村蓮見五郎右衛門。菖蒲神社安政二年水鉢に蓮見忠蔵。明治七年船積問屋戸ヶ崎村蓮見忠蔵・但明治六年三月創立。明治九年戸ヶ崎村戸長蓮実清八・文化十三年生、副戸長蓮実忠蔵・文政五年生。明治三十五年菖蒲町飲食店油屋蓮実伊太郎・煙草商蓮実旭蔵・蓮実由太郎あり。十四戸現存す。

三　同郡久喜町　明治三十五年蚕種商蓮実新之丞あり。三戸現存す。

蓮實　ハスミ　久喜に存す。

蓮見　ハスミ　群馬県邑楽郡明和町二十八戸、館林市四十七戸、栃木県那須郡烏山町十八戸あり。

一　岩附城士の蓮見氏　十項参照。

二　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「四両余二人扶持・蓮見権三郎」あり。

三　葛飾郡平沼村（吉川市）　明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流平沼村蓮見義正あり。二戸現存す。

四　同郡倉常村（庄和町）　藤塚村香取社江戸末期御神燈に倉常村蓮見友次郎あり。現存無し。

五　同郡銚子口村（春日部市）　香取社文化十四年碑に蓮見弥五右衛門、文政四年天神碑に蓮見代□。明治十三年議長蓮見弥五右衛門・塩煎餅商蓮見惣次郎。明治三十年人名録に医師蓮見正済・文政二年生・地租二十三円あり。六戸現存す。

六　同郡栗橋町　明治三十五年玩物商蓮見栄次・蓮見豊三郎あり。

七　埼玉郡大瀬村（八潮市）　祭礼年番帳に「明治六年、根郷組蓮見繁次郎。明治九年、下組蓮見忠三郎。明治十三年、根郷組蓮見藤松。明治二十三年、根郷組蓮見彦太郎」あり。三戸現存す。

八　同郡大曽根村（八潮市）　福寿院文化九年六地蔵に蓮見忠右衛門。八幡社安政五年碑に蓮見長兵衛・組頭蓮見久兵衛、明治三十九年絵馬に蓮見春吉。明治二十四年頃消防夫人名記に蓮見万蔵・蓮見八五郎・蓮見卯之助あり。五戸現存す。

九　同郡中馬場村（八潮市）　大原村稲荷社明治十二年絵馬に中馬場村蓮見清左衛門。諏訪社明治三十九年碑に蓮見仁助あり。一戸現存す。

一〇　同郡岩槻町　本町勝田文書に「庚寅正月十八日（天正十八年）、太田氏房は、勝田大炊助・蓮見喜右衛門らに伊達与兵衛の配下として走廻るべしと命ず」。加倉村浄国寺元禄三年庚申塔に市宿町蓮見与兵衛、元禄九年庚申塔に市宿町蓮見九右衛門、元禄十一年棟札に修造奉行岩付檀那蓮見喜右衛門治忠。加倉村洞雲寺元禄七年庚申塔に蓮見三左衛門・蓮見三右衛門あり。九戸現存す。

一一　同郡黒浜村（蓮田市）　久伊豆社明治十二年碑に蓮沼五郎八、明治十四年御神燈に蓮見菊之丞・蓮見惣八・蓮見仲次郎・蓮見定八.。笹山村稲荷社明治十三年浅間碑に黒浜村蓮見五郎吉あり。十九戸現存す。

一二　同郡柴山村（白岡町）　観音堂享保十一年鐘銘に羽隅勘兵衛。字稲荷崎万延元年庚申塔に下分・蓮見富八・蓮見文内。明治三十年人名録に蓮見佐治郎・万延元年生・地租二十四円。諏訪八幡社明治三十九年碑に蓮見福太郎・蓮見順一郎、明治四十二年御神燈に当所蓮見佐治郎あり。一戸現存す。

一三　同郡爪田ヶ谷村（白岡町）　薬師堂寛政十二年庚申塔に中新田蓮見源左衛門、文政十年地蔵尊に蓮見久右衛門。諏訪社天保六年供養塔に蓮見久蔵、天保十四年御神燈に蓮見彦太郎。秩父郡三峰神社元治元年供養塔に埼玉郡爪田ヶ谷村蓮見源重郎。明治三十年人名録に蓮見浅之助・明治三年生・地租二十円あり。三戸現存す。

一四　同郡戸崎村（騎西町）　宝光寺天明五年地蔵尊に戸崎村蓮見文左衛門。諏訪社明治初年碑に蓮見伊勢吉あり。一戸現存す。

一五　同郡琴寄村（大利根町）　横沼神社明治十年絵馬に蓮見忠右衛門、明治二十年狛犬に蓮見忠右衛門あり。一戸現存す。

一六　同郡平野村（大利根町）　稲荷社明治四十二年碑に蓮見宇七あり。二戸現存す。

一七　同郡加須町　明治三十五年桶屋蓮見栄吉あり。

一八　同郡久下村（加須市）　千日堂寛延二年碑に蓮見喜平太。二戸存す。

一九　同郡水深村（加須市）　蓮池堂墓地延享五年供養塔に蓮見喜平太・蓮見喜兵衛・蓮見与市右衛門。当村寛延三年廻国塔に蓮見元右衛門。江川堀畔安永二年石橋供養塔に水深村蓮見庄次郎。青毛堀畔寛政三年石橋供養塔に水深村蓮見喜平太・蓮見元右衛門。鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に水深村蓮見元右衛門。明治九年副戸長蓮見家造次・安政二年生あり。五戸現存す。

二〇　同郡南篠崎村（加須市）　鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に南篠崎村蓮見嘉兵衛あり。一戸現存す。

二一　同郡樋遣川村（加須市）　御室神社寛政四年狛犬に蓮見元道あり。現存無し。

二二　同郡羽生町　毘沙門堂宝暦七年常夜燈に新田組蓮見次郎平。明治五年鍛冶職蓮見定次郎。明治三十五年魚乾物商蓮見仙太郎あり。

二三　同郡堤村（羽生市）　明治九年副戸長蓮見和助・天保十二年生あり。二戸現存す。

二四　同郡今泉村（羽生市）　字前原稲荷社文化二年力石碑に蓮見勘五郎。長光寺嘉永三年常夜燈に今泉村蓮見郷右衛門、前原村蓮見善右衛門・蓮見勘五郎あり。七戸現存す。

二五　同郡下手子林村（羽生市）　観音堂享保二十年碑に蓮見利兵衛あり。二戸現存す。

二六　同郡名村（羽生市）　不動院天明八年庚申塔に蓮見定次郎。八幡社弘化四年浅間碑に蓮見栄三郎。明治二十一年皇国武術英名録に名村蓮見浅之介あり。四戸現存す。

二七　同郡常木村（羽生市）　常木神社宝暦十二年水鉢に蓮見加右衛門・蓮見伴七.。名村渋井家譜に「渋井五右衛門（延宝四年没四十七歳）の弟太郎右衛門―松兵衛（妻常木村蓮見半兵衛娘）」あり。十戸現存す。

二八　同郡忍町　明治三十五年忍座蓮見善吉・蓮見定右衛門あり。

二九　同郡真名板村（行田市）　薬師堂寛文十年筆子碑に蓮見甚左衛門・蓮見儀助・蓮見銀蔵・蓮見又右衛門・蓮見兵太郎・蓮見忠吉・蓮見佐吉、嘉永七年筆子碑に蓮見浅次郎・蓮見伊勢松・蓮見豊吉・蓮見千太郎・蓮見村吉、慶応二年新渠之碑に蓮見伝蔵・蓮見甚左衛門・蓮見幸蔵、明治十年水鉢に当所蓮見伴次郎。下新田村羽黒社天保七年石華表碑に真名板村蓮見甚左衛門。明治九年副戸長蓮見仁吉・文政九年生（組頭）、副戸長蓮見幸蔵・文化十三年生（組頭）。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流蓮見伊勢松、起到流柔術蓮見甚左衛門。久伊豆社明治二十八年水鉢に蓮見勇次郎・蓮見伝蔵・蓮見房吉・蓮見幸次郎・蓮見佐次郎・蓮見栄次郎あり。十二戸現存す。

三〇　足立郡芝村（川口市）　八幡社明治四十年碑に芝村蓮見貞作あり。

三一　同郡木曽呂村（川口市）　阿弥陀堂寛政九年湯殿山碑に蓮見弥右衛門・蓮見吉右衛門・蓮見梅□あり。二戸現存す。

三二　同郡石神村（川口市）　明治六年生徒月並受取帳（石井文書）に蓮見幾蔵あり。一戸現存す。

三三　同郡戸塚村（川口市）　私塾師匠医師蓮見育徳・貞斎・明治七年没三十六歳あり。六戸現存す。

三四　同郡差間村（川口市）　興照寺文化九年庚申塔に指間村蓮見亮蔵、天保六年普門品に指間村蓮見定次郎。多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡見沼領差間村蓮見平治郎あり。五戸現存す。

三五　同郡柳崎村（川口市）　明治七年製糸会社人名録に蓮見半兵衛あり。一戸現存す。

三六　同郡内野村（川口市）　多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡内野村蓮見定治郎。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に内野村蓮見平蔵、万延元年庚申塔に内野村蓮見弥右衛門。当村文久三年馬頭尊に蓮見兼八.。水稲荷社明治十五年水鉢に蓮見里次郎・蓮見秋次郎・蓮見栄次郎・蓮見勘次郎、明治三十五年碑に蓮見佐重郎・蓮見佐左衛門・蓮見半之丞・蓮見佐之次郎・蓮見恒治郎・蓮見平七・蓮見奥治郎。木曽呂村朝日神社明治二十七年御神燈に内野村・蓮見半之丞・蓮見嘉吉・蓮見巳之助・蓮見浪右衛門、明治三十五年鳥居碑に東内野・蓮見佐左衛門・蓮見半之丞・蓮見佐之次郎・蓮見恒治郎・蓮見平七・蓮見奥次郎あり。十七戸現存す。

三七　同郡五関村（浦和市）　東福寺安永三年供養塔に蓮見嘉兵衛。明治九年副戸長蓮見新八・天保四年生。明治二十一年皇国武術英名録に天自流五関村蓮見万次郎。稲荷社明治中期御神燈に蓮見新蔵・蓮見彦七・蓮見嘉吉、明治三十年碑に蓮見万次郎・蓮見権蔵・蓮見新八あり。七戸現存す。

三八　同郡井沼方村（浦和市）　大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に井沼方村蓮見平八.。明神社安政五年碑に蓮見吉五郎・蓮見松八・蓮見平弥あり。五戸現存す。

三九　同郡円正寺村（浦和市）　浦和宿玉蔵院宝暦十年短才見聞録に円照寺村蓮見所右衛門。太田窪村行弘寺嘉永二年常夜燈に円正寺蓮見源之助。大牧村清泰寺万延元年庚申録に円正寺蓮見源之助あり。一戸現存す。

四〇　同郡大牧村（浦和市）　大門宿会田落穂集に享保二年鳥見役大牧村蓮見万之助。大北自治会館天明元年供養塔に大牧村蓮見秀八・蓮見久兵衛、天保二年供養塔に蓮見武八郎・蓮見林蔵・蓮見才治郎。大間木村氷川社天保七年御神燈に和田蓮見四郎兵衛、弘化二年御神燈に大牧邑蓮見林蔵・蓮見了吉・蓮見新蔵。清泰寺嘉永五年供養塔に和田谷蓮見元次郎・蓮見京美、大北蓮見定八・蓮見新蔵、万延元年庚申塔に和田蓮見留次郎、明治初期筆子碑に和田蓮見四兵衛・蓮見弥惣太・蓮見瀧次郎。明治七年製糸会社人名録に蓮見完八.。明治八年騎西町釜屋文書に大牧村酒造業蓮見定吉。明治九年副戸長蓮見武八郎・安政二年生あり。十九戸現存す。

四一　同郡与野町　氷川社享保四年水鉢に蓮見彦四郎・蓮見三郎兵衛、元文四年御神燈に蓮見太右衛門・蓮見家八・蓮見七右衛門、寛延三年御神燈に蓮見惣八、安政三年御神燈に蓮見勘兵衛。鈴谷村金毘羅堂天保五年水鉢に与野町中町蓮見勘兵衛。御嶽社明治二十九年碑に与野蓮見啓三郎。一山神社明治三十五年碑に当町蓮見文七・蓮見常五郎。明治三十五年米穀商蓮見慶三郎・棒屋蓮見米蔵・大工職蓮見光之助・菓子商蓮見又七あり。十三戸現存す。

四二　同郡南部領宮下村（大宮市）　氷川社文久元年幟碑に蓮見宇之助あり。五戸現存す。

四三　同郡吉野領本郷村（大宮市）　高林寺安永二年地蔵尊に蓮見弥右衛門・蓮見源右衛門、寛政元年六地蔵に蓮見浅右衛門。明治八年騎西町釜屋文書に本郷村酒造業蓮見幸右衛門。明治九年副戸長蓮見太吉・弘化三年生。明治二十六年与野町長伝寺文書に西本郷蓮見謙司。本郷神社元治元年幟碑に蓮見勝五郎、明治三十一年御神燈に蓮見謙司・蓮見鶴吉・蓮見吉五郎・蓮見金次郎・蓮見酉蔵、明治三十九年碑に蓮見善太郎・蓮見助七あり。十九戸現存す。

四四　同郡東間村（北本市）　愛宕社宝永三年碑に蓮見惣右衛門・蓮見角右衛門。深井村寿明院寛政九年寄附帳に東間新田蓮見幸右衛門・蓮見利右衛門・蓮見惣五郎。加納村天神社嘉永二年御神燈に東間村蓮見常八.。浅間社安政二年庚申塔に当邨蓮見長吉。明治四年名主蓮見丈次郎・四十三歳。浅間社明治四十年碑に蓮見林七あり。現存無し。

四五　同郡花野木村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に花野木村蓮見仙右衛門・蓮見元右衛門あり。現存無し。

四六　同郡大間村（鴻巣市）　大野神社明治二十六年幟碑に蓮見定兵衛、明治三十九年碑に蓮見英一あり。六戸現存す。

四七　新座郡浜崎村（朝霞市）　観音堂明治三十四年筆子碑に浜崎蓮見佐助・蓮見喜代治あり。四戸現存す。

四八　同郡下保谷村（東京都保谷市）　明治九年戸長蓮見清左衛門・安政二年生、副戸長蓮見安兵衛・弘化四年生。明治四十四年武蔵野軽便鉄道発起人蓮見彦三郎・五十株所有あり。

四九　比企郡上大屋敷村（川島町）　明治四年人別帳に蓮見和吉・蓮見与祢・蓮見靄吉・蓮見繁蔵跡あり。四戸現存す。

五〇　横見郡今泉村（吉見町）　氷川社嘉永四年大神宮碑に蓮見栄蔵、明治五年幟碑に蓮見新右衛門。久米田村慶応元年馬頭尊に今泉村蓮見三次郎。明治九年副戸長蓮見栄蔵・天保九年生。金剛院明治十五年碑に蓮見幸三郎。氷川社明治四十年碑に蓮見則好・蓮見儀平・蓮見幸太郎あり。五戸現存す。

五一　幡羅郡葛和田村（妻沼町）　大野村稲荷社安政二年水鉢に蓮見半七郎あり。現存無し。

五二　同郡俵瀬村（妻沼町）　酒巻村八幡社慶応三年八海山碑に俵瀬蓮見安平あり。現存無し。

五三　熊谷町　明治三十五年茶商蓮見助七・煙草具商蓮見慶太郎あり。

五四　榛沢郡小和瀬村（本庄市）　稲荷社明治四十四年碑に蓮見亀吉あり。現存無し。

五五　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・蓮見弥太郎・三十円、谷塚村（草加市）・蓮見敬造・三十一円、大宮町・蓮見三郎・六十五円、蓮見武夫・十九円、蓮見忠蔵・十六円、大砂土村（大宮市）・蓮見勝・九十一円・四十二円、栗橋町・蓮見雅太郎・十四円・四十四円、忍町・蓮見庫次郎・十四円、羽生町・蓮見仙太郎・二十七円、井泉村（羽生市）・蓮見七左衛門・十二円、村君村（羽生市）・蓮見喜緒・二十七円、大越村（加須市）・蓮見茂平・三十七円・七十円、元和村（大利根町）・蓮見儀左衛門・七十九円・六十四円、秩父町・蓮見北太郎・八十九円・八十四円」あり。

羽隅　ハスミ　前条十二項参照。

蓮水　ハスミ　入間郡勝瀬村（富士見市）護国寺文政八年湯殿山碑に蓮水磯七.。榛名社寛政四年水鉢に蓮水伊平治、明治四十年碑に勝瀬村蓮水寅之助あり。二戸現存す。

荷見　ハスミ　川口、大宮、草加、川越、坂戸、日高、富士見等に存す。茨城県久慈郡里美村十四戸あり。

葉住　ハスミ　浦和に存す。

波澄　ハスミ　浦和、朝霞、志木、新座、越谷等に存す。

羽住　ハスミ　三郷、八潮、坂戸に存す。

羽角　ハスミ　各市町村に存す。山形市六十八戸あり。

一　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国常陸生国武蔵・羽角茂太夫・二十七歳」あり。

羽隅　ハスミ　戸田に存す。

蓮村　ハスムラ　浦和、大宮、北本等に存す。

蓮本　ハスモト　八潮に存す。

蓮屋　ハスヤ　幡羅郡妻沼村聖天宮天保八年欣然庵筆銘に蓮屋忠兵衛孝良。三ヶ尻村幸安寺嘉永六年碑に当所蓮屋忠兵衛あり。三ヶ尻村及び妻沼村に現存無し。

蓮谷　ハスヤ　埼玉郡蓮谷村（宮代町）。

蓮舎　ハスヤ　志木、児玉、皆野に存す。

蓮輪　ハスワ　入間に存す。

蓮把　ハスワ　久喜に存す。

土師　ハゼ　ハジ参照。

枦　ハゼ　飯能に存す。

粶　ハゼ　草加、三郷、深谷に存す。

羽瀬　ハセ　越谷、川越等に存す。青森県八戸市六戸あり。

長谷　ハセ　和名抄・大和国城上郡長谷郷を波都勢（はつせ）と訓じ、桜井市初瀬（はせ）に長谷寺（はせでら）あり、十一面観音を本尊とす。当寺本尊と同一木で刻まれたという十一面観音像を本尊とする大和高田市南本町に長谷本寺（はせもとでら）あり、橋本寺とも称した。土師本（はせもと、はしもと）、橋本（はしもと）の佳字に長谷本を用いる。寛平八年の土師族菅原道真作と伝へる長谷寺縁起あり。土師（はせ）の佳字にて土師部の集落を長谷（はせ）と称す。越中国新川郡長谷郷は波世（はせ）と訓ず。土師（はじ）、橋本条参照。各市町村に存す。○千葉県長生郡睦沢町十六戸、夷隅郡大多喜町十二戸。○宮城県岩沼市二十四戸。○青森県下北郡風間浦村八戸。○鳥取県八頭郡佐治村四十戸あり。ナガタニ参照。

一　忍城士の長谷氏　成田分限帳に「三十貫文・長谷内蔵」あり。

二　高麗郡上広瀬村（狭山市）　浅間社元治元年筆子碑に当所長谷弥平治あり。一戸現存す。

三　熊谷町　昭和三年興信録に「長谷伊八・所得税四十二円」あり。

長谷井　ハセイ　蓮田、鶴ヶ島、熊谷等に存す。群馬県新田郡新田町十三戸あり。

馳尾　ハセオ　入間、川越等に存す。

長谷尾　ハセオ　入間郡上浅羽村字ハセオあり。

一　埼玉郡屈巣村（川里町）　普済寺明治六年筆子碑に長谷尾築太郎・長谷尾浅太郎あり。四戸現存す。

長谷雄　ハセオ　新座、草加に存す。

馳川　ハセガワ　飯能に存す。

羽瀬川　ハセガワ　川越に存す。

沙魚川　ハセガワ　所沢に存す。島根県隠岐郡西郷町九戸あり。

長谷川　ハセガワ　土師川（はせがわ）の佳字なり。川は朝鮮語のナリで非農民の村を称す。此氏は武蔵国、越後国に多く存す。長谷条参照。○群馬県多野郡吉井町六十戸、佐波郡境町八十戸、桐生市百十戸、太田市二百二十戸、伊勢崎市百三十戸、高崎市百八十戸、前橋市二百七十戸。○栃木県足利市二百十戸。○茨城県東茨城郡美野里町百十戸、茨城町百戸、西茨城郡岩間町六十八戸、鹿島郡波崎町百六十四戸、新治郡千代田町六十戸、八郷町九十戸、北相馬郡守谷町五十戸、石岡市百二十七戸、日立市百二十六戸、水戸市二百三十戸。○千葉県山武郡成東町八十二戸、長生郡一宮町七十六戸、長生村六十二戸、安房郡天津小湊町七十戸、木更津市百三十戸、君津市百三十戸、袖ヶ浦市百十戸、市原市二百四十戸、茂原市百十戸。○長野県上田市百十戸。○新潟県北蒲原郡聖籠町六十九戸、中条町五十九戸、水原町九十六戸、安田町九十戸、笹神村六十三戸、中蒲原郡亀田町八十四戸、東蒲原郡鹿瀬町五十戸、津川町百三十戸、上川村百八十八戸、三川村八十五戸、西蒲原郡黒埼町八十戸、巻町百六十戸、吉田町八十二戸、南蒲原郡下田村百戸、三島郡越路町九十戸、新発田市四百二十戸、新津市二百三十戸、五泉市二百九十戸、豊栄市百八十六戸、三条市四百戸、燕市二百二十戸、柏崎市百十戸、見附市百四十戸、上越市百九十戸、長岡市五百八十戸。○福島県大沼郡会津高田町五十二戸、金山町八十戸、河沼郡柳津町八十三戸、会津坂下町七十三戸、耶麻郡猪苗代町六十八戸、西会津町百五十六戸、いわき市四百三十戸、会津若松市三百七十戸、郡山市二百三十戸、福島市百九十戸。○山形県鶴岡市三百五十戸、山形市三百戸。○岩手県紫波郡紫波町九十二戸。○青森県北津軽郡小泊村五十九戸、西津軽郡鯵ヶ沢町百六十六戸、木造町二百戸、南津軽郡浪岡町百二十戸、八戸市百二十戸、弘前市百二十戸、青森市二百四十戸。○島根県仁多郡仁多町五十戸、松江市百二十七戸。○鳥取県気高郡青谷町八十八戸、米子市二百九十戸あり。

一　忍城士の長谷川氏　七十三、百二十七項参照。

二　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百石・長谷河兵左衛門（一本に長谷川）・是は忍にて罷出・三河之者、二百石・長谷河清七郎（一本に長谷川）・是は忍にて罷出・三河之者」あり。

三　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「四両三人扶持・長谷川庄八、二十五俵二人扶持・長谷川市左衛門」。文化四年忍藩分限帳に「二之丸御番・二十俵二人扶持・長谷川勝蔵、無役・十八俵二人扶持・長谷川八十吉」あり。

四　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御武器細工人・六人扶持・長谷川善次郎、同役同高・長谷川三九郎、船頭・七石二人扶持・長谷川善三郎、御徒・六石二人扶持・長谷川磯八、同役同高・長谷川与十郎、子供・同高・長谷川平次郎、表坊主・四石余二人扶持・長谷川寿三」。明治四年忍藩士族名簿に「七人扶持・長谷川平太郎、五人扶持・長谷川三九郎、六石四人扶持・長谷川志満吉、同高・長谷川元三郎、七石二人扶持・長谷川勝太郎、五石二人扶持・長谷川瑠次郎、四石余二人扶持・長谷川義政、同高・長谷川常之助、同高・長谷川磯右衛門」あり。

五　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百石・長谷川惣右衛門、百五十石・長谷川伝右衛門、同高・長谷川治部右衛門」あり。

六　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「四百石・本国駿河生国上野館林・長谷川源右衛門・六十四歳、三百石・本国信濃生国上野・長谷川新五郎・四十歳、二人扶持・本国播磨生国武蔵・長谷川小次郎・十二歳」あり。

七　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御目付・百石・長谷川半右衛門、御馬廻・十石三人扶持・長谷川勘兵衛、同役同高・長谷川勝之助、御部屋番・五両二人扶持・長谷川半助」。

八　川越藩秋元氏家臣　風土記稿入間郡野田村条に「瘡守稲荷社は、秋元但馬守が家人長谷川徳右衛門なるもの、甲斐国より持来りて、始は己が住宅の内にておきたりしを、明和年中、爰へ移せしとなり」。明治四年館林藩士族帳に「御中老・百二十石・長谷川半次郎」あり。

九　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・十八石四人扶持・越前取立・長谷川分右衛門、御目付・十人扶持・分右衛門倅長谷川広介」。万延二年川越藩分限帳に「隠居・長谷川檪翁、御鑓奉行・百石・長谷川広助、御馬廻・十六石四人扶持・長谷川文五郎、永詰御雇・四人扶持・長谷川米造」。慶応元年前橋藩松山陣屋付に「八石二人扶持・長谷川銀造」あり。銀造の子孫三郎は東松山市松葉町に現存す。

一〇　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「勘定頭支配・四石余二人扶持・長谷川権左衛門・五十八歳」あり。

一一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「二百石・長谷川又二郎」。寛文二年岩槻藩分限帳に「二百石・長谷川七郎兵衛、十五俵・長谷川甚兵衛」あり。

一二　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御中小姓・長谷川郡平」あり。

一三　岡部藩安部氏家臣　慶応四年岡部藩分限帳に「御中小姓・岡部・七石二人扶持・長谷川経右衛門」。明治四年半原県分限帳に「斐役長谷川経右衛門・岡部・士族、使部長谷川清右衛門・東京・士族」。大正三年源勝院安部家旧臣碑に「士族・藤田村大字小和瀬・長谷川一斎」あり。

一四　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「十五人扶持・長谷川徳兵衛」あり。

一五　関東郡代伊奈氏家臣　享保頃に長谷川忠。天明八年に「御祐筆・長谷川与市」あり。

一六　葛飾郡平方新田（吉川市）　神明社明治三十九年碑に長谷川仁助あり。現存無し。

一七　同郡築比地村（松伏町）　上香取社文化七年水鉢に長谷川平七あり。一戸現存す。

一八　同郡飯沼村（庄和町）　香取社文化十四年稲荷碑に飯沼村長谷川市右衛門、嘉永元年御神燈に長谷川吉平。妙善寺元治二年成田山碑に長谷川市右衛門・長谷川三木蔵あり。三戸現存す。

一九　同郡小平村（庄和町）　西金野井村香取社寛政三年富士碑に商人中・小平村長谷川藤右衛門あり。四戸現存す。

二〇　同郡西金野井村（庄和町）　香取社明治三十年寄附碑に長谷川専一郎あり。九戸現存す。

二一　同郡倉常村（庄和町）　愛宕社寛政六年庚申塔に長谷川伝右衛門あり。一戸現存す。

二二　同郡八丁目村（春日部市）　香取社寛政八年天神碑に長谷川政吉、文政十年御神燈に長谷川政吉・長谷川兵助、明治三年碑に長谷川春吉、明治十七年御神馬碑に長谷川市五郎あり。五戸現存す。

二三　同郡才羽村（杉戸町）　字在来文化二年普門品に長谷川文治右衛門・長谷川治右衛門、安政四年供養塔に長谷川文次郎・長谷川文右衛門・長谷川幸吉、文久二年天満宮碑に長谷川又右衛門（私塾師匠、明治二十五年没八十二歳）。明治九年戸長長谷川又五郎・天保七年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に才羽村長谷川又五郎。八幡社明治十二年御嶽碑に才羽村長谷川亀之丞、明治三十年碑に米野谷・長谷川国太郎・長谷川又五郎あり。六戸現存す。

二四　同郡下野村（杉戸町）　福正院明治二十九年筆子碑に長谷川尚次郎あり。現存無し。

二五　同郡佐左衛門村（杉戸町）　幸手宿牛村秋間家由緒書に「秋間市郎左衛門（元文四年没）―女子（佐左衛門村長谷川源左衛門妻）」。八幡香取社安政五年浅間碑に長谷川佐五兵衛。幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に佐左衛門・長谷川市郎右衛門。明治三十年人名録に長谷川源左衛門・元治元年生・地租三十円あり。三戸現存す。

二六　同郡幸手町　明治三十五年米穀商長谷川清三郎・生繭商長谷川大吉・足袋商長谷川儀兵衛あり。

二七　同郡外国府間村（幸手市）　千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に外国府間村長谷川治介。木立村妙法寺明治三十年馬頭尊に外国府間長谷川国蔵。雷電宮明治三十九年碑に長谷川武蔵・長谷川邦造あり。三戸現存す。

二八　同郡惣新田村（幸手市）　字中新田香取社宝暦八年庚申塔に中新田組長谷川新兵衛。字仁階稲荷社明和三年庚申塔に仁階村長谷川久兵衛、寛政元年庚申塔に二階村長谷川源右衛門。明治二十七年文書に長谷川祐次郎あり。四戸現存す。

二九　同郡栗橋宿　八坂社文化十四年御神燈に長谷川藤五郎あり。

三〇　同郡佐間村（栗橋町）　定福院寛延三年供養塔に長谷川安治。八幡社嘉永三年狛犬に長谷川清助。高柳村香取社明治十四年幟碑に佐間村長谷川浅右衛門あり。四戸現存す。

三一　同郡伊坂村（栗橋町）　明治三十年人名録に迎盛院住職長谷川光尊・明治七年生あり。三戸現存す。

三二　同郡中里村（栗橋町）　千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に中里村長谷川忠兵衛あり。三戸現存す。

三三　同郡東大輪村（鷲宮町）　新田八幡社嘉永元年庚申塔に長谷川小兵衛あり。三戸現存す。

三四　埼玉郡大瀬村（八潮市）　宝光寺明治四十四年碑に長谷川竹次郎あり。三戸現存す。

三五　同郡越ヶ谷宿　天嶽寺承応三年庚申塔に長谷川与左衛門あり。

三六　同郡岩槻町　千手院天和三年供養塔に横町長谷川金右衛門。大龍寺安政五年鐘銘に旦過町長谷川長兵衛・長谷川半蔵・長谷川伊之助。明治九年太田町戸長長谷川安内・文政五年生。明治三十年所得税下調査簿に岩槻町長谷川宗七・天保十四年生・反別十七町八反歩・地租百六十五円。明治三十五年に長谷川宗七・長谷川兼吉・長谷川栄蔵・長谷川きく・長谷川みよ・長谷川武助・長谷川杢右衛門あり。

三七　同郡尾ヶ崎村（岩槻市）　嘉永元年名頭覚帳に「長谷川伝助―辰右衛門―勇吉―利七―豊吉―弁蔵」。鈴木条参照。観音堂嘉永四年筆子碑に当村長谷川豊吉あり。二戸現存す。

三八　同郡粕壁町　藤塚村香取社江戸末期御神燈に粕壁宿長谷川清六.。

三九　同郡篠津村（白岡町）　下宿元文二年庚申塔に長谷川半兵衛、寛政五年庚申塔に長谷川小右衛門・長谷川五左衛門。久伊豆社文政二年水鉢に長谷川彦次郎あり。六戸現存す。

四〇　同郡荒井新田村（白岡町）　稲荷社明治三十九年碑に長谷川専助あり。二戸現存す。

四一　同郡久喜町　鷲宮村鷲宮神社嘉永五年狛犬に久喜長谷川清右衛門。明治九年久喜本町副戸長長谷川良吉・天保八年生。明治三十年人名録に久喜本町呉服商長谷川泰吉・天保十三年生あり。

四二　同郡菖蒲町　明治三十五年傘製造長谷川岸松・米穀商長谷川艶吉。

四三　同郡小林村（菖蒲町）　当村に此氏多く存す。妙福寺享保十一年文書に小林村組頭長谷川伊兵衛・組頭長谷川宇左衛門。当村文化九年庚申塔に長谷川伝右衛門・長谷川与右衛門、文政十一年馬頭尊に長谷川弥五郎。妙福寺天保二年題目講に長谷川安右衛門・長谷川直右衛門・長谷川太郎左衛門・長谷川文六母・長谷川清蔵・長谷川保右衛門。東福院天保三年庚申塔に長谷川久蔵。雷電社弘化三年棟札に長谷川与次右衛門・長谷川大五郎。加村家安政四年題目塔に長谷川伊右衛門・長谷川次右衛門・長谷川与兵衛・長谷川利七・長谷川藤左衛門・長谷川佐吉・長谷川馬之助。明治八年騎西町釜屋文書に小林村酒造業長谷川文七.。明治九年副戸長長谷川藤蔵・弘化二年生、副戸長長谷川安右衛門・天保七年生。秩父郡秩父神社明治二十年算額に埼玉郡小林村長谷川安右衛門矩利。当村明治二十六年聖徳太子塔に長谷川友次郎・長谷川辰五郎・長谷川孫太郎・長谷川長太郎・長谷川藤次郎・長谷川熊太郎・長谷川寅吉・長谷川亀吉・長谷川長松・長谷川関太郎・長谷川清吉・長谷川婿次郎・長谷川金蔵・長谷川文吉あり。

四四　同郡栢間村（菖蒲町）　神明社文政十一年太子講に長谷川仙次あり。五戸現存す。

四五　同郡三箇村（菖蒲町）　小林村妙福寺天保二年題目講に三ヶ村長谷川善蔵母あり。十二戸現存す。

四六　同郡騎西町　明治三十五年糸繭木綿商長谷川政五郎・糸繭商長谷川富五郎・古物商長谷川喜三郎あり。

四七　同郡外田ヶ谷村（騎西町）　久伊豆社嘉永六年幟碑に長谷川林太郎あり。二戸現存す。

四八　同郡笠原村（鴻巣市）　久伊豆社明治三十九年碑に長谷川兼次郎あり。現存無し。

四九　同郡旗井村（大利根町）　旗井神社日露戦役碑に長谷川利左衛門・長谷川茂左衛門あり。十六戸現存す。

五〇　同郡伊賀袋村（北川辺町）　昭和五年に茨城県葛飾郡より埼玉県埼玉郡へ編入す。浅間社享和三年水鉢に当邑長谷川嘉左衛門。足立郡下戸田村氷川社文化二年水鉢に下総国葛飾郡古河伊賀袋村長谷河嘉左衛門あり。現存無し。

五一　同郡加須町　明治二十二年医師長谷川三郎。明治三十五年小間物商長沢屋長谷川末吉あり。

五二　同郡不動岡村（加須市）　明治九年副戸長長谷川友治郎・文政十年生。明治三十五年左官職長谷川幾蔵。

五三　同郡大越村（加須市）　当村文政六年馬頭尊に上大越村長谷川岩右衛門、文政八年巡拝塔に上大越村長谷川新蔵。明治九年副戸長長谷川佐平次・安政元年生。鷲尾神社明治十八年敷石碑に長谷川佐平次あり。三戸現存す。

五四　同郡下野村（加須市）　戸崎村竜宝寺宝暦三年供養塔に下之村長谷川伊兵衛。下村君村永明寺文久二年仙元碑に下ノ村長谷川亀次郎。明治十五年川島文書に長谷川代一郎あり。八戸現存す。

五五　同郡羽生町　上羽生村毘沙門堂宝暦七年常夜燈に新田組長谷川彦七、天保十一年石華表碑に入組長谷川三五郎。町場村東谷明和六年庚申塔に長谷川七郎右門。蓑沢村正光寺文政十年筆子碑に長谷川久之丞。明治五年左官職長谷川綱五郎・経師職長谷川鯉蔵。明治三十五年料理店長谷川嘉平治・生糸綿花商長谷川重蔵・牛乳搾取販売松屋長谷川久之丞。

五六　同郡岩瀬村（羽生市）　明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流下岩瀬村長谷川信行あり。一戸存す。

五七　同郡稲子村（羽生市）　光明院延宝八年地蔵尊に長谷川六兵衛。藤井村源長寺慶応四年筆子碑に稲子長谷川与次郎あり。二戸現存す。

五八　同郡上川俣村（羽生市）　天満宮明治二十五年碑に長谷川由之助あり。二戸現存す。

五九　同郡発戸村（羽生市）　長善寺文政八年札所碑に長谷川平左衛門。鷲宮社嘉永五年供養塔に長谷川松五郎・長谷川三蔵、明治十年碑に長谷川半蔵・長谷川平右衛門あり。七戸現存す。

六〇　同郡喜右衛門新田（羽生市）　今泉村長光寺嘉永三年常夜燈に神鳥村長谷川熊蔵・長谷川安五郎。明治十六年鯉魚飼育会社発起人長谷川忠蔵あり。二戸現存す。

六一　同郡三田ヶ谷村（羽生市）　蓮台寺文政八年庚申塔に当村長谷川新助。八幡社安政六年御嶽碑に長谷川善次郎・長谷川新兵衛あり。一戸現存す。

六二　同郡須影村（羽生市）　八幡社安政五年棟札に組頭長谷川半左衛門、明治十六年御神燈に長谷川半之丞あり。六戸現存す。

六三　同郡荻島村（羽生市）　下手子林村観音堂享保二十年碑に荻島村長谷川太郎兵衛。天満宮安政二年仙元碑に長谷川儀右衛門、明治二十年碑に長谷川常右衛門・長谷川太郎右衛門・長谷川金次郎あり。三戸現存す。

六四　同郡中手子林村（羽生市）　天満宮文政三年御神燈に長谷川余右衛門あり。六戸現存す。

六五　同郡上新郷（羽生市）　須加村熊野社嘉永五年御神燈に上新郷長谷川力蔵あり。九戸現存す。

六六　同郡下新郷（羽生市）　大光院寛政六年棟札に当所小工長谷川富五郎あり。一戸現存す。

六七　同郡忍町　明治三十五年彫刻印刷業長谷川愛之助あり。

六八　同郡若小玉村（行田市）　勝呂神社安政三年御神燈に長谷川加右衛門あり。二戸現存す。

六九　同郡真名板村（行田市）　薬師堂寛文十年筆子碑に長谷川孫八あり。二戸現存す。

七〇　同郡小針村（行田市）　神仙寺嘉永六年敷石供養塔に長谷川茂八あり。一戸現存す。

七一　同郡谷郷（行田市）　当村に此氏多く存す。薬師堂享保十年塞神碑に長谷川利兵衛。下池守村子安神社天保四年御神燈に谷邨長谷川市兵衛。明治九年戸長長谷川友五郎・文政十年生、副戸長長谷川愛之助・嘉永三年生、副戸長長谷川宗兵衛。信州木曽御嶽山清滝不動尊明治十五年碑に武蔵国北埼玉郡谷郷村長谷川伝次郎あり。

七二　同郡和田村（行田市）　当村に此氏多く存す。酒巻村八幡社慶応三年八海山碑に和田長谷川万行あり。

七三　同郡下中条村（行田市）　当地方に多く存し土師部後裔にて、鎌倉長谷は地名附会なり。名主長谷川氏記録（埼玉史談五巻）に「大祖は菅原氏後裔にして、世々武蔵国中条の郷士中条判官常光と称す。判官の二男主水は文治年中に源範頼に従って平氏を一之谷に征して戦功があり、之に依って相州長谷荘司に任ぜられる。荘司の六世孫長谷川又太郎は元弘三年新田義貞に従属して各地に転戦したが利あらずして武蔵国の高麗山中に遁避す。その後応永八年に従者五人を随伴して大祖の地中条郷に帰って農耕に従事す。之れ即ち下中条村の草分の六戸なり。長谷川与左衛門と改称し、忍城主成田長泰に出仕して七十石を賜る。中祖の二世重兵衛は慶長五年八月忍藩命によって名主役と成る」と見ゆ。行田史譚に「下中条村。寛永年中名主長谷川十兵衛、享保六年名主長谷川十兵衛、天保元年名主長谷川十兵衛」。酒巻村八幡社慶応三年八海山碑に下中条長谷川長行・長谷川増田郎。明治九年戸長長谷川増太郎・弘化四年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に下中条村長谷川中八.。明治二十年柴山伏越改造碑に下中条村長谷川中八.。須加村会議員に長谷川和一郎・明治十四年生、長谷川忠次郎・明治十六年生あり。三戸現存す。

七四　同郡須加村（行田市）　当村に此氏多く存す。熊野社嘉永五年御神燈に長谷川和七・長谷川仙八・長谷川正五郎・長谷川源蔵・長谷川民右衛門、文久三年御神燈に長谷川伝五郎・長谷川安五郎・長谷川又次郎・長谷川与次郎・長谷川仙八・横塚長谷川九之助。須加村会議員に長谷川善次郎・安政四年生、長谷川文平・文久元年生、長谷川正吉・明治十三年生、長谷川善雄・明治四十一年生あり。

七五　同郡北河原村（行田市）　代々名主にて、明治十八年最上農名簿に長谷川敬助・嘉永三年生・耕宅地十町二反歩・山林五反歩所有（県会議員）あり。七戸現存す。

七六　同郡新宿村（吹上町）　行田史譚に「新宿村。寛永年中名主長谷川平三郎、享保六年名主長谷川平三郎、天保元年名主長谷川平三郎」。山神社明治十一年浅間碑に長谷川芳太郎、明治四十二年碑に北新宿長谷川角三郎・大工長谷川甲次郎あり。七戸現存す。

七七　同郡上之村（熊谷市）　上之村神社天保四年御神燈に長谷川豊八、嘉永三年碑に長谷川杉五郎あり。十五戸現存す。

七八　足立郡川口町　善光寺嘉永六年庚申塔に当所長谷川金八あり。

七九　同郡柳島村（草加市）　大日堂跡天保十二年供養塔に長谷川茂右衛門・長谷川佐治右衛門。蒲生村光明院明治三十六年碑に柳島長谷川仙蔵あり。五戸現存す。

八〇　同郡浦和宿　浦和領別所村真福寺文久元年宝篋印塔に浦和宿長谷川友四郎。明治三十五年鍛冶職長谷川荘吉・荒物商長谷川友四郎・質商長谷川磯吉あり。

八一　同郡原山村（浦和市）　太田窪村氷川社明治二十八年碑に原山新田長谷川清吉あり。二戸現存す。

八二　同郡中尾村（浦和市）　大聖不動堂文化二年二十三夜塔に長谷川利左衛門。吉祥寺文政三年六地蔵に当所長谷川利右衛門。大谷口村向原氷川社明治十五年碑に中尾村長谷川多右衛門。同村信成院明治二十七年成田山碑に中尾長谷川松五郎・長谷川吉五郎あり。十九戸現存す。

八三　同郡下笹目村（戸田市）　当村に此氏多く存す。土豪にて、当村長谷川泰弘家文書に「上杉顕定は、長谷川刑部大輔を代官に言上す」と見ゆ。当村文化十年御神燈に下笹目村長谷川栄司、文政二年庚申塔に下笹目邑長谷川八郎右衛門・長谷川弥五兵衛・長谷川宇兵衛。笹目神社天保六年狛犬に長谷川新左衛門・長谷川民八.。明治九年副戸長長谷川新左衛門・文政十二年生あり。

八四　同郡惣右衛門村（戸田市）　川口宿善光寺元禄七年碑に惣右衛門村長谷川藤兵衛。真福寺宝永五年宝篋印塔に長谷川彦兵衛。字谷口稲荷社文化十四年御神燈に惣右衛門村長谷川粂松。明治九年副戸長長谷川彦兵衛・天保九年生。新曽村明治十五年碑に谷口長谷川彦兵衛あり。

八五　同郡新曽村（戸田市）　下青木村氷川社万延元年寄進帳に新曽村長谷川太郎吉・長谷川彦吉あり。十七戸現存す。

八六　同郡桶川町　明治三十五年菓子商長谷川金五郎・氷店長谷川龍吉。

八七　同郡川田谷村（桶川市）　泉福寺天保五年供養塔に田向村長谷川半七あり。八戸現存す。

八八　同郡下日出谷村（桶川市）　明治八年地租改正請書に長谷川小太郎あり。二戸現存す。

八九　同郡本宿村（北本市）　明治三十四年榛名神社募金に長谷川喜兵衛・長谷川金作あり。十一戸現存す。

九〇　同郡鴻巣領別所村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に別所村長谷川文八・長谷川吉太郎。明治四年名主長谷川宰助・三十二歳、組頭長谷川千代之助・五十八歳。明治九年戸長長谷川宰助・天保十一年生あり。二戸現存す。

九一　同郡宮内村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に下宮内村長谷川松之助・長谷川長五郎・長谷川七左衛門あり。五戸現存す。

九二　同郡鴻巣宿　慶長七年に元鴻巣村（本宿村）の宿場を移して鴻巣宿と称す。生出塚神社貞享四年天神像銘に鴻巣町之住長谷川善兵衛信幸。今泉村氷川社文化二年御神燈に鴻巣宿長谷川伊兵衛。加納村天神社嘉永五年水鉢に鴻巣宿長谷川弥兵衛。明治十五年旅宿長谷川富蔵。上谷新田浅間社明治十六年碑に上谷村新田長谷川与吉。明治三十五年白木綿問屋長谷川広三郎・茶商長谷川弥兵衛・漬物商長谷川金二郎・菓子商長谷川啓二郎・乾物商江戸屋長谷川アサ、本一町長谷川卯吉あり。

九三　同郡生出塚村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に上生出塚村長谷川長四郎・長谷川孫右衛門あり。現存無し。

九四　同郡小松原村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に小松原村長谷川幸助・長谷川門右衛門あり。六戸現存す。

九五　同郡吹上村　新宿村山神社明治十一年浅間碑に吹上邑長谷川林平。吹上神社明治四十三年碑に長谷川巳之助・長谷川熊吉あり。

九六　同郡前砂村（吹上町）　氷川社享和三年塞神碑に長谷川文治郎・長谷川平八・長谷川伊兵衛・長谷川又助・長谷川久太郎、慶応二年幟碑に長谷川七右衛門・長谷川与八・長谷川茂七・長谷川又助。三ツ木村輪光院天保五年馬頭尊に前砂村長谷川幸八.。明治四年組頭長谷川七右衛門あり。十五戸現存す。

九七　新座郡館村（志木市）　館村旧記に「天正四年三上氏来て新屋敷に居住す。近年、長谷川など名乗る者は作り名字也」と。宝幢寺嘉永二年地蔵尊に館村長谷川国蔵。宮原文書に「嘉永四年氷川宮寄進帳、館村長谷川金八・長谷川八五郎。明治四年大工中野長谷川茂八」。不動堂明治十四年不動尊に志木宿長谷川梅吉。明治三十年市場組長谷川栄蔵あり。

九八　同郡野火留宿村（新座市）　当村天明三年供養塔に長谷川彦衛門。明治三十五年水車所有長谷川順権。

九九　同郡大和田町（新座市）　明治三十五年蕎麦商長谷川新吉あり。

一〇〇　同郡菅沢村（新座市）　風土記稿菅沢村条に「当村は民戸五六十軒にして、大熊、荒井、金子、長谷川等を氏とす」。長谷川正二家文書に寛文四年菅沢村番星寺開基檀那長谷川忠兵衛。野火留宿安永八年石橋供養塔に菅沢村長谷川磯右衛門・長谷川三左衛門。明治五年馬農車持長谷川松五郎・嘉永元年生、馬持長谷川新吉・天保十三年生、農車持長谷川久蔵・同長谷川繁蔵・同長谷川半蔵あり。十七戸現存す。

一〇一　入間郡上富村（三芳町）　志木町敷島社明治初期狛犬に上富村長谷川善右衛門。明治七年成田山月参護摩講に上富村長谷川善右衛門あり。四戸現存す。

一〇二　同郡中富村（所沢市）　当村に此氏多く存す。毘沙門堂文化三年宝篋印塔に中富村長谷川利兵衛。多聞院文化四年馬頭尊に中富村長谷川徳右衛門・長谷川市兵衛。神明社文政十年御神燈に中富長谷川利兵衛。白川家門人帳に文久二年入間郡中富村長谷川政右衛門藤原都。志木町敷島社明治初期狛犬に中富村長谷川伊平次。明治七年成田山月参護摩講に長谷川万太郎。明治九年副戸長長谷川浅治郎・文化十一年生。本郷村東福寺明治九年水鉢に中富村長谷川徳右衛門。明治二十年茶業に長谷川伊左衛門・長谷川利左衛門・長谷川勝五郎・長谷川徳右衛門・長谷川勘兵衛・長谷川茂三郎・長谷川市郎右衛門。神明社明治三十九年碑に中富・長谷川喜代作・長谷川留吉・長谷川定七・長谷川万平あり。

一〇三　同郡上新井村（所沢市）　六所神社大正二年碑に長谷川権太郎。

一〇四　同郡上安松村（所沢市）　明治七年成田山月参護摩講に上安松村長谷川幾蔵・長谷川与右衛門。本郷村東福寺明治十年供養塔に安松新田長谷川春吉あり。十二戸現存す。

一〇五　同郡新堀村（所沢市）　明治五年名主長谷川源左衛門。明治十五年北広堂碑名簿に旧新堀長谷川馬次郎。明治二十年上山口村二番組消防夫長谷川茂三郎・長谷川源内・長谷川慶治郎あり。

一〇六　同郡中野村（入間市）　当村に此氏多く存す。慶応元年加藤義快翁石碑造立連名帳に当所・長谷川与兵衛・長谷川栄吉・長谷川辰五郎・長谷川佐平・長谷川勝太郎・長谷川政吾郎。明治三年中野村入用帳に長谷川常八・長谷川与兵衛・長谷川次郎左衛門・長谷川仁左衛門・長谷川佐兵衛・長谷川藤兵衛・長谷川八郎兵衛・長谷川久右衛門あり。

一〇七　同郡二本木村（入間市）　当村に此氏多く存す。寿昌寺享保十五年供養塔に二本木村中宿長谷川又兵衛。文政三年狭山本場茶連名帳に二本木村長谷川仁左衛門。天保三年狭山茶場碑記に二本木村長谷川藤右衛門貞保。中野村慶応元年加藤義快翁石碑造立連名帳に下しく・長谷川八郎兵衛・長谷川勘吉・長谷川太郎兵衛・長谷川浅吉・長谷川音八・長谷川茂八・長谷川七兵衛・長谷川良助・長谷川熊五郎・長谷川藤兵衛・長谷川龍蔵・長谷川宇右衛門。明治九年副戸長長谷川半左衛門・弘化元年生。明治二十六年霜災救助表に長谷川寅松あり。

一〇八　同郡川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「承応二年三月過去帳表具之紙は長谷川七郎兵衛等造立す。亮源・長谷川七郎兵衛・酉年七月。法典・長谷川市左衛門・午年十月。妙久・長谷川内方・申年三月。道泉・長谷川市左衛門子・巳年六月」。連雀町熊野社文化二年水鉢に御門前長谷川鉄五郎。天保三年狭山茶場碑記に川越鴫町長谷川重右衛門凡貞。氷川社明治三十三年玉垣碑に長谷川新右衛門・長谷川半三郎・長谷川蔦次郎・長谷川才五郎。福岡村水天宮明治三十三年碑に菓子製造業高沢町長谷川生太郎。明治三十五年菓子商長谷川佐市・菓子パン商明治堂長谷川蔦次郎・小間物商会津屋長谷川為七・砂糖商長谷川才五郎・米穀問屋小松屋長谷川新右衛門あり。

一〇九　同郡砂新田（川越市）　当村に此氏多く存す。風土記稿砂新田条に「弘治元年に本山修験常蓮坊と云るもの岸村より来り住し故村名を常蓮坊と改めり。此人は慶長六年二月十一日死せり。子孫源八は当所の名主にて、彼常蓮坊の墳は今も源八が宅地の内に残れり」。入間郡誌砂新田条に「京都三宝院の富家に浄蓮坊法眼なるものあり、弘治元年の頃此地に来り住す。其子孫源八・名主を務む。常蓮坊墓は村の中央・長谷川氏の庭中にあり、立派なる墓所なり」と見ゆ。当村は円西新田或は常蓮坊新田と称し、慶安年間に三上新右衛門が砂村から移住して名主となり砂新田と改称した。源八は本名長谷川氏なれば、常蓮坊は当村出身の修験にて中世以来の土着者なり。

一一〇　同郡古谷上村（川越市）　古谷神社明治十七年金刀比羅碑に古谷上邨沼端長谷川安左衛門あり。三戸現存す。

一一一　同郡今福村（川越市）　志村文書に「今福村開発人、寛文十一年家作引移る長谷川源右衛門（現主長谷川貢）」。菅原神社文久三年碑に長谷川菊蔵あり。六戸現存す。

一一二　同郡小室村（川越市）　氷川社明治四十一年水鉢に長谷川作次郎・長谷川吾平あり。十戸現存す。

一一三　同郡多和目村（坂戸市）　当村に此氏多く存す。天神社寛政十年御神燈に長谷川市左衛門、文政九年馬頭尊に長谷川権次。岩殿観音堂文化二年宝篋印塔に田波目邑長谷川直左衛門。小山村三福寺文化三年常夜燈に入間郡下田波目村長谷川重左衛門。明治九年副戸長長谷川忠次郎・寛政十二年生（組頭）あり。

一一四　高麗郡仏子村（入間市）　明治三十五年織物製造長谷川槍太郎あり。二戸現存す。

一一五　同郡上広瀬村（狭山市）　明治二十七年地租調査に長谷川勇吉・十四円、長谷川団三（隣村の柏原村住人か）あり。次項参照。

一一六　同郡柏原村（狭山市）　風土記稿柏原村条に「旧家者里正武兵衛、長谷川を氏とす。先祖は長谷川内膳久吉と称す。古書若干ありしが、故ありて百年前に散逸すと云ふ。天正年間の水帳を蔵す」。先祖は小名半貫居住の半貫氏を称す。入間郡誌に「柏原村白髭神社は明徳四年半貫内膳再建す」と。天正年中以来田地并に先祖系図書（長谷川文皓所蔵）に「扨又昔入間川格別大水にて川辺村々押流され、当村も本宿より、はけ上へ登り所々に住所し、半貫内膳久吉は谷の出水ありし所に屋敷取りして住居す。半貫内膳屋敷は四角四面なり、入内手のもの今に所持する、其近所名所今に半貫というなり。扨又川越の城主は田波目大がけの城へ打向、内膳かせいせしに、大がけの城よりいなのひ原へ出張りして戦いし高麗新節次と言かた（大がけ城の宿谷氏家臣）つかいに内膳懸合打死せしいふ云々。半貫苗字は新左衛門へ譲りし候」。また同家文書に「柏原も小田原領分成、元亀年中の頃、半貫内膳は前地等取立る、乱世の砌りにて、たよりにもなるべきとて、前地惣左衛門に虚無僧浪人坏の宿をいたさせし、内膳は女子計にて男子なし、然処に甲斐の信玄家之浪人惣左衛門来る、是をしりて近村内膳名跡にいたしたきよしを申、浪人答て拙者家名をなのらせ賜う事ならば名跡に可成なり、内膳承知して婿に極め家督を譲りし也、依之長谷川内膳は家業は知らず浪人格にて暮す也、扨又天正十八年小田原氏照御時代に落城なり。半貫時代之先祖は稲野井の原合戦にて討れし共有、長谷川内膳を先祖とせしなり。内膳代には前地十七軒取立被置候所に段々減少す、残り二軒に相成。安永八年六月吉日、長谷川長翁坊久琛、祖父武兵衛の話をもとに記す」と見ゆ。婿の長谷川氏は多和目村出身か。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に「寛政期、武州柏原長谷川又五郎・俳号大兆」。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、柏原村長谷川六之丞、柏原村本宿長谷川七左衛門」。長谷川文書に安政七年名主長谷川六之丞倅代三郎・年二十三、慶応二年三峰山講中・長谷川五郎平・長谷川伝七・長谷川春蔵。女影村霞野神社文久元年甲源一刀流奉納に長谷川六之丞啓里。元治元年名主長谷川武兵衛。私塾師匠名主長谷川六之丞・明治五年没。明治九年副区長長谷川五郎平・天保九年生。明治二十九年材木商長谷川百太郎・同長谷川平吉・絹織物商長谷川勇吉・織物製造長谷川団三あり。長谷川氏十四戸、半貫氏十一戸現存す。

一一七　同郡田波目村（日高市）　明治十六年永続講員長谷川吉五郎あり。現存無し。

一一八　比企郡釘無村（川島町）　当村嘉永四年馬頭尊に釘無村長谷川吉五郎あり。現存無し。

一一九　同郡松山町　箭弓神社明治三十一年碑に松山町長谷川鉚二郎。

一二〇　同郡宮鼻村（東松山市）　八幡社寛文十一年庚申塔に宮鼻村長谷川□右衛門あり。現存無し。

一二一　同郡福田村（滑川町）　明治九年議定書に長谷川清次郎。現存無し。

一二二　同郡菅谷村（嵐山町）　当村に此氏の旧家あり。七戸現存す。

一二三　大里郡熊谷宿　熊谷宿百石組に「慶安元年、長谷川三左衛門。宝暦十年、本町北屋敷持主長谷川与右衛門。嘉永元年、長谷川与右衛門」。石上寺嘉永二年庚申塔に長谷川市兵衛。上州榛名神社安政二年双竜門彫刻に武蔵熊谷宿長谷川源太郎。明治十三年染物職長谷川芳蔵。三ツ木村三ツ木神社明治二十五年碑に熊谷筑波町長谷川平八.。明治三十五年桶商長谷川平蔵・長谷川善太郎あり。

一二四　同郡村岡村（熊谷市）　明治七年小林文書に長谷川弥太郎あり。四戸現存す。

一二五　同郡平塚新田（熊谷市）　下奈良村明治二十七年東条筆子碑に平塚新田長谷川新七あり。現存無し。

一二六　同郡小泉村（大里町）　常永寺寛延二年愛宕様に長谷川平兵衛あり。一戸現存す。次項参照。

一二七　同郡向谷村（大里町）　比企郡山田村贄田文書に「永禄元年成田佐衛門佐家中之覚、二十貫文・小泉住・長谷川伊与守」と見ゆ。当村字小泉住人か。六戸現存す。

一二八　同郡中恩田村（大里町）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

一二九　同郡押切村（江南町）　八幡社天明六年御神燈に長谷川杢左衛門・長谷川新左衛門あり。十一戸現存す。

一三〇　同郡三ツ本村（江南町）　野原村文殊寺嘉永元年大銀講碑に三ツ本村長谷川伊勢五郎。明治七年柴田文書に北・長谷川光方・長谷川貴望。明治九年副戸長長谷川宗治・文政三年生。明治十八年最上農名簿に長谷川宗治・耕宅地十四町六反歩・山林三十六町歩所有。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流三本村長谷川九十郎・長谷川亀三郎。上岡妙安寺観音堂明治三十一年碑に三本長谷川米三郎。大正四年県会議員調に長谷川宗治・安政三年生・国税四百四十円。衆議院議員となる。小久保条参照。十七戸現存す。

一三一　男衾郡本田村（川本町）　明治三年小園村石田文書に本田村名主長谷川和七.。明治九年戸長長谷川長栄・天保二年生。県会議員農業長谷川新三郎・安政二年生あり。一戸現存す。

一三二　幡羅郡下奈良村（熊谷市）　当村に此氏多く存す。年番名主長谷川佐右衛門。明治九年副戸長長谷川佐一郎・天保十二年生。明治二十七年東条筆子碑に下奈良村長谷川貞弥・長谷川庄平・長谷川益一.。信州木曽御嶽山清滝新道端昭和五年碑に大里郡下奈良長谷川健治あり。

一三三　同郡奈良新田（熊谷市）　田島村明治八年富士嶽碑に奈良新田長谷川治平あり。八戸現存す。

一三四　同郡東方村（深谷市）　岡村南寅稲荷社明治三十二年碑に東方長谷川丑五郎あり。七戸現存す。

一三五　同郡妻沼村　聖天旧記に「文禄三年、女沼郷古百姓長谷川内匠源兵衛」。文禄三年名主田久玄蕃の御用留帳に「徳川家康が新田郡太田町へ参向の折、玄蕃宅を本陣とし、従者の井伊兵部大輔は長谷川内匠之助宅へ宿泊す」と見ゆ。聖天宮文政十年門前碑に中町長谷川初五郎、天保七年碑に長谷川与右衛門、天保十年二十三夜塔に上町長谷川宇右衛門、慶応三年石道之碑に当所長谷川仁右衛門・長谷川喜兵衛。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州妻沼宿長谷川森三郎、清滝新道端昭和五年碑に妻沼町講長谷川定次郎。明治三十五年八百屋長谷川仁三郎・米穀商長谷川三七・小間物商長谷川正太郎・桶商長谷川丑五郎あり。

一三六　同郡上須戸村（妻沼町）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

一三七　同郡弥藤吾村（妻沼町）　聖天旧記に「弥藤吾村、享和二年名主長谷川仲吾、組頭長谷川猪之吉」。明治九年副戸長長谷川伊之吉・天保十四年生。私塾師匠長谷川仲吾・明治十二年没六十一歳あり。十一戸存す。

一三八　同郡日向村（妻沼町）　長井神社寛政十二年御神燈に長谷川平吉あり。一戸現存す。

一三九　榛沢郡深谷町　明治三十五年理髪店長谷川竹次郎・長谷川浅太郎。原郷楡山神社明治四十二年碑に深谷町長谷川竹次郎あり。

一四〇　同郡中瀬村（深谷市）　中瀬神社明治四十一年碑に長谷川岩次郎あり。一戸現存す。

一四一　同郡上野台村（深谷市）　光厳寺文政九年水鉢に当所長谷川定八・長谷川淳蔵。八幡社嘉永元年鎧奉納に長谷川新吉、明治四十四年碑に長谷川隆十郎・長谷川繁三・長谷川鹿松。上州榛名神社明治四十年御神燈に武蔵国藤沢村上野台・長谷川隆十郎・長谷川繁蔵あり。十二戸現存す。

一四二　同郡山河村（岡部町）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

一四三　同郡岡村（岡部町）　当村に此氏の旧家あり。十五戸現存す。

一四四　同郡今泉村（岡部町）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

一四五　同郡針ヶ谷村（岡部町）　当村に此氏多く存す。農業長谷川龍吉の子盛枝・号梧洲は社会事業功労者にて昭和八年没五十七歳なり。

一四六　同郡寄居町　明治三十五年建具職長谷川米次郎・桶職長谷川松蔵・豆腐屋長谷川啓蔵あり。

一四七　同郡小和瀬村（本庄市）　明治十七年牧西村連合議員長谷川宇一郎。稲荷社明治四十四年碑に長谷川芳三郎・長谷川忠三・長谷川其吉あり。四戸現存す。十三項参照。

一四八　児玉郡本庄宿　金鑽社宝暦十一年墨書銘に新田町長谷川嘉七・長谷川権之丞。明治四年諸井文書に台町長谷川彦十.。明治三十五年理髪店長谷川みよ・木賃宿長谷川彦十・糸繭商長谷川長五郎・生魚商長谷川弥介あり。

一四九　同郡児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に長谷川佐太夫・長谷川藤衛門、延享二年御神燈に長谷川九右衛門、明治二十三年御嶽講碑に長谷川新作あり。

一五〇　同郡稲沢村（児玉町）　稲聚神社明治三十年碑に長谷川福太郎・長谷川馬太郎あり。二戸現存す。

一五一　同郡下真下村（児玉町）　児玉記考に「旧家田島・中島・長谷川、右三姓も亦旧家にして村治上大ひに功労あり」。万治三年伝書之事（坂本文書）に「天文六年、真下源左衛門（坂本氏先祖）は甲州武田家へ行き家臣となる、甲州浪人斎藤伊勢あり。武田氏亡びて、武州金久保城主斎藤摂津守を頼み居る。慶長十九年、真下家臣斎藤氏は後に長谷川と成る、長谷川内匠」と見ゆ。斎藤別当実盛は本姓在原姓長谷川氏にて、此の系統か。斎藤条参照。三戸現存す。

一五二　同郡中新里村（神川町）　御霊社元治元年碑に長谷川伊五郎あり。四戸現存す。

一五三　同郡関村（美里町）　当村に此氏多く存す。浅間社明治四十三年碑に長谷川鷲十郎・長谷川福太郎・長谷川藤蔵・長谷川熊吉・長谷川源太郎・長谷川清三郎・長谷川米吉・長谷川銀次郎・長谷川浜五郎・長谷川多市・長谷川ムメ・長谷川幸七・長谷川角太郎・長谷川宇内・長谷川照雄・長谷川長行高山あり。

一五四　同郡阿那志村（美里町）　当村明治十三年廻国塔に長谷川茂之丞あり。一戸現存す。

一五五　那賀郡猪俣村（美里町）　用土村明治十三年仙元碑に猪俣村長谷川今吉あり。二戸現存す。

一五六　賀美郡長浜村（上里町）　明治二十一年皇国武術英名録に奥山念流柔術長浜村長谷川要三郎あり。四戸現存す。

一五七　秩父郡大宮町　明治八年醸造税に長谷川金吉・納税二十円、長谷川長吉・納税八円。国神神社明治三十四年碑に大宮町長谷川清蔵。明治三十五年酒醤油商柳田屋長谷川珍吉・酒商長谷川清蔵あり。

一五八　同郡小鹿野町　明治二十年上一丁目長谷川兵太郎あり。

一五九　同郡上田野村（荒川村）　当村江田奛所蔵文書に「永徳二年四月二十日、長谷河兵衛太郎親資は、小山義政退治のため、去康暦二年六月以来、武州国府、大里郡村岡御陣、下野国足利御陣、幡羅郡長井、横見郡吉見御陣、埼玉郡岩付御陣、太田庄、下野国小山鷲城の軍忠せしことを注進す」と。鎌倉明王院文書に「応永二十五年三月二十日、上野国浄法寺内、平塚、牛田、岩井三ヶ所事、長谷河山城守が押妨す」と見ゆ。当村長谷川氏先祖に関係あるか。八戸現存す。

一六〇　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・長谷川信・三十円・三十三円、長谷川兼吉・十一円・三十六円、長谷川真・十五円、長谷川泰蔵・十円、尾間木村（浦和市）・長谷川清左衛門・百七十六円・九十六円、長谷川松男・百十一円・五十六円、笹目村（戸田市）・長谷川重吉・九円、鴻巣町・長谷川義男・九円・四十二円、長谷川弥兵衛・十五円・十六円、桶川町・長谷川亀吉・九円・三十三円、長谷川民蔵・十六円・二十二円、田宮村（杉戸町）・長谷川又太郎・九円、幸松村（春日部市）・長谷川市五郎・十円・二十六円、岩槻町・長谷川宗七・百五十二円・二十五円、羽生町・長谷川忠兵衛・十六円、三田ヶ谷村（羽生市）・長谷川弥平次・十円、忍町・長谷川弘治・七十六円・八十八円、長谷川準之助・七十円・八十四円、長谷川長七・五十円・七十円、星河村（行田市）・長谷川一重・十九円、北河原村（行田市）・長谷川道也・六百六円、長野村（行田市）・長谷川峰作・二十七円・五十円、須加村（行田市）・長谷川正吉・百六十七円、長谷川忠次郎・二十九円、川越市・長谷川為七・百四十八円・八十四円、長谷川忠三郎・二十一円・五十一円、長谷川貞平・二十一円、所沢町・長谷川正雄・二十円、富岡村（所沢市）・長谷川伊三郎・十円、小手指村（所沢市）・長谷川権太郎・十六円・三十四円、柏原村（狭山市）・長谷川団三・十六円、熊谷町・長谷川不功・四十一円、奈良村（熊谷市）・長谷川賢次・二十一円、御正村（江南町）・長谷川宗治・百七十一円、長谷川光治・十八円、長谷川鶴吉・十三円、妻沼町・長谷川治良・二十七円、明戸村（深谷市）・長谷川龍次郎・二十九円、藤沢村（深谷市）・長谷川精一・三十六円、東児玉村（美里町）・長谷川和蔵・二十三円、長谷川多市・二十円、秩父町・長谷川徳蔵・六百十六円・百五十九円、長谷川巳之吉・二百七十七円・百十四円、長谷川ふく・三十七円・二十五円」あり。

長谷河　ハセガワ　秩父、皆野等に存す。

枦木　ハゼキ　与野、春日部、入間、所沢等に存す。

櫨木　ハゼキ　浦和、蕨、所沢に存す。

支倉　ハセクラ　大宮、朝霞、志木、小川、大利根等に存す。

長谷倉　ハセクラ　忍城士にて、成田分限帳に「二十三貫文・長谷倉四郎兵衛、七貫五百文・長谷倉弥一左衛門」。

長谷崎　ハセザキ　富士見に存す。

馳澤　ハセザワ　東松山に存す。

長谷沢　ハセザワ　大宮、上尾等に存す。

一　忍城士の長谷沢氏　成田分限帳に「二十五貫文・長谷沢重左衛門」。

長谷澤　ハセザワ　川口、戸田に存す。

長谷島　ハセジマ

一　埼玉郡久下村（加須市）　明治三十五年箪笥製造長谷島金兵衛あり。現存無し。

二　同郡辻村（加須市）　久伊豆社文政十二年御神燈に長谷島利兵衛、安政三年狛犬に長谷島八五郎あり。長谷島氏三戸、長谷嶋氏二戸現存す。

長谷田　ハセダ　蕨、草加、八潮、川越、深谷等に存す。島根県邑智郡川本町七戸あり。

長谷高　ハセタカ　深谷に存す。

長谷地　ハセチ　川口に存す。

丈部　ハセツカベ　土師部（はせべ）の佳字なり。長谷部条参照。和名抄に安房国長狭郡丈部郷を波世豆加倍（はせつかべ）と註す。鴨川市大幡字作壁（さつかべ）に比定するが、大幡村の小名三十三ヶ所の内に作掛（さくがけ）を載せ、作壁は見えず。和名抄に越中国新川郡大部郷を載せ、高山寺本は丈部郷と載せる。東大寺要録に新川郡大部庄と見え、富山県史には丈部庄と解読してある。比定地は未詳。また、美濃国不破郡大部郷を載せ、丈部ともあり、比定地未詳。下野国芳賀郡丈部郷、河内郡丈部郷を載せ、比定地未詳。是等は大部郷であろう。安部氏の始祖・大彦命は大ノ国（後の百済、伽耶地方）の王子の意味で代々の襲名なり。安部氏は大国渡来人の大部族の首領であり、東国の安部氏配下の丈部と記されたものは大部の書誤りである。丈部（はせつかべ）と称する部民は存在しない。アベ、オオ、オオベ条参照。

一　武蔵国造族の丈部直　続日本紀・天平宝字八年条に「正六位上丈部直不破麻呂」。神護景雲元年条に「武蔵国足立郡の人外従五位下丈部直不破麿ら六人に姓を武蔵宿祢と賜ふ」と見ゆ。但し、続日本紀・写本に大部直と記す。古代氏族系譜集成及び西角井系図には「不破麿（足立郡司大領、大部直、武蔵宿祢の姓を賜ひ、武蔵国造と為す）」とあり。大部直が正訓なり。武蔵条参照。

二　下海上国造族の丈部直　古代氏族系譜集成に「兄多毛比命（武蔵国造）―五十狭茅宿祢―久都伎直（下海上国造、丈部直、孔王部直の祖）」と。天平十年駿河国正税帳に「下総国印波郡采女丈部直広成」。天平勝宝七年万葉集に「印波郡丈部直大麻呂」。続日本紀・天応元年正月条に「下総国印幡郡大領外正六位上丈部直牛養が蝦夷征討の軍粮を進上して外従五位下を授けられる」と見ゆ。印旛郡（いんば）は印旛沼周辺（印旛村、佐倉市）にあり。但し、武蔵国造と同族なれば大部直である。印旛郡生谷村（おぶがい、佐倉市）の飫富（おふ、おお、おほ）は大部（おおぶ、おぶ）の居住地なり。佐倉市飯田で昭和四十年出土した須恵器に「大」の墨書があり、大部のことと考えられる。

三　物部姓丈部氏　児玉党の祖・有道宿祢なり。天長十年二月紀に「常陸国筑波郡人散位正六位上丈部長道、一品式部卿親王家令外従五位下丈部氏道、下総少目従七位下丈部継道、左近衛大初位上丈部福道四人、姓を有道宿祢と賜ふ」と見ゆ。但し、物部氏系図に「大部豊日（大部連）―船瀬足尼（有道宿祢祖）」とあり。大部が正訓なり。有道条参照。

四　埼玉郡小針村（行田市）の丈部氏　平成十七年九月小針遺跡で、平安時代初期の住居跡から「丈部鳥麻呂」と刻まれた石の紡錘車が出土した。長谷部条十五項参照。

杖部　ハセツカベ　和名抄に伊勢国朝明郡杖部郷を鉢世都加倍（はせつかべ）と註し、高山寺本は波世津加へ（はせつかべ）と註す。。保々郷（四日市市）の内、中野村・小牧村・西村・市場村附近に比定するが、保々（ほぼ）はオオ、オホの転訛にて大郷に同じ。大部を丈部と書き、ハセツカベと称して杖部を用いる。

一　横見郡司杖部直　正倉院天平勝宝五年頃の庸布墨書銘に「□□国横見郡御坂郷日下部□人庸布壱段、郡司少領外正八位下勲十二等杖部直□□□」と見ゆ。

長谷戸　ハセド　忍城士にて、成田分限帳に「二十一貫文・長谷戸権六」。

長谷藤　ハセトウ　忍城士にて、成田分限帳に「三十五貫文・長谷藤主殿」。

長谷沼　ハセヌマ　大宮、鴻巣、幸手、狭山等に存す。福島県耶麻郡西会津町十一戸あり。

長谷野　ハセノ　桶川に存す。

長谷場　ハセバ　大宮、伊奈、坂戸、深谷等に存す。

長谷部　ハセベ　万葉集（小学館）に丈部をハセベと註す。土師（はせ、はぜ）の職業集団を土師部（はせべ）、丈部（はせべ）と称し、長谷部の佳字を用いる。古事記・雄略天皇条に「長谷部舎人を定む」とあり。大和国城上郡長谷郷の朝倉宮に坐す雄略天皇の御名代部にて天皇の舎人を云う。長谷郷は土師部の居住地より地名となる。和名抄に上総国長柄郡谷部郷を波世倍（はせべ）と註す、比定地は未詳。三河国碧海郡谷部郷を載せ、訓は無し。神護景雲二年九月紀に「参河国碧海郡人長谷部文選」と見え、谷部郷住人なり。岡崎市本郷は長谷部の森と称したと云う。また、三河国碧海郡鷲取郷を和之止利（わしとり）と訓じ、延喜式神名帳に和志取神社（岡崎市西本郷）を載す。西本郷の和志山古墳は長谷部直の祖で景行天皇の皇子五十狭城入彦命の陵墓であると云う。和名抄の谷部郷と鷲取郷は隣接地にあり、鷲（わし）はハシの転訛にて土師部（はしべ、はせべ）族の居住地なり。長谷川氏と同じく越後国・出羽国に多く存す。是は御名代部の長谷部では無く、土師部（はせべ）なり。○山梨県中巨摩郡白根町七十戸、竜王町三十戸。○長野県飯田市五十一戸。○新潟県中蒲原郡横越町三十三戸、岩船郡朝日村二十七戸、神林村二十戸、村上市六十三戸。○福島県南会津郡只見町三十戸。○山形県西置賜郡白鷹町六十三戸、飽海郡平田町四十四戸、南陽市四十八戸、長井市五十三戸、米沢市百二戸。○秋田県由利郡大内町二十七戸、河辺郡河辺町二十九戸、雄和町三十戸、北秋田郡比内町五十戸あり。

一　葛飾郡の長谷部　下総国葛飾郡大島郷養老五年戸籍（杉戸町）に「戸孔王部小国の母長谷部小宮売」と見ゆ。アナホベ条参照。

二　松山城士の長谷部氏　天正庚寅松山合戦図に「雷電山・大谷・平・岡郷・冑山方面城方・長谷部弥平次」あり。

三　岩附城士の長谷部氏　太田家譜に「太田譜代之士、長谷部筑前・子孫河越にあり」と見ゆ。

四　忍城士の長谷部氏　成田分限帳に「八十貫文・長谷部隼人、七十石・長谷部与左衛門」あり。

五　鉢形城士の長谷部氏　鉢形分限帳に「本国紀州伊都・長谷部宗七、本国土佐菊田・長谷部山城」あり。和歌山県伊都郡に現存無し。高知県に菊田の地名は無し。分限帳の本国は信用できず。次項参照。

六　小前田衆の長谷部氏　和名抄の三河国碧海郡谷部郷（はせべ）は地名附会なり。大里郡神社誌に「小前田村諏訪神社は、永禄五年御前田羽雌箭の住人長谷部兵庫亮吉長が現在の地に奉移せられたりと云ふ。黒田村長谷部家の書継ノ一節に、長谷部蔵人吉房（吾先祖参州碧海郡住、義植公忠信也）―源次郎吉久（享禄年中、関東に下り鎌倉に有。天文年中小田原来る）―兵庫助吉長（兵術を顕し於御当家普伝之。天文比、相州小田原に有り、永禄元年武州鉢形に来り、同五年に此所に土地を望て屋敷を取立る）」と見ゆ。四十五項では既に天文年中に小前田村に土着している。風土記稿小前田村（花園町）条に「旧家者兵五郎、氏を長谷部と称し、先祖を兵庫といふ。かれが所蔵の文書によれば、この外、備前守、肥前守など称せし人もあり。兵庫は鉢形北条に仕へ、氏邦落去の後、農民となり当国に住せり。又村内荒川の辺に備前守居住せし跡と云ふあり、今も屋敷蹟と呼べり。成田氏長、及び北条氏邦よりの文書あり。猫岩、荒川の崖なり、長谷部備前守居住せし処なり」と。同家文書に①「永禄八年五月、藤田之内甘糟之商人長谷部源三郎、五疋五駄、当地之足軽、不可有相違者也、成田氏長花押」。藤田領鉢形之内甘糟村（寄居町）で、荒川の辺にて泉福禅寺付近なり。②「三月吉日、長谷部肥前守殿」。③「丁卯霜月朔日（永禄十年）、北条氏邦奉行の三山は、大森越前守と長谷部兵庫助に印判状を発給し、来年より六年間の諸役を免除し、御前田郷の荒野を地下人等相集め開発せしむ」。④「庚午極月十一日（元亀元年）、馬上五騎・歩衆五人の小前田衆を確認し、彼地の不入を申付く。長谷部兵庫助・関口又三郎・関根郷左衛門尉・保津見雅楽助・松本助三郎、以上五騎馬上。福島平三郎・若林孫五郎・田畑弥太郎・坂本新三郎・八木源四郎、以上歩衆。小前田衆中、三山奉之」。⑤「元亀二年辛未五月十六日、小前田衆十一人の諸役を免除し、歩衆を馬上衆になさんとし、その忠信を命ず。長谷部兵庫助殿・関根郷左衛門殿・関口又三郎殿・保津見内蔵佐殿・松本助三郎殿・八木源四郎殿・福島平三郎殿・玉田弥太郎殿・高橋小太郎殿・若林孫五郎殿・坂本新三郎殿。三山奉之」。⑥「酉三月二十日（元亀四年）、田中村百姓の還住を命ず。代官長谷部肥前守殿・田中百姓中、氏邦朱印」。榛沢郡田中村応正寺裏の堀ノ内は代官館跡と云われる。⑦「辰十二月朔日（天正八年）、北条氏邦は、塩荷を押うべき範囲を定む、栗崎・五十子・仁手・今井・宮古島・金窪を結ぶ利根川両岸、神流川東岸は、押之取るべし。長谷部備前守殿」と見ゆ。小前田村に長谷部氏は現存無し。子孫は東京へ移転し、②、④、⑤、⑦の文書は一族の黒田村長谷部正富家所蔵。①、③の文書は小前田村町田愛二家所蔵す。

七　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「勘定頭支配・二両余二人扶持・長谷部玄七」。明治四年忍藩士族名簿に「二両余二人扶持・長谷部常治」あり。

八　埼玉郡岩槻町　久伊豆社文化八年井戸枠に久保宿町長谷部武兵衛。岩槻誌に「岩槻田中町、慶応末年、持高十五石・組頭長谷部惣右衛門」。明治三十五年酒造業長谷部惣右衛門・長谷部弥三郎・長谷部たけ・長谷部才次郎あり。

九　同郡蓮田村（蓮田市）　当村に此氏多く存す。中丸村八幡宮文化七年阿夫利碑に蓮田村長谷部安右衛門。上町文政十二年神明碑に長谷部清八.。明治九年副戸長長谷部惣吉・文化九年生。明治三十年人名録に蚕業長谷部庄左衛門・元治元年生。須賀神社明治四十年敷石碑に長谷部伊吉・長谷部惣兵衛・長谷部文太郎。長松寺明治四十二年馬頭尊に長谷部彦助あり。

一〇　同郡北大桑村（大利根町）　当村安永六年庚申塔に長谷部喜右衛門。香取社弘化三年狛犬に長谷部紋治郎あり。現存無し。

一一　同郡芋茎村（騎西町）　医王寺板碑に「安元二年卯月、橘氏」と、平安時代なり、その背面に「長谷部氏之先祖也、時文政三年六月、右末孫新八改之」と追刻あり。神明社文政二年庚申塔に長谷部武助・長谷部豊吉。明治九年副戸長長谷部豊吉・文政五年生あり。十二戸現存す。

一二　同郡道地村（騎西町）　当村文政十二年地蔵尊に道地村長谷部栄吉。稲荷社慶応二年幟碑に長谷部栄助あり。現存無し。

一三　同郡上羽生村　毘沙門堂天保十一年石華表碑に松原中・長谷部多四郎あり。隣村の下岩瀬村住人か。

一四　同郡下岩瀬村（羽生市）　川越町氷川社文化元年御神燈に羽生領下岩瀬村名主長谷部多四郎。当村文政二年湯殿山碑に長谷部多四郎・長谷部畦三郎・長谷部喜藤次・長谷部良蔵。八幡社弘化三年三峰碑に当所長谷部熊太郎。明治九年戸長長谷部信之助・天保七年生、副戸長長谷部久右衛門・文政五年生。明治十八年最上農名簿に長谷部信之助・耕宅地四町九反歩・山林三反歩所有あり。六戸現存す。

一五　同郡小針村（行田市）　平成十七年九月小針遺跡で平安時代初期の住居跡から「丈部鳥麻呂」と刻まれた石の紡錘車が出土した。土師部（はせべ）にて丈部（はせべ）と記す。後世は佳字の長谷部を用いる。日枝社天明二年庚申塔に長谷部助右衛門、寛政九年水鉢に長谷部十太郎、文化十四年碑に長谷部七右衛門・長谷部十太郎・長谷部又左衛門・長谷部小治郎。神仙寺天明五年供養塔に長谷部助右衛門、嘉永六年敷石供養塔に長谷部初五郎・長谷部万蔵・長谷部千太郎・長谷部市之丞。下須戸村御嶽社文政元年浅間碑に小針長谷部七五郎あり。九戸現存す。

一六　同郡下須戸村（行田市）　御嶽社文政元年浅間碑に長谷部佐七郎・長谷部熊吉あり。一戸現存す。

一七　同郡下忍村（行田市）　遍照院天保九年二十三夜塔に当所長谷部彦八・長谷部金蔵。琴平社明治八年御神燈に長谷部幸次郎・長谷部勘重あり。五戸現存す。

一八　足立郡草加町　明治三十五年理髪店長谷部文次郎あり。

一九　同郡榛松村（川口市）　不動院寛保元年宝篋印塔に長谷部太郎兵衛あり。現存無し。

二〇　同郡新宿村（吹上町）　不動堂寛政六年馬頭尊に忍新宿村長谷部治右衛門。山神社明治十一年浅間碑に長谷部竹治郎・長谷部弥平治・長谷部新左衛門、明治四十二年碑に北新宿長谷部良八・長谷部助次郎あり。五戸現存す。

二一　同郡前砂村（吹上町）　中井村西光院安永七年筆子碑に前砂村長谷部辰治郎あり。現存無し。

二二　新座郡志木宿　宝幢寺嘉永三年水鉢に長谷部豊蔵。不動堂明治十四年不動尊に志木宿長谷部源五右衛門あり。

二三　同郡大和田町（新座市）　普光明寺宝暦十四年地蔵尊に大和田町長谷部源七.。氷川社文政二年文書に組頭長谷部平兵衛、百姓代長谷部三治。明治五年戸長長谷部嘉平治。明治三十五年薬商加賀商店長谷部卯八・瀬戸物商敷島屋長谷部清吉・料理店三河屋長谷部源吾・青物商長谷部徳太郎あり。十四戸現存す。

二四　入間郡扇町屋村（入間市）　上の地蔵堂元禄五年碑に扇町谷村之住長谷部勘左衛門・長谷部彦兵衛・長谷部次兵衛。長谷部家墓地宝永二年供養塔に長谷部与右衛門、天明元年供養塔に長谷部代次郎、文政八年供養塔に長谷部太七茂雅。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に「寛政期、扇町屋長谷部吉右衛門・俳号鳥暁」。慶応二年扇町屋下倉名主長谷部太七は打毀しにあう。明治九年戸長長谷部太七・天保十四年生。明治十六年扇町屋銀行発起人に長谷部仙五郎・長谷部代次郎・長谷部寛三.。明治三十五年飲食店長谷部幸八・繭問屋長谷部友次郎あり。八戸現存す。

二五　同郡川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に連雀町石工長谷部与五郎。明治三十五年櫛製造長谷部金之助・彫刻業長谷部与五郎・飲食店小松屋長谷部善太郎・菓子商長谷部時次郎あり。三項参照。

二六　同郡今福村（川越市）　菅原神社文久三年碑に長谷部由太郎あり。六戸現存す。

二七　同郡池辺村（川越市）　戸宮村御嶽社明治十三年水鉢に池辺村長谷部万吉。稲荷社明治九年水鉢に池辺村長谷部兼吉・長谷部源治郎・長谷部銀造、明治三十三年碑に長谷部馬吉・長谷部久八・長谷部藤吉・長谷部勝五郎・長谷部丑蔵・長谷部晋吉。熊野社明治三十九年碑に長谷部留五郎・長谷部藤吉・長谷部馬吉・長谷部久八・長谷部長兵衛・長谷部勝五郎・長谷部丑蔵あり。五戸現存す。

二八　同郡越生町　県会議員医師長谷部秀邦・明治十六年生・寄居町出身。

二九　高麗郡上新田村（鶴ヶ島市）　長福寺元文四年愛宕将軍地蔵に高麗郡上・中新田長谷部三右門・長谷部与右門あり。上新田村に二戸、中新田村に一戸現存す。

三〇　比企郡上小見野村（川島町）　当村享和二年馬頭尊に上小見野村長谷部源五兵衛。光善寺安政六年庚申塔に長谷部色吉・長谷部源造・長谷部氏郎・長谷部兵次。明治九年戸長長谷部清次郎・文政四年生、副戸長長谷部覚造・弘化元年生。松山町箭弓神社明治三十一年碑に小見野村長谷部惣平・長谷部良吉・長谷部吉太郎あり。九戸現存す。

三一　同郡松山町　箭弓稲荷社天保六年棟札に上町長谷部源右衛門。明治三年明細帳に組頭長谷部甚四郎。明治三十五年煙草穀商長谷部安五郎。

三二　同郡野田村（東松山市）　当村に此氏多く存す。比企郡神社誌に「大字野田、文亀二年二月当郷草分け長谷部右内清信・守護神赤城大明神を祭祀す。元草分け清信末孫長谷部喜夫」と見ゆ。西明寺文政十三年地蔵尊に野田村長谷部長七.。当村天保十四年庚申塔に野田邑講中長谷部平兵衛、万延元年馬頭尊に野田村長谷部平兵衛・長谷部啓治郎。八幡社安政三年御神燈に長谷部平三郎・長谷部国二郎・長谷部卯兵衛・長谷部茂兵衛・長谷部長七.。下福田村元治二年小林三徳奉納算額にノダ長谷部卯兵衛高義。明治九年戸長長谷部茂連・天保十一年生、副戸長長谷部清三郎・弘化四年生あり。

三三　同郡葛袋村（東松山市）　当村に此氏多く存す。寛延二年庚申塔に葛袋村長谷部仲馬・長谷部儀三郎、文政九年廻国塔に葛袋村内大平・長谷部倉吉・長谷部栄治郎あり。

三四　同郡下唐子村（東松山市）　天明六年神戸村大野文書に唐子村組頭長谷部長右衛門。七戸現存す。また、唐子神社忠魂碑に長谷部常吉・長谷部義郎・長谷部久三郎・長谷部保蔵・長谷部伝三郎・長谷部和三郎・長谷部保次・長谷部政平・長谷部初五郎・長谷部伊三郎・長谷部庄三郎・長谷部竹次郎・長谷部忠七・長谷部半平・長谷部滝次郎・長谷部定一・長谷部幸吉・長谷部光三・長谷部彦次郎・長谷部勇吉あり。当村及び葛袋村等の住人なり。

三五　同郡下押垂村（東松山市）　明治六年反別帳に長谷部俊司・一町一畝歩。明治二十九年川越商業銀行発起人医師長谷部信恭・六十株三千円所有。松山町箭弓神社明治三十一年碑に野本村長谷部信恭あり。現存無し。上押垂村に三戸存す。

三六　同郡高坂村（東松山市）　紀州高野山清浄心院過去帳に「逆修浄西禅定門・武州入西郡高坂長谷部孫右衛門立之・慶長四年八月九日」あり。

三七　同郡月輪村（滑川町）　広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑に月ノワ長谷部代助・長谷部歌吉。明治九年副戸長長谷部代吉・天保七年生。明治四十四年東上鉄道株主長谷部三代吉・百株所有あり。十四戸存す。

三八　同郡中爪村（小川町）　八和田神社明治三十三年碑にナカツメ長谷部伊三郎あり。三戸現存す。

三九　横見郡大串村（吉見町）　観音寺天保十五年供養塔に長谷部忠左衛門あり。一戸現存す。

四〇　男衾郡竹沢郷勝呂村（小川町）　雷電宮碑に「建武元年三月十日長谷部勝呂之丞・奉勧請。所年を歴て破壊に依て二十五代長谷部幸吉再興す、于時明治八年十一月十日書を改む」。ふるさとめぐり（山田稔著）に「鉢形松山の落城により、原川・小笠原・富田・山田・吉田・長谷部氏等々、竹沢でも現存する主な家のほとんどがこの時帰農した」と。風土記稿勝呂村条に「勝呂村は長谷部勝呂殿と称せし人の領知なるよし。村北山際に其屋敷跡存す、其所を下勝呂と唱ふ。又村内西光寺に長谷部が妻女の墓あり、其子孫今も比企郡小川村の農家に残れり」と見ゆ。四戸現存す。小川村に現存無し。

四一　大里郡小八ツ林村（大里町）　集会所裏天保六年馬頭尊に長谷部吉五郎・長谷部長八.。春日神社嘉永元年御神燈に長谷部平次郎あり。四戸現存す。

四二　榛沢郡寄居町　明治三十五年医師長谷部研秀・挽割商長谷部太一郎あり。二十八項参照。

四三　同郡桜沢村（寄居町）　用土村明治十三年仙元碑に桜沢村長谷部伝吉あり。現存無し。

四四　同郡用土村（寄居町）　明治十三年仙元碑に当村長谷部茂平あり。一戸現存す。

四五　同郡末野村（寄居町）　元治二年末野村諸事恵に長谷部松五郎・長谷部仙三郎あり。四戸現存す。

四六　同郡小前田村（花園町）　六項参照。元和八年町田日記に「天文七年北条氏康に責られ上杉敗走す。此旗下藤田の城主藤田左衛門佐小野邦房、町田の住町田九郎左衛門熙秀、小前田の住大森越前守・長谷部備前守、氏康に陣参。天正十八年、浅野・木村は小前田郷羽雌箭の松原に陣を取り、此時羽雌箭城には□代宮田帯刀相守る、為加勢長谷部肥前守へ被申付寄手大軍を以て忽焼払はれ両人共討死す。文禄元年長谷部肥前守息五郎左衛門、長谷部兵庫之助大将にて浪人の原田・服部・出浦・山崎・石塚等一同小前田新田を開発し、慶長元年迄伊奈備前守殿御縄入あり。慶長五年町田親子並に長谷部肥前守息五郎左衛門・同兵庫之助、相談の上、新田に諏訪大明神を勧請奉る」。長善寺寛保三年棟札に当邑助成之檀越長谷部五郎左右衛門・同苗友右衛門、寛政五年供養塔に長谷部兵五郎あり。現存無し。

四七　同郡黒田村（花園町）　前項長谷部兵五郎文書は、当村長谷部正富氏が所蔵す。私塾師匠修験長谷部諄盛・天保八年没六十六歳。長在家村稲荷社明治六年筆子碑に黒田村長谷部勇。私塾師匠神官長谷部勇・明治十九年没五十九歳。大里郡神社誌に「黒田村豊栄神社旧神職は、本山修験円蔵山長徳院、慶応四年復飾して長谷部勇と改名す。明治十七年長谷部中条、大正三年長谷部直記、社掌に補せらる」と見ゆ。一戸現存す。

四八　本庄宿　石神村石神社文久元年御神燈に長谷部十七吉。白川家門人帳に「文久四年、本庄宿刀剣鍛冶十七吉事・長谷部若狭国義」と、明治三十二年没す。其子鍛冶長谷部力造。明治五年諸井文書に七軒町年寄長谷部清二郎あり。

四九　那賀郡広木村（美里町）　安政四年加藤文書に長谷部小三郎。ミカ神社明治四十一年碑に当所長谷部九平・長谷部伊三郎あり。二戸現存す。

五〇　秩父郡大宮町　安永七年松本日記に大宮郷絹仲買長谷部又七.。明治三年酒商長谷部金吉。明治九年副戸長長谷部作治・弘化四年生。明治三十五年玩物商長谷部ハルあり。

五一　同郡奥沢村（東秩父村）　当村慶応二年庚申塔に長谷部太市。字腰村慶応二年庚申塔に長谷部熊治郎あり。一戸現存す。

五二　雑載　昭和三年興信録・所得税に「豊岡村（入間市）・長谷部瑛三・十二円、越生町・長谷部秀邦・三十三円、小見野村（川島町）・長谷部覚・二十七円、秩父町・長谷部豊作・五十一円」あり。

長谷見　ハセミ

一　埼玉郡下須戸村（行田市）　御嶽社文政元年浅間碑に長谷見善造あり。二戸現存す。

二　児玉郡本庄町　秩父郡国神神社明治三十四年碑に本庄町長谷見万平（酒造業）。昭和三年興信録に「長谷見一郎・所得税十一円・営業税二十八円」あり。一戸現存す。

三　同郡沼和田村（本庄市）　当村享保十一年供養塔に沼和田村長谷見□□□門・長谷見新右衛門。飯玉神社明治二十一年碑に長谷見兼吉あり。現存無し。

長谷美　ハセミ　妻沼村聖天旧記に「弥藤吾（妻沼町）草分農民にして、延宝年間・長谷美勘左衛門・長谷美仁兵衛、享和二年名主長谷美文四郎」。明治九年副戸長長谷美清内・文政七年生あり。十戸現存す。

長谷村　ハセムラ　朝霞に存す。

長谷目　ハセメ　三芳に存す。

枦元　ハゼモト　鴻巣、新座等に存す。

枦本　ハゼモト　浦和、大宮等に存す。

櫨元　ハゼモト　鳩ケ谷、幸手等に存す。

櫨本　ハゼモト　上尾、志木等に存す。

葉勢森　ハセモリ　浦和、上尾、宮代、所沢等に存す。

長谷屋　ハセヤ　長野県小県郡丸子町十二戸あり。

長瀬谷　ハセヤ　鴻巣に存す。

枦山　ハゼヤマ　鳩ケ谷、越谷、三郷、八潮、所沢、富士見、妻沼等に存す。

一　秩父町　昭和三年興信録に「枦山千草・所得税十三円」あり。現存無し。

櫨山　ハゼヤマ　桶川、朝霞等に存す。

長谷山　ハセヤマ　各市町村に存す。秋田県由利郡東由利町四十三戸、平鹿郡大森町三十戸、雄勝郡羽後町五十三戸あり。

羽曽部　ハソベ　三郷に存す。福島県喜多方市十九戸あり。

羽染　ハソメ　各市町村に存す。福島県大沼郡昭和村三十戸、南会津郡伊南村二十七戸あり。

秦　ハタ　渡辺（わたなべ）はハタナベと書く。葛飾郡千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に河原代村ハタ辺忠二郎・高須賀村ハタ辺藤五郎と見ゆ、両村の渡辺氏なり。海（わた）族は古代朝鮮語でバタ、パタ、ハタと称す。韓半島南部に紀元前四世紀頃から辰国が成長し、紀元前百八年に古朝鮮が滅亡すると、古朝鮮から多くの難民が南下し、辰国は馬韓（まはん、後の百済）、弁韓（ぴょんはん、後の加羅）、辰韓（ちんはん、後の新羅）の三韓が連盟体を編成し、馬韓の王が辰王を務めた。秦（はた）は海（バタ）の意味で、海岸部にあった弁韓の金官加羅（今の慶尚南道金海）の海洋民である。弁韓は百済や新羅に攻め滅ぼされ、加羅人は百済の勢力が強い時は百済人と称し、新羅の強い時は新羅人と称した。秦氏の祖・弓月君は秦始皇帝三世孫孝武王の後裔と称すが附会なり。日本書紀・応神天皇十四年条に「是の歳、弓月君・百済より来帰せり。因って奏して曰ふ、臣・己が国の人夫・百二十県を領して帰化す。然れども新羅人の拒ぐに因って、皆加羅国に留まれりと。爰に葛城襲津彦を遣はして弓月の人夫を加羅に召す。然れども三年を経るまで、襲津彦来らず」と見ゆ。百済人と称しているが加羅人なり。秦族渡来地の本拠地は山城国葛野郡太秦郷（京都府右京区太秦）である。太秦（うずまさ）の渦（うず）は太いので太（うず）と書いた。渦は海洋民の総称なり。勝（まさ、まさる）はスグリ、スグロとも称し、村主（すぐり）に同じでムラヌシの意味。本国朝鮮領主層の両班（文班、武班）である。姓氏録・摂津諸蕃の百済に「村主。意宝荷羅支王の後也」と、百済族と称すが大加羅（金海の古名）出身なり。勝氏配下の民を勝部（まさるべ）と云い、秦族勝部は、雄略紀に「秦酒公は百八十種の勝部を率いて、庸調絹縑を献ずる」と見ゆ。大宝二年豊前国戸籍帳に「塔里戸籍・秦部多耶留等の六十六人、加目久也里戸籍・秦部黒売等の二十六人、丁里戸籍・秦部椋売等の二百四十余人」を載せ、勝姓などを合わせて、計九十三パーセントが渡来系である。ウツミ、スグリ条参照。此の一族は、古事記・仁徳天皇条に「秦人を役ちて茨田堤及茨田三宅を作り」と見え、姓氏録河内諸蕃に「秦人、秦宿禰同祖・弓月王之後也」と見ゆ。和名抄の河内国茨田郡幡多郷（はた）は、後の讃良郡太秦村（大阪府寝屋川市太秦）附近なり。秦郷（はだ）とも云う。和名抄の武蔵国幡羅郡上秦郷、下秦郷も秦人の渡来地なり。○千葉県長生郡一宮町十九戸。○山梨県都留市二十戸。○長野県南佐久郡臼田町十四戸、下伊那郡天龍村十九戸、泰阜村十五戸、飯田市三十四戸。○新潟県東頸城郡安塚町十六戸。○福島県伊達郡国見町十七戸、大沼郡三島町十八戸。○島根県（出雲国）簸川郡多伎町十一戸、湖陵町二十六戸、大社町二十六戸、飯石郡三刀屋町十一戸、八束郡玉湯町十四戸、能義郡伯太町二十六戸、安来市三十二戸、松江市四十四戸、出雲市六十四戸。○鳥取県西伯郡西伯町二十二戸あり。ハダとも称す。

一　岡部藩安部氏家臣　儒者秦貞八・弘化二年没は名高し。慶応四年岡部藩分限帳に「御物頭・十一人扶持・秦総左衛門、御納戸・八石三人扶持・秦確内、御中小姓・五両一人扶持・秦涌三郎、給仕・一石一人扶持・秦大五郎」あり。

二　浦和町　明治三十五年菓子商秦留五郎。昭和三年興信録に「六辻村・秦慧玉・所得税十一円」あり。

三　桶川町　明治十一年府川文書に秦熊次郎あり。

四　足立郡下内野村（大宮市）　多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡上下内野上村秦孫兵衛。大倭神社弘化二年碑に内野上村秦孫兵衛、嘉永四年御神燈に当所上組秦善吉・秦繁蔵・秦与三郎・秦庄左衛門・秦孫兵衛・秦和吉。明治五年上下内野村副戸長秦久七郎。県会議員内野下町秦明友・明治三十八年生あり。九戸現存す。

五　新座郡上新倉村（和光市）　明治十九年塩魚商秦寅蔵あり。一戸現存す。

六　同郡白子村（和光市）　明治四十四年県税届に秦喜代松あり。二戸存す。

七　入間郡大中居村（川越市）　明治九年副戸長秦治助・文政三年生。古谷本郷八幡社明治三十八年に古谷村・秦仙太郎・秦末吉・秦吾作・秦善太郎。昭和三年興信録に「古谷村・秦伊之吉・所得税七十一円」あり。十五戸現存す。

八　比企郡中老袋村（川越市）　下老袋村氷川社明治三十九年碑に中老袋・秦与惣次あり。三戸現存す。

九　秩父郡御堂村（東秩父村）　明和安永年間秩父郡記に御堂村名主秦七兵衛あり。現存無し。

泰　ハタ　浦和、春日部等に存す。

榛　ハタ　新座に存す。

漢　ハタ　越谷に存す。

旗　ハタ　越谷に存す。

籏　ハタ　新座、大井、岩槻、八潮等に存す。

端　ハタ　大宮、桶川、春日部、越谷、草加、鳩山、荒川等に存す。茨城県下妻市十三戸あり。

畠　ハタ　各市町村に存す。福島県伊達郡保原町十九戸、福島市四十五戸。秋田県能代市三十五戸あり。

畑　ハタ　秦の佳字なり。秦人渡来地を畑と称す。高麗郡上畑村・下畑村（飯能市）あり、上畑村元禄五年文書に畠村宝光寺と見ゆ。○群馬県富岡市二十戸。○長野県上水内郡三水村十二戸、南佐久郡八千穂村二十七戸、伊那市二十九戸。○新潟県中蒲原郡村松町十四戸。○福島県伊達郡保原町二十二戸。○岩手県岩手郡松尾村二十五戸。○島根県大原郡加茂町十一戸、出雲市二十八戸。○鳥取県米子市三十三戸あり。

一　丹党畑氏　武蔵志に「丹治系図。秩父黒丹五基房（畑氏等、十三苗の祖）」。本朝武家諸姓分脈系図（冑山文庫）に「畑氏。丹治姓、本国武蔵。横脛悪三時経六男時広・始て畑氏を号す。畑弥六郎時広（住武州児玉郡畑）―六郎大夫時信―六大夫―快玄房―某―道儀―快喜―四郎左衛門時常（住武州）―太郎大夫時道（住武州）―六郎左衛門時能（幼名虎熊、生於武州）―六郎大夫時定（弟次郎大夫時綱）―次郎義房（遁勢州北畠中納言）―与次郎房定（住勢州）、時能の弟次郎兵衛時重―快舜房」と見ゆ。児玉郡畑村は場所不明、五項の畑氏に附会するか。また、秩父郡誌に「畑時能は丹党藤矢淵氏の出なりと称せらる」。秩父郡藤矢淵村（長瀞町）の村田義六家庭前に「南朝忠臣贈正四位畑時能生地」の碑あり。村田氏は丹党藤矢淵氏の本名なり。信濃国佐久郡新開神社氏子に秦河勝後裔の新開氏が多く存す。時能は信濃国出身出稼衆の本名秦姓所氏にて、丹党藤矢淵氏の名跡を継承して、畑氏を称したか。。所氏は長野県更級郡大岡村十一戸、小県郡東部町十三戸存す。三項参照。

二　藤原姓畑氏　中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「畑。藤原姓、本国武蔵、紋三州浜」。太平記巻二十二に「一つ引両に三州浜の笠符・畑将軍ここにあり」と見ゆ。これは本名所氏の家紋か。

三　畑時能　太平記巻十に「新田義貞の臣畑六郎左衛門」。巻二十二に「興国二年十月二十二日、畑六郎左衛門時能、わづかに二十七人籠りたりける鷹巣の城（越前国）ばかりぞ相残りたりける、この日、時能は討死する。かの畑六郎左衛門と申すは、武蔵国の住人にてありけるが、年十六の時より、相撲を好んで取りけるが、坂東八箇国に、更に勝つ者無かりけり。その後、信濃国に移住して、生涯、山野・江海の、狩り・漁を業として、年久しくありしかば、馬に乗って悪所・岩石を落す事、あたかも神変を得るが如し。されば物は類を以って集まる習ひなれば、かれが甥に所大夫房快舜とて、少しも劣らざる悪僧あり。また中間に悪八郎とて、缺唇なる大力あり。また犬獅子と名を付けたる不思議の犬一疋有りけり。この三人の者ども、闇にだになれば、足軽に出で立つ時もあり。同党に畑六郎、所大夫房快舜、悪八郎、鶴沢源蔵人、長尾新左衛門、児玉五郎左衛門、五人の者どもあり」と見ゆ。彼等は大力で岩を落すを業とす、即ち石工であり。漁（すなどり）を業とす、即ち砂取は砂鉄採集にて鍛冶師でもあった。また、岐阜県吉城郡宮川村大字塩屋は家数十五軒の山間部にて畑殿屋敷あり。雲萍雑志に「畑六郎左衛門を木曽義仲の家臣とする木地師の伝承を挙げ、同人が飛騨山中に住む御器挽きの娘を妻にした」とあり。渡来系秦氏族木地師集団が有名なる畑時能後裔説を称したか。賀美郡金窪城は時能の館跡と伝へ、同村陽雲寺供養塔に畑六郎左衛門時能、児玉五郎左衛門光信、畑大夫房快舜玄英、加治悪八郎為頼、鶴沢源蔵人常安、長尾新左衛門景一の名あり。また、義貞の執事船田善昌開基の上野国勢多郡新里村善昌寺に応仁二年三月三日義貞百五十回忌の追善供養塔に「郎従畑六郎左衛門・法名衍岩穏泉」あり。畑時能と甥の畑快舜房は本名所氏なり。

四　鉢形城士の畑氏　吉田町彦久保文書に「天正十年二月二十五日、秩父衆着致、一張弓・一騎馬上・以上二人・畑織部」。武州古文書に「天正十四年三月十三日、鉢形城秩父曲輪掃除庭定、畑源太郎」あり。秩父郡に畑氏は現存無し。他国出身の出稼衆なり。

五　今川氏家臣の畑氏　畑彦十郎は今川氏真の家臣にて、命により駿府から橘樹郡小机城主北条氏堯に仕へ、河越城へ馳せ参じる。児玉郡八幡山町福田文書に「永禄四年辛酉三月二十七日、武州河越籠城之内走廻、特に去正月松山筋伏兵之砌、敵以多勢雖馳向候、氏政へ取合可申、畑彦十郎殿、左衛門佐氏堯花押」。「永禄四年卯月八日、今度河越籠城之内、左衛門佐申越候、氏真へ具可申被候、畑彦十郎殿、氏政花押」。「永禄四年四月二十二日、河越籠城中尽粉骨走廻之旨、氏政感状所令被見也、畑彦十郎殿、氏真花押」と見ゆ。本庄宿諸井文書に「福田礼蔵君の祖先畑六郎土着旧地武蔵国那珂郡秋山村旧屋敷跡」とあり。有名なる畑六郎時能は附会にて、彦十郎が福田氏と姻戚関係により土着す。秋山村に畑氏は現存無し。八幡山町福田家系図に「福田隼人佐道政（鉢形城主北条氏邦家臣、天正十八年武州那賀郡秋山村在住。道政之妻は北条氏政家臣畑彦十郎重直之娘）」と見ゆ。また、福田家譜（同家）に「大祖畑六郎左衛門時能は新田義貞の長臣四天王と呼れし一人也。時能の後胤畑彦十郎は、享禄二年の生れ、成長の後、北条家の旗下に属し氏政の一字を賜り道政と号す、永禄四年三十三歳の時、軍功に依て北条家より感状を被贈、此感状代々伝へて元禄年中に福田吉兵衛へ伝ふ。天正十八年、道政小田原城中に在しが落城後、古郷を心ざし武蔵に至り、武道を辞し出家為し、農を司って子孫を賑わす。姓名を福田隼人佐と改、年六十二歳旧領の地縁に因て秋山村に安居す。慶長五年正月十七日卒去、行年七十二歳、金山道位居士、長子道西禄之」とあり。福田氏は秋山村に古代以来の土着者にて二十三戸現存す。畑彦十郎が改名して福田隼人佐を名乗ると伝へるは仮冒なり。

六　幕臣畑氏　断家譜に「畑。本国武州」と。寛政呈譜に「はじめ猿楽のものにして梅若を称し、御家人にめしくはへらるゝにをよびて畑にあらたむ。伝八郎（元禄十四年御廊下番に列し、百五十俵をたまふ。享保二年死す）―伝十郎（元文三年死す）―伝十郎（延享四年死す）―八之助（安永三年質物の事により、質入せし品をとりて、金銭をあたへざる等により追放せらる）」と見ゆ。

七　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「六石二人扶持・畑市郎右衛門」あり。

八　旗本花房氏家臣　児玉町八幡社享保十一年鳥居碑に「花房宇右衛門内、畑太郎右衛門」あり。

九　足立郡浦和町　県会議員弁護士畑為吉・慶応元年生・菅谷村出身。県会議員弁護士畑和・明治四十三年生・礼羽村出身。昭和三年興信録に「畑義三・所得税三百四十五円」。

一〇　同郡上尾町　県会議員医師畑文男・大正六年生あり。為吉の孫なり。

一一　同郡菅谷村（上尾市）　倉田村明星院文政六年新西国塔に菅ヶ谷村畑茂右衛門。当村文政七年庚申塔にす賀屋村畑与右衛門。明治九年副戸長畑逸蔵、副戸長畑国吉・当年死去。当村明治十七年庚申塔に菅谷村畑幸之助・畑辰五郎・畑婿次郎。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北足立郡菅谷村畑幸之助。上村氷川社明治四十二年碑に畑幸之助。昭和三年興信録に「上平村・畑高三・所得税三十七円」あり。七戸現存す。

一二　入間郡北入曽村（狭山市）　明治二十五年入間川町地租額調に北入曽村畑安五郎あり。現存無し。

一三　同郡成瀬村（越生町）　見正寺明治初年筆子碑に当村畠安蔵。明治三十四年水利組合員畑栄吉あり。三戸現存す。

一四　高麗郡野田村（入間市）　入間郡誌野田村条に「天文永禄の頃、西久保・新井・高杉・小林・畑・横田・清水等開発す、之を村の草切七家と称す」と。但し、円照寺に文永七年加治泰家の追善供養板碑あり、是以前の開発なり。当村享保十七年庚申塔に野田村畑徳左衛門。山王塚延享三年庚申塔に野田村畑金八.。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、野田村畑浪造」。長徳寺安政三年地蔵尊に畑金造・畑銀造。元加治村会議員畑安五郎・嘉永六年生。白鬚社明治四十五年碑に畑熊太郎あり。六戸現存す。

一五　同郡上畑村（飯能市）　中山村山崎家譜に「山崎左内俊正（宝暦八年卒。妻上畑邑畑九衛門直吉娘）」と見ゆ。現存無し。

一六　比企郡玉川郷　明治九年地租改正担当人畑伝蔵。今宮社明治四十五年碑に畑庄平・畑栄市・畑惣平あり。七戸現存す。

一七　同郡腰越村（小川町）　平村正法寺明治三十年廻国塔に腰越・畑久太郎・畑善治・畑嘉平あり。二戸存す。

一八　同郡番匠村（都幾川村）　桃木村八幡社文政七年筆子碑に番匠村畑勘之丞、関堀村畑鉄五郎あり。番匠村四戸存す。関堀村に現存無し。

一九　同郡平村（都幾川村）　当村明和四年弁財天碑に畑久左衛門。字東沢慶応三年馬頭尊に畑鶴次郎・畑文蔵、明治二年庚申塔に畑勇三郎。慈光寺観音堂明治二年筆子碑に畑秀二郎・畑加十郎・畑弁次郎・畑金之丞・畑源之丞。萩日吉社明治二十五年筆子碑に西平村畑金蔵・畑虎吉・畑岩吉・畑文次郎・畑勇吉・畑平三郎、本村畑善兵衛・畑磯五郎、明治四十一年碑に畑倉蔵・畑吉五郎・畑清次郎・畑伊勢三.。正法寺明治三十年廻国塔に平村畑縫蔵、本村畑鶴治郎あり。十七戸現存す。

二〇　秩父郡椚平村（都幾川村）　桃木村八幡社文政七年筆子碑に椚平村畑権兵衛・畑安五郎。明治四年宗門人別改帳に「○組頭畑新七郎・六十五歳、婿吉三郎・二十九歳、孫京作・八歳。○畑三郎平・二十五歳。○畑島蔵・四十四歳、倅金十郎・二十六歳、同吉十郎・二十一歳、同平次郎・十一歳、弟団吉・三十三歳、同源蔵・二十三歳。○畑与七・三十六歳、父武平・六十五歳、弟庄吉・十九歳。○畑銭吉・六十五歳、倅弁二郎・三十三歳、孫嘉一郎・十二歳、同袈裟次・七歳、同唯吉・四歳。○畑善太郎・五十六歳。○畑豊吉・四十六歳、養子佳吉・十歳。○畑嘉十郎・三十六歳、父長平・六十九歳」。明治九年戸長畑吉三郎・天保十年生。平村萩日吉社明治二十五年筆子碑に椚平村畑織之助。平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に椚平・畑保弾・畑和蔵・畑善七郎・畑嘉十郎。昭和三年興信録に「大椚村・畑吉十郎・所得税十三円」あり。十戸現存す。　

幡　ハタ　川口、大宮、越谷、草加、川越等に存す。茨城県鹿嶋市十戸あり。

幡多　ハタ　和名抄に備前国上道郡幡多郷（岡山市）は平城京出土木簡に「備前国上道郡播多郷秦老人、秦忍山」とあり、秦氏居住地なり。摂津国有馬郡幡多郷（神戸市）は後世、畑庄、八多庄、播多郷と称す。河内国茨田郡幡多郷（大阪府寝屋川市）は後世、秦村と称す。相模国余綾郡幡多郷（秦野市）は後世、波多野郷と称す。淡路国三原郡幡多郷（兵庫県三原町）は波太と註し、後世は秦郷と称し、今は幡多（はだ）と称す。土佐国幡多郡は波多（はた）と註す。武蔵国男衾郡幡々郷あり、高山本は幡郷（はた）と記す。幡々は幡多の書誤りなり。後世の男衾郡和田郷（寄居町立原字和田）にてハタはワタに転訛す。ハンタ参照。

幡田　ハタ　ハンダ参照。

波多　ハタ　和名抄に大和国高市郡波多郷は後世、波多庄を称し、至徳三年文書に畑庄と見ゆ、市尾村字畑ノ庄（高取町）に比定す。また、延喜式の高市郡波多神社は冬野村波多神社（明日香村）に比定し、隣村に畑村がある。医薬書の大同類聚方に「志路木薬、新羅国鎮明の伝方、大和国高市郡波多神社に伝ふる所の方」と。新羅系渡来人の氏神なり。各市町村に存す。新潟県中蒲原郡村松町十四戸、五泉市二十六戸あり。

波田　ハタ　島根県益田市四十八戸。

一　入間郡葛貫村（毛呂山町）　明治九年戸長波田和藤治・文政十一年生（名主）。住吉社明治三十二年筆子碑に波田和藤次・波田助次郎・波田久兵衛・波田朝平・波田栄助・波田藤次郎あり。四戸現存す。

二　同郡越生町　明治三十五年屑商波田良助あり。現存無し。

葉田　ハタ　川口に存す。

一　川越町　喜多院五百羅漢像銘文に寛政頃・鴫町分中台村葉田庄七あり。現存無し。

羽太　ハタ　入間、川越等に存す。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百石・羽太伝右衛門（一本に羽田）・是は忍にて罷出・三州之者」あり。

二　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「百石・羽太勘八郎」。

羽多　ハタ　大宮に存す。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「二百石・羽多弥五兵衛・是は忍にて罷出・三河之者」あり。

羽田　ハタ　○山梨県南都留郡忍野村十八戸、山中湖村百三十九戸、富士吉田市二百九十戸。ハダと称す。○長野県小県郡和田村五十九戸、北佐久郡立科町十三戸、望月町十二戸、大町市三十四戸。○新潟県北蒲原郡中条町五十三戸、水原町二十戸、中蒲原郡村松町二十四戸。○山形県西置賜郡小国町十五戸、白鷹町二十二戸あり。ハネダ参照。

一　忍城士の羽田氏　成田分限帳に「十貫文・羽田平左衛門」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「医師・十五人扶持・羽田玄伯」あり。

三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「三十俵・羽田源右衛門」あり。

四　川越藩松平大和守家臣　慶応元年前橋藩松山陣屋付に「六石二人扶持・羽田勤務」あり。

五　浦和町　明治三十五年料理店開近館羽田フサあり。

六　埼玉郡西袋村（八潮市）　氷川社嘉永七年御神燈に西袋村葉田八右衛門あり。羽田（はだ）氏一戸現存す。

端井　ハタイ　川越に存す。

幡井　ハタイ　八潮、所沢等に存す。

畠井　ハタイ　茨城県東茨城郡茨城町十二戸あり。

畑井　ハタイ　各市町村に存す。青森県東津軽郡平内町六十三戸、青森市五十戸あり。

旗居　ハタイ　秩父郡長留村字旗居。

馬袋　バタイ　浦和に存す。

畑石　ハタイシ　与野、草加等に存す。

畑井田　ハタイダ　越谷、吉川等に存す。

畑内　ハタウチ　浦和に存す。

畑江　ハタエ　鳩ケ谷、草加等に存す。

波多江　ハタエ　各市町村に存す。

畑枝　ハタエダ　川越に存す。

畑尾　ハタオ　明治十三年川越銀行株主に入間郡脇田村畑尾源七・二十株千円所有。川越町氷川社明治三十三年玉垣碑に猪鼻町畑尾源七.。昭和三年興信録に「川越市・酒醤油卸商伊勢源畑尾源七・所得税二百四十九円・営業税百二十七円」あり。川越町に二戸現存す。

畠尾　ハタオ　川越、上尾等に存す。

畑岡　ハタオカ　大宮、北本、草加、和光、入間等に存す。茨城県笠間市四十三戸、島根県那賀郡三隅町八戸、浜田市十五戸あり。

幡垣　ハタガキ　朝霞に存す。

幡鎌　ハタガマ　大宮、川口、川越等に存す。

幡上　ハタガミ　新座に存す。

畑上　ハタガミ　鷲宮、嵐山等に存す。

旗川　ハタガワ　浦和に存す。

畑川　ハタガワ　大宮、戸田、川越、本庄等に存す。山梨県西八代郡市川大門町十四戸、岩手県九戸郡種市町十五戸あり。

幡木　ハタキ　玉川に存す。

畑木　ハタキ　桶川、越谷、幸手に存す。茨城県行方郡麻生町二十四戸あり。

畑岸　ハタギシ　川口、庄和等に存す。

畑　ハタケ　白岡、和光、坂戸等に存す。

畠　ハタケ　鴻巣、富士見等に存す。

畑ケ　ハタケ　大宮に存す。

畑口　ハタケグチ　上尾、朝霞、上福岡、川島等に存す。青森県上北郡野辺地町十三戸あり。

畑下　ハタケシタ　上尾に存す。

畑田　ハタケダ　浦和、川越、狭山等に存す。岩手県久慈市三十八戸あり。

畠田　ハタケダ　浦和、川口、与野、新座、春日部、川越等に存す。

畑中　ハタケナカ　比企郡畑中村（川島町）あり。新座郡下片山村字畑中（新座市）は古の村名にて、東福寺文政九年碑に下片山邑畑中と見ゆ。高麗郡上赤工村字畑中（飯能市）は古の畑中村なり。青森県南津軽郡大鰐町十一戸あり。ハタナカ参照。

畠中　ハタケナカ　大宮、白岡、新座、岩槻、加須、所沢等に存す。ハタナカ参照。

畑山　ハタケヤマ　畠山に同じ。各市町村に存す。○山形県東田川郡櫛引町十三戸。○秋田県雄勝郡羽後町十三戸、仙北郡六郷町十三戸。○岩手県紫波郡紫波町十六戸。○青森県南津軽郡大鰐町二十戸、三沢市二十八戸あり。ハタヤマ参照。

畠山　ハタケヤマ　山は古代朝鮮語の国、村の意味。秦族の集落を畠山、畑山と称す。男衾郡畠山村（川本町）あり。此氏は奥州の大姓なり。○茨城県日立市五十戸。○千葉県鴨川市六十二戸。○長野県南佐久郡小海町三十戸、南安曇郡穂高町三十九戸、佐久市六十戸。○福島県西白河郡中島村三十三戸。○宮城県本吉郡歌津町四十四戸、唐桑町百十五戸、本吉町八十五戸、加美郡宮崎町三十戸、登米郡東和町四十五戸、石巻市六十戸、気仙沼市五百四十戸。○岩手県東磐井郡千厩町五十五戸、大東町三十六戸、藤沢町百八戸、室根村六十七戸、下閉伊郡岩泉町百十戸、田老町六十九戸、田野畑村百六十戸、稗貫郡石鳥谷町九十戸、岩手郡滝沢村五十六戸、玉山村四十戸、西根町百八戸、松尾村三十七戸、二戸郡安代町百戸、紫波郡紫波町百十戸、一関市六十戸、陸前高田市八十戸、宮古市百五十戸、久慈市六十五戸、花巻市二百二十戸。○秋田県由利郡大内町五十四戸、東由利町六十五戸、由利町四十戸、仙北郡角館町三十五戸、田沢湖町三十二戸、六郷町四十二戸、南秋田郡昭和町六十五戸、五城目町九十八戸、天王町五十五戸、八郎潟町百四十戸、若美町八十戸、北秋田郡鷹巣町三百九戸、合川町四十四戸、比内町二百七戸、上小阿仁村三十二戸、山本郡琴丘町四十四戸、八竜町八十八戸、二ツ井町百六十八戸、鹿角市百八十戸、能代市百三十戸、大館市六百十戸、男鹿市百五十戸、本荘市百戸、秋田市四百二十戸。○青森県上北郡六戸町五十六戸、十和田市八十戸、八戸市百戸あり。東国以外では、○広島県芦品郡新市町三十戸。○高知市六十戸あり。ハタヤマ参照。

一　平姓秩父氏族畠山氏　男衾郡畠山村より起る。畠山系図に「秩父太郎重弘―畠山荘司重能―畠山庄司二郎重忠（号御館。元久三年六月二十二日討死、四十二歳。家紋初は白地、此重忠代々小紋村子梅、雪霰、幕は三白ニ黒、但半引両と申也、布半分黒。弟に長野三郎重清、同六郎重宗）―六郎重保（元久元年六月二十一日於鎌倉被誅）―中根小次郎重晴、弟中根小太郎重勝、其の弟下野守重国―江戸彦太郎重長。重保の弟小二郎重秀（母足立右馬允遠元女、父一所討死、二十二歳）、其の弟大夫阿闍梨重慶、其の弟別当円耀―二郎重氏―大窪七郎重村―弥七朝重」と見ゆ。重慶子孫は上古寺村小久保条参照。

二　畠山氏の名は、保元物語に畠山荘司重能。平家物語巻五に「畠山庄司重能・大番役にて折節在京したりける」。巻九に「武蔵国の住人畠山庄司次郎重忠・生年二十一になりける」。源平盛衰記巻三十五に「武蔵国住人男衾郡畠山庄司重能が子息重忠」。吾妻鑑巻一に「治承四年八月二十六日、武蔵国の畠山次郎重忠は、平家方として三浦義澄・義明と衣笠城で戦ふ。同年十月四日、畠山次郎重忠、長井渡に参会し頼朝に帰伏す」。豊島郡長井庄橋場村の隅田川にある橋場の渡しなり。吉記に「養和元年三月二十四日、平重能は春除目に兵衛尉の申文を提出す」。吾妻鑑巻九に「文治五年七月十九日、頼朝・奥州進発す。先陣は畠山重忠、従軍五騎、いわゆる長野三郎重清、大串小次郎、本田次郎、榛沢六郎、柏原太郎等これなり」。鎌倉鶴岡八幡宮寺供僧次第に「林東坊、改荘厳院、行耀・大夫法橋・号山口法印、住山者、平家一門人也、畠山重忠挙達、寛元元年七月十四日円寂、八十五」。「安楽院、重慶・安楽坊法眼、平家一門、重忠挙達」と見ゆ。

三　鍛冶頭領畠山氏滅亡　先祖秩父氏は出羽国飽海郡秋田郷（山形県酒田市秋田町附近）に居住して秋田氏を称し、出羽国の鉱山鍛冶支配頭なり。秋田条参照。吾妻鑑巻十八に「元久二年六月二十二日、鎌倉中驚く。軍兵、由比浜の辺に競走り、謀叛の輩畠山六郎を誅せらるべし云々。又畠山次郎重忠参上の由、風聞の間、路次に於いて誅せらるべきの由、其の沙汰あり。義時以下進発せられ、軍兵悉く以って之に従ふ。午刻、各々武蔵国二俣河に於いて重忠に相逢ふ。重忠・去十九日、小衾郡菅屋館を出で、今此の沢に着せし也。折節舎弟長野三郎重清・信濃国に在り、同弟六郎重宗・奥州に在り、然れば相従ふ輩は、二男小次郎重秀、郎従本田次郎近常、榛沢六郎成清已下百三十四騎、鶴峰の麓に陣す。愛甲三郎季隆の発する所の箭・重忠の身に中る。季隆・即ち彼の首を取り、義時の陣に献ず。爾る後、小次郎重秀、并に郎従等自殺の間、綺無為に属す。同年七月八日、畠山次郎重忠余党等の所領を以って、勲功の輩に賜ふ」と見ゆ。畠山本田の昔話あれこれ（清水寿著）に「重忠討死の地、横浜市旭区二俣川に子供たちによって歌われている童謡に畠山重忠をうたった不思議な歌が今も伝わっている。『鎌倉軍勢多そうだ、鎌倉街道飛ぶ鳥は、つうるが峰にて落とされた、落ちたる死骸をたずぬれば、羽が十六、目は一つ』と。つうるが峰（旭区鶴ヶ峰）、羽が十六（製鉄のタタラ、即ち溶鉱炉は羽口、送風口が十六本）、目が一つ（タタラの職人、眼をやられる）。要するに此の歌の云わんとしたのは『飛ぶ鳥を落す勢いの武蔵武士畠山重忠は殺してみれば鍛冶師、鋳物師の親方であった』と云う。重忠の資料集めをしていると、どうも重忠が支配していた地域は金属関係の産地ではあるまいか」と。鍛冶師頭領畠山氏の詳細は秩父条参照せよ。

四　畠山氏後裔　紀州那智山米良文書に「嘉元三年二月十四日、秩父一門内、上野国高山・小林一門・並びに畠山尼御前・同めい御前（白塩之修理介殿御前）」と。緑野郡白塩村（藤岡市高山字白塩）の白塩山仙源寺は観応の騒乱に際し畠山国清に属した白塩下総守の開基なり。長倉追罰記に「永享七年十月二十八日、岩松持国大将軍となりて発向す。小もんの皮は秩父どの」。結城戦場物語に「永享十二年、上杉清方は結城城を攻む。三番に武蔵勢秩父、畠山、猪俣、小玉をさきとして六千騎にて戦ける」。米良文書（室町時代末期）に「としま名字之かき立、ちゝふのはたけ山」。高麗氏系図に「高麗良伝（文亀十六年卒）―数馬（比企住人畠山上総養子）」と見ゆ。比企郡菅谷村の菅谷館住のことか。

五　足立郡の畠山氏　風土記稿道場村（浦和市）条に「村の巽の方にあり。畠山重忠が城跡なりといへど、もとより拠とすべき事なく、少し高き所にして、四方四五町に及び、廻に堀の跡残れり。其の構の内は小名堀の内二本木など号して田畑を開けり。二本木と云ふ処は、古の大手先なりとて、今も榎二株あり。尤も古木なれども、当時のものとは思はれず。此の辺より古瓦、及び丸き大石など多く出づと云ふ。又経塚と号する塚あり、是れ金剛寺の観音を掘出せし地なるにより、重忠こゝに経文をうづめて築しものなりといへど、是も正しき拠をきかず。また金剛院に大伽藍ありしに保元の乱に兵下の為に烏有せり。其後、建久年中畠山次郎重忠・当所を領せしとき、土中より此像を得たり。是、古へ大伽藍なりし時の本尊ならんとて、守護仏となし当寺を草創して安せり」と。神田村（浦和市）条に「永福寺の境内に五輪の塔あり、畠山次郎重忠の墓碑なりと云ふ。土俗の伝へに、この水判土庄の内は重忠が旧領の地なる由。又近村道場村に其城跡といふものあれば、此辺重忠のゆかりなきにもあらず。若くは重忠追福の為として、後に家臣等の造立せしものなるをも知るべからず」と。西堀村（浦和市）条に「相伝ふ、古は畠山重忠が臣真鳥日向守といへる人の領地にて、今も其居城跡と云所あり」と。田島村（浦和市）条に「観音堂の像は、畠山重忠・尊信の霊仏にして、其頃重忠此地を領せしかは一宇草創して安せり」。当村如意輪寺縁起に「田島村如意輪寺本尊観世音菩薩は、秩父庄司次郎重忠之守本尊秘仏薩埵にて拝する者なし。其比此邑鎌倉御所より重忠へ加増に被下置。聖徳太子、元三大師、理源大師、天満天神皆以如意輪観世音の化身也」と見ゆ。道場村に小名金久保、神田村に小名大砂場、田島村薬王院、西堀村医王寺あり、薬師堂及び観音堂が近在に多くあり。是等は目をやられる鍛冶師の守本尊なり。聖徳太子講・弘法大師講は鍛冶・石工・木工等の職業集団の信仰なり。此の地は荒川流域の砂鉄採集による鍛冶師の居住地にて、鍛冶頭頭畠山重忠の配下なり。支配頭は重忠家臣の真鳥氏及び岡部氏等であった。各条参照。

六　畠山氏の本名　秩父秘話に「桓武天皇の皇子神野親王（初代平井大衛門）は秩父妙見大菩薩として秩父神社に祭られた。一門秩父重忠は平井大衛門代々の家で育てた」と。また、畠山村の丸橋家で重忠は育ったと伝へる。畠山村峰岸氏は重忠の子孫と伝へている。また、畠山村石井氏は鍛冶神の石井稲荷社を祀っており、千葉県長柄町金谷字畑山谷の鍛冶師石井氏は重忠の子孫と伝へて系図を所蔵す。是等は畠山氏配下の鍛冶師にて後裔説は附会であろう。尚、木呂子条七項参照。

七　秩父郡皆野村の畠山氏　椋神社由緒に「畠山重忠の父秩父別当重能は当社を尊信し、寿永元年この地に居をトし瘴を患い没した。墓は円福寺にあり」。風土記稿皆野村条に「円福寺境内に重能墓あり。円明寺開基伊予守重喜（しげよし）・卒年詳ならず」と。皆野村円明寺由来記に「当寺創立者往昔本村蓑山なる字上岡に之有候由。寿永二年歓喜坊当地に来り錫を掛け大徳仁海比丘之旧跡の癈亡を歎き、領主畠山之末葉畠山伊予守重喜に寄り癈亡一宇之建志願起し再度上岡之僧跡を建立事、両人に尽力の他力成処に依りて、時建久元年に号を龍泉坊と改め中台坊唱し、伊予守祖先香華所と仰き開基旦那とす」。同享保二年記に「中興開基者秩父の末葉畠山伊予守重喜と申伝候、中興開山者歓喜法印・拙僧良慶迄三十一世に御座候」と見ゆ。是は多摩郡出身の出稼衆富沢氏伝承か。富沢条参照。

八　児玉郡梅沢郷の畠山氏　簗田家譜に「簗田勘解由左衛門尉氏助（正治年中、源頼家が畠山六郎を誅す時、由井浜に於て一戦、畠山兵庫忠光を討捕り、忠光所領之武州児玉郡之内梅沢郷を軍功之賞として給ふ）」と。梅沢郷は今の本庄市日の出町なり。

九　高麗郡の畠山氏　風土記稿赤沢村（飯能市）条に「妙見社に元禄中の棟札あり。その文に、康永二癸未十一月三日畠山駿河守重俊草創と見えたり」と。十七項の宮之原系図に重忠の子重俊とあり。十二項及び名倉条参照。

一〇　多摩郡の畠山氏　武蔵名勝図会に「多摩郡小宮領下草花村（秋川市）慈勝寺の開基は円寿院殿善通理体大姉なり。寺記云、秩父庄司重弘之男重能之一男十郡管領畠山重忠之伯母円寿院理体大尼鑿開之地也。又云、武州之内小衾郡・秩父郡・児玉郡・比企郡・都築郡・榛沢郡・高麗郡・入間郡・奥州之内葛岡郡・信州之内筑摩郡、都合十郡也。或記云、秩父畠山次郎重忠祖父庄司大夫重弘嫡女嫁于千葉常胤、是重忠伯母也。常胤没而落飾、号円寿院理体尼公」。また、武蔵志に「多摩郡柚木村（青梅市）即清寺に重忠の位牌あり、勇護即清大禅定門・是より寺発と云伝ふ」と。是等は配下の鍛冶師か。

一一　久良岐郡の畠山氏　風土記稿坂本村（横浜市金沢区釜利谷町）条に「古当村と宿・赤井の三村を合て釜利谷一郷なり。当所は往古畠山二郎重忠の領地なりと云伝ふれど正しきことを知ず。畠山重保墓は北の方宿村の境にあり、五輪の石塔にて文字あれど摩滅せり。土人云、畠山六郎重保・此辺の山中にて自害せしを爰に葬れりと、鎌倉由比浜に重保の墓あれど明徳四年道友と云ものの立し石塔にて重保戦死より遥に後のものなり」。宿村条に「小名六郎谷は白山の内なり。坂本村に畠山六郎重保の墓あり、それに近き辺りなればかく呼。旧家者百姓藤右衛門・氏を市川と称す、畠山六郎重保が庶流なりと云ふ」と見ゆ。畠山氏配下の鍛冶師市川氏伝承なり。

一二　上野国の畠山氏　甘楽郡下仁田村清泉寺伝に「世良田村長楽寺末。後堀河天皇の時に、畠山重俊が兄重忠の植福精舎として創立す」。同村常住寺伝に「元弘四年の創立、開山は畠山重忠の孫重快。重快は世良田長楽寺六世了恵の門弟となって秘法を受け、のち清泉寺二世重照を頼り、下仁田に来たと云う」と。当村に畠山氏は現存無し。上州の苗字と家紋に「甘楽郡南牧村大字六車に畠山氏三十数軒が居住す。先祖は畠山重俊で武蔵国二股川で敗けて下仁田にたどりつき、のち、この地に土着すと伝う。畠山一族は下仁田の安養山清泉寺で先祖祭りを行う。家紋は丸に五三の桐」。六車に八戸現存す。是は古代以来土着の苗字にて、在名の武蔵国畠山氏は無関係なり。

一三　信濃国の畠山氏　吾妻鑑巻十八に「畠山重忠の舎弟長野三郎重清は信濃国にあり」と。十項によれば、筑摩郡長野村（大桑村）に居住するか。或は水内郡長野村（長野市）か。また、南佐久郡小海町の旧家畠山理介は奈良時代の刀剣を所蔵し、武蔵畠山氏後裔と伝へる。是は古代以来土着の苗字にて、武蔵畠山氏は無関係なり。

一四　陸奥国の畠山氏　神皇正統記に「文治五年、畠山重忠は奥州合戦の戦功により、陸奥国長岡郡を賜る」と見ゆ。葛岡郡は長岡郡とも称す。宮城県古川市大字長岡附近なり。吾妻鑑巻九に「文治五年九月二十日、奥州羽州等の事、畠山次郎重忠・葛岡郡を賜る」。巻十六に「正治二年五月二十八日、陸奥国葛岡郡新熊野の社僧、坊領の境を論じ、両方文書を帯して、惣地頭畠山次郎重忠が成敗を望む」。巻十九に「建暦元年四月二日、陸奥国長岡郡小林新熊野社は、故畠山二郎重忠、当所を知行するの時、殊にもってこれを崇敬す」と見ゆ。小林村（古川市）の北、宮沢村に小林新熊野社が鎮座す。また、岩手県下閉伊郡田野畑村の苗字畠山氏は在名の武蔵畠山氏後裔と伝へるが附会なり。

一五　伊勢国の畠山氏　吾妻鑑巻七に「文治三年六月二十九日、伊勢国沼田御厨は畠山二郎重忠地頭職を領するところなり。しかるに重忠が眼代の内別当真正、員部大領家綱が所従等が宅を追補せしめ、資財を没収するの間、家綱・神人等を差し参らせ、訴へ申さしむ」と。沼田御厨は飯野郡（松坂市）にありて、員部大領の居住地とは遠方すぎる。沼田は治田の書誤りで、員部郡治田御厨である。此の地は員部郡北勢町大字麓村字城山を治田城と称す、滋賀県境に治田峠があり、鉱山鍛冶師の居住地にて畠山氏の代々所領地なり。

一五　土佐国の畠山氏　安芸郡の西北部の山間部を畑山名と云う。安芸氏一族畑山氏の支配地なり。安芸庄と武蔵国大里郡は平安時代に九条家領である。後世、土佐の苗字畠山氏（畑山）と武蔵の在名畠山氏との同族説が生じる。風土記稿秩父郡下名栗村条に「伝説には、この村の奥入りに有馬山と云るあたりへ、畠山重忠・二又尾にて討死と称し窃に遁て此山に忍び、その後土佐国に行て、その所に没し、子孫今存せりと云ふ」と。青梅市二又尾は横浜市二股川と混同す。畠山氏は高知県吾川郡伊野町十一戸、高岡郡日高村十八戸、長岡郡本山町十二戸、安芸市三十四戸、高知市六十戸。畑山氏は吾川郡伊野町二十戸、長岡郡大豊町十三戸、土佐清水市十八戸、安芸市十二戸、高知市四十五戸あり。

一六　豊後国の畠山氏　豊後国図田帳に「弘安八年十月十六日、大分郡吉藤名七段・畠山十郎重末」と見ゆ。吉藤名（大分県庄内町）の地頭畠山十郎重末は六郎重宗の後裔説あり。雉城雑誌・雲取村天満宮条（庄内町大字中字雲取）に「鎌倉右大将家之時、畠山次郎重忠当国に下向し、当村岡田屋敷と申処に止宿す。当村の庄官榛沢氏、即ち重忠の臣榛沢六郎某の裔なりと云へり」と。大字中に半沢氏七戸現存し、畠山氏は無し。半沢氏（榛沢）を代官に派遣したか。

一七　薩摩国の畠山氏　越前島津家文書に「島津忠久―忠義（文永九年卒・八十四歳）―久時（母畠山重忠女。弘安七年卒・五十四歳）」。宮之原系図（薩摩国教答院鶴田村住）に「畠山二郎重忠の子重俊（島津忠久公の旧好を慕ひて日向国宮之原に下向、而して地の名に因り畠山を改めて宮之原を号す）」と見ゆ。

一八　源姓足利氏流畠山氏　風土記稿畠山村条に「重忠・元久二年六月討死せし後、其の妻は将軍実朝の叔母なるを以って、改めて足利上総介義兼が六男義純に再嫁し、重忠が遺跡を継がしめらる。是に於いて、義純・改めて畠山六郎と称す。後又岩松の家をつぎて、従五位下遠江守に叙位して、承元十七年卒す。是れ諸家系図、岩松系譜等に載る所なり。此の人・重忠に継ぎて此の辺を領せしこと知らる。其の子畠山泰国より五代の後、阿波守国清・関東執事職に居り、其の子阿波守義清、又其の子清貞は応永十三年正月卒せり。本田村教念寺に伝ふる延文応永の頃の文書にも、畠山氏の指揮せしこと載せたれば、此の辺世襲して彼の家の領地に属せしこと知るべし」と見ゆ。畠山系図に「重忠横死の後、名字に於いては内室之を賜ふ。北条殿息女たる故に、源義純を以って婿と為し、之を継がしむ」。両畠山系図に「足利上総介義兼―岩松三郎義純（畠山重忠後家に岩松義純を嫁し、畠山之所領被与。義純・之に依て岩松を改め畠山を号す。承元四年十月七日卒、三十五歳）―上野介泰国（母平時政女）―阿波守時国―民部少輔貞国―尾張守家国（法名西蓮）―阿波守国清（関東執権、法名道誓。弟尾張守義深。妹・鎌倉基氏室。妹・上州一宮領主真下室・法名箇一房）―阿波守義清―伊予守清貞（応永十三年卒）。時国の弟四郎康成―四郎成家―上野介貞康―上野介基国」と。鎌倉円覚寺塔頭帰源院文書に「建武二年十一月十日、足利直義は、畠山上野孫太郎貞康の勲功を賞して、信濃国の市村八郎左衛門入道跡（水内郡市村郷）の地を与ふ」と。上州一宮領主の男衾郡本田村真下家文書に「建武二年九月十六日、阿波式部大輔入道西蓮女源氏申、上野国一宮内那波□田畠在家等事云々、真下藤四郎殿、右京亮花押」と見ゆ。西蓮娘箇一房は本田村真下氏妻なり。

一九　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御寄合・百三十石・畠山宇膳、御目付・百三十三石余・畠山孫之助、御馬廻・二十人扶持・畠山熊之進」。明治四年忍藩士族名簿に「百三十石余・畠山政雄、百三十石・畠山寛三、百石・畠山勘平」あり。次項参照。

二〇　忍町　明治三十五年時計商畠山寛二。昭和三年興信録に「忍町・畠山一造・所得税九円・営業税三十三円」あり。二戸現存す。

二一　本庄町　明治三十五年酒商畠山繁蔵・飲食店畠山忠太郎あり。三戸現存す。

二二　児玉町　明治三十五年荒物商畠山喜三郎あり。現存無し。

二三　入間郡黒岩村（越生町）　明治十六年酒商畠山五平あり。現存無し。

畑ヶ山　ハタケヤマ　庄和に存す。

波多腰　ハタコシ　朝霞、鶴ヶ島、富士見、東松山等に存す。長野県東筑摩郡波田町九十三戸あり。

畑佐　ハタサ　朝霞、川越、富士見、八潮等に存す。

畑崎　ハタサキ　大宮、春日部等に存す。青森県八戸市二十五戸あり。

畑迫　ハタサコ　花園、美里等に存す。

畑沢　ハタザワ　大宮、川口、鴻巣、和光、所沢、越谷、草加、三郷、加須、本庄等に存す。○秋田県由利郡矢島町二十戸、南秋田郡五城目町六十戸、鹿角郡小坂町十四戸。○岩手県九戸郡軽米町八戸あり。

畑澤　ハタザワ　浦和、桶川、入間、行田、熊谷、深谷等に存す。

畠沢　ハタザワ　川口、戸田、越谷、狭山、三芳、熊谷等に存す。秋田県大館市八十一戸あり。

畠澤　ハタザワ　浦和、川口等に存す。

幡司　ハタジ　入間に存す。

畑下　ハタシタ　大宮に存す。

畠下　ハタシタ　浦和、川口等に存す。

畑島　ハタシマ　所沢、新座等に存す。

畑嶋　ハタシマ　川口に存す。

畠島　ハタシマ　蕨に存す。

幡杉　ハタスギ　児玉郡金鑽村（神川町）に幡杉明神社あり。

畑瀬　ハタセ　蓮田、加須、越谷、三郷、鶴ヶ島等に存す。

畠添　ハタゾエ　春日部に存す。

幡田　ハタダ　ハンタ参照。

畠田　ハタダ　大宮、志木、川越、春日部等に存す。岩手県北上市七戸あり。

畑地　ハタチ　浦和、坂戸等に存す。

簱智　ハタチ　浦和に存す。

波田地　ハタチ　新座に存す。島根県益田市十五戸あり。

端詰　ハタヅメ　川口に存す。

旗手　ハタテ　和光、加須、越谷、鷲宮、入間、所沢等に存す。

幡手　ハタテ　朝霞、春日部、本庄等に存す。

羽立　ハタテ　岩槻、入間、所沢、羽生等に存す。青森県三沢市十一戸あり。

馬立　バダテ　川越、東松山等に存す。

幡戸　ハタト　入間郡上浅羽村字幡戸。

畠等　ハタトウ　浦和、越谷等に存す。

畑名　ハタナ　越谷、川越等に存す。

端名　ハタナ　川越に存す。

畑内　ハタナイ　越谷に存す。青森県三戸郡南郷村十五戸、三沢市十五戸。

畑中　ハタナカ　各市町村に存す。○長野県木曽郡上松町十四戸、開田村十五戸。○宮城県志田郡松山町二十戸、遠田郡小牛田町十九戸、南郷町十四戸、白石市三十戸。○岩手県岩手郡滝沢村十六戸、岩手町二十二戸、二戸郡一戸町十四戸、久慈市三十八戸。○青森県上北郡横浜町十九戸、下北郡大畑町七十戸、東通村六十七戸、十和田市四十四戸、むつ市二百十戸、八戸市二百戸あり。ハタケナカ参照。

一　埼玉郡岩槻町　明治三十五年に畑中菊次郎あり。五戸現存す。

二　同郡本宿村（岩槻市）　北野天満宮天保六年御神燈に当所畑中子之松あり。一戸現存す。

三　新座郡下新倉村（和光市）　明治二十五年青年会畑中重太郎あり。五戸現存す。

四　高麗郡笹井村（狭山市）　白鬚社明治二十九年御神燈に水富村畑中忠吉。根岸村水富神社明治四十三年碑に水富村畑中長吉あり。現存無し。

畑仲　ハタナカ　入間郡龍ヶ谷村（越生町）明治十一年荷車頼母子講に畑仲梅五郎・畑仲信吉・畑仲徳太郎あり。六戸現存す。

畠中　ハタナカ　各市町村に存す。○山形県飽海郡遊佐町四十五戸。○宮城県桃生郡河北町十一戸あり。ハタケナカ参照。

一　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「五十石・畠中弥左衛門」あり。

二　岡部藩安部氏家臣　明治三年岡部藩分限帳に「御次番・摂州桜井谷・五石二人扶持・畠中竹治」あり。

三　埼玉郡辻村（岩槻市）　笹山村稲荷社明治二十二年浅間碑に南辻村畠中新吉」あり。現存無し。

四　高麗郡上赤工村（飯能市）　中山村智観寺万延元年本堂再建覚書に屋根葺工棟梁上赤工村畠中金次郎・同畠中貞次郎あり。現存無し。

幡中　ハタナカ　東松山に存す。

羽谷　ハタニ　白岡に存す。

場谷　バタニ　越谷に存す。

畑根　ハタネ　鷲宮に存す。

畑野　ハタノ　秦族の集落を称す。ノは助詞なり。○群馬県佐波郡境町七戸。○山梨県北都留郡上野原町十二戸、東八代郡一宮町九戸あり。

一　甲斐国の畑野氏　畑野静司文書（大日本史料）に「貞治二年十一月、畑野六郎左衛門入道常全及び一族一揆は、足利基氏に従い比企郡岩殿山合戦等に戦功を挙げしことを注進し、飛脚を以って甲州之一族等に相触れる」と見ゆ。

二　関東郡代伊奈氏家臣　天保年間伊奈役人惣人数に「中御徒町・畑野恭介」あり。

三　葛飾郡大川戸村（松伏町）　八幡社享保十三年庚申塔に大川戸之内宿村畠野十兵衛、慶応三年御神燈に畑野源之助あり。七戸現存す。

四　同郡水角村（庄和町）　水角神社天保十二年二十三夜塔に畑野孫右衛門あり。一戸現存す。

五　比企郡下八ツ林村（川島町）　薬師堂安永三年水鉢に畑野勘六.。愛宕社天保十四年庚申塔に畠野保太郎あり。一戸現存す。

畠野　ハタノ　浦和、鴻巣、春日部、久喜、越谷、草加、杉戸、狭山に存す。新潟県佐渡郡羽茂町十二戸あり。

秦野　ハタノ　秦族の集落を称す。ノは助詞なり。○千葉県富津市二十二戸。○山梨県北都留郡上野原町十二戸。○鳥取県西伯郡西伯町十三戸、東伯郡赤碕町二十六戸あり。ハダノとも称す。シンノ参照。

一　埼玉郡大沢町（越谷市）　明治三十五年白玉粉製造秦野政吉あり。七戸現存す。

二　与野町　御嶽社明治二十九年碑に与野秦野要吉（染物業）あり。一戸現存す。

三　鴻巣町　明治三十五年薬種商秦野富造あり。現存無し。

旗野　ハタノ　浦和、春日部等に存す。

簱野　ハタノ　宮代に存す。東京都日野市三十戸、福島県伊達郡保原町二十四戸あり。

端野　ハタノ　川口、深谷等に存す。

幡野　ハタノ　秦族の集落を称す。各市町村に存す。○山梨県北都留郡上野原町十二戸、南巨摩郡中富町三十二戸、大月市九十三戸、都留市二十五戸、甲府市四十戸あり。

一　葛飾郡藤塚村（春日部市）　本郷村天神社明治十四年浅間碑に藤塚村幡野久次郎あり。現存無し。

二　埼玉郡久喜町　昭和三年興信録に「久喜町・幡野太郎治・所得税十円」あり。現存無し。

榛野　ハタノ　葛飾郡中野村（庄和町）薬師堂文化元年普門品に榛野甚右衛門・榛野儀右衛門・榛野利左衛門。中野村香取社文化三年庚申塔に榛野太四郎・榛野源太郎・榛野佐治右衛門、文久三年大杉明神碑に榛野仙蔵、元治元年御神燈に秦埜儀右衛門。飯沼村香取社嘉永元年御神燈に榛野孫兵衛。飯沼村妙善寺元治二年成田山碑に榛野弥兵衛。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流中野村榛野園次郎。明治三十年人名録に中野村榛野久次郎・文政十二年生・地租二十五円。昭和三年興信録に「川辺村・秦野園次郎・所得税十円」あり。中野村に秦野氏二戸、榛野氏六戸現存す。

裸野　ハダノ　足立郡円阿弥村（与野市）延宝五年奉遷宮山王権現御宝前に裸野重左衛門あり。九戸現存す。

羽田野　ハタノ　各市町村に存す。新潟県北蒲原郡中条町四十七戸あり。

羽多野　ハタノ　上尾、伊奈等に存す。長野県東筑摩郡朝日村十五戸あり。

波田野　ハタノ　新潟県東蒲原郡鹿瀬町七十六戸、上川村十六戸あり。

一　鉢形城士の波田野氏　小鹿野町吉田系図に「軍役書上、御扶持方衆、百五十目十一人ふち・波田野遠江」あり。

二　足立郡町谷村（浦和市）　薬師堂元文四年地蔵尊に町谷村破田野吉左衛門。明治六年富士講着到帳に町谷村波田野安五郎。明治九年副戸長波田野権蔵・文政九年生。白幡村睦神社明治三十六年碑に町谷・波田野紋吉。昭和三年興信録に「土合村・波田野竹次郎・所得税十一円」あり。七戸現存す。

三　同郡西蓮寺村（浦和市）　千駄村重円寺寛文九年庚申塔に波田野加左衛門。東神社文久二年水鉢に当所波田野治兵衛あり。五戸現存す。

四　同郡土呂村（大宮市）　神明社宝永二年庚申塔に波田野太兵衛・波田野佐兵衛・波田野権左衛門、文政五年庚申塔に波田野佐五右衛門。大和田村鷲神社嘉永二年狛犬に土呂村波田野惣之助。明治七年船積問屋土呂村波田野宇兵衛。八雲社年不詳に波田野嘉助あり。五戸現存す。

五　同郡植田谷本村新田（大宮市）　飯田新田稲荷社明治二十七年水天宮碑に植田谷本村新田波田野仙蔵あり。一戸現存す。

六　同郡平塚村（上尾市）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

七　同郡上村（上尾市）　氷川社明治四十二年碑に波田野孫三郎。現存無し。

八　入間郡大中居村（川越市）　氷川社文久元年浅間碑に大中居村波田野熊次郎あり。現存無し。

九　比企郡中老袋村（川越市）　下老袋村氷川社明治三十九年碑に中老袋・波田野房五郎・波田野常吉あり。六戸現存す。

波多野　ハタノ　秦族の集落を称す。○千葉県君津市四十七戸。○東京都武蔵村山市百戸。○山梨県北都留郡上野原町九戸。○新潟県北蒲原郡豊浦町二十三戸、安田町三十戸、笹神村二十七戸、新発田市四十八戸、五泉市六十二戸。○島根県邑智郡邑智町十二戸、大田市三十九戸あり。

一　松山城士の波多野氏　天正庚寅松山合戦図に「古郡・柏崎・今泉方面城方・大将波多野因幡守吉則」あり。

二　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国伊勢生国武蔵・波多野次郎左衛門・三十九歳」あり。

三　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊格・七石二人扶持・亡養父益右衛門・波多野益衛・四十二歳、同役同高・亡養父民司・波多野宗作・二十二歳」あり。

四　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「十五人扶持・波多野九之丞、十石五人扶持・波多野十助」あり。

五　足立郡鳩ヶ谷町　明治三十五年臼屋波多野浅次郎あり。

六　同郡大宮町　明治三十五年材木商波多野惣之助あり。

七　同郡上尾宿　元和九年上尾宿村水帳に「上田一反二畝二十七歩・波多野」と見ゆ。苗字記載者は土豪なり。三戸現存す。

八　同郡小室郷中荻村（伊奈町）　柴境観音堂元禄十年地蔵尊に波田野次右衛門・波田野甚右衛門。小針神社天保二年浅間碑に中荻村波多野源左衛門。小針内宿村東光院天保九年筆子碑に中荻村波多野彦八.。氷川社安政三年御神燈に中荻村波多野小左衛門・波多野直左衛門。明治八年騎西町釜屋文書に中扇村酒造業畑野甚右衛門。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北足立郡中荻村波多野大作あり。三戸現存す。

葉田野　ハタノ　岩槻町久伊豆社天保十年御神燈に市宿町葉田野八右衛門。明治三十五年米穀商葉田野留吉あり。一戸現存す。

葉多野　ハタノ　前項参照。

一　岩槻町　明治三十五年料理店葉多野平八・葉多野清太郎。昭和三年興信録に「岩槻町・葉多野すい・所得税五十三円・営業税七十二円」あり。一戸現存す。

二　鴻巣町　天保四年商人講中に葉多野孫兵衛あり。一戸現存す。

葉多埜　ハタノ　明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流葛飾郡上吉妻村（庄和町）葉多埜新三・葉多埜理平あり。三戸現存す。

畑橋　ハタハシ　北本に存す。

畑端　ハタハシ　大宮に存す。

幡々　ハタハタ　和名抄に男衾郡幡々郷を載せ、高山寺本に幡郷と見ゆ。ハタが正訓にて、幡々は幡多の書き誤りなり。幡多（はた）条参照。

畑林　ハタバヤシ　蕨に存す。

畑原　ハタハラ　朝霞、志木、新座、草加、川越等に存す。

畑平　ハタヒラ　江南に存す。

畠平　ハタヒラ　鳩ケ谷、和光等に存す。

畑生　ハタフ　春日部、坂戸、日高等に存す。

幡生　ハタフ　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣にて、明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・七石二人扶持・亡養父恒八・幡生馬之助・三十五歳」あり。

籏生　ハタフ　上福岡に存す。

畑福　ハタフク　戸田に存す。岩手県花巻市五戸存す。

籏福　ハタフク　川口に存す。

畠腹　ハタフク　幸手、草加、所沢等に存す。山形県新庄市三十三戸あり。

畑辺　ハタベ　葛飾郡千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に河原代村ハタ辺忠二郎・高須賀村ハタ辺藤五郎あり。ハタ辺は渡辺氏なり。東松山に存す。

播他部　ハタベ　武蔵国分寺瓦銘に播他部とあり。秦部なり。

籏鉾　ハタホコ　所沢に存す。

葉玉　ハタマ　浦和に存す。

旗町　ハタマチ　東松山に存す。

籏町　ハタマチ　朝霞に存す。長野県東筑摩郡山形村十二戸あり。

播田実　ハタミ　茨城県東茨城郡内原町三十六戸あり。

畑宮　ハタミヤ　日高に存す。

幡宮　ハタミヤ　秋田県南秋田郡井川町九戸あり。

畑村　ハタムラ　浦和、大宮、川口、鴻巣、蓮田、越谷、幸手、坂戸、東松山等に存す。群馬県富岡市十一戸、岩手県九戸郡野田村二十三戸あり。

旗持　ハタモチ　与野、北本等に存す。山梨県南巨摩郡富沢町十四戸あり。

籏持　ハタモチ　山梨県富沢町七戸。

畑元　ハタモト　朝霞に存す。

畑本　ハタモト　各市町村に存す。○秋田県仙北郡中仙町十二戸。○岩手県二戸市十一戸あり。

畠本　ハタモト　越谷、鶴ヶ島等に存す。秋田県中仙町十一戸あり。

幡本　ハタモト　浦和、上尾、越谷、日高、鶴ヶ島等に存す。新潟県西蒲原郡潟東村九戸あり。

旗本　ハタモト　大宮、富士見等に存す。

畑守　ハタモリ　浦和に存す。

畠盛　ハタモリ　入間に存す。

畑谷　ハタヤ　川口、戸田、春日部、越谷、日高等に存す。

畠屋　ハタヤ　鴻巣に存す。

幡谷　ハタヤ　茨城県東茨城郡小川町三十戸、行方郡玉造町二十八戸、石岡市十五戸あり。

一　栗橋町　明治三十年人名録に幡谷山顕正寺住職幡谷唯徳・天保十年生あり。二戸現存す。

幡矢　ハタヤ　大宮に存す。

端谷　ハタヤ　松伏に存す。

一　埼玉郡須賀村（宮代町）　百間村青林寺寛政十年文書に須賀村端谷丈助あり。現存無し。

籏谷　ハタヤ　越谷に存す。

畑山　ハタヤマ　山は古代朝鮮語の国、村の意味。秦族の集落を称す。ハタケヤマ参照。○長野県上水内郡信濃町十七戸。○新潟県中頸城郡妙高高原町二十三戸、妙高村十九戸。○宮城県柴田郡柴田町四十二戸。○岩手県岩手郡西根町十一戸、二戸郡浄法寺町三十四戸。○秋田県由利郡東由利町二十四戸、山本郡二ツ井町二十九戸。○青森県下北郡大畑町二十戸、十和田市百十戸あり。

一　忍城士の畑山氏　成田分限帳に「三十貫文・畑山主税助、三十貫文・畑山五郎大夫」あり。

畠山　ハタヤマ　各市町村に存す。宮城県加美郡小野田町二十五戸あり。ハタケヤマ参照。

端山　ハタヤマ　新座に存す。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩分限帳に「三百五十石・端山茂右衛門」あり。

幡山　ハタヤマ　草加、狭山等に存す。

一　藤原姓幡山氏　神流川南岸の上州野栗村は武蔵国秩父郡に属していた。群馬県多野郡上野村野栗の懸仏に「大日本国知々夫国古森郷鎮守、養老二年六月十五日従四位下県主関野太夫創建」。「武蔵国秩父郡古森郷末・野栗庄長田鎮守野栗宮、文明三年二月三日、幡山三郎藤原資年謹書」と見ゆ。当地方に幡山氏は現存無し。秩父県主関野氏は、古代知々夫国造の本名昔（せき）氏の後裔なり。幡山氏は国造の後裔で秩父氏流畠山氏と同じか。昔条参照。

籏山　ハタヤマ　浦和に存す。

幡羅　ハタラ　和名抄に幡羅郡を原（はら）と註す。江戸初期頃からハタラと称す。入間郡塚越村住吉神社貞享三年文書に旗羅郡東方村と見ゆ。ハラ条参照。

八　ハチ　古代神社の天地（あまつち、あめつち）を、八紘之基柱（あめつちのもとはしら）と云う。八紘（はちこう、はっこう）は、国の果てのことで天下の意味に用いる。日本書紀・神武天皇即位前紀に「六合を兼ねて都を開き、八紘（はちこう）を掩（おお）ひて宇（いえ）と為さむこと、亦可からずや」と。我が四方の国々を統合して都を開き、天下を覆って我が家とすることは、はなはだ良いことではないか。海洋民の海族（あま）は、八（あま）の佳字を用いてハチと称し、蜂、鉢に転訛す。

馬地　バチ　川口、戸田等にあり。

鉢合　ハチアイ　川越藩松平大和守家臣にて、慶応元年地方役人帳に「御元〆・鉢合権平」あり。

八浦　ハチウラ　浦和に存す。

八王子　ハチオウジ　八宮社は八王寺権現と改号す。足立郡八王寺村（与野市）、埼玉郡埼玉村字八王寺、荒木村字八王寺、高麗郡楡木村字八王寺、榛沢郡末野村字八王寺あり。

一　忍城士の八王寺氏　成田分限帳に「十三貫文・八王寺外記」あり。

八箇　ハチカ　新座に存す。

八賀　ハチガ　朝霞に存す。

鉢形　ハチガタ　男衾郡鉢形村（寄居町）あり。八方にて、八（あま）・海（あま、ばた）族の渡来地なり。和名抄の男衾郡幡多郷（はた）にて、後世の和田郷なり。和田条参照。文明年間太田道灌書状及び長享二年梅花無尽蔵などに鉢形城と見ゆ。紀州那智山米良文書に「天文七年、武蔵国おほすなの郡八方」と見ゆ。

一　鉢形城士の鉢形氏　小前田村町田文書に「庚寅二月十日（天正十八年）、町田土佐守殿、鉢形五郎殿、右一族諸侍中まいる」。「庚寅十月十七日、町田土佐守殿、鉢形小十郎、右一族諸侍中、安房守花押」と。町田日記に「鉢形五郎は小前田新田に居住す」と見ゆ。在名にて現存無し。

二　鉢形衆　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「妙華・鉢形衆・丑年十二月」。

鉢金　ハチガネ　所沢、妻沼等に存す。

八ヶ原　ハチガハラ　秩父郡上名栗村字八ヶ原は古の村名にて、宝暦十二年地蔵尊に八箇原村とあり。

八川　ハチカワ　明治四十三年文書に所沢浦町八川民蔵。昭和三年興信録に「所沢町・八川民蔵・所得税十一円」あり。三戸現存す。

蜂川　ハチカワ　川越、狭山等に存す。

八貫野　ハチカンノ　小名八貫野は、埼玉郡黒浜村、足立郡佐知川村、二ツ宮村、三条町村、島根村、在家村、白鍬村、五関村等にあり。

八木　ハチギ　高麗郡野田村字八木（入間市）はハチギと註し、古の村名なり。ヤギ参照。

八木沼　ハチキヌマ　福島県田村郡三春町九戸あり。

八窪　ハチクボ　入間に存す。

鉢窪　ハチクボ　越谷に存す。

八軒　ハチケン　埼玉郡砂原村字八軒（大利根町）は古の村名にて、鷲神社万延元年絵馬に八間と見ゆ。

八子　ハチコ　葛飾郡八子新田（吉川市）は恵鏡庵享保三年碑に松伏領八子村と見ゆ。八郷下川辺庄と称す。

八郷　ハチゴウ　葛飾郡松伏村、川藤村、八子新田等十三ヶ村は八郷と称す。川藤村宝性寺明暦二年碑に川辺庄八郷之内榎戸村（吉川市川藤字榎戸）と見ゆ。

八河内　ハチゴウチ　埼玉郡国納村字八河内（宮代町）は太田袋村琴平社文政三年碑に八河内村とあり。

八石　ハチコク　新座郡上片山村字八石（新座市）は古の村名にて、野寺村明和二年碑に栗原八石中と見ゆ。

八国　ハチコク　入間郡久米村字八国。

鉢迫　ハチサコ　和光に存す。

八丈　ハチジョウ　桶川、上福岡に存す。

八条 ハチジョウ　埼玉郡八条村（八潮市）あり。吾妻鑑建暦三年五月十七日条に「先次郎左衛門尉政宣（山内）の所領武蔵国大河戸御厨内八条郷を式部大夫重清（葛西）に賜ふ」と。延文六年市場祭文写に「武州き西こふり・八十市祭」と見ゆ。八条は八十とも書く。高麗郡女影村字上十（かみじょう）は上条とも書く。

一　野与党八条氏　埼玉郡八条村より起る。武蔵七党系図に「野与六郎基永―九大夫経長―二大夫経光―八条五郎光平―兵衛尉景光（弟に時平、渋江光茂）―信光―氏光」と見ゆ。日蓮宗小金本土寺過去帳（松戸市）に「妙円尼・八条ノ・享徳四年三月八日。妙秀尼・八条ノ御前・応仁三年己丑十月十二日。八条次郎四郎・文明三辛子正月十一日」あり。大松村栄広山由緒著聞書に「葛飾東新方領主向畑城主新方次郎太夫頼希と武州崎西郡八条の領主八条兵衛尉と隙あり。八条家は武蔵七党の内野与党の一人、文亀四年正月八日、八条兵衛尉平惟茂・兵を卒し新方の地を犯す云々」と見ゆ。新方条参照。

二　上杉氏流八条氏　埼玉郡八条村より起る。八条上杉系図に「上杉大膳大夫頼重―修理亮重顕―左近将監朝定（管領、於信州寺原被誅、年三十二歳、法名道禅。武蔵国埼玉郡八条領の里に住しつれば、世には八条の上杉と称せしや終に八条とのみ呼人も之有り）―八条中務大輔朝顕（法名明断。当流馬上手）―女子（亀寿御前、法名了宗、今川満範妻）―八条式部大夫朝広（上杉伊予守顕定養子）、亀寿の弟八条修理亮満朝（童名龍造丸、応永の人）―八条修理亮掃部助房藤―八条修理亮近江守房繁（八条流馬術開基、永正五年卒）―八条兵部大輔房隆、弟八条六郎朝繁、弟八条左衛門大夫昌勝」と見ゆ。八条村新井家に八条近江守房繁の掛軸あり。門弟に高麗郡の中山勘解由照守あり、高麗八条流を興す。中山家譜に「照守（馬術を善くし、高麗流八条家の奥義をきわめしにより、秀忠に其術をつたえたてまつり、のち家光にも其術を言上す）」と。

三　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御馬廻・二百石・八条六郎右衛門、御馬廻・百石・八条平太夫」。享保八年忍藩軍役帳に「百五十石・八条平九郎、七十石・八条平八」。文化四年忍藩分限帳に「無役・五十石・八条染右衛門」あり。

八陣　ハチジン　川越、東松山に存す。

蓮　ハチス　児玉郡下浅見村蓮氏（はす）十一戸存し、鉢須とも記す。

一　埼玉郡須加村（行田市）　武蔵志に「埼玉郡須賀村証城寺如来堂の本尊は、元禄四年四月二十八日土人蓮治郎兵衛と云者、彼民屋の裏庭を堀て出現なり。蓮が子孫絶て無し、屋敷跡のみ存せり」と。風土記稿に「此の本尊は農民与右衛門なるもの己が家の荒園を堀し得たり、これ元禄三年四月二十三日のことなり」と見ゆ。発掘された如来堂の本尊阿弥陀如来は重さ十七貫の金銅仏で、江戸で信仰を集め、桂昌院や島津侯等に信仰されて有名になったが、その後村に戻したという。熊野社嘉永五年御神燈に蓮安平・蓮平左衛門・蓮要吉、明治十五年水鉢に蓮啓二郎・蓮倉之助あり。ハス氏一戸、ハチス氏五戸現存す。

二　賀美郡大御堂村（上里町）　児玉記考に「当大字大御堂は坂本・横山・堀込・青木・蓮の五姓と称し、皆旧家名門なり」と。吉祥院天保五年供養塔に当所蓮富次郎・蓮藤吉。西大御堂村年不詳庚申塔に蓮永治郎・蓮治郎吉・蓮大三郎あり。三戸現存す。

八須　ハチス

一　岡部藩安部氏家臣　寛延二年矢島村検地帳に岡部藩算方八須幸助。岡部藩始末（斎藤伊勢松著）に「元治元年水戸天狗党来襲につき出陣、足軽鉄砲蜂須幸吉、兵粮奉行若党蜂須藤之助」。大正三年源勝院安部家旧臣碑に「足軽組生存者、大字伊勢方・八須藤之助、足軽組跡相続人・大字伊勢方・八須卯之吉」と見ゆ。榛沢郡伊勢方村（深谷市）一戸存す。

二　榛沢郡深谷町　明治三十五年菓子商八須藤吉・糸繭織物商武蔵屋八須矢三郎あり。

三　同郡西大沼村（深谷市）　戸森村明治十四年福田家門人碑に西大沼・八須富士三郎・八須彦三郎あり。十一戸現存す。

四　児玉郡八幡山町（児玉町）　八幡社安永五年御神燈に八須平四郎、明治二十三年御嶽講碑に八須仙蔵・八須平六、明治三十五年碑に八須亀吉・八須半六・八須徳太郎・八須仙蔵。児玉高校内の庚申塔年不詳に八須辰三郎。明治九年八幡山町役人総代・立会人八須長吉。明治三十五年魚商八須半六・饂飩屋八須利八・紺屋八須亀太郎・農具商八須徳次郎・棒屋八須仙蔵あり。二戸現存す。

五　那賀郡古郡村（美里町）　秋山村十二天宮寛政七年建立覚書に古郡村八須忠兵衛。安光寺嘉永元年地蔵尊に当村八須軍八.。明治六年准副戸長八須忠平あり。四戸現存す。

六　同郡広木村（美里町）　児玉記考に「旧家八須喜太郎、先代を重右衛門と通称し、名主組頭役を勤む」。古郡村安光寺嘉永元年地蔵尊にヒロキ・八須十右衛門あり。一戸現存す。

七　高麗郡飯能町　明治十四年菓子商八須由松あり。一戸現存す。

蜂須　ハチス　群馬県邑楽郡邑楽町十四戸、佐波郡赤堀町二十戸、伊勢崎市二十八戸あり。

一　忍城士の蜂須氏　成田分限帳に「三十五貫文・蜂須五太夫（一本に又太夫）」あり。妻沼町史に永井太田村の人なりと。

二　幡羅郡太田村（妻沼町）　太田神社安永四年雀宮碑に長井太田村蜂次栄蔵あり。蜂須氏二戸現存す。

三　同郡西別府村（熊谷市）　安楽寺文久三年馬頭尊に蜂須音吉あり。十三戸現存す。

四　同郡東方村（深谷市）　熊野社明治三十年碑に蜂須栄作・蜂須喜十郎・蜂須八蔵。幡羅村会議員蜂須仲次郎・明治四十一年生あり。蜂須氏四戸、蜂巣氏四戸現存す。

蜂巣　ハチス　幡羅郡東方村四戸存す。群馬県北群馬郡榛東村十一戸、栃木県那須郡湯津上村二十一戸あり。

鉢須　ハチス　幡羅郡下増田村（熊谷市）明治九年副戸長鉢須善吉・文政五年生あり。六戸現存す。

八須賀　ハチスカ　白岡に存す。

蜂須賀　ハチスカ　各市町村に存す。群馬県吾妻郡吾妻町四十戸、中之条町十三戸、群馬郡群馬町十八戸あり。

一　葛飾郡高柳村（栗橋町）　香取社嘉永四年狛犬に蜂須賀又右衛門、明治十四年幟碑に蜂須賀治三郎あり。一戸現存す。

八寿八　ハチスヤ　草加に存す。

八塚　ハチヅカ　熊谷に存す。

八野　ハチノ　小川、児玉等に存す。

八戸　ハチノヘ　各市町村に存す。青森県東津軽郡平内町四十八戸、蓬田村二十七戸、青森市四十八戸あり。

八前　ハチマエ　岩手県二戸郡一戸町十二戸あり。

八丸　ハチマル　川口に存す。

八幡　ハチマン　八（あま、あめ）は海（あま）で、幡（はた、わた）も海（ばた）の意味で海洋民の海族、即ち加羅国の秦族は八幡宮を奉斎神とす。豊前国に秦氏、勝（すぐり）氏多く存す。宇佐八幡宮（大分県宇佐市）は全国八幡宮の総本宮であり、神主は国造系の宇佐公と辛島勝である。宇佐縁起に「和銅五年、辛島勝乙目を祝職と為し、同勝意布売を禰宜と為し、乙目の妹黒比売を采女と為す。次に辛島勝波豆米を禰宜と為す矣」とあり。ハタ、ハチ、ヤハタ条参照。新座、春日部等に存す。

八幡田　ハチマンダ　足立郡八幡田村（鴻巣市）はハチマンデンとも云う。

八幡原　ハチマンハラ　足立郡川田谷村字八幡原（桶川市）は八幡社宝暦八年碑に上川田谷八幡原村と見ゆ。

八幡山　ハチマンヤマ　児玉郡八幡山町（児玉町）あり。寛正年間に夏目定基が当所に雉岡城を築き、今の児玉八幡社附近の住民を移して八幡山と称した。群馬郡子持村双林寺伝記に「白井城主長尾景仲は武蔵国青木・諸岡（横浜市神奈川区）・八幡山（児玉郡）の三荘を賜る。寛正四年死す」とあり。

鉢嶺　ハチミネ　浦和、春日部に存す。

八宮　ハチミヤ　小鹿野、横瀬等に存す。ヤギュウ参照。

八村　ハチムラ　浦和、草加、北本等に存す。ヤツムラ参照。

鉢村　ハチムラ　越谷に存す。栃木県塩谷郡氏家町三十戸あり。

八牟禮　ハチムレ　朝霞に存す。

蜂本　ハチモト　葛飾郡彦倉村（三郷市）延命院宝暦九年勧進帳に当村蜂本多七あり。現存無し。

八森　ハチモリ　大宮、川口等に存す。青森県上北郡上北町十三戸、三戸郡階上町九戸、八戸市二十三戸あり。

八文字　ハチモンジ　朝霞、新座に存す。

一　八文字一揆　高麗郡新堀村町田文書（日高市）に「観応三年五月、八文字一揆・高麗四郎左衛門尉季澄軍忠の事」と見ゆ。ヤツモンジ参照。

八谷　ハチヤ　秩父郡藤倉村字八谷あり。各市町村に存す。青森県下北郡風間浦村四戸あり。ヤタニ参照。

一　秩父町　昭和三年興信録に「八谷庄太郎・所得税十四円」。現存無し。

八矢　ハチヤ　新座に存す。山形県西村山郡河北町二十二戸あり。

八屋　ハチヤ　浦和、川越等に存す。岩手県久慈市十六戸あり。

一　忍城士の八屋氏　成田分限帳に「二十一貫文・八屋又八郎」あり。

蜂谷　ハチヤ　各市町村に存す。○茨城県北相馬郡利根町十三戸。○山形県天童市六十戸。○宮城県宮城郡松島町二十戸、黒川郡大和町十戸、栗原郡栗駒町十八戸、多賀城市二十八戸。○岩手県一関市六十戸あり。

一　川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「了性院妙浄・蜂谷殿母・寅年十二月。源久・蜂谷殿伯父・丑年六月。妙久・ハチヤ殿ムスメ・戌年三月」あり。江戸初期なり。現存無し。

蜂矢　ハチヤ　浦和、川口、八潮に存す。

蜂屋　ハチヤ　各市町村に存す。宮城県黒川郡大郷町二十五戸あり。

一　騎西藩大久保氏家臣　小田原藩文書に「寛永四年騎西御取立・本国美濃・蜂屋重太夫」あり。

二　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「二百石・蜂屋市郎兵衛」あり。

八柳　ハチヤナギ　新座に存す。

八山　ハチヤマ　浦和、川口、越谷、大井、深谷、上里等に存す。群馬県邑楽郡千代田町三十戸あり。

蜂山　ハチヤマ　葛飾郡彦倉村延命院宝暦九年勧進帳に丹後村（三郷市）蜂山新四郎あり。現存無し。

鉢山　ハチヤマ　秩父郡横瀬村字鉢山は古の村名にて、榛沢郡小前田村町田日記に鉢山城主諏訪部遠江守と。鉢形古城記に「鉢形城には鉢山已下雑兵籠置なり」と見ゆ。諏訪部氏のことか。

羽中田　ハチュウダ　大宮、蓮田、新座、所沢、久喜等に存す。山梨県中巨摩郡敷島町二十三戸あり。

八里　ハチリ　鴻巣に存す。

鉢呂　ハチロ　大宮、上尾、蕨、草加、志木、日高、川越等に存す。

初岡　ハツオカ　川口、富士見、大井、熊谷等に存す。

八海　ハッカイ　川越に存す。

初谷　ハツガイ　各市町村に存す。栃木県安蘇郡葛生町十六戸、足利市七十戸。天正十三年足利庄橋本郷百姓初加谷氏とあれば正訓はハツガヤか。

初貝　ハツガイ　大宮、川口、草加、吹上、朝霞、新座、入間等に存す。岩手県胆沢郡前沢町三十三戸あり。

廿日岩　ハツカイワ　越谷に存す。

八角　ハッカク　浦和、川口、伊奈、新座、八潮、川越等に存す。千葉県山武郡横芝町二十三戸、松尾町二十三戸、大網白里町三十戸、成東町三十戸あり。ホズミ参照。

初鹿野　ハツカノ　川口、蕨、坂戸等に存す。

初雁　ハツカリ　川越城内に字初雁あり、川越城は別名を初雁城と云う。高麗郡的場村字初雁あり。

一　比企郡杉山村（嵐山町）　赤浜村大久保家譜に「大久保茂兵衛家勝（天正六年生）―弥太夫親良―女子（杉山村初雁三郎兵衛妻）」。明治九年戸長初雁京之助・弘化二年生。八宮社明治十六年筆子碑に当村初雁辰五郎・初雁源作・初雁正作・初雁良助。昭和三年興信録に「七郷村・初雁鳴彦・所得税十円」あり。四戸現存す。

初川　ハツカワ　蓮田、越谷、八潮、朝霞、新座、和光、入間等に存す。

羽月　ハヅキ　入間、鶴ヶ島、所沢等に存す。

葉月　ハヅキ　飯能に存す。

八京　ハッキョウ　深谷に存す。

波津久　ハツク　大宮、上尾、八潮、飯能等に存す。

八景　ハッケイ　大宮に存す。

八構　ハッコウ　浦和に存す。

八崎　ハッサキ　深谷に存す。

初沢　ハツザワ　各市町村に存す。茨城県結城郡八千代町十戸、真壁郡関城町二十三戸、下妻市三十六戸、つくば市三十三戸あり。

初澤　ハツザワ　各市町村に存す。

発師　ハツシ　深谷に存す。

初塩　ハツシオ　大宮に存す。

初鹿　ハツシカ　各市町村に存す。山梨県東八代郡境川村十二戸、南巨摩郡増穂町三十六戸、甲府市三十戸あり。

初芝　ハツシバ　鴻巣、吹上、越谷、三郷、庄和、熊谷等に存す。千葉県山武郡大網白里町九戸あり。

初島　ハツシマ　坂戸に存す。

初瀬　ハツセ　浦和、蕨、大宮、菖蒲、久喜、鷲宮、所沢等に存す。

初瀬川　ハツセガワ　川口、宮代等に存す。小田原市三十戸あり。

八太　ハッタ　浦和、大宮、越谷に存す。和名抄に伊勢国壱志郡八太郷を鉢多（はちた）と註し、延喜式に波多神社を載す。一志町大字八太（はた）の波多神社にて八太氏の氏神なり。姓氏録・右京諸蕃に「八太造。和多罪豊玉命の児布留多摩乃命の後也」と、海神の綿積豊玉彦神の後裔なり。

八田　ハッタ　各市町村に存す。○群馬県伊勢崎市四十戸。○山梨県東八代郡石和町八戸。○新潟県西頸城郡青海町十四戸。○秋田県河辺郡河辺町八戸。○鳥取県岩美郡岩美町七戸、八頭郡八東町十二戸、米子市三十六戸、鳥取市十七戸あり。八太と同じく海族なり。ヤタ氏は物部族なり。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「百五十石・八田九郎右衛門・是は忍にて罷出・三河之者」あり。

二　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「七十石三人扶持・八田猶右衛門」あり。

三　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「先銃隊頭・二百石・亡養父彦十郎・八田彦十郎・四十歳、御徒銃隊格・八石二人扶持・亡養父義四郎・八田早輔・三十歳」あり。

四　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「十二石三人扶持・八田弥次右衛門」あり。

五　関東郡代伊奈氏家臣　享保年間に八田甚左衛門。天明六年に八田仙右衛門。天明年間赤山陣屋屋敷図に「八田善左衛門・一町一反五畝歩、八田甚介・七反四畝歩」。寛政三年に「御広間定番・五人扶持格・上屋敷住・八田友太夫」あり。

六　足立郡立野村（草加市）　浄龍寺天保六年供養塔に八田弥五郎あり。現存無し。

七　入間郡川越町　明治二十二年埼玉勧業会員八田信重あり。現存無し。

八　高麗郡原市場村（飯能市）　字白石安永九年供養塔に八田喜八あり。二戸現存す。

服田　ハッタ　幸手に存す。長野県上水内郡三水村九戸、牟礼村十戸あり。

発田　ハッタ　浦和に存す。

治田　ハッタ　新潟県西蒲原郡吉田町四十五戸あり。ハルタ参照。

初田　ハツタ　大宮、桶川、朝霞、和光、春日部、草加、狭山等に存す。鳥取県気高郡気高町十戸あり。

一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「錠口番・二両余二人扶持・初田円次郎」。明治四年忍藩士族名簿に「二両余二人扶持・初田義次」あり。

初谷　ハツタニ　浦和、春日部、八潮等に存す。ハツガイ、ハツヤ参照。

一　桶川町　明治十一年府川文書に初谷七兵衛あり。現存無し。

二　志木町　明治三十五年建具職初谷重五郎あり。現存無し。

八田羽　ハッタバ　千葉県印旛郡栄町十一戸あり。

八反田　ハッタンダ　横見郡柚沢村字八反田（吉見町）は古の村名にて、岩室観音堂嘉永三年水鉢に八反田、鴻巣宿法要寺嘉永四年碑に八反田村と見ゆ。柚沢村の新井条参照。大宮、蓮田、志木、入間、所沢に存す。

八丁　ハッチョウ　足立郡大間木村字八丁（浦和市）は古の村名にて、大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に八丁と見ゆ、八丁稲荷社の場所なり。

八町　ハッチョウ　大里郡佐谷田村字八町新田（熊谷市）は大雷社正徳三年地蔵尊に佐谷田八町村と見ゆ。新座、入間、富士見等に存す。

八長　ハッチョウ　春日部、草加等に存す。栃木県足利市三十戸あり。

八町河原　ハッチョウガワラ　賀美郡八町河原村（上里町）あり。

八丁堀　ハッチョウボリ　葛飾郡八丁堀村（三郷市）あり。

八丁目　ハッチョウメ　葛飾郡八丁目村（春日部市）あり。

発度　ハット　ホット条参照。

八鳥　ハットリ　鴻巣に存す。

八取　ハットリ　三郷に存す。

羽鳥　ハットリ　所沢に存す。

初鳥　ハットリ　浦和、川越、熊谷等に存す。茨城県新治郡霞ヶ浦町八戸。

服部　ハットリ　機織（はたおり）を職とする集団にてハトリと称し、後世ハットリと云う。和名抄の服部郷は波止利、八止利、八土利と註す。フク条参照。○群馬県新田郡新田町二十三戸、邑楽郡大泉町三十五戸、佐波郡境町二十七戸、太田市四十五戸。○茨城県新治郡霞ヶ浦町四十三戸。○長野県上水内郡信濃町二十戸、中野市六十八戸。○新潟県中魚沼郡中里村五十四戸、十日町市六十戸、柏崎市四十六戸、上越市九十戸。○福島県安達郡安達町百三十戸、東和町二十戸、二本松市四十戸、郡山市百戸、福島市百十戸。○山形県東村山郡中山町二十九戸。○岩手県岩手郡葛巻町二十九戸。○島根県隠岐郡西郷町三十七戸、邑智郡瑞穂町二十三戸、石見町六十戸あり。

一　都筑郡の服部氏　万葉集巻二十に「天平勝宝七年二月、都筑郡上丁服部於由が妻服部砦女」と見ゆ。

二　忍城士の服部氏　成田分限帳に「五百石・服部与三右衛門、七十石・服部勘七郎」あり。

三　松山城士の服部氏　四十三項参照。

四　鉢形城士の服部氏　五十一項参照。

五　騎西藩大久保氏家臣　小田原藩文書に「三河御取立・服部敬三郎、敬三郎家分元和元年騎西御取立・服部与惣兵衛」と見ゆ。

六　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「二百石・服部十三郎・是は忍にて罷出・伊賀之者、二百石・服部理左衛門・是は忍にて罷出・甲賀之者」あり。

七　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「外科医・六人扶持・服部祐慶」あり。

八　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御番頭・四百八十石・服部金之助、御物頭・百六十石・服部佐平、御文好・十人扶持・服部杢右衛門、同役・三人扶持・服部久次郎、御寄合・三人扶持・服部滝江、御蔵役・六石二人扶持・服部中兵衛」。明治四年忍藩士族名簿に「四百八十石・服部竹三、百六十石・服部稲助、十五人扶持・服部鉄次郎、六石四人扶持・服部勝太郎、六石三人扶持・服部広之進、二両余二人扶持・服部宗太郎、同高・服部三蔵」あり。

九　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御長柄奉行・百石五人扶持・服部惣太夫、小買物勝手詰・五両三人扶持・服部元右衛門」あり。

一〇　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「六両二人扶持・服部運平」あり。

一一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「小組頭・三十石五人扶持・川越取立・服部助左衛門」あり。

一二　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御武具方・十三人扶持・亡父津右衛門・服部嘉司馬・四十三歳、勘定奉行支配・四石余二人扶持・服部房吉・三十六歳」あり。

一三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「二百石・服部与次兵衛」。寛文二年岩槻藩分限帳に「二百石・服部所右衛門、江州代官・五十四俵・服部清左衛門」あり。

一四　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「八両五人扶持・服部半助、五石余二人扶持・服部長左衛門、五両二人扶持・服部猪兵衛」あり。

一五　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「三十俵二人扶持・服部半助」あり。

一六　葛飾郡蓮沼村（杉戸町）　本村香取社明治二十六年碑に服部慶清。不動院野村下谷神社明治四十一年碑に服部慶清あり。四戸現存す。

一七　同郡幸手町　明治三十五年糸繭商前田屋服部菊蔵あり。

一八　同郡権現堂村（幸手市）　熊野社明治三十四年碑に下谷服部喜八あり。二戸現存す。

一九　同郡神明内村（幸手市）　安政六年浄誓寺文書に門徒総代服部幸吉。明治二十年被選挙権者に服部幸七・弘化二年生、服部庄右衛門・安政元年生あり。七戸現存す。

二〇　同郡下吉羽村（幸手市）　明治二十年選挙権者に服部伊右衛門・文政七年生、服部竹蔵・安政四年生。香取社明治二十年碑に下吉羽村服部虎吉・服部織右衛門、明治三十九年碑に下吉羽服部八四郎あり。六戸現存す。

二一　同郡惣新田村（幸手市）　明治九年副戸長服部太蔵・天保十年生。明治二十年被選挙権者服部豊太郎・万延元年生。下吉羽村香取社明治二十年碑に惣新田服部音七、明治三十九年碑に惣新田服部豊太郎・服部竹次郎あり。四戸現存す。羽鳥条参照。

二二　埼玉郡岩槻町　慈恩寺村慈恩寺元禄九年阿弥陀如来に岩付町服部五兵衛あり。

二三　同郡大沢町（越谷市）　明治三十五年桶屋服部利八あり。

二四　同郡閏戸村（蓮田市）　薬師寺嘉永元年六地蔵に中閏戸邑服部文左衛門あり。九戸現存す。

二五　同郡久喜町　明治四年久喜新町五人組帳に服部由右衛門・服部又右衛門。明治三十五年米穀商服部周次郎・洋物商中屋支店服部清重郎あり。

二六　同郡下早見村（久喜市）　太田袋村琴平社文政三年水鉢に下早見村服部平左衛門。鷲神社天保十年御神燈に服部清兵衛あり。一戸現存す。

二七　同郡小林村（菖蒲町）　妙福寺天保二年題目講に服部戸右衛門。雷電社弘化三年棟札に大工服部勇蔵。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流小林村服部菊次郎。当村明治二十六年聖徳太子碑に服部平蔵・服部藤□あり。七戸現存す。

二八　同郡騎西町　大英寺寛政十二年庚申塔に服部三治郎。明治三十五年菓子商服部米造・糸繭商服部重次郎。

二九　同郡広田村（川里町）　広田村開発者に「慶長五年までの内に、服部久左衛門・引越来る」と見ゆ。現存無し。新井条参照。

三〇　同郡南篠崎村（加須市）　鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に南篠崎村服部重左衛門・服部周右衛門。神明社安政三年御神燈に服部末吉・服部万右衛門あり。二戸現存す。

三一　同郡酒巻村（行田市）　妻沼村聖天宮安政五年御神燈に石工酒巻村服部伴次郎あり。現存無し。

三二　同郡下須戸村（行田市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

三三　同郡上之村（熊谷市）　龍淵寺享保元年庚申塔に服部伊兵衛あり。七戸現存す。

三四　足立郡芝村（川口市）　慈星院明治十年碑に服部留吉・服部熊蔵。八幡社明治四十年碑に芝村服部文次郎・服部竹次郎あり。

三五　同郡伊刈村（川口市）　力神社文政十年水鉢に当所服部銀蔵・服部文治郎あり。

三六　同郡美女木村（戸田市）　徳祥寺文化十四年供養塔に腹部清次郎。八幡社明治三十二年碑に服部清次郎あり。五戸現存す。

三七　同郡浦和町　明治三十五年弁護士服部善吉あり。

三八　同郡鴻巣町　明治十四年埼玉銀行株主服部利兵衛・三株百五十円所有。明治三十年本一町服部吉五郎・服部繁蔵あり。

三九　入間郡堀金新田（所沢市）　明治七年堀金新田副戸長服部清右衛門・文化七年生あり。一戸現存す。

四〇　同郡堀兼村（狭山市）　堀兼神社嘉永元年敷石碑に当邑新田服部馬五郎、万延元年浅間碑に服部弥左衛門。明治二十五年入間川町地租額調に堀兼村服部重蔵あり。九戸現存す。

四一　同郡川越町　氷川社明治八年水鉢に南町服部新助・服部長兵衛、明治三十三年玉垣碑に服部松太郎・服部周治郎。明治三十五年小間物商山周服部周次郎・煙草商山松服部松太郎・照降商山新服部新助・薬舗服部新助。三芳野神社明治四十年碑に南町服部周太郎あり。

四二　同郡今福村（川越市）　明見院慶応二年普門品に服部与右衛門あり。二戸現存す。

四三　高麗郡鯨井村（川越市）　中里村加藤氏全録に「時に永禄年中、小田原七騎の内に選まる。鯨井村にて服部老之介、中里村にて加藤豊前、何連も同国松山の城主上田上野介旗下に属す」と見ゆ。現存無し。

四四　同郡安比奈新田村（川越市）　安永九年巡拝塔に安比奈村服部喜三郎あり。五戸現存す。

四五　同郡柏原村（狭山市）　明治二十九年蚕種製造服部浅五郎あり。十戸現存す。

四六　同郡戸宮村（坂戸市）　的場村御嶽社明治二十四年碑に戸宮服部金助あり。現存無し。

四七　比企郡野本村（東松山市）　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「妙林・服部内方・亥年十一月。妙円・服部内方・九月。道蓮・服部内・辰年四月。享保三年、野本・服部五左衛門妻は打鋪一枚を寄進す」と見ゆ。現存無し。

四八　同郡山田村（滑川町）　当村に此氏多く存す。湯殿山嘉永元年供養塔に山田村講元服部禎十郎。明治九年副戸長服部武喜・天保九年生。明治十年代福田連合村地価地租表に服部芳治・地租九十八円、服部まさ・地租三十二円、服部幾太郎・地租三十一円、服部近喜・地租十九円、服部喜代三郎、服部治平、服部鯉太郎、服部千之助、服部滝松、服部岸次郎、服部勘蔵、服部要三郎、服部初五郎。明治十七年菓子商服部勘・鼠蝿取業服部文七あり。

四九　大里郡中曽根村（大里町）　野原村文殊寺明治二年碑に中曽根村服部半兵衛あり。七戸現存す。

五〇　榛沢郡深谷宿　名主田中万右衛門著に「年寄六人の者共相勤め候。享保十七年居屋敷拝領・年寄服部四郎右衛門」。本陣飯島文書に「享保十八年、横町四郎右衛門は江戸伊奈半左衛門に罷出水帳請取る。文政二年、深谷宿本陣代・年寄四郎右衛門」と見ゆ。現存無し。

五一　同郡小前田村（花園町）　町田文書に「庚寅二月十日（天正十八年）、町田土佐守殿、服部将監殿、右一族諸侍中まいる」。元和八年町田日記に「文禄元年、服部将監等は小前田新田を切開く」と見ゆ。長善寺寛政五年供養塔に服部吉左衛門、万延元年庚申塔に服部藤兵衛あり。五戸現存す。

五二　児玉郡本庄宿　明治四年諸井文書に本町服部源七あり。四戸現存す。

五三　賀美郡堤村（上里町）　白川家門人帳に「享和二年、堤村服部棟野・男神子也」と見ゆ。現存無し。

五四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・服部熊次郎・二十七円、木崎村（浦和市）・服部健三・二十六円、田宮村（杉戸町）・服部勝井・三十円、久喜町・服部愛助・十四円・三十六円、太田村（行田市）・服部兵吉・十円、川越市・服部周次郎・四十七円・十六円、服部新助・九円、福田村（滑川町）・服部文作・四十九円、服部嘉正・十円」あり。

初根　ハツネ　毛呂山に存す。

初音　ハツネ　大宮、吉川、鷲宮に存す。

初野　ハツノ

一　入間郡毛呂本郷（毛呂山町）　出雲伊波比神社明治二十年御神燈に毛呂本郷初野平次郎あり。四戸現存す。

二　同郡阿諏訪村（毛呂山町）　明治三十七年山根村会議員初野團蔵（郡会議員）あり。七戸現存す。

三　同郡滝野入村（毛呂山町）　行蔵寺寛政十一年地蔵尊に初野仙右衛門。桃木村八幡社明治十四年筆子碑に滝ノ入村初野松太郎。平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に滝ノ入初野太十郎。明治二十五年山根村会議員初野清三郎、明治三十四年山根村会議員初野貞助あり。十戸現存す。

八甫　ハッポ　葛飾郡八甫村（鷲宮町）あり、八方村とも記す。天正五年に鮎川豊後守は八甫村を知行す。

八方　ハッポウ　浦和、桶川、吹上、新座等に存す。

初見　ハツミ　各市町村に存す。茨城県猿島郡境町十七戸、三和町百四十戸、総和町十五戸、岩井市二十戸あり。

一　寄居町　明治三十五年荒物商初見伊三郎あり。現存無し。

波積　ハツミ　大宮に存す。

初谷　ハツヤ　浦和、上尾、与野、春日部、八潮等に存す。ハツタニ参照。

一　葛飾郡八甫村（鷲宮町）　鷲宮村霊樹寺文書に「八甫村。寛永四年検地一町四反二畝歩・利右衛門、元禄八年検地・初谷伝兵衛」と見ゆ。現存無し。神谷条参照。

初宿　ハツヤド　新座に存す。

初山　ハツヤマ　栃木県安蘇郡葛生町十九戸あり。

一　埼玉郡大瀬村（八潮市）　宝光寺天保五年弘法大師碑に初山次右衛門、明治四十四年碑に初山惣蔵。祭礼年番帳に「明治六年、中組初山長五郎。明治七年、中組初山兼吉。明治八年、上組初山元之助、中組初山与兵衛。明治九年、中組初山重吉。明治十年、中組初山彦右衛門・初山辰五郎。明治十六年、初山岩太郎。明治十七年、初山鉄五郎。明治二十年、初山初五郎」あり。四戸現存す。

二　同郡古新田（八潮市）　大瀬村宝光寺年不詳金剛盤銘に古新田村初山八左衛門、文化三年本堂欄干銘に古新田村初山六左衛門。当村元治元年水神宮に初山作右衛門。稲荷社明治十八年絵馬に初山仙蔵・初山政右衛門・初山米吉・初山卯之助、明治三十八年絵馬に初山俊三郎・初山長太郎、明治四十三年絵馬に初山茂右衛門、明治四十五年絵馬に初山政次郎。明治三十年人名録に質屋初山政次郎・万延元年生・地租九十二円、初山政右衛門・天保十四年生あり。七戸現存す。

三　足立郡九左衛門新田（草加市）　明治十九年家屋台帳に初山芳五郎あり。現存無し。

羽出木　ハデキ　川口に存す。

波照間　ハテマ　所沢に存す。正訓不詳。

八手又　ハテマタ　坂戸に存す。

鳩　ハト　浦和、羽生、東松山等に存す。青森県三戸郡階上町十三戸、八戸市二十九戸あり。

羽土　ハト　志木、越谷、草加に存す。

波戸　ハト　浦和、新座、大利根に存す。

葉戸　ハト　大井に存す。

波頭　ハトウ　川口、草加等に存す。

羽当　ハトウ　久喜に存す。

羽當　ハトウ　大宮に存す。

羽藤　ハトウ　浦和、桶川、蓮田、岩槻、所沢、日高等に存す。岩手県胆沢郡胆沢町二十八戸あり。

葉騰　ハトウ　児玉郡南十条村（美里町）天保元年葉騰茂文書に葉騰春五郎。明治九年副戸長葉騰春五郎・天保八年生あり。三戸現存す。

鳩岡　ハトオカ　宮代に存す。

鳩谷　ハトガイ　足立郡鳩ヶ谷町は鳩井（はとがい）、鳩谷（はとがい）と唱え、今はハトガヤと称す。鎌倉光明寺文永九年正月十六日文書に武州在鳩井と。川越喜多院正安二年三月十八日鐘銘に武蔵国足立郡鳩井郷筥崎山（浦寺村筥崎権現社、現鳩ヶ谷市桜町）と。延文六年市場祭文写に足立郡鳩谷之里市祭（里村）と。天正十八年牛込文書に足立庄内鳩井村と見ゆ。松伏、飯能等に存す。千葉県印旛郡印旛村七戸あり。

一　武蔵国造後裔の鳩谷氏　古代氏族系譜集成に「武蔵宿祢後裔（武蔵、鳩谷、野与、本田、宮城。武蔵人）」と見ゆ。武蔵国造族野与党参照。

二　平姓野与党鳩谷氏　中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「鳩谷、平、本国武蔵足立郡」と見ゆ。吾妻鑑巻三十五に「寛元元年三月十二日、武蔵国足立郡内鳩谷地頭職鳩谷兵衛尉重元・参る。其の砌、庭中言上の事あり云々」。巻四十六に「建長八年六月二日、奥州路の盗賊横行を路次の地頭に警備せしむ。鳩井兵衛尉が跡等、二十四人に沙汰あり」。典籍古文書に「建治元年五月、武蔵国・鳩谷八郎跡三貫を京都六条八幡宮の造営役に負担す」。川上文書（栃木県大田原市）に「永徳二年四月五日、足利氏満は、武蔵国荏原郡世田郷・同国足立郡芝郷大牧村地頭職中条出羽入道跡の下地を鳩井美濃三郎と高山左近将監をして、鎌倉法泉寺に沙汰し付けしむ」。鎌倉扇ヶ谷の法泉寺は廃寺となり、文書は建長寺宝珠庵が伝来す。同庵文書に「平義景は、今月五日施行状の旨に任せ、足立郡芝郷大牧村地頭職等の下地を法泉寺に打ち渡す」と見ゆ。風土記稿埼玉郡笠原村（鴻巣市）条に「或書に載する文書に、鳩井美濃三郎義景申買得地・武蔵国埼西郡栢間郷内笠原村榑井在家田畠三町三段を訴へにより、康暦三年四月十三日鬼窪□□殿沙汰をして尋究せしむと記せり。是によれば此比は栢間郷の内に属して鳩井氏の知行ありしこと知らる」。栢間村（菖蒲町）条に「古城蹟は、村の東の方、小名沼尻にあり。今田畑となりて昔の境界分ち難し。古くは鳩井将監と云ふ者、此所に住せしと云ふ。村内正法院の熊野社に蔵する永禄十三年の棟札に『大檀那鳩井殿、息女鍋殿』と載せたれば、其の頃までは鳩井が住せしこと明けし」。上栢間村真義真言宗正法院は康正元年開基鳩井三郎にて、鳩井氏累代の菩提寺なり。紀州高野山清浄心院過去帳に「霊位長庵松久禅定門・武州崎西郡栢間郷鳩井能登守・元亀三年辛未正月七日」。「霊位安室春泰禅定尼・武州鳩飼能登守入道立之（供養者）・元亀四年四月二日」。足立郡菅谷村（上尾市）条に「古城蹟ありて、按に坂田村旧家与右衛門が先祖加藤氏は、元鳩谷修理といえるものの臣下なりしが、修理・其地を棄て当村に移りしと云ふことを彼家に伝へり。此地もしくは修理が居跡なるにや」と見ゆ。加藤、春日条参照。

三　日蓮宗信徒の鳩谷氏　小金本土寺（松戸市）過去帳に「心蓮坊日移・武州鳩谷ニテ・文明六年正月四日。妙円尼・鳩谷不動坊三子・文明十年二月二十八日。長遠坊日栄位・鳩谷・延徳四年五月十一日。小宮山三郎妙義位・鳩谷・明応七年三月十三日。妙恵尼妙円・ハトカイニテ。祐仙入道・ハトカヤ助二郎内父。妙蓮尼・ハトカヤ助二郎母。妙善入道女共ニ・ハトカイ。大弐阿・ハトカイ松原。一位公鳩井、妙光、妙賢、是もハトカイ平右衛門父子」あり。前項の真言宗信徒の平姓鳩谷氏とは別家の者で、安行領根岸村（川口市）出身の小見山氏等が鳩谷郷に居住して鳩谷氏を称す。小見山条参照。

四　鳩谷住人　日蓮宗信徒にて、鳩ヶ谷町氷川社禰宜島田氏は在名の鳩谷氏を名乗る。信濃国小県郡滋野村（東部町）出身にて、本国の神氏、或は滋野氏を称す。鳩ヶ谷宿条に「仁治建長の頃は鳩谷氏の所領なり。それより世下りて文明の頃は滋野憲永と云ものの領せしにや。堯恵が北国紀行に文明十八年七月七日に鳩カ井の里滋野憲永がもとに秋増恋云々」と。武蔵志に「鳩ヶ谷宿、当所に鳩谷憲方居跡無之隣郷可尋」と見ゆ。氷川社寛政十年水鉢に当町神和泉正。氷川社条に「当宿及び辻村・里村等の鎮守なり、禰宜島田亀吉が預かりなり」。神和泉正の本名は島田亀吉なり。辻村日蓮宗常住寺過去帳に「照覚泊道は長運院手習弟子鳩ヶ谷又兵衛・三田次部右衛門伯父・正徳元年六月十三日。寿徳院日宝・大和国郡山松平甲斐守様家中島田善九郎事・享保十五年六月十八日施主鳩ヶ谷和泉。安永二年二月納之金二分・施主鳩谷賀右衛門。安永三年七月二日納之金二分・施主鳩ヶ谷六三郎。安永九年五月惣敷石建立・世話人鳩ヶ谷五郎兵衛・同加右衛門」と見ゆ。鳩ヶ谷和泉の親族島田善九郎は川越藩主柳沢出羽守吉保の子松平甲斐守に仕へ、大和国郡山藩へ移る。また、当所住人三田氏も在名鳩谷氏を名乗る。神（みわ）、滋野、島田、三田条十八項参照。

五　松山城士の鳩谷氏　秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「妙信・ハトカヒ」と見ゆ。

六　忍城志の鳩井氏　永禄三年関東幕注文に「武州之衆、成田下総守同心、鳩井能登守・かたぐろ」。天正十年成田分限帳に「七十石・鳩貝藤左衛門」あり。次項と同出身か。

七　古河衆の鳩井氏　鎌倉大草紙に「嘉吉元年四月、野田遠江守家人鳩井隼人佐は古河城にて討死す」と見ゆ。猿島郡五霞町山王に鳩貝氏二十戸存す。此氏か。

鳩貝　ハトガイ　各市町村に存す。茨城県猿島郡五霞町二十二戸、下妻市四十戸あり。

鳩飼　ハトガイ　千葉県木更津市二十二戸あり。

鳩ヶ谷　ハトガヤ　埼玉郡上村君村（羽生市）避来矢神社嘉永四年御神燈に上堤根組中・鳩ヶ谷佐右衛門、慶応二年馬頭尊に鳩谷佐右衛門。雷電社安政四年碑に鳩ヶ谷万之丞、明治三十三年碑に鳩ヶ谷安太郎あり。一戸現存す。ハトガイ条参照。

鳩崎　ハトザキ　岩槻に存す。

波戸根　ハトネ　狭山に存す。

鳩野　ハトノ　川越、東松山、熊谷等に存す。

波戸場　ハトバ　所沢に存す。

鳩原　ハトハラ　狭山に存す。

鳩間　ハトマ　所沢に存す。

羽富　ハトミ　川口、与野、志木、新座、鳩ケ谷、草加、三郷、庄和等に存す。茨城県岩井市九十戸あり。

鳩峰　ハトミネ　入間郡久米村字鳩峰。

鳩本　ハトモト　新座に存す。

波戸本　ハトモト　川口、春日部に存す。

鳩森　ハトモリ　入間郡小山村字鳩森。

八甫谷　ハトヤ　川口に存す。

鳩宿　ハトヤド　北本、入間、所沢等に存す。

鳩山　ハトヤマ　比企郡熊井村字鳩山（鳩山町）あり、昭和三十年に此の地名をとって鳩山村と称し、現在の鳩山町となる。埼玉郡南大桑村字鳩山（加須市）は古の村名にて、享保四年地蔵尊に鳩山村とあり。白岡、春日部等に存す。栃木県下都賀郡都賀町二十九戸あり。

服　ハトリ　長秋記に「天永二年八月二十一日、朝廷の相撲に服常方・武蔵国住人」と見ゆ。

箙　ハトリ　エビラ、フク参照。

服部　ハトリ　ハットリ参照。

葉鳥　ハトリ　和光、吉川等に存す。

八鳥　ハトリ　松山城士にて、秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「妙光・八鳥。宗福・ハトリ弥衛門尉・元和二年十二月」あり。

羽鳥　ハトリ　埼玉郡荒木村字羽鳥、古ヶ場村字羽鳥山、足立郡石神村字ハトリカヤあり。呉国出身の毛野氏配下の呉服（くれはとり）の後裔にて上野国及び武蔵国に多く存す。呉条参照。○群馬県北群馬郡吉岡町二十三戸、群馬郡群馬町四十七戸、勢多郡富士見村三十三戸、佐波郡境町二十八戸、玉村町九十戸、渋川市五十四戸、高崎市九十五戸、前橋市百八十戸。○茨城県新治郡玉里村三十五戸、結城郡八千代町三十三戸、猿島郡三和町三十戸。○新潟県北魚沼郡湯之谷村二十二戸、中魚沼郡川西町三十九戸、中里村二十戸、小千谷市六十八戸、十日町市五十八戸あり。

一　忍城士の羽鳥氏　成田分限帳に「十貫五百文・羽鳥左京」。行田史譚に「天正十八年忍城攻めの時、軍使羽鳥左京は二ノ丸に籠城す」とあり。妻沼町史は善ヶ島村住人と云う。

二　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百五十石・羽鳥三吉・是は忍にて罷出・武州之者」あり。

三　葛飾郡広島村（吉川市）　槙野地村蓮花院文政四年筆子碑に広島・羽鳥亀次郎あり。現存無し。

四　同郡清地村（杉戸町）　近津神社明治十六年御神燈に羽鳥松五郎。明治三十五年杉戸町菓子商羽鳥藤次郎あり。現存無し。

五　同郡惣新田村（幸手市）　字菅島稲荷社延享元年庚申塔に羽鳥左助・羽鳥左右衛門・羽鳥弥右衛門、宝暦十二年庚申塔に菅島・羽鳥与市・羽鳥源右衛門・羽鳥幸次郎、寛政二年庚申塔に菅島組羽鳥勇七・羽鳥亦市・羽鳥半助・羽鳥弥平治・羽鳥亀治郎あり。現存無し。服部条参照。

六　同郡関宿向下河岸（幸手市）　浅間社天明二年庚申塔に羽鳥庄兵衛あり。現存無し。

七　埼玉郡屈巣村（川里町）　当村に此氏多く存す。久伊豆社貞享二年塞神碑に羽鳥忠右衛門。円通寺文化十三年大黒天碑に羽鳥勇八・羽鳥喜平治。正能村諏訪社嘉永五年富士講碑に屈巣村羽鳥佐次右衛門・羽鳥兵蔵。野村玉松堂文久三年入門に屈巣村羽鳥佐源治・羽鳥三七郎、明治二年入門に久寿村旅右衛門倅羽鳥定次郎。普済寺明治六年筆子碑に羽鳥藤治郎・羽鳥六右衛門・羽鳥喜八・羽鳥龍造。明治七年製糸会社人名録に羽鳥佐次右衛門。明治九年副戸長羽鳥金左衛門・文化十四年生。明治十八年最上農名簿に羽鳥愛助・耕宅地十町二反歩・山林三反歩所有。県会議員農業羽鳥宇一郎・慶応二年生。上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡屈巣村東講羽鳥良平あり。

八　同郡広田村（川里町）　広田村開発者に「天正二十年、羽鳥織部・引越し来る」と。六戸現存す。新井参照。

九　同郡鎌塚村（吹上町）　八幡社享保七年塞神碑に羽鳥仁兵衛、明治十年碑に羽鳥清蔵・羽鳥与八・羽鳥武助あり。一戸現存す。

一〇　同郡砂原村（大利根町）　当村に此氏の旧家あり。七戸現存す。

一一　同郡飯積村（北川辺町）　館林城主長尾但馬守が天正十八年三月に佐野城主佐野宗綱に滅ぼされた際に、但馬守の家臣羽鳥和泉守が落ちて来て土着すと伝へる。当村出身の出稼衆にて郷里へ帰農す。正音寺元禄十年仏像銘に飯積村羽鳥長兵衛。大聖寺延享三年供養塔に飯積邑羽鳥平兵衛。鷲神社寛延四年庚申塔に飯積村羽鳥市兵衛門、万延元年庚申塔に飯積村新屋敷羽鳥弥左衛門。明治七年船積問屋羽鳥弥右衛門・但明治五年九月創立。明治九年副戸長羽鳥幸蔵・嘉永二年生。鷲神社明治十一年絵馬に羽鳥藤次郎・羽鳥弥惣次・羽鳥平内次。明治十八年最上農名簿に羽鳥常蔵・耕宅地三町六反歩・山林二反歩所有。明治三十五年議定に羽鳥弥惣次・羽鳥キセ・羽鳥友吉・羽鳥助作・羽鳥藤兵衛・羽鳥広之助あり。十四戸現存す。

一二　同郡砂山村（羽生市）　小松村小松神社宝永五年水鉢に砂山村羽鳥治郎兵衛・羽鳥四郎兵衛・羽鳥権兵衛。愛宕社文化元年弁財天碑に羽鳥嘉衛門・羽鳥彦左衛門・羽鳥勘兵衛・羽鳥善蔵・羽鳥安蔵、嘉永二年二十三夜塔に羽鳥治郎兵衛・羽鳥小左衛門あり。十三戸現存す。

一三　同郡小松村（羽生市）　承応年間検地帳（小松神社所蔵）に「社傍に羽鳥道英表屋敷五畝六歩」と見ゆ。小松神社文政五年碑に羽鳥善右門（名主）、嘉永七年本多宮碑に羽鳥善右衛門あり。二戸現存す。

一四　同郡三田ヶ谷村（羽生市）　蓮台寺文化九年地蔵尊に三田ヶ谷村羽鳥惣十郎。八幡社安政六年御嶽碑に羽鳥安右衛門あり。二戸現存す。

一五　同郡荒木村（行田市）　小名羽鳥は屋敷名なり。天満宮元治元年御神燈に羽鳥幸三郎あり。十戸現存す。

一六　同郡須加村（行田市）　熊野社嘉永五年御神燈に羽鳥荘治郎、文久三年御神燈に羽鳥十八、横塚羽鳥半次郎。明治九年副戸長羽鳥孫市・文化十二年生。須加村会議員に羽鳥留五郎・慶応二年生、羽鳥春雄・明治四十年生あり。十三戸現存す。

一七　足立郡吉笹原村（草加市）　長福寺安政五年供養塔に羽鳥市五郎あり。一戸現存す。

一八　同郡鳩ヶ谷町　明治三十五年青物商羽鳥長吉。県会議員農業南町羽鳥健次郎・明治三十四年生あり。

一九　同郡里村（鳩ケ谷市）　法福寺明治三十一年碑に羽鳥喜三郎あり。一戸現存す。

二〇　同郡小淵村（鳩ケ谷市）　元禄八年検地草分け十姓の内に羽鳥氏あり。氷川社明治二十七年御嶽碑に当所羽鳥徳次郎・羽鳥桂次郎あり。一戸現存す。

二一　同郡上青木村（川口市）　氷川社嘉永八年御神燈に当所羽鳥清次郎、明治二十八年碑に羽鳥米蔵。安楽寺明治三十三年大日堂碑に羽鳥岩蔵あり。六戸現存す。

二二　同郡下青木村（川口市）　当村に此氏多く存す。西方寺寛保二年筆子碑に羽鳥三郎兵衛・羽鳥徳左衛門。氷川社万延元年寄進帳に羽鳥徳右衛門・羽鳥富蔵・羽鳥きく・羽鳥安兵衛・羽鳥四郎兵衛・羽鳥権次郎・羽鳥次郎右衛門・羽鳥太郎左衛門、明治四年碑に当村羽鳥安兵衛、明治三十九年碑に羽鳥卯之吉・羽鳥弥一郎・羽鳥権四郎・羽鳥六右衛門・羽鳥宇太郎あり。

二三　同郡十二月田村（川口市）　樋爪村氷川社明治三十六年絵馬に十二月田村羽鳥喜三郎あり。一戸現存す。

二四　同郡弥兵衛新田村（川口市）　無量寺文化元年馬頭尊に羽鳥宅吉、文政二年碑に羽鳥理右衛門。川口宿善光寺文政十三年祠堂講世話人に弥兵衛新田村羽鳥加藤次。明治三十年貴族院多額納税者議員互選人名簿に農業羽鳥石雄・天保四年生・国税七百十三円（県会議員）あり。三戸現存す。

二五　同郡鴻巣町　明治三十五年桶職羽鳥好三あり。

二六　同郡寺谷村（鴻巣市）　明治九年文書に羽鳥幸次郎・羽鳥吉之介あり。現存無し。

二七　同郡前砂村（吹上町）　氷川社慶応二年幟碑に羽鳥本治郎あり。三戸現存す。

二八　比企郡和泉村（滑川町）　当村文政五年馬頭尊に泉邨羽鳥嘉吉、弘化四年馬頭尊に和泉村羽鳥喜十郎。明治十一年校費割合帳に羽鳥国蔵・羽鳥妻吉。明治十年代地租表に羽鳥綱吉・羽鳥嘉吉あり。六戸現存す。

二九　幡羅郡上奈良村（熊谷市）　石橋安永七年庚申塔に羽鳥久右衛門。妙音寺寛政二年庚申塔に羽鳥元治郎・羽鳥半蔵、明治九年副戸長羽鳥安次郎・安政六年生。明治二十一年皇国武術英名録に念流上奈良村羽鳥東作あり。十三戸現存す。

三〇　同郡新堀新田村（熊谷市）　地蔵堂天明五年庚申塔に羽鳥友吉・羽鳥源蔵。八幡社文政六年碑に羽鳥儀左衛門、文政十年大六天碑に羽鳥吉五郎。大麻生村大栄神社明治十五年筆子碑に新堀新田村羽鳥保次郎あり。二戸現存す。

三一　同郡葛和田村（妻沼町）　神明宮明治十一年御嶽碑に羽鳥源太郎あり。現存無し。

三二　同郡善ヶ島村（妻沼町）　天正十八年忍落城後、羽鳥監物は手作地のある当所へ帰農すと云う。一項参照。多摩郡高尾山薬王院文政元年文書に幡羅郡善ヶ島村羽鳥政三郎。名主羽鳥又左衛門・俳号可良久・弘化四年没、其の養子文次郎・号広芳あり。子孫羽鳥六郎は八王寺市居住す。明治九年戸長羽鳥又市・天保二年生。明治十八年最上農名簿に羽鳥丈太郎・耕宅地六町一反歩・山林八反歩所有。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に善ヶ島村羽鳥与惣平・羽鳥平太郎・羽鳥源吉郎・羽鳥恭一郎あり。十六戸現存す。

三三　児玉郡本庄町　明治三十五年菓子商羽鳥幸助あり。

三四　賀美郡金久保村（上里町）　陽雲寺武田家遺臣碑（明治三十年）に「羽鳥左衛門尉幸久の後裔、金久保・羽鳥多蔵」あり。二戸現存す。

三五　同郡堤村（上里町）　明治初年堤村議定書に羽鳥源吉あり。現存無し。

三六　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「高柳村（騎西町）・羽鳥勇太郎・九円、須賀村（行田市）・羽鳥留五郎・十一円、屈巣村（川里町）・羽鳥宇一郎・八十八円、熊谷町・羽鳥宗一・五十八円・八十四円、奈良村（熊谷市）・羽鳥安雄・十四円、長井村（妻沼町）・羽鳥角助・百九十五円、羽鳥平太郎・十七円」あり。

羽取　ハトリ　葛飾郡上宇和田村（幸手市）金剛寺宝暦二年庚申塔に羽鳥五兵衛、天明七年庚申塔に上宇和田村羽鳥新兵衛、文政三年庚申塔に羽鳥勝右衛門・羽鳥夘之助。明治九年副戸長羽取栄左衛門・文政十年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に上宇和田村羽鳥栄左衛門。明治三十年人名録に羽取近蔵・慶応元年生・地租七十円、羽取忠蔵・天保十一年生・地租四十円あり。三戸現存す。

馬鳥　バトリ　神奈川県平塚市五十七戸あり。

花　ハナ　行田に存す。

一　花一揆　正平七年に足利尊氏と新田義宗・義興等が武蔵野の小手差原（所沢市北野、三ヶ島附近）に戦う。足利方の饗庭命鶴丸は兜に梅の花を挿して戦い、花一揆と称し、三ヶ島下田川の沿岸に「箙の梅」が残されている。太平記巻三十一に「武蔵野合戦の事。観応三年閏二月二十日（正平七年）、さる程に新田・足利両家の軍勢二十万騎、小手差原にうちのぞむ。饗庭の命鶴生年十八歳、容貌当代無双の児なるが、今日花一揆の大将なれば、ことさら花を折って出で立ち、花一揆六千余騎が真先に懸け出でたり。新田武蔵守これを見て、『花一揆を散らさんために児玉党を向はせ、打輪の旗は風を含める物なり』とて、児玉党七千余騎を差し向けらる。花一揆皆若武者なれば、思慮も無く敵に懸かりて、一戦ひ戦ふとぞ見えし。児玉党七千余騎にも揉み立てられ、一返しも返さずはつと引く（一度も、とって返して応戦せず引き上げる）」と見ゆ。

鼻　ハナ　忍藩松平下総守（奥平）家臣にて、秩父郡三沢村太幡文書に「明治二年、秩父代官所鼻太左衛門」と。

羽名　ハナ　上尾、鴻巣等に存す。

端名　ハナ　桶川に存す。

花井　ハナイ　福島県相馬郡飯舘村十戸、島根県松江市十三戸あり。花野井条参照。

一　埼玉郡閏戸村（蓮田市）　明治九年副戸長花井清次郎・弘化三年生。明治三十年人名録に花井清次郎・地租三十一円あり。三戸現存す。

二　同郡江ヶ崎村（蓮田市）　明治十三年埼玉県老農名簿に花井良輔。笹山村稲荷社明治十三年浅間碑に江ヶ崎村花井本二郎。明治三十年人名録に花井本次郎・天保十三年生・地租三十九円。久伊豆社明治三十九年碑に花井清次郎・花井万吉・花井申あり。三戸現存す。

三　足立郡草加町　明治三十五年鍛冶職花井万次郎あり。

四　同郡槐戸村（草加市）　観音寺跡享保十三年供養塔に槐戸村花井八三郎、年不詳に花井弥助・花井大次郎あり。二戸現存す。

五　高麗郡脚折村（鶴ヶ島市）　当村元禄六年庚申塔に臑折村花井多左門あり。一戸現存す。

六　児玉郡蛭川村（児玉町）　児玉記考に「旧家花井孝太郎、地頭駒井家と共に武田晴信に仕へ同僚たり。武田家滅亡の後、駒井氏徳川に従ひ旗下に列し此土に封を受くるに及び、旧時の好意を以て用人格となり維新に至る迄勤続せし名門なり」。明治九年戸長花井孝太郎・安政五年生あり。五戸現存す。

端井　ハナイ　所沢に存す。

花家　ハナイエ　浦和、日高等に存す。神奈川県厚木市十六戸あり。

花石　ハナイシ　川口、越谷等に存す。

花泉　ハナイヅミ　志木、鶴ヶ島、越谷、行田等に存す。福島県河沼郡河東町十六戸あり。

花上　ハナウエ　浦和、川口、入間等に存す。厚木市九十五戸あり。

花植　ハナウエ　川口宿善光寺天保五年弘法大師碑に花植源右衛門あり。現存無し。

花海　ハナウミ　岩槻に存す。

花浦　ハナウラ　大宮に存す。

花江　ハナエ　川越に存す。

花尾　ハナオ　上尾、坂戸等に存す。

花生　ハナオイ　川口、新座、児玉等に存す。青森県八戸市二十四戸あり。

花岡　ハナオカ　各市町村に存す。○長野県小県郡真田町十八戸、東部町百二十戸、諏訪郡下諏訪町四十二戸、東筑摩郡本城村十五戸、北安曇郡小谷村二十戸、上田市五十七戸、小諸市五十戸、岡谷市三百戸、松本市八十六戸。○青森県南津軽郡碇ヶ関村二十戸あり。

一　鉢形城士の花岡氏　関東古戦録に「鉢形には花園修理亮（一本に花岡）以下籠城す」と見ゆ。

二　葛飾郡樋ノ口村（三郷市）　明治六年旅籠屋総代花岡八五郎あり。現存無し。

三　草加町　明治二年頃に三丁目（吉笹原村）越後屋花岡留吉。市神祠官筆学入門控に明治十六年・三丁目越後屋花岡松之助。明治三十五年料理店花岡いく・料理店越後屋花岡松之助あり。一戸現存す。

四　秩父郡大滝村　昭和三年興信録に「花岡秀夫・所得税十三円」あり。現存無し。

華岡　ハナオカ　鴻巣、杉戸等に存す。

花香　ハナカ　大宮、桶川、騎西、入間、狭山、所沢等に存す。千葉県香取郡東庄町十七戸、干潟町二十戸あり。

馬中　バナカ　埼玉郡小林村（菖蒲町）に三戸現存す。

花垣　ハナガキ　浦和、大宮、日高、小川、熊谷、児玉、寄居、秩父、皆野等に存す。高崎市四十戸あり。

花影　ハナカゲ　入間郡南浅羽村字花影（坂戸市花影町）あり。

花篭　ハナカゴ　川越、熊谷等に存す。岩手県紫波郡紫波町十四戸あり。

花籠　ハナカゴ　大宮、与野等に存す。

花ヶ崎　ハナガサキ　茨城県鹿島郡神栖町二十七戸あり。

一　忍城士の花賀崎氏　成田分限帳に「七十石・花賀崎宮内」あり。

花方　ハナガタ　小川に存す。

花形　ハナガタ　山梨県中巨摩郡敷島町二十一戸、昭和町十六戸、竜王町三十四戸あり。

一　葛飾郡赤崎村（庄和町）　日枝社天保五年普門品に花形助右衛門あり。二戸現存す。

二　足立郡鴻巣町　明治三十五年小間物商花形伊之助あり。一戸現存す。

三　入間郡川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に花形清作（鉄物商）あり。一戸現存す。

四　榛沢郡上野台村（深谷市）　八幡社明治四十四年碑に花形弥太郎あり。現存無し。

五　賀美郡金久保村（上里町）　甲陽軍鑑に「西上野衆・花形民部左衛門」。陽雲寺武田家遺臣碑（明治三十年）に「花形民部大夫永次の後裔、金久保・花形利三郎・花形弥十郎・花形茂八」。当村寛文九年下薬師に花形右兵衛あり。四戸現存す。

六　同郡元阿保村（神川町）　大御堂村吉祥院天保五年供養塔にアホ・花形滝五郎。当村明治三十年碑に当所花形浅五郎あり。現存無し。

花神　ハナガミ　入間に存す。

花川　ハナカワ　各市町村に存す。

花木　ハナキ　各市町村に存す。青森県三戸郡田子町八戸、鳥取県八頭郡八東町十戸あり。

一　浦和町　昭和三年興信録に「花木鷹三郎・所得税五十三円」あり。

二　秩父町　宝暦三年秩父御用日記に大宮郷医師花木道格。享和二年秩父神社日鑑に花木道格あり。現存無し。

花城　ハナキ　越谷、川越等に存す。

花北　ハナキタ　鳩ケ谷に存す。

花桐　ハナキリ　川口、三郷等に存す。

端口　ハナクチ　蓮田に存す。

花熊　ハナクマ　入間に存す。

花倉　ハナクラ　浦和、与野、草加、庄和、坂戸、狭山、深谷、小川等に存す。鳥取県日野郡日南町七戸あり。

花栗　ハナグリ　足立郡花栗村（草加市）あり。

花西　ハナサイ　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「道西・花サイノ父。妙正・宮下ノ花サイ仏」。宮下町に現存無し。正訓はカサイか。

花坂　ハナサカ　各市町村に存す。岩手県下閉伊郡山田町十六戸、岩手郡玉山村二十三戸、宮古市二十戸あり。

花崎　ハナサキ　埼玉郡花崎村（加須市）あり、北条氏繁書状に「天正二年五月四日、近年向岩付取立候号花崎地」と見ゆ。花崎城主は茂野条参照。各市町村に存す。千葉県夷隅郡夷隅町十六戸あり。

花咲　ハナサキ　浦和、川口、鳩ケ谷、所沢等に存す。

鼻崎　ハナサキ　春日部に存す。

花里　ハナザト　各市町村に存す。長野県佐久市百五十七戸あり。

一　岩附城士の花里氏　東洋文庫に「永禄七年八月六日、太田氏資は、花里与四郎に埼玉郡梅田村（春日部市）を宛行う」と見ゆ。

花沢　ハナサワ　各市町村に存す。○千葉県山武郡松尾町五十六戸、大網白里町三十五戸、九十九里町二十戸、市原市七十戸、袖ヶ浦市六十戸あり。

一　埼玉郡長宮村（岩槻市）　大光寺天保九年筆子碑に長宮村花沢紋蔵あり。現存無し。

花澤　ハナサワ　各市町村に存す。

華澤　ハナサワ　浦和に存す。

葉梨　ハナシ　浦和、所沢、日高、大里等に存す。茨城県稲敷郡美浦村三十四戸あり。

花下　ハナシタ　三郷に存す。

花島　ハナシマ　葛飾郡花島村（幸手市）あり。各市町村に存す。茨城県岩井市十一戸あり。

花嶋　ハナシマ　朝霞、越谷、八潮、上里等に存す。

花尻　ハナジリ　北本、越生等に存す。

花城　ハナシロ　浦和、蕨、川口、与野、志木、所沢、岩槻、宮代等に存す。

玻名城　ハナシロ　和光、春日部に存す。

花外　ハナソト　幸手に存す。

花園　ハナゾノ　榛沢郡末野村字花園（寄居町）あり、天正十七年武州文書に「北条氏邦は、末野之かね打に、屋敷と花園山を安堵す」と。花園山に花園城あり。浦和、志木、新座、所沢、鶴ヶ島、熊谷等に存す。

一　鉢形城士の花園氏　関東古戦録に「鉢形には花園修理亮以下籠城す」と見ゆ。一本に花岡とあり。

二　本庄町　明治三十五年飲食店花園修三あり。現存無し。

花薗　ハナゾノ　上尾に存す。

花田　ハナダ　埼玉郡花田村（越谷市）あり。各市町村に存す。○秋田県北秋田郡鷹巣町五十戸、田代町六十四戸、比内町三十五戸、大館市六十六戸。○青森県北津軽郡鶴田町六十戸、中津軽郡岩木町七十戸、西津軽郡鯵ヶ沢町二十四戸、木造町三十戸、南津軽郡浪岡町十九戸、平賀町三十五戸、田舎館村二十七戸、弘前市二百三十戸、青森市百六十戸。○島根県邇摩郡温泉津町十九戸、江津市五十七戸、出雲市五十二戸あり。

一　足立郡大門宿（浦和市）　此氏の旧家あり。三戸現存す。

二　越ヶ谷町　昭和三年興信録に「花田久太郎・所得税十一円」あり。

椛田　ハナダ　川口に存す。カバタ参照。

鼻田　ハナダ　坂戸に存す。

花立　ハナダテ　大宮、加須、坂戸、所沢等に存す。岩手県紫波郡矢巾町十五戸あり。

花舘　ハナダテ　川口に存す。岩手県宮古市七戸あり。

花谷　ハナタニ　浦和、朝霞、富士見、東松山、庄和等に存す。

花塚　ハナヅカ　埼玉郡国納村字花塚、高岩村字花塚あり。各市町村に存す。○栃木県那須郡湯津上村二十五戸、河内郡上河内町十五戸。○茨城県鹿島郡鉾田町十四戸、波崎町二十四戸あり。

一　忍城士の花塚氏　成田分限帳に「十八貫文・花塚右衛門」あり。

花積　ハナヅミ　埼玉郡花積村（春日部市）あり、相州文書に「永徳三年、慈恩寺領武蔵国太田庄花積郷内御厩瀬渡並びに船の事」。ミマヤ条参照。与野、戸田、春日部、越谷等に存す。福島県喜多方市二十戸あり。

花戸　ハナト　浦和、三郷等に存す。

鼻戸　ハナト　浦和に存す。

花堂　ハナドウ　越谷に存す。

花貫　ハナヌキ　足立郡上下内野村字花貫村、埼玉郡久下村字花貫あり。

花野　ハナノ　各市町村に存す。新潟県北蒲原郡紫雲寺町十三戸、中条町八十六戸あり。

一　新座郡北野村（新座市）　志木宿氷川社嘉永六年碑に北野・花の喜太郎あり。二戸現存す。

二　賀美郡小浜村（神川町）　小松神社明治二十九年碑に花野鍋八、明治四十年碑に花野吉蔵あり。三戸現存す。

花ノ井　ハナノイ　足立郡平柳領領家村字花ノ井（川口市）あり。

一　足立郡篠場村（草加市）　観正院文政六年庚申塔に花野井勘蔵あり。花ノ井氏一戸現存す。

花野井　ハナノイ　足立郡元郷村（川口市）氷川社文化十二年富士碑に花井徳兵衛・花井権右衛門。随泉寺天保二年常夜燈に花ノ井徳兵衛・花ノ井長左衛門、安政五年普門品に花ノ井清蔵。明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流足立郡元郷村花枝末五郎あり。花野井氏四戸現存す。

花之枝　ハナノエ　足立郡平柳領領家村（川口市）実相寺明治十四年碑に花枝文次郎あり。花之枝氏五戸現存す。前二条参照。

花ノ木　ハナノギ　足立郡花ノ木村（北本市）、入間郡花ノ木村（入間市）あり。秋田県鹿角市十一戸あり。

花之木　ハナノギ　相模国西郡花之木村（小田原市駅新玉町）より起る。小田原所領役帳に「花之木氏。百貫文・中郡小磯（大磯町）、百十貫文・同恩名及川（厚木市）、百五十貫文・東郡一宮之内（寒川町）、四十六貫文・西郡下中村惣領分（小田原市）、以上四百六貫文、此外三百八十一貫六百文金子郷寄子給」と見ゆ。西郡金子郷（大井町）の地にて、花之木氏は武蔵国入間郡金子郷花ノ木村は無関係なり。

花ノ本　ハナノモト　蕨、上尾等に存す。

花畑　ハナハタ　浦和、川越、所沢等に存す。

花畠　ハナハタ　埼玉郡鷲宮村字金山の辺を古は花畠村と称す。鷲宮神社文書に「陰屋場は針谷高重（文永十一年没）書記に云。昔年陰家場と云て金山にあり、後人是を花畠村と号す。此所は近代の金山橋の少し南なるべし」と見ゆ。

花原　ハナハラ　川口、上福岡等に存す。鳥取市二十戸あり。

花久　ハナヒサ　鷲宮に存す。

英　ハナブサ　各市町村に存す。岩手県胆沢郡金ヶ崎町二十戸あり。

栄　ハナブサ　鴻巣に存す。

花房　ハナブサ　各市町村に存す。○福島県相馬郡小高町十戸。○鳥取市二十五戸あり。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊目付・七石二人扶持・亡父勘六・花房勘左衛門・五十六歳」あり。

二　岩槻町　明治三十五年縫箱染物業花房喜一郎あり。

纐纈　ハナブサ　越谷、草加、秩父等に存す。コウケツ参照。

花藤　ハナフヂ　狭山に存す。

花渕　ハナブチ　浦和、川口等に存す。

花淵　ハナブチ　春日部、入間、所沢等に存す。

花部　ハナベ　朝霞、川越等に存す。青森県下北郡東通村二十三戸あり。

花前　ハナマエ　浦和、新座等に存す。

花巻　ハナマキ　浦和、大宮等に存す。

花又　ハナマタ　草加、上福岡等に存す。

花俣　ハナマタ　

一　足立郡大宮宿　志木町敷島社明治九年住吉碑に大宮花又富五郎。明治三十五年綾取製造花俣藤右衛門・荒物商花俣常七・材木商花俣常吉。昭和三年興信録・所得税に「大宮町・花俣喜一・四十一円、花俣恒七・十八円」あり。吉敷町に九戸現存す。

二　同郡上落合村（与野市）　明治九年副戸長花俣民五郎・天保元年生。明治十二年伍長花俣耕吉。明治二十六年長伝寺文書に上落合花俣幸昌あり。一戸現存す。

花俟　ハナマタ　浦和、与野等に存す。

花町　ハナマチ　川口に存す。

花松　ハナマツ　大宮、戸田、鳩ケ谷、本庄等に存す。青森県上北郡七戸町八戸、天間林村十九戸あり。

花俟　ハナマツ　与野に存す。

花円　ハナマル　川越に存す。

花圓　ハナマル　嵐山に存す。

羽浪　ハナミ　所沢に存す。

波並　ハナミ　所沢に存す。

葉波　ハナミ　浦和、入間等に存す。

花見　ハナミ　各市町村に存す。○長野県小県郡青木村十九戸、○福島県耶麻郡塩川町三十二戸、熱塩加納村十二戸、喜多方市六十八戸あり。

花道　ハナミチ　春日部に存す。

花光　ハナミツ　鴻巣に存す。

花水　ハナミヅ　上福岡、所沢、飯能等に存す。新潟県糸魚川市十四戸あり。

花宮　ハナミヤ　大宮に存す。

花村　ハナムラ　各市町村に存す。長野県南安曇郡豊科町四十三戸、塩尻市三十九戸、松本市百十戸あり。

一　埼玉郡持田村（行田市）　正覚寺棟札に「天正六年三月七日、大檀那成田下総守氏長、建立主証蓮社明誉上人大和尚、棟領花村三左衛門」あり。一戸現存す。

二　足立郡鴻巣宿　紀州高野山清浄心院過去帳に「霊位法誉慶珎禅定門・武州鴻巣花村惣九郎為父立之・元和八年六月五日」あり。現存無し。

花牟礼　ハナムレ　浦和、蕨、朝霞、狭山、東松山等に存す。

花室　ハナムロ　浦和、熊谷等に存す。

花茂　ハナモ　大宮、日高等に存す。

花元　ハナモト　深谷に存す。

花本　ハナモト　各市町村に存す。島根県美濃郡美都町七戸、八束郡美保関町十二戸あり。

花森　ハナモリ　大宮、与野、入間、所沢等に存す。

花盛　ハナモリ　蕨、春日部等に存す。

花谷　ハナヤ　各市町村に存す。

花屋　ハナヤ　川口、春日部、越谷、草加、児玉等に存す。山形県上山市十五戸あり。

花安　ハナヤス　和光に存す。

花柳　ハナヤナギ　比企郡小川町上小川神社明治五年碑に花柳新次郎あり。現存無し。

花山　ハナヤマ　各市町村に存す。山形県西村山郡朝日町八戸あり。

一　高麗郡犬武郷鯨井村（川越市）　多摩郡青梅安楽寺大般若経に「永和五年三月十八日、真読一部・花山春公書記、当国河越荘犬武郷蘇生也」。「年欠、河越犬武産也、花山永春書記」と見ゆ。現存無し。住僧か。

華山　ハナヤマ　岩槻に存す。

花吉　ハナヨシ　浦和に存す。

羽成　ハナリ　各市町村に存す。茨城県新治郡霞ヶ浦町二十四戸、稲敷郡阿見町十一戸、美浦村十二戸、石岡市二十戸、土浦市八十戸あり。

塙　ハナワ　各市町村に存す。○栃木県那須郡馬頭町十七戸。○茨城県久慈郡金砂郷町三十三戸、那珂郡東海村八十戸、東茨城郡茨城町十六戸、常北町十七戸、西茨城郡岩間町二十戸、友部町八十七戸、鹿島郡鉾田町百五十八戸、神栖町二十三戸、行方郡潮来町十八戸、北浦町八十六戸、玉造町四十六戸、新治郡新治村二十戸、笠間市八十六戸、ひたちなか市百四十戸、水戸市二百二十戸。○千葉県海上郡海上町三十二戸、銚子市六十七戸。○福島県東白川郡矢祭町二十三戸あり。

一　国学者塙保己一　児玉郡保木野村（児玉町）荻野卯兵衛の子辰之助にて、師の須賀一の本姓塙を冒して塙保己一を称す。文政四年没七十六歳。其子次郎忠瑤はその業を継ぎ、文久三年に勤王志士に襲われて殺される。児玉記考に「偉人塙保己一、姓は荻野、幼名寅之助、後又辰之助と云ふ。当主茂十郎の先代なり、延享二年保木野に生る、七歳にして明を失ふ、学を好み東都検校雨宮氏の門に遊び、師其思想を察し京坂地方に遊学せしむ、爾後加茂真淵の門に入る。検校の官に昇り温古堂と云ふ、群書類集等を始め三千余部を校正す」と見ゆ。

二　本庄町　明治三十五年人力車業塙喜十郎あり。一戸現存す。

墫　ハナワ　本庄に存す。

花和　ハナワ　八潮に存す。

花輪　ハナワ　葛飾郡金崎村字花輪あり。○山梨県中巨摩郡櫛引町七十戸、竜王町六十三戸、甲府市四十七戸。○山形県天童市百八十戸あり。

一　埼玉郡下谷村（加須市）　八幡社慶応三年幟碑に花輪久次郎あり。一戸現存す。

二　榛沢郡末野村（寄居町）　元治二年末野村諸事恵に花輪清五郎・花輪仙三郎・花輪栄七あり。二戸現存す。

三　秩父郡金尾村（寄居町）　字土鍋弘化四年馬頭尊に小林講中花輪庄蔵。明治九年新井文書に花輪友右衛門・花輪和十郎・花輪弥右衛門・花輪金十郎・花輪重右衛門・花輪辰五郎・花輪喜平・花輪治左衛門・花輪信太郎・花輪仙三郎。用土村明治十三年仙元碑に金尾村花輪明行喜山・花輪辰五郎・花輪仙三郎・花輪金十郎。国神神社明治三十四年碑に金尾村花輪慶次郎あり。十戸現存す。

華輪　ハナワ　川越に存す。

鼻和　ハナワ　富士見に存す。青森県中津軽郡岩木町九戸、弘前市十戸あり。

塙下　ハナワシタ　浦和に存す。

塙田　ハナワダ　大宮、上尾、北川辺、川越等に存す。

花和田　ハナワダ　葛飾郡花和田村（三郷市）あり、延文六年市場祭文写に下総国下河辺庄花和田市祭と見ゆ。

埴　ハニ　所沢に存す。

羽仁　ハニ　蕨、所沢等に存す。

羽生　ハニ　宮城県登米郡中田町三十二戸あり。ハニュウ参照。

羽二生　ハニウ　川口、春日部、富士見等に存す。ハニュウ参照。

羽生田　ハニウダ　浦和に存す。ハニュウダ参照。

羽入田　ハニウダ　大宮に存す。

埴岡　ハニオカ　蓮田、川越、熊谷、本庄、上里等に存す。

埴崎　ハニザキ　川越、所沢等に存す。

土師　ハニシ　詳細はハジ条参照。浦和、吹上、川越、坂戸、神川に存す。

一　賀美郡肥土村（神川町）　元禄十四年水帳に上野国緑野郡肥土村と見え、是以後に武蔵国へ編入す。和名抄に上野国緑野郡土師郷を波爾之（はにし）と訓ず。上野国神名帳に土師明神（藤岡市本郷）見ゆ。肥土村は本郷村の内なり。旧家土師氏は文政五年肥土村地誌を所蔵す。一戸現存す。

埴田　ハニタ　川口、上尾、鳩ケ谷、草加等に存す。群馬県北群馬郡子持村十六戸、新潟県新発田市十六戸あり。

半仁田　ハニタ　草加に存す。

羽二塚　ハニヅカ　三郷に存す。

埴原　ハニハラ　川口、上尾、白岡、三郷、春日部、川越、狭山、所沢等に存す。山梨県中巨摩郡白根町六戸あり。ハイバラ参照。

埴淵　ハニブチ　浦和、戸田等に存す。

埴谷　ハニヤ　川越に存す。ハンヤ参照。

羽入　ハニュウ　浦和、大宮、川口、朝霞、新座、狭山、三郷、大利根、熊谷等に存す。新潟県白根市十四戸、福島県喜多方市二十戸あり。

波入　ハニュウ　鶴ヶ島に存す。福島県郡山市十七戸あり。

針生　ハニュウ　大宮に存す。

埴生　ハニュウ　三郷、入間、狭山等に存す。

羽生　ハニュウ　埼玉郡羽生は江戸時代に上羽生村・下羽生村・羽生町場村に分村す。文明十年太田道灌状に羽生陣と見ゆ。如意経奥書（名古屋市真福寺文庫）に「享禄四年二月十三日、武州太田之庄埴生之郷僧人」とあり。各市町村に存す。○茨城県行方郡麻生町百十六戸、牛堀町二十一戸、北浦町十二戸、玉造町二十四戸、新治郡八郷町十七戸、筑波郡谷和原村十一戸。○長野県上伊那郡飯島町二十一戸、下伊那郡喬木村十八戸、飯田市三十七戸。○新潟県佐渡郡羽茂町十三戸、真野町十戸あり。

一　藤原秀郷流羽生氏　田原族譜に「足利下野権守家綱―西場太郎成実（下野足利郡西場城主）―成行―成光―成房―成次―政成―光成―行成―西岡四郎成吉（下野安蘇郡西岡住）―盛房―盛光―盛国―盛行―羽生四郎盛忠（羽生に住し、成田氏に仕ふ）と見ゆ。盛忠は文明頃の人なり。羽生は下野国下都賀郡羽生田村（壬生町）のことか。

二　忍城士の羽生氏　埼玉郡羽生村より起る。羽生町場村条に「古城蹟あり。此城、元は忍の砦にして、成田下総守長泰の指揮に従ひ羽生豊前守・守れりと云ふ」。成田分限帳に「百五十貫文・埴生大膳亮長員、六十貫文・埴生出雲守、三十貫文・埴生助六郎」あり。垣生とも見ゆ。

三　多賀谷氏族羽生氏　多賀谷系図に「多賀谷重政（永禄九年卒）―経長（羽生式部大輔之嗣）」と見ゆ。羽生城主広田式部大輔の養子か。

四　松山城士の羽生氏　天正庚寅松山合戦図に「黒岩・長谷・田甲方面城方・羽生平四郎」あり。

五　岩附城士の羽生氏　高麗文書（家伝史料）に「永禄中、常陸国柿岡城主梶原政景家臣着座次第、羽生右馬允殿、同内匠助殿、同新三郎殿」と見ゆ。新治郡柿岡城（八郷町）は岩附城主太田三楽斎資正の子梶原政景が入城す。常陸国河内郡羽生村（桜川村）、行方郡羽生村（玉造町）、下総国岡田郡羽生村（水海道市）あり。是等の出身か。

六　本庄宿　文政二年上信日記に「本庄宿歌人羽生文皎」あり。一戸現存す。

羽二生　ハニュウ　川口、上尾、毛呂山等に存す。新潟県佐渡郡畑野町二十五戸あり。

羽入田　ハニュウダ　各市町村に存す。長野県上水内郡信濃町十四戸、三水村三十五戸あり。

羽生田　ハニュウダ　各市町村に存す。群馬県吾妻郡嬬恋村八戸、長野県須坂市百戸あり。

羽貫　ハヌキ　足立郡羽貫村（伊奈町）あり。

羽沼　ハヌマ　足立郡蓮沼村（川口市）普門寺延宝三年観音堂墨書銘に蓮沼村羽沼太郎兵衛、明治十五年普門品に羽沼徳太郎・羽沼平十郎、明治三十八年碑に羽沼作右衛門あり。一戸現存す。

羽根　ハネ　各市町村に存す。

羽根井　ハネイ　川口、行田等に存す。

羽石　ハネイシ　各市町村に存す。○栃木県那須郡烏山町四十六戸、芳賀郡市貝町十三戸、茂木町百三戸、真岡市三十五戸。○茨城県那珂郡大宮町十二戸あり。

拮石　ハネイシ　川口、川越等に存す。

羽江　ハネエ　入間に存す。

羽尾　ハネオ　比企郡羽尾村（滑川町）あり。内閣文庫に「大永四年、上杉朝興と憲房は和し、羽尾峯に於て対面す」と見ゆ。与野、上尾、本庄等に存す。ハオ参照。

羽根尾　ハネオ　東松山に存す。

羽折　ハネオリ　高麗郡脚折村字羽折・下新田村字羽折（鶴ヶ島市）は古の村名なり。針売条参照。

羽根川　ハネガワ　大宮、吉川、坂戸に存す。茨城県鹿島郡波崎町六戸、秋田県仙北郡田沢湖町二十七戸あり。

羽根倉　ハネクラ　足立郡下大久保村字羽根倉（浦和市）の荒川に羽根倉河岸あり、正平七年高麗経澄軍忠状に羽禰蔵合戦と見ゆ。また児玉郡新里村に羽根倉古墳あり。

一　入間郡水子郷（富士見市）　近村の下大久保村羽根倉より起る。延文六年市場祭文写に「入間郡水子郷市立時、羽倉彦次郎市祭成之」と見ゆ。

羽崎　ハネザキ　入間に存す。

羽沢　ハネサワ　入間郡鶴馬村字羽沢。

羽田　ハネダ　各市町村に存す。茨城県北相馬郡藤代町三十六戸、下館市五十五戸。福島県伊達郡伊達町十五戸、福島市二百十戸あり。ハタ参照。

一　上杉氏家臣の羽田氏　荏原郡羽田村より起るか。准后日記に「永享四年二月二十四日、山内上杉憲実の被官羽田壱岐入道・使者となり上洛す。武蔵の国人なり」と見ゆ。

羽子田　ハネダ　浦和、三郷等に存す。茨城県結城郡千代川村二十戸あり。

羽根田　ハネダ　各市町村に存す。福島県伊達郡桑折町十七戸、原町市十八戸、相馬市十六戸あり。

羽地　ハネチ　与野、三郷等に存す。

羽妻　ハネツマ　葛飾郡小淵村（春日部市）大杉神社元治元年敷石碑に当所新町組羽妻千次郎あり。現存無し。

羽山　ハネノヤマ　所沢に存す。

羽場　ハネバ　各市町村に存す。

羽林　ハネバヤシ　堂上家々格の一にて、大臣家に次ぐ家格なり。所沢町自性院薬王寺は新田武蔵守左近少将義宗の開基と伝へ、義宗は羽林（殿上人）に登った。同寺宝篋印塔に「自性院殿義行啓明大居士・正五位下相州刺史・応永十年□月□五日。自性院殿義覚□□大居士・従四位下羽林次将□□刺史・応永十七年七月二十二日。自性院殿義慧源宗大居士・正四位下羽林次将武州刺史源□・応永二十年三月一日逝卒。自性院殿義諦観□大禅定門・慶長十三年十一月二十三日」あり。義宗の子新田相模守義則入道行啓・応永十年四月二十五日討死、新田相模守貞方入道覚慶・応永十七年七月討死す。此の子孫である由良氏、或は大館氏が慶長頃に造立したか。両条参照。

羽原　ハネハラ　日高に存す。

羽深　ハネフカ　川口に存す。

羽根吉　ハネヨシ　鳩山に存す。

羽野　ハノ　浦和、上尾、与野、朝霞、狭山、所沢、三郷、岩槻に存す。

杷野　ハノ　大宮に存す。

波能　ハノ　大宮、所沢等に存す。

柧木澤　ハノキザワ　新座、久喜に存す。

羽野島　ハノシマ　蓮田、春日部等に存す。茨城県真壁郡真壁町七戸、大和町六戸あり。

巾　ハバ　八潮、所沢等に存す。長野県木曽郡日義村十七戸あり。

幅　ハバ　各市町村に存す。長野県筑摩郡明科町二十三戸、岩手県岩手郡岩手町十五戸あり。

羽場　ハバ　榛沢郡末野村字羽場あり。各市町村に存す。○長野県北佐久郡立科町十戸、上伊那郡長谷村十一戸、伊那市二十戸、飯田市三十四戸。○青森県西津軽郡車力村二十四戸、弘前市三十四戸あり。

羽馬　ハバ　所沢に存す。

波場　ハバ　坂戸に存す。長野県東筑摩郡明科町二十戸あり。

場々　ババ　長野県南安曇郡穂高町十戸あり。

馬場　ババ　番場、蕃場の佳字に馬場（ばんば）を用いる。蕃（ばん）は渡来人の総称にて蕃（えびす）と称す。姓氏録には渡来人を諸蕃と記す。バン条参照。場は場所・集落の意味で、村人から渡来人集落を馬場（ばんば）と呼ばれ、苗字は馬場氏以外を名乗っている者が多い。○埼玉郡馬場村（八潮市）は現在もバンバと称す。比企郡馬場村（都幾川村）も現在バンバと称す。入間郡馬場村は毛呂山町大字岩井字馬場となりバンバと称す。○葛飾郡築比地村字馬場、西金野井村字馬場はバンバと称す。○埼玉郡黒浜村字馬場は宝暦四年庚申塔に番馬講中とあり。大越村字馬場は番場とも書く。広田村字番場に馬場氏（ばば）存す。笹久保村字馬場、菖蒲町字馬場、小久喜村字馬場、久喜町字馬場、忍町字馬場、長野村字馬場、平戸村字馬場はバンバと称す。○足立郡新曽村字馬場（ばんば）は常楽院正徳二年庚申塔に馬場村とあり。三室村字馬場（ばんば）は武蔵志に馬場村東漸寺とあり。白幡村字向馬場、荒井村字馬場、大成村字西馬場、浦和領別所村字向馬場、針ヶ谷村字馬場先、辻村字馬場田、本郷村字馬場、甚之丞新田字馬場はバンバと称す。○新座郡上片山村字馬場、辻村字馬場はバンバと称し、現在はババと云う。○入間郡上南畑村字バンバ、下南畑村字馬場、宗岡村字馬場、勝瀬村字馬場、久下戸村字西馬場、古谷上村字馬場、勝楽寺村字馬場、糀谷村字馬場、三ヶ島村字馬場、塚越村字馬場、片柳村字馬場、川角村字馬場、森戸村字馬場原はバンバと称す。○高麗郡野田村字馬場は番場とも書く。青木村字馬場、栗坪村字馬場、平沢村字馬場はバンバと称す。○比企郡出丸中郷字馬場は円福寺宝暦七年碑に馬場新田とあり。福田村字馬場、下八林村字馬場、飯田村字馬場、水房村字馬場、古池村字馬場はバンバと称す。○横見郡前河内村字馬場はバンバと称す。○大里郡箕輪村字馬場は番場とも書く。沼黒村字バンバあり。○男衾郡畠山村字馬場、折原村字馬場はバンバと称す。○幡羅郡三ヶ尻村字馬場、中奈良村字馬場はバンバと称す。○榛沢郡人見村字馬場、東大沼村字中馬場、曲田村字桜馬場、武蔵野村字馬場、用土村字馬場、本郷村字馬場、瀬山村字馬場はバンバと称す。○賀美郡安保村字馬場（ばんば）は天正八年倉林文書に安保馬場内と見ゆ。○秩父郡下名栗村字馬場は洞雲寺天保四年碑に番場とあり。久長村字馬場は番場とも書く。品沢村字馬場、金崎村字馬場、伊豆沢村字馬場はバンバと称す。是等の地は武士が馬を調練したと言う馬場（ばば）とは無関係なり。番場条参照。○群馬県北群馬郡吉岡町二十七戸、高崎市五十戸。○茨城県鹿島郡神栖町二十二戸、結城郡八千代町二十戸。○長野県上伊那郡箕輪町二十戸、中野市五十二戸、上田市八十六戸。○新潟県北蒲原郡中条町二十二戸、中蒲原郡村松町二十四戸、亀田町四十六戸、北魚沼郡守門村三十四戸、広神村三十二戸、三条市九十八戸。○福島県大沼郡会津高田町七十二戸、南会津郡田島町五十七戸、只見町百十戸、伊南村百戸、南郷村百六十戸、会津若松市百五十戸、郡山市百九十戸。○宮城県亘理郡亘理町三十三戸、石巻市五十四戸。○岩手県九戸郡種市町四十八戸。○青森県上北郡下田町八十八戸、三戸郡三戸町二十五戸、南部町七十戸、十和田市六十八戸、三沢市百十戸。八戸市百七十戸あり。

一　河原党馬場氏　武蔵志に「河原氏古文書に云。治承四年三月、惣侍列位馬場門太三郎、是は河原太郎家の武家法令也」と見ゆ。

二　忍城士の馬場氏　成田分限帳に「三十貫文・馬場覚左衛門」あり。

三　深谷城士の馬場氏　深谷記に「上椙御譜代之臣、馬場次郎兵衛」あり。

四　松山城士の馬場氏　上田憲定印判状に「天正十五年丁亥九月十日、於中山之内近年出置候。猶、馬場藤十郎可申候、比企左馬助殿、憲定印」と。比企郡中山村（川島町）の代官なり。天正庚寅松山合戦図に「雷電山・大谷・平・岡郷・冑山方面城方・馬場孫四郎兵衛、古郡・柏崎・今泉方面城方・馬場斎宮行久」あり。

五　岩附城士の馬場氏　高麗文書（家伝史料）に「永禄中、きゃくいの次第、馬場」と。豊島宮城文書に「天正五年七月十三日、岩附の歩走二十人之奉行馬場源十郎」あり。次項参照。

六　幕臣馬場氏　馬場美濃守信房の子民部信春は信州深志城（今の松本城）を守り、天正十年三月、織田の兵に攻められ、甲斐に帰りて死せりと。寛政呈譜に「馬場美濃守信房（武田信玄・勝頼につかへ、天正三年五月二十一日長篠合戦討死）―玄蕃信忠（民部少輔、法名慈源。信濃深師討死）、弟民部信義（家康につかへ、甲斐国教来石を領す）、弟左近源蔵房勝（北条氏直に属し、武蔵国岩槻城に住す。妻は春日下総守景定が女）―彦八郎房家（北条十郎氏房に属し、後に家光に仕ふ）―源右衛門房頼（二百俵）―左次兵房次―六郎左衛門―源五郎（元禄十年死す、嗣なきにより断絶）。家紋、三筋山路、揚羽蝶」あり。二十六、四十五、七十一項参照。

七　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百石・馬場源蔵・是は忍にて罷出・甲州之者」あり。前項の源蔵と同人か。

八　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御広間帳付・五人扶持・馬場久兵衛」あり。

九　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「奥医師・百石・馬場松瑞」あり。

一〇　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「三両余二人扶持・本国相模生国同・馬場庄右衛門・三十四歳」あり。

一一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「二十九俵二人扶持・馬場弥平治」あり。

一二　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御代官・馬場為右衛門」あり。

一三　岡部藩安部氏家臣　矢島村神明社天明八年水鉢に岡部藩士馬場兵右衛門寄附と。慶応四年岡部藩分限帳に「御家老・百八十石・馬場兵右衛門」。明治三年岡部藩分限帳に「隠居・五人扶持・馬場景基」あり。

一四　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「八十石・馬場清兵衛」あり。

一五　葛飾郡花和田村（三郷市）　小金日蓮宗本土寺過去帳（松戸市）に「常清位・花和田・馬場雅楽助・天文癸巳正月十三日。妙縁・ハンハウタノスケウバ。妙心尼・ハンハ。妙心□妙蓮入道・大河辺花和田人ナリ」と。子孫の一族馬場佐兵衛家に天文五年十月十五日銘の板碑あり。今はババを称す。新義真言宗西善院享保十八年宝篋印塔に花和田村番場善兵衛。彦倉村延命院宝暦九年勧進帳に花和田村馬場孫右衛門。明治二十八年重立馬場佐之松・重立馬場彦五郎・重立馬場留吉・重立総代馬場七郎兵衛。明治三十年人名録に荒物商藁屋馬場留吉・嘉永三年生・地租三十円、馬場佐之松・明治二年生・地租二十三円あり。十八戸現存す。

一六　同郡境木村（三郷市）　明治三十年人名録に馬場浅次郎・嘉永三年生・地租二十円あり。三戸現存す。

一七　埼玉郡八条村（八潮市）　大経寺明治二十七年絵馬に馬場浅次郎・馬場吉松あり。現存無し。

一八　同郡越ヶ谷宿　本町浅間社延宝三年水鉢に馬場弥兵衛あり。

一九　同郡慈恩寺村（岩槻市）　月読神社嘉永三年幟碑に馬場市蔵あり。一戸現存す。

二〇　同郡裏慈恩寺村（岩槻市）　当村天保三年庚申塔に馬場初五郎あり。一戸現存す。

二一　同郡中種足村（騎西町）　雷神社寛政七年天満宮碑に中種足村馬場小四郎あり。二戸現存す。

二二　同郡広田村（川里町）　小名番場あり。明治九年副戸長馬場丑松・天保十二年生あり。五戸現存す。

二三　同郡太井村（熊谷市）　棚田村棚田神社江戸末期台石碑に太井村馬場十次郎。門井村鷺栖神社明治八年御神燈に太井村馬場七右衛門。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北埼玉郡太井町馬場久次郎・馬場七右衛門あり。五戸現存す。

二四　足立郡芝村（川口市）　八幡社明治四十年碑に芝村馬場園次郎あり。

二五　同郡桶川町　明治十一年府川文書に馬場金左衛門あり。

二六　同郡鴻巣宿　当所鈴木系図に「鈴木太夫三郎重清の長子鈴木重吉、二男鈴木将監正利。重吉は天正年中甲州家落城の後、比企郡三保谷より鴻巣に来り住、其の訳は馬場美濃守信房討死の後同一子馬場太兵衛信之と云人浪人して鴻巣に住、鈴木氏元来馬場氏と縁者たるゆへ正利を尋て鴻巣に来り住也。重吉の長子鈴木太郎右衛門重国・寛永十二年卒す、二男は馬場信之養子と成り馬場太兵衛信正と号す」と見ゆ。有名なる武田家臣馬場美濃守信房の後裔説は附会なり。六項参照。

二七　同郡宮前村（鴻巣市）　永林寺元禄三年六地蔵に宮前馬場弥右衛門あり。四戸現存す。

二八　同郡吹上町　明治三十五年運送店馬場善太郎あり。

二九　入間郡鶴馬村（富士見市）　新倉村明治初年富士講碑に鶴馬・馬場栄蔵。明治五年桶職馬場栄蔵。明治十三年下組小前惣代馬場藤介あり。

三〇　同郡北永井村（三芳町）　明治六年願書に馬場瀧蔵あり。二戸現存す。

三一　同郡中野村（入間市）　明治三年中野村入用帳に馬場兼次郎・豆腐商馬場熊次郎あり。

三二　同郡南入曽村（狭山市）　奥州様（北条陸奥守氏照）御扶持人覚に「天正十四年巳正月三日、武州入曽十二衆、上州かむろ川之陣へ出候分覚、木下越後・はゝ与右衛門・仁神山城・伊つか新七・同与右衛門・木下才兵衛・原島門所・伊藤新右衛門・小沢高中・田中外記・前島伊門太・小玉新左衛門」と見ゆ。天文十四巳年か。二戸現存す。小沢条参照。

三三　同郡川越町　中院過去帳に「道秋禅定門・馬場新二郎父」と、江戸初期なり。明治十三年川越銀行株主に喜多町材木商馬場佐助・十株五百円所有。三芳野神社明治四十年碑に喜多町馬場佐助あり。

三四　同郡小沼村（坂戸市）　法音寺元禄十四年常夜燈に小沼村馬場善蔵。当村万延元年馬頭尊に小沼村馬場利三郎あり。一戸現存す。

三五　同郡越生町　明治三十五年理髪店馬場又七郎あり。

三六　高麗郡上広瀬村（狭山市）　広瀬神社明治二十四年碑に当所馬場専太郎。浅間社明治四十五年碑に馬場斧吉あり。二戸現存す。

三七　同郡真能寺村（飯能市）　明治四年大工馬場兼吉・原市場村より入稼、荒物商馬場兼八あり。

三八　同郡原市場村（飯能市）　中山村智観寺万延元年本堂再建覚書に大工棟梁石倉馬場徳次郎・屋根葺工棟梁馬場亀吉・同馬場宇吉。字石倉住人なり。明治十三年山稼議定書に原市場村馬場安平。気楽流柔術横瀬村加藤門弟に明治十七年・原市場村馬場文蔵・三十一歳、馬場関次郎・十九歳、馬場虎吉あり。十四戸現存す。

三九　同郡上畑村（飯能市）　明治九年副戸長馬場太兵衛・文政十一年生あり。七戸現存す。

四〇　同郡赤沢村（飯能市）　土豪にて、星宮神社棟札に「元亀二年二月三日、施主馬場式部尉」あり。七戸現存す。加治条参照。

四一　横見郡丸貫村（吉見町）　久米田村慶応元年馬頭尊に丸貫村馬場寿□吉あり。現存無し。

四二　比企郡牛ヶ谷戸村（川島町）　比企郡神社誌に「大字牛ヶ谷戸諏訪社由緒。氏子中の馬場家の先祖信濃国より氏神として祀る。古文書に初代の神主は天文十三年禰宜馬場帯刀とあるを見れば、其頃の御分霊を悟る事も出来る」と。風土記稿には諏訪社神主馬場兵庫と見ゆ。諏訪社文化七年鈴銘に牛ヶ谷戸村馬場惣右衛門・組工人馬場弁治郎。明治九年副戸長馬場弥平次・文政二年生あり。十三戸現存す。

四三　同郡山ヶ谷戸村（川島町）　当村に此氏の旧家あり。七戸現存す。

四四　同郡松山町　明治三十五年材木炭建具商源氏屋馬場智豫三あり。

四五　同郡下唐子村（東松山市）　賀美郡金久保村陽雲寺武田家遺臣碑（明治三十年）に「馬場美濃守源信房の後裔、比企郡唐子村馬場四郎」と。美濃守後裔説は附会なり。六項参照。明治九年戸長馬場孝三郎・天保五年生、副戸長馬場四郎・天保十一年生、地主惣代馬場運八.。唐子神社忠魂碑に馬場泰治・馬場源太郎・馬場要・馬場信逸・馬場宗模あり。五戸存す。

四六　同郡本郷村（都幾川村）　平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に本郷馬場万吉あり。現存無し。

四七　同郡別所村（都幾川村）　当村天明七年巡拝塔に馬場利左衛門。桃木村八幡社文政七年筆子碑に別所村馬場金五郎・馬場亀太郎・馬場初次郎・馬場岩蔵、明治十四年筆子碑に別所村馬場貞治・馬場兵太郎・馬場勇・馬場仲太郎・馬場喜三郎・馬場孝平・馬場芳太郎。字悪戸明治元年万霊塔に馬場佐久三.。明治九年戸長馬場貞治・安政四年生。平村正法寺明治三十年廻国塔に別所馬場貞治。平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に別所馬場作蔵。大野村大野神社明治三十四年太子講碑に別所馬場林蔵あり。六戸現存す。

四八　同郡馬場村（都幾川村）　当村に此氏多く存す。草分けにて小名馬場は古代以来の屋敷名なり。源義賢家臣と伝へ、後の時代の源三位頼政（号馬場）後裔説は附会にて年代あわず。田中村市川系図に「馬場氏、源義賢家臣。清和天皇十代孫頼光嫡流頼政苗裔馬場兵衛次郎源頼房・明覚郷に居住し、同舎弟甲州住同苗源次郎源頼直は福田郷に居住す」と。風土記稿馬場村条に「旧家者三右衛門、馬場氏なり。先祖は帯刀先生義賢の家臣なりしと云ふのみ、考証とすべきことあるにあらず。按ずるに田中村の民東吉なるものゝ祖先も義賢に仕へし由、其の家譜を閲するに、義賢討れし時、家臣等大蔵の館に逃れて、此の辺に忍び住する者八人あり。其の内に馬場兵衛次郎、同源次郎頼直など云ふ者あり。是れ三右衛門が先祖なるべし。又天福年中、彼の八人の子孫等、平郷、及び福田郷に社を造立し、義賢の霊を祀りて、平郷にては山王とし、福田郷にては浅間と崇む。山王社の祭礼には流鏑馬を行ひ、八人の子孫の内にて射手を勤めりと云ふ。今此の二社は則平村と福田村とに鎮座ありて、山王社の例祭に流鏑馬の式あり。古より此の三右衛門、及び東吉、瀬戸村の民丈右衛門が家にて、つかさどりて行へりといへば、八人の内、馬場氏の子孫たること知るべし。丈右衛門が先祖も義賢の家臣にて八人の内なりと云ふ。其の家に蔵する旧記は、馬場氏の祖先のことを記録せし物なれば、もとは三右衛門が家に伝へし物なるも知るべからず。されど考証とすべき物に非ざれば爰に載せず。但し、其の記録に義賢の霊を祭りしは馬場義因と云ひしものゝ時なりと云ふ。猶荻久保の条并せ見るべし」と見ゆ。当村享和四年巡拝塔に馬場三右衛門。桃木村八幡社文政七年筆子碑に馬場村・馬場庄吉・馬場文蔵・馬場万次郎・馬場平八、明治十四年筆子碑に馬場村・馬場左伝次・馬場庫平・馬場又四郎・馬場武津平・馬場美喜。小名馬場明治二年馬頭尊に馬場兵右衛門。明治九年戸長馬場豊次郎・文化八年生、副戸長馬場智豫三・天保八年生。四十四項参照。平村正法寺明治三十年廻国塔に馬場村馬場睦平あり。次項参照。

四九　同郡福田村（滑川町）　源三位頼政流或は木曽義仲流は附会なり。小名馬場に居住して在名馬場氏を称し、本名栗本氏に復姓して土着す。武蔵志に「比企郡鎌形村八幡社流鏑馬、競馬の役人は義仲の妾桜木局産子の源義綱裔馬場氏、其臣の筋目の裔小林・市川・伊藤・横川・荻久保・加藤氏等也。馬場氏、今は栗本と氏を改む」。鎌形八幡社縁起に「木曽義高の弟義綱（母桜木局、文治三年卒）、後苗馬場と改め、十九代裔栗本備前守義高は旧地を慕いて信州より下向し、当社の隣村に居して、今猶安続せり」と。木曽家過去帳（福田村栗本右京義房在判）に「栗本六兵衛尉義正（木曽義仲より十五代馬場六蔵・姓を改め栗本六兵衛義正と称す、大永四年没）―六太夫義英（天文十三年没）―左京義盛（天正四年没）―備前守義高（天正十八年豆州山中城討死）―右京義房（父義高と共に山中城で戦ふ。落城後福田に帰郷百姓と成る。墓は福田馬場にあり、文禄四年没）」と見ゆ。馬場氏及び栗本氏は現存無し。

五〇　同郡越畑村（嵐山町）　古代以来の土着者なり。馬場家系図に「松山城将山田丹波守は小田原落城後、馬場氏を名乗って越畑村に住む。二男山田山城守は児玉郡萩平村に住む。三男大学は比企郡石橋村に住む」と見ゆ。山田氏記録（御堂村日蓮宗浄蓮寺所蔵）に「山田伊賀守嫡子山田丹波守児玉郡に住、二男山田山城守児玉領萩平村住、三男山田大学武州比企郡石橋村住、与力馬場・加藤・伊藤・横川・市川」と見ゆ。当村出身の馬場氏は山田伊賀守の名跡を継承して山田丹波守を名乗り、落城後は本名馬場氏に復姓して土着するか。或は家臣にて山田丹波守後裔説は附会か。広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑にヲツハタ・馬場金次郎・馬場松太郎・馬場喜三郎・馬場六左衛門・馬場新造。当村八宮社明治十四年水鉢に馬場儀右衛門・馬場房治郎。杉山村八宮社明治十六年筆子碑に越畑村・馬場房次郎・馬場藤三郎・馬場午次郎・馬場清馬・馬場倉次郎・馬場貞次郎・馬場信次郎・馬場文次郎・馬場仲次郎・馬場安五郎・馬場仁太郎あり。十五戸現存す。

五一　同郡吉田村（嵐山町）　広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑にヨシ田・馬場久造・馬場勘蔵・馬場春吉。手白神社明治四十五年碑に馬場儀三郎・馬場昌伯・馬場正喜・馬場義運あり。四戸現存す。

五二　同郡志賀村（嵐山町）　平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に志賀馬場倉吉あり。五戸現存す。

五三　同郡小川町　八宮社文化頃石御宮寄進碑に馬場権之助。上小川神社明治初年御神燈に馬場定吉。明治十四年本街一丁目消防委員馬場久八・馬場種次郎。明治三十五年理髪店馬場貞吉・紙商馬場丑太郎・染物業馬場幸吉・糸繭商馬場亀太郎・足袋商馬場佐吉あり。

五四　同郡増尾村（小川町）　寄居村極楽寺元治二年増尾村講中に馬場荘七・馬場長右衛門・馬場武兵衛あり。現存無し。

五五　同郡青山村（小川町）　明治十年議員馬場政太郎・二十一歳あり。十三戸現存す。

五六　同郡中爪村（小川町）　普光寺嘉永五年算額に馬場伊三郎・馬場岩蔵。八和田神社明治三十三年碑にナカツメ・馬場多市・馬場宇兵衛あり。七戸現存す。

五七　同郡腰越村（小川町）　当村に此氏多く存す。中尾村慶徳寺元禄十六年七福神に峯村馬場七右衛門。峯村は小名か。平村慈光寺観音堂文政十三年算額に腰越邑馬場与右衛門安信。馬場重吉家位牌に「馬場友八倅俗名与右衛門・行年四十一歳・弘化二年没」。明治四年名主馬場庄右衛門、蚕種業馬場与吉。明治九年副戸長馬場久三郎・天保九年生、副戸長馬場嘉重郎・嘉永六年生。明治二十七年瓢底倶楽部に馬場国治・馬場秀吉。平村正法寺明治三十年廻国塔に腰越村馬場安平・馬場友次郎・馬場里治郎・馬場常八あり。

五八　大里郡大麻生村（熊谷市）　当村に此氏多く存す。草分け六家は須永・伊佐山・高田・馬場・金子・古沢なり。字中郷文久元年石橋供養塔に馬場伊之吉。上野台村八幡社明治五年筆子碑に大麻生村馬場辰吉。明治九年副戸長馬場重平・天保六年生。大栄神社明治十五年筆子碑に大麻生村・馬場利喜造・馬場定吉・馬場重平・馬場弥十郎・馬場菊五郎・馬場鷲太郎・馬場重太郎・馬場亀之丞・馬場幸三郎・馬場弥四郎・馬場重三郎・馬場福松・馬場佐次郎・馬場仁十郎・馬場惣太郎・馬場栄吉・馬場丑五郎・馬場辰五郎・馬場栄三郎・馬場由太郎・馬場十満吉・馬場小助あり。

五九　同郡押切村（江南町）　宝幢寺寛政八年供養塔に馬場金右衛門。八幡社嘉永五年御神燈に馬場尚康。明治九年副戸長馬場尚康・文政四年生あり。三戸現存す。

六〇　同郡樋春村（江南町）　当村に此氏多く存す。野原村文殊寺嘉永元年大銀講碑に樋口村馬場安太郎。広瀬村文久元年秋山翁碑に樋ノ口村馬場隆輔・馬場音次郎。明治七年戸長馬場良明・天保十二年生、立会人馬場安信。七社神社明治八年伊勢講碑に馬場与平・馬場勝治・馬場勝右衛門・馬場助治郎・馬場茂十郎・馬場八十吉・馬場伊三郎・馬場与八・馬場武憲・馬場清蔵・馬場直三郎・馬場友八・馬場弥十郎・馬場良明・馬場善八・馬場元近、明治十四年御嶽碑に馬場金太郎・馬場定吉・馬場仙次郎・馬場勘蔵・馬場茂十郎・馬場弥八・馬場直三郎・馬場五三郎・馬場喜平。上州榛名神社明治十一年御神燈に武州大里郡樋春村馬場茂直・馬場直三郎。明治二十年樋春村連名簿に馬場勝治・馬場与平・馬場良直・馬場伊三郎・馬場力太郎・馬場治平・馬場米三郎・馬場直三郎・馬場宇八・馬場清造・馬場仙次郎・馬場茂十郎・馬場善八・馬場八十吉・馬場元次郎・馬場元近。上岡妙安寺観音堂明治三十一年碑に樋春茂木・馬場与平あり。

六一　榛沢郡寄居町　明治三十五年教会所馬場武憲あり。前村の人か。

六二　同郡瀬山村（川本町）　当村に此氏多く存す。小名馬場は屋敷名なり。河原明戸村諏訪社安政六年水鉢に瀬山村馬場久左衛門。長在家村稲荷社明治三年小御嶽碑にセヤマ馬場奥次郎。明治三十五年奈良堰組合員に瀬山・馬場軍太郎・馬場真次郎・馬場喜内あり。

六三　同郡長在家村（川本町）　当村に此氏多く存す。稲荷社万延元年浅間碑に馬場太郎吉・馬場幸吉・馬場常五郎・馬場与次郎・馬場藤五郎・馬場周吉・馬場熊七・馬場龍吉・馬場勘七・馬場石蔵・馬場清五郎、慶応二年御神燈に馬場仙五郎、明治三年小御嶽碑に当所・馬場重太郎・馬場秀五郎・馬場石蔵・馬場清五郎・馬場勘七・馬場茂十郎・馬場与次郎・馬場竹次郎・馬場庄太郎・馬場定吉・馬場長吉・馬場綱吉・馬場儀助・馬場染五郎・馬場幸吉・馬場周吉、明治六年筆子碑に当所・馬場其吉・馬場松五郎・馬場与三郎・馬場永三郎・馬場佐十郎・馬場九平・馬場庄太郎・馬場愛之助・馬場由松・馬場竹次郎・馬場安太郎・馬場源十郎・馬場又八・馬場仙五郎・馬場由五郎・馬場亀五郎・馬場富八・馬場常七・馬場徳次郎・馬場周吉、明治九年子ノ大権現碑に馬場藤十郎・馬場勇助。明治九年副戸長馬場五郎平・文政七年生あり。

六四　同郡武蔵野村（花園町）　飯塚村字馬場は屋敷名なり。十二社神社嘉永元年馬頭尊に飯塚村馬場丈八.。明治九年富田文書に飯塚村馬場竹次郎・馬場喜十郎あり。五戸現存す。

六五　同郡小前田村（花園町）　長善寺寛政五年供養塔に馬場定右衛門あり。十一戸現存す。

六六　同郡深谷町　明治三十五年に馬場忠次郎・馬場久太郎あり。

六七　同郡人見村（深谷市）　当村に此氏多く存す。小名馬場は屋敷名なり。柏合村明治十三年八海山講碑にヒトミ馬場多吉。用土村明治十三年仙元碑に人見村・馬場八百次郎・馬場房吉・馬場丹三郎。明治二十八年清水定義筆子碑に馬場権三郎、バンバ馬場杢平・馬場貞次郎・馬場兼吉、川向馬場辰次郎。中瀬村向島不動堂明治四十四年従軍馬匹碑に人見馬場源次郎。藤沢村会議員馬場愛三郎・明治二十八年生あり。

六八　同郡針ヶ谷村（岡部町）　弘光寺寛政六年供養塔に組頭馬場半右衛門・組頭馬場杢兵衛・組頭馬場伴右衛門あり。現存無し。

六九　那賀郡甘粕村（美里町）　長野県南佐久郡臼田町入沢の千手院に「天保十一年、起倒流柔術鎧組打奉納、武州中郡甘糟・馬場藤八」あり。現存無し。

七〇　賀美郡勅使河原村（上里町）　安永七年勅使河原村家名附に「前原・馬場左治右衛門・馬場孫右衛門・馬場武兵衛・馬場市郎兵衛・馬場平右衛門・馬場弁蔵・馬場新兵衛・馬場忠兵衛・組頭馬場多重郎、中原・馬場吉太夫」。馬庭念流須賀民右衛門の天保十一年門人に勅使河原村馬場利七.。勝場村万延元年庚申塔に馬場市郎兵衛・馬場平右衛門・馬場喜助・馬場三郎兵衛・馬場武兵衛あり。十戸現存す。

七一　同郡帯刀村（上里町）　武田家臣馬場民部少輔信春の後裔説は附会なり。六項参照。児玉記考に「旧家馬場玉吉、祖先を馬場美濃守信房と云ひ、武田家の老臣にして信州牧ノ島の城主として百二十騎の将たり、天正三年五月二十一日長篠の役に死す。長男民部少輔信春・陽雲院を供奉し来って上州磯部に住す、後又当地に移住す。旧幕時代は藤右衛門と通称し、地頭伊東家の割元代官職を勤め苗字帯刀を許されたり」と見ゆ。一戸現存す。

七二　秩父郡安戸村（東秩父村）　安戸城主山田家記録に「山田家与力馬場」とあり、当村出身か。五十項参照。御堂村浄蓮寺明治二十三年碑に馬場嘉十郎あり。四戸現存す。

七三　同郡坂本村（東秩父村）　当村明治二十年御嶽碑に坂本邨馬場角二郎。大内神社前明治二十三年碑に坂本馬場元三郎。当村明治三十六年筆子碑に馬場亀吉・馬場菊次郎・馬場角二郎・馬場丈次郎あり。八戸存す。

七四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・馬場豊造・二十五円、馬場駿一・二十一円、馬場巌・十二円、馬場吉信・十一円、所沢町・馬場幸吉・二十四円・三十五円、入間川町（狭山市）・馬場斧吉・三十九円・二十八円、越生町・馬場章輔・九円、原市場村（飯能市）・馬場関次郎・九円、名栗村・馬場茂一・十円、大河村（小川町）・馬場篤太郎・十四円・三十四円、馬場里次郎・二十五円・十三円、馬場喜重郎・二十五円、太井村（熊谷市）・馬場熊次郎・三十一円、大麻生村（熊谷市）・馬場大吉・百三十九円・四十二円、深谷町・馬場善吉・九十八円・六十三円、藤沢村（深谷市）・馬場辰次郎・九円、御正村（江南町）・馬場甚吉・十七円、馬場良助・十四円、馬場尚茂・十二円、武川村（川本町）・馬場由一・二十二円、長幡村（上里町）・馬場武平・二十八円」あり。

羽場内　ハバウチ　浦和に存す。

母壁　ハハカベ　春日部、越谷に存す。

波々壁　ハハカベ　千葉県安房郡千倉町六戸あり。

幅上　ハバカミ　騎西に存す。

葉計　ハハカリ　川越に存す。

幅岸　ハバギシ　大宮に存す。

幅口　ハバクチ　朝霞、入間、川越、富士見、春日部等に存す。

馬場口　ババクチ　所沢に存す。

巾崎　ハバサキ　鴻巣に存す。

幅崎　ハバサキ　越谷に存す。

羽場崎　ハバサキ　鳩ケ谷に存す。長野県下伊那郡阿智村十二戸、飯田市十二戸あり。

馬場先　ババサキ　浦和、川口、上尾、草加、吉川等に存す。茨城県ひたちなか市十一戸あり。

馬場崎　ババサキ　浦和、与野、朝霞、入間、所沢、越谷、八潮等に存す。島根県八頭郡八東町五戸あり。

巾下　ハバシタ　上尾、与野等に存す。

幅下　ハバシタ　川口、上尾、熊谷、秩父に存す。岩手県花巻市十一戸あり。

馬場添　ババソエ　川口に存す。

馬場園　ババゾノ　川口、鳩ケ谷、上福岡、狭山、所沢等に存す。

巾田　ハバタ　川口に存す。

幅田　ハバタ　大宮、川口、春日部等に存す。

馬場高田　ババタカダ　所沢に存す。

幅中　ハバナカ　川越に存す。

幅野　ハバノ　日高、熊谷、長瀞等に存す。岩手県紫波郡紫波町六戸あり。

伯々部　ハハベ　岩槻藩板倉氏家臣にて、天和二年岩槻藩分限帳に「十人扶持・伯々部三左衛門」あり。

馬場見　ババミ　杉戸に存す。

葉林　ハバヤシ　川越に存す。

羽原　ハハラ　浦和、大宮、新座、飯能、富士見、越谷、草加等に存す。

葉原　ハハラ　秩父郡井戸村字葉原。

羽広　ハヒロ　蕨、新座、松伏、岩槻、深谷、小川等に存す。

土生　ハブ　各市町村に存す。宮城県亘理郡山元町三十戸、亘理町十七戸。

埴生　ハブ　所沢に存す。ハニュウ参照。

垣生　ハブ　大宮、白岡、朝霞に存す。

羽生　ハブ　各市町村に存す。ハニュウ参照。

羽部　ハブ　白岡、幸手、宮代等に存す。茨城県猿島郡境町十二戸、総和町五十戸あり。ハベ参照。

一　鷲宮町　鷲宮神社文書に「神主細萱家十六騎之内に、羽部次兵衛・父内匠之助、下宿住、元和九年亥仲秋死す、霊樹寺に葬す」と。現存無し。

羽深　ハブカ　各市町村に存す。新潟県中頸城郡清里村八戸、東頸城郡牧村五十三戸、上越市百戸あり。

葉葺　ハブキ　川口、上福岡、川越等に存す。新潟県十日町市十四戸あり。

羽吹　ハブキ　浦和、桶川、越谷、坂戸、鶴ヶ島、所沢、飯能、日高、川島等に存す。新潟県南魚沼郡塩沢町十二戸、六日町二十戸あり。

一　入間郡亀久保村（大井町）　武蔵志に「亀久保村、陣跡・羽吹と云人居ると伝ふ」。幕府役人か。現存無し。

羽生田　ハブタ　上尾に存す。

羽淵　ハブチ　大宮、川越、坂戸に存す。

羽渕　ハブチ　越谷に存す。

土生津　ハブツ

一　葛飾郡上金崎村（庄和町）　香取社天保六年御神燈に上金崎村土生津六郎右衛門・土生津房五郎。明治初年名主土生津百治。明治四十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に農業土生津正次・文久三年生・国税六百五十七円・県下百二十一位。昭和三年興信録に「南桜井村・土生津正次・所得税八十二円」あり。一戸現存す。

二　同郡広戸沼村（杉戸町）　観音堂慶応二年碑に土生津善左衛門あり。二戸現存す。

三　同郡中野村（幸手市）　広戸沼村観音堂慶応二年碑に中野村土生津金蔵深行。安戸村香取社明治三年富士嶽碑に中野土生津金蔵。当村香取社明治三十八年稲荷碑に中野土生津喜三郎あり。五戸現存す。

羽布津　ハブツ　熊谷に存す。

羽太　ハブト　各市町村に存す。

一　忍城士の羽太氏　成田分限帳に「十二貫文・羽太源左衛門」あり、ハブトと註す。次項出身か。

二　児玉郡十条村（美里町）　当村に此氏の旧家あり。三戸現存す。

土生都　ハブト　浦和、鶴ヶ島等に存す。茨城県真壁郡真壁町十四戸あり。

羽武戸　ハブト　伊奈、越谷に存す。

祝　ハフリ　神社に奉仕する職名なり。

一　丹党中村氏　武蔵七党系図に「中村次郎家時―時信―時勝―時基―時郷―行郷（秩父祝孫二郎）」。秩父神社造営目録の徳治・延慶・元亨年間に中村孫次郎行郷の名見ゆ。

羽辺　ハベ　東松山に存す。

羽部　ハベ　浦和、大宮、川口、岩槻、春日部等に存す。新潟県北蒲原郡黒川村十戸あり。ハブ参照。

波部　ハベ　上尾、朝霞、岩槻に存す。

浜　ハマ　海（あま）族は浜と称す。福岡県東区志賀島に志賀海（しかうみ）神社あり、大同元年牒に阿曇神、貞観元年に志賀海神と見ゆ。祭神は阿曇氏の祖神・綿津見神なり。筑前国風土記に「糟屋郡資珂島。神功皇后、新羅に幸しし時、この島に来り泊りけり。陪従に名を大浜と小浜といふ者あり」。日本書紀応神天皇三年条に「阿曇連が祖大浜宿祢、因りて海人の宰（みこともち）とす」。履仲天皇即位前紀に「阿曇連浜子」あり。阿曇連は海族を支配管掌し、一族は信濃国へ移住し、配下の者は浜氏を称す。長野県諏訪郡下諏訪町六十七戸、富士見町二十戸、上伊那郡辰野町十九戸、岡谷市三百八十戸、諏訪市百七十戸、茅野市百二十戸あり。各市町村に存す。武蔵国では浜田氏・浜野氏等が利根川流域に存す。

濱　ハマ　各市町村に存す。

羽馬　ハマ　浦和に存す。

羽磨　ハマ　坂戸に存す。

波間　ハマ　大宮、川口、春日部、所沢等に存す。長野県茅野市十五戸あり。

浜井　ハマイ　浦和、鴻巣、新座、和光、狭山、鶴ヶ島、春日部、越谷に存す。

一　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「五十石二人扶持・浜井治郎兵衛」あり。

濱井　ハマイ　浦和、新座、和光、春日部等に存す。

浜飯　ハマイ　松伏に存す。青森県上北郡六ヶ所村十二戸あり。

濱家　ハマイエ　入間に存す。

浜石　ハマイシ　大宮に存す。

浜市　ハマイチ　川越に存す。

浜氏　ハマウジ　大宮、川越等に存す。

浜渦　ハマウズ　川口、新座等に存す。

浜内　ハマウチ　朝霞、川越等に存す。

濱内　ハマウチ　大宮、戸田等に存す。

浜浦　ハマウラ　川口、和光、富士見等に存す。青森県三戸郡階上町十三戸、八戸市十八戸あり。

濱浦　ハマウラ　川口に存す。

浜江　ハマエ　浦和、吉川等に存す。

浜尾　ハマオ　各市町村に存す。福島県岩瀬郡岩瀬村九戸、安達郡安達町十一戸、郡山市八十六戸あり。

濱尾　ハマオ　上尾、所沢等に存す。

浜岡　ハマオカ　鳥取市十四戸あり。

一　那賀郡小平村（児玉町）　秋平小学校明治三十二年碑に小平・浜岡吉五郎・浜岡半四郎・浜岡奥治郎あり。三戸現存す。

濱岡　ハマオカ　浦和、入間等に存す。

浜奥　ハマオク　草加に存す。

浜垣　ハマガキ　川越、東松山等に存す。鳥取県岩美郡岩美町七戸あり。

濱頭　ハマガシラ　大宮に存す。

浜方　ハマカタ　久喜、川越等に存す。

濱方　ハマカタ　桶川に存す。

浜上　ハマガミ　川口、蕨、越谷、草加、川越、坂戸、鶴ヶ島等に存す。

濱上　ハマガミ　坂戸に存す。

浜川　ハマカワ　鳥取県東伯郡大栄町十戸あり。

一　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御直参・百石・浜川与三兵衛」あり。

二　榛沢郡折之口村（深谷市）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

濱川　ハマカワ　浦和、志木、久喜、草加等に存す。

浜川戸　ハマカワド　埼玉郡粕壁宿字浜川戸・新方袋村字浜川戸（春日部市）は古の村名なり。

浜木　ハマキ　浦和、草加、大井に存す。

浜岸　ハマギシ　浦和、吉川、飯能、富士見等に存す。

浜口　ハマグチ　各市町村に存す。鳥取県東伯郡大栄町十三戸、岩美郡岩美町二十戸、鳥取市二十戸あり。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「百石・浜口与惣右衛門」あり。

濱口　ハマグチ　各市町村に存す。

浜窪　ハマクボ　浦和に存す。

浜倉　ハマクラ　鶴ヶ島に存す。

浜操　ハマクリ　越谷に存す。

蛤子　ハマグリコ　足立郡木曽呂村（川口市）阿弥陀堂寛政九年湯殿山碑に蛤子彦七あり。現存無し。

浜砂　ハマサ　大宮に存す。

浜坂　ハマサカ　草加、入間、本庄等に存す。岩手県久慈市十五戸あり。

浜崎　ハマザキ　新座郡浜崎村（朝霞市）は、滝野入村桂木観音堂鰐口銘に「福徳二年辛亥九月吉日（延徳三年）、武州新座之郡広沢之郷浜崎之宮」と、文明十八年廻国雑記に「武蔵野の末に浜崎といへる里・侍へり」と見ゆ。○島根県那賀郡三隅町二十一戸、八束郡鹿島町十九戸、島根町十四戸、浜田市三十八戸、松江市三十六戸。○鳥取県岩美郡岩美町十四戸、鳥取市四十戸あり。

一　葛飾郡吉屋村（吉川市）　信州善光寺本堂北嘉永六年常夜燈に葛飾郡二郷半領吉谷村浜崎長兵衛あり。現存無し。

二　埼玉郡北篠崎村（加須市）　熊野社天保十五年狛犬に浜崎彦右衛門、文久四年御神燈に浜崎忠次郎・浜崎彦右衛門あり。一戸現存す。

三　同郡長野村（行田市）　久伊豆社天保六年御神燈に浜崎佐兵衛あり。現存無し。

四　足立郡神田村（浦和市）　明治九年副戸長浜崎和三郎・天保六年生あり。十戸現存す。

濱崎　ハマザキ　各市町村に存す。

浜迫　ハマサコ　川口に存す。

浜里　ハマザト　川越、坂戸、大井等に存す。

濱里　ハマザト　坂戸に存す。

浜路　ハマジ　三郷、日高等に存す。

一　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御勘定奉行・百石・浜路吉左衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「百五十石・浜路弥三左衛門」あり。

浜下　ハマシタ　鴻巣、朝霞、新座、草加、春日部、狭山、所沢、毛呂山等に存す。鳥取市七戸あり。

濱下　ハマシタ　川越に存す。

浜島　ハマシマ　長野県飯田市五十戸。

一　岡部藩安部氏家臣　明治四年半原県分限帳に「少参事・浜島治・士族」。

二　葛飾郡戸ヶ崎村（三郷市）　明治九年副戸長浜島清兵衛・文政七年生。昭和三年興信録に「戸ヶ崎村・浜島喜作次・所得税九円」あり。十一戸現存す。

三　同郡鎌倉村（三郷市）　明治三十年人名録に浜島平八・文久元年生・地租三十七円、浜島幾次郎・安政五年生あり。九戸現存す。

四　同郡前川村（三郷市）　彦倉村延命院天保五年勧進帳に前川村浜島半兵衛。明治三十年人名録に浜島忠五郎・明治元年生・地租三十七円あり。三戸現存す。

五　同郡不動院野村（春日部市）　藤塚村香取社江戸末期御神燈に不動院野村浜島七右衛門。堤根村稲荷社慶応二年御神燈に不動院野村浜島文右衛門。大杉神社慶応二年水鉢に不動院野村修理島・浜島又右衛門、明治二十四年碑に浜島七右衛門あり。みな同人か。一戸現存す。

六　埼玉郡粕壁宿　元新宿八幡社天保四年水鉢に浜島平右衛門・浜島儀右衛門。春日部八幡社天保十三年御神燈に浜島助右衛門・浜島四郎八、明治三十二年御嶽碑に浜島弁之助。明治三十五年米穀商浜島富蔵・飲食店浜島市太郎。春日部稲荷社明治四十三年鳥居碑に浜島市太郎。昭和三年興信録に「浜島富五郎・所得税百十五円・営業税六十四円」あり。

七　同郡梅田村（春日部市）　雷電社寛政三年稲荷碑に浜島源七・浜島金治郎・浜島弥兵衛・浜島太郎吉・浜島長松。神明社弘化二年水鉢に新田株浜島喜次郎、安政三年御神燈に新田株浜島市左衛門。日枝社弘化六乙酉年水鉢に浜島勝五郎・浜島寅次郎、嘉永三年御神燈に西組・浜島留蔵・浜島軍蔵・浜島清治郎あり。十二戸現存す。

八　同郡黒浜村（蓮田市）　笹山村稲荷社明治十三年浅間碑に黒浜村浜島米吉・浜島勇三・浜島佐源二あり。二戸現存す。

九　同郡加須町　小浜村地蔵院元禄八年百番観音に施主加須町浜島伝兵衛あり。一戸現存す。

一〇　同郡羽生領小浜村（加須市）　地蔵院元禄八年百番観音に施主小浜村浜島伝右衛門あり。一戸現存す。

一一　同郡神戸村（羽生市）　千眼寺寛政元年廻国塔に神戸邑浜島七郎左衛門、江戸末期地蔵尊に浜島五左衛門あり。四戸現存す。

一二　同郡上中条村（熊谷市）　安政三年多門寺村塩田文書に上中条村名主浜島和輔あり。二戸現存す。

一三　浦和町　明治三十五年菓子商浜島繁蔵あり。

一四　比企郡福田村（滑川町）　明治五年五人組帳に浜島五郎平・浜島平蔵・浜島倉蔵あり。七戸現存す。

一五　同郡吉田村（嵐山町）　広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑にヨシ田浜島助次郎あり。現存無し。

一六　大里郡石原村（熊谷市）　明治三十五年籠商浜島元次郎あり。

濱島　ハマシマ　戸ヶ崎村に存す。

浜須　ハマス　三郷に存す。福島県原町市九戸あり。

浜砂　ハマスナ　戸田、越谷、八潮、所沢等に存す。

濱砂　ハマスナ　蓮田、和光等に存す。

浜住　ハマスミ　与野に存す。

濱住　ハマスミ　加須に存す。

浜瀬　ハマセ　蓮田、草加等に存す。

一　岡部藩安部氏家臣　慶応四年岡部藩分限帳に「御中小姓格・六石二人扶持・浜瀬秀造」あり。

浜添　ハマゾエ　朝霞、狭山、所沢、玉川等に存す。

濱添　ハマゾエ　所沢に存す。

浜園　ハマゾノ　蕨、越谷等に存す。

浜薗　ハマゾノ　所沢に存す。

浜田　ハマダ　田は郡県・村の意味。海族の集落を浜田と称す。武蔵国では利根川流域に多く存す。○群馬県太田市四十八戸。○茨城県行方郡麻生町四十戸、稲敷郡桜川村三十五戸、土浦市六十戸。○千葉県市原市百三十戸。○新潟県西蒲原郡吉田町十九戸。○山形県東置賜郡高畠町二十五戸。○岩手県上閉伊郡大槌町二十二戸、遠野市三十九戸。○青森県上北郡上北町二十三戸、東北町三十戸、下北郡大畑町二十七戸、川内町二十戸、東通村十七戸、東津軽郡平内町六十四戸、むつ市五十五戸、青森市百二十戸。○島根県能義郡広瀬町二十三戸、松江市四十戸。○鳥取県東伯郡大栄町十五戸、岩美郡岩美町五十五戸、気高郡気高町二十四戸、米子市百三十戸、境港市二百六十戸、鳥取市七十戸あり。

一　鉢形城士の浜田氏　鉢形分限帳に「本国参州宝飯・名倉住・浜田文九郎、本国豊前田河・浜田幸助、本国壱岐吉田・浜田与左衛門」あり。分限帳の本国は信用出来ず。秩父郡大滝村及び下小鹿野村字名倉の出身にて郷里へ帰農す。秩父案内記に「浜田久五郎・小鹿野郷土着、浜田与左衛門・大滝村土着」と見ゆ。

二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「七両余二人扶持・浜田宗次郎」あり。

三　葛飾郡長沼村（三郷市）　明治三十年人名録に浜田虎蔵・天保十三年生・地租十六円あり。三戸現存す。

四　同郡不動院野村（春日部市）　大杉神社明治二十四年碑に浜田政吉・浜田平吉あり。三戸現存す。

五　同郡清地村（杉戸町）　近津神社元治元年狛犬に浜田治兵衛・浜田六左衛門、明治十六年御神燈に浜田常吉・浜田清左衛門・浜田喜三郎。倉松村雷電社明治二十六年敷石碑にセイジ浜田清左衛門あり。十四戸現存す。

六　同郡倉松村（杉戸町）　諏訪社天保十三年仙元碑に浜田金治。雷電社弘化四年鳥居碑に倉石株浜田治左衛門・浜田又右衛門・浜田要助・浜田清次郎・浜田兵蔵。延命院嘉永五年庚申塔に浜田武右衛門。香取社明治二十五年御神燈に浜田春松。雷電社明治二十六年敷石碑に浜田要助・浜田清松・浜田金次郎・浜田清次郎あり。六戸現存す。

七　同郡堤根村（杉戸町）　当村に此氏多く存す。稲荷社元治元年御神燈に浜田清左衛門朝□、文久二年水鉢に宮内村浜田□三郎・浜田七蔵。明治七年製糸会社人名録に浜田佐左衛門。明治九年戸長浜田清左衛門・天保二年生、副戸長浜田源十郎・天保八年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に堤根村浜田清左衛門。幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に堤根村浜田保之助。明治三十年人名録に浜田茂三郎・安政三年生・地租三百円。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治三十年農業浜田清左衛門・嘉永四年生・国税六百六十六円、明治四十四年農業浜田久治・明治八年生・国税千四百三十八円・県下三十三位、大正四年浜田久治・国税千二百十九円・県下百四十五位あり。

八　同郡並塚村（杉戸町）　明治三十年人名録に浜田勘十・嘉永五年生・地租十八円あり。四戸現存す。

九　同郡幸手町　明治三十五年理髪店浜田あさ・下駄商種屋浜田清吉・米穀商浜田元吉あり。

一〇　同郡権現堂村（幸手市）　熊野社明治三十四年碑に下谷・浜田亀吉あり。三戸現存す。

一一　同郡神明内村（幸手市）　明治二十年選挙権者浜田藤七・弘化三年生。八海神社明治二十五年御嶽碑に浜田勘次郎あり。一戸現存す。

一二　同郡上宇和田村（幸手市）　金剛寺文政三年庚申塔に浜田忠兵衛あり。現存無し。

一三　同郡惣新田村（幸手市）　字中新田香取社宝暦八年庚申塔に中新田組浜田治郎右衛門。字仁階稲荷社明和三年庚申塔に仁階村浜田与七、寛政元年庚申塔に二階村浜田松太郎、文政八年天満宮碑に仁階組浜田清右衛門あり。七戸現存す。

一四　同郡高柳村（栗橋町）　香取社嘉永四年狛犬に浜田次郎吉、明治十四年幟碑に浜田八□郎あり。現存無し。

一五　埼玉郡大沢町（越谷市）　香取社寛政元年御神燈に浜田安左衛門。

一六　同郡下大増新田（春日部市）　香取社文化十年天満宮碑に浜田又次郎、慶応□年御神燈に浜田六兵衛。岩槻町秋葉社天保三年狛犬に下大増新田浜田半右衛門。増長村観秀院安政二年供養塔に下大増村浜田松次郎あり。一戸現存す。

一七　同郡百間村（宮代町）　爪田ヶ谷村諏訪社天保十五年狛犬に逆井浜田幸次郎あり。字逆井に九戸現存す。

一八　同郡爪田ヶ谷村（白岡町）　薬師堂享保十八年庚申塔に浜田清二郎、寛政十二年庚申塔に中新田浜田与治右衛門、文政十年地蔵尊に浜田常蔵。諏訪社天保六年供養塔に浜田貞七、天保十四年御神燈に浜田与七あり。三戸現存す。

一九　同郡上野田村（白岡町）　第六天雷電社元禄七年地蔵尊に野田村浜田源兵衛。鷲宮社文政九年水鉢に浜田多蔵、嘉永元年御神燈に上野田村里長浜田多忠次・浜田杢之丞、同年幟碑に浜田多兵二。弘化四年戸賀崎入門帳に浜田杢之丞。神道無念流戸島村小川家入門帳に安政六年・上野田村浜田岩之丞。当村明治四年馬頭尊に上野田村浜田太兵衛。明治九年戸長浜田岩之丞・天保十年生。鷲宮社明治九年鳥居碑に上野田村浜田定之丞、明治三十四年碑に浜田安之助。明治三十年人名録に浜田安之助・慶応元年生・地租百十五円あり。五戸現存す。

二〇　同郡寺塚村（白岡町）　鷲神社享保十六年御神燈に浜田伝八郎、文久元年水鉢に浜田幾右衛門。上野田村鷲宮社嘉永元年御神燈に寺塚村浜田幾右衛門あり。二戸現存す。

二一　同郡野牛村（白岡町）　当村に此氏多く存す。久伊豆社天保十一年狛犬に浜田孫右衛門・浜田庄右衛門・浜田万五郎・浜田市郎衛門、慶応二年御神燈に浜田吉蔵・浜田新五郎・浜田吉之丞・浜田与一・浜田源治郎・浜田代太郎・浜田忠蔵・浜田辰五郎・浜田兵五郎、明治二十六年鳥居寄進碑に野牛村浜田忠吉・浜田卯兵衛。明治九年副戸長浜田吉之丞・文政八年生。明治三十年人名録に浜田忠吉・嘉永四年生・地租九十五円、浜田吉五郎・安政三年生・地租二十五円、浜田浜松・弘化二年生・地租二十二円、浜田竹次郎・嘉永二年生あり。

二二　同郡久喜町　旧家浜田氏は古河公方政氏の臣と伝へる。千勝神社万延元年狛犬に久喜本村浜田勘蔵・浜田喜太郎。神道無念流榛沢郡宮戸村金井宇一郎明治三年起請文に久喜本村浜田茂吉。明治三十五年理髪店浜田市太郎・下駄商浜田久太郎・浜田千代あり。

二三　同郡太田吉羽村（久喜市）　鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に太田吉羽村浜田喜平治あり。十戸存す。

二四　足立郡川口宿　善光寺文政十年普門品に浜田忠蔵・浜田吉五郎・浜田徳治郎・浜田安兵衛、嘉永七年碑に当所浜田忠八.。安政四年真継文書に川口宿鋳物師浜田惣左衛門。明治九年副戸長浜田惣左衛門・文化十四年生。明治三十五年鋳物製造浜田庄吉・竹屋浜田七五郎。川口神社明治三十九年碑に浜田福次郎・浜田庄吉・浜田亀吉・浜田新太郎・浜田忠太郎・浜田熊次郎・浜田七五郎。大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に浜田熊次郎・明治二十六年生・国税千二十六円・県下百七十九位あり。

二五　同郡横曽根村（川口市）　衆議院議員選挙人名簿に浜田清次郎・安政二年生・納税二十四円あり。

二六　同郡小針領家村（桶川市）　字本村元文元年庚申塔に領家村浜田利八あり。現存無し。

二七　新座郡野火留宿村（新座市）　本郷村東福寺明治十年供養塔に野火止西組浜田軍蔵あり。

二八　高麗郡中山村（飯能市）　智観寺明治十七年勧進帳に中山村浜田仁三郎あり。

二九　比企郡松山町　松山神社文政十二年御神燈に下町浜田辰五郎あり。

三〇　同郡小川町　明治三十五年絹織物商浜田篤蔵あり。

三一　榛沢郡寄居町　明治三十五年長唄指南浜田トラあり。

三二　同郡牧西村（本庄市）　嘉永元年牧西村絵図に浜田音右衛門・浜田武左衛門。明治九年議定連印簿に浜田弥十郎・浜田忠吉あり。三戸現存す。

三三　那賀郡小平村（児玉町）　石神社文政七年供養塔に浜田長助。秋平小学校明治三十二年碑に小平・浜田鹿太郎・浜田国太郎あり。二戸現存す。

三四　秩父郡大宮町　明治三十五年煙草商浜田タツあり。

三五　同郡堀切村（秩父市）　国神神社明治三十四年碑に堀切・浜田三津五郎あり。一戸現存す。

三六　同郡上小鹿野村　明治十二年小間物商浜田可津・饂飩商浜田庄内あり。六戸現存す。

三七　同郡下小鹿野村　一項参照。下吉田村金剛院明治三十年筆子碑に浜田寅作・浜田類蔵・浜田九平・浜田仁作・浜田小市・浜田喜平・浜田浪吉・浜田利助・浜田新蔵・浜田林蔵・浜田時平・浜田房吉。小鹿神社明治三十九年水鉢に浜田喜平・浜田国作・浜田嘉市あり。十七戸現存す。

三八　同郡大滝村　一項参照。旧家なり。三戸現存す。

三九　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「川口町・浜田熊次郎・千四百六十五円・二十四円、浜田半次郎・百三十八円・九十二円、浜田長十郎・二百二十一円、横曽根村（川口市）・浜田藤七郎・二十四円・四十二円、堤郷村（杉戸町）・浜田久治・三百七十九円、日勝村（白岡町）・浜田安之助・十二円、篠沢村（白岡町）・浜田彦左衛門・十一円、飯能町・浜田善七・三十三円、小川町・浜田清真・八十七円・六十四円、浜田篤雄・六十一円、秩父町・浜田彦兵衛・三十円・五十六円、大滝村・浜田英・二十四円・五十円」あり。

濱田　ハマダ　各市町村に存す。

浜多　ハマダ　志木に存す。

葉間田　ハマダ　熊谷に存す。

浜平　ハマダイラ　秩父郡新大滝村字浜平は古の村名にて、明暦元年大滝郷之内浜平村検地帳とあり。比企郡平村慈光寺元禄八年棟札に秩父郡浜平村と見ゆ。岩手県九戸郡種市町十三戸あり。ハマヒラ参照。

浜高　ハマタカ　大宮、上尾、八潮、入間、鶴ヶ島等に存す。

浜竹　ハマタケ　妻沼に存す。

浜武　ハマタケ　浦和、川口、朝霞、狭山、所沢、三郷、熊谷等に存す。

浜館　ハマダテ　新座、三郷、熊谷に存す。青森県五所川原市二十八戸あり。

浜舘　ハマダテ　庄和、深谷等に存す。

浜谷　ハマタニ　各市町村に存す。

濱谷　ハマタニ　大宮に存す。

浜地　ハマチ　各市町村に存す。

濱地　ハマチ　浦和、大宮、吹上、所沢等に存す。

浜近　ハマチカ　川口、与野等に存す。

濱近　ハマチカ　所沢に存す。

浜津　ハマツ　各市町村に存す。福島県郡山市百四十戸あり。

濱津　ハマツ　松伏に存す。

浜出　ハマデ　浦和、志木、川越、坂戸、狭山、所沢等に存す。

浜戸　ハマト　川口、大利根に存す。

浜登　ハマト　浦和に存す。岩手県下閉伊郡山田町十六戸あり。

浜名　ハマナ　奈、那は古代朝鮮語の国の意味。海族の国、即ち海洋民の集落を浜名と称す。○群馬県群馬郡榛名町四十六戸、倉渕村十四戸。千葉県富津市三十二戸。○福島県相馬郡鹿島町三十六戸、相馬市二十五戸、原町市十九戸あり。

一　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百石・浜名左馬助」あり。

二　葛飾郡上高野村（幸手市）　上高野神社明治三十五年碑に浜名儀助あり。一戸現存す。

三　同郡長間村（幸手市）　香取社文政二年鳥居碑に浜名石五郎、文政十三年庚申塔に蛭子株浜名忠五郎、天保十二年庚申塔に浜名忠右衛門。惣新田村正福院天保九年真言塔に長間浜名忠右衛門。明治三十年人名録に浜名石五郎・弘化元年生・地租十五円あり。一戸現存す。

四　埼玉郡和戸村（宮代町）　宇宮神社明治二十二年御嶽碑に当所浜名新二郎あり。現存無し。

五　草加町　成田山新勝寺文久三年碑に草加駅塗師屋熊次郎（浜名）。明治三十五年水菓子卸商浜名平次郎・足袋商浜名民蔵あり。

六　幡羅郡三ヶ尻村（熊谷市）　八幡社安政六年水鉢に浜名善兵衛あり。現存無し。

七　賀美郡石神村（上里町）　石川流木村源蔵（天保十年没）門人に石神村浜名仲助。石神社文久元年御神燈に浜名弥一右衛門。明治四年山下文書に石神村組頭浜名周平・高九反八畝歩所有。明治二十一年皇国武術英名録に奥山念流柔術石神村浜名亀三.。金久保村法西寺明治四十年筆子碑に浜名亀吉あり。二戸現存す。

濱名　ハマナ　大宮、蕨、熊谷に存す。

浜中　ハマナカ　古代朝鮮語で那は国、曷（か）は村の意味。海族の集落を浜中と称す。浜、中参照。○東京都西多摩郡日の出町七十戸。○青森県上北郡七戸町十四戸、野辺地町十一戸、六ヶ所村二十五戸、下北郡川内町二十三戸、東津軽郡平内町二十戸あり。

一　平山氏家臣の浜中氏　入間郡小山村（坂戸市）平田文書に「天正八年十二月六日、平山伊賀守知行地の小山村にておきし、平山家臣浜中氏と小山村平田肥前守の訴訟あり」と。八王子城主北条氏照の家臣多摩郡平山伊賀守の臣浜中氏は日の出町出身なり。小山村に平田氏十一戸現存し、浜中氏は無し。

二　鉢形城士の浜中氏　鉢形分限帳に「本国濃州山懸・白久住・浜中左京」あり。岐阜県山県郡に現存無し。分限帳の本国は信用出来ず。秩父郡白久村出身なり。

三　忍藩松平下総守（奥平）家臣　明治四年忍藩士族名簿に「九石・浜中音蔵」あり。

四　足立郡元郷村（川口市）　随泉寺天保二年常夜燈に浜中与兵衛、安政五年普門品に浜中銀蔵。明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流元郷村浜中米吉あり。二戸現存す。

五　同郡五関村（浦和市）　当村に此氏多く存す。明治九年副戸長浜中七左衛門・嘉永元年生。明治二十一年皇国武術英名録に天自流五関村浜中元国。稲荷社明治三十年碑に浜中七五郎・浜中重次郎・浜中きく・浜中留吉・浜中助太郎・浜中善次郎・浜中弥三郎・浜中文次郎・浜中元吉・浜中七左衛門・浜中本次郎、明治中期御神燈に浜中熊吉・浜中惣右衛門・浜中久蔵・浜中新左衛門・浜中種吉・浜中岩太郎・浜中万吉あり。

六　同郡上大久保村（浦和市）　美女木村徳祥寺文化十四年供養塔に上大久保村浜中武兵衛あり。一戸現存す。

七　同郡塚本村（浦和市）　神明社明治二十九年敷石碑に浜中彦次郎あり。三戸現存す。

八　新座郡片山村（新座市）　明治九年副戸長浜中甚造・文化十三年生あり。十一戸現存す。

九　入間郡入間川村（狭山市）　徳林寺宝永六年常夜燈に浜中市郎左衛門・浜中才兵衛・浜中清兵衛。明治三十五年飲食店浜中万吉あり。一戸現存す。

一〇　同郡上奥富村（狭山市）　梅宮神社前天保十二年敷石碑に上奥富村浜中彦右衛門。山崎文書に「安政四年梅宮神社再建帳、川原新田組浜中仙蔵・浜中彦右衛門・浜中代吉。慶応二年再建帳、川原新田組浜中喜右衛門」。明治二十五年入間川町地租額調に上奥富村浜中清蔵。明治三十二年白魚子織浜中清次郎・同浜中平五郎あり。五戸現存す。

一一　同郡川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に浜中喜三郎。福岡村水天宮明治三十三年碑に菓子製造業川越南町浜中喜三郎（清洋堂）あり。

一二　高麗郡栗坪村（日高市）　明治二十二年建具商浜中作治郎。現存無し。

一三　比企郡上小見野村（川島町）　光善寺安政六年庚申塔に浜中寿五郎・浜中森次郎あり。三戸現存す。

一四　同郡石橋村（東松山市）　明治十二年惣代人浜中光治郎。唐子神社忠魂碑に浜中熊蔵・浜中弥三郎・浜中伴次郎あり。四戸現存す。

一五　秩父郡白久村（荒川村）　当村出身の出稼衆浜中左京は鉢形落城後に帰農す。明和安永年間秩父郡記に白久村上郷名主浜中太左衛門。天明六年上田野村三上文書に白久村名主浜中太左衛門あり。十一戸現存す。

濱中　ハマナカ　新座に存す。

浜仲　ハマナカ　入間郡久米村（所沢市）水天宮明治四十一年碑に久米金山浜仲源次郎あり。二戸現存す。

浜永　ハマナガ　浦和に存す。

浜成　ハマナリ　忍城士にて、成田分限帳に「三十貫文・浜成勘左衛門、二十貫文・浜成孫九郎」あり。

浜西　ハマニシ　大宮、幸手、草加、騎西、狭山、所沢、上福岡等に存す。

濱西　ハマニシ　狭山、所沢等に存す。

浜根　ハマネ　川越に存す。鳥取県東伯郡北条町七戸あり。

浜埜　ハマノ　浦和、白岡、越谷に存す。

浜野　ハマノ　野は助詞にて、海族の集落を浜ノと称す。武蔵国では利根川流域に多く存す。○群馬県新田郡新田町二十戸、館林市三十三戸。○栃木県河内郡上三川町七十六戸。○茨城県北相馬郡藤代町三十戸、水海道市五十戸、結城市四十戸、下館市六十五戸。○東京都西多摩郡奥多摩町二十七戸。○鳥取県岩美郡岩美町二十七戸あり。

一　岩附城士の浜野氏　永禄三年関東幕注文に「岩付衆、家風・浜野修理亮・おもたかに鶴」。家風は太田美濃守資正の姻戚なり。北越軍談に「永禄六年国府台合戦に岩築勢の浜野は勇を振いて攻撃す。同年七月太田三楽斎資正は浜野修理亮を召連て宇都宮に赴く。太田源五郎氏資が家人浜野弥太郎」と見ゆ。武家雲箋に「永禄十二年八月二十九日、春日摂津守配下の浜野弥六郎に奉行職を命ず」。高麗文書（家伝史料）に「永禄中、きゃくいの次第、浜野弥六郎」と、資正の子梶原景政が常陸国柿岡城主となり従う。長井氏系図に「長井実吉（忍成田氏に属す。坂牧陣に於て十月十二日（天正年間）、浜野左七及び沼谷図書を討ち功あり）」と見ゆ。六項参照。また、風土記稿西多摩郡桧原村条に「元亀三年五月七日、浜野将監殿、立川藤左衛門殿、奉笠原藤左衛門尉（岩附奉行）」あり、奥多摩町の人なり。

二　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「十俵・浜野伝左衛門」あり。

三　葛飾郡松伏村　明治三十年人名録に宝珠院住職浜野盛山・天保十年生あり。五戸現存す。

四　同郡水角村（庄和町）　水角神社寛政三年庚申塔に浜野甚治郎・浜野定右衛門、天保三年庚申塔に浜野九十郎、明治三十五年碑に浜野藤助・浜野岩蔵あり。現存無し。

五　同郡幸手町　明治三十五年豆腐屋上州屋浜野粂吉あり。

六　埼玉郡上馬場村（八潮市）　浜野家伝書に「浜野弥平治藤原清忠（岩付太田氏の家臣、元亀元年三月二十四日没。妻浜野忠親次女）―浜野大学忠秀（弥市、元亀元年に上馬場村に土着し、寛永十二年三月四日没、八十八歳。妻浜野忠嗣次女）」。観音寺墓碑に「覚道明節信士・天正十七年九月二十六日」、岩附城で亡くなった浜野小太郎忠道の供養塔なり。浜野家文書に「上馬場村観音寺開山は当家産侶長清律師・天正十年生・明暦二年寂・歳七十五、長清律師は住祖忠秀の二男にして、始め浜野秀治郎と称せり。当村開発名主家祖浜野大学より四代名主弥七郎事茂兵衛・寛文九年建替、八世名主浜野弥右衛門忠見・明和五年修覆、十二代名主浜野弥左衛門忠房・嘉永七年修覆六十一歳」。浜野家不動明王像に「住祖浜野大学忠秀より十三世浜野弥右衛門忠義、十五世同姓弥左衛門忠敬・明治十四年七月造営」。西袋村観音堂安政三年筆子碑に上ババ浜野幸治郎・浜野弥右衛門。天満宮文久三年狛犬に浜野弥右衛門・浜野仙治郎、明治十年碑に浜野金之助。観音寺慶応二年供養塔に浜野五右衛門。明治五年文書に名主浜野弥右衛門、組頭浜野金之助、組頭浜野亦蔵、浜野徳太郎、浜野弥七、浜野大七.。明治九年戸長浜野弥右衛門・文化十四年生、副戸長浜野又蔵・天保十年生。上馬場村会議員浜野金之助・天保九年生、同浜野源治郎・嘉永五年生。天神社明治三十九年碑に浜野専治・浜野あい・浜野亀吉・浜野源治郎・浜野喜三郎・浜野倉太郎・浜野浜吉・浜野熊治郎・浜野たつ・浜野忠治郎あり。十戸現存す。

七　同郡西袋村（八潮市）　安政五年水神宮に浜野伊七・浜野藤七.。柳之宮村氷川社明治十九年絵馬に西袋村浜野音次郎・浜野房蔵。明治三十年人名録に浜野音次郎・嘉永二年生・地租二十円あり。一戸現存す。

八　同郡越ヶ谷宿　風土記稿越ヶ谷宿条に「御守殿蹟あり、慶長の頃よりの御殿なりしが、其後御林となり、当所の民小林藤左衛門、浜野藤蔵二人御林守たり」。明和四年浜野藤蔵由緒書に「御台様御用人支配、万寿姫君御侍浜野藤蔵。武州越ヶ谷町御殿地跡拝領仕候、由緒之儀申上候。権現様天正十八年御入国以後、就御鷹野武州新方領増林村に仮之御殿建候節より私先祖浜野藤右衛門儀御殿番被仰付慶長九年右殿越ヶ谷に御引移候、先祖浜野藤右衛門より三代相勤罷在候之所、明暦三年右御殿江戸城に御引成、其以後先祖浜野藤右衛門、右御殿跡被下置旨寛文年中被仰渡候由。先祖浜野平吉・川船極印改役相勤罷在候節、元禄八年御検地之砌、右御殿地跡之内に有之候雑木御用に御伐払に相成候」と見ゆ。越ヶ谷瓜の蔓（福井文書）に「天正より越ヶ谷町居付百姓十七家の内、浜野藤二郎。西名主浜野藤次郎天正以後落去之者にて、草創之名主に而、元禄年中藤右衛門と申相勤候処、倅藤五郎不届之義有之、役義御取放有之、其後浜野十次郎と申、江戸表に而御賄方下役相勤罷在候。浜野藤右衛門屋敷之義、退転後品々へ相渡る。浜野屋平七屋敷退転、四ツ目屋浜野次郎右衛門屋敷退転す。元禄八年検地、御殿番相勤申候浜野藤蔵屋敷、西名主屋敷浜野藤右衛門本家也、浜野屋平七屋敷、四ツ目屋浜野次郎右衛門屋敷」と見ゆ。本町浅間社延宝三年水鉢に浜野源介・浜野三郎兵衛・浜野吉兵衛。久伊豆社明治三十二年榛名碑に浜野市助・浜野定五郎。明治三十五年煙草商浜野留治郎・青物商浜野長次郎・呉服商浜野梅治郎・菓子商浜野定五郎あり。

九　同郡大沢町（越谷市）　香取社寛政元年御神燈に浜野忠右衛門あり。

一〇　同郡七左衛門村（越谷市）　観照院明治四年普門品に浜野廉蔵・浜野正庵。明治三十年所得税下調査簿に出羽村浜野藤四郎・明治四年生・反別十七町七反歩・地租二百二十五円あり。七戸現存す。

一一　同郡四条村（越谷市）　中島村稲荷社明治十三年御嶽碑に四条村浜野新五郎、明治二十五年御嶽碑に四条村浜野新二郎あり。五戸現存す。

一二　同郡小林村（越谷市）　香取社明治二十八年敷石碑に浜野米次郎・浜野金十郎・浜野平八・浜野伝吉・浜野吉郎兵衛・浜野七之助あり。二戸現存す。

一三　同郡大林村（越谷市）　香取社文政十年庚申塔に浜野忠五郎、天保六年庚申塔に浜野忠七・浜野忠右衛門・浜野忠五郎。鈎上村神明社元治元年碑に大林・浜野士彦あり。二戸現存す。

一四　同郡恩間村（越谷市）　野島村浄山寺文化十年供養塔に恩間村浜野藤左衛門・浜野与蔵・浜野秀蔵。香取社天保十年庚申塔に浜野与蔵、元治元年敷石碑に浜野重太郎・浜野忠兵衛・浜野幸治郎・浜野由蔵・浜野与吉あり。八戸現存す。

一五　同郡登戸村（越谷市）　登戸神社弘化二年水鉢に浜野徳左衛門。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に登戸村浜野武左衛門。明治九年副戸長浜野時蔵・天保十二年生、副戸長浜野富右衛門・文政五年生（私塾師匠、明治二十三年没）。明治三十年所得税下調査簿に蒲生村浜野佐次郎・反別十一町八反歩・地租百六十六円、浜野時蔵・反別八町五反歩・地租百十七円。明治三十年人名録に浜野武吉・嘉永五年生・地租二十八円あり。十四戸現存す。

一六　同郡向畑村（越谷市）　香取社安政二年御神燈に浜野八左衛門、明治四十年碑に浜野助四郎・浜野升松。明治三十年人名録に新方村収入役浜野又左衛門・安政三年生。上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡向畑浜野助四郎あり。八戸現存す。

一七　同郡大竹村（越谷市）　明治三十年人名録に浜野和三郎・嘉永元年生・地租四十五円あり。二戸現存す。

一八　同郡青柳村（草加市）　当村文政十三年供養塔に浜野三五郎・浜野倉吉・浜野定吉あり。十三戸現存す。

一九　同郡中曽根村（春日部市）　香取社天保二年御神燈に浜野庄三郎、天保三年水鉢に浜野庄八.。神明社明治十一年碑に浜野長左衛門あり。五戸現存す。

二〇　同郡下大増新田（春日部市）　増長村観秀院安政二年供養塔に下大増村浜野三次郎あり。一戸現存す。

二一　同郡黒谷村（岩槻市）　当村に此氏多く存す。当村元禄十四年庚申塔に浜野久兵衛。妙円寺享保七年六地蔵に当村浜野所右衛門。当村宝暦六年山王碑に浜野賀兵衛・浜野与四郎・浜野六三郎・浜野源五右衛門。光善院宝暦十二年庚申塔に新田組浜野四郎右衛門妻・浜野彦右衛門妻・浜野弥七妻・浜野左内母・浜野弥五左衛門娘・浜野善八妻・浜野源治郎母・浜野佐五兵衛妻・浜野甚左衛門妻、天保三年天神碑に浜野林次郎・浜野八十八・浜野清次郎・浜野酉次郎・浜野権次郎・浜野安次郎。久伊豆社天保二年水鉢に浜野市治郎・浜野仙蔵・浜野平之助・浜野文蔵・浜野新次郎・浜野彦左衛門・浜野市左衛門・浜野勝蔵。笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に黒谷村浜野与吉・浜野四郎右衛門（名主）。岩槻町久伊豆社文久三年御神燈に黒谷村浜野多門。明治九年戸長浜野四郎右衛門・文政十一年生、副戸長浜野喜太郎・文化十四年生。明治三十年人名録に浜野甚四郎・安政元年生あり。

二二　同郡笹久保村（岩槻市）　八幡社嘉永元年幟碑に浜野亀次郎・浜野定五郎・浜野久兵衛・浜野浅五郎・浜野辰五郎・浜野弥五郎。地蔵院嘉永四年供養塔に浜野弥五郎・浜野定五郎・浜野浅五郎・浜野貞治郎。八幡社安政二年御神燈に浜野貞次郎・浜野米五郎。明治三十年人名録に酒肥料商浜野新蔵・嘉永二年生・地租三十五円あり。十三戸現存す。

二三　同郡鈎上新田（岩槻市）　保寿院延宝二年供養塔に浜野粂右衛門・浜野長吉・浜野久蔵。岩槻町秋葉社天保三年狛犬に鈎上新田浜野藤蔵。笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に鈎上新田浜野粂一郎。保寿院元治元年水鉢に浜野嘉助・浜野伝吉・浜野粂右衛門。明治九年副戸長浜野栄次郎・天保二年生あり。九戸現存す。

二四　同郡高曽根村（岩槻市）　稲荷社文化十一年御神燈に浜野勇吉・浜野富五郎・浜野仲右衛門・浜野金蔵・浜野文蔵、文化十四年天神碑に浜野宇之助。薬師堂安政二年庚申塔に当所・浜野半右衛門・浜野弥五右衛門・浜野寅蔵・浜野辰五郎・浜野惣助・浜野新右衛門。明治三十年人名録に浜野幸蔵・弘化三年生・地租三十八円、浜野藤七・弘化元年生・地租三十円、浜野弥五右衛門・天保十年生・地租十六円あり。九戸現存す。

二五　同郡飯塚村（岩槻市）　法華寺元禄三年庚申塔に浜野次郎兵衛。飯塚神社安政三年天神碑に浜野半蔵。慶応四年清水文書に浜野佐吉あり。一戸現存す。

二六　同郡孫重郎村（岩槻市）　笹久保村地蔵院嘉永四年供養塔に孫重郎村浜野半右衛門・浜野兵内・浜野元助あり。現存無し。

二七　同郡下新井村（岩槻市）　玉蔵院天保十五年供養塔に浜野栗次郎・浜野清左衛門あり。一戸現存す。

二八　同郡尾ヶ崎村（岩槻市）　嘉永元年名頭覚帳に「○浜野栄蔵―寅之介―五郎左衛門―熊蔵―千松。○浜野伊左衛門―万右衛門―清次郎―安左衛門―助八―円治―伊之介―久五郎。○浜野弥五左衛門―平右衛門―新八―弥七―寅松、弟岩次郎。○浜野定右衛門―権兵衛―権次郎―弥吉―要助―権次郎―慶五郎。○浜野由右衛門―七之助―熊次郎（新平へ入る）。栗原新平屋敷へ入るか」。鈴木条参照。光秀寺正徳四年供養塔に浜野伊左衛門あり。九戸現存す。

二九　同郡末田村（岩槻市）　鷲宮社天保十年狛犬に外野組浜野新治郎・浜野吉五郎あり。六戸現存す。

三〇　同郡三箇村（菖蒲町）　当村文化八年庚申塔に浜野半次郎あり。四戸現存す。

三一　同郡騎西町　浄楽寺寛政三年供養塔に浜野荘八あり。

三二　同郡道地村（騎西町）　成就院文化四年常夜燈に浜野重郎右衛門。稲荷社慶応二年幟碑に浜野新八・浜野重右衛門・浜野幸吉あり。二戸存す。

三三　同郡下谷村（加須市）　堤根村永徳寺明治四年筆子碑にシモヤ浜野連次郎あり。現存無し。

三四　同郡町谷村（羽生市）　当村文化十一年地蔵尊に町谷村本田八幡川浜野吉右衛門・浜野栄伯あり。二戸現存す。

三五　同郡下手子林村（羽生市）　豊武神社安永八年毘沙門天碑に浜野吉衛門あり。現存無し。

三六　同郡今井村（熊谷市）　明治三年組頭浜野半次郎あり。六戸現存す。

三七　足立郡草加宿　市神祠官筆学入門控に安政三年・四丁目薩摩屋浜野兼吉。万延元年武術英名録に中山派柳剛流草加宿浜野兼蔵。明治三十五年荒物商薩摩屋浜野松五郎あり。

三八　同郡中曽根村（草加市）　明治九年戸長浜野栄次郎・天保七年生あり。五戸現存す。

三九　同郡川口町　善光寺嘉永六年庚申塔に当所浜野長□衛門あり。

四〇　同郡芝村（川口市）　慈星院明治十年碑に浜野善六・浜野善兵衛あり。

四一　同郡西新井宿村（川口市）　立野村二宮神社文政十三年鳥居碑に西新井宿村浜野権平。氷川社明治十年小御嶽碑に西新井宿浜野新八.。宝蔵寺明治十七年弘法大師碑に西新井宿浜野紋平あり。三戸現存す。

四二　同郡代山村（浦和市）　成田不動尊安政三年普門品に浜野重右衛門、明治四十年碑に代山浜野十右衛門あり。二戸現存す。

四三　同郡与野町　安政六年中村文書に与野町浜野竹次郎。一山神社明治三十五年碑に当町浜野平蔵あり。

四四　同郡大宮町　明治三十五年料理店浜野幾太郎・同浜野政次郎・菓子商浜野良吉あり。

四五　同郡大針村（伊奈町）　浜野皖家宝篋印塔に「応永二十年十一月十一日、妙秀禅尼」あり。是以前の遥か時代以来の土着なり。観音寺元文五年地蔵尊に浜野藤左衛門・浜野又衛門・浜野主□・浜野藤衛門・浜野伝衛門・浜野伝左衛門・浜野忠衛門。倉田村明星院文政六年新西国塔に大針村浜野瀬兵衛。小貝戸村清光寺文政十二年筆子碑に大針村浜野吉五郎。観音寺天保二年地蔵尊に浜野由右衛門。小針内宿村東光院天保九年筆子碑に大針村浜野伊右衛門。明治九年戸長浜野米太郎・嘉永五年生、副戸長浜野伊右衛門・天保十三年生、副戸長浜野勇右衛門・文化十三年生。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北足立郡大針村浜野伊右衛門・浜野由右衛門。明治二十九年地租二百五十円以上大地主名簿に小針村浜野伊右衛門。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年農業浜野平次郎・明治元年生・国税七百九十一円・県下九十六位、大正十四年浜野平次郎・国税千二百四十一円・県下百四十一位。大正十二年大地主名簿に小針村浜野慎一・田二十九町九反歩・畑二十二町三反歩所有あり。十八戸現存す。

四六　同郡原市町（上尾市）　明治三十五年質古物商浜野小源次・米穀問屋浜野弥三郎あり。

四七　同郡平方村（上尾市）　馬蹄寺寛政五年馬頭尊に下宿浜野又兵衛。八枝神社弘化三年水鉢に当村浜野栄吉。橘神社享和四年水鉢に浜野仁左衛門・浜野久七.、安政四年御神燈に浜野栄吉、明治十一年御神燈に浜野久七・浜野仁三郎・浜野今五郎、明治二十四年御神燈に平方村浜野重蔵。明治七年船積問屋浜野久七・但文政五年八月創立あり。八戸現存す。

四八　同郡下谷村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に南下谷村浜野杢右衛門あり。現存無し。

四九　同郡上常光村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に上常光村浜野常右衛門・浜野勘右衛門・浜野元右衛門・浜野新右衛門・浜野半兵衛・浜野平右衛門・浜野弥吉・浜野清兵衛・浜野丑五郎・浜野利右衛門・浜野万次郎・浜野半三郎弟半内・浜野清助。常光神社寛政十年庚申塔に常光村浜野利右衛門・浜野清兵衛・浜野市右衛門・浜野四郎右衛門・浜野宗右衛門あり。現存無し。

五〇　入間郡所沢町　明治十五年北広堂碑名簿に浜野兼吉あり。

五一　同郡古谷上村（川越市）　実相寺文久三年敷石碑に浜野平次郎。明治九年副戸長浜野平十郎・弘化四年生。善仲寺明治二十七年敷石供養塔に浜野平吉・浜野常次郎・浜野広吉・浜野与吉・浜野平十郎あり。九戸現存す。

五二　比企郡鳥羽井村（川島町）　当村嘉永三年庚申塔に浜野金六あり。現存無し。

五三　同郡番匠村（都幾川村）　平村滝ノ鼻公園明治四十四年馬頭尊に番匠浜野幾三・浜野久三あり。六戸現存す。

五四　榛沢郡深谷宿　智形神社の琴平社碑に「元禄元年三月下町浜野金太夫奉納。元治二年下町百姓代浜野重兵衛。昭和十一年本住町米屋浜野金太夫子孫重兵衛・孫粂重、浜野清作長子浜野金重」。同社万延二年御神燈に当街氏子浜野重兵衛。中仙道東入口稲荷町明治初年常夜燈に浜野忠衛あり。

五五　同郡田谷村（深谷市）　明治四年備前堀史料に田谷村組頭浜野熊太郎。上野台村八幡社明治五年筆子碑に田谷村浜野五郎蔵・浜野十次郎。明治九年副戸長浜野源三郎・嘉永四年生。上州榛名神社明治四十年御神燈に武蔵国深谷町田谷・浜野唯一・浜野安五郎・浜野幾太郎・浜野太十郎・浜野五郎蔵・浜野兼吉・浜野茂吉・浜野代八.。原郷楡山神社明治四十二年碑に田谷浜野幾太郎・浜野唯一.。深谷町会議員に農業浜野茂吉・慶応元年生、農業浜野将寿・明治二十五年生、農業浜野宗近・明治二十七年生あり。十一戸現存す。

五六　同郡内ヶ島村（深谷市）　永光寺明治四十年碑に浜野豊作あり。現存無し。

五七　同郡武蔵野村（花園町）　明治九年富田文書に飯塚猿喰土村浜野市之丞・浜野延治郎あり。二戸現存す。

五八　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「大宮町・浜野智人・七百四十八円・三百四十八円、平方村（上尾市）・浜野清吉・九円・三十二円、小針村（伊奈町）・浜野平次郎・八百七十八円、越ヶ谷町・浜野梅次郎・十九円・三十円、蒲生村（越谷市）・浜野門之助・十一円、古谷村（川越市）・浜野卯吉・四百十四円、浜野四郎次・百七十九円」あり。

濱野　ハマノ　各市町村に存す。

浜野井　ハマノイ　所沢に存す。

浜之上　ハマノウエ　蕨、坂戸に存す。

浜ノ園　ハマノゾノ　上尾に存す。

浜場　ハマバ　上尾、越谷、本庄に存す。

浜畑　ハマハタ　大宮、川口、蓮田、新座、所沢、日高、春日部、吉川等に存す。宮城県桃生郡河北町十戸あり。

濱畑　ハマハタ　川越に存す。

浜端　ハマハタ　川口、浦和、川越、坂戸、大井等に存す。青森県下北郡大間町八戸、東通村九戸あり。

濱端　ハマハタ　上尾に存す。

浜林　ハマバヤシ　岩槻、春日部、三郷、朝霞、上福岡、所沢、富士見に存す。

濱比嘉　ハマヒカ　川口に存す。

浜平　ハマヒラ　浦和、志木、大井等に存す。ハマダイラ参照。

濱平　ハマヒラ　浦和に存す。

浜福　ハマフク　小川に存す。

浜渕　ハマブチ　大宮、春日部、越谷、吉川等に存す。

浜辺　ハマベ　各市町村に存す。○新潟県佐渡郡相川町三十四戸。○青森県上北郡横浜町十四戸、下北郡風間浦村十四戸。○鳥取県西伯郡淀江町十二戸、気高郡気高町三十六戸あり。

濱辺　ハマベ　春日部に存す。

浜部　ハマベ　大宮、戸田、春日部、秩父等に存す。鳥取県岩美郡岩美町六戸、鳥取市十六戸あり。

濱部　ハマベ　大宮に存す。

浜松　ハママツ　各市町村に存す。○秋田県大館市十九戸。○島根県江津市十八戸あり。

一　忍城士の浜松氏　成田分限帳に「十三貫文・浜松弥七郎」あり。

濱松　ハママツ　大宮、上尾、与野、越谷等に存す。

濱見　ハマミ　朝霞に存す。

浜道　ハマミチ　川口、草加、八潮、羽生等に存す。岩手県九戸郡種市町二十七戸、青森県三戸郡階上町二十五戸あり。

濱道　ハマミチ　蕨、大宮等に存す。

浜水　ハマミヅ　三郷に存す。

濱湊　ハマミナト　狭山に存す。

浜宮　ハマミヤ　東松山に存す。

浜村　ハマムラ　各市町村に存す。○長野県上田市三十一戸。○島根県簸川郡佐田町十二戸、大原郡加茂町十七戸、出雲市九十戸あり。

濱村　ハマムラ　朝霞、狭山、飯能、春日部、三郷等に存す。

浜室　ハマムロ　大宮に存す。

浜元　ハマモト　川口、上尾、三郷、吉川、鷲宮、所沢、東松山等に存す。

濱元　ハマモト　川口、志木、新座、越谷、毛呂山、熊谷等に存す。

浜本　ハマモト　各市町村に存す。○新潟県佐渡郡相川町十五戸。○鳥取県東伯郡北条町二十六戸、岩美郡福部村二十九戸、気高郡気高町四十六戸、鳥取市六十四戸。○島根県浜田市三十五戸あり。

濱本　ハマモト　各市町村に存す。

浜守　ハマモリ　川口、岩槻、八潮、所沢等に存す。岩手県大船渡市十五戸あり。

浜盛　ハマモリ　越谷に存す。

浜谷　ハマヤ　各市町村に存す。青森県下北郡大畑町十四戸、川内町十六戸、三戸郡階上町三十五戸、東津軽郡三厩村十三戸あり。

濱谷　ハマヤ　蕨に存す。

浜屋　ハマヤ　各市町村に存す。島根県平田市二十二戸あり。

濱屋　ハマヤ　鷲宮に存す。

浜安　ハマヤス　新座に存す。

浜山　ハマヤマ　浦和、春日部、八潮、入間、所沢、行田等に存す。青森県西津軽郡木造町二十八戸あり。

浜吉　ハマヨシ　新座、幸手等に存す。

浜寄　ハマヨリ　狭山、大井等に存す。

浜里　ハマリ　春日部に存す。

浜脇　ハマワキ　蓮田、草加、川越等に存す。

浜渡　ハマワタリ　三郷、富士見等に存す。岩手県九戸郡種市町八戸あり。

濱渡　ハマワタリ　戸田に存す。

羽村　ハムラ　久喜、草加、栗橋、入間、狭山、所沢、飯能等に存す。東京都羽村市百戸あり。

波村　ハムラ　浦和に存す。

端村　ハムラ　加須に存す。

羽室　ハムロ　春日部、上福岡等に存す。

葉室　ハムロ　三郷、上福岡等に存す。

馬面　バメン　所沢に存す。

羽毛田　ハモダ　大宮、行田等に存す。

羽持　ハモチ　川口、三郷、鷲宮、三芳等に存す。茨城県西茨城郡岩間町三十戸あり。

羽生津　ハモツ　草加に存す。

葉本　ハモト　草加に存す。

鱧屋　ハモヤ　川口に存す。

羽森　ハモリ　北川辺に存す。

羽諸　ハモロ　埼玉郡多門寺村（加須市）観音寺延宝五年碑に羽諸多左衛門あり。一戸現存す。

羽矢　ハヤ　川口、入間等に存す。

早足　ハヤアシ　三郷、坂戸等に存す。

早石　ハヤイシ　浦和に存す。

早尾　ハヤオ　大宮、上尾、戸田に存す。

早岡　ハヤオカ　与野に存す。

早貸　ハヤカシ　川口、川越等に存す。

早柏　ハヤカシ　川本に存す。

早狩　ハヤカリ　川口、越谷、上福岡、坂戸、松伏等に存す。青森県八戸市四十戸あり。

速川　ハヤカワ　浦和、新座、狭山等に存す。

早川　ハヤカワ　ソウカワの転訛にて、金（そ）は鉄（くろがね）の意味。新羅の首都慶州の古名は金城（ソウル、ソフル）で鉄の産出する都の意味。鉄分を含んだ土砂は急流によって流され砂鉄だけが水辺の一隅に沈殿した。砂鉄は探鉱や採掘を必要としないで、だれでも採集でき、女子供でも採取の工人となれる。砂鉄の採集される川を早川（ソカワ、ソウカワ）と称し、是を利用した鉱山鍛冶集団は早川（はやかわ）を苗字に用いる。此氏は鉱山地帯の房総国、甲斐国、越後国等に多く存す。武蔵国では利根川流域に存す。埼玉郡台村字早川・三ヶ村字早川（菖蒲町）は古の村名にて、同所天保二年庚申塔に早川野と見ゆ。○群馬県邑楽郡邑楽町二十四戸、太田市五十戸、桐生市六十戸、館林市九十戸。○栃木県安蘇郡田沼町四十七戸、佐野市五十二戸、足利市二百三十戸。○千葉県山武郡横芝町百戸、安房郡鋸南町三十七戸、白浜町九十五戸、千倉町五十八戸、館山市七十戸、市原市七十戸。○山梨県東八代郡石和町三十六戸、一宮町五十四戸、北巨摩郡須玉町四十二戸、中巨摩郡田富町二十三戸、南巨摩郡南部町三十五戸、山梨市六十戸、富士吉田市九十戸。○長野県上水内郡豊野町二十四戸、松本市九十戸。○新潟県西蒲原郡西川町二十二戸、分水町四十戸、吉田町三十四戸、三島郡寺泊町四十九戸、和島村百五戸、東頸城郡大島村二十五戸、新津市五十八戸、燕市六十七戸、長岡市百三十戸、上越市七十戸。○福島県田村郡常葉町二十七戸、相馬郡新北町二十三戸、双葉郡楢葉町三十戸、郡山市八十戸あり。

一　忍城士の早川氏　成田分限帳に「五十貫文・早川伝左衛門、二十五貫文・早川伝右衛門」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　文化四年忍藩分限帳に「表御門番・十五俵二人扶持・早川大七」あり。

三　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「組外・五石二人扶持・早川謹治、鉄砲之者小頭・六石余・早川友右衛門」。明治四年忍藩士族名簿に「六石四人扶持・早川満平、同高・早川幸信、五石二人扶持・早川謹治、同高・早川清太郎、四石余二人扶持・早川松次郎」。明治九年成田町副戸長早川謹治・天保元年生あり。

四　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五十石・本国越後生国武蔵・早川五郎左衛門・三十九歳、二男伊勢守信定臣・五両二人扶持・本国紀伊生国三河・早川市兵衛・三十三歳、同高・本国武蔵生国同・早川九左衛門・二十六歳」あり。

五　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御城代・千石・越前勝山取立・早川主膳」。万延二年川越藩分限帳に「御寄合・七百石・早川鉄三郎、御鑓奉行・二十五人扶持・早川鉄兵衛、前若様御小姓・早川良助」あり。

六　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御馬廻・百石・亡父備・早川品右衛門・三十九歳、御馬廻・十四人扶持・亡父安兵衛・早川良之助・十八歳」。

七　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「十二石三人扶持・早川四方右衛門」あり。

八　葛飾郡三輪野江村（吉川市）　三輪之江神社明治二十八年碑に早川豊次郎あり。現存無し。

九　同郡金崎村（庄和町）　天神社寛政四年庚申塔に下金崎邑早川新蔵。道善寺文化七年普門品に早川清吉あり。二戸現存す。

一〇　同郡樋堀村（春日部市）　白山社天保十一年水鉢に早川粂蔵・早川磯吉、慶応四年幟碑に早川関太郎・早川小左衛門・早川粂左衛門・早川八郎右衛門・早川七蔵。明治九年副戸長早川小左衛門・天保八年生。明治三十年人名録に白木綿商早川清左衛門・明治四年生・地租三十二円、早川喜太郎・安政六年生・地租二十一円あり。十戸現存す。

一一　同郡高柳村（栗橋町）　香取社明治十四年幟碑に早川栄蔵。八幡社明治三十九年碑に高柳新田村早川栄助あり。一戸現存す。

一二　埼玉郡二丁目村（八潮市）　字若柳嘉永二年供養塔に早川太郎右衛門。明治十九年村会議員早川伝蔵あり。現存無し。

一三　同郡岩槻町　久伊豆社嘉永元年御神燈に大工町早川儀五郎。明治三十五年に早川兼吉あり。

一四　同郡粕壁町　春日部八幡社文化十三年狛犬に早川与兵衛。八坂社文政十一年庚申塔に早川源次郎。上間久里村香取社天保十二年御神燈に粕壁宿早川卯吉。明治二十一年神道無念流粕壁宿早川亀吉。東八幡社明治三十四年碑に早川清次郎。明治三十五年麦米商早川助三郎あり。

一五　同郡馬込村（蓮田市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

一六　同郡閏戸村（蓮田市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

一七　同郡白岡村　八幡宮貞享四年厨子に名主早川新助政重、寛延二年棟札に奉行早川次郎左衛門春房、嘉永二年御神燈に早川丑蔵、明治十二年庚申塔に早川虎蔵・早川久右衛門、明治二十六年成田山碑に早川要蔵・早川寅蔵あり。十一戸現存す。

一八　同郡下野田村（白岡町）　彦兵衛新田村最勝寺享和元年庚申塔に野田村早川与左衛門あり。一戸現存す。

一九　同郡江面村（久喜市）　久伊豆社年不詳に早川銀右衛門。天保十一年連名帳に早川彦左衛門・早川太次郎・早川弥七あり。二戸現存す。

二〇　同郡除堀村（久喜市）　明治九年副戸長早川重次郎・天保六年生あり。八戸現存す。

二一　同郡樋ノ口村（久喜市）　当村に此氏多く存す。風土記稿樋ノ口村条に「旧家者岡安氏の先祖は当所に土着し、薗部内膳、借浦左近、早川主計、塚田主水といへるものと此地を開きしと云ふ。此四人の子孫は詳ならず」と見ゆ。正楽寺安永八年鐘銘に早川多右衛門・早川喜左衛門。明治四年議定書に早川茂介・早川とら・早川祐次郎・早川藤次郎・早川儀平・早川清五郎・早川酉蔵・早川清蔵・早川源蔵・組頭早川金太郎・組頭早川弥八あり。

二二　同郡道地村（騎西町）　稲荷社慶応二年多賀社碑に道地村早川岩□あり。現存無し。

二三　同郡加須町　明治三十五年竹木仲買商早川伊之助あり。

二四　同郡三俣村（加須市）　諏訪社文化四年水鉢に下新田早川平右衛門・早川権左衛門、明治二十一年伊勢講碑に早川伊之助あり。現存無し。

二五　同郡平永村（加須市）　薬師堂天保十四年廻国塔に下之村早川万次郎。当村嘉永七年二十三夜塔に本田耕地早川万次郎・早川佐十郎、安政六年巡拝塔に平永村早川佐十郎・享年七十二.。明治五年下之村百姓代早川三左衛門あり。一戸現存す。

二六　同郡下谷村（加須市）　当村安永三年地蔵尊に早川彦四郎。生善院安永三年供養塔に早川玄琢、文久二年巡拝塔に早川彦右衛門。羽黒社文化七年月待塔に早川長太夫・早川彦□郎。正能村諏訪社嘉永五年富士講碑に下谷村早川平七・早川松之助。八幡社慶応三年幟碑に沖屋早川彦四郎、明治十八年水鉢に早川金蔵あり。八戸現存す。

二七　同郡羽生町　明治五年畳職早川幸吉。明治三十五年畳職早川和三郎。

二八　同郡三田ヶ谷村（羽生市）　蓮台寺延享二年鐘銘に早川小兵衛。大越村鷲尾神社嘉永七年敷石供養塔に下三田ヶ谷村早川小平。八幡社安政六年御嶽碑に早川友右衛門あり。一戸現存す。

二九　同郡常木村（羽生市）　常木神社宝暦十二年水鉢に早川瀬左衛門あり。六戸現存す。

三〇　同郡加羽ヶ崎村（羽生市）　八幡社寛政十二年天満宮碑に早川宮右衛門・早川幸之助・早川茂八あり。十戸現存す。

三一　同郡上川俣村（羽生市）　名村渋井氏家譜に「磯豊前義直（羽生城主木戸伊豆守家老也。上川俣村に住居名主役相勤、子細有之、早川茂右衛門名主役相勤、依之小須賀村開発名主に成る）」と。安永年間利根川河岸絵図（倉賀野町須賀文書）に竜蔵河岸船問屋早川喜右衛門。大日堂寛政六年延命尊に村役人早川茂右衛門。本川俣村千手院文政四年筆子碑に早川三右衛門。天満宮文久元年天神碑に早川義右衛門・早川伊三郎・早川六郎次。慶応二年早川文書に問屋早川佐源次。明治七年船積問屋上川俣村早川喜三郎・但安永三年十一月創立。明治九年副戸長早川茂右衛門・文政十一年生（名主）。天満宮明治二十五年碑に早川代七郎あり。七戸現存す。

三二　同郡下岩瀬村（羽生市）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

三三　足立郡大宮町　明治三十五年青物商早川音五郎あり。

三四　同郡丸ヶ崎村（大宮市）　地頭大久保九郎兵衛陣屋蹟に旧家早川氏あり、屋号「お陣屋の家」と呼ばれる。一戸現存す。

三五　同郡小深作村（大宮市）　神明社明治十九年御神燈に早川藤五郎あり。四戸現存す。

三六　同郡上尾村　当村元禄七年庚申塔に早川六兵衛。字二ツ宮氷川社安政二年御神燈に陣屋早川佐吉あり。

三七　入間郡上富村（三芳町）　慶応二年武田文書に早川権右衛門。明治七年成田山月参護摩講に早川代次郎。中富村神明社明治三十九年碑に上富早川福太郎・早川兼作あり。十四戸現存す。

三八　同郡川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「法道・大仙波ノ早川・卯年七月。妙相・仙波ノ早川子・丑年六月。浄仙・早川・丑年十二月」、江戸初期なり。御嶽社明治三十年碑に早川金十郎。氷川社明治三十三年玉垣碑に早川金助あり。

三九　同郡下松原村（川越市）　上富村多福寺嘉永四年碑に下松原新田早川源太郎あり。現存無し。

四〇　同郡越生町　明治三十五年菓子製造吉田屋早川吉蔵あり。

四一　高麗郡吉田村（川越市）　万久院文政二年碑に吉田村早川織右衛門・早川重五郎あり。六戸現存す。

四二　同郡鯨井村（川越市）　明治九年副戸長早川兼吉・天保七年生。八坂社明治三十年碑に鯨井早川兼吉。明治二十二年埼玉勧業会員早川熊吉あり。十戸現存す。

四三　同郡柏原村（狭山市）　当村に此氏多く存す。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、柏原村早川喜右衛門・早川権左衛門・早川安左衛門・早川仲左衛門・早川彦左衛門・柏原本宿早川忠右衛門」。長源寺慶応元年普門品に早川左五兵衛・早川万之丞・早川幸助・早川安右衛門。白鬚社明治二十八年碑に柏原村早川豊次郎、明治四十三年御神燈に早川菊太郎あり。

四四　同郡飯能町　明治十四年文書に早川初五郎・早川舟平。諏訪八幡社明治四十三年御神燈に宮本町早川精一郎あり。

四五　比企郡松山町　明治三十五年薪炭穀商中川屋早川新三郎あり。

四六　同郡杉山村（嵐山町）　広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑に杉山村早川徳次郎。八宮社明治十六年筆子碑に当村早川嘉重郎・早川歌次郎・早川浪吉あり。六戸現存す。

四七　同郡伊古村（滑川町）　当村享和三年庚申塔に下伊子村早川元右衛門。明治九年副戸長早川庄右衛門・文政八年生あり。十戸現存す。

四八　同郡中尾村（滑川町）　羽尾村明治二十七年毛受重微筆子碑に中尾早川藤三郎あり。現存無し。

四九　同郡小川町　明治三十五年小間物商近江屋早川平蔵あり。

五〇　大里郡広瀬村（熊谷市）　文久元年秋山翁碑に早川巳五郎。富士浅間社慶応三年小御岳碑に当所早川□太郎・早川米吉あり。四戸現存す。

五一　本庄町　明治四年諸井文書に台町早川藤吉あり。

五二　児玉町　明治三十五年に早川藤吉あり。前項と同人か。

五三　秩父町　明治三十五年鳥屋早川清八あり。

五四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・早川喜太郎・三十七円・七十円、三輪野江村（吉川市）・早川東一郎・十二円、越ヶ谷町・早川三郎・十五円、江面村（久喜市）・早川清次郎・二十七円、持田村（行田市）・早川徳次郎・二十円・五十五円、川越市・早川茂八・四百二十六円、早川重平・二百四十九円、早川金十郎・十三円、三芳村・早川高次郎・十四円、早川辰五郎・十一円、大河村（小川町）・早川倉蔵・三百六十一円、熊谷町・早川七右衛門・十一円、秩父町・早川梅次郎・十一円・十一円」あり。

早河　ハヤカワ　春日部、狭山等に存す。

早木　ハヤキ　川口に存す。

早坂　ハヤサカ　坂（ばん）は蕃（ばん）の佳字にて渡来人を称す。また、蕃（えびす）は蝦夷（えびす）にて、東北の早坂氏は鉱山鍛冶師蝦夷族か。早川、坂（さか）条参照。各市町村に存す。○山形県西村山郡河北町十九戸、西川町三十二戸、北村山郡大石田町五十戸、最上郡最上町二十九戸、大蔵村六十七戸、鮭川村十七戸、戸沢村百六戸、東根市五十四戸、新庄市百七十戸、酒田市八十戸、山形市百八十戸。○宮城県亘理郡山元町二十戸、亘理町十六戸、黒川郡大和町百五十戸、富谷町六十三戸、大衡村五十五戸、加美郡小野田町百六十四戸、中新田町五十八戸、宮崎町九十戸、色麻町百六十戸、志田郡鹿島台町二十八戸、三本木町七十五戸、遠田郡小牛田町二十四戸、栗原郡若柳町三十戸、古川市二百戸。○岩手県岩手郡岩手町五十三戸あり。

早阪　ハヤサカ　入間に存す。

早崎　ハヤサキ　各市町村に存す。

一　忍城士の早崎氏　成田分限帳に「十三貫文・早崎伊平次」あり。

早咲　ハヤサキ　寄居に存す。

早沢　ハヤサワ　川口に存す。

早澤　ハヤサワ　川口に存す。

林　ハヤシ　和名抄に河内国志紀郡拝志郷あり、延喜式神名帳に志紀郡伴林氏神社を載す。大阪府藤井寺市林三丁目の伴林氏（ともばやしうじ）神社なり。伴は大伴の略で祭神は大伴氏の祖・天押日命（あめのおしひのみこと）・道臣命（みちのおみのみこと）を祀っているが後世の附会にて大伴氏は無関係なり。平城宮出土木簡に「志紀郡少林郷」と見え、拝志郷沢田村に小林八幡神社がある。林郷は小林（少林）郷とも称し、小は胡（こ）の佳字で胡（えびす）・蕃（えびす）にて渡来人を称す。渡来人林族の集落を蕃林（ばんばやし）と称し、伴林（ばんばやし）の佳字を用いる。東大寺奴婢帳・天平勝宝三年奴婢見来帳に「河内国志紀郡林郷戸主上部古里・戸口上部白麻呂」と見ゆ。百済の五部制は高句麗の制にならったもので、王城の泗沘城（忠清南道扶余）、中方（中部）の古沙城（全羅北道古阜）、東方（上部）の得安城（忠清南道恩津）、南方（前部）の久知下城（全羅南道長城）、西方（下部）の刀先城（未詳）、北方（後部）の熊津城（忠清南道公州）である。神護景雲元年正月紀に「上部木」と見ゆ、林氏は百済上部（じょうほう）の恩津地方出身の木（もく）氏なり。随書・百済伝に「国中大姓有八族。沙氏、燕氏、刕氏、真氏、解氏、国氏、木氏、苗氏」とあり。八氏は五世紀頃の百済国の支配層なり。百済王十七代直支王（文周王）の後裔と称す。姓氏録・河内諸蕃に「林連、百済国直支王より出づる也」。左京諸蕃に「林連、百済国人木貴公の後也」。摂津国諸蕃に「林史、林連と同祖・百済国人木貴の後也」。右京諸蕃に「林、林連と同祖・百済国人木貴の後也」。右京諸蕃に「大石林、林連と同祖・百済国人木貴の後也」とあり。また、百済族武内宿祢後裔に林臣あり、蘇我氏も同族にて木氏なり。延暦六年紀に「河内国志紀郡人林臣海主、野守等、臣を改めて朝臣を賜ふ」。姓氏録・河内皇別に「林朝臣、武内宿祢の後也」と見ゆ。皇別は仮冒なり。百済族木氏渡来地の林村及び林氏は西国に多く、小林村及び小林氏は東国に多い。入間郡林村（所沢市）あり。幡羅郡玉井村字林は古の村名にて、三熊神社安永八年庚申塔に林講中と見ゆ。此氏は房総国、信濃国等に多く存す。○群馬県利根郡月夜野町九十三戸、水上町七十四戸、昭和村百三十戸、新治村二百戸、勢多郡富士見村五十四戸、沼田市二百五十戸、桐生市百二十戸、太田市百十戸、高崎市百九十戸、前橋市二百八十戸。○茨城県東茨城郡茨城町九十戸、鹿島郡神栖町五十五戸、波崎町五十戸、日立市百戸、水戸市百四十戸。○千葉県香取郡小見川町八十戸、多古町八十三戸、東庄町百五十七戸、干潟町八十戸、山田町百六十七戸、印旛郡白井町七十五戸、匝瑳郡野栄町百八戸、光町八十戸、安房郡白浜町五十二戸、旭市三百戸、佐原市百四十戸、銚子市二百戸、八日市場市三百戸、市原市三百二十戸、茂原市二百十戸。○山梨県甲府市百四十戸。○長野県北佐久郡軽井沢町八十戸、南佐久郡川上町七十六戸、諏訪郡下諏訪町百六十七戸、上伊那郡辰野町百五十戸、箕輪町七十戸、下伊那郡高森町七十七戸、松川町八十四戸、南安曇郡穂高町七十八戸、小諸市百戸、岡谷市四百七十戸、諏訪市百五十戸、伊那市百三十戸、駒ヶ根市百七十戸、飯田市六百三十戸、塩尻市百三十戸、上田市二百八十戸、松本市三百三十戸。○新潟県南魚沼郡塩沢町百七十戸、六日町七十四戸、湯沢町八十戸、五泉市百戸、長岡市二百戸。○福島県双葉郡富岡町五十八戸、いわき市百五十戸。○山形県西村山郡大江町九十戸、山形市百二十戸。○鳥取県八頭郡船岡町六十二戸、智頭町五十三戸、米子市百戸、鳥取市二百五十戸。○島根県大田市百四十八戸、松江市百二十戸あり。

一　大伴直後裔の林氏　古代氏族系譜集成に「武蔵国造。伴直（林、武蔵人）」と見ゆ。大伴直を略して伴直（とものあたえ）と称し、大伴氏族林氏を管掌したのが伴直である。入間郡三ヶ島郷林村（所沢市）より起る林氏であろうが、当地方には大伴直は見えず。宝亀八年六月五日紀に「武蔵国入麻郡人大伴部直赤男、神護景雲三年を以って、西大寺に墾田四十町、林六十町を献ず」と。奈良市西大寺所領荘園注文案に「建久二年五月十九日、武蔵国入間郡安堵郷栗生村、田四十町、林六十町」と、榛原庄安堵郷は入間川村（狭山市）附近なり。伴直は大伴部直に附会しており場所も違う。

二　丹生姓林氏　秩父志に「大宮郷十七番林寺は字桜木に在り、前所は丹生氏なりしが、今は社家林氏これを奉ず。寺伝曰、往古東国に壬生良門なる者あり、剛強无慈にして殺害に遭う者多くを、其臣林太郎定元・是を諌しに遂に浪人して夫妻共に此に卒す。後孤子を僧空照の撫育して夫妻の為に宮地の里に堂一宇を立て林寺と号すと云。諏訪社境内にあり、神職丹生兵部持」と。定林寺伝に「この地方に壬生良門あり、家臣林太郎定元の子林源太良元は空照に養われ、父の為に定林寺を建立す」。秩父大祭（千嶋寿著）に「十七番堂定林寺縁起。壬生良門の家臣林太郎定元は所領を没収されて、秩父に来り病死す。三歳の遺児がいて、空照という僧が育てた。良門は狩りに出て二人に会い、先非を悔い少年に林源太良元という名を与え、父の旧領を授けた。そして、自ら法花経を金字に書写し、定元夫婦の菩提の為に宮路の里に一宇を建て、定林寺と号す。のちに、嘉禎元年九月に秩父神社が落雷を受けて炎上し、宮地に先祀されていた妙見宮が秩父神社に合祀され、再建された社を妙見宮と呼んでいる。桜木町に立てられた十七番堂の管理者は丹生（たんしょう）氏を名乗り、明和元年丹生隼人、天明元年丹生出雲、文政十二年丹生隼人あり、丹生氏は代々秩父神社の、つまり妙見宮に奉職していたいわゆる妙見宮社人を本職としていた。丹生氏は明治維新に林の姓に変り、明治中期北海道へ渡ったと伝える。この丹生姓の人々が妙見宮の重要な鍵を握っていたにちがいない」と云う。丹生氏の本名は林氏なり。

三　鉢形城士の林氏　鉢形分限帳に「本国信州松本・長留住・林右忠太。本国尾州丹波・小鹿野住・林内膳。本国肥後玉名・林右京」あり。分限帳の本国は信用出来ず。

四　岩附城士の林氏　太田家譜に「太田譜代之士、林小太郎」あり。

五　忍城士の林氏　成田分限帳に「三十五貫文・林大刀、十貫文・林助八郎」あり。大刀はチカラと註す。

六　松山城士の林氏　天正庚寅松山合戦図に「古郡・柏崎・今泉方面城方・林与右衛門」。御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「武家旦縁・林。常泉・林与兵衛」あり。

七　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百五十石・林彦左衛門・是は忍にて罷出・駿河之者、三百石・林与左衛門・是は忍にて罷出・遠江之者、三百石・林喜左衛門・是は忍にて罷出・伊勢之者、百五十石・林喜之助・是は忍にて罷出・伊勢之者」あり。

八　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御馬廻・百石・林小右衛門、御中小姓・四十俵二人扶持・林郷左衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「御家老・六百石・林孫左衛門、三百五十石・林佐仲、百石金十両・林十郎左衛門、十人扶持・林藤五郎、坊主・三両二人扶持・林三賀」。文化四年分限帳に「大寄合・三百五十石・林佐仲」あり。

九　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「奥医師・十五人扶持・林玄意、御文好・十八両三人扶持・林金左衛門、御文好・十二両三人扶持・林金之丞、元方改役・八石余二人扶持・林七郎右衛門、御徒目付・七石二人扶持・林富三郎、御徒・六石二人扶持・林清兵衛」。明治四年忍藩士族名簿に「八十六石余・林重治、六十六石余・林金、二十人扶持・林玄意、五石二人扶持・林辰三、同高・林藤次郎、四石余二人扶持・林栄作、同高・林清吉」。

一〇　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「四十俵五人扶持・本国近江生国武蔵・林伝右衛門・六十七歳」あり。

一一　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御直参・百石・林重左衛門、御馬役・十五石三人扶持・林吉右衛門」。

一二　川越藩秋元氏家臣　天保二年山形旧家取調帳に「高四百五十石・初代林善兵衛（寛永十年惣社より谷村へ御所替の節御帳に有り）、高三百石・四代林庄左衛門、八代林半之丞」。明治四年館林藩士族帳に「御者頭・三百石・林友紀、二十俵二人扶持・林文治、十九俵二人扶持・林善太郎、十二俵二人扶持・林語、御馬下役・七両余二人扶持・林三次郎、五両二人扶持・林錠次郎」あり。

一三　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・二百五十石・村上取立・林源太郎、御老体・百五十石・山形取立・林利左衛門、御馬廻・十四石四人扶持・林与四左衛門」あり。

一四　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「町在奉行・百七十石・亡父官兵衛・林良蔵・五十六歳、五人扶持・父良蔵・林八太郎・二十一歳、御近習・百石・父義窓・林団右衛門・二十八歳、御馬廻・八十石・亡養父三左衛門・林森太・六十歳。父森太・林伊嘉次・十九歳、御中小姓・十石二人扶持・林徳助・五十九歳、御徒銃隊・六石二人扶持・林善左衛門・四十六歳、御勘定人・五石余二人扶持・林庄三郎・五十一歳、勘定奉行支配・四石余二人扶持・林甚十郎・二十五歳」。川越町吏員名簿に士族林之定・嘉永元年生あり。

一五　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「十五俵・林八兵衛、五俵・林九左衛門」あり。

一六　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「十五人扶持・林孫兵衛、十五両三人扶持・林浅之助、八石・林藤七」あり。

一七　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「五両二人扶持・林治太夫、同高・林藤左衛門」。

一八　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「料理人・林市蔵」。

一九　葛飾郡三輪野江村（吉川市）　定勝寺寛文九年鐘銘に宮野井村隊頭林又左衛門・林兵右衛門。当村天保三年庚申塔に林市兵衛・林又左衛門。東方村久伊豆社嘉永五年御神燈に三輪ノ江林伊右衛門。三輪之江神社明治二十八年碑に林太市・林幾右衛門、明治三十九年碑に林直蔵・林巳之助・林太市・林庫吉・林茂助あり。十戸現存す。

二〇　同郡榎村（庄和町）　当村明和元年庚申塔に林重五郎、天保二年庚申塔に林勝五郎。惣新田村正福院天保九年真言塔に榎村林市太郎。明治三十年人名録に林忠左衛門・文久二年生・地租二十二円あり。一戸現存す。

二一　同郡永沼村（庄和町）　八幡社明治二十八年碑に永沼林久次郎（弘化二年生）、明治三十六年水鉢に上谷・林孫次郎・林常吉あり。八戸現存す。

二二　同郡水角村（庄和町）　水角神社寛政三年庚申塔に林伊之助・林庄治郎・林富治郎、天保三年庚申塔に林新右衛門・林定五郎・林常蔵・林仙之助、明治三十五年碑に林吉五郎・林啓次郎・林智加・林千代・林甚吉・林乃武・林留吉・林新次郎・林辰五郎。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流水角村林幸次郎あり。十六戸現存す。

二三　同郡西金野井村（庄和町）　香取社明治三十年寄附碑に林仁助あり。三戸現存す。

二四　同郡下吉妻村（庄和町）　地蔵堂文政五年碑に林惣蔵。集会所嘉永七年庚申塔に林重四郎あり。現存無し。

二五　同郡椚村（庄和町）　富多小学校入口安政五年庚申塔に林藤次郎あり。現存無し。

二六　同郡権現堂村（幸手市）　林図書の城砦跡あり。

二七　同郡栗橋町　明治三十年人名録に医師杏林堂林彦九郎・文久元年生。明治三十五年に林平治あり。

二八　埼玉郡中島村（越谷市）　明治三十年人名録に林政右衛門・文政八年生・地租二十五円（旧百姓代）あり。十五戸現存す。

二九　同郡増森村（越谷市）　増森公民館文化四年地蔵尊に林文五郎、文化十二年庚申塔に林幸八・林源太郎・林藤右衛門・林太兵衛・林茂右衛門、嘉永元年成田山碑に林仙蔵、元治元年庚申塔に林定吉。増林村護郷神社天保十年敷石碑に増森村林源太郎。明治九年副戸長林源兵衛・天保五年生あり。十三戸現存す。

三〇　同郡粕壁宿　真蔵院天保十五年地蔵尊に林城蔵。明治三十年人名録に林寅次・安政元年生あり。

三一　同郡岩槻町　明治三十五年に林熊次郎・林幾次郎あり。

三二　同郡下大崎村（白岡町）　明治三十年地蔵尊に林佐次郎。二戸現存す。

三三　同郡菖蒲町　明治三十五年菓子商林五郎兵衛あり。

三四　同郡上大崎村（菖蒲町）　当村嘉永元年庚申塔に林増次郎。現存無し。

三五　同郡小林村（菖蒲町）　妙福寺天保二年題目講碑に林儀左衛門。当村明治二十六年聖徳太子塔に林角次郎・林定右衛門あり。二戸現存す。

三六　同郡屈巣村（川里町）　天明元年山崎文書に字クホ林新七あり。十二戸現存す。

三七　同郡広田村（川里町）　鷺栖神社嘉永六年幟碑に林勘七。六戸現存す。

三八　同郡加須町　光明寺筆子碑に「□先者忍行田之産也、姓源、氏林孝平、文化十年没」あり。

三九　同郡琴寄村（大利根町）　横沼神社明治二十年狛犬に林忠兵衛あり。四戸現存す。

四〇　同郡下新郷（羽生市）　慶長十三年検地帳に「はやし新十郎」あり。苗字記載者は土豪なり。現存無し。

四一　同郡上村君村（羽生市）　妻沼村聖天宮慶応三年石道之碑に上村君村林権之丞・林源五右衛門あり。現存無し。

四二　同郡佐間村（行田市）　高源寺文政二年供養塔に当所林喜六.。天神社天保六年御神燈に当所林平兵衛あり。四戸現存す。

四三　同郡小針村（行田市）　日枝社天明二年庚申塔に林伝右衛門、寛政九年水鉢に林多吉、文化十四年碑に林太左衛門・林清平・林伝六.。神仙寺寛政十一年供養塔に林太吉、嘉永六年敷石供養塔に林利左衛門・林三七・林清六.。下須戸村御嶽社文政元年浅間碑に小針・林清六母・林利左衛門あり。四戸現存す。

四四　同郡前谷村（行田市）　光明寺天保八年水鉢に林銀司あり。一戸存す。

四五　同郡鎌塚村（吹上町）　八幡社明治十年碑に林寅次郎あり。六戸存す。

四六　同郡上中条村（熊谷市）　下川上村嘉永六年御嶽碑に上中条村林喜三郎あり。五戸現存す。

四七　足立郡芝村（川口市）　長徳寺寛文二年六地蔵に林五郎左衛門あり。

四八　同郡石神村（川口市）　明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流石神村林兼吉あり。

四九　同郡下笹目村（戸田市）　早瀬村常光寺安永四年供養塔に林文二郎母。早瀬村文化十二年庚申塔に足立郡早瀬林武右衛門。明治九年下笹目村副戸長林与右衛門・文政三年生あり。下笹目村枝郷早瀬村なり。

五〇　同郡蕨宿　御嶽社元禄七年棟札に林源兵衛。和楽備神社享和二年御神燈に林源兵衛。文政十年諸国道中商人鑑に中仙道蕨宿御泊宿林源兵衛。三学院文久三年供養塔に蕨宿林源兵衛。明治七年陸運会社人名録に林源兵衛・但明治五年七月創立あり。

五一　同郡太田窪村（浦和市）　氷川社明治二十八年碑に林民次郎あり。

五二　同郡田島村（浦和市）　四ツ谷観音堂文化二年庚申塔に当所林源治郎。氷川社嘉永五年敷石碑に林藤吉、明治十一年石橋碑に林源次郎あり。

五三　同郡浦和領辻村（浦和市）　万蔵寺文政九年敷石碑に林久八あり。

五四　同郡大宮町　明治三十五年理髪店林兼吉あり。

五五　同郡蓮沼村（大宮市）　私塾師匠林貞造・明治二十九年没・八十五歳。

五六　同郡大和田村（大宮市）　鷲神社明治三十九年碑に林忠一郎あり。

五七　同郡並木村（大宮市）　明暦二年尾州紀州両家の鳥見役並木村林八郎右衛門。氷川社文化十年水鉢に並木村林仙右衛門。円阿弥村日枝社慶応二年算額に並木村林幸太郎。明治九年戸長林喜左衛門・文政二年生、副戸長林幸太郎・嘉永三年生。与野町長伝寺明治二十六年文書に並木林悦二.。氷川社明治三十八年碑に林亀治・林福次郎・林健治郎・林久三郎・林幸太郎・林久五郎・林力蔵。

五八　同郡奈良瀬戸村（大宮市）　武国神社明治二十八年水鉢に林与吉、明治三十七年碑に林源蔵・林夏蔵・林飽蔵・林清吉あり。

五九　同郡上尾宿　恩間村渡辺家譜に「渡辺左介貞吉（正徳四年没）―女子（上尾駅林源兵衛長宗妻）。渡辺左介直吉（宝暦十四年没）―女子（上尾駅長林八郎右衛門長忠妻）」。享保十二年庚申塔に林園右衛門。遍照院元文五年庚申塔に上尾町林十兵衛。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に「寛政期、上尾宿本陣林八郎右衛門・是は柏原の左助二男、婿に来る」。氷川鍬神社文政五年二賢堂碑に林宮内豊峯・林佐太郎直昌・林善八積善・林官蔵篤・林十蔵融義。万延元年武術英名録に甲源一刀流上尾宿林隆三郎。明治四年酒醤油醸造業林次左衛門。明治三十五年米穀商林元三郎・肥料商林市郎・湯屋林長五郎・書肆林広助・呉服商林次左衛門・菓子商林善八.。愛宕社明治四十四年碑に林広助あり。

六〇　同郡上村（上尾市）　字長浪明和五年庚申塔に上村林清右衛門。氷川社明治四十二年碑に林金蔵あり。

六一　同郡平方村（上尾市）　橘神社享和四年水鉢に林文次郎。三戸現存す。

六二　同郡原市町（上尾市）　明治三十五年白木綿商林岩次郎・青物魚商林八五郎あり。

六三　同郡桶川町　明治十一年府川文書に林金太郎あり。

六四　同郡本宿村（北本市）　明治三十四年榛名神社募金に林平八あり.。三戸現存す。

六五　同郡深井村（北本市）　寿明院寛政九年寄附帳に深井村林藤左衛門・林庄左衛門・林新右衛門・林喜惣二・林理右衛門・林権太郎。上谷新田金剛院元治元年碑に深井村林留吉・林藤十郎・林六右衛門・林伊八.。明治四年組頭林留吉・六十歳。原馬室村観音堂明治三十四年馬頭観音碑に深井村林万次郎あり。八戸現存す。

六六　同郡石戸宿村（北本市）　釘無村明治十九年馬頭尊に石戸宿村林善太郎あり。四戸現存す。

六七　同郡鴻巣宿　加納村天神社嘉永二年御神燈に鴻巣宿林七郎右衛門（旅籠屋）。明治三十五年白木綿商林正平・林伊三郎・林幸太郎あり。

六八　同郡箕田村（鴻巣市）　明治三十五年医師林富司あり。三戸現存す。

六九　同郡原馬室村（鴻巣市）　観音堂明治三十四年馬頭観音碑に宮本・林丈八・林吉五郎あり。二戸現存す。

七〇　同郡常光村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に上常光村林伊右衛門あり。現存無し。

七一　同郡吹上村　行田史譚に「吹上村。寛永年中名主林兵衛門、享保六年名主林兵衛門、天保元年名主林忠左衛門」。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に「寛政期、吹上・林兵右衛門・俳号喬駟」。明治四年名主林儀三郎。明治八年騎西町釜屋文書に吹上村酒造業林安兵衛。吹上神社明治四十三年碑に林栄蔵・林源蔵・林茂吉・林仁助あり。

七二　同郡大芦村（吹上町）　日枝社文化十一年庚申塔に林市太郎あり。一戸現存す。

七三　新座郡館村（志木市）　館村旧記に「永禄四年、館村柏城落城す。城主大石信濃守郎従に林等あり」と。

七四　同郡膝折村（朝霞市）　氷川社明治四十一年碑に林友吉あり。

七五　同郡野寺村（新座市）　当村弘化二年庚申塔に野寺村林木衛左衛門。

七六　入間郡水子村（富士見市）　八幡社慶応元年水鉢に下組林三十郎（船積問屋）。志木町敷島社明治五年不動尊に下水子林三十郎。大応寺明治二十五年碑に林辰五郎・林茂平治・林三左衛門・林吉兵衛あり。八戸現存す。

七七　同郡上富村（三芳町）　中富村毘沙門堂文化三年宝篋印塔に上富村林伊左衛門・林和吉。多福寺嘉永四年碑に上富村林伊左衛門（名主）。志木町敷島社明治初期狛犬に上富村林春吉郎。明治七年成田山月参護摩講に林伊三郎。明治九年戸長林伊左衛門・文政十年生。明治二十一年皇国武術英名録に武蔵流上富村林豊治。明治二十九年毛武鉄道認可願書に質屋林国三郎・嘉永元年生あり。八戸現存す。

七八　同郡所沢町　明治四十三年浦町林豊隆あり。

七九　同郡岩崎村（所沢町）　瑞岩寺明治三十二年地蔵尊に当所林隆興。

八〇　同郡川越町　岩殿村正法寺明和六年水鉢に川越林清五郎。猪鼻町初代区長林清吉・弘化四年生。明治十一年第八十五国立銀行株主に川越黒門町林義人・十株千円所有。氷川社明治三十三年玉垣碑に林吉蔵（鰹節塗物商熊野屋）・猪鼻町林友平（肥料商）。大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に脇田林友平・明治十三年生・国税千四百四十六円・県下百十五位あり。

八一　同郡寺尾村（川越市）　福岡村大杉神社明治十二年拝殿碑に寺尾村林代次郎あり。七戸現存す。

八二　同郡坂戸町　明治四十三年牛乳搾取所林毎三郎あり。

八三　同郡勝呂郷塚越村（坂戸市）　旧家林氏先祖は松山城家臣と伝へる。川越日蓮宗行伝寺過去帳に「法林・勝呂ノ林・亥年六月。宗蓮・林五左衛門・辰年十二月。行林・ハヤシ・丑年正月」。江戸初期なり。当村住人か。曹洞宗光明寺文化九年馬頭尊に塚越村林多七.。住吉社天保十一年扁額に当所林佐十郎、文久三年御神燈に当所林理左衛門（名主）。明治九年副戸長林旭・文政九年生。明治二十二年埼玉勧業会員林胤治あり。十一戸現存す。

八四　同郡勝呂郷島田村（坂戸市）　明治九年戸長林承茂・天保三年生。明治十五年戸長林金五郎。明治三十年堰場組合林与曽松あり。十七戸存す。

八五　同郡勝呂郷横沼村（坂戸市）　戸宮村御嶽社明治十三年水鉢に横沼村林伊太郎あり。二戸現存す。

八六　同郡勝呂郷紺屋村（坂戸市）　石坂村曹洞宗休山寺明治二十八年碑に紺屋林宗治・林宮吉。一戸現存す。

八七　同郡勝呂郷赤尾村（坂戸市）　承元四年小代文書に南赤尾村と見え、堂山村最勝寺応永三年大般若経に赤尾阿弥陀堂と見ゆ。当村は平安時代には開発されており、村長林半三郎家は其の頃から越辺川流域の南赤尾村諏訪神社附近に土着していた。入間郡誌に「赤尾村諏訪神社は、村民林半三氏の祖・文亀年間此地に移りし時共に遷したる処なり」。当村森田文書に「天文七年、安野・森田・林・池田・山崎・新井の侍六人が石井の台地に住む。元亀三年、六人は石井の支配を逃れ、越辺の川端へ移り住み、赤尾村と名をつける」と。出稼衆の六人は隣村の石井村勝呂豊前守に仕へ、郷里に帰農す。。石井村新義真言宗大智寺過去帳に「赤尾村林民部・天文四年四月朔日没。赤尾村林民部妻・天文十一年六月五日没」。林茂美家記録帳に「林民部信興・天文四年四月朔日死・賜号観智」。同家墓碑に「観智・天文四年四月朔日、妙智・天文十一年六月三日、林民部夫妻、林刑部父母」。「蓮阿本眼沙弥・文禄四年十一月二十七日、施主林図書」あり。同家文書に「赤尾村屋敷姓名取調帳、十二代目林半三郎信豊筆記・文政十三年三月。一番・元禄十二年御縄入後書写したる也・年号無し、二番・寛延三年、三番・宝暦九年、四番・明和八年迄、五番・天明八年迄、六番・寛政十二年迄。○林本家半四郎信之―半三郎清信―市郎治信泓―左伝治幸造―半三郎信豊（鉄五郎）―半三郎信海（為三郎、天保二年林本家嗣子）―半三郎信従（剋之助）。○本家林□□・本家先祖林図書妻つれ子二人之内縫殿助兵庫―同名―七兵衛―兵左衛門―石太郎。○林兵右衛門（兵左衛門より分家）―惣八―同名―同名―久七事喜介―竹五郎。○林勘介（兵左衛門より分家）―同名―同名―同名―同名―同名―惣吉。○林加兵衛（兵左衛門分家善兵衛より出）―三左衛門―同名―同名―同名―養子五左衛門。○林半蔵（林本家一族）―半之丞―同名―同名―勇蔵―弥曽吉。○林安太夫（本家小林改）―庄三郎―同名―徳右衛門―庄五郎（改名庄助）―徳右衛門（徳次事）。○林五平治（小林姓改林安太夫一類吉兵衛事）―同名―同名―同名―富左衛門―清太郎―富左衛門。○林平左衛門（林伊兵衛より分地）―平四郎―同名―金左衛門―同名―同後家。○林七右衛門（伊兵衛事）―徳左衛門―七右衛門―源左衛門―源蔵―忠蔵―代喜造。○林伊平治（林本家一族十蔵事）―藤右衛門―同名―同名（藤蔵事）―同名（勇次郎事）―同名（弥次郎事）。○林新蔵（林本家一族、上伊草村笛木氏男、此家は林本家より半四郎代に出し候処、弥四郎子勇次郎事・一族之内藤右衛門方へ婿に参り候より跡式相続之者無之）―同名―同名―同名―弥四郎―同名」と見ゆ。赤尾村は正保年間田園簿に九二六石、元禄郷帳に九二五石、天保郷帳に一二七〇石で、家数は文化文政期に一五〇軒、明治九年一五三軒であり、天正十八年徳川氏入部以来、幕末まで殆ど増加は無い。当時幕府の御政道は分家を認めず、一町歩以下に減らすことを田分者と称した。今日では馬鹿者と同一視されている。天正以前よりあった潰れ屋敷へ分家するだけであり、林氏も既に天正以前に此等十二家に近い軒数があったものと想像できる。私の茂木家十三軒も江戸時代に皆分家したと伝へているが、村の戸数は明暦検地より幕末まで増加は無く、子細に調査したら同族の潰れ屋敷へ分家していた。林家墓地宝暦十一年宝篋印塔に林市郎治信海。天明三年文書に名主林半三郎。川越喜多院五百羅漢像銘に寛政頃・赤尾村林民部・林左伝治。歌人名主林半三郎信海・号桜園・萩廼家・文久二年没。明治九年戸長林半三郎・弘化四年生（県会議員）。明治二十九年地租二百五十円以上大地主名簿に勝呂村林半三郎あり。十五戸現存す。

八八　高麗郡脚折村（鶴ヶ島市）　明治四年戸籍に脚折新田林慶三郎あり。十七戸現存す。

八九　同郡楡木村（日高市）　明治七年願書に林弥五郎・林金五郎・林寅吉・立会人林伊左衛門。明治十九年茶業林富八あり。五戸現存す。

九〇　比企郡上伊草村（川島町）　金乗院延宝元年庚申塔に林久左衛門あり。四戸現存す。

九一　同郡大塚村（川島町）　当村嘉永六年馬頭尊に大塚村林伝吉あり。一戸現存す。

九二　同郡松山町　明治三十五年米穀商林文蔵あり。

九三　同郡早俣村（東松山市）　西本宿村岡田文書に寛政頃・伊勢参宮早俣村林庄兵衛。当村文政元年弁財天碑に早又村林庄右衛門。児玉郡東富田村富田寺弘化四年剣術奉納に早又村林庄右衛門重教。明治九年副戸長林幸次・弘化二年生。高坂村会議員林永徳・嘉永二年生。明治四十一年比企郡繭糸同業組合発起人林安五郎あり。四戸現存す。

九四　同郡小川村　中爪村普光寺嘉永五年算額に下小川村林庄兵衛あり。

九五　同郡大塚村（小川町）　八幡宮縁起に「当社は、将軍守邦親王近臣右大弁近信の諌について、兵難を僻ため、大沢・梅沢・松本・林・関口（各末葉今に有之）等の近臣を召連れ、近臣の旧領武州比企郡増尾郷に遷居す」と見ゆ。現存無し。島田条百六十七項参照。

九六　大里郡熊谷宿　越中国新川郡平榎村（富山市）林文書に「先祖は武蔵国熊谷の林久兵衛市良が埜崎氏に従って永正元年に平榎城へ移ってきた。のち帰農して、林市良―市光―市邦と。代々村役人なり」と。平榎村住吉神社は野崎玉津守の居城跡と伝える。当村に林氏二戸存し、野崎氏は無し。林氏は熊谷に永正以前から土着していた。尚、天正年間に美濃国から来住すと伝へるは安八郡林村に附会するか。熊谷史話（林有章著）に「私の家の記録に依れば、祖先は清和源氏の後裔・林勘解由源忠保で、其嫡孫林図書政良（弘治三年生、正保二年十月二十二日没、行年八十九歳。二代以下は与四右衛門、由右衛門、勘兵衛など称す）が、天正年間に舎弟采女正員（永禄五年生、慶長九年八月二十三日没、行年四十三歳。別家の祖也）と共に熊谷に帰住し（家伝に美濃国より来住せりと云ふ）、四代目までは町役人を、五代目の勘兵衛からは横町の支配人を勤めて、系統は既に三百余年間続いて居る。私が丁度十一代目の当主である。屋号を和泉屋と称し、家紋は丸に四ツ目なり。熊谷旧家祖先の名について、古い記録と云っても私の知る限りに於ては、元和五年十月の取懸帳と熊谷寺の系図過去帳に求むれば曰く、星野外記、須賀帯刀、鯨井玄蕃、林図書、林采女、野口将監、布施田山城、清水内蔵、清水越後、永島大膳、野口大膳、石川大学、代采女、篠崎入道、小窪内膳、加島伊織、福島右近、星野数馬、森隼人、野口主税、小高与平太、増田但馬、台島庄太夫、吉沢織衛、木村隼人、木村勘解由、宮内帯刀、岡田采女、其他兵庫、主水、雅楽助等で、此等の人々は孰れも天正慶長の頃から、この地へ帰住し来った者で、中には安土桃山時代に於て各地に割拠した郡雄や、下っては北条氏、成田氏等の家臣達で、ここに帰農するに至った所謂浪人ものであったろうと思われる。さてここに熊谷町旧家書上と云う古文書がある。これは寛永十六年閣老阿部豊後守忠秋が初めて忍城主となってから元文三年が丁度百年目に相当するので、阿部家在城百年際が催された時、今年元文三年から逆に数えて百年以上の居住者を調べて書上げたものである。其戸数は左の通りであった。天正十七年より百五十年目は四十一戸、慶長四年より百四十年目は二戸、慶長十四年より百三十年目は一戸、元和元年より百二十年目は二戸、寛永十六年より百年目は十三戸、合計五十九戸、此の内分家七戸あり」と見ゆ。明治九年熊谷宿戸数千百八十九戸である。熊谷宿百石組に「慶安元年、林与四右衛門・林善三郎・林善左衛門。貞享三年、月行司林与四右衛門。宝暦十年、本町北屋敷持主林善左衛門、同所持主林五郎兵衛、新宿南屋敷持主林甚兵衛、横町支配人林由右衛門。天保十三年、横町支配人林由右衛門。嘉永元年、林与四右衛門・林新三郎・林次郎兵衛」。原口文書に「熊谷宿林善左衛門・正徳五年から三十五六年前に酒造」。上ノ村龍淵寺寛政八年鐘銘に熊谷住御鋳物師林源兵衛藤原親友。石上寺嘉永二年庚申塔に林半次郎。明治五年郵便取扱人林弥平治。明治七年総代人林清兵衛。明治三十五年小間物商林藤兵衛・旅館小松屋林新三郎・川魚商林栄三郎・林有章。林由右衛門張辰―由右衛門有則―長吉（実父騎西町新井善兵衛）―勘兵衛有章（安政六年生、明治九年副戸長、北葛飾、中葛飾、北埼玉、児玉等の郡長歴任、昭和二十年没）―頼三郎（実父忍藩典医三輪礼三.。司法大臣、貴族院議員、枢密顧問官、中央大学総長を歴任、昭和三十三年没）なり。

九七　同郡石原村（熊谷市）　明治十三年石原村議林福太郎・同林庫太郎。明治三十五年に林政太郎あり。七戸現存す。

九八　同郡小泉村（大里町）　当村安政二年馬頭尊に小泉邨林忠七・林辰蔵あり。八戸現存す。

九九　同郡樋春村（江南町）　成沢村赤城社天保十一年御神燈に樋ノ口村林矢衛門。七社神社明治八年伊勢講碑に林力太郎・林新八.。上州榛名神社明治十一年御神燈に武州大里郡樋春村林藤吉。野原村文殊寺明治二十四年算額に樋春林藤吉あり。二戸現存す。

一〇〇　幡羅郡三ヶ尻村（熊谷市）　龍泉寺天保九年筆子碑に当所林万之助・林弁蔵・林生幸山。幸安寺嘉永六年碑に当所林幸内、慶応二年権田門人碑に林清二郎。八幡社安政六年水鉢に林忠右衛門、慶応二年碑に林幸内、慶応三年小御嶽碑に林万之助。神道無念流宮戸村金井宇一郎起請文に慶応二年三ヶ尻村林虎之助・林清二郎あり。十二戸現存す。

一〇一　同郡妻沼村　聖天宮は享保十九年に宮大工林兵庫正清が棟梁となり着工す。其の子孫宮大工林兵庫藤原昌道は弘化四年に再び起工し建築にあたる。子孫は熊谷市宮町の林金吾建築事務所なり。秩父郡高山村常楽院文書に「文政十三年御本堂焼失、天保三年大工棟梁目沼村林兵庫」。杉山村八宮社明治十六年筆子碑に妻沼村林久七.。秩父郡宝登山神社明治二十七年棟札に大工棟梁妻沼村林門作。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に妻沼村林陽太郎。明治三十五年米穀商林善太郎あり。

一〇二　同郡上須戸村（妻沼町）　当村明治十四年馬頭尊に林権蔵あり。八戸現存す。

一〇三　同郡田島村（妻沼町）　慈眼寺文政十二年地蔵尊に林平左衛門。当村明治八年富士嶽碑に当所林平内。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に田島村林愛三郎あり。五戸現存す。

一〇四　同郡宮ヶ谷戸村（深谷市）　無量寺万延元年仙元碑に林伝兵衛あり。現存無し。

一〇五　榛沢郡深谷町　深谷町会議員林賢吾・明治三十五年生あり。

一〇六　同郡血洗島村（深谷市）　新戒村大林寺明治三十五年筆子碑に血洗島林駒吉。八基村会議員に林文一・明治十六年生、林幅一・大正二年生あり。二戸現存す。

一〇七　同郡中瀬村（深谷市）　中瀬神社明治四十一年碑に林仲次郎あり。現存無し。

一〇八　同郡寄居町　明治三十五年張屋林彦太郎あり。

一〇九　同郡用土村（寄居町）　当村明治十三年仙元碑に当村林島五郎あり。四戸現存す。

一一〇　同郡牧西村（本庄市）　天正年間牧西村持高帳に「林分・屋敷百七十一坪・林居、屋敷五百七坪・林抱」。苗字記載者は土豪なり。現存無し。

一一一　児玉郡本庄町　大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に林寛一・明治二十七年生・国税二千六百六十八円・県下四十五位あり。

一一二　同郡八幡山町（児玉町）　八幡山町長福寺天保十三年二十二夜塔に林弥十郎あり。

一一三　同郡上真下村（児玉町）　児玉記考に「旧家林寅吉、名主組頭役を相勤めり」と見ゆ。三戸現存す。

一一四　賀美郡八日市村（神川町）　瑞巌寺文化五年廻国塔に林利平治あり。一戸現存す。

一一五　同郡三町村（上里町）　風土記稿長浜町条に「長安寺は開山吟貞・慶長二年寂。開基林寅之祐・法名智照院浄誉感清、没年を伝へず」。阿保領地誌に「大御堂村陣屋跡、何頃か不知、林虎之助と申者住居と申伝へ、長浜村長安寺開基之由位牌に年号無之、秩父郡野上村に所縁之者有之と申候」と見ゆ。現存無し。橋本条二百九項参照。

一一六　那賀郡広木村（美里町）　秋山村十二天宮寛政七年建立覚書に広木村組頭林善蔵。安政四年加藤文書に林金兵衛・林伊蔵・林友治郎。明治九年戸長林覚太郎・天保九年生。常福寺明治中期筆子碑に村・林理三治・林伊蔵。大仏村羽黒社明治二十一年富士碑にヒロキ林今太郎。ミカ神社明治四十一年碑に当所林今太郎・林昌訓・林仲太郎・林為吉・林清作・林栄吉あり。四戸現存す。

一一七　秩父郡大宮郷　二項参照。

一一八　同郡太田村（秩父市）　明治九年副戸長林登三郎・天保七年生あり。三戸現存す。

一一九　同郡本野上村（長瀞町）　明治三十三年農会々員名簿に林琴次郎あり。六戸現存す。

一二〇　同郡中野上村（長瀞町）　国神神社明治三十四年碑に中野上村林広吉あり。一戸現存す。

一二一　同郡野上下郷（長瀞町）　当村に此氏多く存す。遍照寺坐像銘に「元亀元年一月十五日、森光院殿吽河浄林源誉大居士、大則二男助之進国政、当寺開基」。開基林助之進は小野篁の二十四代なりと伝へる。小野姓丹党野上氏の本名か。安保、小野条参照。字辻八重子文政十年大黒天碑に林伝蔵。間瀬峠天保二年馬頭尊に林幸右衛門。字辻糠掃峠入口天保二年二十二夜塔に林勇七・林市右衛門、天保十五年馬頭尊に林市左衛門。字辻三又路元治元年庚申塔に林百太郎。慶応二年三峰神社史料集に宮沢村林熊三郎・林久米。明治九年副戸長林百太郎・天保元年生。明治十四年林文書に林代五郎・林今三郎・林百太郎・林清一郎・林竹吉・林和十郎・林孫三郎・林鶴太郎・林市蔵・林実五郎・林ハマ・林いか・林政太郎・林二三郎・林作次郎・林か那・筆生林才作。天満宮明治十六年御神燈に林市三郎。国神神社明治三十四年碑に野上下郷林弥吉・林森蔵・林才作。県会議員農業林才作・安政元年生あり。

一二二　同郡野巻村（皆野町）　明治二十年森林組合員に林直吉・林和十郎・林富士太郎・林惣太郎・林禎次郎・林直蔵・林雷次郎代印林岩太郎・林常三郎。国神神社明治三十四年碑に野巻・林和重郎・林雷次郎あり。十戸現存す。

一二三　同郡下吉田村　八幡社明治三十八年碑に林道三郎あり。四戸存す。

一二四　同郡久長村（吉田町）　彦久保文書に「天正十年秩父衆着致、秩父差引之外嗜、一本鑓・一騎馬上・以上二人・林孫兵衛」。彦久保系図に「彦久保重照（弟金三郎は早世元和七年没）―直重（妹は久長村林喜三衛妻）―宗重―女子（久長村林又兵衛妻）」。紀州高野山清浄心院過去帳に「霊位実叟常真禅定門・武州秩父久長林掃部立之（供養者）・寛永四年十一日」。明和安永年間秩父郡記に久長村名主林三之丞・名主林為右衛門。明治九年戸長林重三郎・弘化二年生、戸長林佐久重郎・天保十一年生。明治二十年森林組合員に林初三郎・林栄三郎・林雛五郎・林ムツ・林万平・林長治郎・林茂三郎・林重三郎・林忠次郎・林永蔵・林鹿三・林徳次郎あり。十二戸現存す。

一二五　同郡上小鹿野村　三項参照。秩父風土記に「上小鹿野村、林新左衛門跡退転」。吉田氏系図に「吉田信重（秩父郡上吉田郷塚越と云所に住す。此時小鹿野郷林新左衛門と云ふ百姓あり、公儀に背き追放となる。田畠屋敷上り地と成り、代官大河内金兵衛殿より田畠屋敷地賜はり小鹿野郷に住す）」と見ゆ。明治十二年理髪店林春吉、春日二丁目理髪店林熊五郎あり。現存無し。

一二六　同郡薄村（両神村）　明治六年中郷地券証写に須川組林藤次郎あり。二戸現存す。

一二七　同郡安戸村（東秩父村）　聖岩寺享保十八年供養塔に林庄右衛門。能気神社明治二十九年碑に大河原村林万平あり。一戸現存す。

一二八　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・林寿夫・百三十二円、林慶四郎・四十七円、林政儀・三十六円、林正評・十四円、林要之助・九円、大門村（浦和市）・林将夫・二十四円、川口町・林芳五郎・九円、三橋村（大宮市）・林福次郎・四十九円、林亀吉・十二円、林彰・十一円、上尾町・林次左衛門・二百四十二円・百十二円、林盛次・七十五円・八十四円、林栄吉・二十一円・四十二円、箕田村（鴻巣市）・林富司・十二円、三輪野江村（吉川市）・林太市・八十六円、川辺村（庄和町）・林吉五郎・十円、栗橋町・林一彦・三十五円、林健吉・十二円、片山村（新座市）・林友吉・十一円・三十九円、川越市・林友平・九百八十九円、林信次・十八円、林啓太郎・十一円、三芳村・林清・十九円、林豊治・十三円、入間川町（狭山市）・林好之助・二十一円、勝呂村（坂戸市）・林織善・百八十九円、林芳次郎・三十四円、林甲次郎・十一円、高坂村（東松山市）・林隆三・十一円・三十五円、林福造・十二円・二十八円、熊谷町・林有章・三十三円、林ゆき・二十四円、深谷町・林一・二十六円、秩父町・林善次郎・十円、樋口村（長瀞町）・林才作・七十六円、下吉田町・林鹿蔵・十円、長若村（小鹿野町）・林治助・四十一円・十一円」あり。

早志　ハヤシ　浦和に存す。

早矢仕　ハヤシ　上尾、岩槻、春日部、鶴ヶ島等に存す。

林賀　ハヤシカ　忍藩松平下総守（奥平）家臣にて、安政四年秩父郡太幡文書に「秩父代官所御賄林賀九郎兵衛」あり。

林上　ハヤシガミ　鳩ケ谷、三郷に存す。

林川　ハヤシガワ　日高に存す。

林口　ハヤシグチ　川口、白岡、越谷、狭山、所沢、日高、熊谷等に存す。

林崎　ハヤシザキ　崎は浦の意味で海洋民を称す。林族海人の集落を林崎と称す。各市町村に存す。○福島県相馬郡小高町九戸、原町市二十五戸。○秋田県雄勝郡雄勝町八戸、仙北郡角館町十七戸。○岩手県遠野市二十戸、北上市三十戸、久慈市四十八戸。○青森県八戸市五十戸あり。

林下　ハヤシシタ　下（もと）は浦の意味で海洋民を称す。林崎に同じ。○岩手県九戸郡種市町八戸、久慈市十八戸。○青森県上北郡六ヶ所村二十三戸、八戸市十六戸あり。

一　児玉郡飯倉村（児玉町）　当村に此氏の旧家あり。三戸現存す。

林庄　ハヤシショウ　草加に存す。

林園　ハヤシゾノ　上尾に存す。

林田　ハヤシダ　田は郡県・村の意味。林族の集落を林田と称す。千葉県印旛郡富里町三十戸あり。

一　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「表御中小姓・七両四人扶持・林田友之允」あり。

二　入間郡久米村（所沢市）　長久寺万延元年宝篋印塔に林田勘右衛門あり。一戸現存す。

三　同郡川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「妙春・林田源之丞内母・辛卯年四月」あり。一項の家か。現存無し。

四　高麗郡野田村（入間市）　吹上観音堂享保十九年庚申塔に野田村林田七□□、元文二年庚申塔に野田村林田小右衛門。長徳寺安政三年地蔵尊に林田又兵衛あり。八戸現存す。

林谷　ハヤシダニ　浦和、大宮、伊奈、三郷、上福岡等に存す。

林出　ハヤシデ　越谷、川越等に存す。福島県河沼郡会津坂下町五戸あり。

林戸　ハヤシド　三郷に存す。

林中　ハヤシナカ　坂戸に存す。

林野　ハヤシノ　浦和、川口、上尾、鳩ケ谷、岩槻、川越、三芳等に存す。

一　忍城士の林野氏　関八州古戦録に「天正十八年忍城攻めの時、遊軍として林野市右衛門あり」と。風土記稿は村野と記す。

二　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百八十石・林野宗十郎」あり。

林原　ハヤシバラ　原は村の意味。林族の集落を林原と称す。和名抄に上野国緑野郡林原郷を八也之波良（はやしはら）と註す。小林村・本郷村（藤岡市）附近にて、近世には緑野郡原之郷高山庄と称す。林条参照。各市町村に存す。○鳥取県西伯郡岸本町二十四戸、淀江町二十四戸、大山町二十四戸、名和町七十六戸、中山町三十戸、日野郡溝口町十二戸、東伯郡東伯町十六戸、赤碕町三十戸、米子市七十戸あり。

林部　ハヤシベ　林族の集団（部）を林部、林辺と称す。。各市町村に存す。長野県上水内郡戸隠村十五戸、新潟県西蒲原郡弥彦村十一戸、福島県耶麻郡猪苗代町十二戸あり。

一　忍城士の林部氏　成田分限帳に「二十五貫文・林部大刀」あり。別本に林大刀と見え、大刀をチカラと註す。

林辺　ハヤシベ　川口、川越等に存す。

一　川越藩松平大和守家臣　万延二年川越藩分限帳に「御馬廻・十二石四人扶持・林辺百合介」あり。

早島　ハヤシマ　浦和、大宮、鴻巣等に存す。

林見　ハヤシミ　本庄に存す。

林本　ハヤシモト　浦和、越谷等に存す。

林家　ハヤシヤ　川口、吉川等に存す。

林谷　ハヤシヤ　山形市十五戸あり。

林屋　ハヤシヤ　越谷、所沢等に存す。

林山　ハヤシヤマ　大里に存す。

早生　ハヤショウ　大宮に存す。

早助　ハヤスケ　鳩ケ谷、岩槻等に存す。

早瀬　ハヤセ　足立郡下笹目村枝郷早瀬村（戸田市）あり。各市町村に存す。栃木県芳賀郡二宮町二十四戸、茨城県西茨城郡岩瀬町十一戸、真壁郡協和町十三戸、下館市百戸あり。

早勢　ハヤセ　鳩ケ谷、岩槻、深谷等に存す。

隼瀬　ハヤセ　浦和に存す。

早瀬川　ハヤセガワ　越谷に存す。

一　鉢形城士の早瀬川氏　北越軍談に「謙信・上野国桐生へ出勢す。用土が陣代早瀬川修理亮・秩父下野守・吉岡式部丞八百余兵を引きいて出張す」と見ゆ。

早田　ハヤタ　各市町村に存す。ソウダ参照。

一　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「五両二人扶持・早田九右衛門」あり。

二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「五両余二人扶持・早田留吉」あり。

三　埼玉郡飯塚村（岩槻市）　法華寺享保十六年庚申塔に早田伝兵衛あり。現存無し。

隼田　ハヤタ　坂戸に存す。

早武　ハヤタケ　久喜に存す。

早谷　ハヤタニ　草加に存す。

早津　ハヤツ　各市町村に存す。新潟県西頸城郡能生町十九戸、柏崎市二十六戸、新井市五十五戸あり。

一　葛飾郡鷲巣村（杉戸町）　鷲神社文化十三年普門品に鷲巣村早津市松あり。現存無し。

二　比企郡小川町　松山町箭弓神社明治三十一年碑に小川町早津信太郎あり。一戸現存す。

速津　ハヤツ　九条家延喜式裏文書の大里郡条里坪付に速津里の地名あり。大里条参照。

早塚　ハヤヅカ　川口に存す。

早戸　ハヤト　大宮、北本、鶴ヶ島等に存す。島根県仁多郡横田町六戸あり。

早渡　ハヤト　狭山に存す。

早藤　ハヤトウ　川越に存す。山形県酒田市十七戸あり。

速藤　ハヤトウ　熊谷に存す。

早戸沢　ハヤトサワ　高麗郡飯能村字早戸沢は、西伝寺安永元年地蔵尊に早戸沢村と見ゆ。

隼野　ハヤノ　新座に存す。

早野　ハヤノ　群馬県群馬郡榛名町十一戸、千葉県印旛郡栄町十四戸、神奈川県足柄上郡中井町十八戸、岩手県下閉伊郡田野畑村二十四戸、宮古市三十戸あり。

一　深谷城士の早野氏　深谷記に「上椙御譜代之臣、早野雲之助」あり。

二　高麗郡飯能町　明治三十五年染物業早野伴次郎。市内に十八戸存す。

三　児玉郡鵜森村（本庄市）　武蔵国児玉郡誌に「鵜森村利益寺開基は天正年間、早野半兵衛なり」。当村安政五年二十三夜塔に早野定右衛門・早野寿三郎。明治初年名主早野半兵衛。明治九年副戸長早野恵作・弘化元年生。東五十子村明治二十七年慈善橋碑に早野恵作・早野角次郎・早野嘉十郎・早野伝次郎・早埜宇之吉。浅間社明治三十八年碑に早野軍次郎・早野幸太郎。昭和三年興信録・所得税に「藤田村・早野猪三郎・三十九円、早野繁次・二十四円」あり。十四戸現存す。

四　那賀郡甘粕村（美里町）　甘粕神社明治二十五年富士嶽碑に当所早野馬八あり。現存無し。

早原　ハヤハラ　狭山に存す。

早福　ハヤフク　春日部に存す。

早房　ハヤブサ　川口、朝霞、鳩ケ谷、和光、越生等に存す。

早藤　ハヤフヂ　浦和、大宮、鴻巣、松伏、所沢等に存す。

早淵　ハヤブチ　三郷、川越等に存す。

早渕　ハヤブチ　和光、所沢等に存す。

早舟　ハヤフネ　浦和に存す。

早舩　ハヤフネ　足立郡赤山領に存す。

早船　ハヤフネ　ソウフナの転訛にて、金（そ、そう）は鉄（くろがね）のこと、船（ふな、ふね）は海洋民を称す。鍛冶集団の海（あま）族を早船と称す。足立郡赤芝山（近世は赤山）は鉄分を含んだ埴土のことで、芝川（古代の荒川）流域は砂鉄採取地なり。此の地方に早船氏多く存し、下流の金山町善光寺附近は鎌倉時代に鍛冶頭領川越氏が川口鋳物師を支配す。川越条八項参照。

一　足立郡赤山領石神村（川口市）　真乗院弘化三年普門品に当所早船留五郎。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に石神村早船留松。鈎上村神明社元治元年碑に石神早船留吉。稲荷社明治三十二年奉納額に早船栄吉。木曽呂村朝日神社明治三十五年鳥居碑に石神早船吉五郎あり。十戸現存す。

二　同郡赤山領北原村（川口市）　大門宿大興寺天保七年筆子碑に北原早船儀助。当村天保八年普門品に北原村行衛郷早船貞次郎。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に行衛早船権次郎。鈎上村神明社元治元年碑に北原早船大角。白川家門人帳に明治二年・足立郡北原村稲荷大明神々主早船進。明治七年副戸長早船儀兵衛。明治九年副戸長早船僖三郎・天保五年生あり。十五戸現存す。

三　同郡赤山領立野村（川口市）　西福寺文政二年湯殿山碑に立野早船富治郎、弘化三年百観音に当所・早船八太郎・早船勝右衛門・早船弥惣・早船伝蔵・早船由五郎。二宮神社文政十三年鳥居碑に当所早船弥惣兵衛、天保三年奉納額に早船忠蔵。信州善光寺山門東安政三年常夜燈に武蔵国足立郡立野村早船八太郎・早船蔵助・早船弥四郎。吉岡組金剛寺明治三年門下碑に早船市郎次・早船勝之助・早船八太郎。明治九年戸長早船八太郎・文化十四年生。明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流西立野村早船平吉。二宮神社明治二十年絵馬に西立野早船平左衛門、明治二十一年絵馬に早船純郷、明治二十八年絵馬に当所早船国蔵、明治三十二年絵馬に早船弥藤治・早船栄吉。明治三十五年物品販売商早船儀三郎・植木商早船角太郎・園芸会社早船善之助。木曽呂村朝日神社明治三十五年鳥居碑に西立野早船常吉あり。十戸現存す。

四　同郡赤山領領家村（川口市）　稲荷社慶応二年筆子碑に早船喜右衛門・早船嘉藤治・早船源左衛門あり。九戸現存す。次項参照。

五　同郡赤山領源左衛門新田（川口市）　当村に此氏多く存す（二十六戸）。古峯神社弘化四年碑に「早船連綿相続十六世、元亀天正之際、武州赤山邑土着す」。今の赤山村ではなく、当村のことか。風土記稿源左衛門新田条に「古は大塚村と唱へたり。中古荒廃せしを何の頃か、今の名主源左衛門が先祖源左衛門再墾せしによりかく村名となれりと云ふ。この村、正保改定のものにも見えたれば其再墾せしも近きことにはあらざるべし。民家十二軒、村の総鎮守は木曽呂村の氷川社なりと云ふ」。寛永二年早船源左衛門が再開発して村名を源左衛門新田と唱えたが、村民は旧来の大塚村を称していた。当村享保八年地蔵尊に大塚村早船源左衛門・早船利右衛門・早船伝右衛門、享保二十年地蔵尊に赤山領大塚村早船源左衛門・早船伝右衛門、元文二年庚申塔に大塚村早船源左衛門。明治九年副戸長早船源左衛門・文政九年生。明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流源左衛門新田早船辰蔵正徳。木曽呂村朝日神社（旧氷川社）明治二十七年御神燈に源左衛門新田・早船源左衛門・早船辰五郎・早船福松・早船七兵衛・早船仙蔵・早船藤治郎、明治三十五年鳥居碑に源左衛門新田・早船治兵衛・早船時三郎・早船仲太郎・早船左治郎・早船波太郎。昭和三年興信録に「神根村・早船為五郎・所得税二十四円」あり。

六　同郡三沼領木曽呂村（川口市）　阿弥陀堂寛政九年湯殿山碑に早船重治郎・早船茂右衛門・早船團蔵、天保十二年庚申塔に早船文治郎・早船善五郎。朝日神社明治二十七年御神燈に当所早船善五郎・早船紋治郎あり。十二戸現存す。

七　同郡三沼領戸塚村（川口市）　七郷神社明治中期碑に早船鹿之助。昭和三年興信録に「戸塚村・早船鹿之助・所得税二十四円」。五戸現存す。

八　同郡三沼領下山口新田（浦和市）　稲荷社天保年間御神燈に当所早船富五郎、明治三十九年碑に下山口早船房次郎。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に下山口新田早船次郎吉あり。六戸現存す。

早部　ハヤベ　浦和、大宮、川口、与野、鴻巣、坂戸、鶴ヶ島、所沢等に存す。前橋市三十戸あり。

一　埼玉郡和戸村（宮代町）　宇宮神社嘉永二年奉額に早部武七あり。現存無し。日下部にて十三戸存す。

早間　ハヤマ　川口、新座、岩槻、春日部、越谷、草加、幸手等に存す。

早馬　ハヤマ　川口に存す。

早山　ハヤマ　桶川、伊奈、越谷、坂戸等に存す。

速山　ハヤマ　大宮に存す。

端山　ハヤマ　浦和、白岡、春日部、三郷、八潮、日高、東松山等に存す。神奈川県平塚市二十六戸、藤沢市六十八戸あり。

巴山　ハヤマ　北本に存す。

羽山　ハヤマ　埼玉郡貝塚村字羽山（蓮田市）は古の村名にて、貝塚神社延享五年力石碑に羽山村と見ゆ。各市町村に存す。○栃木県上都賀郡西方町八戸、粟野町八戸。○千葉県安房郡富浦町十八戸、和田町十六戸、館山市五十八戸。○長野県松本市四十五戸。○福島県原町市十九戸あり。

一　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「二十人扶持・羽山勘左衛門、二十石五人扶持・羽山七兵衛」あり。

二　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「武器預り下役・六石三人扶持・羽山左右治、同役・五石二人扶持・羽山幸助、同役同高・羽山善蔵、子供・二人扶持・羽山弥次郎」。明治四年忍藩士族名簿に「六石四人扶持・羽山造治、同高・羽山快三、十石二人扶持・羽山弁次郎、五石二人扶持・羽山伊蔵、四石二人扶持・羽山信俊」あり。

葉山　ハヤマ　神奈川県三浦郡葉山町十九戸、三浦市二十五戸、厚木市三十八戸あり。

一　埼玉郡台村（菖蒲町）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

二　同郡三箇村（菖蒲町）　明治九年副戸長葉山七平・文政八年生。私塾師匠葉山立亭、其の弟子に私塾師匠葉山孝次・明治二十年没六十三歳。三箇神社江戸末期碑に葉山幸次郎あり。五戸現存す。

三　川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「妙円・ハヤマ・寅年五月」あり。江戸初期なり。現存無し。

早俣　ハヤマタ　比企郡早俣村（東松山市）あり。

一　川越町　行伝寺過去帳に「妙忠・ハヤマタ・卯年三月。道永・ハヤマタ・午年十二月」あり。現存無し。比企郡早俣村住人か。

早松　ハヤマツ　大宮に存す。

早丸　ハヤマル　与野に存す。

早味　ハヤミ　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣にて、明治元年川越藩分限帳に「勘定奉行支配・四石余二人扶持・早味源五郎・五十歳」あり。

早海　ハヤミ　中山村智観寺万延元年本堂再建覚書に高麗郡赤沢村（飯能市）土方頭早海勘十郎・同早海菊蔵あり。現存無し。

早速　ハヤミ　浦和に存す。

早見　ハヤミ　埼玉郡早見村（久喜市）あり。新潟県西蒲原郡巻町十三戸。

一　入間郡砂新田（川越市）　昭和三年興信録に「高階村・早見長平・所得税十三円・営業税十九円」あり。二戸現存す。

二　比企郡下青鳥村（東松山市）　明治十一年山稼早見宗吉あり。四戸存す。

早水　ハヤミ　各市町村に存す。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・七石二人扶持・亡父弥五右衛門・早水弥五右衛門・十八歳」あり。

二　葛飾郡高柳村（栗橋町）　大日堂文化四年供養塔に早水新七・早水仲右衛門、文化六年供養塔に高柳村原・早水海左衛門・早水作次郎。香取社嘉永四年狛犬に早水重次郎・早水七右衛門、明治十四年幟碑に早水由太郎・早水重次郎・早水政次郎・早水寅吉・早水角三・早水与左衛門あり。五戸現存す。

三　川越町　昭和三年興信録に「川越市・早水藤四郎・所得税三十四円」あり。

速見　ハヤミ　埼玉郡鷲宮村鷲宮神社文書に「御当社御神幸出候、其村々には下早見村、上早見村等、合十八郷なり。用役早水甫左衛門・十八郷廻り云々。文政四年、神主大内隼人殿家来、早水甫左衛門・二十七歳。甫左衛門の子早水啓三郎」。天保十四年戸賀崎入門帳に鷲宮村早見五十次義治。文久三年戸島村小川文書に神道無念流鷲宮村速見房太郎。明治三年本多文書に鷲宮神社御家来之分早見房太郎。明治九年副戸長速見房太郎・嘉永三年生。菖蒲神社明治十年神道無念流奉納額に速見房太郎（鷲宮村長）あり。速見氏一戸、早水氏二戸現存す。

速水　ハヤミ　各市町村に存す。栃木県小山市三十六戸、新潟県見附市三十六戸、島根県大原郡加茂町八戸あり。

一　浦和町　岸町円蔵寺明治十四年顕妙塔に速水鉄五郎。昭和三年興信録に「浦和町・速水武彦・所得税十三円」あり。

二　埼玉郡三田ヶ谷村（羽生市）　蓮台寺延享二年鐘銘に速水五郎兵衛母。八幡社安政六年御嶽碑に早水金蔵。明治十一年鯉魚養育会社発起人速水新兵衛あり。一戸現存す。

三　入間郡勝瀬村（富士見市）　福岡村大杉神社明治十二年拝殿碑に勝瀬村速水源兵衛あり。現存無し。

林見　ハヤミ　所沢に存す。

頓宮　ハヤミ　三郷に存す。

早水　ハヤミヅ　各市町村に存す。

速水　ハヤミヅ　各市町村に存す。

早山　ハヤヤマ　川口、鳩ケ谷に存す。

羽吉　ハヨシ　熊谷に存す。

幡羅　ハラ　和名抄に遠江国佐野郡幡羅郷は南北朝時代久我家領目録に遠江国原御牧（静岡県掛川市）と見ゆ。讃岐国三木郡幡羅郷は波良と訓じ、承安五年文書に原保（香川県木田郡牟礼町原）と見ゆ。阿波国那賀郡幡羅郷は波良と訓じ、平城京出土木簡に「阿波国那賀郡原郷戸主百済牧夫・戸同部前守」とあり、百済部の居住地にて、弘仁二年四月紀に「阿波国人百済部広浜等一百人、姓を百済公と賜ふ」と。徳島県那賀川町大字原なり。また、武蔵国幡羅郡は、多賀城跡出土木簡に「大同四年十□月、武蔵国幡羅郡米五斗、部領使□□刑部古□□」。続日本後紀に「承和元年二月十七日、武蔵国播羅郡荒廃田百二十三町奉充冷泉院」。「嘉祥二年十一月、武蔵国播羅郡奈良神社」。承平五年和名抄に武蔵国幡羅郡幡羅郷を原と訓ず。寿永二年二月二十七日鶴岡八幡宮文書に武蔵国波羅郡内瓺尻郷と。正長二年十二月八日別府文書に武蔵国波羅郡別府郷と。天正七年三月中奈良村長慶寺文書に武州原郡と見ゆ。幡羅郷は今の原郷（深谷市）なり。

一　羊族幡羅氏　羊は渡来人の総称なり。ヒツジ条参照。粟生系図に「御堂関白道長公―宇治関白頼通公―民部大輔（任隆是也。多胡庄玉村ミドリ片山庄を知行す。宇治殿五男上野国に住す）―羊大夫（カラシナノ大明神と号す）―伴太大夫（依八幡殿仰、タン小玉党ニウタル）―伴太太郎（此スエハ上野国ニアリ）、弟伴太次郎―玉村次郎―片山武者五郎師綱―粟生五郎左衛門尉広隆（能登国粟生保雌雄保知行）―師広―行広（知行分、ムサシイヒ島郷、安房ヘタテノ郷、ヲワリ高鼻郷、アシ利ノ十岡郷、三河重原公文名足利屋敷、武蔵庁鼻シノブノアマルべ）」と見ゆ。粟生氏は羽咋郡粟生村（あお）より起り、同郡志雄村（しお）を知行す。幡羅郡庁鼻和郷は国済寺村・柴崎村・東方村・原郷一帯なり。埼玉郡余目郷は忍附近か。飯島郷は比企郡飯島村か。任隆は渡来人後裔にて、関白家の所領を管理す。道長の孫は仮冒なり。永正四年旅宿問答に「関白道長の孫・式部大輔任隆、武州の太守として下向し、幡羅の郡に御座す。郡徒之を称して幡羅太郎と号せり。此の曽孫に成田の三位式部大輔助隆、是れ八幡殿の伯父と申し伝へたり」と。藩翰譜に「成田氏。関白太政大臣道長公の御孫、式部大輔任隆の末葉なり。初め任隆・武蔵国の国司に任じ、当国幡羅郡に下り住む。其の子式部大輔助隆なり」と見ゆ。成田条参照。

二　藤原伊尹流の幡羅氏　忠平―師輔―伊尹（謙徳公、太政大臣）の後裔説は仮冒なり。成田系図に「謙徳公の孫・武蔵守基忠―宣直（騎西郡司）―武蔵大夫家忠―幡羅太郎道宗―成田大夫助高」と見ゆ。原郷字八日市に幡羅太郎館跡あり。南北四十間東西三十間にて、周囲に高さ六尺の土塁と巾三間の構へ堀をめぐらしてある。今は旧家斎藤家の屋敷となっている。

原　ハラ　原（はら、ばる）は村の意味で、渡来人集落を称す。詳細は春参照。○埼玉郡原村（久喜市）あり。太田新井村原新田（白岡町）は古の村名なり。内牧村原新田（春日部市）は浅間社宝暦十三年庚申塔に内牧原新田村と見ゆ。上手子林村字原（羽生市）は豊武神社文政十一年水鉢に原村と見ゆ。○足立郡谷古田領原村（川口市）、差扇領原村（大宮市）あり。吉野原村（大宮市）は原村と称す。原市村（上尾市）は米良文書に足立郡あけをの郷原宿と見ゆ。原馬室村（鴻巣市）あり。柳崎村字大原（川口市）は、永禄七年内山文書に柳崎之内原分と見ゆ。○入間郡大袋新田字原新田（川越市）は氷川社寛政六年碑に原新田と見ゆ。○高麗郡原市場村（飯能市）あり。小瀬戸村字原（飯能市）は古の村名にて、永禄五年宮寺与七郎知行（久須美村大江文書）に「四貫文・原、二貫五百文・松井田（飯能村）、二貫文・葛見（久須美）」と見ゆ。新堀村字原（日高市）は正保二年報恩寺末寺帳に原村建光寺と見ゆ。○大里郡和田村字原（熊谷市）は原新田と称す。○幡羅郡原ノ郷（深谷市）あり、幡羅条参照。西別府村字原（熊谷市）は寛政十二年馬頭尊に原講中と見ゆ。○榛沢郡原村（川本町）は文久元年猪俣村岡本文書に「榛沢郡上原村、下原村」と見ゆ、原村字下原を含めて、現在は上原村と称す。中瀬村字原（深谷市）は風土記稿に「天正十二年新田足利を責るとて、北条氏邦は中瀬ノ郷原にて勢揃す」と、今の原自治会館附近なり。○賀美郡勅使河原村字原（上里町）寛文三年久保文書に賀美郡原村と見ゆ。上野国緑野郡原之郷高山庄肥土村（神川町）は元禄年間に武蔵国へ編入す。此氏は信濃国、出雲国に多く存す。○群馬県佐波郡玉村町九十戸、館林市百七十戸、高崎市百三十戸。○茨城県東茨城郡茨城町四十二戸、鹿島郡波崎町九十六戸、行方郡北浦町四十七戸。○千葉県安房郡富山町三十五戸。○山梨県北巨摩郡高根町六十四戸、甲府市百五十戸。○長野県上高井郡小布施町四十戸、南佐久郡川上村四十戸、上伊那郡辰野町四十戸、高遠町三十八戸、箕輪町百十六戸、南箕輪村百二十五戸、下伊那郡高森町百四戸、阿智村百六十八戸、清内路村八十五戸、喬木村八十戸、豊丘村九十二戸、木曽郡木曽福島町九十二戸、上松町五十戸、南木曽町三十八戸、山口村四十三戸、佐久市百六戸、諏訪市百四十七戸、茅野市百十八戸、伊那市二百八十七戸、飯田市四百四十戸、松本市三百戸。○新潟県刈羽郡小国町三十八戸、長岡市二百六十戸。○福島県東白川郡棚倉町六十五戸。○秋田県仙北郡仙北町四十八戸。○青森県三戸郡五戸町七十六戸、田子町四十三戸。○島根県隠岐郡西郷町四十二戸、（出雲国）簸川郡斐川町二百四十戸、湖陵町百戸、大社町八十戸、大原郡大東町五十八戸、加茂町四十四戸、能義郡伯太町五十戸、安来市百六十七戸、平田市二百七十戸、松江市二百八十戸、出雲市二百九十戸。○鳥取県米子市百四十戸あり。

一　平姓千葉氏流原氏　下総国匝瑳郡原郷（千葉県香取郡多古町）より起る。此氏は在名にて苗字にあらず。小金日蓮宗本土寺過去帳（松戸市）に「原筑前守・嘉吉四年卯月。原左衛門朗珍、原右京亮朗顗、康正元乙亥十一月、東方にて兄弟打死。原大蔵・長禄三年二月、八幡に於いて打死、右馬助の兄。原豊前入道光胤・寛正七年二月、吉川にて。原左衛門次郎蓮教・文明二庚寅四月、大野。原信濃入道朗意・文明二庚寅八月、武州水はつにて逝去。原越後入道道喜・文明三年卯月九月、小弓館にて打死。原五郎・文明四壬辰正月。原弥五郎・長享三己巳五月。原弾正忠殿・永正十二乙亥五月朔日。原孫九郎・いやとみ打死・永正十四丁丑五月。原肥前・御上辺田にて、天正十二甲申正月。原孫平・慶長第五庚子八月、伏見にて打死」。セノオ条参照。原豊前入道光胤の二男能登守友胤は甲州に移り、其子美濃守虎胤・清岸と号し、日蓮宗身延山久遠寺過去帳に永禄七年正月二十八日逝去と。また、身延祖師堂過去帳に「蓮朝（原加賀守）・天文十八年五月朔日」、其子隼人佐昌胤は天正三年長篠合戦に戦死す、其子隼人佐昌栄、其の弟隼人佐貞胤あり。六十二項参照。また、原大隅守虎吉は、東八代郡門前村（一宮町金沢）曹洞宗広厳院天文十二年八月八日寄進状に「原半右衛門虎吉花押」とあり。幕臣原氏は、「千葉の支族にて下総国小弓の城主原四郎胤高が後なり。原大隅胤歳（新七郎。天正十年勝頼没落の後、東照宮に仕へる。天正十二年死す、法名日敬、身延山久遠寺に葬る）―刑部胤従（半左衛門。慶長八年死す、法名日止）」とあり。日蓮宗以外の家は是等とは別流なり。

二　丹党原氏　賀美郡原村（勅使河原村字原）より起る。丹庄阿保地誌に「丹党五十余家、原」と見ゆ。

三　江戸氏族原氏　荏原郡六郷領原村（大田区多摩川二丁目）より起。応永七年鶴岡八幡宮文書に六郷保内原郷とあり。紀州米良文書に「応永二十七年、名字武蔵国江戸書立、はらとのいっせき」と見ゆ。

四　高麗氏家臣の原氏　高麗郡原村（新堀村字原）より起る。新堀村町田文書に「正平七年、高麗経澄軍忠状に若党原七郎手負云々」と見ゆ。在名にて現存無し。

五　小田原城士の原氏　小田原所領役帳に「他国衆原上総介、六貫三百八十七文・入西長岡（坂戸市）」あり。上総小弓臼井城主なり。

六　岩附城士の原氏　埼玉郡百間東村鈴木文書に「天正十五年、原勘解由左衛門」あり、鈴木条参照。また、足立郡長蔵新田藤波文書に「天正十七年十月二十三日、鶴間・根岸の知行人原兵庫助」と見ゆ。

七　鉢形城士の原氏　鉢形分限帳に「本国信州水内・大里住・原又左衛門、本国紀州伊都・原伝吉」あり、分限帳の本国は信用出来ず。

八　忍城士の原氏　成田分限帳に「十六貫文・原主税之助」あり。

九　深谷城士の原氏　深谷記に「上椙御譜代之臣、原市之丞」あり。

一〇　松山城士の原氏　天正庚寅松山合戦図に「北曲輪・原藤衛門・原勘解由良房・原右馬祐良清」あり、七十七項参照。また、秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「照秋院正寿・原藤兵衛母・慶長十七年十月」あり。

一一　原氏流中畝氏　秩父郡野上下郷の中畝家墓地寛政十一年供養塔に「中畝先祖原隼人祐」あり。横見郡一ツ木村の原氏より入婿となるか。

一二　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国武蔵生国同・原猪兵衛・二十六歳」あり。

一三　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・二百五十石・村上取立・原武雄」。万延二年川越藩分限帳に「御鑓奉行・二百石・原弥五八」あり。

一四　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御用人・百七十石・亡父兵右衛門・原八十右衛門・六十八歳、医師・八人扶持・養父而楽・原昌幹・三十六歳、医師隠居・昌幹養父・原而楽・六十三歳」あり。

一五　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「二百石・原六郎右衛門」。文化四年忍藩分限帳に「無役・百八十石・原治左衛門」あり。

一六　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御代官・六石余六人扶持・原新三郎、町奉行支配・四石余二人扶持・原伝五郎、御徒・二人扶持・原胤三郎」。安政四年秩父郡三沢村太幡文書に秩父御代官原新三郎。明治四年忍藩士族名簿に「八十六石余・原猪作、五人扶持・原龍太郎、四石余二人扶持・原岩吉」あり。

一七　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「百石・原久左衛門、十二石三人扶持・原九右衛門、十両・原忠左衛門」あり。

一八　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「百五十石・原甚兵衛、六石余二人扶持・原六右衛門、五両二人扶持・原六太夫、十俵・原金左衛門」あり。

一九　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御中小姓・原庄治郎」。

二〇　石戸領牧野氏家臣　牧野家文書に「原次郎左衛門・本国下総・石戸で召し抱へられ八十石、原十右衛門正長・正保元年大納戸御徒頭・百五十石」と見ゆ。

二一　関東郡代伊奈氏家臣　慶長二十年足立郡新染谷村検地帳に伊奈氏手代原七左衛門。元禄頃に原次左衛門。享保頃に原佐市右衛門。天明六年に原佐市右衛門・原佐仲太あり。

二二　葛飾郡三輪野江村（吉川市）　三輪之江神社明治二十八年碑に原春雄あり。現存無し。

二三　同郡不動院野村（春日部市）　藤塚村香取社江戸末期御神燈に不動院野村原庄五郎あり。一戸現存す。

二四　同郡大塚村（杉戸町）　八坂社万延二年天神宮碑に原忠太郎。延命寺明治六年碑に原宗五郎・原惣太郎あり。一戸現存す。

二五　同郡佐間村（栗橋町）　定福院寛延三年供養塔に原八十右衛門あり。一戸現存す。

二六　埼玉郡大場村（春日部市）　香取社享和三年普門品に原又右衛門・原半蔵・原吉五郎・原嘉兵衛・原佐兵衛。太田袋村琴平社文政三年水鉢に大場村原嘉兵衛。大門宿文政十一年会田文書に大場村惣代原又右衛門。香取社嘉永六年御神燈に原三五郎・原藤右衛門、嘉永七年御神燈に原三右衛門・原勘蔵。稲荷社文久三年庚申塔に原茂重郎・原彦兵衛・原音次郎。明治十三年埼玉県老農名簿に篤農者原慶三郎。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流大場村原房之助・原猶吉。香取社明治二十八年碑に原正太郎・原定之助・原太十郎。明治三十年所得税下調査簿に原又右衛門・慶応二年生・反別二十七町三反歩・地租二百九十四円、同年人名録に原正太郎・天保十年生・地租二十八円。明治四十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に農業原又右衛門・国税五百三十一円・県下百六十六位（県会議員）。稲荷社明治四十三年富士碑に原正太郎敷躬・原五郎・原幸右衛門・原一郎・原伊三郎あり。十八戸現存す。

二七　同郡大枝村（春日部市）　明治九年副戸長原豊吉・安政四年生。明治三十年所得税下調査簿に原豊吉・反別九町歩・地租九十五円あり。十八戸現存す。

二八　同郡岩槻町　浅間社天和二年庚申塔に原市右衛門尉あり。

二九　同郡鈎上新田（岩槻市）　保寿院延宝二年供養塔に原久右衛門。明治七年製糸会社人名録に原秀胤。明治三十年人名録に原雅胤・明治十一年生あり。現存無し。

三〇　同郡鷲宮村　鷲宮神社文書に「大川戸右近の婿・同忠左衛門貞勝は、小田原北条家臣原彦造昌智の男なり。父昌智は細谷葵入道と号し栗原に隠居す」。同社嘉永五年狛犬に当町原八喜吉。明治五年鷲宮村名主代組頭原新太郎あり。二戸現存す。

三一　同郡下新井村（大利根町）　上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡北下新井村欠折・原斧蔵あり。一戸現存す。

三二　同郡加須町　明治三十五年薬種商原久蔵・医師原寛あり。

三三　同郡花崎村（加須市）　明治九年副戸長原桂次郎・文政十一年生あり。四戸現存す。

三四　同郡騎西町　明治三十五年菓物商原庄吉あり。

三五　同郡小林村（菖蒲町）　当村に此氏多く存す。妙福寺天保二年題目講に原喜太郎母・原俊兵衛。雷電社弘化三年棟札に組頭兼名主原長兵衛。明治九年戸長原長兵衛・天保十四年生、副戸長原権太郎・文政五年生。菖蒲町菖蒲神社明治十年神道無念流奉納額に原良吉・原作兵衛・原繁・原源蔵・原荘二、小林村・原周蔵・原清五郎・原長三郎。明治三十年所得税下調査簿に原長三郎・反別九町三反歩・地租八十一円あり。

三六　同郡三箇村（菖蒲町）　小林村妙福寺天保二年題目講に三ヶ村原治兵衛。明治九年蚕種製造原門平あり。現存無し。

三七　同郡郷地村（鴻巣市）　安楽寺延宝二年庚申塔に原十右衛門、元文三年宝篋印塔に原平右衛門。久伊豆社元禄十三年御神燈に原平右衛門・原四郎兵衛あり。四戸現存す。

三八　同郡発戸村（羽生市）　観乗院文化十三年仙元碑に原天龍。現存無し。

三九　同郡須加村（行田市）　長光寺文政八年供養塔に原和助・原惣吉。熊野社嘉永五年御神燈に原善左衛門・原惣七、文久三年御神燈に原鶴之助。明治九年副戸長原惣七・文化十一年生、副戸長原保次・天保十三年生。須加村会議員に原健三郎・慶応元年生、原久七・明治九年生、原治右衛門・明治二十年生、原倉吉・明治二十四年生、原義信・明治三十七年生、原正安・明治四十三年生あり。四戸現存す。

四〇　同郡持田村（行田市）　阿弥陀寺安永六年庚申塔に原辰右衛門あり。三戸現存す。

四一　足立郡川口町　川口神社明治三十九年碑に原浅八あり。

四二　同郡芝村（川口市）　観音堂天保二年鰐口銘に塚越・原嘉右衛門娘。八幡社文久三年石華表碑に当村原喜右衛門。慈星院明治十年碑に原喜右衛門・原虎蔵あり。

四三　同郡中居村（鳩ケ谷市）　稲荷社文久二年水鉢に上新田邑大熊之組大場村・原貞助あり。

四四　同郡蕨宿　和楽備神社天保三年御神燈に原六兵衛。三学院明治十五年水鉢に原六兵衛・原宇右衛門あり。

四五　同郡塚越村（蕨市）　稲荷社文政十三年庚申塔に当所原弥七・原権兵衛あり。

四六　同郡浦和町　明治三十五年荒物商原定吉あり。

四七　同郡大宮町　明治三十五年菓子商原権兵衛あり。

四八　同郡今羽村（大宮市）　当村宝永六年庚申塔に原長左衛門。氷川社明治三十九年碑に原清一あり。二戸現存す。

四九　同郡上尾町　明治六年醸造業原玄長。愛宕社明治四十四年碑に原秋三・原秀三あり。

五〇　同郡原市町（上尾市）　紀州那智山米良文書（室町時代）に「足立郡あけをの郷原宿・原五郎さへもん」と見ゆ。伊藤条参照。

五一　同郡深井村（北本市）　寿明院寛政九年寄附帳に深井村原弥助・原七郎兵衛・原久八.。明治四年組頭原七郎兵衛・三十八歳。原馬室村観音堂明治三十四年馬頭観音碑に深井原元右衛門あり。七戸現存す。

五二　同郡東間村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に東間新田原丈右衛門あり。六戸現存す。

五三　同郡鴻巣町　明治十五年旅宿原八右衛門。明治三十年本一町・原伴左衛門あり。

五四　同郡上谷新田（鴻巣市）　浅間社明治十六年碑に上谷村新田原松五郎あり。

五五　同郡原馬室村（鴻巣市）　当村に此氏多く存す。観音堂明治三十四年馬頭観音碑に地元・原虎五郎・原七郎右衛門・原弥五郎・原嘉一郎・原長三郎・原芳蔵・原亀之助・原久太郎・原辰五郎・原才助・原栄助・原時次郎、宮本・原三次郎・原吉之助・原米次郎・原栄三郎・原鍋次郎・原松之助・原六造・原勇吉・原慶次郎・原茂七・原三左衛門・原逸次郎、谷津・原勇助、川端・原菊次郎・原繁右衛門・原益三あり。

五六　新座郡志木町　御嶽社明治八年実明講に原弥五郎。明治三十五年薬店糸屋原八十三・薬商原林吉あり。

五七　同大和田町（新座市）　明治三十五年医師原平太あり。

五八　入間郡駒寺野新田（日高市）　明治九年副戸長原勘次郎・嘉永四年生あり。現存無し。

五九　同郡中神村（入間市）　豊泉寺寛文九年鐘銘に中神村原一左衛門あり。三戸現存す。

六〇　同郡川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「妙蓮・原。妙福・ハラ殿母」。江戸初期なり。御嶽社明治三十年碑に原新三郎・原武十郎。氷川社明治三十三年玉垣碑に原重蔵・原久吉。明治三十五年織物商原万次郎・照降商坂本屋原重蔵。三芳野神社明治四十年碑に松江町原万次郎。相州大山女坂の山道明治四十一年碑に川越町機業原万次郎あり。

六一　同郡府川村（川越市）　風土記稿府川村条に「八幡社神職原摂津」。当村嘉永二年馬頭尊に府川村原音右衛門。八幡社明治三十九年碑に原寿作あり。九戸現存す。

六二　同郡久下戸村（川越市）　氷川社文化八年浅間碑に下久下戸村原金兵衛あり。一戸現存す。

六三　同郡大仙波村（川越市）　入間郡誌に「大仙波村、此村の人・原達三郎開鑿の事に従う」、代々名主なり。川越藩御用達にて、文化四年松平大和守役付に「二人扶持・大仙波村頭取名主原与惣治」。慶応四年名主原伝蔵（原正二郎家文書）。明治九年御朱印地戸長原伊兵衛・文化十一年生、戸長原伝三・嘉永三年生、副戸長原郷左衛門・享和元年生。氷川社明治四十一年碑に原伝三・原万三・原満三郎・原徳太郎あり。十五戸現存す。また、天台宗中院過去帳に「芳岳・カツヨリ祖母也・長林。勝頼大神儀・甲州大守也・原隼人。信香・信虎御ムスメ・年十六才・原隼人。信勝・カツヨリノ曽子・年十六才・原隼人。妙儀尼・大仙波・原安芸内・天正十八年・原大炊助母。妙奝尼・原安芸内。道蓮禅定門・大仙波・奥栖隼人原氏・慶長十年二月十四日。欣淨院心月道観門居士・大仙波・原隼人・元和六年九月二十日」あり。法名信勝は勝頼の子太郎信義にて多摩郡小津村曹洞宗法雲寺（八王寺市）開基と云う。信香は寺井宿浄土真宗真行寺（川越市宮元町）開基真行尼にて信玄の妹なり。紀州高野山清浄心院過去帳に「霊位妙惺禅定尼・武州日東河越庄志垂郷原兵庫為母・九月二十七日（元亀四年）」。岩崎条八十四項参照。当村の原安芸一族の原隼人は施主となり主君武田一族を祀っている。隼人は当村出稼衆にて、一項の日蓮宗原隼人佐とは別家の者である。

六四　同郡紺屋村（坂戸市）　幕末の勤王志士桜国輔は本名原三郎にて、豪農原菊次の子なり。三芳野村消防組原森蔵・文久二年生、原信・明治二十年生、原善作・明治二十四年生、原伊三郎・明治三十三年生。県会議員農業原次郎・明治二十八年生あり。十六戸現存す。

六五　同郡今市村（越生町）　法恩寺天保十一年文書に頼母子講原源右衛門あり。一戸現存す。

六六　同郡大谷村（越生町）　和田村石井家手習帳に弘化四年・大谷村原由太郎。成瀬村見正寺明治初年筆子碑に大谷村原芳太郎・原弥三.。明治二十一年消防組総代原松太郎。摩多利神社明治四十一年碑に大谷・原万吉・原松五郎あり。七戸現存す。

六七　同郡上谷村（越生町）　明治十二年上谷堂山村組合人名表に原定五郎・原巳之吉・原金十郎・原清十郎・原銀平。桃木村八幡社明治十四年筆子碑に上谷村原完五郎。明治三十三年上谷下組原新吉・原松吉・原庄三郎あり。七戸現存す。

六八　同郡津久根村（越生町）　明治二十三年理髪店原六太郎。現存無し。

六九　高麗郡飯能町　明治十四年餅商原卯助あり。

七〇　同郡中山村（飯能市）　智観寺明治十七年勧進帳に中山村原貢あり。

七一　比企郡古池村（越生町）　明治二十四年建具職原隣平あり。現存無し。

七二　同郡出丸中郷（川島町）　岩室観音堂寛政十二年頃碑に出丸中郷原武右衛門あり。現存無し。

七三　同郡玉川郷　平村滝ノ鼻公園明治三十一年太子講碑に玉川原伊勢蔵。今宮社明治四十五年碑に原要吉あり。三戸現存す。

七四　同郡松山町　明治三十五年籠職原藤七あり。

七五　同郡上野本村（東松山市）　当村嘉永五年弁財天碑に原利曽次。上岡妙安寺観音堂明治三十一年碑に上野本・原九一郎・原浜吉・原菊次郎あり。七戸現存す。

七六　同郡青山村（小川町）　当村に此氏の旧家あり。十六戸現存す。十項の原藤兵衛は当村住人か。

七七　横見郡一ツ木村（吉見町）　駿河国駿東郡原村（静岡県沼津市）は地名附会なり。其の後裔に下総国葛飾郡国分村（千葉県市川市）より起る千葉常胤の五男国分胤通（文治頃の人）に仮冒す。家譜は信用出来ず。原氏畧記に「始祖原宗三郎定房（鎌倉住、文治年中駿河国原之郷に住す、依之原と号す）、二代原宗八郎道房（同）、三代原国分五郎道胤（常胤男、同）、四代原登之助定胤（同）、五代原能登守友胤（甲州武田家臣）、六代原美濃守虎胤（勇徳院殿虎胤入道清岸大居士、永禄八年八月五日卒）、七代原大隅守良胤（虎正とも云う、元亀六年一ツ木住。勝徳院殿良胤道岩大居士、天正十年八月七日卒）、八代原勘解由良豊（信濃国籠居、元亀元年来る。満徳院殿自得道證大居士、慶長六年九月十八日卒、行年七十一）、九代原右馬之助豊晴（一ツ木住、入道而良清法印と云う、高徳院良清熙興大居士、寛永十六年八月五日卒）」。十項では右馬祐良清の名がすでに見える。天正二年生まれで、十八年の時、十六歳で入道良清法印と名乗っていたとは考えられず。風土記稿一ツ木村条に「旧家者徳太郎、当村草創の民なり。先祖勘解由良房は武田家人原隼人正が子孫なり。甲州没落の後、久しく当郡松山に住す。文禄年中当所に土着して民家に下る。其の後良房・慶長六年七十一歳にして卒す。其の子右馬祐良清は寛永十六年六十五歳にして卒す。墳墓龍ヶ谷にあり、此の正統は則ち徳太郎なり。良清が次男五郎兵衛良親が子孫は今名主作兵衛是なり。新義真言宗長泉寺開基は、村民作兵衛、徳太郎等が先祖の由」と見ゆ。甲州武田家臣原美濃守や原隼人は日蓮宗信徒にて無関係なり。名主原作兵衛は延宝二年に久下堤を完成し、子孫の五郎兵衛は天保四年堤修築して弘化二年没す。御所村新義真言宗安楽寺弘化五年供養塔に一ツ木村原作兵衛秀善。箕田村嘉永六年増島俊輔筆子碑に一ツ木村原荘之助・原金蔵・原由太郎・原半左衛門・原彦市郎。氷川社慶応元年幟碑に原作兵衛・原荘之助・原半左衛門。明治九年戸長原作兵衛・天保十年生、戸長原一繁・嘉永元年生、副戸長原荘二・嘉永元年生、副戸長原登吉郎・嘉永四年生。氷川社明治三十七年碑に原高吉・原倉吉・原曻吉あり。十三戸現存す。

七八　同郡久保田村（吉見町）　前項原氏系図に「原右馬祐豊晴―金右衛門信久（久保田村へ分家す）」。明治十二年鋳物商原金蔵あり。五戸現存す。

七九　大里郡上恩田村（大里町）　明治九年戸長原美矩・文政五年生。明治十二年戸長原源作。上岡妙安寺観音堂明治三十一年碑に上恩田原熊金あり。九戸現存す。七項参照。

八〇　男衾郡鷹巣村（寄居町）　上州世良田村長楽寺文書に「元徳三年七月十二日、平時雄が田在家注文書、男衾郡小泉郷内一宇一貫五百文・原六郎入道・鷹栖」と見ゆ。今市村児泉神社附近を小泉郷と唱え、隣村の鷹栖村なり。或は今市村の小名か。平条十四項参照。当村に現存無し。

八一　幡羅郡原郷（深谷市）　旧家にて、武蔵志に「原郷木ノ本の民・原氏が庭前松、タハリ十余間、可愛美なり」。明治九年副戸長原常吉・天保十一年生。明治十八年最上農名簿に原藤吉・耕宅地十町歩・山林四町二反歩所有。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に原郷原周三郎。東方村熊野社明治三十年碑にハラゴウ原藤吉。幡羅村会議員に原藤吉・安政五年生、原政吉・明治十七年生、原算一郎・明治三十九年生あり。十九戸現存す。

八二　同郡柴崎村（深谷市）　信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州幡羅郡芝崎村原民重郎・原民五郎。明治九年副戸長原幸三郎・天保六年生。幡羅村会議員原教作・明治三十八年生あり。十七戸現存す。

八三　同郡東方村（深谷市）　熊野社明治三十年碑に原巳之助。五戸現存す。

八四　榛沢郡深谷町　明治三十五年陶器商原市太郎・生魚商永徳屋原角太郎あり。

八五　同郡榛沢村（岡部町）　白川家門人帳に天保十五年榛沢村原兵庫あり。神主なり。現存無し。

八六　児玉郡本庄宿　安養院延宝五年鐘銘に原太郎兵衛。石川流木村源蔵（天保十年没）門人に本庄宿原佐右衛門。明治四年諸井文書に台町原平蔵。明治三十五年米穀商原りや・同商原源次郎・菓子商原勝次郎・パン屋原仲七・飲食店原清衛あり。

八七　同郡東富田村（本庄市）　熊野十二社文久四年馬頭尊に原三右衛門あり。現存無し。

八八　同郡北堀村（本庄市）　当村に此氏多く存す。庄田文書に「北堀村名主庄田庄右衛門、其後・承応明暦頃は原九郎兵衛方江役譲候。原要助名主退役者安永七年。天明五年は原四郎右衛門へ渡る。寛政二年は原要助婿永助江定役と成る」。文政十年文書に組頭原四郎右衛門。東福寺天保六年供養塔に北堀本邑原永蔵。明治九年副戸長原勝四郎・文政九年生。明治二十一年皇国武術英名録に甲源一刀流北堀村原仙五郎あり。

八九　同郡児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に原善六あり。

九〇　同郡小茂田村（美里町）　明治十三年小池文書に南・原栄吉あり。三戸現存す。

九一　同郡新里村（神川町）　明治五年小前議定書に原喜三郎・原久蔵あり。現存無し。

九二　同郡渡瀬村（神川町）　土豪なり。武蔵国児玉郡誌に「渡瀬村の木宮神社は、永享年間に須藤伊予守、原大学、山口上総介、田中膳道、矢島左馬之助、大谷内蔵人等の協力によって興隆したと伝う」。龍宝寺安政四年三ツ具足寄附に原太兵衛。明治二年五人組帳に年番名主原太兵衛・組頭原喜十郎・組頭原庄作。明治四年戸籍に原喜十郎・原庄作・原治平・原浪太郎。太兵衛の子原善三郎（文政十一年生、明治三十二年没）は実業家にて、貴族院・衆議院議員を勤む。児玉記考に「旧家原鉄三郎、先代を太平と云ひ、旧幕の頃は黒田豊前守の御用達及び名主組頭役を勤め三人扶持を宛て行はれたり。当主は県下屈指の財産家にして有名なる故貴族院議員原善三郎の承継者なり。現に第二銀行の頭取を勤める」。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年農業原鉄五郎・元治元年生・国税千三百三十七円・県下四位、大正十四年原鉄五郎・国税千四百四十一円・県下百十六位、原利平・文久二年生・国税千七十九円・県下百七十一位。大正十二年大地主名簿に原鉄五郎・田二十四町八反歩・畑五十町歩、原利平・田十三町三反歩・畑四十一町三反歩所有あり。十一戸現存す。

九三　那賀郡白石村（美里町）　用土村明治十三年仙元碑に白石郷原和助あり。五戸現存す。

九四　秩父郡大宮郷　小名近戸に此氏多く存す。宝永七年松本御用日記に「原七郎右衛門・十七年以前相果割元御役儀上り申候」。明治三年菓物商原卯助・二十八歳あり。

九五　同郡上吉田村　赤岩中興開基号日光庵記録に「文化十一年、上吉田村組頭原竹治郎、日光様御出生家は原実右衛門」と見ゆ。三戸現存す。

九六　同郡下吉田村　明治十四年小前惣代原久米吉。金剛院明治三十年筆子碑に原十七吉あり。六戸現存す。

九七　同郡阿熊村（吉田町）　彦久保文書に「天正十四年十月十八日、秩父郡阿久間篠蔵の百姓与二郎の訴訟に、北条氏邦は、小六郎は譜代之者之由候、御糺明候処に小六郎は原六右衛門所へ欠落参候、云々」と見ゆ。現存無し。

九八　同郡上小鹿野村　明治二十年春日二丁目原菊造、上一丁目原権八.。明治三十五年酒造業和泉屋原菊造・木炭米穀商原武吉。七戸現存す。

九九　同郡薄村（両神村）　明治五年質屋原幸太郎あり。二戸現存す。

一〇〇　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「川口町・原十郎・十八円、草加町・原靖・十二円、蕨町・原録太郎・二十二円、小谷村（吹上町）・原善吉・二百三十五円、小林村（菖蒲町）・原竹蔵・四十三円、礼羽村（加須市）・原久蔵・二十七円・四十六円、志木町・原林吉・百四十円・三十三円、大和田町（新座市）・原平太・十四円、川越市・原春吉・二十八円、南古谷村（川越市）・原久之丞・九円、三芳野村（坂戸市）・原次郎・百三十四円、梅園村（越生町）・原新吉・十円、北吉見村・原巌・四十八円、原亀三・十一円、熊谷町・原長太郎・九十一円・九十八円、原猪吉・九十八円・八十四円、原策・五十一円・六十五円、原三郎・三十六円、深谷町・原伊之・百四十三円、幡羅村（深谷市）・原恭平・十七円、児玉町・原米三・二十七円・五十円、若泉村（神川町）・原鉄五郎・千三十一円、原芳保・四百五十一円・四十二円、原菊蔵・二十二円、秩父町・原和助・十二円・十六円」あり。

葉良　ハラ　男衾郡立原村（寄居町）吉定寺安永五年鐘銘に萩和田・葉良友衛門あり。立原村字萩和田、西ノ入村字萩和田にて、西ノ入村に原氏一戸現存す。

原井　ハライ　原は二字の制により原井と記す。幡羅郡原井村（妻沼町）、入間郡宗岡村字ハライ、北秋津村字原井あり。

一　新座郡片山村（新座市）　明治九年副戸長原井金右衛門・文政八年生。明治十五年片山村学区会議員原井隆太郎あり。十二戸現存す。

払井　ハライ　三郷に存す。

秡井　ハライ　入間郡竹間沢村（三芳町）明治十五年質屋秡井多吉・天保十三年生。昭和三年興信録に「三芳村・秡井貢・所得税四十三円」あり。現存無し。

秡川　ハライガワ　福島県西白河郡表郷村七戸、西郷村八戸、白河市四十六戸あり。

一　比企郡番匠村（都幾川村）　昭和三年興信録に「平村・秡川米蔵・所得税十円」あり。一戸現存す。

祓川　ハライガワ　浦和、大宮、北本、所沢、寄居等に存す。

原井川　ハライガワ　浦和に存す。

原市　ハライチ　足立郡原市村（上尾市）あり。当村住人にて、川越日蓮宗行伝寺過去帳に「宗調・原市ノ太夫・亥年」あり。江戸初期なり。

原市場　ハライチバ　高麗郡原市場村（飯能市）あり。

波羅門　ハライモン　男衾郡西ノ入村鎮守波羅門社は碑に波羅以門神社・波羅比門神社とあり。同郡保田原村鎮守婆羅門社は碑に波羅伊門神社とあり。古はハラモンと呼び、今はハライモンと称す。

原尾　ハラオ　児玉に存す。

原岡　ハラオカ　上尾、北本、和光、越谷、入間、三芳等に存す。

原賀　ハラガ　浦和、川口、越谷、三郷、所沢等に存す。

原ヶ谷戸　ハラガヤト　新座郡原ヶ谷戸村（新座市馬場町二丁目）、足立郡藤浪村字原ヶ谷戸、比企郡下泉井村字原ヶ谷戸あり。

原川　ハラカワ　比企郡竹沢郷原川村（小川町）は、正保頃に竹沢村より分村す。当村は平安時代集落跡の広見遺跡などあり、原川氏は村草創よりの土着者なり。駿河国益頭郡（焼津市）に原川氏百戸現存するが無関係なり。和名抄の益頭郡小川郷（焼津市）に連想するか。ふるさとめぐり（山田稔著）に「大力の某は駿河国より、武蔵安戸城主に仕官し家老原川丹後守と称す。屋敷跡は原川村の原川豊次宅で、丹後守愛用の鎧櫃が現存す」と。但し、安戸城主山田家系記録（御堂村浄蓮寺所蔵）に「山田伊賀守家老平野宮内、与力馬場・加藤・伊藤・横川・市川」とあり、原川丹後守の名は見えず。丹後守は本城の松山城主上田氏家臣なり。日蓮宗浄蓮寺過去帳に「大旦那上田朝直、武家旦縁原川丹後守。法任・原川源二郎・文禄四年二月。妙任・原川猿房・慶長十年五月。浄賢院行西・原川丹後守・慶長十年八月。宗慶・原川八十郎・元和四年三月。宗覚・原河・甲子年五月。法春・原川女・寛永四年三月。蓮心院浄泉・原川藤右衛門・丙戌年五月・七十六歳。蓮池院妙泉・原川九左衛門母・丙戌年十一月。妙行・竹沢・原川九兵衛母・寛文七年十二月。法泉院蓮行・竹沢ノ原川九兵衛・寅年十月」。川越日蓮宗行伝寺過去帳に「浄泉・大河原衆・原川藤右衛門・戌年五月」と見ゆ。明治九年地主惣代原川小一郎。明治二十七年瓢底倶楽部原川金三郎。松山町箭弓神社明治三十一年碑に竹沢村原川小一郎。駒形社明治四十年水鉢に当所原川小一郎。昭和三年興信録に「竹沢村・原川金十郎・所得税百五十三円」あり。六戸現存す。

原木　ハラキ　浦和、桶川、鷲宮、庄和、飯能、三芳、東松山等に存す。

茨木　バラキ　越谷に存す。

原口　ハラグチ　原は村の意味、口は人の数で、渡来人集落を原口と称す。足立郡宮下村字原口、入間郡三ヶ島村字原口、榛沢郡新戒村字原口あり。群馬県太田市三十五戸、長野県南安曇郡梓川村二十戸あり。

一　忍城士の原口氏　成田分限帳に「五十一貫文・原口九郎兵衛、三十貫文・原口左京、二十貫文・原口六左衛門、二十貫文・原口長三郎、十五貫文・原口勘六」あり。上之村龍淵寺寛政八年鐘銘に「成田下総守殿家来末葉、原口九郎兵衛末葉・熊谷・原口金右衛門」と見ゆ。

二　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「坊主・四両二人扶持・原口治斎」あり。

三　忍藩松平下総守（奥平）家臣　明治四年忍藩士族名簿に「御勘定坊主・四石二人扶持・原口猪之七、御台所奉行支配下役・原口清次郎」あり。

四　岡部藩安部氏家臣　慶応四年岡部藩分限帳に「御帳付・四石余二人扶持・原口富作」。明治四年半原県分限帳に「非役・原口遥平・士族」と。

五　葛飾郡寄巻村（三郷市）　信州善光寺本堂北嘉永六年常夜燈に葛飾郡二郷半領寄巻村原口定八.。明治九年副戸長原口定八・嘉永二年生あり。一戸現存す。

六　埼玉郡鷲宮町　鷲宮神社嘉永五年狛犬に当町原口新太郎あり。三戸現存す。

七　同郡加須町　明治三十五年穀肥料木炭商原口甚太郎あり。

八　同郡菖蒲町　明治三十五年豆腐商原口百太郎あり。

九　同郡安養寺村（鴻巣市）　安政三年剣術義集館（持田村三田文書）に安養寺村原口茂吉。明治四年名主原口長吉・三十一歳、組頭原口新蔵・五十五歳。明治九年戸長原口長吉・天保十二年生。大間村久保寺明治十四年筆子碑に安養寺村原口丈吉。明治二十一年皇国武術英名録に北辰一刀流安養寺村原口丈吉。鴻巣町勝願寺明治三十五年馬頭尊に安養寺原口保五郎。八幡社明治三十九年碑に原口文吉・原口保五郎・原口権右衛門・原口惣吉・原口繁蔵・原口辰五郎・原口勘左衛門・原口浪右衛門・原口倉吉・原口袖作・原口長蔵・原口常吉・原口末吉。十四戸現存す。

一〇　同郡羽生町　明治三十五年菓子商原口半五郎あり。

一一　同郡稲子村（羽生市）　源昌院文政八年碑に原口兵七.。諏訪社明治八年浅間碑に原口市太郎・原口米吉・原口兵七あり。五戸現存す。

一二　同郡砂山村（羽生市）　愛宕社文化元年弁財天碑に原口忠之丞あり。現存無し。

一三　同郡上新郷（羽生市）　当村に此氏多く存す。愛宕社明治十三年水鉢に原口熊太郎あり。

一四　同郡行田町　嘉永六年忍藩分限帳に「十人扶持・御用達・町年寄格原口長兵衛」。行田史譚に「嘉永年中、格式御免原口長兵衛、同原口真之助」。小針村神仙寺嘉永六年供養塔に行田町原口長兵衛あり。

一五　同郡小針村（行田市）　下新田村羽黒社天保七年石華表碑に小針・原口嘉右衛門あり。現存無し。

一六　同郡谷郷（行田市）　春日社文化九年水鉢に一本町原口辰兵衛あり。一戸現存す。

一七　同郡白川戸村（行田市）　西明寺宝暦五年供養塔に原口五右衛門あり。二戸現存す。

一八　同郡酒巻村（行田市）　八幡社慶応三年八海山碑に酒巻村原口定次郎あり。現存無し。

一九　同郡佐間村（行田市）　天神社天保六年御神燈に当所原口久吉、嘉永六年塞神碑に当所原口柳吉、明治四十五年碑に原口茂十郎。六戸現存す。

二〇　同郡斎条村（行田市）　風土記稿忍城下町条に「八幡町大長寺開山岌善上人は元亀天正の頃奥州筋へ巡行せし時、郡中斎条村の百姓原口与右衛門が宅にしばし滞留して当寺を開く」と見ゆ。但し、大長寺及び簑沢村正光寺開山岌善は永禄六年寂五十九歳なり。明治九年副戸長原口房五郎あり。十戸現存す。

二一　同郡上川上村（熊谷市）　観音堂延享元年庚申塔に原口利右衛門、文政元年庚申塔に原口仁左衛門・原口茂右衛門。明治二年村役人原口文右衛門あり。十二戸現存す。

二二　足立郡鴻巣宿　天保四年鴻巣宿商人講中に原口権右衛門。安政三年剣術義集館（持田村三田文書）に鴻巣宿旅宿業原口要助。原馬室村観音堂明治三十四年馬頭観音碑に鴻巣原口惣次郎。勝願寺明治三十五年馬頭尊に当所原口惣次郎（飲食店）・原口要助（旅館大野屋）あり。

二三　同郡箕田村（鴻巣市）　嘉永六年増島俊輔筆子碑に原口久八・原口富八あり。四戸現存す。

二四　同郡糠田村（鴻巣市）　氷川社文政元年庚申塔に糠田邑原口太三郎、明治十一年浅間碑に原口堪蔵、明治十三年碑に原口伊助。三戸現存す。

二五　同郡小谷村（吹上町）　当村に此氏多く存す。大芦村日枝社文化五年普門品に小谷村原口次郎吉。当村日枝社嘉永六年碑に上新田・原口佐吉・原口久松・原口藤兵衛・原口惣五郎・原口伊八・原口孫兵衛・原口常五郎・原口久米八、中側・原口三左衛門。明治九年副戸長原口治郎左衛門・天保四年生（組頭）。宝勝寺明治十三年馬頭尊に原口治郎左衛門。日枝社明治四十二年碑に原口直助・原口鹿之助・原口浪三郎・原口豊次郎・原口茂平。金乗寺明治四十五年碑に原口平吉・原口庄右衛門・原口縫之助・原口熊太郎あり。

二六　入間郡南永井村（所沢市）　嘉永三年吉田文書に組頭原口直右衛門。志木町敷島社明治初期狛犬に南永井村原口彦兵衛。明治九年副戸長原口彦兵衛・天保三年生。明治二十年茶業に原口彦太郎・原口清十郎あり。四戸現存す。

二七　同郡坂戸町　明治三十五年下駄商原口喜四郎・飲食店原口亀八.。明治四十三年菓子糸繭商原口兼吉・下駄職原口磯七・籠職原口作造・原口常平あり。

二八　同郡越生町　明治三十五年洋燈商原口善吉あり。

二九　高麗郡大塚野新田（鶴ヶ島市富士見）　戸宮村御嶽社（元は当村にあり）明治中期不動尊に当所原口友造あり。二戸現存す。同社明治十三年水鉢には脚折新田原口友吉とあり。鶴ヶ島市脚折に一戸現存す。

三〇　比企郡戸守村（川島町）　明治九年副戸長原口貞次郎・天保十一年生あり。九戸現存す。

三一　同郡松山町　明治三十五年煙草砂糖紙商原口周蔵あり。

三二　同郡野田村（東松山市）　当村安政三年馬頭尊に野田村原口兵助あり。現存無し。

三三　同郡小川町　八宮社文化頃の石御宮寄進碑に原口新五郎あり。

三四　横見郡上細谷村（吉見町）　当村に此氏多く存す。明治九年戸長原口幸三郎・天保九年生、副戸長原口倉治・文政七年生。上銀谷村薬師寺明治二十九年水鉢に上細谷原口銀蔵。氷川社明治三十四年幟碑に原口貞三郎・原口伊八・原口富太・原口忠吉・原口勝之・原口七兵衛・原口政次郎・原口作次郎・原口銀蔵・原口桑次郎・原口徳次郎・原口金蔵・原口宇吉・原口平次郎・原口佐七・原口新三郎・原口広吉あり。

三五　同郡本沢村（吉見町）　熊野社明治八年御神燈に原口文蔵。明治九年副戸長原口文蔵・文政六年生あり。八戸現存す。

三六　同郡北下砂村（吉見町）　氷川社文久元年幟碑に原口富蔵・原口広助。明治九年副戸長原口富蔵・文化六年生あり。二戸現存す。

三七　同郡和名村（吉見町）　明治九年戸長原口道之助・文政元年生あり。四戸現存す。

三八　同郡一ツ木村（吉見町）　氷川社明治三十七年碑に原口源七あり。現存無し。

三九　男衾郡鉢形村（寄居町）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

四〇　大里郡熊谷宿　一項参照。原口文書に「原口庄左衛門、正徳五年から八十年前に酒造」。寛永十二年に創業す。石上寺元文三年碑に原口源蔵。野原村文殊寺寛延元年水鉢に熊谷町原口源左衛門隠居。宝暦三年大善院文書に原口源左衛門。熊谷宿百石組に「慶安元年、原口平右衛門。宝暦十年、本町南屋敷持主原口平右衛門、同所持主原口源左衛門、同所持主原口甚右衛門、同所持主原口金五右衛門、本町北屋敷持主原口半左衛門、同所持主原口善左衛門、新宿北屋敷（筑波町）持主原口嘉左衛門。嘉永元年、原口善吉、原口源左衛門、原口長兵衛、原口金右衛門」。文政十年諸国道中商人鑑に熊谷駅明神の角・呉服店原口金右衛門。天保四年野中文書に熊谷町織物売下町原口金右衛門。妻沼村聖天宮天保七年碑に原口金右衛門。千形神社嘉永五年酒蔵講中に原口長兵衛。石上寺明治五年地蔵尊に当所原口宗八.。明治三十五年酒商山屋原口源助・建具職原口霜吉・洋服職原口房吉・原口万五郎・原口熊市あり。

四一　同郡石原村（熊谷市）　東別府神社嘉永六年御嶽碑に石原村原口勝之丞。広瀬村文久元年秋山翁碑に石原・原口国太郎。明治十三年議員原口彦三郎。明治二十一年重立原口富五郎・重立原口藤三郎あり。九戸現存す。

四二　同郡佐谷田村（熊谷市）　三ツ木村三ツ木神社明治二十五年碑に佐谷田村原口文吉あり。十二戸現存す。

四三　幡羅郡西別府村（熊谷市）　安楽寺享保十年庚申塔に西別府村原口平助・原口吉兵衛、元文五年碑に原口伊左衛門。高麗郡中山村山崎家譜に「黒田領別府邑郷役人原口五左衛門、元文二年六月二十九日於岡邑、御陣屋造営に依て一同御役御免、為平人」、榛沢郡岡村陣屋造営に依る。入間郡南永井村吉田文書に「寛保三年十二月、南永井村名主吉田惣兵衛三女娘に西別府村原口半左衛門（後に図書と申候）三男後代之惣兵衛と申候、自分弥右衛門実父也」。西別府氏館跡寛政十二年馬頭尊に原・新田講中・原口長八・原口三□□・原口文次郎。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州幡羅郡西別府村原口佳重郎。湯殿神社嘉永元年碑に原口喜右衛門・原口五左衛門、明治元年富士碑に原口錦一郎・原口七郎・原口茂八.。安楽寺文久三年馬頭尊に原口喜代松・原口平左衛門。別府小学校東南文久三年庚申塔に原口平左衛門。明治九年副戸長原口峰松・文政七年生。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に別府村原口竹次郎・原口佐平あり。十六戸現存す。

四四　同郡四方寺村（熊谷市）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

四五　同郡妻沼町　明治三十五年馬車業原口米三郎・料理店台屋原口武一郎あり。

四六　同郡出来島村（妻沼町）　出来島村誌に「天明元年、原口伝兵衛・八反七畝歩。明治九年、百姓惣代原口安太郎」あり。八戸現存す。

四七　同郡飯塚村（妻沼町）　義民名主原口与五左衛門・元禄九年没。字福王寺明和四年馬頭尊に原口新平。妻沼村聖天宮嘉永七年百番供養塔に飯塚村原口金太夫、慶応三年石道之碑に飯塚村原口金太夫。中奈良村長慶寺安政四年碑に福王寺原口周蔵。明治九年戸長原口金二・嘉永元年生。明治十八年最上農名簿に原口金二・耕宅地十一町三反歩・山林四反歩所有あり。十戸現存す。

四八　同郡宮ヶ谷塔村（深谷市）　東方村熊野社明治三十年碑に宮ヶ谷戸・原口馬重あり。現存無し。

五〇　榛沢郡樫合村（深谷市）　用土村明治十三年仙元碑に柏合村原口蓮行口山。当村明治二十九年駒形社碑に原口勝之助あり。二戸現存す。

五一　同郡大谷村（深谷市）　用土村明治十三年仙元碑に大谷村原口久右衛門・原口重太郎。上州榛名神社明治四十年御神燈に武蔵国藤沢村大谷原口菊次郎あり。四戸現存す。

五二　同郡岡部村　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

五三　同郡桜沢村（寄居町）　用土村明治十三年仙元碑に桜沢村原口咏行あり。一戸現存す。

五四　賀美郡八日市村（神川町）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

五五　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「大宮町・原口利吉・三百十四円・八十四円、笠原村（鴻巣市）・原口龍・百十円、原口福太郎・二十三円、加須町・原口儀左衛門・六十六円、北吉見村・原口柳蔵・十五円、原口利一郎・十円、熊谷町・原口源助・二百十八円・百四十円、原口なか・十五円、奈良村（熊谷市）・原口弥三郎・十四円、男沼村（妻沼町）・原口高三郎・十一円、太田村（妻沼町）・原口香・八十三円」あり。

原国　ハラクニ　浦和、鴻巣等に存す。

原子　ハラコ　各市町村に存す。青森県上北郡天間林村四十八戸、南津軽郡大鰐町百二十戸、田舎館村十四戸、弘前市六十戸、青森市百五十戸あり。

腹子　ハラコ　北本に存す。岩手県下閉伊郡田老町十七戸あり。

原子内　ハラコナイ　庄和に存す。岩手県九戸郡種市町十九戸あり。

原崎　ハラザキ　浦和、志木、越谷、草加、八潮、吉川、川越等に存す。

一　鉢形城士の原崎氏　鉢形分限帳に「本国駿州・原崎平太」あり。

原笹　ハラササ　足立郡馬宮村（大宮市）明治三十一年染物業原笹関太郎あり。六戸現存す。

原沢　ハラサワ　新座郡下片山村（新座市）は原沢庄を唱える。秩父郡小森村字原沢組あり。各市町村に存す。○群馬県利根郡月夜野町百十七戸、新治村百五十五戸、吾妻郡中之条町二十戸、北群馬郡吉岡町五十戸、高崎市六十戸。○新潟県南魚沼郡塩沢町六十五戸あり。

一　川越町　氷川社明治十七年碑に原沢寅吉・原沢忠三郎、明治三十三年玉垣碑に原沢林造（米穀問屋笹屋）。御嶽社明治三十年碑に原沢番蔵・原沢寅吉（米穀商）。昭和三年興信録に「原沢林蔵・所得税四百八十一円・営業税八十四円」。七戸現存す。

原澤　ハラサワ　各市町村に存す。

茨沢　バラサワ　青森県三戸郡三戸町十戸あり。

荊沢　バラサワ　新座に存す。

原下　ハラシタ　寄居に存す。福島県双葉郡浪江町六戸あり。

原品　ハラシナ　鴻巣、松伏等に存す。茨城県つくば市十二戸あり。

原科　ハラシナ　川口、上尾、蕨、新座、朝霞、越谷、蓮田、羽生等に存す。つくば市二十戸あり。

原篠　ハラシノ　越谷に存す。

原島　ハラシマ　原は村の意味、島も村の意味。渡来人集落を原島と称す。足立郡原島村（草加市）、大里郡原島村（熊谷市）、埼玉郡上種足村字原島あり。○群馬県邑楽郡邑楽町十四戸、太田市百十戸。○東京都西多摩郡奥多摩町二百戸。○山梨県北都留郡上野原町十三戸あり。

一　熊谷氏後裔説の原島氏　風土記稿大里郡原島村条に「禅宗曹洞派福王寺、本尊毘沙門は熊谷次郎直実の女玉津留、千代津留姫二人の守本尊なりと云」。代村条に「古は原島と一村なりしが何の頃か別れしと云ふ。薬師堂の本尊は熊谷次郎直実の女玉津留守護仏なりしと云ふ。禅宗曹洞派東善寺は代島山と号す、開山叱洞長牛は慶長十七年寂せり」。東善寺伝に「開基原島三郎義治・法名東善寺殿義応義治居士が、慶長十三年創立す」と云う。原島氏は在名にて現存無し。代島山は代島氏の開基にて、原島氏の本名は代島氏であろうか。代島（だいじま）条参照。

二　多摩郡の原島氏　古代以来の土着者にて多く存す。大里郡原島村発祥説は地名附会なり。風土記稿原村（奥多摩町）条に「原島氏の祖先は丹治比姓にて、熊谷次郎直実が末流なりし丹次郎・丹三郎と云へる兄弟の者、当国忍領原島村に居住せし故、在名をもって氏とせり」。武蔵名勝図会に「多摩郡三田領日原村の社家原島氏は丹治姓にて、その先祖は原島太郎直友と号し、当国の忍領大里郡原島村あり。その地に住せしゆえ、地の名を以て氏とせり。その子丹次郎友一は文明五年原島村にて生る。弟を丹三郎友連と云、これも文明八年原島村にて生れ、明応年中兄弟ともに小田原へ来たりて北条早雲に仕えしが、その後、かの兄弟の子孫は当村を開墾す」と見ゆ。

三　鉢形城士の原島氏　鉢形分限帳に「本国日向延岡・原島伝五郎」あり。宮崎県延岡市に現存無し。分限帳の本国は信用できず。

四　岩附城士の原島氏　太田家譜に「太田譜代之士、原島内記」あり。

五　忍城士の原島氏　成田分限帳に「二十五貫文・原島宮内」あり。

六　埼玉郡柴山村（白岡町）　諏訪八幡社正徳三年御神燈に原島久兵衛。観音堂享保十一年鐘銘に原島久兵衛。字宮野文化九年庚申塔に原島利助・原島林蔵あり。二戸現存す。

七　同郡中曽根村（久喜市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

八　足立郡桶川町　明治十一年府川文書に原島宇平太あり。

九　同郡上日出谷村（桶川市）　下日出谷村知足院元禄十四年墨書銘に上日出谷村原島作右衛門父覚蓮。明治九年副戸長原島長五郎・天保十二年生。氷川社明治二十年水鉢に上日出谷村原島要吉・原島長五郎・原島仙蔵・原島定吉・原島周次郎、明治三十九年碑に原島正次郎・原島要助・原島重蔵・原島夘之助あり。十四戸現存す。

一〇　同郡宮内村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に下宮内村原島小右衛門・原島吉左衛門あり。四戸現存す。

一一　同郡鴻巣町　明治十五年旅宿業原島文二郎あり。

一二　入間郡所沢町　明治三十五年下駄商原島惣兵衛。明治四十三年浦町原島徳蔵あり。

一三　同郡久米村（所沢市）　長久寺万延元年宝篋印塔に原島文二郎。明治十五年北広堂碑名簿に原島八ツ五郎・原島菊次郎。永源寺明治二十九年敷石碑に久米原島文太郎あり。二戸現存す。

一四　同郡下富村（所沢市）　明治二十年茶業に原島忠次郎・原島市蔵・原島千代吉・原島代次郎。明治四十四年織物製造原島定司。九戸現存す。

一五　同郡堀兼村（狭山市）　明治四十四年織物製造原島栄吉あり。十四戸現存す。

一六　同郡南入曽村（狭山市）　小沢文書に「奥州様御扶持人覚（北条陸奥守氏照家臣）、武州入曽村十二衆。上州かむろ川之陣へ出候分覚。原島門所、天正十四年巳正月三日」と見ゆ。天文十四巳年か。三戸現存す。

一七　同郡扇町屋村（入間市）　明治三十五年穀炭卸商原島藤蔵あり。

一八　同郡黒須村（入間市）　明治二十一年団子商原島与市あり。

一九　同郡宮寺村（入間市）　当村に此氏多く存す。坊村太子堂元禄二年庚申塔に坊村原島作兵衛。中野村安政五年中村筆子碑に小ヶ谷戸村原島長吉好独。明治十六年宮寺村副議長原島十郎左衛門、議員原島惣吉。明治二十二年宮寺村三番消防組に原島伊勢吉・原島浅五郎・原島市兵衛・原島五兵衛・原島五郎右衛門・原島直吉・原島長吉。明治二十六年霜災救助表に原島彦次郎あり。

二〇　同郡堂山村（越生町）　明治十二年上谷堂山村組合人名表に原島喜平次あり。一戸現存す。

二一　同郡成瀬村（越生町）　明治三十四年水利組合員に原島善吉・原島彦平あり。三戸現存す。

二二　高麗郡笠幡村（川越市）　明治九年副戸長原島甚造・嘉永二年生あり。七戸現存す。

二三　同郡原市場村（飯能市）　明治十三年山稼議定書に原島健蔵あり。九戸現存す。

二四　横見郡小新井村（吉見町）　久米田村慶応元年馬頭尊に小新井村原島長八あり。三戸現存す。

二五　幡羅郡葛和田村（妻沼町）　大野村弘化三年御嶽碑に当所原島倉吉。明治九年大野村副戸長原島歌次郎・文政九年生。信州木曽御嶽山清滝新道端昭和五年碑に大里郡秦村大野講原島吉寿あり。四戸現存す。

二六　榛沢郡深谷町　深谷町会議員新聞販売店原島唯五郎・明治二十二年生あり。

二七　同郡高畑村（深谷市）　円能寺明治二十八年馬頭尊に原島久次郎、明治三十二年筆子碑に原島喜一郎。大正七年金井元治碑に当所原島丈吉・原島閑一郎・原島代三郎。大寄村会議員原島太一郎・大正六年生あり。四戸現存す。

二八　同郡桜沢村（寄居町）　用土村明治十三年仙元碑に桜沢村原島多次郎あり。二戸現存す。

二九　秩父郡大宮町　当町に此氏多く存す。明治三年紺屋原島藤五郎、郷宿業原島伊三郎・三十七歳。国神神社明治三十四年碑に大宮町原島常吉。明治三十五年陶漆器商市川屋原島条作・原島五郎次あり。

三〇　同郡大野原村（秩父市）　当村に此氏多く存す。明治九年副戸長原島善蔵・天保四年生あり。

三一　同郡浦山村（秩父市）　当村に此氏の旧家あり。十三戸現存す。

三二　同郡別所村（秩父市）　明治九年副戸長原島善次郎・天保三年生、副戸長原島金次郎・文政十年生あり。十四戸現存す。

三三　同郡田村郷（秩父市）　明治九年副戸長原島広吉・弘化元年生あり。九戸現存す。

三四　同郡山田村（秩父市）　秩父神社明治二十七年碑に原島利三郎。恒持神社明治四十三年碑に新木西組原島利三郎あり。九戸現存す。

三五　同郡下吉田村　八幡社明治三十八年碑に原島久作あり。現存無し。

三六　同郡横瀬村　明治十四年神輿寄附連名帳に七番耕地宇根・原島万五郎あり。十戸現存す。

三七　同郡小鹿野町　明治十二年洋物商原島清蔵・小間物商原島伝七・古着商原島区之吉・饂飩商原島金太郎・饅頭商原島巳之吉。明治三十五年飲食店港屋原島源作・陶器商原島森之助・陸運店原島伝作あり。六戸現存す。

三八　同郡上飯田村（小鹿野町）　私塾師匠原島半治郎・明治三十四年没八十九歳あり。五戸現存す。

三九　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「豊岡村（入間市）・原島茂七・十三円・二十七円、宮寺村（入間市）・原島新吉・十一円・十七円、秩父町・原島藤太郎・三百二円・百四十八円、原島酉之助・二百十一円・四十五円、原島為三・百三十一円、原谷村（秩父市）・原島市三郎・十二円・三十五円、小鹿野町・原島淑郎・十二円・十一円」あり。

原嶋　ハラシマ　埼玉郡閏戸村（蓮田市）に此氏の旧家あり。十三戸存す。

原嶌　ハラシマ　狭山、秩父等に存す。

茨島　バラシマ　葛飾郡茨島村（杉戸町）あり。上高野村字茨島（幸手市）は上高野神社弘化三年碑に上高野茨島と見ゆ。青森県三戸郡階上町十戸あり。

原宿　ハラジュク　高麗郡原宿村（日高市）、榛沢郡原宿村（花園町）あり。

原尻　ハラジリ　白岡、行田、吹上、熊谷等に存す。

原瀬　ハラセ　大宮、川口、上尾、越谷、羽生等に存す。

原勢　ハラセ　埼玉郡上羽生村毘沙門堂天保十一年石華表碑に宿並組原勢大助・町場村原勢甚兵衛。明治五年上羽生村濁酒造原勢辰五郎あり。現存無し。

原園　ハラゾノ　浦和、川口、朝霞、新座、行田、熊谷、大里等に存す。

原薗　ハラゾノ　菖蒲、狭山等に存す。

原田　ハラダ　原は村の意味、田も郡県・村の意味。渡来人集落を原田と称す。田のことは太田条参照。小名原田は、葛飾郡神間村、高久村、埼玉郡大原村、足立郡辻村、入間郡今西村、秩父郡別所村等にあり。○群馬県群馬郡榛名町四十六戸、倉渕村百七十戸、碓氷郡松井田町三十戸、富岡市六十三戸、高崎市二百戸。○栃木県足利市八十戸。○茨城県行方郡玉造町三十七戸、新治郡八郷町三十四戸、玉里村三十戸、石岡市八十戸。○山梨県南都留郡秋山村八十九戸、甲府市百戸。○長野県上水内郡牟礼村七十七戸、南安曇郡穂高町三十四戸、茅野市百八十戸、飯田市百十戸、松本市百戸。○福島県伊達郡保原町四十戸、双葉郡富岡町三十八戸、郡山市八十六戸。○山形県東置賜郡川西町三十戸、高畠町四十五戸、西置賜郡白鷹町三十六戸、東村山郡中山町四十六戸、西村山郡河北町六十五戸、天童市八十五戸、鶴岡市六十三戸、山形市三百七十戸。○秋田県由利郡鳥海町三十八戸、雄勝郡羽後町八十三戸、南秋田郡五城目町五十八戸、山本郡二ツ井町三十二戸、男鹿市百三十戸、能代市百七十戸。○青森県北津軽郡金木町八十四戸、西津軽郡森田町九十戸、南津軽郡平賀町三十五戸、弘前市六十五戸、青森市百十戸。○島根県那賀郡三隅町三十五戸、益田市七十三戸、浜田市六十九戸、大田市六十戸、平田市百戸、松江市百四十戸、安来市六十戸。○鳥取県気高郡鹿野町三十戸、米子市九十戸、鳥取市七十戸あり。

一　鉢形城士の原田氏　神流川合戦記に「天正八年六月上旬、北条方より滝川一益へ為使者原田左近厩橋へ被参着候。天正九年五月上旬になりければ、又軍始めける処、北条方大将安房守先陣に進み、相随う大小名芳賀伊予守・原田能登守・同藤右衛門尉・富田左近以下手勢催し三万余騎、金久保之上に陣を取る。北条方、原田能登守範直・高十二万石、原田左近範吉・高三万石」と見ゆ。猪俣城主原田能登守範直は猪俣能登守範直と名乗る。猪俣条参照。

二　忍城士の原田氏　成田分限帳に「六十九貫文・原田権左衛門、三十貫文・原田八度兵衛、二十五貫文・原田監物兵衛」あり。

三　松山城士の原田氏　天正庚寅松山合戦図に「久米田・大串・和名・古名方面城方・原田越中」あり。

四　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「四百石・原田内匠・是は忍にて罷出・駿河之者」。

五　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御蔵役・二十俵二人扶持・原田五左衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「三十俵六人扶持・原田金右衛門、三十五俵三人扶持・原田小左衛門、二十五俵二人扶持・原田五左衛門」あり。

六　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御番頭・三百石・原田牧太、奥御小姓・十三石三人扶持・原田繁次郎、御馬廻・六石余三人扶持・原田勇之丞、御椀方・四石余二人扶持・原田清次郎、奥坊主・同高・原田春吉、隠居・二人扶持・原田孫八、表坊主・一両余二人扶持・原田清悦」。明治四年忍藩士族名簿に「三百石・原田庫男、六石余三人扶持・原田孫八、五石二人扶持・原田園太郎、同高・原田清太郎、同高・原田小三郎、四石余二人扶持・原田休次郎、同高・原田荘之助、又者（家老等の臣）・六十六石余・原田茂造」あり。

七　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「百石・本国上野生国武蔵・原田弥次兵衛・七歳、百石・本国尾張生国伊予・原田半右衛門・四十二歳、五十石・本国三河生国同・原田又左衛門・三十五歳」あり。

八　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「二十二俵二人扶持・原田耕平」あり。

九　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・百石・川越取立・原田市左衛門」。万延二年分限帳に「御鑓奉行・百石・原田市左衛門、惣領原田鎌五郎、次男原田啓次郎」。慶応二年家中住口記に「金貸原田半三郎、金子借受により安永六年百石知行被下」。慶応元年前橋藩松山陣屋付に「十二石三人扶持・原田存愛」あり。

一〇　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・八石二人扶持・養父島右衛門・原田良輔・三十二歳」あり。

一一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「三百五十石・原田四郎兵衛」。寛文二年岩槻藩分限帳に「三百五十石・原田三郎兵衛、二十五俵・原田藤左衛門」あり。

一二　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御中小姓席・原田伴右衛門」あり。

一三　高麗陣屋代官　高麗陣屋天正十九年以来代官交替覚書に「関八州御代官大久保石見守殿手代、本宿居・原田弥左衛門」あり。

一四　葛飾郡久兵衛村（三郷市）　本隆寺元禄四年庚申塔に原田太右衛門あり。現存無し。

一五　同郡木崎村（庄和町）　香取社寛政十二年庚申塔に原田与右衛門、文化八年庚申塔に原田太右衛門、文政九年庚申塔に原田祐右衛門。明治三十年人名録に原田菊次郎・明治三年生・地租十七円あり。二戸現存す。

一六　同郡水角村（庄和町）　明治二十一年皇国武術英名録に真心影流水角村原田卯之助あり。現存無し。

一七　同郡榎村（庄和町）　当村明和元年庚申塔に原田元兵衛門。現存無し。

一八　同郡幸手町　幸宮神社天保二年狛犬に原田甚蔵、明治四十二年碑に原田清作。明治三十五年豆腐屋原田貞之助あり。

一九　同郡中里村（栗橋町）　幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に中里・原田角太郎あり。一戸現存す。

二〇　同郡小右衛門村（栗橋町）　下組八幡社弘化二年御神燈に原田市右衛門あり。一戸現存す。

二一　埼玉郡越ヶ谷宿　本町浅間社延宝三年水鉢に原田勘兵衛宣照あり。

二二　同郡大沢町（越谷市）　私塾師匠原田雪路・文政元年没、同原田宝路・天保五年没あり。

二三　同郡長島村（越谷市）　明治九年副戸長原田平治・文政元年生。明治三十年人名録に荻島村助役原田佐忠・天保九年生・地租九十円あり。一戸現存す。

二四　同郡荻島村（越谷市）　鈎上村神明社元治元年碑に荻島村原田鉄五郎あり。三戸現存す。

二五　同郡越巻村（越谷市）　丸之内講中当番に「明和三年、原田弥五右衛門。寛政二年、原田清助」。中新田組薬師堂元治元年筆子碑に村方原田杢左衛門、コシマキ原田倉之助。

二六　同郡大林村（越谷市）　香取社天保六年庚申塔に原田富□あり。五戸現存す。

二七　同郡恩間新田（越谷市）　野島村浄山寺文化十年供養塔に恩間新田・原田久左衛門・原田平左衛門・原田平八・原田平七・原田音右衛門。岩槻町秋葉社天保三年狛犬に恩間新田・原田八左衛門・原田助次郎。能満寺跡嘉永三年庚申塔に原田平兵衛・原田徳左衛門・原田弥右衛門・原田庄右衛門・原田利□。鈎上村神明社元治元年碑に恩間原田宮内。稲荷社明治二十九年碑に原田奈良吉・原田庄助・原田太右衛門・原田孫兵衛・原田栄次郎・原田源次郎・原田亀太郎・原田助四郎・原田万吉・原田新三郎・原田柳吉あり。十七戸現存す。

二八　同郡岩槻町　浅間社天和二年庚申塔に原田乙兵衛・原田丸左衛門。加倉村浄国寺元禄十一年棟札に岩付惣檀那原田七郎右衛門。浅間社文化九年水鉢に原田林右衛門、文政十三年庚申塔に原田勝右衛門。庚申堂嘉永四年水鉢に市宿町原田善次郎。岩槻誌に「慶応末年。富士宿町・持高八石二斗余・組頭原田瀧五郎、新曲輪町・持高七石余・役人代原田久太郎」。明治七年船積問屋原田喜右衛門・但享和元年三月創立。明治九年副戸長原田清七・文政六年生。明治三十年所得税下調査簿に原田喜右衛門・反別十二町五反歩・地租八十九円。明治三十五年油製造原田七郎兵衛・理髪店原田捨次郎・同原田阿久次郎・糸繭荒物商原田弥太郎・原田徳次郎・原田伊兵衛あり。

二九　同郡大野島村（岩槻市）　神明社天保四年敷石碑に原田弥五右衛門・原田繁次郎。増長村観秀院安政二年供養塔に大野島村原田弥五右衛門・原田繁次郎・原田察七あり。四戸現存す。

三〇　同郡下谷村（岩槻市）　香取社天保四年天神碑に原田新蔵、天保十一年碑に原田才次郎、安政二年庚申塔に原田利平。増長村観秀院安政二年供養塔に下谷村原田新蔵あり。一戸現存す。

三一　同郡真福寺村（岩槻市）　真福寺文政二年庚申塔に原田伊右衛門。久伊豆社天保十年水鉢に原田長五郎あり。現存無し。

三二　同郡備後村（春日部市）　雷電社嘉永五年浅間碑に原田四郎左衛門・原田三郎右衛門。十六戸現存す。

三三　同郡貝塚村（蓮田市）　笹山村稲荷社明治二十二年浅間碑に貝塚村原田長吉あり。九戸現存す。

三四　同郡久喜町　明治三十五年仕立職原田浅次郎あり。

三五　同郡所久喜村（久喜市）　八幡社文政五年御神燈に原田平右衛門あり。一戸現存す。

三六　同郡菖蒲町　元禄十一年庚申塔に原田京兵衛。明治三十五年菓子商原田治助あり。十四戸現存す。

三七　同郡三箇村（菖蒲町）　当村文化八年庚申塔に原田浅五郎・原田文五郎、文化九年庚申塔に原田八兵衛・原田市郎右衛門。明治九年副戸長原田栄之丞・天保十三年生あり。八戸現存す。

三八　同郡外田ヶ谷村（騎西町）　久伊豆社天和三年庚申塔に外田ヶ谷村原田与五兵衛あり。現存無し。

三九　同郡広田村（川里町）　広田村開発者に「慶応五年までの内に、原田与右衛門・引越し来る」と見ゆ。一戸現存す。新井条参照。

四〇　同郡安養寺村（鴻巣市）　上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡安養寺原田福太郎・原田保五郎あり。現存無し。

四一　同郡加須町　千方神社文政二年水鉢に原田立身。明治三十五年に原田平助あり。

四二　同郡羽生町　明治五年傘職原田勝五郎。明治三十五年に原田半蔵。

四三　同郡藤井村下組（羽生市）　源長寺慶応四年筆子碑に当所原田幸右衛門・原田幸八あり。二戸現存す。

四四　同郡下手子林村（羽生市）　不動岡村総願寺文政元年算額に下手子林村原田与右衛門有寿（子孫原田慶司）あり。六戸現存す。

四五　同郡忍町　明治三十五年穀木炭荒物商久保田屋原田新左衛門あり。

四六　足立郡横曽根村（川口市）　当村元禄七年六地蔵に横曽根村原田仁左衛門。衆議院議員選挙人名簿に原田仁三吉・安政元年生・納税三十円。飯塚村氷川社明治四十四年碑に横曽根原田仙太郎あり。

四七　同郡安行村吉岡組（川口市）　金剛寺文政七年庚申塔に安行村吉岡原田久右衛門あり。一戸現存す。

四八　同郡草加町　東福寺享保十年宝篋印塔に原田角左衛門あり。

四九　同郡善兵衛新田（草加市）　中山筆学帳に安政七年・善兵衛新田原田政吉、慶応二年・政吉弟原田辰蔵。西光院慶応三年碑に原田清蔵。稲荷社明治十六年碑に原田清吉・原田八五郎あり。六戸現存す。

五〇　同郡蕨町　和楽備神社万延二年御神燈に原田伊之八.。明治三十五年菓子商原田八郎あり。

五一　同郡浦和町　岸町円蔵寺明治十四年顕妙塔に原田仙蔵。明治三十五年米穀商原田吉五郎・表具師原田彦次郎・同原田豊吉あり。岸村住人か。

五二　同郡太田窪村（浦和市）　多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡大田窪村原田清右衛門。氷川社明治二十八年碑に原田清蔵・原田兼松あり。十二戸現存す。

五三　同郡大間木村（浦和市）　氷川社弘化二年狛犬に水府・原田磯吉・原田馬之助・原田喜太郎。明治七年製糸会社人名録に原田兵右衛門。明治八年騎西町釜屋文書に大間木村酒造業原田三左衛門。明治九年戸長原田四方平・文政六年生あり。十七戸現存す。

五四　同郡与野町　長伝寺享保十八年碑に原田太郎兵衛。氷川社享保四年水鉢に原田忠右衛門・原田太郎兵衛・原田八郎右衛門・原田小八郎・原田弥五兵衛、元文四年御神燈に原田治郎吉、安政三年御神燈に原田金三郎。鈴谷村金毘羅堂天保五年水鉢に与野町上町原田太兵衛。明治二十一年善光寺参詣に与野町米穀商原田太兵衛妻こと四十六歳。明治二十六年長伝寺文書に与野町原田要造・原田藤五郎・原田光義・原田貴貢治あり。十七戸現存す。

五五　同郡大宮町　明治三十五年氷店原田作次郎あり。

五六　同郡上加村（大宮市）　日進駅北元禄十六年庚申塔に原田市郎兵衛。

五七　同郡上小村田村（大宮市）　当村延享元年庚申塔に上小村田邑原田与五左衛門。明治九年副戸長原田佐七・文政八年生。氷川社明治四十年碑に上小村田・原田栄三郎あり。

五八　同郡中小村田村（大宮市）　薬師堂正徳三年供養塔に原田平右衛門・原田八兵衛・原田兵左衛門、文化三年地蔵尊に中小村田村原田庄八あり。

五九　同郡飯田村（大宮市）　足立神社明治四十三年碑に原田仲次郎・原田瀧蔵・原田清次あり。

六〇　同郡今羽村（大宮市）　三明院曼荼羅に施主今羽村原田雅楽助。当村宝永六年庚申塔に原田佐衛門・原田仁左衛門・原田弥衛門。真福寺天明八年宝篋印塔に原田仲右衛門。氷川社明治三十一年水鉢に当所原田孫次郎・原田源次郎・原田作右衛門・原田武三・原田佐吉、明治三十九年碑に原田徳太郎、明治四十三年碑に原田佐太郎・原田安五郎あり。八戸現存す。

六一　同郡島根村（大宮市）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

六二　同郡並木村（大宮市）　当村に此氏多く存す。明治五年名主原田寅蔵。明治九年副戸長原田文蔵・天保二年生、副戸長原田寅蔵・天保七年生。与野町一山神社明治三十五年碑に並木原田卯之吉。氷川社明治三十八年碑に原田正次郎・原田熊蔵・原田喜四郎・原田繁太郎・原田角三郎・原田半之助・原田雪城・原田留五郎・原田幸五郎・原田夏五郎・原田幸三郎・原田喜太郎・原田半蔵・原田長十郎あり。

六三　同郡本郷村（大宮市）　本郷神社元治元年幟碑に原田治左衛門あり。三戸現存す。

六四　同郡上尾村　字二ツ宮氷川社安政二年御神燈に当所原田磯右衛門。明治四年酒造業原田清之丞・醤油濁酒原田玄蔵・同原田磯右衛門。明治八年戸長原田清之丞あり。

六五　同郡原市町（上尾市）　明治三十五年甘藷問屋原田助七あり。

六六　同郡小敷谷村（上尾市）　平方村橘神社明治十一年御神燈に小敷谷村原田銀蔵。明治四十年信徒総代原田嘉吉あり。五戸現存す。

六七　同郡平方村（上尾市）　橘神社享和四年水鉢に原田要次郎あり。八戸現存す。

六八　同郡鴻巣町　明治三十五年酒商原田岩五郎・原田文治郎あり。

六九　同郡宮前村（鴻巣市）　宮登神社享保十九年庚申塔に宮前村原田次郎兵衛あり。現存無し。

七〇　同郡生出塚村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に下生出塚村原田八之助あり。一戸現存す。

七一　新座郡白子村（和光市）　当村明治三年富士講碑に向新田・原田勘次郎あり。

七二　入間郡福岡村（上福岡市）　当村に此氏多く存す。古市場村寛延二年地蔵尊に福岡河岸江戸屋原田宇右衛門。下福岡村墓地安永十年六地蔵に原田五右衛門・原田善兵衛。駒林村安楽寺安政四年筆子碑に福岡村原田吉造。御嶽社明治四年碑に先達原田源助・二代目原田与四郎。明治六年飴菓子商原田徳次郎・同原田民蔵。明治九年副戸長原田富士太郎。明治十五年被選挙権者の地租に「原田富士太郎・天保八年生・三十円、原田粂吉・天保十一年生・二十一円、原田弥七・天保四年生・十八円、原田与三郎・天保十年生・十七円、原田磯五郎・天保十一年生・十一円、原田長之介・嘉永三年生・十一円、原田留蔵・安政三年生・十円、原田嘉吉・天保十四年生・十円、原田弥二右衛門・天保十四年生・十円」。同年選挙権者に「原田阿久蔵・天保十年生、原田和七・安政三年生、原田定吉・文政五年生、原田愛蔵・嘉永五年生、原田佐右衛門・天保十二年生」。明治十五年下駄商原田忠英・屋根屋原田弥次郎・同原田勘助・同原田小四郎・同原田熊次郎・同原田惣太郎・大工職原田弥次左衛門・菓子商原田仙次郎・漁業原田留五郎・同原田幸蔵・酒商原田仁太郎。長宮氷川社明治二十七年正殿碑に福岡・原田甚太郎・原田富士太郎・原田粂吉・原田留蔵・原田茂右衛門・原田佐五右衛門・原田弥次右衛門・原田林蔵・原田阿久蔵・原田弥七・原田佐十郎・原田定吉・原田忠次郎・原田仙次郎・原田嘉吉・原田鯛三郎・原田忠兵・原田寅右衛門・原田弥次郎・原田長之助・原田勘助・原田三之丞・原田仁太郎・原田民蔵・原田房太郎・原田新吉・原田幸蔵・原田惣平・原田長七・原田小四郎・原田政次郎・原田竹次郎・原田留五郎・原田栄蔵あり。

七三　同郡川崎村（上福岡市）　阿弥陀堂元文四年地蔵尊に川崎村原田与兵衛・原田喜左衛門。氷川社隣文久三年仙元碑に川崎村原田勇次郎・原田弥五郎。福岡村大杉神社明治十二年拝殿碑に川崎村原田染五郎。明治十七年議員原田喜三郎。三戸現存す。

七四　同郡上富村（三芳町）　中富村神明社明治三十九年碑に上富・原田鉉二郎あり。現存無し。

七五　同郡宗岡村（志木市）　志木町敷島社明治五年浅間碑に宗岡原田和吉あり。

七六　同郡亀久保村（大井町）　明治四十四年若者名簿に原田儀三郎あり。十戸現存す。

七七　同郡所沢町　久米村水天宮明治四十一年碑に所沢町下仲町原田勇吉（乾物商）。明治四十三年浦町原田種政あり。

七八　同郡久米村（所沢市）　当村明和三年廻国塔に原田源七郎。長久寺万延元年宝篋印塔に原田鉄五郎・原田忠五郎。水天宮明治四十一年碑に久米原田豊次郎あり。

七九　同郡入間川町（狭山市）　八幡社明治二十三年碑に入間川村原田金右衛門。明治二十五年地租額調に原田ふく・原田彦右衛門・原田術知・原田金右衛門（醤油醸造）あり。

八〇　同郡黒須村（入間市）　笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、黒須村原田勇助」。明治二十一年染物商原田幸二郎あり。

八一　同郡川越町　明治十三年川越銀行株主に松郷原田勘蔵・十株五百円所有。明治十五年北広堂碑名簿に川越鴫町原田助八.。氷川社明治三十三年玉垣碑に原田福田郎。明治三十五年織物商原田福太郎・米穀問屋足立屋原田要吉・魚商原田勝造。三芳野神社明治四十年碑に原田勝蔵、志義町原田要吉・原田利七.。大正十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に原田要吉・文久二年生・国税千百五十二円・県下百五十七位あり。

八二　同郡大仙波村（川越市）　氷川社明治四十一年碑に原田栄旦あり。

八三　同郡古谷上村（川越市）　実相院文久三年敷石碑に原田嘉右衛門・原田弥次右衛門・原田太郎治。古谷神社明治初期御神燈に原田品蔵・原田三吉・原田嘉十郎・原田房吉・原田伝吉、明治十七年金刀比羅碑に古谷上邨沼端原田嘉右衛門、明治二十六年碑に原田周蔵。八ツ島村御嶽社明治十九年碑に古谷上村原田嘉十郎あり。十三戸現存す。

八四　同郡南田島村（川越市）　氷川社明治三十九年碑に原田宇右衛門あり。五戸現存す。

八五　同郡今福村（川越市）　堀兼村堀兼神社文政四年御神燈に今福村原田紋之助。明見院慶応二年普門品に原田初五郎・原田留吉・原田学蔵あり。十戸現存す。

八六　同郡池辺村（川越市）　稲荷社明治九年水鉢に池辺村原田久左衛門・原田直吉、明治三十三年碑に原田熊吉・原田重次郎・原田次郎吉・原田甚太郎・原田七五郎・原田代蔵・原田又次郎。熊野社明治三十九年碑に原田又次郎・原田喜三郎・原田次郎吉・原田甚太郎・原田代蔵・原田七五郎・原田熊吉。六戸現存す。

八七　同郡豊田本村（川越市）　白髪社明治二十二年碑に原田鍋造あり。六戸現存す。

八八　横見郡一ツ木村（吉見町）　荒神社慶応元年幟碑に原田兵吉。氷川社明治三十七年碑に原田喜三郎あり。三戸現存す。

八九　比企郡出丸中郷（川島町）　字中根文化十四年馬頭尊に出丸中郷村原田利左衛門・原田仁兵衛。明治五年戸籍編製に出丸中郷上分旧百姓代原田高五郎あり。七戸現存す。

九〇　同郡下狢村（川島町）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

九一　同郡上大屋敷村（川島町）　下大屋敷村宝暦四年地蔵尊に両大屋敷村原田平四郎あり。一戸現存す。

九二　同郡松山町　松本町明和二年地蔵尊に原田儀兵衛継母あり。

九三　同郡神戸村（東松山市）　寛文十年羽尾村設楽文書に大工神戸村原田仁兵衛あり。現存無し。

九四　同郡柏崎村（東松山市）　新井家嘉永五年馬頭尊に柏崎村原田三次郎あり。一戸現存す。

九五　同郡野田村（東松山市）　八雲社文政七年念仏供養塔に野田村台・原田権兵衛あり。現存無し。

九六　同郡岡郷（東松山市）　三ツ木村三ツ木神社明治二十五年碑に岡郷原田半六あり。現存無し。

九七　同郡葛袋村（東松山市）　明治九年副戸長原田覚蔵・文政十三年生あり。二戸現存す。

九八　同郡福田村（滑川町）　明治九年議定書に原田万造あり。二戸現存す。

九九　同郡山田村（滑川町）　明治十年代福田連合村地価地租表に山田村原田為次郎・原田金蔵。一戸現存す。

一〇〇　大里郡熊谷宿　宝暦十年新宿南屋敷持主原田半兵衛、新宿北屋敷持主原田儀右衛門。明治三十五年足袋商原田伝吉あり。

一〇一　男衾郡鉢形村（寄居町）　紀州高野山清浄心院過去帳に「霊位春清禅定門・霊位常高禅定門・武州男衾郡八方村原田清左衛門立之（供養者）・寛永五年三月六日」。三戸存す。

一〇一　榛沢郡小前田村（花園町）　町田文書に「庚寅二月十日（天正十八年）、町田土佐守殿、原田三平殿、右一族諸侍中まいる、安房守花押」。町田日記に「文禄元年、原田三平等は小前田新田を切開く」と見ゆ。町田条参照。長善寺万延元年庚申塔に原田初太郎あり。二戸現存す。

一〇二　同郡用土村（寄居町）　明治十三年仙元碑に当村原田品吉あり。五戸現存す。

一〇三　児玉郡本庄町　安政二年本町原田駒蔵。明治四年諸井文書に台町原田福吉あり。

一〇四　同郡下児玉村（美里町）　古郡村安光寺嘉永元年地蔵尊に下児玉村原田午蔵あり。九戸現存す。

一〇五　秩父郡大宮町　明治三年菓子商原田松五郎、飾職原田喜八は信濃国上田より来住す。

一〇六　同郡上名栗村　私塾師匠原田寅次郎・明治十年没。明治十六年山稼議定書に原田寅次郎。明治四十四年武蔵野軽便鉄道発起人原田東太郎・百株所有あり。七戸現存す。

一〇七　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・原田腮太郎・四百三十三円・二百二十四円、原田吉五郎・三十七円・三十三円、原田民治・十八円、木崎村（浦和市）・原田藤太郎・十五円、安行村（川口市）・原田仁右衛門・五十三円・七十三円、三橋村（大宮市）・原田粒作・十四円、原市町（上尾市）・原田文蔵・百十七円・八十九円、幸手町・原田清作・十一円・三十六円、岩槻町・原田清七・百五円・六十一円、原田喜左衛門・百十円・三十九円、原田七郎・二十四円、柏崎村（岩槻市）・原田静作・十二円、川通村（岩槻市）・原田繁太郎・二十五円、粕壁町・原田隣造・十七円、三箇村（菖蒲町）・原田幸助・十一円・二十五円、田ヶ谷村（羽生市）・原田庚午郎・四十八円、忍町・原田新三郎・三十円・五十三円、川越市・原田要吉・九百六円・二百四十円、原田勝蔵・四十七円、原田泰亮・二十三円、太田村（川越市）・原田佐与吉・二十四円、所沢町・原田勇吉・百二十六円・七十三円、原田種政・十八円、入間川町（狭山市）・原田金右衛門・二十二円・三十九円、秩父町・原田かめ・十四円・三十円、名栗村・原田東太郎・三十九円」。

茨田　バラタ　大宮、川口、上尾、新座、岩槻、栗橋、熊谷等に存す。

頗羅堕　ハラダ　吹上に存す。

原武　ハラタケ　浦和、蓮田、川越、日高等に存す。

原谷　ハラタニ　上尾、春日部、三芳等に存す。ハラヤ参照。

原地　ハラチ　川越、所沢等に存す。千葉県市原市十一戸あり。

原富　ハラトミ　大宮、狭山等に存す。

原名　ハラナ　所沢、本庄、上里に存す。

原中　ハラナカ　大宮、北本、狭山等に存す。福島県双葉郡浪江町九戸あり。

原永　ハラナガ　深谷に存す。

原西　ハラニシ　坂戸、所沢等に存す。

原納　ハラノ　入間に存す。

原埜　ハラノ　鶴ヶ島に存す。

原野　ハラノ　各市町村に存す。山梨県東八代郡石和町十二戸、長野県佐久市十九戸あり。

一　足立郡深井村（北本市）　寿明院寛政九年寄附帳に原野おかん。現無し。

二　入間郡北野村（所沢市）　天神社明治四十年碑に当所原野佐吉あり。一戸現存す。

三　高麗郡高倉村（鶴ヶ島市）　上組日枝社明治九年文書に世話人原野要蔵、明治十二年世話人原野善造あり。原野氏三戸、原埜氏一戸現存す。

茨野　バラノ　和光、栗橋等に存す。

原之下　ハラノシタ　滑川に存す。

原之園　ハラノゾノ　所沢、毛呂山等に存す。

原橋　ハラハシ　浦和、川越等に存す。

原畑　ハラハタ　浦和に存す。宮城県遠田郡小牛田町九戸あり。

原畠　ハラハタ　春日部に存す。

原林　ハラバヤシ　桶川、三郷等に存す。

茨原　バラハラ　入間郡上安松村字茨原（所沢市）は本郷村東福寺明治十年常夜燈に茨原と見ゆ。

原藤　ハラフヂ　川口、志木、所沢等に存す。

服藤　ハラフヂ　吉川に存す。

原部　ハラベ　杉戸、入間等に存す。茨城県下妻市九戸あり。

原辺　ハラベ　草加に存す。

原槙　ハラマキ　久喜、吉川等に存す。

服巻　ハラマキ　入間、坂戸、鶴ヶ島等に存す。

孕石　ハラミイシ　上尾、所沢に存す。

原村　ハラムラ　大宮、越谷、川越、所沢等に存す。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・六石二人扶持・原村勘太郎・三十四歳」あり。

原元　ハラモト　川口、越谷、狭山、鶴ヶ島等に存す。

原本　ハラモト　浦和、大宮、志木、鶴ヶ島、日高、大井、熊谷等に存す。

原谷　ハラヤ　各市町村に存す。

原矢　ハラヤ　三郷に存す。

原屋　ハラヤ　所沢に存す。

原山　ハラヤマ　足立郡原山村（浦和市）あり。南部領辻村字原山（浦和市）は古の村名にて、鷲神社元治元年碑に原山組と見ゆ。各市町村に存す。長野県上水内郡信濃町三十四戸、戸隠村九十九戸あり。

一　飯能町　昭和三年興信録に「原山佐一・所得税十七円」あり。現存無し。

張　ハリ　原の転訛にて、ハラ、ハリ、ハルは渡来人集落を称す。大宮、三郷等に存す。

播　ハリ　入間、所沢等に存す。

針井　ハリイ　川口、草加等に存す。

一　足立郡中尾村（浦和市）の針井氏　玉林院釣燈籠銘に「永禄十年八月日、熊野山新宮神之蔵、針井長吉」あり。現存無し。

針生　ハリウ　各市町村に存す。栃木県黒磯市十九戸、宮城県黒川郡富谷町八戸、名取市三十二戸あり。

針売　ハリウリ　高麗郡脚折村（鶴ヶ島市）白鬚社天正二年棟札に「白鬚大明神七ヶ村惣社、臑折、太田ヶ谷、針売、和田、高倉、大六道、小六道」と見ゆ。脚折村字針売、字和田、大六道は上新田村の古名、小六道は中新田村の古名なり。

張江　ハリエ　久喜に存す。青森県下北郡大間町五戸あり。

張丘　ハリオカ　新座に存す。

針岡　ハリオカ　入間に存す。

張谷　ハリガイ　張（はり、はる）は原（はら、はる）の転訛なり。春参照。谷（がい）は集落の意味。渡来人集落を張谷、針谷と称す。上尾、三郷等に存す。茨城県岩井市十二戸あり。

一　本庄町　明治三十五年豆商張谷利根蔵あり。現存無し。

張貝　ハリガイ　上尾、朝霞、坂戸等に存す。

張替　ハリガイ　川口、大宮等に存す。茨城県猿島郡猿島町六十三戸あり。

針谷　ハリガイ　張谷と同じにて渡来人集落を称す。各市町村に存す。群馬県藤岡市五十戸、茨城県猿島郡総和町十一戸あり。ハリガヤ参照。

一　熊谷氏の本名針谷氏　藤岡市森に針谷氏（家紋、左三ツ巴、丸に五本骨扇）三十四戸存す。熊谷次郎直実の後裔と伝へ、森村針谷館に居住し、代々名主を勤む。出稼衆にて武州熊谷氏の名跡を継承して熊谷氏を名乗り、本名に復姓して帰農す。当地方は出稼衆が多く、隣村の中村の小野里氏は武州成田氏を継承して成田氏を名乗る。熊谷条参照。

針貝　ハリガイ　浦和、大宮、桶川、新座、草加、栗橋等に存す。茨城県猿島郡境町十二戸あり。

針替　ハリガイ　川口に存す。

張ヶ井　ハリガイ　草加に存す。

針ヶ谷　ハリガイ　浦和に存す。

張替　ハリガエ　各市町村に存す。茨城県稲敷郡茎崎町十戸、結城郡石下町十六戸、猿島郡猿島町百二十戸、三和町十七戸、岩井市百三十六戸あり。

針替　ハリガエ　川口、戸田、越谷等に存す。茨城県岩井市四十戸あり。

針金　ハリガネ　鶴ヶ島、小川、大里等に存す。秋田県能代市十七戸あり。

針金谷　ハリガネヤ　浦和に存す。ハリガヤに同じ。

針金屋　ハリガネヤ　所沢に存す。

張谷　ハリガヤ　茨城県岩井市四戸あり。ハリガイ参照。

莿萱　ハリガヤ　埼玉郡鷲宮村の郷主にて、鷲宮神社神主細谷氏の重臣なり。足利尊氏の御代より、居所の地名を取りて針谷（はりがや）氏と号す。鷲宮社領郷主莿萱氏系図（鷲宮神社文書）に「○初代莿萱昌彦（本国生国共武蔵。天穂日命領知鷲宮村住、鷲宮郷士、莿萱氏高祖、草創六人之長。社伝に云、穂日宮・船こし村より船を浮免松燈をてらして浮島に送り奉る。御宮此地に止り給ひ東夷の政を治しむ、御所の前に船棹二本立、注連を張り、是朕が神門なりとの給ふ、此時大鷲と云御車の名を取り鷲宮と改たり、船こし村と鷲宮村は穂日の御宮の附られし村なりと云。鷲宮大明神、祭神は天穂日命、神代鷲宮村鎮座す。社伝に云、毎年十一月申の日夜、神事は船こし村舟にて送り、浮しまの地に付給ふ時の御神事成べし。むかしは神主一人、榊に注連付て持つのみにて御境内を御順幸なり、供奉は草創二十七人神領川口村の湖水に行、十七日の水行を勤めて御供致すと云、湖水入海とも云。昔年は志多見迄は入海なりと云事を聞り、明けて翌、鳥の日神事なり、其日供米を献したるは二十七人なり、松燈を献したるは船こし村の草創田口某の高祖なり、舟棹二本替注連竹に献し奉るは大室村草創小山某の高祖なりと云）。○二代昌武（鷲宮村草創二十六人の長、高祖代々鷲宮村住。昌彦・昌武親子再度に此二十六人を集め、御領地鷲のみや萱薄篠原草藪の地を伐開く。田畠十六町七段歩を得たり、此内二町九段八畝十六歩は田也。此収納米、穂日神に献し奉る故二十七人住地を定む。五人・北篠原耕地とて川口前なり、爰にて南をさして云には前萱とも前家共云。七人・南前谷の地住居せり。二人・東小松原の地に住居。六人・新井耕地大河附に住す。四人・下新井九人の内の四人中島耕地に住す。三人・小篠原に住せり。人皇十二代景行天皇四十年庚戌、日本武命東夷御征伐の御時、御建立あらせられ、故に旧御社は今より神前の御社と崇し奉るべし、新御社は自今本社と崇むべしと勅也。両神、合して鷲宮大明神と称し奉る。神武天皇より是迄は凡八百年を経る）。○三代昌世―武原―保世―村世―昌助―村旦―昌野―時村―権―仲雄―忠峰―忠村―幸―綱次―瀧―勝世―仲―昌仲―篠志―立野―重勝―二十四代武昌（鷲宮領鷲宮村長、代々鷲宮住。御本社和銅六年癸巳八月再興）―武重（白鳳十三年辰九月死、行年五十五歳）―武清（慶雲元年戌九月死、行年五十四歳）―重員（天平勝宝八年五月死、行年八十歳）―三郎員国（延暦三甲子六月死、行年九十歳。天王神社宝亀二年辛亥七月七日建立）―太郎重国（延暦十七年寅二月死、行年六十八歳）―九郎時重（大同十年子月死、行年七十五歳）―九郎一忠（承和二年卯十一月死、行年六十一歳）―太郎重房（母友沼四郎助貞娘、友沼村郷士也。貞観十三年辛卯秋死、行年八十二歳）―一郎明忠（関八ヶ国守護人常陸大掾国香土浦城より月参。仁和二年午五月死、行年六十九歳）―太郎善房（延喜十七年丁丑八月死、行年五十八歳）―四郎基房（安和元年三月死、行年七十二歳）―十郎定房（藤原秀郷天慶三年将門を討ち下野武蔵両国主高百二十万国を領し、御当社御信仰毎月七日の日参の君也と云。天延二年癸酉七月五日死、行年五十三歳）―三郎成房（寛弘六年己酉七月死、行年五十三歳）―文太晴房（母藤岡太郎信房之娘、佐野宗綱臣。永承三年亥九月死、行年七十九歳）―四郎高房（寛徳元年甲申九月十七日死、行年六十六歳）―東司資重（承暦元年丁巳十一月死、行年六十七歳。八幡太郎義家公御当社御信仰あり）―四郎年重（天仁二年子四月死、行年五十二歳）―十郎行忠（久安二年寅九月死、行年六十六歳）―三郎重則（文治元年己九月死、行年八十一歳。右兵衛佐殿御使治承四年十二月土肥次郎実平殿来る、平家追討の御祈願により武蔵国笠原邑当社の御厨に寄られたり）―十郎正忠（社領鷲宮住、村長代々。母大越次郎貞正娘、武蔵国大越郷住人。神主細萱殿館模様替の空堀八十間余出来す、御殿内外とも惣萱ふき。建保元年酉正月死、行年七十九歳）―藤次重治（社領郷士、承久元年酉八月死、行年六十一歳）―太郎次成房（太田庄社領鷲宮村郷主、代々鷲宮村住。母野木住人斎藤利氏娘、下河辺庄司行平臣也。源頼家公承元元年辰二月当社宝殿三日三夜鳴動の由神主民部太夫申出）―藤三郎高重（社領長。文永十一年戌九月死、行年六十九歳）―一太郎重利（建治二年子十一月死、行年四十五歳）―重左衛門国重（母耕田主税之助娘。嘉元二年卯八月四日死、行年五十二歳）―弥藤次重旦（正和元年正月二十日死、行年二十七歳。鷲宮大門左右民家四十二軒居並ぶ上宿中宿下宿也）―五十一代重左衛門重幸（永和元年卯八月死、行年七十一歳。神主細萱氏は細谷氏、郷主は改郷士・莿萱氏改針谷氏と号す、苗字は尊氏の御代より始む、但居所の地名を取也）―次郎重政（貞治六年未四月死、行年四十二歳）―太郎房次（莿萱氏改針谷氏。応永三年丑八月死、行年四十九歳。社領鷲宮村の内新井中島両郷支配は、房次より永和二年丙辰九月下新井の耕田権平真忠に渡る）―重郎左衛門重村（母耕田右馬之助守久娘。永享十二年申八月死、行年六十七歳）―太郎重郷（文安四年丑四月死、行年五十四歳）―重郎左衛門重芳（母耕田青木之助娘。応仁十六年卯二月死、行年七十三歳、文明十五年卯カと書記す）―一太夫信重（永正十一年戌七月二日死、行年八十四歳）―重郎左衛門重一（実者室信重一女。文亀元年四月十一日死、行年五十九歳。弟針谷次郎行智・信重次男別家と成、仲宿針谷主水重友の先祖也）―徳左衛門重久（永禄七年七月五日死、行年六十六歳）―重郎左衛門久重（天正元年酉九月九日死、行年四十五歳）―重左衛門基重（慶長十九年五月二日死、行年四十九歳）―重左衛門重良（母耕田清氏長女。寛永八年辛未十一月五日死、行年五十一歳）―重左衛門重長（御社領名主。万治二年亥九月六日死）―重左衛門重貞（母下新井の高田氏娘。延宝六年戌九月八日死、行年五十八歳。社領鷲宮村御検地、寛文二寅年二月、田畑屋敷合百八十町九反七畝二十七歩、名主針谷重左衛門重貞）―徳左衛門重隆（名主代官。母高田能秋長女。元禄七年甲戌十月十三日死、行年四十九歳）―重左衛門元重（初周造。母高田寿碩娘。享保六年亥六月二十五日死、行年五十六歳）―重左衛門重泰（初宗造。母白石行右衛門娘。明和三年四月朔日死、行年七十一歳。社殿取締針谷重左衛門重泰、名主針谷甚右衛門）―弥藤治昌安（初順次郎。室は重泰娘。寛政六年寅十二月十三日死、行年八十三歳。社領代官針谷弥藤治昌安、格番勤分家名主針谷藤左衛門、分家名主針谷重左衛門。名主針谷藤左衛門は岡右衛門の長男、安永年中勤役也、藤左衛門は出府致し小石川三百坂御代官布施弥市郎殿御役所元締手代相勤め、倅祐吉は鷲宮に而病死、屋敷家とも内藤甚右衛門へ譲る。分家針谷重左衛門、実は幸手領平塚村産、一代之分家名主年番相勤、後老年にて死、屋敷仲町高橋直右衛門渡す、能筆算術之達人也。針谷意庵本姓は平井氏也、田畑家屋敷無し、順次郎昌安取立る、後弥藤治と云ふ）―弥藤治友行（文化十一年亥十一月二十三日死、行年六十八歳）―弥三郎正行（代官名主。天保二年辰十二月十七日死、行年六十歳）―七十一代弥藤治正静（幼名弥十郎。母下早見村江原峯七娘。弘化三年八月代官職針谷弥藤治正静、町方栗原は其子名主弥重郎重正、年寄中山清右衛門、同中山惣八、組頭小暮七左衛門、細井勘平、上組組頭矢田谷又右衛門、遠藤吉衛門、中町組頭高橋直八、並木勇吉、内下組頭針谷草貞、木村長右衛門、下町組頭武井権左衛門、針谷祐碩、上町百姓代高橋左七、仲町百姓代鈴木吉右衛門、内下百姓代小川長右衛門、下町百姓代内田治兵衛、中島百姓代鈴木新兵衛、下新井百姓代本田祐吉、下新井元名主代青木勘左衛門。同月、名主弥重郎・私欲横領筋有之、小前惣代並びに神主大内殿より出願す。此人は前惣代より賄賂し沙汰あり云々。出入願は弥藤治隠居、弥重郎引役閉門被仰付。針谷弥重郎は出入落着後、出府致し本庄御役所御代官鈴木文太郎殿手代相勤罷在候所急病にて死す。嘉永三年四月五日死、行年二十八歳）―七十二代喜三司（正静の末男。天保九年生、十六歳にて名主役を弥重郎より仰付らる）―七十三代重左衛門正胤（正静の末子。明治八年死）」と見ゆ。子孫現当主針谷重威なり。鷲宮神社文政十二年金燈籠に当町針谷勇吉、嘉永五年狛犬に当町針谷艸貞。天保十四年戸賀崎門人帳に鷲宮村針谷弥十郎重政。明治三年本多文書に「鷲宮神社御家来之分は針谷十左衛門、鷲宮村組頭針谷艸貞」。明治三十五年に薬種商針谷義一、鷲宮村助役針谷重太郎（明治六年生）あり。針谷氏二戸現存す。

針谷　ハリガヤ　○栃木県下都賀郡岩舟町三十戸、藤岡町十三戸、野木町七十戸。○茨城県猿島郡猿島町四十戸、古河市五十戸あり。春参照。

一　深谷城士の針谷氏　深谷記に「上椙御譜代之臣、針谷勘六郎」あり。

二　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国上野生国同・針谷六兵衛・四十歳」あり。ハリガイか。

三　葛飾郡八甫村（鷲宮町）　鷲宮村霊樹寺文書に「八甫村。寛永四年検地一町八反八歩・重右衛門、元禄八年検地・針谷重右衛門。光厳寺過去帳、常春禅定門・針谷重右衛門也・寛文二年正月八日、青山全甫上座・中ノ針谷重右衛門也・宝暦四年二月十四日」。鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に八甫村針谷長兵衛、嘉永五年狛犬に八甫村針谷長蔵。光厳寺文久二年棟札に組頭針谷重右衛門。明治九年副戸長針谷園次郎・嘉永三年生あり。二戸現存す。

四　同郡幸手宿　宝持寺文化九年文書に荒宿針谷作右衛門。幸宮神社嘉永四年御神燈に鍼谷作右衛門、明治四十二年碑に針谷新蔵。雷電社明治二十四年水鉢に針谷九蔵。明治三十五年氷漬物商すしや針谷松蔵、料理店針ヶ谷九蔵あり。四戸現存す。

五　埼玉郡鷲宮村　莿萱条参照。

六　同郡荻島村（羽生市）　天満宮明治二十年碑に針谷延之助。現存無し。

七　榛沢郡大塚村（深谷市）　八基村会議員に針谷藤太郎・安政二年生、針谷惣重郎・明治二十二年生、針谷輿志・明治二十五年生あり。二戸存す。

八　同郡小和瀬村（本庄市）　稲荷社明治四十四年碑に針ヶ谷角次郎・針ヶ谷要八・針ヶ谷小三郎あり。針谷氏七戸現存す。

針ヶ谷　ハリガヤ　原（はら、はる）の転訛にて、渡来人集落をハリガイ、ハリガヤと称す。春参照。足立郡針ヶ谷村（浦和市）あり。入間郡針ヶ谷村（富士見市）は新座郡館村の内にて、天正十九年館村検地帳に「館村、中野、引又、針ヶ谷」と見え、元禄六年に入間郡針ヶ谷村となる。榛沢郡針ヶ谷村（岡部町）は、京都醍醐寺応安七年奥書に武蔵国藤田郷針加野弘光寺書写とあり、ハリガヤと唱えている。天正七年那賀郡上田文書に半沢郡ハリカ井と見ゆ。現在、私の村人は針ヶ谷村の親戚を「はりがいんち」と称す。

一　丹党針ヶ谷氏　勅使河原氏系図に「秩父四郎冠者武平（武峰トモ云。天慶年中、武州に配流）―入間冠者経房（中村、針谷、横瀬之祖）」と見ゆ。秩父郡中村郷、同郡横瀬村、榛沢郡針ヶ谷村より起る。

二　葛飾郡清地村（杉戸町）　近津神社明治十六年御神燈に針ヶ谷常吉、明治三十七年幟碑に針ヶ谷喜太郎あり。二戸現存す。

三　埼玉郡青柳村（久喜市）　雨宝寺嘉永七年筆子碑に青柳新田・針谷七右衛門・針谷吉左衛門。久伊豆社明治三十年碑に針ヶ谷貞次郎あり。六戸現存す。

四　同郡原村（久喜市）　日枝社元治元年榛名講碑に針ヶ谷石左衛門・針ヶ谷平六.。明治六年富士講着到帳に原村針ヶ谷石左衛門あり。三戸現存す。

五　同郡加須町　明治三十五年桶屋針ヶ谷長七・鋳掛職針ヶ谷長六あり。一戸現存す。

六　同郡多門寺村（加須市）　愛宕社安政四年伊勢講碑に針谷喜右衛門あり。針ヶ谷氏一戸現存す。

七　同郡道目村（大利根町）　天満宮天保四年二十三夜塔に針ヶ谷泰蕃・針ヶ谷長右衛門、天保十四年雷電碑に上道目村針ヶ谷長右衛門、文久元年稲荷碑に針谷嘉右衛門。明治九年副戸長針ヶ谷長十郎・嘉永五年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に道目村針谷長十郎。鷲大神明治十二年浅間碑に針谷長十郎・針谷伊兵衛・針谷久次郎・針谷倉之助。明治十八年最上農名簿に針ヶ谷長十郎・耕宅地八町歩所有あり。十一戸現存す。

八　入間郡久米村（所沢市）　当村明和三年廻国塔に針ヶ谷源三郎。長久寺万延元年宝篋印塔に針ヶ谷熊二郎・針ヶ谷伝兵衛。八幡社明治十年碑に針ヶ谷茂三郎、明治三十九年碑に針ヶ谷金蔵・針ヶ谷伊作（明治十七年生）あり。十六戸現存す。

九　熊谷町　明治三十五年飲食店針ヶ谷嘉吉あり。一戸現存す。

一〇　幡羅郡弥藤吾村（妻沼町）　聖天旧記に「弥藤吾村草分農民にして、延宝年間・針ヶ谷加左衛門」あり。五戸現存す。

一一　同郡八木田村（妻沼町）　妻沼村聖天宮文化十五年御神燈に八木田村講中・針谷伝兵衛あり。現存無し。

一二　本庄町　明治三十五年糸繭商針ヶ谷元吉あり。現存無し。

一三　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・針ヶ谷赫次・五十円、久喜町・針ヶ谷松二・十七円、川辺村（大利根町）・針ヶ谷虎太郎・十六円・五十六円、原道村（大利根町）・針ヶ谷真一・二十八円、熊谷町・針ヶ谷嘉吉・五十五円・三十九円、針ヶ谷保平・十六円・三十三円」あり。

張ヶ谷　ハリガヤ　春参照。

一　葛飾郡芦橋村（庄和町）　香取社文化十二年庚申塔に張ヶ谷磯右衛門、文政九年庚申塔に張谷亀太郎。明治三十年人名録に張ヶ谷庄作・明治四年生・地租十七円あり。一戸現存す。

二　同郡深輪村（杉戸町）　鷲巣村正明寺寛政四年庚申塔に深輪村張谷彦右衛門。桜神社天保二年御神燈に深和邨張ヶ谷幸右衛門。椿村文珠堂明治十五年筆子碑に深輪村張ヶ谷菊次郎あり。一戸現存す。

三　同郡中野村（幸手市）　広戸沼村鹿島社明治三年浅間碑に中野村張谷栄治郎。香取社明治三十八年稲荷碑に中野張ヶ谷豊吉あり。二戸現存す。

四　同郡上戸村（幸手市）　正明院安政四年庚申塔に上戸村針ヶ谷彦次郎。明治三十年人名録に戸島村張ヶ谷房次郎・安政元年生・地租十五円あり。現存無し。

五　同郡長間村（幸手市）　文政七年戸賀崎入門帳に長間村張ヶ谷忠兵衛あり。現存無し。

六　粕壁宿　真蔵院天保十五年地蔵尊に張ヶ谷市五郎あり。一戸現存す。

針金屋　ハリガヤ　浦和に存す。

張ヶ代　ハリガヨ　葛飾郡並塚村（杉戸町）に二戸現存す。ハリガヤの転訛なり。椿村文珠堂明治十五年筆子碑に並塚村張ヶ谷藤八.。明治三十年人名録に並塚村張ヶ代藤八・嘉永元年生・地租十五円あり。

播川　ハリカワ　岩槻に存す。

針木　ハリキ　蕨、新座、草加等に存す。

播木　ハリキ　嵐山に存す。

梁木　ハリキ　川口に存す。

播口　ハリクチ　狭山に存す。

針幸　ハリコウ　新座に存す。

張田　ハリタ　北本、川越、狭山に存す。

一　埼玉郡鹿室村（岩槻市）　不動堂安政二年不動尊に張田伊八。現存無し。

針田　ハリタ　浦和、大宮、川口、朝霞、三芳、岩槻、春日部、草加に存す。

播田　ハリタ　新座に存す。

張谷　ハリタニ　朝霞に存す。

張田谷　ハリタヤ　桶川に存す。

針塚　ハリヅカ　越谷、狭山等に存す。群馬県渋川市十八戸あり。

張戸　ハリト　蕨、草加等に存す。新潟県見附市十六戸あり。

播野　ハリノ　新座、日高等に存す。

針原　ハリハラ　浦和、北本、鴻巣、戸田、吉川等に存す。

針生　ハリフ　朝霞に存す。

張間　ハリマ　桶川、狭山、所沢、深谷、吹上等に存す。青森県東津軽郡蓬田村十一戸、青森市三十戸あり。

張磨　ハリマ　越谷、毛呂山に存す。

張摩　ハリマ　川越に存す。青森県下北郡風間浦村九戸あり。

針間　ハリマ　志木、行田等に存す。

播間　ハリマ　秋田県仙北郡千畑町九戸あり。

播磨　ハリマ　播磨国（兵庫県）は古事記に針間国と見ゆ。馬（ま、ば）は場所の意味。渡来人の集落を針間、播磨と称す。春参照。比企郡須江村字播磨川あり。秋田県北秋田郡森吉町八戸、岩手県久慈市四十四戸あり。

一　所沢町　久米村水天宮明治四十一年碑に所沢町仲町播磨茂助（旅人宿）あり。現存無し。

二　那賀郡甘粕村（美里町）　甘粕神社明治二十五年富士碑に当所播磨竹次郎あり。播磨氏一戸、播摩氏四戸現存す。

三　秩父郡飯田村（小鹿野町）　三田川の歩みに「飯田の播磨氏は由緒ある旧姓なり」。古代以来の土着者にて、播磨国は地名附会なり。八幡社伝に大同三年十一月十五日・平氏播磨一族が播磨国から来住すと云う。同社鉄砲祭の鍵取は播磨氏宗家が勤めている。同社宝暦十年御神燈に当所播磨安兵衛・播磨嘉兵衛、慶応元年御神燈に当所播磨勝平あり。六戸現存す。

播摩　ハリマ　那賀郡甘粕村に四戸存す。青森県下北郡風間浦六戸あり。

播麿　ハリマ　大宮、草加等に存す。

播磨屋　ハリマヤ　所沢に存す。

張村　ハリムラ　大宮に存す。

針村　ハリムラ　戸田に存す。

張本　ハリモト　大宮、与野、戸田、本庄、東松山等に存す。

針本　ハリモト　新座、富士見等に存す。

梁本　ハリモト　志木に存す。

播本　ハリモト　浦和、川口、戸田、所沢等に存す。

張谷　ハリヤ　浦和、志木、鳩ケ谷、越谷等に存す。

針谷　ハリヤ　各市町村に存す。

播谷　ハリヤ　鳩ケ谷に存す。

張山　ハリヤマ　川口、久喜、幸手等に存す。青森県東津軽郡蟹田町二十戸、青森市二十七戸あり。

針山　ハリヤマ　浦和、川口、桶川、和光、飯能等に存す。

針生　ハリュウ　上尾に存す。宮城県塩釜市八戸あり。

羽竜　ハリュウ　菖蒲、川越、富士見等に存す。

波立　ハリュウ　新座、川越、富士見、越谷等に存す。福島県いわき市十九戸あり。

春　ハル　天神本紀に「天降供奉らしむ。八意思兼神の児、表春命（うははるのみこと）・信乃阿智祝部等祖、天下春命（あまのしたはるのみこと）・武蔵秩父国造等祖」と見え、高橋氏文に「知々夫国造の上祖、天上腹（あまのうははら）天下腹（あまのしたはら）人」と見ゆ。腹は原（はら、はる）で春とも書く。思兼（おもいかね）は重い鉄（くろがね）のことで、天降（あまふる）は海（あま）で、船により渡来した鉱山鍛冶集団の首領である。豊前国風土記逸文に「田河の郡鹿春の郷。此の郷の中に河あり。此の河の瀬清し、因りて清河原（きよかはら）の村と号けき、今、鹿春（かはら）の郷と謂ふは訛れるなり。昔者、新羅の国の神、自ら渡り到来りて、この河原に住みき。便即ち、名づけて鹿春の神と曰ふ」と見ゆ。万葉集には加波流（かはる）と見ゆ。春（はら）は原（はら、わら）に同じ。福岡県田川郡香春町香春（かわら）に香春神社あり、祭神は辛国息長大姫大目命で韓国渡来人の奉斎神であり、神職は新羅系の赤染氏が世襲す。有名なる銅産地の香春鉱山がある。宮崎県西都原（さいとばる）古墳あり。九州地方では原（ばる）と云う。新羅国は除羅伐（そらばる、そらぶる）と云い、伐（ばる、ぶる）は火（ふる）のことで火神を称し、鉱山鍛冶集団の都、国の意味。渡来人鍛冶集団の集落を原（はら、ばる、はる）、春（はる、はら）と称し、張（はる、はり）の佳字を用いて、針（はり）、播（はり）、晴（はる、はれ）等に転訛す。是等は砂鉄の取れる川岸や山間部に地名や集落がある。春氏は川口、狭山等に存す。

治　ハル　春の佳字なり。所沢に存す。

一　鉢形城士の治氏　小鹿野町吉田系図に「軍役書上、御扶持方衆、百五十目八人ふち・治伝右衛門」あり。

波留　ハル　入間に存す。

春秋　ハルアキ　本庄に存す。茨城県鹿嶋市七戸あり。

春井　ハルイ　川口、寄居等に存す。

春石　ハルイシ　越谷に存す。

春海　ハルウミ　飯能に存す。

春尾　ハルオ　久喜に存す。

春岡　ハルオカ　坂戸に存す。

治影　ハルカゲ　鶴岡事書日記に「応永二年七月二十三日、佐々目郷百姓交名、三郎次郎・慈月坊百姓、治影」と見ゆ。足立郡笹目領沼影村（浦和市）の書誤りなり。

春川　ハルカワ　各市町村に存す。○新潟県柏崎市五十五戸、十日町市二十戸。○岩手県二戸郡一戸町八戸あり。

春木　ハルキ　各市町村に存す。○新潟県西蒲原郡分水町十二戸。○島根県隠岐郡都万村七戸、簸川郡大社町二十九戸、八束郡玉湯町二十四戸あり。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御勘定並・五石余二人扶持・春木諏訪介・四十二歳、勘定奉行支配・四石二人扶持・春木卯七・五十一歳」。

二　川越町　明治九年副戸長春木敬量・文政十年生あり。現存無し。府川村に一戸存す。

春口　ハルクチ　各市町村に存す。

春国　ハルクニ　上尾に存す。

春沢　ハルサワ　川口に存す。

春澤　ハルサワ　大宮に存す。

晴沢　ハルサワ　浦和に存す。

榛沢　ハルサワ　新座に存す。

治島　ハルシマ　川口に存す。

春添　ハルゾエ　三芳に存す。

春園　ハルゾノ　浦和、鶴ヶ島に存す。

春薗　ハルゾノ　所沢に存す。

治田　ハルタ　各市町村に存す。群馬県利根郡昭和町五戸、富岡市二十六戸あり。ハッタ参照。

春田　ハルタ　入間郡鴨田村字ハル田カイドあり。群馬県邑楽郡千代田町六戸あり。

一　埼玉郡谷原新田（春日部市）　下蛭田村明治四十一年古峰院碑に谷原新田・春田清作あり。現存無し。

二　同郡若小玉村（行田市）　勝呂神社安政三年御神燈に春田庄□・春田島之助・春田勘六・春田紋太郎あり。八戸現存す。

三　幡羅郡葛和田村（妻沼町）　大龍寺天保三年千体堂に春田善八、明治十四年筆子碑に春田余次郎あり。四戸現存す。

春谷　ハルタニ　越生に存す。

春近　ハルチカ　春日部に存す。

春次　ハルツギ　春日部に存す。

春摘　ハルツミ　桶川に存す。鳥取県八頭郡智頭町九戸あり。

春名　ハルナ　各市町村に存す。

一　岡部藩安部氏家臣　文久元年源勝院棟札に作事方春名金左衛門邑忠。慶応四年岡部藩分限帳に「御取次・七十石三人扶持・春名三太夫、御目付・八石三人扶持・春名周輔、御中小姓・六石二人扶持・春名左源治」。大正三年源勝院安部家旧臣碑に「東京代々木町春名鏈之助、東京神田春名邑治、愛知県一ノ宮町周輔長男春名□次郎」あり。岡部村一戸現存す。

春菜　ハルナ　和光に存す。

春永　ハルナガ　上尾、北本、志木、栗橋等に存す。

春成　ハルナリ　大宮、草加、上福岡、坂戸、毛呂山等に存す。

治野　ハルノ　和光に存す。

春野　ハルノ　大宮、川口、白岡、越谷、所沢、深谷、岡部等に存す。

春林　ハルバヤシ　春日部に存す。

春原　ハルハラ　浦和、川口、与野、菖蒲、越谷、宮代、幸手、妻沼等に存す。長野県須坂市二十戸あり。シュンノハラ、シンノハラ参照。

一　本庄町　明治三十五年菓子屋春原寅吉あり。現存無し。

晴柀　ハルヒ　川口、白岡、所沢に存す。

治部　ハルベ　桶川に存す。

春間　ハルマ　大井に存す。

春見　ハルミ　八潮に存す。

春宮　ハルミヤ　蓮田、朝霞、越谷、所沢等に存す。長野県上伊那郡辰野町七戸、東筑摩郡波田町九戸あり。

春村　ハルムラ　戸田に存す。

春元　ハルモト　大宮、春日部等に存す。

春本　ハルモト　川口、上尾、与野、志木、戸田、坂戸、草加等に存す。

春森　ハルモリ　桶川に存す。

春山　ハルヤマ　古代朝鮮語で山は国・村の意味。渡来人集落を春山と称す。春参照。○群馬県北群馬郡吉岡町十三戸、多野郡吉井町六十四戸、藤岡市三十七戸、太田市五十六戸、高崎市八十戸、前橋市六十戸。○栃木県足利市百戸あり。

一　忍城士の春山氏　簑沢一城根元亡落記に「忍城主成田下総守氏長の家臣春山又四郎は、天正三年羽生城攻めの時、戦死す」と見ゆ。

二　埼玉郡岩槻町　文化十二年岩槻城下見聞写書に「春山新田八町三反、渋江町四十八町四反、横田町二十五町六反、田中町十三町一反」とあり。明治八年岩槻町に統合される。春山新田は春山氏の開墾地か。加倉村浄国寺元禄九年庚申塔に市宿町春山市左衛門。久伊豆社天保十年御神燈に市宿町春山新七あり。五戸現存す。

三　同郡笠原村（鴻巣市）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

四　同郡所久喜村（久喜市）　八幡社文政五年御神燈に春山太十郎・春山平助・春山平左衛門・春山庄左衛門、明治三十九年碑に春山政吉あり。十二戸現存す。

五　同郡羽生町　正覚院春山氏先祖塔に「案ずるに、祖先初代随順善入信士・宝暦六年卒は、本郡稲子春山徳兵衛の分家にして、五代春保雪道信士・安政五年卒に至り継家亡籍となる。明治十年本家春山仁三郎二男与三郎継家再興の為入籍す。羽生町に織物商を開店す」。明治三十五年青縞商春山与三郎あり。

六　同郡稲子村（羽生市）　光明院延宝八年地蔵尊に春山弥兵衛、寛政七年地蔵尊に春山兵助・春山多次右衛門・春山彦四郎あり。八戸現存す。

七　同郡上中条村（熊谷市）　幕末に組頭春山長兵衛あり。一戸現存す。

八　足立郡芝村（川口市）　文政三年成就庵筆子帳にミね春山定五郎。慈星院明治十年碑に春山文左衛門あり。三戸現存す。

九　同郡蕨宿　和楽備神社享和三年鳥居碑に春山庄左衛門あり。六戸存す。

一〇　同郡新曽村（戸田市）　観音寺寛政二年地蔵尊に新曽村下新田春山伊平治・春山久太郎、天保五年碑に春山伊兵衛・春山清治郎。金剛院文政十一年供養塔に春山伊兵衛。当村天保二年御神燈に下・春山万蔵。浅間社明治十年碑に春山文次郎。明治三十一年染物業春山伊兵衛・同春山庄左衛門あり。十六戸現存す。

一一　高麗郡上広瀬村（狭山市）　明治二十七年地租調査に春山富五郎あり。一戸現存す。

一二　比企郡上押垂村（東松山市）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

一三　大里郡広瀬村（熊谷市）　文久元年秋山翁碑に春山和市・春山弁次郎。富士浅間社慶応三年小御岳碑に当所春山新二郎あり。二戸現存す。

一四　榛沢郡深谷宿　旅籠屋百姓代春山金兵衛・俳号歌成は文化十二年に上州草津桐屋高原家で狂歌を詠む。慶応二年名家諸風仁銘鑑に深谷宿歌人春山長吉・天保七年生。呑龍院明治四十五年馬頭尊に深谷町春山長吉（通運会社）あり。一戸現存す。

一五　同郡宿根村（深谷市）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

一六　同郡沓掛村（岡部町）　榛沢村経蔵院文久二年筆子碑に沓掛村春山金十郎あり。四戸現存す。

一七　児玉郡児玉町　八幡社明治三十五年碑に春山縫三郎。明治三十五年洋物店春山秀作あり。五戸現存す。

一八　同郡関村（美里町）　明治九年戸長春山周蔵・文政十年生あり。七戸現存す。

一九　同郡阿那志村（美里町）　千田文書に「享保十五年、阿那志村役人春山儀兵衛、春山軍治。天保十二年、勇方見習勤に而未格席、治部左衛門方権威に而右様取半役、春山勇殿。酉年、阿那志三ヶ村支配春山治部左衛門立会支配申付置候。天保十三年寅、阿那志村田方御勘定、高四俵五升余・春山六兵衛御扶持、高四俵五升余・春山正兵衛、上川輪村治部左衛門」。本庄春山茂之文書に「文政八年名主春山六兵衛。天保七年父同様苗字帯刀御免、春山正兵衛殿。明治六年、反別一町四反九畝二十二歩・旧役人春山五郎次・三十六歳」。古郡村安光寺嘉永元年地蔵尊にアナシ春山正兵衛。河輪神社安政六年御神燈に春山正兵衛茂徳。明治四年名主春山六兵衛。明治九年副戸長春山正兵衛・嘉永五年生、代理春山坦斎。私塾師匠名主春山徳命・号坦斎・敬哉・明治三十年没七十三歳。県会議員眼科医師春山正兵衛・嘉永五年生あり。八戸現存す。

二〇　同郡根木村（美里町）　用土村明治十三年仙元碑に根木村春山才治郎あり。一戸現存す。

二一　那賀郡小平村（児玉町）　秋平小学校明治三十二年碑に小平・春山徳治あり。現存無し。

二二　賀美郡元阿保村（神川町）　当村明治三十年碑に当所春山和三郎あり。二戸現存す。

二三　秩父郡野上下郷（長瀞町）　応安二年仲山城跡石碑建立世話人小坂村春山氏あり。阿仁和条参照。明治十四年林文書に春山馬吉・春山長五郎・春山□次郎あり。四戸現存す。

二四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「羽生町・春山与三郎・九十円・三十九円、川俣村（羽生市）・春山徳太郎・十三円、深谷町・春山長吉・百五十八円、児玉町・春山秀作・十九円・五十円、東児玉村（美里町）・春山衣太郎・百四十一円、春山儀平・十円」あり。

晴山　ハルヤマ　各市町村に存す。岩手県稗貫郡石鳥谷町十戸。岩手郡雫石町七戸あり。

遥山　ハルヤマ　所沢に存す。

晴　ハレ　川越、大井に存す。春参照。

晴佐久　ハレサク　川口、入間等に存す。宮城県古川市九戸あり。

晴澤　ハレサワ　川越に存す。

晴田　ハレタ　比企郡野田村字晴田。

晴披　ハレヒ　川口に存す。

晴柀　ハレヒ　鶴ヶ島に存す。

晴山　ハレヤマ　所沢に存す。岩手県稗貫郡石鳥谷町百十三戸、岩手郡雫石町二十二戸、久慈市四十戸あり。

葉若　ハワカ　戸田に存す。

蕃　バン　中国は北方の異民俗を蕃（えびす）と蔑称した。大和朝廷は中華思想により朝鮮半島の渡来人を蕃と称し、姓氏録には諸蕃と記した。日本書紀・神功皇后摂政前期に「百済王は、今後末永く西蕃と称して、朝貢を絶やしませんと申しあげた」とあり。多くは百済人を蕃と称す。羊（ひつじ）条参照。佳字に番、伴、坂、半、榛等を用いる。

半　ハン　葛飾郡木立村（幸手市）明治二十年選挙権者半与惣治・嘉永六年生。妙法寺明治三十年馬頭尊に半与惣治あり。現存無し。半田条参照。

榛　ハン　榛沢郡大谷村・長在家村は榛里を唱え、ハシバミとも称す。榛沢郡の略なり。

伴　バン　大伴氏の略にてトモと称す。但し、多くは蕃の佳字なり。和名抄に越中国射水郡伴郷あり、後世の半村庄（富山県新湊市）にて蕃族居住地なり。近江国甲賀郡柏木御厨伴中山村（ばんなかやま）あり、名跡記に「伴氏、下山村に居る」。水口村に伴氏（ばん）四十戸、その内、下山村に十三戸あり。甲賀二十一騎にて伴党と称す。系図には著名な三河伴氏と同族と称すが附会なり。柏木庄は新羅の天日矛（あまのひぼこ）族の渡来地説あり。園城寺伝記に園城寺（大津市）の新羅明神で元服した新羅三郎義光は柏木庄を新羅明神に寄進している。甲西町に伴氏十六戸、野洲郡物部郷閻魔堂村（守山市）に伴野氏（ばんの）二十戸あり。新羅人蕃族の渡来地なり。尚、伴林は林条参照。○栃木県塩谷郡喜連川町二十二戸、栗山村二十戸、上都賀郡粟野町十三戸、大田原市二十五戸、今市市三十戸。長野県東筑摩郡波田町十戸、南安曇郡梓川村十七戸。○青森県弘前市四十三戸、青森市三十二戸あり。伴田条参照。

一　武蔵国造族の伴直　古代氏族系譜集成に「武蔵国造。伴直（林、武蔵人）」と見ゆ。伴直（とものあたえ）は大伴直の略とするが、伴林（ばんばやし）にて蕃林（ばんばやし）のことなり。林条参照。

二　忍城士の伴氏　成田分限帳に「二十一貫文・伴伊織、二十貫文・伴数馬、御用人・伴藤左衛門」。行田史譚に「天正十八年忍城攻めの時、伴伊織・伴数馬は長野口を守る。伴近林・伴五郎太郎・伴直記は遊軍として諸備の持口を見廻る」と見ゆ。此の一族は久下村出身にて、久下氏と共に成田氏家臣となる。

三　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「二百五十石・伴清右衛門・是は忍にて罷出・伊勢之者」あり。

四　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「忍屋敷番・三十俵二人扶持・伴次郎兵衛、御勘定之者・二十俵二人扶持・伴九兵衛」。文化四年忍藩分限帳に「御馬廻・八人扶持・伴東三郎」あり。

五　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御馬廻・百三十石・伴藤兵衛、御勘定頭・百石・伴又六、御小姓・三人扶持・伴重蔵、隠居・三人扶持・伴道哉」。明治四年忍藩士族名簿に「百三十石・伴文次郎、六十六石余・伴銃太郎」あり。

六　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「三百五十石・伴治左衛門」あり。

七　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御徒小頭・五両二人扶持・伴半蔵」。

八　入間郡加佐志村（狭山市）　奥富家伝及び羽黒社碑に「八幡太郎義家の家臣大宅光任の子孫伴蔵人一俊が羽後国梁川（山形県鶴岡市）に土着したが、のち武蔵加佐志村に移り、此の地を開拓す」とあり。現存無し。応永年間の勧進と伝へる羽黒神社へ出羽羽黒山修験が来住するか。

九　大里郡石原村（熊谷市）　明治三十五年鍛冶職伴茂八あり。一戸現存す。

一〇　同郡久下村（熊谷市）　旧家にて二項の後裔なり。。七戸現存す。

番　バン　新座、川越、狭山、所沢、越谷等に存す。

播　バン　入間に存す。

潘　バン　新座に存す。

坂　バン　各市町村に存す。サカ条参照。

阪　バン　川口に存す。

塙　バン　浦和、川口等に存す。

半井　ハンイ　与野に存す。

番家　バンカ　浦和、大宮等に存す。

埴谷　ハンガイ　ハンヤ条参照。

半谷　ハンガイ　各市町村に存す。○福島県田村郡大越町十三戸、船引町十一戸、相馬郡小高町二十七戸、双葉郡富岡町十九戸、浪江町四十六戸、双葉町二十五戸あり。

伴加見　バンカミ　岩槻町六地蔵堂承応二年庚申塔に岩付・伴加見又衛門あり。現存無し。

榛谷　ハンガヤ　都筑郡二俣川村の内に榛ヶ谷（はんがや）集落あり。此地より榛ヶ谷庄の名起る。都筑郡市野沢村・川島村、橘樹郡和田村・坂本村・仏向村・下星川村・芝生村の七ヶ村が榛ヶ谷庄を唱え、橘樹郡保土ヶ谷村は半谷郷（はんがや）を唱える。横浜市なり。

一　秩父氏族榛谷氏　榛ヶ谷庄より起る。畠山系図に「秩父重弘―小山田別当有重―榛谷四郎重朝―太郎重季、弟二郎秀重」と。平家物語に「一谷合戦に榛谷四郎重朝、同五郎行重」。源平盛衰記に「武蔵国住人榛谷四郎重朝、同森五郎行重、共に稲毛三郎重成が舎弟」と見ゆ。吾妻鑑巻二に「治承五年四月七日、榛谷四郎重朝」、ハンガへと註す。巻三に「寿永三年二月五日、一谷の軍勢、稲毛三郎重成、同四郎重朝、同五郎行重」。「元暦元年六月十六日、小山田別当有重、子息稲毛三郎重成、同弟榛谷四郎重朝、有重・両息におしえて云わく云々」、ハリガへと註す。巻十八に「元久二年六月二十三日、畠山次郎の一族反逆をたくらむの由により、榛谷四郎重朝、同嫡男太郎重季、次郎秀重、稲毛入道重成法師・子息小沢次郎重政等は誅される」。巻三十八に「宝治元年六月五日、三浦泰村に与して、榛谷四郎、同子息弥四郎・同五郎・同六郎等討死す」と見ゆ。

二　榛谷氏の本名　河越氏や稲毛氏とおなじく本名は加藤氏か。

半川　ハンカワ　越谷に存す。

半杭　ハンクイ　大宮、上尾、栗橋、鶴ヶ島等に存す。福島県相馬郡小高町二十八戸、原町市十二戸あり。

伴光　バンコウ　北本に存す。

坂西　バンザイ　浦和、大宮、川口、岩槻、越谷、川越、狭山、鶴ヶ島等に存す。新潟県北魚沼郡小出町十八戸、堀之内町三十三戸、南魚沼郡大和町十八戸あり。サカニシ参照。

阪西　バンザイ　上尾に存す。

万才　バンザイ　上尾に存す。新潟県五泉市十八戸あり。

萬歳　バンザイ　上尾に存す。新潟県五泉市六戸あり。

伴在　バンザイ　入間、上福岡等に存す。長野県東筑摩郡四賀村十三戸あり。

繁在家　ハンザイケ　青森県十和田市二十二戸あり。

半坂　ハンザカ　大宮、本庄等に存す。

半崎　ハンザキ　大宮、草加等に存す。長野県下伊那郡泰阜村七戸、青森県上北郡天間林村八戸あり。

飯崎　ハンザキ　大宮、草加等に存す。福島県相馬郡小高町十二戸あり。

飯作　ハンサク　鴻巣に存す。

番作　バンサク　川越に存す。

半沢　ハンザワ　渡来人蕃族の集落を半沢、榛沢と称す。沢のことは大沢条参照。高麗郡笠幡村字半沢（川越市）は古の村名にて当村馬頭尊に世話人半沢と見ゆ。入間郡小谷田村字半沢（入間市）も古の村名にて笹井村宗源寺弘化四年寄進帳に小谷田村半沢と見ゆ。男衾郡赤浜村字半沢瀬、秩父郡大内沢村字半之沢あり。各市町村に存す。○群馬県前橋市二十三戸（内、西片貝村十四戸）。○千葉県市原市三十六戸、館山市二十一戸。○新潟県南魚沼郡湯沢町三十戸。○福島県伊達郡国見町十四戸、桑折町七十二戸、梁川町十四戸、耶麻郡猪苗代町十六戸、郡山市八十五戸、いわき市三十八戸、福島市二百九十戸。○山形県西村山郡河北町四十五戸、山形市四十五戸。○宮城県柴田郡大河原町三十七戸、柴田町二十七戸、伊具郡丸森町十六戸、亘理郡亘理町二十五戸、名取市三十三戸、白石市二百戸あり。

一　比企郡の半沢氏　多摩郡横山町江来住人名前書写に「天正十八年、比企郡より半沢仁右衛門来る」と見ゆ。丹党榛沢氏後裔と称すが附会なり。

二　岩代磐城国の半沢氏　古代以来の苗字にて、在名の武蔵国丹党榛沢氏後裔説は附会なり。

半澤　ハンザワ　各市町村に存す。

伴沢　ハンザワ　上野国西片貝村出身の出稼衆半沢氏か。神流川合戦記に「天正十年六月、賀美郡金窪城主斎藤摂津守定盛家臣伴沢伊予基次・伴沢左衛門勝重」と見ゆ。

判沢　ハンザワ　上尾に存す。千葉県安房郡丸山町十五戸あり。

榛沢　ハンザワ　渡来人蕃族の居住地なり。和名抄に榛沢郡榛沢郷を載せ、波牟佐波と註す。紀州那智大社旦那帳に「武蔵国藤田十二郷、うしろはんさわ十二郷」。藤田郷の後を榛沢郷と称し、今の後榛沢村のことでは無い。武蔵志に「後榛沢村、元来当村本榛沢なり、六郎成清住せし所也」とあるが誤りなり。用土村明治十三年仙元碑に元榛沢村古沢丈吉と見え、榛沢村経蔵院文久二年筆子碑に古沢丈吉と見ゆ。今の榛沢村に古沢氏三戸存し、後榛沢村には無し。元榛沢村は榛沢村の古名にて、有名なる榛沢六郎成清館のある後榛沢村説は附会なり。浦和、桶川、新座、川越、越谷等に存す。○東京都三鷹市大沢に三十二戸あり、在名榛沢成清の後裔と伝へるが附会なり。○群馬県前橋市二之宮町に十戸あり、丹党榛沢氏が二之宮赤城神社神主として来住すと伝へるが附会なり。

一　丹党榛沢氏　榛沢郡後榛沢村（岡部町）より起る。武蔵七党系図に「秩父黒丹五基房―榛沢三郎成房―六郎成清（重忠に属し元久二年六月誅せらる。弟に小太郎、四郎）―平六郎成長―七郎―三郎」。安保氏系図に「秩父黒丹五元房―榛沢三郎光経」と。中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「榛沢。丹治、本国武蔵」と見ゆ。保元物語に「義朝に相随う手勢の者共は、武蔵国には榛沢六郎成清」。源平盛衰記に「畠山が乳人に半沢六郎成清」と見ゆ。

二　鍛冶師榛沢氏　吾妻鑑文治五年八月条に「頼朝の陸奥国阿津賀志山（福島県国見町）の藤原泰衡攻めに、榛沢六郎成清の智謀によって、畠山重忠は連れて来た人夫八十人を使って、用意の鋤鍬で土石を運ばせ、一夜にして掘を埋め、突撃路を造った」とあり。常に先陣を勤める畠山重忠は工兵部隊であり、鍛冶木工頭領であった。其の配下の丹党は製鉄製錬や土木技術にたけていた集団であり、榛沢氏が率いていた。風土記稿・後榛沢村条に「榛沢六郎成清社、村の中程小名蔵屋敷にあり。東光寺、本尊は薬師にて開基は榛沢六郎成清なり。陣屋蹟、古へ賀美郡安保の領主たりし安保氏の陣屋蹟と云伝ふ」と見ゆ。蔵（くら）は古代朝鮮語で銅を指す。薬師はタタラ師の守護仏である。安保（あを）は下野国佐野天命鍛冶一派の青木氏屋敷跡で古は青木村と称す。安保氏は無関係なり。是等の鍛冶集団支配頭が丹党榛沢氏であった。畠山条参照。

三　榛沢氏の本名　丹党榛沢氏は在名にて苗字にあらず、本名は新井氏なり。後榛沢村字新井に平安時代の集落跡の新井遺跡あり。苗字新井氏屋敷名にて五戸現存す。榛沢新田村に新井氏六戸現存し、榛沢六郎成清の後裔と伝へる。また、角田条参照。

四　豊後国の榛沢氏　大分郡阿南庄雲取村附近を吉藤名と称す。雲取村は明治八年に中村（庄内町）となる。豊後国図田帳に「弘安八年十月十六日、大分郡松武名三十六町二反内、吉藤名七反・畠山十郎重末」とあり。雉城雑誌・雲取村天満宮条に「鎌倉右大将家之時、畠山次郎重忠当国に下向し、当村岡田屋敷と申処に止宿す。当村の庄官榛沢氏、即ち重忠の臣榛沢六郎某の裔なりと云へり」と見ゆ。大字中に半沢氏七戸存し、畠山氏は無し。代官に榛沢氏一族を派遣し、子孫は半沢氏を苗字に用いる。

五　唐人の榛沢氏　埼玉郡長野村長久寺所蔵に「明応七年七月二十五日於武州児玉郡塩谷郷阿那志村円福寺書写之。榛沢唐人助次郎道珍逆修十三回忌之辰」と見ゆ。阿那志村は後榛沢村の隣村なり。桜沢条参照。

六　変名榛沢氏　幕末振武軍総師大寄隼人、副総師榛沢新六郎あり。榛沢新六郎は榛沢郡下手計村の尾高新五郎惇忠の変名なり。

榛澤　ハンザワ　大宮、鴻巣、川越、所沢、毛呂山等に存す。

番沢　バンザワ　三郷に存す。岩手県九戸郡種市町十一戸、青森県八戸市四十三戸あり。

番澤　バンザワ　川口に存す。

万山　バンザン　川越に存す。

判治　ハンジ　春日部に存す。

般若　バンジャク　川口に存す。

万寿　バンジュ　三郷に存す。

萬正　バンショウ　草加に存す。

番条　バンジョウ　所沢に存す。

番定　バンジョウ　浦和に存す。

磐上　バンジョウ　本庄に存す。

番匠　バンショウ　比企郡番匠村（都幾川村）あり、当村大工棟梁正木氏天正六年文書に番匠大工と見ゆ、工匠の居住地より村名となる。但し、多くは蕃所にて渡来人集落を唱える。小名には、葛飾郡築比地村字番匠、足立郡内谷村字番匠目、入間郡津久根村字番匠、堀籠村字番匠ヶ谷戸、青木村字番匠谷戸、上安松村字番匠塚、豊田本村字番匠屋敷、秩父郡金尾村字番匠カイトあり。川口、大宮、上尾、戸田、蓮田、久喜、朝霞、和光、入間、狭山、熊谷等に存す。

一　川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「蓮匠・番匠弥七郎・辰年十一月。浄円・番匠五郎左衛門・酉年七月」あり。川越市内に現存無し。大工職か。

番匠免　バンショウメン　葛飾郡番匠免村（三郷市）は上口村と一村にて彦峯村と唱える。上口村東光院天正十年九月厨子銘に下総国下河辺庄彦宗郷上番匠免村東光寺と見ゆ。小名番匠免は、足立郡美女木村、小室郷本村、入間郡北野村、上南畑村、川越松郷、古谷本郷、幡羅郡弥藤吾村等にあり。

一　小金城主高城氏家臣の番匠免村（三郷市）住人　小金日蓮宗本土寺過去帳（松戸市）に「妙春・ハンシャウメン妙永家中・弥勒元年十一月朔日（永正四年）。左衛門太郎・番匠面熊野路ニテ・弥勒二丁卯八月八日。高城治部少輔殿・永正十四年四月二十八日番匠面ニテ被誅。道仲・番匠面クラノ助・文禄三年二月十三日」。当村出身某氏は高城氏の本名か。

幡随院　バンズイイン　江戸の侠客幡随院長兵衛は下谷幡随院の寺男平野六郎左衛門（本姓内田氏）の子にて、神田お玉池（千代田区岩本町）の幡随院墓地に埋葬された。幡随院は慶長九年に神田台に創建され、元和三年池之端に移転、万治二年に浅草幡随院門前（台東区東上野五丁目）に移転す。幡随院長兵衛の墓は現在下谷源空寺（東上野六丁目）にある。位牌は父六郎左衛門が故郷埼玉郡阿良川村（加須市）の内田家へ舞い戻った時に持参したもので、内田清之助家所蔵に「長昌院槃誉秋月祐門居士・幡随意長兵衛・慶安三年八月十八日」あり。生母春は佐賀県松浦郡相可村塚本伊織の娘で、母方姓の塚本長兵衛を称す。

伴瀬　バンセ　久喜、入間、坂戸、上里等に存す。栃木県塩谷郡塩谷町十九戸あり。

楾　ハンゾウ　与野に存す。

番園　バンゾノ　所沢、大利根に存す。

幡多　ハンタ　和名抄・遠江国長下郡幡多郷を判多（はんた）と註す、後の飯田郷（静岡県浜松市）にて、今はイイダと称す。備前国上道郡幡多郷（岡山市）を高山本は発多（はた）と註す、平城京出土木簡に「備前国上道郡播多郷秦老人、秦忍山」と。渡来人秦氏の居住地なり。ハタ参照。

飯田　ハンダ　浦和、大宮、鴻巣、春日部、朝霞、所沢等に存す。宮城県玉造郡岩出山町十三戸、栗原郡志波姫町十八戸あり。

反田　ハンダ　島根県邑智郡桜江町十戸あり。

半田　ハンダ　蕃田の佳字にて、渡来人集落を称す。田は郡県・村の意味。葛飾郡半田村（三郷市）あり、正保国絵図に半左衛門新田と見え、正保田園簿に半左新田と見ゆ、但し是以前の小金本土寺過去帳に「妙信尼・半田セウト」とあり。○群馬県新田郡藪塚本町二十五戸、邑楽郡邑楽町二十二戸、太田市五十戸、館林市九十八戸、安中市九十戸。○栃木県河内郡河内町三十八戸、今市市三十戸、鹿沼市五十戸、足利市八十戸、宇都宮市四百戸。○長野県小県郡真田町五十八戸、更埴市四十四戸、上田市六十戸。○宮城県白石市百四戸。○岩手県紫波郡紫波町十六戸。○山形市百二十戸。○秋田県雄勝郡雄勝町十四戸、南秋田郡井川町六十四戸、横手市三十四戸。○青森県西津軽郡木造町十二戸、森田村十一戸あり。

一　丹党加治氏の本名半田氏　十三項参照。

二　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「長男甲斐守輝綱臣・五両二人扶持・本国常陸生国同・半田茂兵衛・四十八歳」あり。

三　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「忍裏門番・三十俵二人扶持・半田七左衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「川俣定加番・六十石・半田吉右衛門、四両二人扶持・半田八郎兵衛」あり。

四　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御武器預り支配・五人扶持・半田七右衛門」。明治四年忍藩士族名簿に「五人扶持・半田宗太郎」あり。七項参照。

五　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「十石・半田平四郎」。

六　埼玉郡礼羽村（加須市）　当村文政六年廻国塔に礼羽村半田吉右衛門あり。一戸現存す。

七　同郡忍町　箕田村嘉永六年増島俊輔筆子碑に行田・半田宗太郎。昭和三年興信録に「忍町・半田与三郎・所得税三百五十一遠・営業税二百一円、半田元次郎・所得税三十八円」あり。八戸現存す。

八　同郡佐間村（行田市）　天神社天保六年御神燈に当所半田音治衛門あり。現存無し。

九　同郡長野村（行田市）　長久寺嘉永四年筆子碑に半田五郎・半田清治郎・半田利吉・半田半左衛門。久伊豆社天保六年御神燈に半田金五郎、明治十一年御神燈に半田利吉あり。二戸現存す。

一〇　同郡下川上村（熊谷市）　下池守村龍高寺享和三年地蔵尊に下川上村半田源八.。当村嘉永六年御嶽碑に半田文次郎・半田善五郎・半田八兵衛あり。八戸現存す。

一一　入間郡所沢町　明治十五年北広堂碑名簿に半田歌太郎。私塾師匠医師半田民之助・明治十八年没。明治三十五年小間物商半田友吉・金山瀬戸物商半田高次郎。久米村水天宮明治四十一年碑に所沢町下仲町半田太郎あり。

一二　同郡小山村（坂戸市）　明治四十一年三福寺薬師奉納試合奉額に寺世話人半田伊助・半田佐紋司・半田佐五郎あり。現存無し。

一三　高麗郡中居村（飯能市）　丹党系図（飯能郷土史）に「加治頼胤（上杉憲政に仕ふ）―胤勝（加治郷赤沢勝輪寺に葬る）―正胤（同寺に葬る）―盛胤（中居加治屋敷を継ぐ。半田氏祖。延宝三年没）―守村（宝永七年没）―季盛（元禄十五年没）―長康（宝暦元年没）―守勝（明和元年没）―恭年（天保三年没）―賢斎（文久三年没）―真茂―清兵衛―半田岩造（現在）」と見ゆ。寛政呈譜には「加治八郎右衛門盛胤（水戸藩に仕ふ）」とあり。加治氏館跡の宝蔵寺は至徳二年加治豊後貞継の創建と伝へる。加治郷の在名加治氏の本名は、古代以来土着の苗字半田氏である。清泰寺安永六年供養塔に中居村半田藤助妻。明治九年戸長半田丈右衛門・文政九年生。中山村智観寺明治十八年馬鳴菩薩信徒録に中居村半田忠兵衛・半田五左右衛門・半田繁太郎・半田丈右衛門・半田重左衛門・半田金蔵あり。十九戸現存す。

一四　同郡宮沢村（飯能市）　中居村の隣村なり。甲源一刀流逸見太四郎門人帳に享和二年・宮沢村半田勝五郎。明治九年戸長半田峰蔵・天保三年生、副戸長半田五平・文政六年生。中山村智観寺明治十八年馬鳴菩薩信徒録に宮沢邨半田弥十郎・半田関之丞あり。十六戸現存す。

一五　児玉郡本庄宿　本庄駅地誌に「半田治右衛門祖々父半田治右衛門は寛政四年陸常総三州の貧民へ支出し、幕府より白銀三枚宛給ふ」。金鑽社享和三年水鉢に半田屋治右衛門。明治五年中町准副戸長半田治三郎。西富田村宥宝寺明治十二年玉垣碑に本庄駅中町半田治右衛門。明治二十三年衆議院議員選挙人名簿に半田治右衛門・納税百二十一円。安養院碑に「半田治三郎の子半田治右衛門源義孝・本庄製糸を起し明治二十九年死す、その長男治之助家督を継ぎ、二男彦兵衛分家す」とあり。一戸現存す。

一六　同郡沼和田村（本庄市）　飯玉神社明治三年富士嶽碑に半田百五郎あり。現存無し。

一七　秩父郡般若村（小鹿野町）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

一八　浦和町　昭和三年興信録に「半田源之進・所得税十九円」あり。

繁田　ハンダ　蕃田の佳字にて渡来人なり。岩手県久慈市十四戸あり。

一　入間郡黒須村（入間市）　当村に此氏多く存す。多摩郡高尾山薬王院寛延三年文書に黒須村繁田武兵衛。大行寺供養塔に「寛延年中、繁田甚右衛門・亡父武兵衛。文久二年、繁田武兵衛満照・繁田武兵衛満該、云々」。中山村智観寺明和二年鐘銘に黒須村繁田武兵衛。当村天明二年地蔵尊に黒須村繁田忠次郎。根岸村明光寺寛政二年宝篋印塔に黒須村繁田甚右衛門。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に「寛政期、黒須村繁田武兵衛・俳号玉峨、繁田忠次郎・俳号雄山」。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、黒須村繁田祐之・繁田武兵衛・繁田忠次郎」。嘉永四年縞座之儀油単衆・黒須村繁田茂十郎。明治九年戸長繁田武平満義（弘化二年生、名主、狭山製茶会社創立、県会議員、大正九年没）、其子武平翠軒（慶応三年生、豊岡町長、昭和十五年没）。明治二十一年茶商繁田武平・茶商繁田宗吉・旅籠屋繁田仲二郎・飲食店繁田竹二郎・材木商繁田竹次郎・織物製造繁田仲右衛門・織物製造繁田祐仙。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年茶商繁田武平・慶応三年生・国税九百二十二円・県下六十七位、大正十四年繁田武平・国税八千二百五円・県下五位。昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「豊岡町・繁田武平・九千九百五十三円・千七百二十八円、繁田哲四郎・五十一円、繁田庸三郎・十二円」あり。

判田　ハンダ　秋田県大曲市十八戸。

幡田　ハンダ　九条家延喜式裏文書の大里郡条里坪付に「幡田里」の地名あり。大里条参照。幡田ノ里は今の津田村（大里町）なり。渡来人集落にて別称を蕃田と称し、伴田（はんだ）の佳字を用いる。旗本鈴木氏は大里郡伴田村を知行すとあり。本田村寛政六年供養塔に大里郡伴田村石工斎藤半七と見え、樋春村真光寺寛政六年供養塔に石工大里郡津田村斎藤半七と見ゆ。津田新田村に斎藤氏十一戸存す。次項参照。

伴田　ハンダ　大和国葛上郡吐田庄（はんだ、御所市森脇字吐田）は、平治元年東大寺文書に「伴田庄、伴所々領」と見ゆ。桶川に存す。新潟県村上市五十六戸あり。次項参照。

一　上野国の伴田氏　元弘三年楠木合戦注文に「大番衆大和道、沼田社別当跡、伴田左衛門入道跡、白井太郎跡、神沢一族」と見ゆ。利根郡沼田郷（沼田市）、群馬郡半田村（渋川市）、同郡白井庄（子持村）、勢多郡神沢村（前橋市東大室字神沢）なり。

伴太　バンタ　渡来人集落の蕃田なり。

一　羊族伴太氏　羊は渡来人の総称なり。ヒツジ条参照。粟生系図に「御堂関白道長公―宇治関白頼通公―民部大輔（任隆是也。多胡庄玉村ミドリ片山庄を知行す。宇治殿五男、上野国に住す）―羊大夫（苗号カラシナの大明神と号す）―伴太大夫（依八幡殿仰、タン小玉党ニウタル）―伴太太郎（此スエハ上野国ニアリ）、弟伴太次郎―玉村次郎―片山武者五郎師綱―粟生五郎左衛門尉広隆（能登国粟生保知行）」と見ゆ。任隆の後裔は武蔵国幡羅郡幡羅郷に居住し幡羅太郎を称す。粟生氏（あお）は羽咋郡粟生村（石川県羽咋市）より起る。多胡郡辛科神社（多野郡吉井町）、同郡片山村（吉井町）、那波郡玉村御厨（玉村町）、緑野郡（藤岡市）の附近に伴太・伴田の地名は無し。是は蕃田の佳字なり。

二　斎藤氏族伴田氏　前項と密接な関係ありて蕃田の佳字なり。桐原系図に「藤原利仁―叙用（斎藤始也）―吉信―伊伝（号伴田大夫、越前惣追補使）」と。尊卑分脈に「藤原利仁（母は越前国人秦豊国の女）―叙用（世に斎藤と号す）―加賀介吉信―伊伝―吉原四郎則光―孝則―粟生次郎助方―粟生太郎行方」と見ゆ。長畝大夫秦豊国は坂井郡長畝郷（のうね、丸岡町）の土豪なり。渡来人秦族を蕃田と称し、子孫の斎藤伊伝は伴田氏（ばんた）を称す。

三　平姓野与党伴太氏　埼玉郡内田ヶ谷村大福寺板碑に「文永四年五月、伴太入道平守友」あり。野与党多賀谷氏館跡にて、渡来系伴太氏は多賀谷氏一族なり。多賀谷氏が蕃田か。

番田　バンタ　埼玉郡太田袋村字番田、高麗郡五味ヶ谷村字番田、大塚野新田字番田あり。

晩田　バンタ　庄和に存す。

坂多　バンタ　越谷に存す。

万代　バンダイ　大宮、志木、川越、岩槻、越谷等に存す。宮城県石巻市十六戸、島根県出雲市五十五戸あり。

萬代　バンダイ　川口、大宮等に存す。

坂大　バンダイ　浦和、大宮、戸田、狭山等に存す。新潟県北魚沼郡小出町二十九戸あり。

半平　ハンダイラ　秩父郡三山村字半平（小鹿野町）は古の村名にて、武蔵志に「三山村字半平・ハンタイラあり、一村の如し」と見ゆ。

半谷　ハンタニ　川口、三郷等に存す。

番長　バンチョウ　上尾に存す。

潘張　ハンチョウ　坂戸に存す。

半戸　ハント　渡来人蕃族の集落を蕃処と称し、半戸、半藤、坂東等の佳字を用いる。川口、上尾、朝霞、川越、越谷、熊谷、横瀬等に存す。新潟県中魚沼郡津南町二十九戸あり。

般戸　ハント　鳩ケ谷に存す。

半渡　ハント　浦和に存す。

番戸　バント　秩父郡下吉田村字番戸は古の村名にて、寛文五年永法寺文書に「武州下吉田村之内、番戸、福田、鳥方、塚原四ヶ村」と見ゆ。

坂戸　バント　秩父郡薄村字坂戸は古の村名にて、天正十三年薬師堂棟札に秩父郡薄谷盤戸村と見ゆ。

伴戸　バント　埼玉郡加倉村久伊豆社元禄十五年庚申塔に加倉村伴戸平左衛門あり。岩槻町に一戸現存す。

半道　ハンドウ　足立郡松本新田（浦和市）真乗寺宝暦六年供養塔に当村半道勘右衛門あり。四戸現存す。

半藤　ハンドウ　蕃処（はんど）の佳字にて渡来人集落を称す。長野県下水内郡栄村十五戸、新潟県三島郡越路町二十戸あり。

一　足立郡間宮村（浦和市）　大天白社文化元年御神燈に半藤庄之助。間宮自治会館文化十年庚申塔に南部領間宮村半藤倉之助・半藤時三郎。氷川社嘉永七年庚申塔に半藤豊蔵・半藤信助・半藤竹治郎・半藤由五郎・半藤丈助・半藤浅五郎・半藤仲五郎。鈎上村神明社元治元年碑に間宮村半藤因幡。明治九年副戸長半藤忠吉郎・文政五年生。明治二十一年皇国武術英名録に柳剛流間宮村半藤藤三郎あり。九戸現存す。

二　秩父郡大宮郷　明治三十五年足袋商塚本半藤八十吉あり。

三　同郡小柱村（秩父市）　諏訪社神主に「半藤大和。半藤越前守（慶安三年裁許）。半藤河内正藤原安信（文政七年裁許）。半藤古三郎」あり。五戸現存す。

四　同郡皆野村　寛保三年香具仲間連名帳に半藤八十吉。円福寺弘化四年寄進帳に半藤河内・半藤富蔵・半藤保兵衛あり。四戸現存す。

飯藤　ハンドウ　坂戸に存す。

伴登　バントウ　浦和に存す。

坂東　バンドウ　蕃処（ばんど）の佳字にて渡来人集落を称す。入間郡小谷田村字坂東山、高倉村字坂東山あり。各市町村に存す。

一　足立郡片柳村（大宮市）　風土記稿加田屋新田条に「当所は江戸新堀に住せし加田屋助右衛門と云者、公の免許を得て、延宝三年当所に来り、三沼の内、入江沼を新墾して入江新田と号す」と。子孫は片柳村に居住し、片柳村祥厳寺跡坂東家墓碑に「坂東助右衛門尚重・正保元年七月紀州名草郡加田より東都北新堀に来住、延宝三年武州足立郡見沼入江を開発して田畑五十二町六反歩所持す、貞享元年九月十七日卒行年七十歳、号唯真院、東都浅草妙円寺に葬る。二代目四郎左衛門尚政・宝永四年八月嫡子助右衛門尚常を連て、同州同郡入江新田に移り片柳に住す、享保四年五月二十四日卒行年六十二歳、当寺に葬る、号頓了院、以下葬所移ず也。享保十三年台命に依り入江再び御改あり、以て東都家名加田屋新田と号す、高六百十四石所持す、宝暦九年九月十七日尚常・行年六十一歳に而卒、無量院と号す。天明三年、六代目孫坂東丹治尚富」と銘あり。坂東貞市家文書に「享保十四年片柳村加田屋助右衛門。文化六年加田屋新田名主豊之助。天保二年加田屋新田・助右衛門年番之節」。染谷村常泉寺参道文化七年庚申塔に坂東豊之助・坂東助右衛門。片柳村万年寺弘化三年水鉢に坂東助次郎。明治九年片柳村副戸長坂東重次郎・文政七年生。片柳村熊野社明治三十二年碑に坂東才太郎・坂東重次郎・坂東豊吉・坂東助三郎・坂東善次郎あり。二戸現存す。

二　榛沢郡田谷村（深谷市）　秩父郡横瀬村文久元年祭礼年番帳に「榛沢郡田ヶ谷村坂東乙次郎・銭十二文わらじ銭」と見ゆ。芸人なり。現存無し。

三　秩父郡下吉田村　歌舞伎役者坂東彦五郎は、字井上万松寺過去帳に「梅芳性林信士・六地蔵之彦五郎事・貞吉父、天保五年正月二十四日」あり。本名は不詳。

阪東　バンドウ　浦和に存す。

板東　バンドウ　浦和、大宮、川口、与野、上尾、桶川、新座、入間、川越、所沢、岩槻、栗橋等に存す。

坂堂　バンドウ　草加に存す。

番留　バントメ　鶴ヶ島に存す。

伴内　バンナイ　川口、蓮田、三郷、吹上等に存す。栃木県矢板市十戸あり。

坂内　バンナイ　各市町村に存す。○新潟県南蒲原郡下田村十八戸、北魚沼郡守門村三十戸、三条市二十五戸、加茂市三十戸。○福島県大沼郡会津高田町九十八戸、金山町二十戸、会津本郷町二十戸、北会津郡北会津村六十七戸、会津若松市百十五戸、喜多方市六十六戸あり。サカウチ参照。

半波　ハンナミ　川越に存す。

半縄　ハンナワ　埼玉郡尾ヶ崎村字半縄（岩槻市）、秩父郡上田野村字半縄（荒川村）は古の村名なり。小名半縄は、埼玉郡内牧村、足立郡安行領領家村、安行原村、小深作村等にあり。

半仁田　ハンニタ　三郷に存す。

般若　ハンニャ　秩父郡般若村（小鹿野町）は、鎌倉雲頂庵文亀元年十一月二十七日文書に般若村と見ゆ。浦和、川口等に存す。

半貫　ハンヌキ　高麗郡柏原村字半貫（狭山市）より起る。狭山市史に「柏原村の半貫山は金クソ山と呼ぶ、この地域より多数の金クソ・吹子の羽石、また建武五年銘の板碑が出土す。この地の半貫氏は刀鍛冶として戦国末期まで東松山と往来し、半貫楽太郎家には金山神社を祀っている」。入間郡誌に「柏原村白髭神社は明徳四年半貫内膳再建す」。天正年中以来田地并に先祖系図書（長谷川文皓所蔵）に「扨又昔入間川格別大水にて川辺村々押流され、当村も本宿よりはけ上へ登り所々に住所し、半貫内膳久吉は谷の出水ありし所に屋敷取りして住居し、神田図書も今の林之内に住所し、図書は当村鋳師之元祖にて商売せし、依て屋敷跡かなくそという、図書子孫右之屋敷跡今に所持してあり。半貫内膳屋敷は四角四面なり、入内手のもの今に所持する、其近所名所今に半貫というなり。扨又川越の城主は田波目大がけの城へ打向、内膳かせいせしに、大がけの城よりいなのひ原へ出張りして戦いし高麗新節次と言かた（大がけ城の宿谷氏家臣）つかいに内膳懸合打死せしいふ云々。慶安之検地迄に田畑不残百姓名田に遣置候と申伝也、且又半貫苗字は新左衛門へ譲りし候」と見ゆ。子孫は長谷川条参照。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、柏原村半貫喜右衛門・半貫仁右衛門、柏原村本宿半貫勇造」。慶応二年長谷川文書に三峰山講中柏原村半貫米造。白鬚社明治二十八年碑に柏原半貫万造。明治二十九年反物小売半貫伊三郎・桶製造桑卸商半貫万造・織物製造半貫峰次郎・同半貫忠五郎あり。十一戸現存す。

半野　ハンノ　野は助詞にて、渡来人蕃（はん）ノ集落を称す。浦和、春日部、所沢等に存す。福島県会津若松市十戸あり。

阪野　ハンノ　浦和、和光、所沢に存す。

伴野　ハンノ　各市町村に存す。

坂野　バンノ　浦和、川口、蕨、越谷、幸手、入間、所沢、日高等に存す。

番野　バンノ　宮代に存す。

判乃　ハンノ　丹党にて高麗郡飯能村より起る。武蔵七党系図に「高麗五郎経家―判乃三郎基兼」と見ゆ。

飯能　ハンノウ　渡来人蕃（はん）の集落を称す。能（の）は助詞なり。

半納　ハンノウ　秩父郡石間村字半納は古の村名なり。

伴之木　ハンノキ　草加に存す。

飯橋　ハンノバシ　狭山に存す。島根県安来市十七戸あり。

半羽　ハンバ　葛飾郡佐左衛門村（杉戸町）八幡香取社安政五年浅間碑に半羽幸右衛門あり。現存無し。

半場　ハンバ　渡来人蕃（はん、ばん）の集落を称す。秩父郡御堂村字半場・奥沢村字半場（東秩父村）は一村にて古の村名なり。浦和、川口、草加等に存す。千葉県夷隅郡夷隅町七戸あり。

一　足立郡清右衛門新田（草加市）　稲荷社天保十一年水鉢に半場藤右衛門あり。二戸現存す。

二　同郡金右衛門新田（草加市）　旭神社文政五年供養塔に半場清吉、天保四年碑に半場太吉あり。一戸現存す。

三　同郡九左衛門新田（草加市）　当村文久二年成田山碑に九左衛門新田半場住之助。明治十九年家屋台帳に半場子之助あり。現存無し。

四　同郡平柳領辻村（鳩ケ谷市）　川口宿善光寺元禄七年碑に辻村半場七郎兵衛あり。現存無し。

五　秩父郡半場村（東秩父村）住人　是は苗字にあらず。清水氏、福島氏、六名氏（むつな）等なり。御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「法受・ハンハ神左衛門尉・元和三年十二月。妙善・半場清水次郎兵衛ムスメ・慶安五年二月。宗順・半場八郎左衛門父・承応元年九月。妙善・半場次郎兵衛息女・承応二年二月。妙雄・半場金右衛門母・万治元年九月。蓮久・半場福島与五右衛門・寛文二年二月九日。蓮順・半場六名藤兵衛ヲチ・寛文二年二月。蓮久・半場与五右衛門・壬寅年二月（寛文二年）。妙作・半場次郎兵衛妻・寛文六年五月。妙清・半場八郎兵衛母・寛文七年十二月。妙等・半場清水金右衛門妹・寛文八年三月。法善・ハンハ善太郎・巳年七月。経印・ハンハ二郎左衛門尉・巳年八月。妙久・半場作蔵母・辰年十月」あり。

馬場　バンバ　与野、岩槻、栗橋、飯能等に存す。ババ条参照。

番場　バンバ 場は場所の意味。渡来人蕃（ばん）族の集落を半場、番場、馬場と称す。多くは佳字の馬場（ばんば）を用いる。小名番場は、埼玉郡礼羽村、下大越村、広田村、下新井村、埼玉村、大井村、足立郡上加村、元太村、入間郡入間川村、水子村、大里郡箕輪村、沼黒村、那賀郡広木村、秩父郡大宮郷、長留村、井戸村等にあり。ババ条参照。○群馬県利根郡月夜野町十一戸。○新潟県中蒲原郡村松町十九戸、南蒲原郡田上町二十八戸、三島郡越路町二十七戸、加茂市百四十戸。○青森県西津軽郡鯵ヶ沢町十九戸あり。

一　葛飾郡川藤村（吉川市）　明治三十年人名録に番場金蔵・嘉永三年生・地租三十九円、番場平次右衛門・弘化二年生・地租二十四円あり。八戸現存す。

二　同郡高柳村（栗橋町）　上州榛名神社大正四年御神燈に葛飾郡高柳村寺新田馬場権蔵あり。三戸現存す。

三　埼玉郡川崎村（八潮市）　専称寺墓碑に寛文十二年・番場伝兵衛あり。一戸現存す。

四　同郡間口村（大利根町）　八幡社明治二十六年碑に番場甚平・番場甚助・番場六左衛門あり。二戸現存す。

五　入間郡藤沢村（入間市）　熊野社延享五年文書に氏子連署証文・番場平八あり。現存無し。

六　比企郡志賀村（嵐山町）　広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑にシカ番場沢五郎。明治九年副戸長番場沢五郎・文化十一年生。八宮社明治十三年御神燈に番場沢五郎。鎌形村八幡社明治十六年筆子碑に志賀村番場栄次郎。昭和三年興信録に「菅谷村・番場高一・所得税十八円」あり。四戸現存す。

七　榛沢郡飯塚村（花園町）　明治九年富田文書に飯塚村番場万作あり。現存無し。

八　秩父郡久長村（吉田町）　明治二十年森林組合員番場宇三郎あり。二戸現存す。

九　同郡坂本村（東秩父村）　明治九年副戸長番場百五郎・嘉永五年生あり。二戸現存す。

番馬　バンバ　埼玉郡黒浜村字馬場（蓮田市）は宝暦四年庚申塔に番馬講中と見ゆ。坂戸に存す。

万場　バンバ　秩父郡伊古田村字万場、下吉田村字万場沢あり。長野県飯山市十一戸あり。マンバ参照。

万羽　バンバ　大宮、蓮田、越谷、松伏、坂戸等に存す。

萬羽　バンバ　大宮、草加等に存す。

萬葉　バンバ　所沢に存す。

坂場　バンバ　狭山に存す。福島県会津若松市十三戸あり。

伴場　バンバ　群馬県勢多郡黒保根村五戸、太田市二十三戸あり。

一　埼玉郡大沢町（越谷市）　明治三十五年菓子商伴場惣吉あり。一戸存す。

二　男衾郡牟礼村（寄居町）　長昌寺明治十二年筆子碑に当所・伴場直八・伴場定八・伴場充五郎・伴場伴三郎・伴場浜五郎・伴場伊勢五郎・伴場九□郎・伴場七五郎あり。十二戸現存す。

榛原　ハンバラ　シンノハラ条参照。

半間　ハンマ　浦和、上尾、越谷、宮代、嵐山等に存す。新潟県西蒲原郡弥彦村二十七戸あり。

飯米場　ハンマイバ　草加に存す。

万実　バンミ　加須、狭山等に存す。

半村　ハンムラ　茨城県猿島郡境町三十三戸あり。

一　葛飾郡惣新田村（幸手市）　戸隠神社宝暦六年庚申塔に半村元右衛門・半村重右衛門・半村治助、天明三年庚申塔に半村藤四郎・半村近七・半村文蔵・半村治郎吉、文政十四年庚申塔に杉山組半邑市兵衛・半村富之助・半村喜四郎・半邑弁七、天保九年御神燈に半村藤右衛門。正福院天保九年真言塔に当所半邑好吉母。明治二十年被選挙権者半村喜三郎・万延元年生あり。三戸現存す。

半本　ハンモト　大宮、越谷、入間等に存す。

半谷　ハンヤ　浦和、上尾、朝霞、入間、川越、富士見、越谷等に存す。

半矢　ハンヤ　桶川に存す。

埴谷　ハンヤ　和名抄・上総国武射郡埴屋郷を載す、後世に半谷（はんや）とも書く。忍藩松平家忠知行地にて天正二十年家忠日記に「はんや之郷」と見ゆ、今の千葉県山武郡山武町大字埴谷（はにや）なり。

一　千葉氏族埴谷氏　武射郡埴谷村より起る。応永の頃、日蓮宗妙宣寺は埴谷豊前守景正・其子左近将監の建立にて僧日英を初祖とす。左近将監の子日親は幼名を寅菊丸と称し、日英に師事す。応永二十四年八月日英譲状に「日英は埴谷小原妙経寺を寅菊丸に譲与す」。町村志に「鎌倉大草紙、並に大日記、管領九代記等に拠るに、上総国の本一揆は、上杉禅秀の党なり。禅秀・敗るゝの後、足利持氏・本一揆の本領を没収す。応永二十六年本一揆蜂起す。持氏・木戸内匠助に之れが追討を命ぜらる、五月六日、其の首領榛谷重氏・城の保つ可からざるを察し、小太郎と共に出で降る」と。上総本一揆を指導した埴谷重氏は敗れて、鎌倉由比ヶ浜で斬られたと云う。

二　犬懸上杉氏重臣の埴谷氏　前項と同族か。鎌倉黄梅院文書に「応永十一年六月十二日、武蔵国守護上杉朝宗、武蔵国目代埴谷備前入道」。鎌倉大草紙に「応永十七年、犬懸の管領朝宗入道禅助は、武州の目代をも塩谷備前守に申付らる。犬懸入道禅秀の手には、塩谷入道・舎弟平次左衛門」と。塩谷は埴谷の書誤りなり。鎌倉大日記に「応永二十二年五月三日、武州目代埴谷備前入道は武蔵目代を辞す」。鎌倉九代記に「犬懸入道禅秀が陣には埴谷入道等云々」と見え、これらをハンカイと註す。旅宿問答に「犬懸入道の手には埴谷入道・舎弟平次左衛門尉」と見え、ハンヤと註す。湘山星移集に「犬懸の郎等に垣谷の両人」と。ハンヤなり。

三　岩附城士の埴谷氏　永禄三年関東幕注文に「岩付衆、埴谷図書助・一用」。家紋の一用（いちよう）は銀杏（いちょう）なり。高麗文書（家伝史料）に「永禄中、きゃくいの次第・埴谷図書助殿・垣谷平太郎殿」。足立郡町谷村井原文書に「天正八年八月二十七日、岩付の奉行某は、井原主税助等に借銭の返済を命ず。借銭の貸主埴谷平三と同源三は、平三の一札のごとく、隠居名義の田畠と屋敷を取るべきことを命ず」と見ゆ。

四　高麗氏の本名埴谷氏　高麗氏は高麗郡より所領地の多摩郡高幡郷へ移り、岩附太田氏に仕える。前項の高麗文書は彦根藩士埴谷氏が代々所蔵す。高麗文書に「古き書付共・七通、埴谷斧次郎所蔵」と記す。彦根藩侍中由緒帳に「十一代埴谷斧次郎、天保八年正月十一日死去」とあり。在名高麗氏の本名は埴谷氏にて、岩附落城後に上州高崎藩主井伊氏に仕え、本名埴谷に復姓して高麗文書を持参したか。

五　忍城士の埴谷氏　成田分限帳に「五十貫文・埴谷左近」あり。別本は垣谷と記す。

番屋　バンヤ　岩手県久慈市六戸あり。

半揚　ハンヨウ　嵐山に存す。

幡竜　バンリュウ　大宮に存す。

伴流　バンリュウ　鶴ヶ島に存す。

半割　ハンワリ　葛飾郡半割村（吉川市）あり、慶長年間に下総国佐倉の人が開発す。佐倉条参照。

ハの部　苗字数千五百五十一.。

火　ヒ　日本書紀神代上の一書に「剣の鍔からしたたり落ちる血がほとばしって神となった。名付けて甕速日神（みかはやひのかみ）と申す。次に熯速日神（ひのはやひのかみ）。この熯速日神は武甕槌神（たけみかづちのかみ）の祖である」と。古事記には熯速日神を樋速日神とある。熯（ひ）、樋（ひ）は火の意味で火神であり、刀剣神や鍛冶神である。出雲国風土記大原郡斐伊郷条に「樋速日子命此処に坐す。故、樋と云う。神亀三年に字を斐伊と改む」と。延喜式に斐伊（ひい）神社、風土記は樋（ひ）社と載す。木次町大字里方の斐伊神社である。里方村に百済系の勝部君虫麻呂の建立した新造院跡がある。斐伊川（ひいかわ）は古事記に肥川（ひのかわ）、日本書紀に簸川（ひのかわ）と見ゆ。斐伊川流域は砂鉄の大生産地で古代からタタラ集団による和鉄生産が行われていた。

日　ヒ　火、肥の佳字で鉱山鍛冶の国、村、集落を指す。肥はクマと読み、阿（くま）とおなじ。百済・伽耶地方の古名を阿耶（あや）、阿羅（あら）と称し、鉄の生産地で阿（くま）ノ国、肥（くま）ノ国は、肥（ひ）ノ国、日（ひ）ノ国と呼ばれた。国は羅とも称し、日羅（ひら）、平（ひら）と書かれた。先代旧事本紀巻三・天神本紀に「天磐船（あまのいわふね）に乗て大虚空（おおそら）を翔行（かけりゆき）て、是郷を巡りみて天降坐（ま）す」と。天（あま）は海（あま）で、天降（あまくだり）は「船による海上からの渡来」のことである。秋田県協和町唐松神社物部文書に「饒速日命其ノ大命ノマニマニ天ノ鳥船ニ打乗リ天ツ日ノ御国を久志出テ天降リマシマシテ」とあり。日ノ御国とは鉄の産出する国のことで、韓国（からくに）を指す。物部族は船により日ノ御国から出羽国鳥海山に渡来したと云う。同所の鳥海山両所大明神は百済明神と称す。唐松神社神主物部氏は今でも鉱山師を兼ねている。即ち日ノ国、或は日羅（ひら）は百済国を称す。アラ、ヒノクマ、ヒラ条参照。

日朝　ヒアサ　川口、蕨、滑川に存す。

日浅　ヒアサ　浦和、大宮、朝霞、越谷等に存す。

日当　ヒアタリ　川口に存す。島根県隠岐郡西ノ島町五戸あり。ヒナタ参照。

火石　ヒイシ　大宮、岩槻、滑川等に存す。岩手県九戸郡山形村八戸あり。

樋泉　ヒイヅミ　川越、所沢、大井、川島、三郷等に存す。山梨県中巨摩郡櫛形町十九戸あり。トイヅミ参照。

吹留　ヒイドメ　与野に存す。

柊　ヒイラギ　浦和、大宮、狭山、庄和等に存す。栃木県小山市六戸あり。

柊木　ヒイラギ　所沢、妻沼等に存す。

日色　ヒイロ　戸田、所沢、飯能、越谷等に存す。千葉県匝瑳郡光町十戸、八日市場市四十戸あり。

日宇　ヒウ　幸手に存す。

日向　ヒウガ　浦和、鳩ケ谷、草加、越谷、本庄等に存す。ヒナタ参照。

日向野　ヒウガノ　新座、和光、三郷等に存す。ヒュウガノ参照。

日請　ヒウケ　狭山に存す。

燧　ヒウチ　志木に存す。

比内　ヒウチ　三郷に存す。

日馬　ヒウマ　岩槻、宮代、川本に存す。

日浦　ヒウラ　各市町村に存す。新潟県三島郡出雲崎町七戸あり。

日裏　ヒウラ　与野に存す。

樋浦　ヒウラ　各市町村に存す。新潟県西蒲原郡西川町十七戸、巻町四十戸、吉田町十四戸あり。

日浦田　ヒウラタ　浦和、蓮田等に存す。

日栄　ヒエイ　越谷に存す。

日永　ヒエイ　大宮、和光等に存す。

日江井　ヒエイ　上尾、熊谷等に存す。

樋江井　ヒエイ　加須に存す。

稗島　ヒエジマ　浦和、川越等に存す。

比江島　ヒエジマ　朝霞、深谷等に存す。

比江嶋　ヒエジマ　新座に存す。

比恵島　ヒエジマ　所沢に存す。

稗田　ヒエダ　足立郡庄左衛門新田字稗田（草加市）はヒダと註す。埼玉郡大瀬村字稗田、砂山村字稗田、足立郡八幡田村字稗田あり。各市町村に存す。千葉県山武郡成東町二十五戸。島根県大田市三十戸あり。

桧枝　ヒエダ　熊谷に存す。

檜枝　ヒエダ　上尾に存す。

日永田　ヒエダ　浦和、草加等に存す。

稗貫　ヒエヌキ　蓮田に存す。岩手県花巻市十五戸あり。

稗圃　ヒエホ　浦和に存す。

日尾　ヒオ　秩父郡日尾村（小鹿野町）あり。浦和、川口、川越等に存す。

一　諏訪部氏族日尾氏　秩父郡日尾城主諏訪部遠江守定勝の子宗右衛門定吉、源十郎定信の兄弟は小田原落城後に徳川氏に仕える。日尾村丸山氏祖先は日尾城主にて落城後帰農し医を業とす。国学者日尾多門・後に宗右衛門・名瑜・号荊山は本姓丸山氏にて、三歳の時父医師丸山林庵（定信十一世の孫）と死別し、母方祖父加藤重矩に養育され、江戸に出て儒者となり、江戸湯島で安政六年没六十六歳、台東区谷中の本通寺に墓あり。諏訪部、丸山参照。

日岡　ヒオカ　北本、新座、小川、春日部等に存す。

飛岡　ヒオカ　川口に存す。

日沖　ヒオキ　川口、浦和、大宮、蕨、草加、飯能等に存す。

日置　ヒオキ　各市町村に存す。○千葉県夷隅郡夷隅町九戸、大原町十戸。○長野県飯田市十八戸。○島根県八束郡東出雲町八戸。○鳥取県東伯郡北条町二十二戸あり。ヒキ条参照。

一　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「百石・本国攝津生国武蔵・日置七郎右衛門・十一歳」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「八人者・二十俵二人扶持・日置武右衛門」あり。

三　埼玉郡荻島村（越谷市）　玉泉院明治二十一年碑に日置忠松。現存無し。

日小田　ヒオダ　日高に存す。

日尾野　ヒオノ　熊谷、上里等に存す。

比賀　ヒガ　浦和、大宮等に存す。

比嘉　ヒガ　各市町村に存す。

日改　ヒカイ　千葉県香取郡大栄町十七戸あり。

日開　ヒカイ　桶川に存す。

樋貝　ヒカイ　川口、宮代等に存す。

肥海　ヒカイ　入間に存す。

備海　ビカイ　川口、大宮等に存す。

日垣　ヒガキ　和光に存す。

桧垣　ヒガキ　浦和、大宮、川口、蓮田、草加、幸手、三郷等に存す。

檜垣　ヒガキ　各市町村に存す。千葉県成田市三十戸あり。

飛垣　ヒガキ　上尾に存す。

日ヶ久保　ヒガクボ　越谷に存す。青森県上北郡百石町二十五戸あり。

日景　ヒカゲ　各市町村に存す。秋田県北秋田郡鷹巣町七戸、大館市二百十八戸あり。

日影　ヒカゲ　高麗郡日影郷（飯能市）あり。天文十八年米良文書に「むさしこまかうり之内、大のけん左衛門尉・ひかけむら」と、大野氏は当地方に多く存す。鎌倉建長寺寛永十年末寺帳に「高麗郡日影郷金錫寺（赤沢村）、同郡日影郷滝向庵（唐竹村）、同所養福寺（中藤上郷）、同所医王寺（原市場村）」と見ゆ。また、比企郡日影村（玉川村）は天正十五年東光寺文書に日影と見ゆ。玉川郷字下日影は法恩寺正保二年末寺門徒帳に日影光明寺と見ゆ。また、慶長三年秩父郡大滝日影之郷年貢帳あり。小名日影は、入間郡勝楽寺村、滝野入村、黒岩村、大満村、児玉郡河内村、秩父郡上影森村、太田村、河原沢村、薄村、高山村等にあり。川口、浦和、上尾、坂戸、鶴ヶ島、飯能、草加等に存す。岩手県二戸郡一戸町九戸、九戸郡軽米町十戸、大野村七戸、久慈市十九戸あり。

一　高麗郡日影郷赤沢村（飯能市）　慶応四年復飾改名願上書に「日影郷赤沢村妙見寺事、日影大学」と見ゆ。修験日影山妙見寺なり。一戸現存す。

日蔭　ヒカゲ　鶴ヶ島に存す。

一　秩父郡の日蔭長者　高篠山は山田村、横瀬村、大野村に面し、蕨を名産とし薬草を生ず。秩父志に「元中年中、大野村日蔭屋敷・神沢右四太」。「山田村、日蔭長者屋敷は高篠山の神沢と云所に長者屋敷跡と云ありて平なる所なり。如何なる人の住居なるや知る人、更になし」と見ゆ。

日隠　ヒカゲ　大宮、川口、伊奈、白岡等に存す。

日笠　ヒガサ　大宮、与野、朝霞、入間、狭山、川越、久喜、熊谷等に存す。島根県邑智郡川本町六戸、鳥取県八頭郡八東町十二戸あり。

樋笠　ヒガサ　浦和、和光、東松山等に存す。

日笠山　ヒガサヤマ　浦和、川口、朝霞、飯能、東松山、越谷等に存す。

東　ヒガシ　○高句麗の五部制は、東部を左部・上部とも称し、西部を右部・下部とも称す。天平宝字五年紀に「高麗人・上部王虫麻呂に姓を豊原連と賜ふ」。延暦十八年十二月紀に「信濃国小県郡の人、上部豊人、上部色布知等言ふ。己等の先祖は高麗人也、色布知に姓を玉井と賜ふ」と見ゆ。百済の五部制は高句麗に習ったもので、旧唐書に「百済の国、旧（もと）分ちて五部と為し、郡三十七、戸七十六万を統ぶ」と。都下（王城の泗沘城・忠清南道扶余）、中方（内部の古沙城・全羅北道古阜）、東方（東部の得安城・忠清南道恩津）、南方（南部の久知下城・全羅南道長城）、西方（西部の刀先城・不詳）、北方（北部の熊津城・忠清南道公州）を五部と定めた。和名抄に摂津国百済郡東部郷・西部郷・南部郷（大阪市）あり。また、武蔵国足立郡南部庄あり、当国は百済の東部より渡来した人々が東（ひがし）姓を称す。○長野県上水内郡豊野町十四戸。○青森県上北郡十和田湖町二十戸、三戸郡名川町十八戸、十和田市八十戸。○島根県邇摩郡温泉津町八戸、浜田市三十二戸あり。アヅマ参照。

一　鉢形城士の東氏　秩父案内記に「鉢形城士・東右馬之助、阿熊村土着」と見ゆ。吉田町阿熊に現存無し。

二　忍城士の東氏　成田分限帳に「十五貫文・東内匠」あり。

三　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百二十石・東重左衛門」あり。

四　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「御馬廻・三十一人扶持・東彦作」あり。

五　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御中小姓・八石二人扶持・亡養父徳左衛門・東徳左衛門・四十九歳」あり。

六　忍藩阿部氏家臣　天明元年秩父郡横瀬村加藤文書に「阿部家秩父代官東伊右衛門」と見ゆ。

七　浦和町　昭和三年興信録に「東尚胤・所得税二十三円」あり。

八　岩槻町　明治三十五年湯屋東桃太郎あり。

九　騎西町　明治三十五年石臼職東米吉あり。

一〇　大里郡肥塚村（熊谷市）　千葉常胤の後裔東常紀が肥塚村に土着すと伝へる。但し、下総国海上郡東庄（千葉県香取郡東庄町）より起る千葉氏流東氏（家紋九曜）は在名にて苗字にあらず。当村の東氏は、私市党肥塚三郎直長（天喜頃の人）以前より居住の旧家なり。代々名主私塾師匠を勤む。行田史譚に「肥塚村。寛永年中名主東惣兵衛、享保六年名主東惣兵衛、天保元年名主東惣兵衛」。成就院享保六年供養塔に東惣兵衛法名宗始、東庄左衛門法名宗保。元文三年忍藩書上に「肥塚村名主清太郎、古来より無断絶名主勤候、御割附は先年同役方に而焼失致候、忍御知行百年勤来候」。五代東惣兵衛延清（享保十一年没）―惣兵衛有隣（漢学塾を開く。隠居して宮内と称す。寛延三年没）―惣兵衛―惣兵衛―惣兵衛鎮辰―宗兵衛凱直（邦八郎、号包教、安政二年没六十二歳）―総兵衛士直（清太郎、明治元年没五十歳）―秀胤（清太郎、明治十五年没）―毎胤（清太郎、毎太郎、県会議員）―十四代尚胤。天保四年野中文書に肥塚村名主東邦八郎。熊谷町千形神社嘉永五年酒蔵講碑に東清太郎。明治元年名主東清太郎、組頭東鄧右衛門、組頭東徳次郎、百姓代東寛左衛門。明治九年戸長東清太郎・天保十二年生、副戸長東鄧右衛門・嘉永元年生、副戸長東徳次郎・文政十一年生、副戸長東寛左衛門・天保七年生、総代人東周助。明治十一年戸長東毎太郎・万延元年生。明治十八年最上農名簿に東毎太郎・耕宅地十九町九反歩・山林一町歩、東寛左衛門・耕宅地十一町六反歩・山林八反歩所有。榛沢郡岡村南寅稲荷社明治三十二年碑に肥塚村東周助・東徳次郎・東簑三・東篤次郎。昭和三年興信録・所得税に「熊谷町・東寛住・二百十円、東毎太郎・百二十円、東丈作・四十九円、東沢五郎・二十三円」あり。十七戸現存す。

一一　秩父郡下田野村（皆野町）　寛保三年香具仲間連名帳に下田野村東重次郎あり。六戸現存す。

東芦谷　ヒガシアシヤ　戸田に存す。

東池　ヒガシイケ　川越に存す。

東泉　ヒガシイヅミ　川口、浦和、鴻巣、春日部、草加、東松山等に存す。栃木県矢板市二十戸あり。

東浦　ヒガシウラ　浦和、大宮、川口、蕨、鳩ケ谷、志木、所沢等に存す。

東尾　ヒガシオ　大宮、川越、越生、春日部、越谷等に存す。

東大路　ヒガシオオジ　埼玉郡鷲宮村鷲宮神社供僧頭神宮寺大乗院（鎌倉期創建）は明治維新に復飾して東大路義江と改め鷲宮神社祠掌に転ず。明治三十三年氏子惣代荒物商東大路政五郎あり。現存無し。

東大薗　ヒガシオオゾノ　川口に存す。

東大野　ヒガシオオノ　岩手県九戸郡大野村九戸あり。

東岡　ヒガシオカ　埼玉郡南大桑村字東岡、幡羅郡妻沼村字東岡、小島村字東岡あり。所沢、東松山に存す。

東小川　ヒガシオガワ　茨城県北茨城市十二戸あり。

東恩納　ヒガシオンノ　蕨、志木、入間等に存す。

東垣　ヒガシガキ　浦和に存す。

東方　ヒガシガタ　幡羅郡東方村（深谷市）あり別府村に接し、古今消息集に「観応三年、別府郷東方闕所分」と見ゆ。埼玉郡東方村（越谷市）あり。志木、入間、草加等に存す。

東潟　ヒガシガタ　川口、江南に存す。

東川　ヒガシガワ　葛飾郡惣新田村字東川（幸手市）は古の村名にて、香取社安政四年水鉢に惣新田村東川組と見ゆ。各市町村に存す。栃木県下都賀郡石橋町十戸あり。

東木戸　ヒガシキド　足立郡芝村字東木戸（川口市）は古の村名にて、文政三年成就庵筆子に東木戸と見ゆ。

東口　ヒガシグチ　浦和、志木、越谷に存す。鳥取県八頭郡船岡町九戸あり。

東窪　ヒガシクボ　大宮に存す。

東久保　ヒガシクボ　浦和、大宮に存す。

東倉　ヒガシクラ　庄和に存す。

東小園　ヒガシコゾノ　入間、川越、飯能等に存す。

東小薗　ヒガシコゾノ　大宮、所沢等に存す。

東迫　ヒガシサコ　川越、岩槻に存す。

東沢　ヒガシサワ　川口、大宮、川越、狭山、春日部等に存す。長野県上水内郡戸隠村十戸あり。

東澤　ヒガシサワ　上尾、三郷に存す。

東島　ヒガシジマ　川口、大宮、行田、吉川、川本、吹上、新座、入間、坂戸、狭山、所沢、日高等に存す。

東嶋　ヒガシジマ　北本、行田、吉見、狭山等に存す。

東条　ヒガシジョウ　上尾に存す。トウジョウ参照。

東新膳　ヒガシシンゼン　滑川に存す。

東瀬戸　ヒガシセト　越谷、草加に存す。

東園　ヒガシゾノ　所沢、春日部に存す。

東田　ヒガシダ　各市町村に存す。青森県下北郡東通村八十九戸、鳥取県八頭郡河原町十七戸、気高郡青谷町八戸あり。アヅマダ、トウダ参照。

一　埼玉郡若小玉村（行田市）　勝呂神社安政三年御神燈に東田幸次郎あり。現存無し。

東平　ヒガシダイラ　青森県三戸郡田子町五戸あり。

東館　ヒガシダテ　小川、春日部に存す。岩手県下閉伊郡新里村二十八戸、岩手郡松尾村七戸あり。

東舘　ヒガシダテ　鴻巣に存す。

東谷　ヒガシダニ　川口、戸田、志木、入間、川越、狭山、八潮、三郷、越谷等に存す。

東玉盛　ヒガシタマモリ　浦和に存す。

東垂水　ヒガシタルミ　川口に存す。

東辻　ヒガシツジ　大宮に存す。

東角井　ヒガシツノイ　足立郡大宮氷川神社禰宜に一戸存す、角井条参照。また、明治三十年人名録に栗橋宿八坂神社祠掌に士族東角井軍治・安政三年生あり。現存無し。

東出　ヒガシデ　各市町村に存す。青森県下北郡佐井村十七戸あり。

東寺　ヒガシデラ　忍城士にて、成田分限帳に「三十貫文・東寺摂津」あり。

東中　ヒガシナカ　浦和、上尾、伊奈、新座、春日部、深谷等に存す。

東仲　ヒガシナカ　吉川に存す。

東中川　ヒガシナカガワ　浦和に存す。

東長田　ヒガシナガタ　春日部に存す。

東中道　ヒガシナカミチ　所沢に存す。

東二町　ヒガシニチョウ　三芳に存す。

東根　ヒガシネ　上尾、朝霞、吉川に存す。アヅマネ参照。

東野　ヒガシノ　各市町村に存す。群馬県群馬郡群馬町二十九戸、岩手県二戸郡一戸町十戸、青森県八戸市七十二戸あり。アヅマノ、トウノ参照。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「二百石・東野宇右衛門」あり。

二　粕壁町　春日部八幡社明治三十二年御嶽碑に東野伊助あり。現存無し。

東畑　ヒガシハタ　川口、鶴ヶ島、所沢等に存す。トウハタ参照。

東浜　ヒガシハマ　川口に存す。

東原　ヒガシハラ　各市町村に存す。

一　比企郡平村（都幾川村）　慈光寺観音堂明治二年筆子碑に東原宇之介あり。現存無し。

東平　ヒガシヒラ　鳩山に存す。

東深沢　ヒガシフカザワ　狭山に存す。

東別府　ヒガシベップ　与野に存す。別府条参照。

東堀　ヒガシボリ　戸田に存す。

東本庄　ヒガシホンジョウ　児玉党東本庄氏は児玉郡北堀村（古の東本庄）より起る。本庄、北堀条参照。

東間　ヒガシマ　所沢に存す。

東島　ヒガシマ　草加に存す。

東村　ヒガシムラ　浦和、伊奈、新座、和光、入間、上福岡、狭山、所沢、春日部、越谷等に存す。

東目　ヒガシメ　秩父郡大宮郷享保十五年松本文書に大宮郷役人東目小三郎あり。現存無し。

東元　ヒガシモト　戸田、吉川に存す。

東本　ヒガシモト　大宮、入間、川越、日高、三郷、深谷等に存す。

東盛　ヒガシモリ　戸田、入間に存す。

東森　ヒガシモリ　浦和、大宮、川越、東松山、岩槻等に存す。鳥取県米子市九戸あり。

東谷　ヒガシヤ　足立郡須ヶ谷村（上尾市）は古の東谷村なり。北本、熊谷、狭山等に存す。アヅマヤ参照。

東屋　ヒガシヤ　毛呂山に存す。アヅマヤ、コチヤ参照。

東山　ヒガシヤマ　各市町村に存す。○茨城県行方郡麻生町十四戸、北浦町八戸。○山梨県北都留郡上野原町三十三戸、○長野県上田市四十戸。○岩手県二戸郡一戸町五十戸。○青森県八戸市五十戸あり。トウヤマ参照。

一　忍城士の東山氏　成田分限帳に「百石・東山嘉兵衛」あり。

東山盛　ヒガシヤマモリ　吉見に存す。

東吉　ヒガシヨシ　三郷に存す。

東良　ヒガシヨシ　春日部、宮代に存す。

東脇　ヒガシワキ　所沢に存す。

日向野　ヒガノ　各市町村に存す。○栃木県芳賀郡二宮町十八戸、下都賀郡都賀町十四戸、安蘇郡田沼町十一戸、鹿沼市三十戸、小山市八十四戸、栃木市百二十戸。○茨城県下館市三十六戸あり。ヒュウガノ参照。

日下部　ヒカベ　新潟県南蒲原郡下田村十戸、秋田県北秋田郡鷹巣町十戸あり。クサカベ参照。

日上　ヒガミ　北川辺に存す。

氷上　ヒガミ　鶴ヶ島に存す。

樋上　ヒガミ　上尾、菖蒲、岩槻、春日部、宮代、毛呂山等に存す。

一　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御徒頭・樋上元八」。

飛ヶ谷　ヒガヤ　千葉県香取郡多古町十三戸あり。

日柄　ヒガラ　草加に存す。

光　ヒカリ　北本、戸田等に存す。

日川　ヒカワ　入間、東松山に存す。

氷川　ヒカワ　足立郡大宮宿高鼻町に武蔵一の宮と伝へられる氷川神社あり、分祀した氷川社が足立・新座・入間郡地方に多く鎮座す。アラハバキ条五項、ナカ条参照。入間郡氷川村（所沢市）あり。長野県東筑摩郡波田町六戸あり。

一　笹目郷氷川神社の氷川氏　足立郡笹目領内谷村氷川神社（浦和市内谷二丁目）神主なり。鶴岡事書日記に「応永二年七月二十三日、鶴岡八幡宮領、佐々目郷政所をして、当郷氷河宮々大夫を召喚せしむ」と見ゆ。

二　大宮宿氷川神社の氷川氏　寿能城家老金杉外記は落城後氷川神社に蟄居し、同社の神主となり金曽木と改める。其子内記（元和元年生、元禄十年没）は小室、出水、氷川と改め吉田神道家橘三喜と師弟関係となり橘姓に改め、後追放され、関東郡代伊奈氏に仕え江戸に住す。延宝四年氷川神社書上に神主氷川内記橘盛清と見ゆ。金杉条参照。

三　忍城士の氷川氏　成田分限帳に「五十貫文・氷川内膳、三十貫文・氷川権太夫」あり。

肥川　ヒカワ　新座、羽生等に存す。

飛川　ヒカワ　川越に存す。

樋川　ヒカワ　各市町村に存す。山梨県西八代郡六郷町二十戸、中巨摩郡敷島町十二戸、竜王町二十二戸、南巨摩郡中富町五十戸、甲府市百戸あり。

一　忍城士の樋川氏　成田分限帳に「五十石・樋川善右衛門」あり。

檜川　ヒカワ　与野に存す。

檜皮　ヒカワ　比企郡松山宿鎮守氷川神社の地は檜皮山と称す。太田安房守資武状に「上田闇礫斎之筋者、檜皮山之上田とて庶子にて候」と見ゆ。上尾、越谷等に存す。

日置　ヒキ　日置部は神霊を迎える聖火の材料を製作したり、剣など武器鍛造の際に聖なる火を作るために炭焼に従事した集団である。また、ヒキ蛙のように天を仰ぎ雨乞い祈願をしたり、日招きをしたりして、暦を作成した。ヒオキ、ヘキとも称した。忌部（いんべ）・斎部（いんべ）と同流にて、忌部は朝廷神殿際祀に要する諸物の用具を整える職である。神代紀に「忌部の遠祖太玉命が布刀御幣を奉りし」。天太玉命の子天櫛耳命、其子天富命は、神武天皇朝に「天富命が神物を調ふ」と。姓氏録・未定雑姓・和泉の部に「日置部、天櫛玉命の男天櫛耳命の後てへり、見えず」とあり。和泉国は当初河内国に含まれていた。日置庄（ひき）は大阪府堺市日置荘町にて、鋳物支配頭の仁安二年斎部真継文書に「河内国丹南郡狭山郷内日置庄鋳物師等」と見ゆ。和名抄に肥後国玉名郡日置郷（へき）あり、延喜式に玉名郡疋野神社（熊本県玉名市立願寺字疋野）を載す。日置（ひき）氏の守護神なり。玉名郡菊水町江田の三宝寺発見銅版墓誌（延暦頃）に「玉名郡権擬少領日置郡公」あり。当所は有名なる朝鮮系の遺物を多く含む江田船山古墳がある。疋石野大明神由来（肥後国誌）に「昔、小岱山麓に炭焼きをして渡世する者がいたが、その頃内裏の姫君に、肥後国小岱山の炭焼別当を夫にすれば将来繁昌するとの観世音菩薩の夢告があり、姫君は女房や侍に供奉されて別当を訪れ、別当の言葉をきかず妻となったといい、別当はこの地方に製鉄業を起こし、石野大長者となり、立願寺村内に長者屋敷を構えたと云う」と見ゆ。有名なる玉名郡の小代鍛冶師にて、疋野神社は渡来系日置部の奉斎神なり。また、和名抄に能登国珠洲郡日置郷は比岐（ひき）と註す。大和国葛上郡日置郷は比於支（ひおき）、伊勢国壱志郡日置郷は比於支、越後国蒲原郡日置郷は比於木（ひおき）、但馬国気多郡日置郷は比於岐（ひおき）と註す。東国では安房国長狭郡日置郷あり、鴨川市二子字比岐（ひき）に比定す。延喜式に信濃国更級郡日置神社を載す、筑摩郡日岐郷上生坂村に日置神社あり。ヒキと称す。

日木　ヒキ　与野に存す。

日岐　ヒキ　妻沼に存す。

日記　ヒキ　吾妻鑑巻三十一に「嘉禎三年四月十九日、日記五郎」。巻四十四に「建長六年正月二日、日記三郎」と見ゆ。

飛木　ヒキ　大宮に存す。

比木　ヒキ　忍藩松平下野守忠吉家臣にて、慶長十二年清洲藩分限帳に「二百石・比木伝助・是は忍にて罷出・遠江之者」あり。遠江国城飼郡比木郷（静岡県浜岡町）より起る。

比気　ヒキ　浦和、川越、岩槻等に存す。茨城県新治郡八郷町二十戸、石岡市四十四戸あり。

比企　ヒキ　和名抄に武蔵国比企郡を載せ、比岐と註す。日置部の居住地なり。埼玉郡尾ヶ崎村（岩槻市）勝軍寺安永九年供養塔に比企組と見ゆ。○茨城県新治郡八郷町二十五戸、真壁郡明野町十四戸。○神奈川県平塚市二十五戸。○新潟県北蒲原郡紫雲寺町十一戸、新津市十二戸あり。

一　阿保朝臣後裔の比企氏　比企郡より起る。古代氏族系譜集成に「阿保朝臣人上（建部朝臣、武蔵介、大学頭、延暦二十年卒）―大国（居武蔵国阿保庄、比企郡司大領、天長十一年死）―宗人（賀美郡擬少領）―只上（比企郡大領）―中宗（同少領、従源経基、天慶三年軍功、伐武芝）―比企三郎宗家（住武州比企郡、従源満仲）―右馬允宗末（属満仲）―太郎宗躬（比企郡擬大領、従源頼信）―掃部允宗妙（同少領）―太郎宗陳（同郡擬少領）―宗職（同郡少領）―掃部允宗員（同擬少領、実は佐藤大夫清郷男）―掃部允遠宗（比企郡司、実は藤原有清男。妻藤原公員妹・号比企尼、頼朝公乳母）―藤四郎能員（比企判官、実は藤原公員男。兄は比企藤内朝宗。妹は惟宗広言妻・島津忠久・忠季を生む）―孫四郎時員（余一兵衛尉、母渋川刑部丞女。弟に四郎宗員、五郎某。妹に中山五郎為重妻、糟谷藤左衛門尉妻、頼家将軍妻・号若狭局）―二郎員成（順徳院北面、文応二年二月二日卒）―右馬允満長―右衛門佐守長」と見ゆ。藤原秀郷―千常―文脩―文行―相模守公光。後藤系図に「公光末子相模守公郷―佐藤大夫清郷」あり、佐藤系図には公員の名は見えず。賀美郡丹庄阿保地誌に「代々比企郡に居住故比企と名乗り、宗職・比企の少領と成、子の掃部允宗員も其職を襲ひ、宗員は鎌倉右幕下属し、頼朝公には由緒深き者にて子供三人皆女子にて、長女者丹後局頼朝公の妾にて島津忠久忠季両人の母に而当時薩摩の大守の御先祖なり、次は川越太郎重頼の妻なり、末女者伊藤家の妻なり。母者夫に後連て後比企の尼と申候、頼朝公夫婦之恩をわすれ兼、尼が跡を継せんとて尼が妹の子能員を養子定め甥にて跡相続、能員は相模守公光より六代佐藤公員が子なり、比企判官能員是なり」と。系図に誤り多く、四項参照。子孫は藤原姓を称す。紋譜帳に能員の紋を「風折鳥帽子」とあり。

二　比企氏の名は、平家物語巻十に「範頼に従う比企藤内朝宗、同じき藤四郎義員」。吾妻鑑巻一に「治承四年八月九日、比企掃部允等は、頼朝を大将軍として叛逆の志を表す」。巻二に「寿永元年十月十七日、政子母子、産所より営中に入る。比企四郎能員、御乳母の夫として御贈物を奉る。この事、若干の御家人ありといへども、能員が姨母比企尼と号す、当所頼朝の乳母たり。しかるに永暦元年、豆州に御遠行の時、忠節を存ずるの余りに、武蔵国比企郡をもって請所となし、夫掃部允を相具す。掃部允下向し、治承四年の秋に至るまで二十年の間、御世途を訪ひたてまつる。件の尼、甥能員をもって猶子となし、挙し申すによってかくのごとし」。巻四に「元暦二年正月二十六日、比企藤内朝宗、比企藤四郎能員」。巻八に「文治四年正月二十二日、比企藤内朝宗が妻越後局と号す・御台所の官女、男子を生む。七月十日、頼家七歳出御し、乳母の夫大内武蔵守義信、乳母の兄比企四郎能員、これを扶持す、比企弥四郎は御馬の左右に候ず」。巻十二に「建久三年九月二十五日、比企藤内朝宗が息女姫前と号す、当時権威無双の女房なり、北条義時に嫁す」。巻十四に「比企弥四郎時員」。巻十六に「正治二年二月二十六日、比企判官四郎宗員、新判官能員」。巻十七に「建仁三年九月二日、能員息女・将軍家の妾、若君の母儀なり、もと若狭局と号す。比企三郎・同四郎・同五郎、河原田次郎・能員が猶子、笠原十郎左衛門尉親景、中山五郎為重、糟屋藤太兵衛尉有季、以上三人能員が婿、火を館に放ちて、おのおの若君の御前において自殺す。能員の嫡男余一兵衛尉・路次において梟首せらる。夜に入りて渋河刑部丞を誅せらる、能員が舅たるによってなり。三日、能員が余党等を捜り求められ、あるいは流刑あるいは死罪、多くもって糺断せらる。妻妾ならびに二歳の男子等は、好みあるによって和田左衛門尉に召し預け、安房国に配す」と見ゆ。

三　安房国出身の比企氏　和名抄に安房国長狭郡日置郷（鴨川市）に日置氏（ひき）が居住していた。延喜式の安房坐神社（館山市大神宮）は忌部の祖天太玉命を祭神とす。安房忌部と同族の日置氏一族は武蔵国比企郡にも土着し、地名を比企と称した。両国は古代から密接な関係があった。相模国の三浦和田一族は安房国に所領を持っており、吾妻鑑・和田合戦の条に「和田義盛の子朝夷名三郎義秀、海浜に出で、船に棹して安房国に赴く、其勢五百騎、船六艘」と見ゆ。安房国朝比奈村（千倉町）は此氏の出身地なり。愚管抄（著者慈円は九条兼実の弟）に「ヒキノ判官能員阿波国ノ者也、ト云者ノムスメヲ思テ、男子ヲウマセタリケルニ、六ニ成ケル、一万御前ト云ケル。（中略）。其外笠原ノ十郎左衛門親景、渋河ノ刑部兼忠ナド云者ミナウタレヌ、ヒキガ子共、ムコノ児玉党ナド、アリアイタル者ハ皆ウタレニケリ、コレハ建仁三年九月二日ノ事ナリ。（中略）。ヒキハ其郡ニ父ノタウトテ、ミセヤノ大夫行時ト云者ノムスメヲ妻ニシテ、一万御前が母ヲバマウケタルナリ、其行時ハ又児玉タウヲムコニシタル也」と見ゆ。安房国の能員の妻は秩父党の児玉氏流片山行時の娘なり。吾妻鑑巻十七に「建仁三年九月、能員の二歳の男子等は好あるに依りて、和田義盛に預けて、安房国に配す」と。能員は安房出身の出稼衆で三浦党和田氏一族である。平家物語巻八に「征夷将軍院宣の御使は中原泰定にて、三浦介義澄して請取り奉るべし。三浦介義澄も家子二人郎等十人具したりけり。二人の家子は和田三郎宗実、比企藤四郎能員なり。郎等十人をば、大名十人して、一人づつ俄に仕立てられけるとぞ聞えし」。また、吾妻鑑巻十二に「建久三年七月二十六日、勅使中原康定等、征夷大将軍の除書を持参す。三浦義澄は比企右衛門尉能員・和田三郎宗実ならびに郎従十人を相具し、かの状を請け取る」と見ゆ。能員は三浦氏の家子であるが、比企系図等には一切記載が無い。後世の系図作成者は安房国出身とか三浦党を無視している。似たような系図には、丹党の創設者である上野国小野郷中村出身の出稼衆小野氏を無視しており、児玉党は創設者の下野国都賀郡出身の富野氏を無視している。年貢徴収者で村人の嫌われ者である武士は出稼衆で地元出身者はいない。比企氏は比企郡より、丹党は丹之庄より、児玉党は児玉郡より発祥して、其の地の出身者と考えられたが、この説は大きな誤りである。

四　日蓮宗信徒の比企氏　鎌倉比企谷に比企能員館跡あり。能員の子比企大学三郎能本は儒者として知られ、のち許されて鎌倉幕府に儒官として仕えた。文応元年日蓮は立正安国論を著わし幕府に上申したが、このとき能本に文章的な意見を求めた。その後能本は日蓮に帰依入信し、自分の屋敷であった比企谷竹の御所の旧地に草庵を構え、寺号を長興山妙本寺（鎌倉市大町一丁目）とし、ひきがやつと通称す。比企谷由緒下書に「妙本寺と申は掃部允藤原遠宗が後家比企の尼が猶子比企判官能員が娘讃岐の局（初の名は若狭の局）将軍頼家の妾となる。能員が滅亡の時二歳の男子あり、成長の後儒士となりて順徳帝につかへ奉り比企大学三郎能本と号して承久三年・順徳帝佐州遷幸に供奉せり、能本が姪竹の御所（頼家の子）は後に頼経将軍の御台所なる故に能本ゆるされて鎌倉比企谷に還住す」。妙本寺碑に「日学聖人・比企大覚三郎殿藤原能基・初順徳帝ノ文士也。理芳尊霊・大学の妻也・弘安七年十月十三日」。妙本寺比企系図に「掃部允遠宗（妻比企尼）―比企判官能員（弟伯耆公は山内証菩提寺）―与一兵衛尉時員（弟に三郎宗員、四郎某、五郎某、女子河原田次郎妻、女子笠原十郎左衛門尉妻、女子中山五郎妻、女子糟屋藤太兵衛尉妻、女子若狭局比企谷鎮守、大学三郎能本）」とあり。伯耆公と能本を同人としている系図は誤りなり。鎌倉郡山内荘本郷（横浜市戸塚区上郷町）の高野山真言宗証菩提寺の伯耆公と能員の兄弟までは真言宗であったが、能員の末子三郎能本は日蓮宗信徒となり、此の子孫は日蓮宗であり、真言宗の家は能本以外の子孫である。阿保朝臣流系図に「能員―時員―比企二郎員成（順徳院北面）」は誤りなり。中山村比企系図に「能員―時員（弟円顕は伯耆法印と号し能員誅らる時に二歳にして母共に阿波国に配流される、後上京して出家す）―員長（中山村に住居す）」と。子孫は真言宗である。真言宗伯耆法印と日蓮宗能本を同人としており誤りなり。大田区池上の日蓮宗照栄院過去帳に「長興・比企判官能員公・比企大学三郎能本父也・建仁三年九月二日。妙本尊霊・大学三郎母・文永二年三月十四日。日学聖人・比企谷開基旦那比企大学三郎能本」。鎌倉本行院過去帳に「芳鏡尊位・将軍頼経公御台所竹之御所と称す、能員の外孫なり三十有・文暦元年七月」。鎌倉市腰越二丁目の本竜寺過去帳に「東葉院殿行蓮居士・当寺屋敷主比企三郎高家・文永二年三月朔日」。高家の旧跡に五十七年後の乾元元年本竜寺を開創す。川越日蓮宗行伝寺過去帳に「蓮仲・比企殿内ノ父・卯年十一月。妙仲・比企殿内ノ御母・辰年九月」あり、江戸初期なり。

五　藤原秀郷流の中山氏　比企郡岩殿村（東松山市）岩殿観音堂別当新義真言宗正法寺出身にて、同郡中山村（川島町）へ土着す。菩提寺は同村新義真言宗金剛寺なり。比企能員の後裔説は附会なり。正確な系図は前項参照。波多野系図に「公光四男相模守公俊―波多野民部丞経秀―刑部丞秀遠―佐藤筑後権守遠義」あり、遠光の名は見えず。比企氏系図（中山村医師比企道作所蔵）に「家紋、花菱、剣酸草。藤原秀郷五男千常四代後胤相模守公光二男経範―波多野民部経秀―波多野刑部丞秀遠―波多野三郎遠光（比企祖。藤原師実に仕へ、後康和年中武蔵国に下り、比企郡に住す）―比企藤太遠泰（比企郡住人、比企荘司）―掃部允遠宗（妻比企禅尼）―藤四郎能員（建仁三年誅らる。妹に丹後局・頼朝之妾、笠原十郎左衛門親重妻）―弥四郎豊後守時員（弟次郎宗員、妹中山五郎為重妻、妹若狭局・頼家妾、弟円顕は伯耆法印と号し能員誅らる時に二歳にして母共に阿波国に配流される、後上京して出家す）―員茂（父時員自害之時、員茂母之胎内に在り、比企郡岩殿山観音堂別当養育し児と為す、後上洛し、伯父円顕法印の助成を以って奉仕す、後岩殿山に居住す、弘安元年卒す）―小太郎員長（比企郡中山村住居す、文応二年卒す）―右馬允満長―右衛門佐守長―小四郎文長―内匠助重長―藤次左馬助補栄―藤兵衛左馬助久栄（明応八年武蔵広木大仏城討死す）―右衛門尉時栄―左衛門佐秀長（上杉正栄と不和にして比企郡浪人す）―藤四郎員長。時栄の弟左馬助員信―左馬助義次（実は久栄弟也、中山村に宅居す、天文二年卒す、九十五歳）―藤一郎左馬助政員（実は秀長の宗領也、天正三年卒す、五十歳）―藤四郎左馬助則員（伯父上田上野介政広に養われる、太田美濃守資政之感状数通受る。徳川氏に仕へ、元和二年卒す、五十九歳）―次左衛門左馬丞義久（寛永十九年卒す、六十一歳）―藤右衛門重員（寛文十一年卒す、六十四歳）―次左衛門久員（延宝八年卒す）―藤十郎稚久（元禄九年不調法あり改易され比企郡中山村に蟄居す、元禄十四年卒す。弟藤三郎員憲は兄藤十郎改易之後医官望月の弟子と為り号玄蕃と称し小石川に居す）―次郎四郎宗久（実は藤十郎弟也、兄改易以来母及び私共に中山村潜居す、享保六年卒す）―藤五郎常久（寛保三年卒す）―藤四郎重久（寛延二年卒す。妹は小倉侯に奉仕するが、後に玄仙の妻となる）―玄仙尚久（始医業、実は比企玄庵男也、天明八年卒す）―道作貞久」。此の系図は寛永系図以降に作成しており、義次の以前は信用できず。寛政呈譜に「家紋、丸に割菱。寛永系図に比企判官義員誅せらる。このきいまだ胎内にありし子を彼地にかくす。しかるに比企の岩殿観音堂の別当養育して子とす。建保六年其児十七歳にして上洛し、順徳院につかへたてまつる。そのゝち越後国にいたりて十四代なり。しかれどもそのあひだ数世譜系を失ふ。このゆへにしるすことあたはず。義次（某年死す、年五十九、法名善見）―政員（某年死す、年五十九、法名清月）―則員（元和二年死す、年五十九、法名元光）―義久（八十石、御弓奉行、寛永二十年死す）―重員（四百石、諸道具奉行、寛文十一年死す）―久員（二百俵加増。延宝八年死す）―藤十郎某（元禄九年殺生を禁ぜられしに、これを犯せし事ありしにより追放せられ、十三年ゆるされる）」。比企道作文書に「永禄四年辛酉五月二十二日、勝之内西光寺分、河越之庄之内小室矢沢百姓分、如前々可有御拘候、比企左馬助殿、美濃守資正花押」。「永禄四年辛酉十二月二十一日、比企郡御同名左衛門尉殿、雖様々承候、彼郡之儀、先郡代に遣置候、比企左馬助殿、太田美濃守資正花押」。「天正十五年丁亥九月十日、中山之内に於て、近年宛行われし北寺家分を、南寺家分と取替えたしという申請を認可し、小旗一本・鑓□□に而・一騎、走廻べしと命ず、比企左馬助殿、憲定印（上田）」と見ゆ。是等の文書は三重県津市在住の比企よし子氏が所蔵す。中山村金剛寺延宝八年地蔵尊に藤原姓比企次左衛門尉久員。同村天台宗正泉寺嘉永元年六地蔵に比企健吾あり。現存無し。次項参照。

六　松山城士の比企氏　岩殿村正法寺伝に「住観房、俗姓は松山の城主上田家の家臣比企藤四郎の一族也。天正元年観音堂を再興す」。前項の中山村及び下井草村の比企氏は当寺出身なり。天正庚寅松山合戦図に「雷電山・大谷・平・岡郷・冑山方面城方、副将比企左馬助則員、比企藤四郎。古郡・柏崎・今泉方面城方、比企藤九郎」。風土記稿下井草村（川島町）条に「旧家者藤四郎、比企を氏とす。判官能員の庶流なりと云ふ。家に蔵する古き過去帳に『浄安居士・寛永十五年九月没す、俗名藤四郎』と。比企系図には此の人の沙汰なし。たゞ岩槻より出せし文書一通を蔵す。是によれば天正十七年の頃、比企藤四郎といへる人・此の村の内、及び下足立慈林村の辺をも領せしと見ゆれば、旧家にて、世々こゝに土着せしを知るべし」。同家文書に「己丑十一月二十六日、井草之内六貫文御給田、此切出三貫文、拘来立野一ヶ所指添、出置候、此着到、鉄砲一挺、殊、下足立安行之内慈林之村十七貫文之所、何れも無相違者也、比企藤四郎殿、伊達与兵衛奉之（岩槻城奉行）」と見ゆ。二戸現存す。

七　上野国の比企氏　群馬郡半田村（渋川市）の三角城は平安末期に比企藤太郎の居城と伝へる。

八　信濃国の比企氏　高井郡笠原郷（中野市）の笠原信親證文目録に「文治元年信濃御目代比企判官被下之」と見ゆ。比企能員の所領地にて、此地の笠原親景は能員の婿となる。

九　北越の比企氏　京都高雄神護寺寿永三年四月文書に「頼朝は、比企藤内朝宗の若狭国遠敷郡西津庄（福井県小浜市）の濫妨を禁止し、神護寺領として保証す」。仁和寺元暦元年五月文書に「越前国今北東郡河和田庄（福井県鯖江市）の地頭を自称する僧上座が鎌倉殿勧農使比企藤内朝宗の下知による木曽義仲与党の追求と称して乱入す」。吾妻鑑巻六に「文治二年六月十七日、内大臣徳大寺実定領越中国般若野庄（富山県礪波市）は藤内朝宗・押妨す」。巻十四に「建久五年十二月十日、越前国志比庄（福井県吉田郡永平寺町）を比企藤内朝宗が押領す」と見ゆ。

一〇　相模国の比企氏　小野氏系図に「横山権守時広（右大将家討取奥州泰衡。郎等比企七太広綱）」と見ゆ。横山党の本拠地多摩郡及び相模国に比企・日置の地名は無し。比企氏は平塚市徳延九戸、四之宮四戸現存し、比企野氏は同市高根八戸、山下五戸現存す。横山氏家臣の比企氏は大住郡平塚庄出身の苗字か。

一一　源姓比企氏　前項と同じく平塚庄出身の苗字か。越前福井藩諸士先祖之記録（福井県立図書館所蔵）に「先祖鎌倉比企谷住人比企判官能員後胤。比企佐左衛門義重（姓源。本国相模生国武蔵。越前松平忠昌公御代寛永十年被召出）―佐左衛門栄翦（生国越前。貞享三年家督）―佐左衛門栄槍（生国越前。宝永七年跡知被下）」と見ゆ。

一二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「五両余二人扶持・河内詰・比企勇蔵」あり。

一三　足立郡鴻巣町　上谷新田浅間社明治十六年碑に鴻巣比企時蔵（魚商）。昭和三年興信録に「鴻巣町・比企こと・所得税二十二円」あり。四戸現存す。

一四　同郡宮内村（北本市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に上宮内村比企仁右衛門あり。三戸現存す。

一五　大里郡石原村（熊谷市）　明治三十五年氷商比企彦三郎。昭和三年興信録に「熊谷町・比企彦三郎・所得税十円・営業税十五円」。現存無し。

引木　ヒキギ　大宮、八潮等に存す。岩手県岩手郡岩手町二十二戸あり。

引地　ヒキジ　鳩ケ谷に存す。

引敷林　ヒキシキバヤシ　和光に存す。青森県三戸郡階上町十一戸あり。

疋島　ヒキシマ　上尾に存す。

匹田　ヒキタ　入間、狭山、都幾川、越谷、本庄等に存す。

疋田　ヒキタ　田は郡県・村の意味。日置の集落を疋田、引田、曳田と称す。各市町村に存す。茨城県東茨城郡御前山村三十八戸、秋田県北秋田郡合川町三十四戸あり。

一　松山城士の疋田氏　鎌倉大草紙記に「応永二十三年上杉禅秀の乱に、扇谷上杉氏定の方には上田上野介松山城主・疋田右京亮討死す」。秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「妙蓮・疋田藤三・六月」あり。

二　岩附城士の疋田氏　高麗文書（家伝史料）に「永禄中、きゃくいの次第、疋田殿」あり。

三　忍城士の疋田氏　成田分限帳に「三十貫文・疋田市左衛門、十五貫文・疋田所左衛門」あり。

四　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御側・百石・疋田三十郎、御納戸・五十石三人扶持・疋田元右衛門」あり。

引田　ヒキタ　比企郡馬場村引田。各市町村に存す。○群馬県多野郡鬼石町十七戸、高崎市二十八戸。○茨城県那珂郡大宮町四十戸、瓜連町十五戸。○鳥取県東伯郡北条町二十戸あり。

一　入間郡豊田本村（川越市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

曳田　ヒキタ　朝霞、毛呂山、行田、八潮、春日部等に存す。新潟県南魚沼郡塩沢町十六戸あり。

挽田　ヒキタ　大宮に存す。

蟇田　ヒキタ　宮代に存す。

引地　ヒキチ　地は場所の意味。日置の集落を引地、曳地と称す。各市町村に存す。○福島県伊達郡保原町三十戸、梁川町七十戸、霊山町二十戸、福島市八十戸。○宮城県柴田郡柴田町十三戸、伊具郡丸森町九十戸、亘理郡山元町十七戸。宮城郡利府町二十戸、名取市六十戸。○島根県浜田市二十三戸あり。

曳地　ヒキチ　各市町村に存す。○福島県伊達郡保原町八戸、梁川町三十六戸、福島市五十戸。○宮城県柴田郡柴田町四十六戸あり。

挽地　ヒキチ　上尾、朝霞等に存す。

引沼　ヒキヌマ　草加に存す。

曳沼　ヒキヌマ　山形県寒河江市十五戸あり。

疋野　ヒキノ　野は助詞、日置の集落を疋野、引野、曳野、比企野と称す。

一　埼玉郡大沢町（越谷市）　大沢猫の爪（福井文書）に「下組疋野四郎右衛門屋敷は、次左衛門天正以後代々所持之処、安永天明両度に屋敷は島根大蔵方へ相渡、古川新田付名所斗残居申候、往古年寄も相勤候疋野党之本家也、元祖寛文中死去其後分地多有之。疋野次左衛門弟次郎八、元禄以後代々所持。疋野四郎兵衛・安永中退転、四郎兵衛は疋野四郎右衛門往古之分地也。元禄八年検地、疋野四郎兵衛屋敷、泊帳付疋野四郎兵衛屋敷。宝暦七年大沢町百姓、疋野次左衛門、疋野分地四郎兵衛。明和五年帳面表、疋野次左衛門、疋野次郎右衛門、疋野四郎兵衛」と見ゆ。香取社寛政元年御神燈に疋野治左衛門・疋野治郎右衛門、文化八年御神燈に大沢町下組疋野治左衛門。明治三十年所得税下調査簿に疋野清太郎・反別十六町二反歩・地租百九十円。昭和三年興信録に「大沢町・疋野政尚・所得税八十円・営業税八十七円」あり。四戸現存す。

引野　ヒキノ　比企郡上唐子村字引野あり、比企野とも書く。浦和、大宮、桶川、新座、所沢、春日部、久喜、吹上、熊谷等に存す。○新潟県佐渡郡新穂村二十二戸。○島根県八束郡東出雲町十七戸、松江市八十戸あり。

曳野　ヒキノ　松江市六十三戸あり。

挽野　ヒキノ　大宮、鳩ケ谷、岩槻、川越、飯能等に存す。

比企野　ヒキノ　浦和、川口、草加等に存す。神奈川県平塚市二十四戸あり。

弓場　ヒキバ　草加に存す。

引場　ヒキバ　浦和、大宮、草加、入間等に存す。新潟県中頸城郡妙高高原町十五戸あり。

引橋　ヒキハシ　与野、上尾等に存す。栃木県小山市二十戸あり。

引間　ヒキマ　馬（ま、ば）は場所の意味。日置の集落を引間、曳間、曳馬と称す。秩父郡に多く存す。

一　畠山氏家臣の引間氏　秩父郡上飯田村観音院縁起に「当国の住人庄司重忠・鹿を追って当山に登る。其臣本田・榛沢・久米・高野・引間・小櫃以下の兵士数十騎相従ふ」と見ゆ。

二　鉢形城士の引間氏　鉢形分限帳に「本国濃州加納・引間監物、本国三州掛塚・引間内膳」あり。岐阜市加納に現存無し、愛知県に掛塚村は無し。分限帳の本国は信用出来ず。秩父郡出身なり。秩父案内記に「引間監物・下吉田村土着、引間内膳・久那村土着」と見ゆ。

三　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「三両余二人扶持・引間安兵衛」あり。

四　川越町　氷川社明治八年水鉢に南町引間清助あり。県下豪商十一名の内に川越町引間清助あり。

五　小川町　上小川神社明治初年御神燈に引間為次郎（糸繭商）あり。

六　寄居町　明治三十五年呉服商舛屋引間粂吉あり。

七　榛沢郡寄居町　紀州高野山清浄心院供養帳に「霊位香心秀月・武州榛沢郡藤田郷ヒキマ九衛門・寛永八年九月十四日」あり。

八　秩父郡大宮町　明治三年秩父神社々領大工職引間倉次郎・五十六歳。明治三十五年菓子商引間幸之助。

九　同郡大野原村（秩父市）　当村に此氏多く存す。旧家なり。

一〇　同郡久那村（秩父市）　当村に此氏多く存す。二項参照。明和安永年間秩父郡記に久那村平仁田名主引間六右衛門。天明六年上田野三上文書に久那村名主引間六郎左衛門。明治九年副戸長引間庫之助・天保七年生、副戸長引間茂作・嘉永四年生あり。

一一　同郡太田村（秩父市）　国神神社明治三十四年碑に太田・引間元三郎・引間才吉あり。八戸現存す。

一二　同郡寺尾村（秩父市）　当村に此氏の旧家あり。十一戸現存す。

一三　同郡下影森村（秩父市）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

一四　同郡山田村（秩父市）　宝登山神社明治七年棟札に柿葺師山田村引間民次郎あり。六戸現存す。

一五　同郡皆野村　当村に此氏多く存す。寛保三年香具仲間連名帳に引間儀助。明治九年副戸長引間儀助・文政十二年生。明治三十年宝登山文書に氏子惣代皆野村引間正三郎。県会議員運送業引間辰雄・明治十八年生あり。

一六　同郡下吉田村　当村に此氏多く存す。二項参照。永法寺文書に「享保九年鐘銘、引間善左衛門・引間金左衛門・引間四郎兵衛・引間惣左衛門・引間喜兵衛・引間十郎左衛門・引間五兵衛・引間新左衛門。文化六年寄附、吉田町引間重郎右門。文化十二年寄附、取方・引間丈左衛門・引間藤太郎妻。明治十二年寄附、引間熊蔵。明治三十二年寄附、引間斎治・引間万太郎・引間伊八・引間栄三郎・引間伊作・引間兼作。明治四十三年寄附、引間宗造・引間信善」。明治九年副戸長引間梁蔵・文化十四年生。明治十二年小前惣代に引間伊惣次・引間龍作・引間幸八・引間卯太八・引間倉五郎。明治三十五年穀茶木炭陶器商引間卯太八・穀木炭荒物商引間治三郎・酒製造引間万太郎・呉服商舛屋引間勝平・呉服荒物商引間銀次郎。貴布祢神社明治三十四年水鉢に引間角蔵・引間高次郎。八幡社明治三十八年碑に引間勝平・引間万太郎・引間猪和吉・引間卯太八・引間治三郎・引間龍作あり。

一七　同郡久長村（吉田町）　当村に此氏多く存す。阿熊村彦久保文書に「天正十年二月二十五日、秩父衆着致、一本鑓・一騎馬上・以上二人・引間弾正」。諸州古文書に「天正十四年三月十三日、鉢形城秩父曲輪掃除庭定、引間弾正、同又次郎」。彦久保氏系図に「彦久保伝八忠英（妹は久永村引間仁三衛妻）―重英（妻久永村引間元治娘）―重光（寛政年間風土記稿資料提出者）」。明治十二年小前惣代に引間喜一郎・引間種三郎。明治二十年森林組合員に引間吉三郎・引間槌蔵・引間関次郎・引間兵吉・引間留次郎・引間浅四郎・引間堯一郎・引間永次郎・引間清十郎・引間金次郎・引間奥蔵・引間常次郎・引間浅次郎あり。

一八　同郡上小鹿野村　小鹿野町古老覚書に「古風庭、引間久兵衛先祖地庭、後に寺に成る飯田村光源寺の末寺」と。慈眼寺か。明治十二年菓子卸商引間与吉・荒物商引間又平。明治三十五年煙草商引間本次郎。小鹿神社明治四十二年玉垣碑に引間勝蔵・引間平三郎、明治四十三年堤盛久碑に引間良承あり。十三戸現存す。

一九　同郡上田野村（荒川村）　当村に此氏の旧家あり。十四戸現存す。

二〇　同郡日野村（荒川村）　秩父往還（太田巌著）に「秩父郡日野村に永禄十三年武田氏の臣引間平左衛門が春日山地西庵を建立す」と。地西庵は慶長七年に武田信玄の旧家臣引間半左衛門が建立すとも伝へる。明治五年三峰山社務雇引間常五郎・六十歳は日野村引間半蔵父。明治八年酒造人連名帳に日野村引間茂右衛門あり。十三戸現存す。

二一　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「寄居町・引間粂吉・二百八十九円・百六十八円、皆野町・引間辰雄・十円・十七円、下吉田町・引間惣次郎・百九十一円、引間光太・三十六円・五十円、引間金作・二十九円・三十円」あり。

曳間　ヒキマ　那賀郡猪俣村（美里町）二柱神社明治十三年水鉢に曳間喜平あり。二戸現存す。

曳馬　ヒキマ　大宮に存す。

引又　ヒキマタ　新座郡館村字引又（志木市）は古の村名にて、東明寺寛文七年供養塔に新倉郡蟇俣村と見ゆ。

引屋敷　ヒキヤシキ　上福岡に存す。

日種　ヒグサ　川口に存す。

火口　ヒグチ　大宮に存す。

檜口　ヒグチ　秩父に存す。

樋口　ヒグチ　火口の佳字なり。火は火神にて鉱山鍛冶神なり、口は人の数で集団の意味。渡来人鉱山鍛冶集団の集落を樋口、樋ノ口と称す。ヒ条参照。小名樋口は、埼玉郡志多見村、下大越村、足立郡横曽根村、飯田新田、男衾郡西ノ入村等にあり。ヒノクチ参照。此氏は甲信越羽地方の砂鉄の採取出来る川岸や鉱山地帯に多く存す。○群馬県群馬郡群馬町三十四戸、榛名町七十八戸、太田市九十戸、高崎市百二十戸、前橋市百七十戸。○山梨県中巨摩郡田富町三十六戸、竜王町四十六戸、若草町三十戸、南巨摩郡鰍沢町六十二戸、増穂町七十三戸、塩山市五十七戸、甲府市二百戸。○長野県諏訪郡富士見町百二十六戸、上伊那郡辰野町三十三戸、中野市五十戸、須坂市六十九戸、茅野市八十二戸、塩尻市五十八戸、上田市百戸。○新潟県北蒲原郡水原町六十三戸、中蒲原郡村松町八十七戸、亀田町三十戸、西蒲原郡分水町三十戸、巻町六十三戸、中魚沼郡津南町八十四戸、中里村百三十四戸、南魚沼郡塩沢町三十四戸、湯沢町五十七戸、東頸城郡松之山町四十四戸、新津市百戸、五泉市百二十戸、三条市九十戸、加茂市九十戸、小千谷市六十戸、糸魚川市百戸、十日町市二百七十戸。○福島県伊達郡保原町四十五戸、いわき市七十八戸、福島市百三十戸。○山形県西置賜郡白鷹町百三十八戸、東村山郡山辺町五十九戸、長井市六十戸、米沢市九十戸、山形市百三十戸。○秋田県雄勝郡雄勝町五十六戸、仙北郡田沢湖町三十戸。○岩手県二戸郡浄法寺町三十七戸。○青森県南津軽郡尾上町四十五戸、青森市八十戸あり。

一　忍城士の樋口氏　成田分限帳に「二十一貫文・樋口善左衛門、二十一貫文・樋口重郎左衛門、十五貫文・樋口善次郎、十五貫文・樋口茂兵衛」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「儒医・百五十石・樋口梅有、御小頭・二十俵二人扶持・樋口源左衛門」あり。

三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「三十八俵・樋口茂兵衛、十五俵・樋口与惣左衛門」。

四　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「五両三人扶持・樋口安兵衛」あり。

五　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御徒・野火留・十五石・樋口文右衛門」。

六　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「五両余二人扶持・樋口繁蔵」あり。

七　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御番頭・二百石・村上取立・樋口舎人、舎人倅樋口戴十郎、御馬廻・十五人扶持・前橋取立・樋口釈迦左衛門、御馬廻・二十石四人扶持・川越取立・樋口房太郎」。万延二年川越藩分限帳に「御触流・三百石・樋口三郎左衛門、御膳番・十五人扶持・樋口源左衛門」。明治四年前橋藩職員録に「権大参事・軍事学校事務・樋口猛」あり。

八　会津藩上杉氏家臣　小鹿野町吉田系図に「慶長四年十二月、吉田新左衛門実重は会津上杉景勝に仕へ、元鉢形衆樋口主計、樋口惣左衛門は新左衛門組に属す」。会津上杉配下禄高表（吉田文書）に「百五十石・樋口主計、百五十石・樋口惣左衛門」と見ゆ。

九　旗本花房氏家臣　児玉町八幡社享保十一年鳥居碑に「花房宇右衛門内、樋口小吉」あり。

一〇　葛飾郡倉常村（庄和町）　愛宕社享保七年庚申塔に樋口五郎兵衛・樋口八郎左衛門、文化三年庚申塔に樋口忠七あり。現存無し。

一一　同郡西親野井村（庄和町）　親野井神社万延元年庚申塔に樋口五□七あり。現存無し。

一二　同郡幸手宿　白川家門人帳に「文政十一年幸手宿住樋口勘兵衛。安政四年幸手宿鍛冶職樋口宇八」。弘化三年戸賀崎門人帳に幸手宿樋口道次郎。雷電社万延元年御神燈に当所久喜町樋口藤五郎、明治二十四年水鉢に樋口久四郎。明治三十五年錺職樋口仙次郎あり。七戸現存す。

一三　同郡権現堂村（幸手市）　熊野社明治三十四年碑に樋口釣蔵あり。二戸現存す。

一四　同郡外国府間村（幸手市）　雷電宮宝暦七年宝篋印塔に樋口吉兵衛妻あり。現存無し。

一五　同郡内国府間村（幸手市）　八幡社享保二十年御神燈に樋口清右衛門。千塚村千塚神社宝暦三年御神燈に内国府間村樋口清左衛門。明治九年副戸長樋口梅次郎・天保十一年生。明治三十年人名録に菓子製造業大阪屋樋口清吉・文久二年生・地租四十五円。上州榛名神社明治四十年御神燈に武蔵国幸手町内国府間樋口清吉あり。六戸現存す。

一六　埼玉郡粕壁町　明治三十五年飲食店樋口政次郎あり。

一七　同郡戸ヶ崎村（菖蒲町）　当村に此氏の旧家あり。十七戸現存す。

一八　同郡加須町　明治三十五年布染業樋口仙吉あり。

一九　同郡下谷村（加須市）　八幡社慶応三年幟碑に岩瀬樋口半蔵。町屋新田慶応四年馬頭尊に下谷樋口常蔵あり。現存無し。

二〇　同郡広川村（加須市）　町屋新田慶応四年馬頭尊に広川樋口勝五郎あり。二戸現存す。

二一　同郡上岩瀬村（羽生市）　医王寺享和三年碑に樋口金右衛門あり。一戸現存す。

二二　同郡手子林村（羽生市）　下手子林村観音堂享保二十年碑に樋口藤右衛門。中手子林村天満宮文政三年御神燈に樋口平兵衛・樋口重兵衛あり。現存無し。

二三　同郡上新郷（羽生市）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

二四　同郡行田町　埼玉郡樋ノ口村（久喜市）発祥説は地名附会なり。忍要中録に「先祖樋口大五郎（生国武蔵国、新田一族大島讃岐守長男、武州埼玉郡樋口村に住居仕候。其後元亀年中、行田町へ罷越住居仕候処、松平下野守様御城居之節、行田町年寄并御領分中名主等之惣頭役割元被仰付相勤申候）、二代目樋口惣兵衛（町年寄并御領分中割元勤申候）、三代目樋口惣兵衛（町年寄）、四代目樋口帯刀（町年寄）、五代目樋口惣兵衛（町年寄）、六代目樋口一十郎（町年寄）、七代目祖父樋口一十郎（町年寄）、八代目父樋口太郎三郎（町年寄、安永四年御本陣被仰付候）、町年寄樋口一十郎（文政五年町年寄被仰付相勤申候）」。「先祖樋口太郎左衛門（元和九年当町樋口帯刀より分家仕、其後代々住居仕候）、二代目、三代目、四代目代々太郎左衛門、五代目祖父樋口太郎左衛門（元文三年町年寄役）、六代目父樋口太郎左衛門（町年寄）、町年寄樋口太郎左衛門（天明二年町年寄相勤申候）」と見ゆ。大長寺正徳六年文書に寄進樋口一十郎昭常。長野村長久寺享保五年棟札に忍行田町樋口一重郎、元文二年文書に忍領行田町慶性寺願主樋口浄入。嘉永年中に町年寄見習樋口隼次郎・同樋口金太郎・頭立同格樋口調吉郎。嘉永六年忍藩分限帳に「七人扶持・行田本陣樋口一十郎」。明治九年副戸長樋口金太郎・文政十二年生。明治三十五年に樋口半左衛門あり。

二五　同郡上中条村（熊谷市）　字水越住絵師樋口伊惣次・号静養斉春翠・寛政四年生（子孫農業樋口則次）。幕末に名主樋口善右衛門。明治九年副戸長樋口善次郎・天保十四年生。下奈良村明治二十七年東条筆子碑に上中条村樋口浪之助・樋口喜三郎・樋口又一郎・樋口愛之助あり。十一戸現存す。

二六　同郡上之村（熊谷市）　上之村神社嘉永三年御神燈に樋口森吉あり。五戸現存す。

二七　足立郡川口町　川口神社明治三十九年碑に樋口留吉（酒商）あり。

二八　同郡蕨町　明治三十五年時計職樋口卯作あり。

二九　同郡大宮町　明治三十五年小間物商樋口清松あり。

三〇　同郡小泉村（上尾市）　当村宝永五年庚申塔に石戸領小泉村樋口多郎左衛門。明治四十年信徒総代樋口十七吉あり。二戸現存す。

三一　同郡常光村（鴻巣市）　深井村寿明院寛政九年寄附帳に上常光村・樋口与吉・樋口武兵衛・樋口宇八・樋口甚助、下常光村・樋口茂右衛門・樋口次右衛門・樋口弥四郎・樋口長二郎・樋口仙次郎・樋口五助・樋口孫二郎・樋口彦右衛門・名主樋口磐吉・名主隠居樋口理右衛門。常光神社寛政十年庚申塔に常光村樋口武兵衛。天保九年戸賀崎門人帳に下常光村樋口藤吉。上谷新田金剛院元治元年碑に常光村樋口磐吉。明治四年下常光村名主樋口三平・三十四歳。組頭樋口治兵衛・五十歳。明治九年副戸長樋口治兵衛・文政五年生。明治十五年常光村明壌銀行創立発起人樋口三平・二十六株千三百円、同樋口三津三郎・十六株八百円所有。常光神社明治二十八年碑に常光村樋口彦右衛門・樋口仙次郎・樋口孫右衛門・樋口湃七・樋口伴吉・樋口兼吉・樋口銀蔵・樋口参五郎。明治三十五年常光村農友会に樋口滝蔵・樋口誠一郎・樋口甚太郎あり。十六戸現存す。

三二　同郡前砂村（吹上町）　氷川社享和三年塞神碑に樋口又三郎、慶応二年幟碑に樋口又三郎・樋口又吉。野村玉松堂明治二年入門に前砂村又吉倅樋口源兵衛あり。一戸現存す。

三三　入間郡三ヶ島村（所沢市）　信濃国上伊那郡樋口村（辰野町）より起る木曽義仲の重臣中原姓樋口次郎兼光の後裔説は附会なり。三島山高林寺玉蔵坊世代に「当院坊跡草創者、朝日将軍木曽義仲老臣樋口小治郎源兼氏・文治二年謂在而当山に蟄居、後神道相承愛宕大権現社守に相成。開山祖樋口兼氏・貞永元年、二代光氏・承久三年、三代氏信・建長五年、四代氏家・建治三年、五代氏景・正安元年、六代氏重・正応二年、右六代神職に而相続」と見ゆ。現存無し。宮寺条参照。

三四　同郡花ノ木村（入間市）　中神村豊泉寺寛文九年鐘銘に花木村樋口吉次あり。現存無し。

三五　同郡入間川町（狭山市）　明治二十五年地租額調に樋口栄助・樋口清左衛門・樋口米次郎あり。

三六　同郡長瀬村（毛呂山町）　当村に此氏の旧家あり。七戸現存す。

三七　同郡今市村（越生町）　法恩寺天保十一年頼母子講に樋口平八.。黒岩村石井筆学帳に慶応二年今市村樋口林蔵・七歳。明治三十五年絹織物商樋口吉平あり。一戸現存す。

三八　高麗郡岩沢村（飯能市）　野田村西久保家墓地文久三年筆子碑に岩沢村樋口岩造あり。一戸現存す。

三九　比企郡松山町　明治三十五年左官職樋口久吉あり。

四〇　横見郡江綱村（吉見町）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

四一　榛沢郡深谷町　瑠璃光寺明治二十九年筆子碑に樋口定治郎（綿商）。深谷町会議員樋口万吉・明治三十一年生あり。

四二　児玉郡本庄宿　石川剣道場門下生に寛政四年・本庄宿日川村樋口学治郎と見ゆ。日川は日ノ出の書誤りか。日の出町に八戸現存す。広西寺は天保四年に樋口忠平が開基す。明治三十五年菓子店樋口勇吉・料理店樋口和吉あり。

四三　雑載　昭和三年興信録・所得税に「幸手町・樋口幹・百四十七円、南吉見村・樋口源三郎・十二円、熊谷町・樋口竹次郎・九十円、中条村（熊谷市）・樋口忠宗・三百二十四円」あり。

引馬　ヒクマ　川口に存す。

日熊　ヒクマ　川口、朝霞、鶴ヶ島、栗橋等に存す。ヒノクマ参照。

日隈　ヒクマ　蓮田、朝霞、志木、所沢、富士見、大井等に存す。

氷熊　ヒクマ　与野、草加、岩槻、入間、川越、鶴ヶ島等に存す。

樋熊　ヒクマ　各市町村に存す。新潟県十日町市百五戸あり。

日暮　ヒグラシ　千葉県印旛郡栄町十五戸、成田市六十戸、我孫子市四十五戸、柏市百戸、松戸市七十戸あり。

一　下総国の日暮氏　日蓮宗本土寺過去帳（松戸市）に「日暮十郎左衛門・長享。日暮又左衛門・天正十年八月八日。日暮大内蔵・天和三年五月」あり。当寺附近の住人なり。

二　葛飾郡三輪野江村（吉川市）　清春庵万治三年供養塔に日暮賀兵衛・日暮卯之助・日暮善左衛門。定勝寺寛文九年鐘銘に宮野井村日暮加兵衛・日暮加左衛門、明治六年供養塔に日暮寅吉。中島村稲荷社明治十三年御嶽碑に三輪野江村日暮幸右衛門・日暮安兵衛・日暮茂八.。当村稲荷社明治三十一年碑に日暮幾蔵。三輪野江神社明治三十九年碑に日暮浅吉・日暮安兵衛・日暮松之助・日暮豊吉・日暮由太郎・日暮新蔵・日暮喜助・日暮寅吉・日暮菊次郎・日暮幸次郎・日暮鹿蔵・日暮末吉。昭和三年興信録に日暮安兵衛・所得税三十三円あり。十九戸現存す。

三　足立郡太田窪村（浦和市）　行弘寺嘉永二年常夜燈に日暮喜三郎。氷川社明治二十八年碑に日暮角次郎・日暮岩次郎・日暮長吉・日暮卯之八・日暮平蔵あり。十八戸現存す。

比気　ヒケ　川口に存す。

比毛　ヒケ　大宮、入間、所沢、越谷等に存す。茨城県つくば市二十戸あり。

日毛　ヒケ　茨城県古河市七戸あり。

髭　ヒゲ　戸田、朝霞等に存す。

髭右近　ヒゲウコン　浦和、川本に存す。

日下田　ヒゲタ　川口、大宮、鴻巣、白岡、三郷、栗橋に存す。栃木県芳賀郡益子町十戸、真岡市六十七戸あり。

樋下田　ヒゲタ　川口、大宮、三郷、幸手、神川等に存す。群馬県桐生市二十五戸、栃木県芳賀郡益子町十戸、足利市十二戸あり。

髭野　ヒゲノ　与野に存す。

髭村　ヒゲムラ　毛呂山に存す。

彦　ヒコ　火胡の佳字なり。火は火神にて、胡（みびす）は渡来人を称す。鉱山鍛冶の渡来人集落を彦、肥後、比護と称す。鉱山地の山間部や、砂鉄の採取できる川岸に居住す。

日後　ヒゴ　大宮に存す。

比護　ヒゴ　各市町村に存す。新潟県糸魚川六十八戸あり。

肥后　ヒゴ　川越、東松山等に存す。

肥後　ヒゴ　各市町村に存す。○長野県下伊那郡阿智村十八戸、飯田市三十戸。○青森県南津軽郡田舎館村二十戸。○島根県浜田市十六戸あり。

彦糸　ヒコイト　葛飾郡彦糸村（三郷市）あり。

彦江　ヒコエ　葛飾郡彦江村（三郷市）あり。小金本土寺過去帳（松戸市）に「妙縁・ヒコエニテ・永正十八辛巳六月四日。堀切入道清賢・河辺彦江ニテ・正月二十日」と見ゆ。

彦音　ヒコオト　葛飾郡彦音村（三郷市）あり。

彦川戸　ヒコカワド　葛飾郡彦川戸村（三郷市）あり。

彦久保　ヒコクボ　秩父郡阿熊村字彦久保（吉田町）あり。

一　秩父衆の彦久保氏　鉢形落城以前より居住しており、古代以来の苗字なり。阿熊村彦久保文書に「天正十年二月二十五日、秩父衆着到、一本鑓・一騎馬上・以上二人・彦窪」。諸州古文書に「戌三月十三日（天正十四年）、鉢形城秩父曲輪掃除、二間・彦窪」。秩父孫次郎の配下なり。下吉田村住人か。

二　秩父郡阿熊村　小名彦久保は此氏の屋敷名にて、在名秩父氏は鉢形落城後に本名彦久保氏に復姓して土着す。風土記稿阿熊村条に「旧家者秀三郎、彦久保氏なり。秩父孫次郎重国とて、北条安房守氏邦に仕へ、天正十八年鉢形落城後当村に蟄居す。重国二子あり、修理俊重、三十郎重吉と云ふ。重吉は慶安年中、御当家へ召出れ、今御旗本秩父三右衛門の家なりと云ふ。俊重の子孫民間に下り、当村小名彦久保と云へる所に居住せり。因りて秩父を改め、彦久保氏を名乗れり。彼が家に秩父孫次郎重国が武器、及び家系古文書十通を蔵す」。秩父条参照。彦久保氏系図に「秩父八郎左衛門時行―修理俊重（後秩父郡彦久保に住す、依て為氏。弟彦久保次郎左衛門は番場屋敷へ分地す。其の弟春道は龍穏寺二十世住職。其の弟彦久保九郎左衛門は布里谷を開く。其の弟秩父三十郎重吉は七歳の時召出され五百石を賜ふ）―彦久保五右衛門重照（実は俊重の弟九郎左衛門男子なり、無男子に依て婿養子とす。弟金三郎は早世元和七年卒）―四郎左衛門直重（後五右衛門）―伝兵衛宗重（弟五右衛門は表屋敷へ分地す）―弥惣衛門重勝（代々務め来る名主役を伝ふ）―伝八忠英―伝八重英―秀三郎重光」と見ゆ。明和安永年間秩父郡記に阿熊村名主彦久保伝兵衛。明治九年立会人彦久保柳作、地租改正担当人彦久保重三郎あり。五戸現存す。

三　同郡下吉田村　金剛院明治三十年筆子碑に彦久保弥蔵。八幡社明治三十八年碑に彦久保広吉あり。十五戸現存す。

彦倉　ヒコクラ　葛飾郡彦倉村（三郷市）あり。小金本土寺過去帳に「賢永・彦倉・神四郎父。妙勝尼・彦倉・神四郎母。矢野兵庫助・河辺彦倉村。道友入道・彦倉・明応八己未八月二十八日」と見ゆ。

彦坂　ヒコサカ　各市町村に存す。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「四百石・彦坂主膳・是は忍にて罷出・三州之者」。

二　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「二百石・彦坂三郎兵衛」あり。

三　高麗陣屋代官　高麗陣屋天正十九年以来代官交替覚書に「関八州代官大久保石見守殿御手代、栗坪村居・彦坂平九郎」あり。

四　足立郡下青木村（川口市）　西方寺寛保二年筆子碑に彦坂理右衛門あり。二戸現存す。

彦阪　ヒコサカ　浦和、川口、戸田、鳩ケ谷等に存す。

彦沢　ヒコサワ　葛飾郡彦沢村（三郷市）あり。

非後沢　ヒゴサワ　秩父郡浦山村字非後沢あり。

日越　ヒコシ　坂戸に存す。

一　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「百五十石・日越武太夫」あり。

彦島　ヒコシマ　所沢に存す。

彦田　ヒコタ　八潮、吉川等に存す。

彦谷　ヒコタニ　新座に存す。

彦富　ヒコトミ　葛飾郡彦成村（三郷市）は古名を彦富村と称す。

彦名　ヒコナ　葛飾郡彦名村（三郷市）あり。延文六年市場祭文写に下総国下河辺庄彦名市祭と見ゆ。佐原市香取神社至徳四年文書に「下河辺内ひこなのせき」。鶴岡八幡宮応永二十六年文書に鶴岡八幡宮領下総国下河辺庄彦名河関と見ゆ。小金本土寺過去帳に「妙心比丘尼・彦名宿ノ金杉日暁ヲバ。九郎五郎・ヒコナ。頼智・彦成坊・ヒコナ。道本・ヒコナ・平五郎。太郎兵衛・ヒコナ。頼慶・ヒコナ。妙親尼・ヒコナ・四位イトコ。妙立尼公・玉蔵坊内方・ヒコナ。妙光尼・ヒコナ。妙蓮禅定門・ヒコナ。法順尼・式部阿祖母・ヒコナ。妙松女・ヒコナニテ。高須坊・ヒコナ。大進公・タカスカヒコナ。妙慶尼・ヒコナタカスカ。祐尊・タカスカ。法性尼・ヒコナタカスカ・文明五癸巳二月八日。妙信尼・ヒコナ・金弥四郎家中・長享三己酉二月七日」あり。渡来人の金氏が土豪として居住していた。彦名関附近は砂鉄採取地の跡か。彦は火胡、日胡の佳字にて、渡来人胡（えびす）族の鍛冶集団を称す。

彦成　ヒコナリ　葛飾郡彦成村（三郷市）あり。小金本土寺過去帳に「鏡院・ヒコナリ・明応三年六月二十三日」あり。

彦根　ヒコネ　浦和、鳩ケ谷、川越、狭山、吉見、越谷、草加等に存す。

彦野　ヒコノ　葛飾郡彦野村（三郷市）あり。大宮、与野、鳩ケ谷、川越、春日部等に存す。

肥後橋　ヒゴバシ　草加に存す。

彦部　ヒコベ　蕨に存す。群馬県桐生市二十三戸あり。

一　高姓階彦部氏　尊卑分脈に「高惟長―滝口二郎惟光―窪田光貞―彦部光朝―行貞―貞朝（正和）―貞有（建武）―近江守直貞（師直時分也）」。康正造内裏段銭引付（群書類従）に「九百五十文・彦部近江守殿・三河国設楽郡内黒瀬郷段銭」と見ゆ。黒瀬郷（愛知県鳳来町）に五戸現存す。

二　足立郡芝郷（川口市）の彦部氏　前項の氏にて、足利氏満書状（秋元文書）に「足立郡芝郷内地頭職、号女子方・彦部近江守跡、去応安七年二月六日任父駿河入道忻恵譲状」と見ゆ。二階堂出羽入道道簾の妻が、父駿河入道から譲与された。

彦松　ヒコマツ　幡羅郡妻沼村字彦松。

彦峯　ヒコミネ　葛飾郡上口村（三郷市）は番匠免村から分村し、古は彦峯村と称す。上口村東光院天正十年九月厨子銘に下総国下河辺庄彦宗郷上番匠免村東光寺と見ゆ。彦宗は彦峯の訛りなり。

肥後本　ヒゴモト　草加に存す。

彦吉野　ヒコヨシノ　成田系図に「成田助広―助忠（寿永二年義経従軍）、弟六郎（彦吉野三郎）」と見ゆ。

久　ヒサ　浦和、戸田、川越、狭山、越谷、本庄等に存す。茨城県東茨城郡大洗町十戸あり。

比佐　ヒサ　浦和、川口、与野、桶川、戸田、草加、八潮、川越等に存す。福島県いわき市百二十五戸あり。楢葉郡久之浜村（いわき市）は文永六年飯野八幡宮文書に比佐村と見ゆ。

桧佐　ヒサ　与野に存す。

檜佐　ヒサ　浦和、川口、与野、狭山等に存す。茨城県笠間市十二戸あり。

日座　ヒザ　上尾、戸田、草加、和光、川越等に存す。茨城県常陸太田市二十戸あり。

檜座　ヒザ　茨城県那珂郡大宮町七戸。

久明　ヒサアキ　行田、熊谷、妻沼等に存す。

久秋　ヒサアキ　戸田に存す。

久井　ヒサイ　川越、狭山、飯能に存す。

久居　ヒサイ　富士見に存す。

膝井　ヒザイ　八潮に存す。

久石　ヒサイシ　熊谷に存す。

美才治　ビサイジ　嵐山に存す。群馬県吾妻郡嬬恋村九戸あり。

久伊豆　ヒサイヅ　クイヅ条参照。

毘沙吐　ビサイド　毘沙門（びしゃもん）天をビシャドと称したか。賀美郡金窪郷毘沙吐村（上里町）あり。神流川合戦記に「天正十年六月、金窪、ひさいと原」と見ゆ。弘化三年神流川洪水により、全村民は上野国新町へ移住して現住民は無し。

一　那波氏家臣の毘沙土氏　賀美郡毘沙吐村より起る。天正十五年小田原北条氏の人質として、上野国那波城家臣の毘沙土右衛門は厩橋城に滞留させられた。

久内　ヒサウチ　越谷に存す。

久重　ヒサエ　上尾に存す。

久枝　ヒサエダ　浦和、大宮等に存す。

久尾　ヒサオ　所沢、富士見等に存す。

久岡　ヒサオカ　浦和、戸田、新座、川越、所沢、越谷、松伏等に存す。

膝折　ヒザオリ　新座郡膝折宿（朝霞市）あり。太田道灌書状に「膝折宿着陣」と。文明十八年廻国雑記に「膝折の市」と見ゆ。

久下　ヒサカ　川越、越谷等に存す。

久賀　ヒサカ　越谷に存す。

日坂　ヒサカ　川口、蕨、新座等に存す。

一　足立郡蕨宿　実成寺元禄十一年棟札に日坂四郎左衛門。宝蔵寺墓碑に日坂平兵衛・文政二年八十七歳終。三学院明治十五年水鉢に日坂国太郎・日坂秋次郎。明治三十五年荒物商日坂久吉・飲食店日坂国太郎あり。一戸現存す。

二　同郡上戸田村　隼稲荷社文政三年水鉢に当所日坂兵左衛門・同倅久吉。明治九年副戸長日坂幸七・嘉永元年生。白幡村睦神社明治三十六年碑に上戸田日坂安右衛門。昭和三年興信録に「戸田村・日坂安右衛門・所得税七十三円・営業税十六円」あり。現存無し。

飛坂　ヒサカ　川越に存す。

樋坂　ヒサカ　大宮、東松山等に存す。山形県飽海郡松山町十二戸あり。

久形　ヒサカタ　秩父郡上吉田村字久形は古の村名なり。

久門　ヒサカド　浦和、川口、川越、狭山、大井、春日部等に存す。

久兼　ヒサカネ　川口に存す。

久川　ヒサカワ　大宮、戸田、川越、所沢、白岡、北川辺等に存す。

久河　ヒサカワ　与野、新座等に存す。

久木　ヒサキ　浦和、川口、北本、草加、三郷、羽生、志木等に存す。鳥取県日野郡江府町六戸あり。クキ参照。

一　入間郡宮寺郷（入間市）の久木氏　昭島市郷地紅林文書に「天正十三年七月八日、紅林八兵衛の寄子久木に、宮寺之内十貫文、三ヶ島七貫文の地を宛行う」と見ゆ。当地方に無し。

桧崎　ヒサキ　騎西に存す。

楸田　ヒサギダ　浦和に存す。

膝喰　ヒザクイ　大里郡高本村字膝喰、相上村字膝喰あり。

久蔵　ヒサクラ　狭山、所沢等に存す。

仙倉　ヒサクラ　桶川に存す。

瓢　ヒサゴ　越谷に存す。

久語　ヒサゴ　吉川に存す。

膝子　ヒザコ　足立郡膝子村（大宮市）あり。

久崎　ヒサザキ　志木、草加、花園、小鹿野等に存す。

久里　ヒサザト　志木に存す。

久澤　ヒサザワ　浦和、北本、行田、熊谷、本庄等に存す。

久　ヒサシ　大宮、桶川、春日部、行田、熊谷、本庄等に存す。

久重　ヒサシゲ　大宮に存す。

久繁　ヒサシゲ　朝霞に存す。

久島　ヒサジマ　浦和、大宮、蕨、志木、入間、富士見、大井、春日部、久喜、杉戸、吹上等に存す。クシマ参照。

久嶋　ヒサジマ　所沢、騎西等に存す。

久末　ヒサスエ　浦和、大宮、川口、桶川、草加、入間、川越、坂戸、越谷等に存す。青森県上北郡野辺地町十四戸、東津軽郡平内町六戸あり。

久角　ヒサスミ　草加に存す。

久住　ヒサスミ　浦和、川越、加須等に存す。クスミ参照。

久澄　ヒサスミ　浦和に存す。

久田　ヒサダ　入間郡大井村に久田権現社あり。福島県いわき市三十八戸、相馬市十二戸あり。キュウダ参照。

一　葛飾郡才羽村（杉戸町）　松源寺開基は久田久太郎・法名月光院松源浄心居士、開山は大覚仏海禅師・寛文四年入寂す。久田氏は伊勢国武士で当村に土着し開発すと伝へる。現存無し。伊賀国久田荘（三重県上野市）は地名附会なり。才羽村の開発は是以前なり。木立村宝聖寺（現平須賀）大永五年末寺帳に「東坊・才場」と見ゆ。

二　同郡幸手町　神明社安永三年庚申塔に久田真益。明治三十年人名録に医師久田松益・天保二年生・地租四十円。明治三十五年裁縫職久田米吉・久田量平。昭和三年興信録に「久田量平・所得税二十四円・営業税二十二円」あり。一戸現存す。

三　鴻巣町　明治十四年埼玉銀行株主久田武右衛門・二株百円所有あり。現存無し。

四　川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に久田久之丞（美術小間物商吉野屋）あり。二戸現存す。

五　児玉町　八幡社延享二年御神燈に久田忠助、明治二十三年御嶽講碑に久田武平・久田円蔵。近江日野商人館に「永源寺町出身初代久田武平、児玉町にて文政十年酒醤油商創業」。共精商業銀行頭取に酒造業久田合名会社久田捨次郎。昭和三年興信録に「久田卯一郎・所得税百九十円」あり。四戸現存す。

六　比企郡腰越村（小川町）　平村慈光寺観音堂文政十三年算額に腰越邑久田善八郎儀知（嘉永四年没）あり。其子頂太郎なり。一戸現存す。

久高　ヒサタカ　川口、川越等に存す。

久武　ヒサタケ　浦和、三芳、越谷、行田等に存す。

久津　ヒサツ　与野に存す。

久月　ヒサツキ　武蔵志に「秩父郡三山村字久月・ヒサツキあり、一村の如し」と見ゆ。

久津木　ヒサツキ　入間郡長岡村字ヒサツ木あり。

久次　ヒサツギ　大宮、上福岡に存す。

膝附　ヒザツキ　川越に存す。栃木市九戸あり。

久綱　ヒサツナ　葛飾郡安戸村（幸手市）八幡社安永四年御神燈に久綱与兵衛あり。現存無し。

久恒　ヒサツネ　文永十一年十一月金沢文庫に「児玉郡枝松・同久恒名」と見ゆ。枝松条参照。浦和、草加、越谷、春日部、鷲宮、新座、所沢、飯能、毛呂山等に存す。

久常　ヒサツネ　羽生、春日部に存す。

久積　ヒサツミ　浦和、所沢、小川等に存す。久ヅミ参照。

日里　ヒサト　与野、三郷、八潮に存す。

日佐戸　ヒサト　越谷に存す。

久遠　ヒサトオ　川口に存す。

久冨　ヒサトミ　浦和、与野、上尾、新座、狭山等に存す。

久富　ヒサトミ　各市町村に存す。

久留　ヒサトメ　各市町村に存す。

久長　ヒサナガ　秩父郡久長村（吉田町）は久永とも書く。クナガ参照。

一　小畠姓久永氏　秩父神社文書に「延慶四年三月三日、名字書立、久永惣領小畠平太跡」と見ゆ。

二　鉢形城士の久永氏　秩父志に「久長村、日長但馬」とあり。久長村の古名はヒナガと呼んだか。関東古戦録に「天正十八年、北条安房守氏邦は鉢形寄居の勢を率いて小田原へはせ来り。氏邦の家人久永但馬守・武主として酒勾の萱野（小田原市）に押来れり。家康の臣大須賀勢散々に切乱せし、敵兵敗走せり」。秩父風土記に「久永村、久永但馬守の居跡。小田原籠城の後、御当家へ出るなり」と見ゆ。幕臣に見えず、本名に復姓して仕官したか。

久永　ヒサナガ　各市町村に存す。神奈川県平塚市二十四戸あり。前条参照。

一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・三十石五人扶持・前橋取立・久永能登兵衛、御馬廻・二十石四人扶持・前橋取立・久永助三」。助三は名を徽、号松陵、川越藩校助教授を勤め安政四年没す。万延二年川越藩分限帳に「御使役・三十石五人扶持・久永治右衛門、御馬廻惣領久永雄二、御小姓・久永五郎作、永詰御雇久永豊三郎」。明治四年前橋藩職員録に「大属・聴断囚獄方・久永真里」あり。

久鍋　ヒサナベ　朝霞に存す。

久野　ヒサノ　各市町村に存す。福島県いわき市八十四戸、青森県十和田市二十二戸あり。キュウノ、クノ参照。

一　小田原城士の久野氏　入間郡大井村塩野文書に「亥八月八日、桔梗根一俵、久野へ可進、但船木新兵衛に可渡者也、大井百姓中」と見ゆ。

二　忍城士の久野氏　成田分限帳に「二十貫文・久野権左衛門、十五貫文・久野備中」あり。

比佐野　ヒサノ　大宮、上尾等に存す。福島県いわき市九戸あり。

久場　ヒサバ　大宮に存す。クバ参照。

久林　ヒサバヤシ　大宮、寄居等に存す。クバヤシ参照。

久原　ヒサハラ　狭山に存す。

久古　ヒサフル　上尾、横瀬等に存す。

久部　ヒサベ　川口、幸手等に存す。

久間　ヒサマ　熊谷に存す。クマ参照。

久松　ヒサマツ　各市町村に存す。○茨城県新治郡千代田町十七戸、新治村十三戸、稲敷郡河内町十戸、茎崎町十一戸、桜川村十二戸、土浦市八十戸、つくば市百十戸。○山形県飽海郡平田町四十四戸あり。

一　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「五十人扶持・久松主馬」あり。

二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「御武具奉行・十人扶持・久松源内」あり。

三　栗橋宿　八坂社文化十四年御神燈に久松幸助。明治三十五年に久松善二郎あり。現存無し。

四　川口町　昭和三年興信録に「川口町・久松つぎ・所得税二十三円・営業税三十九円」あり。

久道　ヒサミチ　戸田、杉戸、小川、都幾川等に存す。宮城県遠田郡南郷町八戸、涌谷町十七戸、石巻市十二戸。

久光　ヒサミツ　各市町村に存す。宮城県遠田郡田尻町七戸、栗原郡志波姫町二十七戸あり。

久村　ヒサムラ　浦和、蕨、狭山、春日部、越谷等に存す。クムラ参照。

久持　ヒサモチ　川口に存す。

久元　ヒサモト　狭山に存す。

久本　ヒサモト　各市町村に存す。○宮城県志田郡松山町九戸。○青森県下北郡大畑町五戸。○鳥取県八頭郡智頭町十四戸あり。

久守　ヒサモリ　草加に存す。

久森　ヒサモリ　与野、蓮田等に存す。

久安　ヒサヤス　志木、新座、所沢、深谷等に存す。

久山　ヒサヤマ　浦和、川口、草加、新座等に存す。クヤマ参照。

久行　ヒサユキ　鴻巣、鶴ヶ島等に存す。

久吉　ヒサヨシ　宮代に存す。

日沢　ヒサワ　上尾、所沢、三芳等に存す。岩手県久慈市二十戸、青森県三戸郡田子町十五戸あり。

日澤　ヒサワ　入間に存す。

氷沢　ヒサワ　浦和に存す。

桧沢　ヒサワ　岩槻に存す。

檜沢　ヒサワ　蓮田、伊奈、岩槻、春日部、越谷、秩父等に存す。

飛沢　ヒサワ　川口、日高、毛呂山等に存す。茨城県真壁郡大和町十二戸あり。トビサワ参照。

飛澤　ヒサワ　与野に存す。

樋沢　ヒサワ　与野、草加、越谷、春日部、新座等に存す。長野県小県郡武石村四十八戸あり。

久和　ヒサワ　所沢、春日部等に存す。

菱　ヒシ　榛沢郡田中村（川本町）に此氏の旧家あり。四戸現存す。

比志　ヒシ　浦和、鶴ヶ島等に存す。山梨県北巨摩郡須玉町九戸あり。

臂　ヒジ　足立郡上尾町愛宕社明治四十四年碑に臂源三郎・臂幸次郎あり。五戸現存す。

菱伊　ヒシイ　与野、越谷等に存す。

肱岡　ヒジオカ　浦和、草加、春日部、毛呂山等に存す。

比地岡　ヒジオカ　朝霞に存す。

菱ヶ江　ヒシガエ　北本に存す。

土方　ヒジカタ　吾妻鑑巻二十一に「ひちかたの次郎」。巻三十八に土方右衛門次郎とあり。○東京都多摩市二十七戸、日野市百八十戸、青梅市八十戸、八王寺市九十戸。○神奈川県中郡大磯町二十五戸あり。

一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・二百石・越前取立・土方仁右衛門、小組頭・十人扶持・土方林兵衛」あり。

二　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御奥小姓・百八十石・土方直人、御馬廻・十人扶持・土方左蔵、御馬廻・三人扶持・土方槌之丞、隠居・五人扶持・土方佐五兵衛」あり。

三　埼玉郡羽生領小浜村（加須市）　地蔵院元禄八年百番観音に施主小浜村土方加兵衛あり。二戸現存す。

四　入間郡下安松村（所沢市）　長源寺明治三十一年筆子碑に土方惣五郎あり。七戸現存す。

五　同郡砂村（川越市）　氷川社明治十八年御神燈に土方春吉。一戸現存す。

菱刈　ヒシカリ　川越、岩槻等に存す。

菱川　ヒシカワ　榛沢郡岡部村字菱川あり、此所の湧き水を水源とし、榛沢郡では菱川と称し、下流の幡羅郡では福川と称す。

一　高麗郡田波目村（日高市）　明治十六年永続講員菱川長造あり。四戸現存す。

菱河　ヒシカワ　所沢に存す。

土川　ヒジカワ　入間に存す。

菱木　ヒシキ　浦和、大宮、与野、上尾、志木、川越、越生、岩槻、春日部、越谷、鷲宮等に存す。千葉県海上郡飯岡町二十四戸、香取郡山田町十七戸、匝瑳郡光町十戸、八日市場市二十戸あり。

飛鋪　ヒシキ　新座に存す。千葉県市原市九戸あり。

日紫喜　ヒシキ　越生、毛呂山に存す。

日直　ヒジキ　岩槻に存す。

菱倉　ヒシクラ　草加、深谷等に存す。神奈川県横須賀市五十二戸あり。

土黒　ヒジクロ　上尾に存す。

肱黒　ヒジクロ　狭山、上福岡に存す。

菱事　ヒシコト　越谷に存す。岩手県久慈市十一戸あり。

比志島　ヒシジマ　草加、鷲宮に存す。

聖尻　ヒジシリ　朝霞に存す。

日下　ヒシタ　越谷に存す。岩手県紫波郡紫波町十三戸あり。

樋下　ヒシタ　八潮に存す。

菱田　ヒシダ　小名菱田は、葛飾郡東大輪村、埼玉郡下早見村、比企郡畑中村等にあり。各市町村に存す。

菱谷　ヒシタニ　大宮、毛呂山に存す。

泥谷　ヒジタニ　与野、朝霞に存す。

菱浪瀬　ヒシナミセ　岩附城士にて、埼玉郡百間東村鈴木家譜に「北条氏房旗下鈴木雅楽助業俊の配下菱浪瀬加兵衛」あり。当地方に現存無し。

菱沼　ヒシヌマ　小名菱沼は、埼玉郡千駄野村、増森村、上中条村、足立郡新堤村、幡羅郡上増田村等にあり。○栃木県那須郡烏山町二十四戸、河内郡河内町十八戸、芳賀郡芳賀町二十四戸、茂木町二十戸、真岡市五十三戸。○茨城県新治郡八郷町四十五戸。○神奈川県三浦市七十戸、横須賀市百八十戸。○福島市百戸。○宮城県登米郡中田町十五戸。○山形県西村山郡河北町十一戸、天童市三十五戸あり。

一　岩附城士の菱沼氏　高麗文書（家伝史料）に「永禄中、常陸国柿岡城主梶原政景家臣着座次第、菱沼丹後守殿・同隠岐守殿」あり。

二　葛飾郡小淵村（春日部市）　大杉神社文政八年御神燈に小淵村菱沼利八、元治元年狛犬に当所島株菱沼三左衛門・菱沼常右衛門・菱沼千代吉・菱沼嘉内・菱沼三九郎・菱沼喜三郎。明治九年戸長菱沼杉次郎・安政元年生、副戸長菱沼常作・嘉永四年生。明治三十年人名録に菱沼才助・弘化四年生・地租四十七円、菱沼左門之輔・明治十二年生。昭和三年興信録に「幸松村・菱沼左門之助・所得税二十三円」。六戸現存す。

三　埼玉郡粕壁宿　小淵村大杉神社文政八年御神燈に粕壁宿菱沼栄吉。

四　同郡岩槻町　明治三十五年に菱沼又吉あり。

五　同郡和戸村（宮代町）　宇宮神社天保六年奉額に菱沼八三郎あり。一戸現存す。

六　同郡篠津村（白岡町）　当村に此氏多く存す。観音堂宝永八年供養塔に菱沼弥左衛門・菱沼次兵衛。馬立地蔵堂享保十三年地蔵尊に菱沼長兵衛・菱沼弥兵衛・菱沼□□衛門・菱沼喜兵衛・菱沼喜右衛門・菱沼伝右衛門・菱沼松右衛門、弘化五年二十三夜塔に菱沼定治郎・菱沼七蔵・菱沼峰治郎・菱沼勘蔵・菱沼彦太郎・菱沼吉十郎。太田袋村琴平社文政三年水鉢に篠津村菱沼友右衛門。上尾宿氷川鍬神社文政五年二賢堂碑に篠津村菱沼玄之助貞居。久伊豆社天保十二年水鉢に菱沼百之助。青雲寺天保九年常夜燈に菱沼次兵衛・菱沼吉右衛門・菱沼勝吉・菱沼幾五郎、明治二十年供養塔に菱沼甚兵衛・菱沼弥左衛門・菱沼七蔵・菱沼峰次郎・菱沼喜興・菱沼正信。明治九年戸長菱沼治兵衛、副戸長菱沼伝吉。明治三十五年旅館菱沼ヤスあり。

七　同郡久喜町　明治三十五年鋳掛師菱沼由太郎・菱沼利七あり。

八　同郡西村（久喜市）　吉羽村高輪寺明治二年筆子碑にニシムラ菱沼伝吉あり。現存無し。

九　同郡上清久村（久喜市）　雷電社明治十四年御神燈に菱沼造酒右衛門・菱沼勘五郎・本村菱沼弥右衛門あり。六戸現存す。

一〇　同郡三箇村（菖蒲町）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

菱野　ヒシノ　熊谷に存す。

菱村　ヒシムラ　志木、新座等に存す。

菱本　ヒシモト　新座、所沢等に存す。島根県安来市七戸あり。

菱谷　ヒシヤ　浦和、川越等に存す。青森県弘前市十三戸あり。

菱屋　ヒシヤ　三郷に存す。

肘谷　ヒジヤ　所沢に存す。

泥谷　ヒジヤ　所沢、日高、春日部、三郷等に存す。

日尺　ヒシャク　比企郡平村字日尺（都幾川村）は古の村名にて、慈光寺文書に「平、日尺、瀬戸、番匠」と。

柄杓　ヒシャク　高麗郡中藤村上郷字柄杓、賀美郡元阿保村小暮家邸内に柄杓神社あり。

菱山　ヒシヤマ　浦和、上尾、鴻巣、狭山、越谷、本庄、岡部等に存す。山梨県東八代郡御坂町九戸あり。

微笑　ビショウ　所沢に存す。

美女木　ビジョギ　足立郡笹目郷美女木村（戸田市）は、応永二年鶴岡事書日記に「佐々目郷百姓交名、五郎次郎・助法印百姓・美女木」と見ゆ。

聖　ヒジリ　秩父郡黒谷村（秩父市）に聖神社あり。自然銅を神体とし、鍛冶神のムカデを御眷族とする。ヒツジ条六項参照。

樋尻　ヒジリ　埼玉郡阿良川村字樋尻。

聖沢　ヒジリサワ　入間郡滝野入村字ヒヂリ沢あり。狭山に存す。

飛知和　ヒジワ　所沢に存す。

備瀬　ビセ　上福岡、鶴ヶ島等に存す。

日関　ヒセキ　行田に存す。

肥前　ヒゼン　狭山に存す。

備前　ビゼン　浦和、川口、志木、入間、所沢、越谷、吉川等に存す。長野県塩尻市十四戸、秋田県平鹿郡大森町十四戸、雄勝郡東成瀬村十戸あり。

備前島　ビゼンジマ　幡羅郡小島村（妻沼町）あり。当村医王寺住職備前島賢融は隣村の上野国新田郡備前島村に明治十年生る。小島村に一戸、備前島村（尾島町）に八戸現存す。

樋園　ヒソノ　所沢に存す。

日田　ヒダ　火は鍛冶神にて、田は郡県・村の意味。渡来人鉱山鍛冶師の集落を日田、樋田、飛田、肥田と称す。ヒ条参照。川口、八潮等に存す。

比田　ヒダ　入間、東松山、深谷等に存す。岩手県大船渡市十戸あり。

飛騨　ヒダ　有名なる飛騨の匠は、賦役令に「凡そ斐陀国は、庸調倶に免ぜよ。里ごとに匠丁十人を店ぜよ」とあり。飛騨国から調庸を免除して匠丁を各里から徴発している。都の宮殿や官衙の造営に従事した匠丁の古語は挽手人（ひたびと）と称し、美濃国から分離して其の居住地を飛騨と唱えた。匠（たくみ）は木工の別称となったが、元は鍛工も匠丁であった。川口に存す。

飛弾　ヒダ　松伏に存す。

飛田　ヒダ　各市町村に存す。○茨城県真壁郡関城町二十四戸。○神奈川県足柄下郡湯河原町二十三戸。○福島県田村郡三春町二十七戸、船引町二十戸、郡山市四十戸。○岩手県上閉伊郡大槌町十四戸あり。トビタ参照。

肥田　ヒダ　美濃国土岐郡に肥田川あり、流域の集落は良質の陶土地帯で、地場産業は陶磁器製造業である。鍛工は陶工技術者でもあり、是等の集落を肥田と称した。各市町村に存す。○茨城県久慈郡金砂郷町十一戸。○新潟県北蒲原郡笹神村十七戸あり。

一　野本氏家臣の肥田氏　熊谷家文書に「建武四年七月八日、常州関城合戦の時、野本能登四郎朝行の子息鶴寿丸代官の内、肥田七郎等四人は討死す」と見ゆ。常陸国出身なり。野本条参照。

二　上杉氏家臣の肥田氏　鎌倉大草紙に「永享十年九月、上杉憲直の頼切ったる肥田勘解由左衛門・蒲田弥次郎・足立・荻窪を初として、一族若党悉く討死す」と見ゆ。

三　鶴岡八幡宮奉行の肥田氏　香蔵院珎祐記録に「長禄三年十一月大、佐々目郷内白鬚新田事云々、平河・肥田両人衆中奉行云々」。「肥田主計助は、関戸六ヶ村（多摩郡）と守護役並に供僧中役を請取る」と。快元僧都記に「天文五年閏十月二十七日、肥田助次郎は、北条氏綱の命により鶴岡造営の奉行を務む」と見ゆ。

四　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百石・肥田半兵衛・是は忍にて罷出・相模之者」。

五　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・二十石四人扶持・川越取立・肥田岐門」。

六　埼玉郡長宮村（岩槻市）　大光寺供養塔に「遍照院智月道高居士・肥田帯刀親父・二十六日没。肥田帯刀・寛永十一年没。先茂左衛門・寛永十四年没。肥田茂左衛門清久・寛永二十一年没。肥田権兵衛定清・宝永五年没」。香取社天和三年石祠に肥田三郎兵衛。庚申塚享保五年庚申塔に肥田孫七郎。大光寺供養塔に肥田孫七郎宅高・享保十八年没、元文五年水鉢に長宮村肥田弥太夫。香取社宝暦四年庚申塔に肥田茂平太。大光寺供養塔に「肥田弥太夫満□・宝暦七年没、肥田茂平太秀久・明和八年没」。庚申塚天明五年庚申塔に肥田茂吉。平野村稲荷社寛政二年力石碑に長宮村肥田文六.。香取社寛政六年金毘羅講碑に肥田茂七、文化元年供養塔に肥田宇藤治、天保九年御神燈に肥田善輔。増長村観秀院安政二年供養塔に肥田九左衛門。香取社慶応元年水鉢に肥田九左衛門、慶応二年幟碑に肥田藤作。明治九年副戸長肥田九左衛門・安政元年生あり。一戸存す。

樋田　ヒダ　各市町村に存す。群馬県吾妻郡長野原町十九戸。トイダ参照。

桧田　ヒダ　狭山に存す。

檜田　ヒダ　新座、越谷等に存す。

日台　ヒダイ　上尾に存す。長野県下高井郡木島平村十七戸あり。

樋代　ヒダイ　鴻巣、入間、毛呂山等に存す。長野県伊那市十九戸あり。

比田井　ヒダイ　各市町村に存す。長野県北佐久郡望月町六十五戸あり。

日高　ヒダカ　大分県日田郡は和名抄に豊後国日高郡とあり、日高（ひだ）は日田に同じにて鍛冶集落なり。各市町村に存す。○栃木県下都賀郡藤岡町十三戸、小山市十九戸。○茨城県鹿島郡波崎町十一戸。○千葉県夷隅郡大原町十戸、銚子市三十八戸。○島根県邑智郡羽須美村六十四戸、瑞穂町百七戸、石見町三十五戸あり。

一　葛飾郡東大輪村（鷲宮町）　青面金剛社文化十二年水鉢に日高彦助あり。三戸現存す。次条参照。

飛高　ヒダカ　飛多（ひだ）とも称す。日田に同じにて鍛冶集落を称す。

一　葛飾郡東大輪村（鷲宮町）　百間村青林寺寛政十年文書に東大輪村飛多礒右衛門。大輪神社文久二年伊勢講碑に飛高新之丞・飛高次郎右衛門・飛高国松・飛高仙右衛門、明治二十二年碑に飛高彦助吉広・飛高新七芳秀。明治九年副戸長飛高新七・文政八年生あり。六戸現存す。

二　同郡幸手町　雷電社明治十七年御嶽碑に幸手・飛高新之丞あり。現存無し。

三　埼玉郡久喜町　明治三十五年酒醤油卸商飛高□□。昭和三年興信録に「久喜町・飛高隆平・所得税三十七円・営業税四十七円、飛高清吉・所得税十二円・営業税四十三円」あり。十戸現存す。

四　同郡下早見村（久喜市）　鷲神社天保十年御神燈に飛高房五郎あり。現存無し。

飛鷹　ヒダカ　寄居に存す。

肥高　ヒダカ　朝霞、岩槻、越谷等に存す。茨城県久慈郡大子町八戸あり。

樋高　ヒダカ　狭山、所沢、吉川に存す。

檜高　ヒダカ　吉川に存す。

比田勝　ヒダカツ　入間に存す。

日高見　ヒダカミ　蝦夷国の別名を日高見国と云う。三代実録に「貞観元年五月十八日、陸奥国日高見水神に従四位下を授く」と、宮城県桃生郡桃生町太田の式内社・日高見神社で、日高見川は後世北上川と称す。日本書紀・景行天皇四十年条に「日本武尊、上総よりうつりて、陸奥国に入りたまふ、蝦夷の境に至る。蝦夷平らげて、日高見国より還りて、常陸を歴て甲斐国に至る」と見ゆ。この頃の日高見国は蝦夷の居住していた陸奥国（福島県南部）より常陸国（茨城県北部の日立市附近）までも称していた。

肥田木　ヒダキ　所沢、三郷、行田、深谷等に存す。

常陸　ヒタチ　大宮、鴻巣、鳩ケ谷、蕨、幸手、川越、富士見、志木等に存す。○宮城県加美郡小野田町二十一戸。○岩手県遠野市六戸。○島根県簸川郡斐川町五戸あり。

日達　ヒタチ　川口に存す。長野県諏訪郡原村六十三戸あり。

日谷　ヒタニ　大宮、蕨、狭山に存す。

樋谷　ヒタニ　浦和、川口、越谷に存す。

枇谷　ヒタニ　鶴ヶ島に存す。

檜谷　ヒタニ　所沢に存す。

日種　ヒタネ　深谷に存す。

肥田埜　ヒダノ　入間、所沢等に存す。

肥田野　ヒダノ　野は助詞にて、肥田、日田と同じく渡来人鍛冶集落を称す。新潟県新発田市百九戸あり。

一　入間郡久米村（所沢市）　長久寺嘉永二年棟札に発願主肥田野磯右衛門、万延元年宝篋印塔に肥田埜忠五郎・肥田埜国造・肥田埜長八・肥田野佐七.。明治九年副戸長肥田野孫七・天保十一年生。本郷村東福寺明治九年常夜燈に久米村肥田野亀吉（嘉永四年生）。明治二十四年選挙録に肥田野勘右衛門。八幡社明治三十九年に肥田野忠五郎・肥田野金太郎・肥田野弥助。水天宮明治四十一年碑に当所肥田野豊太郎・久米金山肥田野庄助・内手山肥田野亀吉。明治四十三年所沢町織物商肥田野伊助・金山町乾物商肥田野徳太郎。昭和三年興信録に「所沢町・肥田野佐治・所得税七十円・営業税七十一円」あり。十三戸現存す。

二　同郡上新井村（所沢市）　六所神社大正二年碑に肥田野富太郎あり。現存無し。

飛田野　ヒダノ　大宮、狭山、八潮、吉川等に存す。新潟県東蒲原郡三川村二十二戸、新発田市二十二戸あり。

飛弾野　ヒダノ　浦和、上尾、新座、三郷等に存す。

披田野　ヒダノ　川口、与野、岩槻等に存す。新潟県北蒲原郡笹神村十五戸あり。

左　ヒダリ　上尾、与野、戸田、川越、越谷、熊谷等に存す。所沢出身の演劇俳優左ト全・昭和四十六年没あり。

左沢　ヒダリサワ　大宮に存す。アテラザワ参照。

左伴　ヒダリトモ　越谷、三郷に存す。

飛田和　ヒダワ　千葉県印旛郡富里町八戸あり。

一　入間郡鶴馬村（富士見市）　当村に此氏多く存す。明治五年屋根職飛田和倉次郎・同飛田和喜曽七.。明治十年鶴馬村議飛田和助次郎・安政元年生あり。

比地　ヒチ　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「法信・比地四郎右衛門尉・子年十月。浄仙・比地惣右衛門・酉年五月」あり。川越城士にて小田原北条氏家臣か。

樋地　ヒチ　川口、大宮、鳩ケ谷に存す。

比地岡　ヒチオカ　春日部に存す。

七野　ヒチノ　所沢に存す。

比知屋　ヒチヤ　北本に存す。

飛知和　ヒチワ　川口、大宮、新座、三芳、鶴ヶ島、春日部等に存す。福島県西白河郡東村十八戸あり。

櫃岡　ヒツオカ　川越に存す。

肥塚　ヒヅカ　蕨、川越、久喜、越谷等に存す。コエヅカ参照。

枇塚　ヒヅカ　内閣文庫に「正平七年二月六日、武蔵国大里郡枇塚郷」と見ゆ。肥塚村（熊谷市）なり。

檜作　ヒヅクリ　上尾に存す。

羊　ヒツジ　中国では北方の羊を飼う異民族を蕃（えびす）、胡（えびす）、羌（えびす）と称し、あごのたれさがった肉、転じて胡髯（あごひげ）と云い、羌（ひつじ）、羊（ひつじ）はその蔑称である。大和朝廷は中華思想により大ノ国（百済、伽耶地方）の渡来人を蕃、羊と蔑称した。オオ条参照。大ノ国の胡（えびす）居住地を大胡（おおご）、多胡（おおご）と称し、タコとも読んだ。百済（くだら）も管羅（くだら、かんら）と称し、甘楽（かんら）、甘良（かんら）と読んだ。上野国多胡郡池村（多野郡吉井町）の多胡碑に「和銅四年三月九日、弁官、上野国に符し、片岡郡緑野郡甘良郡并せて三郡の内三百戸を郡となし、羊に給して多胡郡と成す。左中弁正五位下多治比真人、太政官二品穂積親王、左大臣正二位石上尊（麻呂）、右大臣正二位藤原尊（不比等）」とあり。多胡郡百済庄は吉井町池、片山、長根、神保附近一帯を称し、羊は和銅より数百年前から居住していた百済人を指す。また、和銅四年より五十数年後の天平神護二年五月紀に「上野国に在る新羅人子午足等一百九十三人に、姓を吉井連と賜ふ」とあり。新羅人も入植していた。上毛古墳綜覧に多胡郡黒熊村字塔ノ峰（吉井町）より「羊子三」とへら書した古代の瓦が出土したという。群馬県古城塁址の研究に「黒熊村の延命寺の地域は伝説に羊太夫の臣黒熊太郎の古跡なり」と見ゆ。また、甘楽郡天引村（甘楽町）の天引城は羊太夫の砦と伝へる。緑野郡上落合村（藤岡市）七輿山宗永寺は羊太夫家臣長尾宗永の居所で、羊太夫の死後その婦妾七人が宗永に救助を求めて輿中で自害し、のち墳墓を七輿山宗永寺としたと伝へる。

一　八束羊太夫　多胡郡吉井村字八束、大沢村字八束、神保村字八束あり。現神保村にある多胡郡の総鎮守辛科神社は八束山の麓である塩村に古来あったといわれ、此地に羊太夫の伝説あり。羊太夫栄枯記に「ここに東山道上野国多胡郡の八束山の城主を八束羊太夫宗勝という、宗勝は天児屋根命の子孫大職冠藤原鎌足の五代の孫藤原将監勝定の嫡男。云々」。羊太夫縁起に「小幡太郎太夫勝定の一子羊太夫宗勝・朱鳥九未年未月未日未刻生る。駿馬に乗り奈良の朝廷へ日々参内す」と見ゆ。羊を未に附会す。中臣鎌足は天智朝八年（六六九）に藤原氏を賜う。朱鳥九年未（六九五）に六代目の羊太夫宗勝が誕生では年代あわず。鎌足後裔説は仮冒なり。経俊卿記文応元年条に「基兼と実伊法印相論。上野国小幡郷は、藤原俊成の子成家が子言家に譲り、言家の子基兼が訴訟を起こす」。小幡郷（甘楽町）は藤原氏領で小幡氏はその家司なり。神道集巻四十八に「上野国甘楽郡の内、尾幡荘の地頭をば、尾幡権守宗岡とぞ申ける」と見ゆ。羊太夫の子孫と称する家は、国峰村斎藤氏（甘楽町）、大島村小間氏（富岡市）、南蛇井村相川氏（富岡市）、曽木村入山氏（富岡市）等あり。ヤツカ条参照。

二　小幡羊太夫　甘楽郡一之宮貫前神社（富岡市）は抜鉾神社とも称す。古代は別神であったらしい。古代氏族系譜集成に「羊太夫（多胡郡領）―波瀬―千影―繁枝（片山郡大領）―志木知―黒丸―鳥甘（小幡太夫）、弟鷹養（小幡勾当）―宗雄（小幡太夫）―雄嗣（同上）―是老（兵藤次）―弘宗（兵藤太）―弘茂（小幡勾当）―弘景―茂常（天喜九年十月十七日死す）。子孫上野国甘楽郡抜鉾神社神主小幡氏」と。貫前神社神主小幡氏系図（小幡洋資所蔵）に「羊十四代の孫茂常（天喜九年死す）―氏永（永久元年死す）―氏綱―伊賀守宗氏―安芸守氏久―氏繁―氏重―貞氏―氏義―成氏―俊氏―氏友―信氏―但馬守氏繁（北条氏滅亡之時領地を失う）。但馬守以来、嫡子は一宮を名乗り、次男より小幡を為名乗候。三十四代小幡帯刀季氏に至り、相続して神職たり」と見ゆ。一宮村に小幡氏一戸、一宮氏は無し。

三　多胡羊太夫　天児屋根命の後裔忠臣羽鳥連は物部連にくみして上野国へ遠流となると伝説あり。中臣（なかとみ）を忠臣と記す。呉国出身の毛野氏に率いられた呉服（くれはとり）の百済族であり、中臣姓は仮冒なり。クレ条参照。羽鳥氏は前橋市に百八十戸存し、笂井村・亀里村等に多く存す。前橋市元総社町釈迦尊寺文安二年刻碑に「此寺開基忠臣羽鳥連、人皇三十二代丁亥二年来居、同妻玉照姫・聖徳太子乳母也。同忠臣菊野連・羽鳥嫡子。同忠臣羊太夫・菊野嫡子、和銅中移多胡郡池村改姓」とあり。多胡羊太夫は阿部族と称す。緑野郡上落合村宗永寺縁起に「羊太夫、諱小水麻呂、姓阿部。其先天児屋根命遠裔中臣羽鳥孫、菊野連子也。人皇三十二代用明帝崩御時物部大連叛、羽鳥党之、羽鳥謫上野国府蒼海・今之本惣社也」と見ゆ。比企郡平村慈光寺所蔵の大般若経は緑野郡浄法寺（鬼石町）のものだったと云う。慈光寺実録に「和銅元年、上毛国多胡郡羊太夫に勅命有て、大般若経を令書写、当山観世音へ備へ給ふと矣。又小水麻呂と云は羊の孫也。高祖父の志を紹継して、貞観十三年三月三日六百卷書写して今現存せり。依て世に羊の般若称すれ共、今多分は小水麻呂なり」と。大般若経奥書に「貞観十三年三月三日、檀主前上野国権大目従六位下安倍朝臣小水麻呂」とあり。慈光寺新実録に「羊太郎―多胡古丸―小水麻呂」とあり。古代氏族系譜集成に「阿部比羅夫（斉明帝、征蝦夷将軍）―広目―象主―益成―小水麻呂」と見ゆ。小水麻呂は上野国の古代阿部族であり、中央貴族の阿部氏後裔説は仮冒なり。甘楽郡高尾村（富岡市）仁治四年二月二十六日銘の板碑に「物部、小野、壬生、六人部、日奉、藤原、安部国宗」あり。宗を通字としており、羊太夫の後裔であろう。

四　多治比姓羊太夫　風土記稿比企郡平村（都幾川村）条に「大般若経百二十一巻は慈光寺縁起云、貞観十三年三月前上野国権大目安部朝臣小水麻呂の書写にして、元は六百卷ありしと。又和銅元年、多治比真人羊書写の物ありしといへど、今それとおぼしきものなし。住僧の考には、小水麻呂の書せしと云中に料紙もことにして、且文字の体もおなじからざるものあるは、羊太夫の手に成りしならんといへど、別に奥書等もなく證とすべきことなければおぼつかなし」と見ゆ。日影村真光寺（玉川村）にも「羊の印ある般若心経」があったと伝へる。群馬郡南下村（吉岡町）の多治比姓田胡氏系略之図に「天武天皇―穂積親王―上道王―多治比真人〓羊太夫」とあり。田子氏八戸現存す。同郡南大類村（高崎市）の天田氏系図に「穂積親王の子孫小幡羊太夫宗勝の三代目天田丹波守重忠を祖とす」とあり。天田氏四十戸現存す。多胡碑の多治比真人に附会す。

五　蕃族羊太夫　渡来人蕃（えびす）の集落を蕃田、伴太と称す。粟生系図に「御堂関白藤原道長公―宇治関白頼通公―民部大輔（任隆是也。多胡庄・玉村・ミドリ・片山庄を知行す。宇治殿五男上野国に住す）―羊太夫（カラシナノ大明神と号す）―伴太大夫（依八幡殿仰、タン小玉党ニウタル）―伴太太郎（此スエハ上野国ニアリ）、弟伴太次郎―玉村次郎―片山武者五郎師綱―粟生五郎左衛門尉広隆（能登国羽咋郡粟生保知行）」と見ゆ。子孫は武州成田氏にて、永正四年旅宿問答に「関白道長の孫・式部大輔任隆、武州の太守として下向し、幡羅の郡に御座す。郡徒之を称して幡羅太郎と号せり。此の曽孫に成田の三位式部大輔助隆、是れ八幡殿の伯父と申し伝へたり」と見ゆ。任隆は羊太夫にて、藤原氏領の家司なり。

六　新羅族羊太夫　続日本紀に「和銅元年正月、武蔵国秩父郡・和銅を献る。天下によろこびの詔りをたまわく、冠位を上げ賜ふ、無位金上元に従五位下を授く」。秩父郡原谷村誌に「秩父郡黒谷村（秩父市）において銅を採掘精錬したのは、高麗郡がおかれる八年前で、新羅系の金上元であった」。黒谷村聖神社は多治比真人三宅麻呂が滞同したムカデを捧げ造営し聖明神と号し、羊太夫を祀っている。風土記稿栃谷村（秩父市）条に「第一番観音、一説に羊太夫納経すと云ふ」と。また、下小鹿野村小鹿塚は羊太夫の墓とする伝承あり、多胡郡より新羅系渡来人が居住し、後に般若村へ移ったと云う。秩父郡誌に「般若村に羊太夫墓あり。羊太夫は或は伝説人物なりと謂はれ、或は敏腕にして機智に富み鉱業・農業等を発達助長せしめたる帰化人なりとも謂はる」と。また、上日野沢村字門平（皆野町）に「羊さま」と呼んでいる所あり。

七　高麗族羊太夫　横瀬の年略に「横瀬村根古屋に秩父絹発祥の地があり。慶雲三年、高麗羊太夫が芦ヶ久保村楮久保に来て、楮の加工を伝へる」と見ゆ。

八　羊妙見大菩薩　千学集抄に「羊妙見大菩薩が出現し、平将門・良文の軍を助る」と。秩父平氏の祖神なり。秩父条七項参照。

日辻　ヒツジ　川口、鶴ヶ島等に存す。

日爪　ヒヅメ　所沢に存す。

日詰　ヒヅメ　浦和、大宮、新座、川越、所沢、日高、越谷、三郷等に存す。山形県東村山郡山辺町十一戸あり。

日極　ヒヅメ　浦和、富士見等に存す。

樋詰　ヒヅメ　川口、越谷等に存す。ヒノツメ参照。

樋爪　ヒヅメ　足立郡下落合村（与野市）元禄三年検地帳に「屋敷三畝二十七歩・三右衛門（明治追筆、樋爪腮次郎）」。東光寺宝暦九年供養塔に樋爪助左衛門・樋爪重兵衛あり。七戸現存す。

櫃本　ヒツモト　浦和、朝霞等に存す。

日露　ヒツユ　蕨に存す。

秀　ヒデ　大宮に存す。

肥出　ヒデ　深谷城士にて、深谷記に「深谷よりは井草左衛門尉殿手に肥出五郎左衛門等、甲州衆の首取、左衛門尉殿へ差し上げる」と見ゆ。コイデが正訓か。別本に肥土と。。

秀岡　ヒデオカ　騎西に存す。

英岡　ヒデオカ　川口に存す。

秀方　ヒデカタ　朝霞に存す。

秀坂　ヒデサカ　富士見に存す。

秀澤　ヒデサワ　朝霞に存す。

秀島　ヒデシマ　各市町村に存す。

秀嶋　ヒデシマ　大宮、和光等に存す。

日出島　ヒデシマ　与野に存す。

秀永　ヒデナガ　大宮に存す。

秀野　ヒデノ　浦和、草加、春日部、越谷、行田等に存す。

秀間　ヒデマ　粕壁町東八幡社明治三十四年碑に秀間七左衛門（古物商）あり。三戸現存す。

日出間　ヒデマ　入間郡川崎村（上福岡市）阿弥陀堂延宝六年五輪塔に日出間惣右衛門、元禄十二年五輪塔に日出間三郎衛門、正徳五年地蔵尊に川崎村日出間喜太夫・日出間長之助・日出間五平次。当村宝永二年弁才天碑に川崎村日出間三郎衛門。氷川社弘化二年地蔵尊に日出間三郎兵衛、文久三年仙元碑に川崎村日出間与五郎。慶応二年名主日出間兵七.。明治九年戸長日出間五兵衛、副戸長日出間太郎吉。明治十五年県下豪商十一名の内に日出間五兵衛。氷川社明治四十三年幟碑に日出間太郎吉あり。十三戸現存す。

日出谷　ヒデヤ　足立郡日出谷村（桶川市）あり。

秀安　ヒデヤス　埼玉郡秀安村（羽生市）あり。正木文書に「応永十一年頃。岩松持国本領所々注文、武州秀泰郷」と見ゆ。

日出安　ヒデヤス　埼玉郡日出安村（騎西町）あり。

英山　ヒデヤマ　与野、富士見等に存す。

日出山　ヒデヤマ　川口、蓮田等に存す。福島県耶麻郡猪苗代町九戸、宮城県登米郡登米町五戸あり。

日寺　ヒデラ　高麗郡小瀬戸村字新寺（飯能市）はニッテラと称し、日寺（にってら）と書く。上広瀬村信立寺文書に「高麗郡日寺村百姓加治長重郎」と見え、白子村条に「小瀬戸村の民長十郎は加治氏なり」と見ゆ。

日照田　ヒデリダ　草加に存す。青森県西津軽郡鯵ヶ沢町五戸あり。

日輝　ヒテル　坂戸、東松山等に存す。正訓はヒデリか。

日戸　ヒド　川口、鳩ケ谷等に存す。

肥土　ヒド　賀美郡肥土村（ひど、神川町）は、上野国緑野郡原之郷小林村に接し、武田勝頼定書に「武州小林之内阿久津」と見え、元禄十四年水帳に上野国緑野郡肥土村と見ゆ。大宮、川越、吉川等に存す。

一　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御中間頭・四両二人扶持・肥土又左衛門」。宝永六年松本日記に秩父御代官肥土半太夫。享保八年忍藩軍役帳に「三十五俵二人扶持・肥土左内、二十俵二人扶持・肥土治兵衛、五両二人扶持・肥土治右衛門」。文化四年忍藩分限帳に「無役・百二十石・肥土金次郎」。アクト氏か。

二　秩父郡下吉田村　三峰神社史料集に享和二年下吉田町肥土伊左衛門あり。アクト氏二戸現存す。

三　同郡久長村（吉田町）　明治九年副戸長肥土文作・安政元年生あり。アクト氏四戸現存す。

仁井　ヒトイ　所沢に存す。

一市　ヒトイチ　比企郡玉川郷字一市は古の村名にて、平村慈光寺元禄八年棟札に人市町と見え、文化十五年川越松山巡覧図誌に「人市村、此所六さいに市ありてにぎはしかりしが、近年は坂戸の市繁花して此所の市廃れ、今はさびしき村なり。番匠村の右のかたに玉川村見ゆ」とあり。

美頭　ビトウ　川越に存す。

美藤　ビトウ　与野に存す。

尾藤　ビトウ　各市町村に存す。

一　藤原秀郷流尾藤氏　尊卑分脈に「秀郷六世孫佐藤公清―公澄―知基―知昌―知忠―尾藤五知広―尾藤太知景―左近将監景綱」と。吾妻鑑巻二十七に「寛喜二年正月二十六日、北条泰時の公文所において、武蔵国太田庄内の荒野を新開すべき事、その沙汰あり。泰時の家令尾藤左近景綱入道道然これを奉行す」と見ゆ。

二　入間郡川越町　氷川社明治十七年碑に尾藤平八あり。

三　比企郡出丸本村（川島町）　明治五年戸籍編製に旧名主尾藤喜平次・旧百姓代尾藤吉蔵。釘無村明治十九年馬頭尊に本村尾藤仙造。松山町箭弓神社明治三十一年碑に出丸村尾藤仙蔵・尾藤豊吉あり。四戸現存す。

四　同郡上大屋敷村（川島町）　明治五年戸籍編製に旧組頭尾藤吉重郎あり。現存無し。

備藤　ビトウ

一　足立郡大門宿（浦和市）　当宿に此氏多く存す。大興寺天保七年会田筆子碑に備藤銀蔵・備藤酉蔵・備藤寅松。会田家手習帳に「嘉永四年、当宿備藤熊次郎・十歳。安政三年、当宿備藤民五郎二男関次郎・十四歳」。昭和三年興信録に「大門村・備藤国蔵・所得税六十九円・営業税四十三円」あり。

二　同郡大崎村（浦和市）　太子堂文化元年普門品に当村備藤平蔵。木傘神社明治二十九年碑に備藤覚次郎あり。七戸現存す。

一重　ヒトエ　浦和に存す。

一形　ヒトカタ　久喜に存す。

一言　ヒトコト　浦和、鴻巣、岩槻等に存す。

等　ヒトシ　和光に存す。

一氏　ヒトシ　川口、熊谷等に存す。

一杉　ヒトスギ　川口、大宮、上尾、北本、越谷、狭山、川越、所沢等に存す。神奈川県平塚市二十二戸あり。

一瀬　ヒトセ　川口、吉川等に存す。

一兜　ヒトツカブト　朝霞、川越等に存す。岩手県上閉伊郡大槌町二十四戸あり。

一木　ヒトツギ　大宮に存す。茨城県東茨城郡常北町七戸現存す。

一ツ木　ヒトツギ　横見郡一ツ木村（吉見町）あり。浦和、上尾、蓮田等に存す。茨城県結城市六戸あり。

一鍬田　ヒトツクワタ　千葉県香取郡下総町十戸、成田市六戸あり。

一ツ田　ヒトツダ　所沢に存す。

一橋　ヒトツバシ　狭山、飯能に存す。

一ツ町　ヒトツマチ　大宮に存す。

一松　ヒトツマツ　秩父志に「古道往来は大宮上町の一松と云所より字近戸に至る」と見ゆ。新座に存す。

一ツ谷　ヒトツヤ　葛飾郡惣新田村字一ツ谷（幸手市）は古の村名にて、香取社明和五年鳥居碑に惣新田村一ツ家組と見ゆ。同郡上吉羽村字一ツ谷あり。

一柳　ヒトツヤナギ　浦和、川口、蕨、上尾、新座、川越、所沢、草加、八潮、妻沼等に存す。山形県上山市十二戸あり。イチヤナギ参照。

一ツ柳　ヒトツヤナギ　岩槻に存す。

人見　ヒトミ　榛沢郡人見村（深谷市）は、貞治二年足利基氏の鎌倉法華堂寄進状に武蔵国榛沢郡人見郷と見ゆ、円岡（つぶらおか）条参照。秩父郡上名栗村字人見あり。○栃木県那須郡那須町百二十五戸、西那須野町三十戸、芳賀郡芳賀町二十五戸、黒磯市二百七十戸。○茨城県鹿島郡大洋村四十六戸、神栖町三十八戸、行方郡潮来町二十一戸、結城郡石下町二十戸、千代川村三十五戸、水戸市九十戸。○千葉県香取郡小見川町二十五戸あり。

一　猪俣党人見氏　榛沢郡人見村より起る。小野氏系図に「猪俣野五郎時範―野三貫首忠兼―野太郎忠基―河勾野五大夫政基―人見六郎政経―太郎高経―小太郎忠衡―六郎高行（弟に九郎秀高、十郎行光、三郎実平）―高綱―彦太郎某―四郎入道光行（元弘乱討死）―行氏（元弘乱討死）。太郎高経の弟三郎行経―七郎左衛門尉行景―太郎俊村、弟二郎経氏―六郎経俊（弟に八郎忠経、九郎頼景）。経氏の弟七郎長氏（弟に僧随信、左衛門尉俊行）―又七郎長俊」。「猪俣野太郎忠基の弟岡部六太夫忠綱―三郎太夫清綱―人見三郎清重（平治・敗軍して上洛、路次に於いて誅せらる）」と見ゆ。

二　人見氏の名は、平家物語に「猪俣小平六則綱がしたしう候人見四郎」。吾妻鑑巻十に「建久元年十一月七日、頼朝上洛随兵に人見小三郎」。巻二十五に「承久三年六月十四日、宇治合戦に敵を討つ人々に人見八郎」。太平記巻六に「元弘三年二月、赤坂合戦の事。赤坂の城近く成ければ、本間と二人共馬の鼻を双べて、懸襄り掘の際まで打寄せて、鐙踏張り弓杖突いて大音声を揚て名乗りけるは、武蔵国の住人に人見四郎入道恩阿・生積って七十三、相模国の住人本間九郎資貞・生年三十七、鎌倉を出でしより軍の先陣を懸けて尸を戦場に曝さん事を存じて相向へり。（中略）。本間も人見も元より討死せんと思ひ立たる事なれば、何かは一足も引くべき、命を限りに二人共に一所にて討たれけり」と、幕府北条高時の家臣なり。楠木合戦注文（博多日記）に「正慶二年二月二十二日、楠木城攻めに、猪俣人々正員十一人打死、手負六十余人、其中人見六郎入道・同甥孫二郎入道、主従十四人討死す」と見ゆ。人見村一乗寺五輪塔に「連阿弥陀仏、元徳四年壬申三月十二日」あり、人見四郎音阿の墓と伝へるが、音阿は翌年の元弘三年癸酉三年二月（正慶二年）戦死にて別人なり。同所五輪塔に「建武三年丙子九月四日、沙弥幸照」あり。是等は人見氏累代の墓と呼ばれる墓所にあるが、後年（江戸時代）に丹波国出身の幕臣人見氏が先祖の墓と称して、境内の墓地から古い五輪塔を集めたのであろう。人見村の在名人見氏は苗字にあらず。丹波の苗字人見氏は無関係なり。

三　深谷上杉氏族人見氏　上杉系図に「庁鼻和左馬助憲光―三郎蔵人憲長―六郎憲武（近代武州人見屋形）―左衛門大夫憲勝、弟七郎憲親、弟蔵人大夫定為（法名常悦懌翁）―六郎顕為（法名常円）」。新田族譜・新井氏条に「新井次郎兵衛尉武義（住武州榛沢郡、仕人見屋形上杉六郎憲武）」と見ゆ。風土記稿人見陣屋条に「村の中程二町方の地にて、廻りに掘りの跡存せり。人見氏住居の跡と云ふ。今は陸田及び村民の居住となれり」とあり。猪俣党人見氏住居では無く、上杉氏族人見屋形なり。

四　斎藤氏族人見氏　尊卑分脈に「疋田斎藤越前権介為頼―竹田四郎頼基―四郎基康―前中務丞基重（建保四年死）―勘解由判官基成―左衛門尉基高―左兵衛民部丞基政―左馬允基継―基賢―左衛門尉基胤（四富七郎）」と見ゆ。越前国坂井郡疋田村（福井県金津町）の竹田川流域の竹田村（丸岡町）より起る。中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「竹田。藤原、モン十六葉表菊、藤丸桐、本国山城伏見、斎藤越前守為頼の男・右衛門尉頼基これを称す」とあり。著名なる山城国紀伊郡竹田庄（京都府伏見区）は附会なり。越前国長畝村（丸岡町）に斎藤別当実盛館跡あり、武蔵国幡羅郡妻沼郷へ移住している所を連想して、人見（四富）氏を榛沢郡人見村発祥説とするが附会なり。同系図に「四富。藤姓、斎藤判官基成の六代孫七郎基胤・これを称す」。「人見。本国武州榛沢郡人見郷、モン九曜、鏑矢、斎藤筑後守基高四代基頼の男左衛門尉基胤の子四郎基親・之を称す」と見ゆ。

五　上野国の人見氏　猪俣党人見氏が岩松氏家臣となる。正木文書に「応永頃。五日市庭宿在家年貢注文、一反人見屋敷・銭二百文、三反同所・銭五百文・人見能登殿」と見ゆ。新田郡尾島村下組字五日市場なり。人見氏は現存無し。他の市場は、徳治二年世良田村長楽寺文書に「中今居内、世良田の四日市の北。中今居郷内六日市庭」とあり。

六　常陸国の人見氏　此氏は当国の苗字人見氏にて、多摩郡人見村（東京都府中市）は地名附会なり。安保文書に「応永二十四年三月二十三日、常陸国下妻庄云々、人見雅楽助」。鎌倉大草紙に「嘉吉元年四月、結城被官人見次郎左衛門は、古河城にて討死す」。新編常陸国志に「人見、平氏にて、武蔵の人也（多摩郡に人見村あり）。佐竹昌義下向の時、円座の役にて下る。四郎、五郎と云ふ兄弟の者なり」と見ゆ。

七　丹波国の人見氏　京都府船井郡八木町に六十八戸存し、桑田郡馬路村（京都府亀岡市）に三十五戸存し、近隣に多く存す。古代以来土着の苗字人見氏なり。相模国人見庄発祥説であるが地名は無し。或は上野国碓氷郡人見村（松井田町）や猪俣党人見氏に附会す。馬路村人見氏家譜に「人見氏の遠祖橘諸兄五代の孫・碓氷荒太郎貞光は源頼光に仕う、元貞道と称したるが、頼光より一字を賜わり貞光と改む。治安元年貞光死す、年六十八、碓氷峠の峠町（軽井沢町）に貞光塚今存す。長治元年、碓氷貞雄・源義家公より駿河国富士郡八百貫、信濃国碓氷庄八百貫、相模国人見庄五百貫の地を賜う、是より氏を人見と改め人見四郎と称す、紋所は水に山吹なり。元久元年、人見太郎国貞・源頼雅に随い平家の残党を伊賀伊勢に討つ。正嘉元年、人見次郎貞村・北条時頼を案内して丹波小川庄馬路の月読大明神に参拝す。永享年中、武蔵国住・人見野三兵衛小野姓・基真の一子若名は野三太と号す、当年中、父基真誘引して丹波杉生の郷に来る、その身杉生庄司行秀と由緒あるに依りてなり、基真死して、行秀猶子と為し人見七郎利秀と号す、改姓為橘氏」と見ゆ。

八　幕臣人見氏　丹波国馬路村の苗字人見氏にて、在名の猪俣党人見又七郎長俊の後裔説は附会なり。儒職家系に「小野。人見・本国丹波。家伝に曰ふ、河勾野五郎政基の三男四郎政経・頼朝卿に仕へ、武州人見邑に居り、軍功に依りて感書を政経に賜ひて、人見四郎と記さる。因りて人見氏と称す矣。紋、六瓜、丸に六曜。幕紋、矢之打違、或は方岳。人見四郎政経後胤・長俊（人見又七郎、紀伊守。武勇を以って登用されて、丹波国馬路に居る）、人見東条兵衛道徳―又七郎道嘉（天文十四年戦死）―又七郎道西（寛永六年没、年九十有九）」。寛政呈譜に「藤原氏支流、人見。家紋、六瓜、丸に六曜。寛永系図、九曜と鏑矢をまじへもちふといふ。寛永系図家伝を引て、その先武蔵国人見の郷を領するが故に家号とす。元弘年中北条高時滅亡のゝち領地を失ひ、丹波国馬瀬郡出雲里に住居す。のち東条兵衛尉なるものあり。勢やうやく強大にして同国にをいて土地を領す。道徳にいたりてますます食邑を加ふ。男道加が時、織田信長・明智光秀をして丹波国を略せしむ。こゝにをいて領地をうしなひ、退て洛西嵯峨に閑居す。子孫みな医を以って業とすといふ。今捧げるところの家伝に、小野氏にして河勾野五郎政基が三男四郎政経・頼朝将軍に仕へ、武蔵国人見村に住居し、人見を称す。五代の孫紀伊守長俊武名あり。丹波国桑田郡馬路村に居す。男東条兵衛道徳が時、郷族推て豪長とす。その男又右衛門道嘉・細川晴元に属し、天文十四年三好長慶が兵と戦て討死す。其男又左衛門道西・父戦死のゝち、山城国嵯峨にうつり住すといふ。道徳―道加―道西―友徳（京師に住して儒医を業とす）―賢知（小児科の医を業とす。寛永十八年家綱御生誕により、御薬をたてまつり、これより家綱に付属せらる。七百石を知行す）―宜郷―行充（弟行高へ二百石分地）―美在―美至―在恭（天明六年継、五百石）。賢知の四男篤（寛文元年家綱に拝謁し、番医となり三百俵をたまう）―浩―称（儒者）、弟甚四郎思義（宝暦八年家重子清水重好の近習番となり百俵十口をたまう、時に三十歳。寛政七年重好御逝去により、清水勤番支配の小普請となる）」と見ゆ。武州人見村一乗寺人見氏累代墓地に「人見四郎基堅入道音阿墓・正慶二壬申年二月二日。寛政四年壬子年二月修補・人見四郎の男・人見甚四郎小野思義」とあり。幕臣人見氏は太平記の武蔵国住人人見恩阿とは無関係なり。

九　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「桐之間御番・五両三人扶持・人見平五郎」あり。

一〇　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御徒・六石二人扶持・人見三重次郎」。明治四年忍藩士族名簿に「秩父代官所詰・四両二人扶持・人見此右衛門」あり。

一一　岡部藩安部氏家臣　明治三年岡部藩分限帳に「三人扶持・人見登」。

一二　葛飾郡栗橋宿　八坂社寛政十二年庚申塔に栗橋駅上組人見総右衛門あり。四戸現存す。

一三　足立郡下落合村（与野市）　武蔵志に「下落合村東光寺、人見氏墓所在」と見ゆ。現存無し。

仁見　ヒトミ　大宮、鴻巣、与野、上福岡、所沢等に存す。栃木県小山市十九戸あり。

委文　ヒトリ　大井に存す。シトリ参照。

日名　ヒナ　比奈、日名は古代朝鮮語で田舎の意味。大宮、杉戸等に存す。

比名　ヒナ　川口に存す。

比内　ヒナイ　川口、草加、入間等に存す。青森県南津軽郡平賀町二十九戸、黒石市十五戸、弘前市十七戸あり。

稗苗　ヒナエ　新座に存す。

比奈岡　ヒナオカ　小川に存す。

日中　ヒナカ　古代朝鮮語で比奈は田舎の意味、加は村の意味。渡来人集落を日中、日永と称す。三郷に存す。

樋中　ヒナカ　忍城士にて、成田分限帳に「三十貫文・樋中帯刀左衛門」。

日永　ヒナガ　越谷、妻沼、上里に存す。

一　熊谷町　明治三十五年穀洋物商日永団次郎あり。現存無し。

比永　ヒナガ　狭山に存す。

日名子　ヒナコ　蕨、草加、三郷、春日部、杉戸、新座、入間等に存す。

鄙里　ヒナサト　鶴ヶ島に存す。

日向　ヒナタ　古代朝鮮語で比奈は田舎、田は郡県・村の意味。渡来人集落を日向と称す。幡羅郡日向村（妻沼町）あり。当村増田順一家康安二年十一月日宝篋印塔に六十二名の結衆名あり。全員が当村住人とすれば、当時既に村全域が開発されている。化政期の家数百十六軒、明治九年に九十四軒である。高麗郡高麗本郷字日向（日高市）は古の村名にて、平村慈光寺元禄八年棟札に日向村と見ゆ。小名日向は、埼玉郡上中条村、足立郡西堀村、入間郡寺竹村、糀谷村、上安松村、加佐志村、上野村、高麗郡赤沢村、上広瀬村、下加治村、比企郡笠原村、小川村、中爪村、根岸村、児玉郡上阿久原村、那賀郡湯本村、秩父郡河原沢村、浦山村、上影森村、定峰村、栃谷村、薄村、贄川村等にあり。各市町村に存す。○茨城県真壁郡明野町二十六戸、協和町二十七戸。○山梨県北巨摩郡須玉町四十八戸、長坂町二十戸、都留市六十八戸。○長野県南佐久郡臼田町百十戸。○山形県東田川郡藤島町三十五戸、立川町三十戸。○岩手県岩手郡滝沢村十七戸、九戸郡軽米町十六戸、種市町十九戸、山形村十六戸あり。ヒュウガ参照。

一　島田姓日向氏　幡羅郡日向村より起る。島田氏記録に「建久三壬子年八月十五日、日向弥五郎・記録を書写す」とあり。島田条参照。

二　日向長者　秩父志に「日向ノ里、ヨコゼ。日向長者屋敷は字日向に有り。其跡今二丁も土民の家散居す。此所の東に三門と称る地存せり。札所十番目の上方に古塚二所あり、今一所は穿滅せり。按に庄司の居跡成るべし。古塚は十番観音宝殿背後の上方乾位林側に在りて、按に日向長者の墳にして武光氏なるべし」と見ゆ。武光（ぶこう）、本間条参照。

日当　ヒナタ　戸田、三芳、久喜等に存す。岩手県九戸郡種市町十九戸、大野村二十戸、久慈市四十四戸あり。

日當　ヒナタ　三郷に存す。

雛田　ヒナタ　志木に存す。

日名田　ヒナタ　大宮、戸田、狭山、吉川等に存す。

日南田　ヒナタ　朝霞、三芳、三郷等に存す。

日當瀬　ヒナタセ　狭山に存す。

雛田谷　ヒナタヤ　朝霞に存す。

日並　ヒナミ　蕨、上福岡等に存す。

日南　ヒナミ　三芳に存す。

雛元　ヒナモト　狭山、小川等に存す。

日沼　ヒヌマ　浦和、上尾、戸田、草加、越谷、岩槻、新座、鳩山等に存す。秋田県山本郡八森町六十戸、能代市十九戸あり。

肥沼　ヒヌマ　宮代に存す。

樋沼　ヒヌマ　川口、新座、和光、入間、川越、岩槻等に存す。

一　足立郡新曽村（戸田市）　当村明治十五年碑に樋沼兼吉あり。現存無し。

日根　ヒネ　大宮、志木、三芳、鳩山、岩槻、幸手、吉川等に存す。

一　忍城士の日根氏　成田分限帳に「百貫文・日根飛騨」あり。

日根居　ヒネイ　浦和に存す。

日根野　ヒネノ　川口、蕨、上尾に存す。

日根野谷　ヒネノヤ　浦和に存す。

日埜　ヒノ　越谷に存す。

日野　ヒノ　火は鍛冶神にて、野は助詞なり。渡来人鉱山鍛冶師の集落を火ノ、日ノと称す。多摩郡日野本郷に鎮守日之宮権現社あり、西党日奉氏の氏神にて、タタラの火や太陽神の日祀を行う。秩父郡日野村（荒川村）あり、秩父神社元亨四年十月文書に日野村国光名と見ゆ。出雲国はヒ条参照。○群馬県吾妻郡吾妻町三十六戸。○長野県諏訪郡富士見町十八戸、上伊那郡箕輪町二十七戸。○山形県東村山郡山辺町二十七戸、東田川郡余目町十九戸、山形市五十八戸。○秋田県雄勝郡稲川町四十七戸。○宮城県桃生郡河南町二十八戸、河北町六十戸、桃生町二十四戸、矢本町二十戸、本吉郡志津川町十二戸、志田郡鹿島台町十七戸、遠田郡田尻町十五戸、涌谷町十八戸、登米郡中田町十六戸、石巻市二百戸、気仙沼市五十六戸。○島根県隠岐郡西郷町三十四戸、邑智郡瑞穂町三十二戸、簸川郡大社町二十八戸、斐川町十三戸、大原郡大東町十二戸、加茂町十一戸、飯石郡三刀屋町三十四戸、松江市四十五戸、平田市五十五戸、出雲市百十八戸。○鳥取県西伯郡名和町十五戸、東伯郡関金町十八戸あり。

一　鉢形城士の日野氏　秩父郡日野村より起る。秩父志に「真建城は日野村にあり、日野将監と云ふ者居」。「馬立城、日野二郎三郎持」と。秩父風土記・三山村条に「永禄十三年、北条方の日野次郎三郎は甲州勢と戦ふ」と。風土記稿鉢形城条に「天正十八年、日野次郎三郎は籠城す」と見ゆ。

二　忍城士の日野氏　成田記に「天正十八年下忍口合戦に、日野を頭として七十余人、豊臣方川瀬勢に向う」と。

三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「二百石・日野藤右衛門、高不明・日野弥左衛門」あり。

四　忍藩松平下総守（奥平）家臣　明治四年忍藩士族名簿に「五石二人扶持・日野資光、同高・日野陸次、四石二人扶持・日野桂左衛門」あり。

五　高麗郡清流村（日高市）　明治二十二年織物製造日野清之助あり。二戸現存す。

六　同郡高岡村（日高市）　安政二年高麗家門人帳に上高岡村徳次倅日野季五郎・十一歳あり。二戸現存す。

樋野　ヒノ　各市町村に存す。○宮城県玉造郡岩出山町十四戸。○島根県簸川郡斐川町九十八戸、大社町十五戸、能義郡広瀬町十四戸、松江市二十九戸、平田市四十六戸、出雲市三十九戸あり。ヒ条参照。

比能　ヒノ　富士見、大井等に存す。

飛野　ヒノ　久喜に存す。トビノ参照。

肥野　ヒノ　伊奈、新座、所沢等に存す。長野県駒ヶ根市十六戸あり。

桧野　ヒノ　熊谷に存す。

檜野　ヒノ　川口、大宮、上尾、鳩ケ谷、宮代、三郷等に存す。宮城県加美郡宮崎町三十六戸あり。

日野石　ヒノイシ　坂戸に存す。

樋上　ヒノウエ　埼玉郡樋上村（行田市）あり、日之上とも書く。浦和、川口、北本、鴻巣、越谷、杉戸、川越等に存す。ヒガミ参照。

樋ノ上　ヒノウエ　幡羅郡三ヶ尻村字樋ノ上、下増田村字樋ノ上あり。

日野浦　ヒノウラ　草加、鴻巣等に存す。

日野尾　ヒノオ　狭山に存す。

旭岡　ヒノオカ　日高に存す。岩手県九戸郡大野村十戸、久慈市九戸あり。

日ノ岡　ヒノオカ　上福岡に存す。

日野岳　ヒノオカ　新座に存す。

日野岡　ヒノオカ　比企郡須江村（鳩山町）に七戸現存す。広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑に須江村日野岡文太郎。明治九年須江村副戸長日野岡文太郎・天保十年生。鎌形村八幡社明治十六年筆子碑に須江村日野岡泰良・日野岡粂麿・日野岡秀麿あり。

日小田　ヒノオダ　越谷、宮代等に存す。

日ノ方　ヒノカタ　忍城士にて、成田分限帳に「十三貫文・日ノ方権守」。

桧　ヒノキ　大宮、新座等に存す。鳥取県西伯郡大山町五戸あり。

檜　ヒノキ　越谷、熊谷等に存す。

檜木　ヒノキ　与野、越谷、吉川、寄居等に存す。

桧田　ヒノキダ　上福岡、所沢に存す。

檜谷　ヒノキダニ　越谷、三郷等に存す。島根県益田市十三戸あり。

桧木谷　ヒノキダニ　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「妙蓮・桧木谷」あり。

日野口　ヒノクチ　狭山に存す。青森県十和田市十三戸あり。

樋ノ口　ヒノクチ　葛飾郡樋ノ口村（三郷市）、埼玉郡樋ノ口村（久喜市）、大里郡樋ノ口村（江南町）あり。

樋之口　ヒノクチ　川口、川越、三郷等に存す。

桧前　ヒノクマ　火、日、樋は、火神にて鉱山鍛冶神なり。ヒ条参照。古代朝鮮は熊（こん、くま）と称し、紀元前一〇〇〇年頃、天帝桓因の庶子桓雄は先住民族熊女と結婚して檀君王倹を生んだ。阿羅（百済、伽耶地方）の阿羅（あら）は阿（くま）ノ国である。姓氏録河内諸蕃に「佐良々連、百済国の人・久末都彦（くまつひこ）より出づる也」とあり、久末都彦は阿（くま）ノ国の王なり。熊条参照。日本書紀・神代上に「思兼神、石凝姥を以ちて冶工（かぬち）とし、天香山の金を採りて日矛に作る。又真名鹿の皮を全剥にして、天羽鞴（風を起すフイゴ）に作る。此を用ちて造り奉る神は、是即ち紀伊国に坐します日前神なり」と見ゆ。嘉祥三年十月紀に紀伊国日前国懸大神社あり。名草郡秋月村（和歌山市）の日前神宮である。延喜式に日前神社・国懸神社の二社を載せるが、現在は同一境内にあり。日前神宮の祭神は日前大神を主神として相殿に思兼命・石凝姥命を祀る。思兼命（おもいがねのみこと）は「重い鉄（くろがね）」で、石凝姥命は「鍛冶職を率いた部族長」である。国懸神宮は国懸大神を主神として相殿に玉祖命・明立天御影命・鈿女命を祀る。国懸神はクニカカスカミと呼ばれているが、寛文九年刊本の日本書紀にはカラクニカラノカミと註す。即ち両社は韓国（からくに）の鉱山鍛冶師の奉斎神であり、彼等の渡来地を日ノ前、日ノ熊、桧ノ熊と称す。大和国高市郡桧前郷（明日香村）あり。高市郡は別称今来郡と云う。阿（くま）ノ国の阿耶（あや）は漢（あや）、阿羅（あら）とも称し、新（あら）と書き、新（いまき）と呼んで今木、今来、今城と書いた。漢（咸安地方）からの渡来人を新漢人（いまきのあやひと）と称す。アラ、イマキ条参照。

一　坂上氏族の桧前氏　漢（あや）の国の渡来人集落を桧前郷（明日香村桧前）と唱へ、阿智使主（あちのおみ）を祀る於美阿志神社の境内に漢人の創建した桧隈寺跡あり。坂上系図に「阿智王（応神天皇の御世、本国の乱を避けて、七姓漢人等を率いて帰化す。多姓、是れ桧前調使（ひのくまのつきつかい）等の祖也。高姓、是れ桧前村主（ひのくまのすぐり）の祖也。天皇・其の来志を矜（つつし）め、阿智王を号けて使主と為し、仍りて大和国桧隈郡郷を賜ひて之を居く焉。時に阿智使主・奏して言さく、臣入朝の時、本郷の人民往々離散し、今聞く徧に高麗、百済、新羅等の国に在りと。望み請ふ、使して喚び来らん。天皇即ち使を遣して之を喚ぶ。爾の時阿智王・奏し、今来郡を建つ。後に号を高市郡と改む。而も人・衆く巨多、居地隘狭なり、更に諸国に分置す。摂津、参河、近江、播磨、阿波等、漢人村主・是れ也）」と見ゆ。

二　上毛野氏族の桧前部君　宣化天皇は都を桧前郷に遷して宮号を桧隈盧入野宮と称す。桧隈天皇とも称し、天皇の御名代部を桧前部と称し、上野国の桧前部を支配管掌したのが桧前部君、桧前君である。正倉院文書に「神亀三年計帳、山背国愛宕郡出雲郷雲下里（京都市上京区、北区）、戸主上毛野君族長谷、妻桧前民使首志豆米売」あり。桧前民使首（ひのくまのみたみつかいのおびと）は新漢人の桧前氏の族長であり、配下の桧前部は上野国へ移住し、上毛野君が支配す。古代氏族系譜集成に「豊城入彦命苗裔。忍君（桧前盧入野大宮朝御宇、為膳大部君供奉、故負桧前部君姓）―五百井乃君―樫根乃君―百枝（大化二年任佐位評督）―毛人（佐位郡擬大領）―老刀自。毛人の弟緒足（上野国史生）―緒麻呂―牛甘―虫万呂（那波郡擬少領）―綱主（上野国那波郡人）」。正倉院宝物銘に「天平感宝元年八月、上野国佐位郡佐位郷戸主桧前部黒麻呂、佐位郡司大領桧前部君賀味麻呂」と。佐位郷は伊勢崎市上植木廃寺附近に比定す。神護景雲元年三月紀に「上野国佐位郡人桧前君老刀自に、姓を上毛野佐位朝臣と賜ふ」と。承和十四年十月紀に「上野国那波郡人桧前公綱主に、姓を上毛野朝臣と賜ふ」と見ゆ。

三　土師族の桧熊氏　浅草寺縁起に「むかし、武蔵国宮戸河（すみだがわ）の辺に、兄弟の漁夫あり、名付けて桧熊の浜成、竹成といふ。彼の時の土師の真中知、浜成、竹成は今の三所権現・是れ也」と。浅草寺本尊縁起に「推古天皇の御宇、土師臣中知といへる人、故ありて此の地に流浪し、家臣桧熊浜成、武成と云ふ二人の兄弟附添ふ、云々」と見ゆ。土師（はじ）条参照。延喜式に「武蔵国桧前馬牧」あり。東京都台東区浅草附近に比定す。

四　武蔵国造族の桧前舎人直　宣化天皇の桧隈盧入野宮に仕えた武蔵国出身の舎人を支配管掌したのが桧前舎人直（ひのくまのとねりのあたえ）である。古代氏族系譜集成に「兄多毛比命（武蔵国造）―荒田比乃宿祢―宇志足尼―筑麻呂―蚊手―加志―波留古―桧前舎人直和爾古（西沢、武蔵人）」と見ゆ。武蔵国造族入間宿祢など入間郡を本拠地とする。西沢氏は入間郡高倉村（入間市）に多く現存す。武蔵国造の一族桧前舎人直の本名は西沢氏なり。

五　上総国の桧前舎人直　武蔵国造と同族の海上国造族桧前舎人直が上総国出身の桧前舎人を支配管掌す。兄多毛比命―伊狭知直（海上五狭茅宿祢）―長止呂（上海上国造）の後裔なり。神護景雲元年九月紀に「上総国海上郡人外従五位下桧前舎人直建麻呂に、姓を上総宿祢と賜ふ」と見ゆ。千葉県市原市柿崎古墳附近に比定す。

六　賀美郡の桧前舎人直　延喜式に武蔵国賀美郡に今城青八坂稲実神社、今木青坂稲実荒御魂神社、今城青坂稲実池上神社を載す。渡来人の新漢人が奉斎す。坂上氏族にて子孫は木村氏なり。木村条参照。当郡の桧前舎人を支配管掌したのが武蔵国造一族の桧前舎人直なり。承和七年十二月二十七日条に「武蔵国加美郡散位正七位上勲七等桧前舎人直由加麿男女十人が左京六条に貫附される。土師氏同祖也」と見ゆ。

七　那賀郡の桧前舎人　桧隈盧入野宮に仕えた舎人なり。万葉集巻二十・武蔵国の条に「天平勝宝七年二月、上丁防人那珂郡の人、桧前舎人石前」あり。広木村常福寺伝に「領主桧前舎人石前の創建なり」と。舎人は農民出身の一兵卒であり、領主は彼等を支配した桧前舎人直である。

八　児玉郡の桧前部　新漢人族なり。飯倉村字山崎遺跡（児玉町）より「宝亀二年十月二日、桧前マ名代女（ひのくまべのなしろめ）上寺稲肆拾束、税長大伴国足」銘が出土す。

九　埼玉郡の日前氏　南河原村観福寺石塔婆に「文永二年乙丑二月、宍人氏、藤原氏、佐伯氏、平氏、高□氏、日前氏」の銘あり。

檜前　ヒノクマ　川口、草加等に存す。

日熊　ヒノクマ　狭山に存す。島根県鹿足郡津和野町二十六戸あり。

日隈　ヒノクマ　大宮、上尾等に存す。

火野坂　ヒノサカ　三郷に存す。

日野沢　ヒノサワ　秩父郡日野沢村（皆野町）あり。浦和、北本、川越、八潮等に存す。岩手県二戸市六戸あり。

一　秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳「妙好・ヒノサワ・寛永三年九月」あり。日野沢村住人なり。

日野澤　ヒノサワ　草加、北本に存す。

日下　ヒノシタ　浦和に存す、島根県出雲市十四戸あり。クサカ参照。

樋下　ヒノシタ　所沢、越谷等に存す。

日野杉　ヒノスギ　川口、北本等に存す。岩手県岩手郡玉山村十二戸あり。

日野田　ヒノタ　秩父郡大宮郷字日野田あり、秩父志に「大宮郷戸坂古碑は、日野田の戸坂と云所にあり」と。

樋爪　ヒノツメ　足立郡平柳領樋爪村（川口市）あり。

樋詰　ヒノツメ　足立郡川田谷村枝郷樋詰村（桶川市）あり。同郡芝村字樋詰（川口市）は古の村名にて、文政十三年庚申塔に樋之爪講中と見ゆ。同郡島根村字樋詰、比企郡鳥羽井村字樋詰あり。

日出　ヒノデ　戸田、越谷等に存す。宮城県気仙沼市八戸あり。

日野手　ヒノテ　埼玉郡日野手新田（羽生市）あり、上杉顕定書状に「永正七年六月十七日、太田之庄火ノ手」と見ゆ。同郡黒浜村字日野手あり。

日之出　ヒノデ　昭和三年興信録に「福岡村・日之出伝次郎・所得税百三十二円」あり。現存無し。

日野出　ヒノデ　草加に存す。島根県邑智郡石見町五戸あり。

日戸　ヒノト　浦和、上尾等に存す。岩手県岩手郡西根町十九戸あり。

日畑　ヒノハタ　日高に存す。

日野原　ヒノハラ　○群馬県群馬郡榛名町二十三戸、伊勢崎市二十七戸。○山梨県東山梨郡春日居町二十六戸、牧丘町十一戸。○島根県邑智郡石見町十八戸あり。

一　秩父郡小鹿野町　旧家にて七戸現存す。

日登　ヒノボリ　川口に存す。

日野間　ヒノマ　鴻巣市五戸存す。

一　埼玉郡野村（行田市）　玉松堂入門帳に「文久二年・当所上分日野間谷五郎。明治二年・日野間太郎七応山」あり。一戸現存す。

火ノ見　ヒノミ　茨城県ひたちなか市七戸存す。

日野水　ヒノミヅ　鶴ヶ島に存す。

火宮　ヒノミヤ　浦和に存す。

樋宮　ヒノミヤ　上尾、富士見に存す。

日野宮　ヒノミヤ　三郷に存す。

日本　ヒノモト　秩父に存す。

日野谷　ヒノヤ　秩父に存す。

日橋　ヒハシ　入間に存す。

日花　ヒハナ　富士見、児玉等に存す。

檜鼻　ヒハナ　所沢に存す。

檜林　ヒバヤシ　所沢に存す。

日原　ヒハラ　各市町村に存す。山梨県東山梨郡三富村八十戸、塩山市六十六戸、山梨市四十四戸、甲府市三十八戸あり。

樋原　ヒハラ　志木、新座等に存す。島根県松江市十三戸あり。

檜原　ヒハラ　戸田、春日部等に存す。栃木県塩谷郡高根沢町二十戸あり。

雲雀　ヒバリ　越谷、三郷、吉川に存す。秋田県仙北郡角館町二十九戸あり。

日比　ヒビ　各市町村に存す。神奈川県茅ヶ崎市五十九戸、鳥取県岩美郡岩美町七戸あり。

比々　ヒビ　男衾郡富田村（寄居町）大日堂大日如来像銘に「天正三年十二月十五日、武州男衾郡富田郷住人・比々為衛門」あり。現存無し。

日比生　ヒビオ　吉川に存す。

日疋　ヒビキ　嵐山に存す。

枇々木　ヒビキ　所沢に存す。

響庭　ヒビキニワ　昭和三年興信録に「尾間木村（浦和市）・響庭喜蔵・所得税三十六円」あり。現存無し。

響谷　ヒビキヤ　埼玉郡大間野村（越谷市）三社大神社安永四年水鉢に響谷覚右衛門・響谷孫兵衛、天明三年水鉢に響谷武治右衛門あり。三戸存す。

日比田　ヒビタ　多摩郡日比田村あり、明治十三年に入間郡（所沢市）に編入す。

日比出　ヒビデ　松山城士にて、落城後に会津藩上杉氏に仕える。慶長六年八月米沢移封以前の会津上杉配下禄高表（小鹿野町吉田文書）に「吉田新左衛門組、百石・松山衆日比出出雲」あり。

日々野　ヒビノ　春日部に存す。

日比野　ヒビノ　各市町村に存す。群馬県館林市二十三戸、神奈川県南足柄市七十戸あり。

日尾野　ヒビノ　所沢に存す。

響谷　ヒビヤ　浦和、大宮、川口に存す。

日々谷　ヒビヤ　浦和に存す。

日比谷　ヒビヤ　榛沢郡榛沢村（岡部町）大寄八幡社文久元年水鉢に日比谷与右衛門・日比谷常八.。経蔵院文久二年筆子碑に日比谷林平・日比谷和蔵。明治十一年副戸長日比谷利造あり。四戸現存す。

比々羅木　ヒビラキ　戸田に存す。

上別府　ビフウ　富士見に存す。

一二三　ヒフミ　蕨、戸田、志木、入間等に存す。

樋堀　ヒボリ　葛飾郡樋堀村（春日部市）あり。

日前　ヒマエ　鴻巣に存す。

日巻　ヒマキ　与野、熊谷等に存す。

日俣　ヒマタ　浦和、東松山等に存す。

日奉　ヒマツリ　朝廷で行われる太陽神の祭祀を司る職を日奉、日祀と云う。敏達天皇は大和国十市郡磐余訳語田（桜井市戒重）に宮を造営して他田宮と云う。訳語（おさ）は朝鮮語の通訳の意味で、是等職人の集落を訳語田（おさだ）、他田（おさだ）と云う。敏達天皇が天照大神を祀り奉る為に設けた品部を日奉部と云う。敏達紀に「日祀部、私部を置く」と見ゆ。天平二年大倭国正税帳城上郡条に「他田神戸」と見え、延喜式城上郡条に「他田坐天照御魂神社」と見ゆ、戒重の春日神社に比定す。他田宮に仕へる日奉部を他田日奉部と云う。また、日奉の職業をもち、且つ敏達天皇の舎人部を日奉舎人部と云う。

一　他田日奉部直　下総国海上郡（千葉県海上郡海上町、銚子市附近）出身の他田日奉部を支配管掌したのが武蔵国造と同族の下海上国造他田日奉部直である。他田日奉直ともあり。正倉院天平二十年文書に「謹んで解す、海上郡大領司として、仕へ奉る事、申し謂ふ、中宮舎人左京七条人従七位下海上国造他田日奉部直神護が、下総国海上郡大領司に仕へ奉らむと申す故は、神護が祖父小乙下忍は難波朝廷（孝徳天皇）に小領司に仕へ奉りき。父追広肆宮麻呂は飛鳥朝廷（天武天皇）に少領司に仕へ奉りき。又外正八位上を給ひて、藤原朝廷（文武天皇）に大領司に仕へ奉りき。兄外従六位下勲十二等国足は、奈良朝廷に大領司に仕へ奉りき。神護が仕へ奉る状は、故兵部卿従三位藤原卿に位分資人として、養老五年より始め、神亀五年に至る十一年。中宮舎人として、天平元年より始め、今二十年に至る、合せて三十一歳。是を以て祖父父兄らが仕へ奉りける次に在るが故に、海上郡大領司に仕へ奉らんと申す」と見ゆ。古代氏族系譜集成に「兄多毛比命（武蔵国造）―伊狭知直（海上五十狭茅宿祢）―久都伎（応神朝、定賜下海上国造。他田日奉直祖）。其の後裔・他田日奉直春岳―清近―大領宗益―郡司宗綱（平忠常乱抽功）―郡司大夫宗清―新大夫宗友―兵衛尉友忠―太郎友兼―橘川太郎右衛門尉宗兼（賜海上郡橘川庄地頭）」と。和名抄に下総国海上郡橘川郷と見ゆ、比定地未詳。下総国立花郷は正和二年文書に「橘庄、号東庄」とあり、香取郡東庄町より銚子市附近なり。万葉集巻二十・下総国の条に「海上郡海上国造他田日奉直得太理」。延暦四年四月紀に「正六位下海上国造他田日奉直徳刀自に外従五位下を授く」。仁和元年閏三月十九日紀に「下総国海上郡大領外正六位上海上国造他田日奉直春岳に外従五位下を借す。百姓に代りて、調庸を済するを以って也」と見ゆ。

二　多摩郡の日奉氏　前項と一族にて、古代氏族系譜集成に「他田日奉直春岳―清近―大領宗益、弟宗長（郡司判官代、右馬允）―宗頼（内舎人、万寿二年三月補武蔵国多摩郡牧監。西党の祖）」と見ゆ。武蔵七党の西党を称す。西氏系図に「高魂命（日奉氏祖神也）」。武蔵七党系図に「西党、日奉氏連、高魂命後胤也。宗頼―宗親―宗忠（西）」と。姓氏録に「日奉連。高魂命の後也」とあり、連姓は大伴氏族にて、是に仮冒す。

三　日奉舎人部　下総国葛飾郡大島郷養老五年戸籍（杉戸町）に「孔王部□□□の甥日奉舎人部真島」あり。アナホベ条参照。

四　豊島郡の日奉氏　和名抄に豊島郡日頭郷を比乃度と註す。新宿区新小川町と文京区後楽の神田川に白鳥橋あり、昔は白鳥池と云う大きな池があったと云う。日頭郷の白鳥神社は池の附近にあったか。風土記稿豊島郡上駒込村（豊島区）条に「妙義社は白鳥社と号す。白鳳二年官人日奉部年雄・下向して祀りを奉せしと云ふ。按に武蔵風土記豊島郡日頭白鳥神社・白雉二年辛亥五月所祭日本武尊也。白鳳は白雉の誤りにて、此風土記に拠て設し説ならん。神職昔は日奉氏小膝太郎とて西党の族なり。管領家の頃は南党と称し、又南一揆ともいえり。戦争の世、姓名を変して稲葉左衛門と改む」と見ゆ。日奉部の後裔にて、西党に附会す。

五　秩父郡の日奉氏　丹治党熊谷氏は、大私市部とも云う。敏達紀の「日祀部、私部を置く」とあるにより、熊谷氏を日奉氏と称したか。白崖和尚語録に「武の秩父郡日奉氏直俊（玄即居士）云々」。風土記稿秩父郡田村郷（秩父市）条に「円福寺の開基は、日奉氏熊谷金吾直俊・法諡は心印玄即、応永二十年八月七日化す。由緒詳ならず、苗裔のもの村中近郷にこれを聞かず」と。熊谷氏は在名にて、本名に復姓して土着したか。

日廻　ヒマワリ　伊奈に存す。

日美　ヒミ　三芳に存す。　

氷見　ヒミ　浦和、大宮、川口、草加、狭山、所沢、川越、久喜等に存す。

日水　ヒミヅ　浦和、大宮、上尾、伊奈等に存す。

日峰　ヒミネ　比企郡玉川郷春日社明治四十年碑に地家・日峰慈恭あり。五戸現存す。

日向　ヒムカイ　青森県三戸郡田子町二十二戸あり。ヒウガ、ヒナタ、ヒュウガ参照。

一　与野町　円乗院寛文五年供養塔に与野町日向弥次右衛門、元禄十三年地蔵尊に日向彦兵衛。氷川社元文四年御神燈に日向彦七あり。一戸存す。

日昔　ヒムカシ　白岡に存す。

日村　ヒムラ　大宮、鳩ケ谷、朝霞、越谷等に存す。青森県南津軽郡田舎館村十戸あり。

披村　ヒムラ　三郷に存す。

樋村　ヒムラ　浦和、大宮、伊奈、飯能、江南等に存す。長野県小県郡丸子町十三戸あり。

桧村　ヒムラ　川口、毛呂山等に存す。

檜村　ヒムラ　久喜に存す。

氷室　ヒムロ　幡羅郡下増田村（熊谷市）に氷室明神社あり。伊奈、和光、川越、宮代、鷲宮、熊谷等に存す。

樋室　ヒムロ　浦和に存す。

姫井　ヒメイ　本庄、春日部等に存す。

一　川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「妙真・ヒメイ・辰年九月」あり。

姫岩　ヒメイワ　大宮、幸手等に存す。

姫川　ヒメカワ　戸田に存す。

姫路　ヒメジ　入間郡寺竹村（入間市）は、金子郷桂庄ヒメジの里に属すと云う。大宮、上尾、富士見等に存す。新潟県村上市八戸あり。

姫島　ヒメジマ　志木に存す。

姫嶋　ヒメジマ　大宮、所沢等に存す。

姫沼　ヒメヌマ　浦和、川口、越谷等に存す。

姫野　ヒメノ　各市町村に存す。

姫原　ヒメハラ　所沢に存す。

姫本　ヒメモト　吉川に存す。

肥本　ヒモト　新座に存す。

樋元　ヒモト　浦和、桶川等に存す。

樋本　ヒモト　蕨、上尾、川越に存す。

桧物　ヒモノ　狭山に存す。

檜物　ヒモノ　上尾、吹上、所沢、三郷等に存す。

日森　ヒモリ　与野、戸田、蓮田、川越等に存す。

桧森　ヒモリ　大宮、上尾、深谷等に存す。秋田県山本郡八竜町九十四戸、能代市十八戸あり。

檜森　ヒモリ　各市町村に存す。

日諸　ヒモロ　川口、鳩ケ谷、草加等に存す。秋田県山本郡八竜町三十七戸、能代市十二戸あり。

比屋　ヒヤ　富士見に存す。

冷岡　ヒヤオカ　蕨、越谷等に存す。

日焼　ヒヤキ　白岡に存す。

百済　ヒャクサイ　大宮、上尾、与野等に存す。クダラ参照。

百田　ヒャクタ　新座、川越、熊谷等に存す。

百武　ヒャクタケ　各市町村に存す。

百束　ヒャクヅカ　幸手に存す。

百塚　ヒャクヅカ　大井、越谷、三郷等に存す。

百冨　ヒャクトミ　熊谷に存す。

百留　ヒャクトメ　朝霞に存す。

百名　ヒャクナ　浦和、大宮、朝霞、新座等に存す。

百成　ヒャクナリ　大宮に存す。

百花　ヒャクバナ　蕨、上里等に存す。

百間　ヒャクマ　川口に存す。

百村　ヒャクムラ　桶川に存す。

百本　ヒャクモト　本庄に存す。

比屋定　ヒヤサダ　戸田に存す。

美谷島　ビヤシマ　鶴ヶ島に存す。

百海　ヒャッカイ　所沢に存す。

百軒　ヒャッケン　川越に存す。

百石　ヒャッコク　浦和、川越等に存す。

火山　ヒヤマ　川口に存す。

日山　ヒヤマ　榛沢郡末野村字日山（寄居町）は古の村名にて、乙千代判物（逸見文書）に「今度高松自桧山罷出候面々」と見ゆ。川口、大宮、所沢、三郷、庄和等に存す。岩手県九戸郡軽米町二十八戸あり。

桧山　ヒヤマ　各市町村に存す。○山形県東田川郡余目町十四戸。○秋田県男鹿市四十八戸。○青森県上北郡天間林村十一戸、中津軽郡西目屋村十六戸あり。

檜山　ヒヤマ　各市町村に存す。○栃木県那須郡烏山町二十八戸、塩谷郡氏家町三十五戸、高根沢町二十六戸、芳賀郡茂木町百八戸。○茨城県那珂郡那珂町百戸、東茨城郡御前山村三十戸、茨城町二十戸、大洗町四十三戸、常北町三十八戸、西茨城郡友部町三十戸、常陸太田市七十五戸、水戸市百七十戸あり。

肥山　ヒヤマ　戸田に存す。

旭山　ヒヤマ　杉戸に存す。

樋山　ヒヤマ　各市町村に存す。○栃木県那須郡烏山町三十八戸、塩谷郡氏家町十戸。○新潟県南蒲原郡中之島町二十二戸、燕市三十六戸あり。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「小姓頭・三百石・樋山十郎」あり。

美山　ビヤマ　秩父に存す。

冷水　ヒヤミヅ　浦和、大宮、上尾、新座、岩槻、加須等に存す。青森県三戸郡南郷村十戸、八戸市十四戸あり。

冷牟田　ヒヤムタ　本庄に存す。

樋遣川　ヒヤリカワ　埼玉郡樋遣川村（加須市）あり。

日向　ヒュウガ　山梨県西八代郡下部町三十八戸、甲府市四十戸あり。ヒウガ、ヒナタ、ヒムカイ参照。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「二十俵・日向門左衛門」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「外科・六両二人扶持・日向忠益」あり。

三　葛飾郡藤塚村（春日部市）　香取社江戸末期御神燈に日向七三郎・日向孫四郎・日向喜助・日向常七.。明治三十年人名録に日向又左衛門・嘉永二年生。昭和三年興信録に「豊野村・日向孫右衛門・所得税十四円」あり。九戸現存す。

四　同郡銚子口村（春日部市）　明治七年質屋日向久右衛門あり。現存無し。

五　埼玉郡平戸村（熊谷市）　願宗寺寛政十年供養塔に日向武左衛門母。明治六年富士講着到帳に平戸村日向末松あり。七戸現存す。

六　熊谷町　賢勝院明治十四年妙法講碑に鎌倉町日向茂兵衛。明治三十五年煙草砂糖穀商栗原屋日向源左衛門・乾物商平塚屋日向松五郎。昭和三年興信録に「熊谷町・日向英次郎・所得税五十四円、日向源左衛門・所得税三十九円」あり。

七　幡羅郡東方村（深谷市）　熊野社明治三十年碑に日向謎作・日向松蔵あり。一戸現存す。

八　寄居町　明治三十五年飲食店日向勘介あり。現存無し。

九　児玉郡児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に日向源八、明治二十三年御嶽講碑に日向歌吉あり。一戸現存す。

一〇　同郡本庄町　安養院文久二年供養塔に日向仙右衛門盛明（百姓代、中町堺屋）。明治四年諸井文書に台町日向僊四郎。明治二十三年衆議院議員選挙人名簿に日向保平・納税四十九円、日向豊太郎・納税二十五円。明治二十四年本庄町会議員日向周三郎。昭和三年興信録に「本庄町・日向鷹・所得税五十六円・営業税二十五円」あり。

一一　同郡東富田村（本庄市）　当村に此氏多く存す。石川流木村源蔵（天保十年生）門人に東富田村日向要蔵。見福一丁目明治十六年浅間大神碑に日向辰次郎、明治二十八年庚申塔に日向光志あり。

日向寺　ヒュウガジ　鳩ケ谷、鴻巣、狭山、行田等に存す。茨城県鹿島郡旭村十二戸、大洋村二十二戸、鹿嶋市百八戸あり。

日向野　ヒュウガノ　所沢、越谷、三郷等に存す。ヒガノ参照。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御中小姓・八石二人扶持・亡養父多兵衛・日向野多兵衛・六十歳」あり。

兵　ヒョウ　大宮、川越、庄和に存す。

兵恵　ヒョウエ　大宮に存す。

兵衛　ヒョウエ　小川に存す。

兵賀　ヒョウガ　川口、朝霞、川越等に存す。

氷海　ヒョウカイ　久喜に存す。

俵川　ヒョウカワ　上尾に存す。

俵木　ヒョウキ　川口、上尾、草加、宮代等に存す。新潟県中頸城郡大潟町二十戸あり。

俵口　ヒョウクチ　越谷に存す。

兵庫　ヒョウゴ　浦和、川口、白岡、朝霞、入間、狭山、所沢、草加、妻沼、小川、深谷等に存す。

兵後　ヒョウゴ　新座に存す。

兵庫谷　ヒョウゴヤ　川越に存す。

兵主　ヒョウズ　兵主神は暴風雨神の性格をもつ中国の兵主神に似ていることから、猛威をふるう風神であったという。蹈鞴（たたら）の風を送る鞴（ふいご）で鍛冶神にて、穴師村は鉱山師集落である。兵主神社は但馬国及び隣国に多く鎮座し、新羅渡来人の天日鉾命が韓鍛冶を率いて土着す。埼玉郡七左衛門村（越谷市）の兵主大沼明神社は、延喜式の大和国城上郡穴師坐兵主神社（桜井市穴師）を勧請す。

表田　ヒョウダ　大宮に存す。

兵田　ヒョウダ　深谷に存す。

一　葛飾郡天神島村（幸手市）　和戸村宇宮神社明治二十二年御嶽碑に天神島村兵田忠吉あり。現存無し。

俵谷　ヒョウタニ　草加に存す。

兵地　ヒョウチ　川越に存す。

俵頭　ヒョウドウ　吉川、杉戸に存す。

俵藤　ヒョウドウ　浦和、川口、春日部、越谷等に存す。栃木県那須郡西那須野町六戸あり。

兵頭　ヒョウドウ　各市町村に存す。

兵東　ヒョウドウ　川越、小川に存す。

兵道　ヒョウドウ　蓮田、坂戸に存す。

兵動　ヒョウドウ　狭山、越谷に存す。

兵藤　ヒョウドウ　各市町村に存す。○群馬県利根郡昭和町十五戸、勢多郡赤城村四十六戸、北群馬郡子持村十八戸。○栃木県安蘇郡田沼町十八戸、佐野市三十六戸。○宮城県栗原郡築館町二十三戸。○山形県飽海郡八幡町二十七戸、酒田市三十五戸。○秋田県由利郡象潟町十九戸。○青森県南津軽郡藤崎町十二戸あり。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十三俵二人扶持・兵藤八平」あり。

二　岩槻町　浄源寺享和元年水鉢に兵藤政右衛門あり。現存無し。

表野　ヒョウノ　狭山に存す。

屏風　ビョウブ　葛飾郡屏風村（杉戸町）あり。

兵平　ヒョウベイ　越谷に存す。

兵間　ヒョウマ　川越に存す。

兵本　ヒョウモト　川越に存す。

兵連　ヒョウレン　浦和に存す。

日吉　ヒヨシ　神奈川県足柄上郡山北町十三戸あり。

一　足立郡小敷谷村（上尾市）　当村元禄九年庚申塔に日吉寅右衛門。明治九年副戸長日吉惣右衛門・天保三年生。小泉村八合神社明治三十四年幟碑に日吉三次郎・日吉春三郎・日吉善助・日吉清五郎・日吉甚太郎・日吉盛三郎あり。十六戸現存す。

二　入間郡川越町　氷川社明治三十三年玉垣碑に日吉五郎兵衛（菓子舗四ツ橋）あり。一戸現存す。

三　同郡今成村（川越市）　風土記稿今成村条に「日吉屋敷あり。日吉は当所を開墾せし人なりと云ふのみにて、其伝の詳なることを知らず。想ふに月吉と対して日吉と号する時は、共に其人の号にして別に姓名有しなるべけれど今より考ふべからず」と見ゆ。現存無し。神田参照。

日好　ヒヨシ　浦和に存す。

比予森　ヒヨモリ　浦和に存す。

比豫森　ヒヨモリ　浦和に存す。

日和　ヒヨリ　浦和に存す。

平　ヒラ　百済・伽耶地方の古名を阿耶（あや）、阿羅（あら）と称す。阿はクマとも称し、阿（くま）ノ国、熊（くま）ノ国、肥（くま）ノ国と云う。肥ノ国は別名を肥（ひ）ノ国、火ノ国、日ノ国と云う。ヒは火神にて鉱山鍛冶神なり。金、即ち鉄（くろがね）の産出する国を火ノ国と云い、王族を始め住民の多くは金（きむ）氏である。国は羅と称し、火羅、日羅、肥羅の渡来人は佳字の平（ひら）を用いる。二字の制度により平井、平江とも称す。ヒ、ヒノクマ、アヤ、クマ条参照。浦和、与野、戸田、草加、朝霞、新座、入間、熊谷等に存す。タイラ参照。

比良　ヒラ　浦和、桶川、北本、菖蒲、春日部、鷲宮、狭山等に存す。

平井　ヒライ　渡来人集落を称す。平条参照。幡羅郡玉井村字平井あり。○群馬県藤岡市五十四戸、高崎市百十戸。○神奈川県足柄下郡真鶴町三十六戸。○山梨県北巨摩郡長坂町四十四戸、大泉村三十二戸、大月市百四戸、都留市百十六戸。○長野県上水内郡牟礼村二十戸。○新潟県北魚沼郡守門村二十九戸、見附市五十三戸。○宮城県柴田郡柴田町二十一戸。○青森県南津軽郡浪岡町二十戸、青森市七十五戸。○島根県大原郡加茂町二十二戸、松江市五十五戸。○鳥取県岩美郡岩美町四十六戸、鳥取市九十五戸あり。

一　平姓平井氏　上野国緑野郡平井村（藤岡市）より起る。秩父秘話（大西シゲ著）に「我家の先祖は、桓武天皇の子神野親王・別名恵多羅親王（嵯峨帝、即ち初代平井大衛門）であり、上州緑野郡平井村に来り住み、平井大衛門は秩父妙見大菩薩として秩父神社に祭られ、関八州より崇められた、即ち関東平氏の祖である。一門秩父重忠は平井大衛門代々の家で育った」と。嵯峨天皇の家司平井大衛門屋敷は秩父神社の北西にあり、東方に小名神野台あり。秩父氏の本名か。秩父条七項、畠山条六項参照。

二　河原党平井氏　武蔵志に「河原氏古文書に云。治承四年三月、惣侍列位・平井三郎次、是は河原太郎家の武家法令也」と見ゆ。

三　御嶽城士の平井氏　児玉郡御嶽城主長井氏系図に「長井斎藤左衛門実治（天文六年卒。平井兵太と熊谷新八論争、兵太之猶子兵作・士卒を相具し新八を殺す。故に実治は彼所馳向ひ兵太・兵作を討取る）」と見ゆ。

四　羽生城士の平井氏　埼玉郡大松村栄広山由緒著聞書に「永正十七庚辰十月、新方領主新方氏の臣石川兵部左衛門といふもの、先年羽入の峰合戦の刻平井万勝民部少輔を組討して、太田殿の称美を蒙りたる」と。

五　忍城士の平井氏　簑沢一城根元亡落記に「忍城主成田下総守氏長の臣平井左馬之助」。成田記に「成田氏長の妾島根の父平井大隈、其の子平井源三郎」と見ゆ。

六　鉢形城士の平井氏　鉢形分限帳に「本国信州飯山・平井将監」あり。長野県水内郡飯山村に十六戸存す。

七　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御医師・十人扶持・平井立三」あり。

八　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十七俵二人扶持・平井伊平、十四俵二人扶持・平井兵吉、同高・平井忠三郎、八両二人扶持・平井巳之衛、七両余二人扶持・平井市太郎、同高・平井清」あり。

九　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊格・八石二人扶持・松江名跡・平井綱治・二十歳」あり。

一〇　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御中小姓・五十俵四人扶持・平井甚之丞、御歩行組頭・三十俵二人扶持・平井五太夫」。享保八年忍藩軍役帳に「四両余二人扶持・平井喜兵衛」。文化四年分限帳に「御馬廻・百二十石・平井忠之丞」あり。

一一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御儒者・百五十石・平井豊三郎、御納戸・百石・平井一学、吟味役・六十六石余・平井八十右衛門、町方・十五人扶持・平井文四郎、御馬廻・在江戸・十人扶持・平井金作、御小姓・十二両三人扶持・平井輔之進、金預り・十石二人扶持・平井円蔵、御勘定方・二人扶持・平井直之助」。明治四年忍藩士族名簿に「百五十石三人扶持・平井嘉太郎、六十六石余・平井尚寿、同高・平井一学、七石二人扶持・平井正」あり。

一二　岡部藩安部氏家臣　慶応四年岡部藩分限帳に「御近習・九人扶持・平井文次郎」あり。

一三　葛飾郡番匠免村（三郷市）　信州善光寺本堂北嘉永六年常夜燈に葛飾郡二郷半領番匠免村平井権右衛門。明治三十年人名録に平井清蔵・文久二年生・地租二十五円あり。五戸現存す。

一四　同郡広島村（吉川市）　稲荷社天明四年水神宮碑に広島村平井伊吉、明治四年幟碑に平井伊右衛門。当村慶応三年馬頭尊に平井桂蔵・平井治右衛門。明治九年副戸長平井治右衛門・天保四年生、副戸長平井伊右衛門・天保二年生。明治三十年人名録に平井泰助・慶応三年生・地租二百九十円あり。九戸現存す。

一五　同郡吉屋村（吉川市）　香取社天保三年庚申塔に吉谷村平井瀧五郎あり。現存無し。

一六　同郡平方新田（吉川市）　吉屋村香取社天保三年庚申塔に平方新田平井万蔵あり。現存無し。

一七　同郡中井村（吉川市）　御嶽社明治十三年御神燈に平井忠助あり。現存無し。

一八　同郡下赤岩村（松伏町）　蓮福寺寛政十年碑に岩尾邑平井紋兵衛あり。現存無し。

一九　同郡杉戸町　河原町稲荷社明治十五年御神燈に横町平井甚五郎（鍛冶屋）。清地村八幡社明治三十年狛犬にスギト平井新吉（菓子商）あり。

二〇　同郡下高野村（杉戸町）　高野村誌稿に「下高野村稲荷神社は平井家の産土神にして、其由緒書は平井勘右衛門の後なる平井竹四郎が家に伝ふ。其書に依れば、万治二年二月建立平井三郎右衛門政長、元禄二年九月再建平井吉兵衛政利とあり。明治の末年平井新三郎の所管となれり」と見ゆ。永福寺宝暦六年宝篋印塔に平井治右衛門、天保十一年庚申塔に平井金左衛門・平井仙蔵。佐内新田御所宮寛政五年稲荷碑に平井源左衛門。百間村青林寺寛政十年文書に下高野村平井多七.。厳島社文政五年庚申塔に下高野村内小谷堀株平井梅五郎。木々子神社天保四年供養塔に平井仙蔵・平井伝蔵・平井源五郎・平井金右衛門・平井勘右衛門・平井勘之丞・平井新五郎・平井定七.。和戸村宇宮神社明治二十二年御嶽碑に下高野村平井万次郎。明治三十年人名録に平井勇八・嘉永五年生・地租二十円、平井喜兵衛・嘉永五年生あり。十八戸現存す。

二一　同郡幸手町　明治二十一年新道工事寄附者平井塘蔵。幸宮神社明治三十三年幟碑に平井新吉。明治三十五年穀薬商味噌屋平井くら・大工職平井貞蔵あり。

二二　同郡権現堂村（幸手市）　明治十二年文書に平井喜久弥。熊野社明治三十四年碑に平井鍋吉あり。

二三　同郡栗橋町　明治三十年人名録に荒物陶器商花屋平井勝右衛門・安政元年生あり。

二四　同郡河原代村（栗橋町）　狐塚村鹿島社嘉永四年御嶽碑に河原代村平井忠蔵。幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に河原代平井七郎兵衛あり。五戸現存す。

二五　同郡小右衛門村（栗橋町）　幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に小右衛門・平井要蔵あり。五戸現存す。

二六　同郡中里村（栗橋町）　下香取社宝暦五年庚申塔に平井佐右衛門・平井長左衛門あり。現存無し。

二七　同郡八甫村（鷲宮町）　鷲宮村霊樹寺文書に「八甫村。寛永四年検地一町二反六畝九歩・惣左衛門、平井吉右衛門地・峰文左衛門へ渡る。七反七畝歩は平井惣左衛門地寛文四年より吉右衛門取候を正徳年中峰文左衛門取添成る。光厳寺過去帳、宗帰龍吟信士・本郷ノ平井四郎右衛門也・寛文十二年七月二十九日」。千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に八甫本郷平井亀蔵。明治三十年人名録に藍玉製造業平井惣兵衛・弘化四年生あり。二戸現存す。

二八　埼玉郡越ヶ谷宿　越ヶ谷瓜の蔓（福井文書）に「平井小左衛門義は、享保以後参州より来り居、酒屋渡世いたし、安永年中より盛に相成申候」。大門宿文政十一年会田文書に越ヶ谷惣代平井小左衛門あり。

二九　同郡粕壁宿　東八幡社文化十三年御神燈に平井惣左衛門、天保十三年御神燈に平井善兵衛。春日部八幡社天保十三年御神燈に平井宗左衛門、明治三十二年御嶽碑に平井吉蔵あり。

三〇　同郡江ヶ崎村（蓮田市）　久伊豆社文久三年水鉢に平井良輔あり。現存無し。

三一　同郡久喜町　明治四年久喜新町五人組帳に平井勘左衛門。明治三十五年飲食店平井六左衛門・糸繭商平井定吉・穀新聞商平井啓吉あり。

三二　同郡上早見村（久喜市）　明治五年組頭平井源吉あり。現存無し。

三三　同郡岩槻町　明治三十五年料理店新木村屋平井てい・平井要作あり。

三四　同郡下栢間村（菖蒲町）　上栢間村神明社文政十一年太子講碑に平井安左衛門。下栢間村諏訪社嘉永三年水鉢に平井紋兵衛。六戸現存す。

三五　同郡上崎村（騎西町）　竜興寺寛政四年庚申塔に平井小平次。雷電社安政四年御神燈に平井義平治あり。現存無し。

三六　同郡不動岡村（加須市）　明治三十五年提灯商平井利三郎あり。四戸現存す。

三七　同郡下谷村（加須市）　八幡社慶応三年幟碑に平井甚之丞、岩瀬・平井角左衛門・平井市右衛門あり。五戸現存す。

三八　同郡樋遣川村（加須市）　浅間社嘉永七年仙元碑に北瀬田和・平井三行、明治十二年鳥居碑に北瀬田和・平井政蔵あり。三戸現存す。

三九　同郡北篠崎村（加須市）　熊野社天保十五年狛犬に平井弥兵衛あり。二戸現存す。

四〇　同郡南大桑村（加須市）　大福寺文政十三年地蔵尊に上鳩山・平井甚兵衛あり。三戸現存す。

四一　同郡花崎村（加須市）　鷲宮社天保四年水鉢に平井岩次郎・平井紋蔵・平井平六、明治二十六年伊勢講碑に平井彦次郎・平井玄脩（医師）あり。六戸現存す。

四二　同郡琴寄村（大利根町）　明治四年主税新田組惣代平井三左衛門。浅間社明治三十六年絵馬に平井三五郎あり。三戸現存す。

四三　同郡細間村（大利根町）　道目村鷲大神明治十二年浅間碑に細間村平井政蔵あり。現存無し。

四四　同郡中新井村（大利根町）　栗橋宿八坂社文化元年供養塔に川辺領中新井村平井伴右衛門。旗井神社日露戦役碑に平井桃三郎。二戸現存す。

四五　同郡弥兵衛村（大利根町）　風土記稿弥兵衛村条に「当村古へ平井外記と云者、飯積村より当所に来り開発し、其子弥兵衛もともに開発のことを司りしより村名となりしと云ふ。また外記新田も同人の開発なりと云ふ」。鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に弥兵衛村平井弥兵衛。明治九年戸長平井善六・嘉永二年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に弥兵衛村平井善六あり。一戸現存す。

四六　同郡飯積村（北川辺町）　祖先は源頼光輩下の平井政麻呂の後裔にて、頼政が宇治合戦で敗れてからは数代にわたって流浪し、頼政を祀る古河に至り飯積村に土着すと伝へる。摂津源氏の頼光四天王の一人平井保昌は大納言藤原元方の子致忠、其子保昌にて、摂津国河辺郡平井村（兵庫県宝塚市）より起る在名にて苗字にあらず。平井家系譜に「平井稲葉（稲泉道栄居士・文禄二年没）―伊豆（平安浄貞信士・慶長十三年没）―佐渡（源誉路安信士・寛永十七年没）―外記（信誉浄金信士・正保四年没）―太郎左衛門（全冬安永信士・宝永三年没）―四郎兵衛（元禄十四年没）―太兵衛（元文二年没）―庄兵衛（明和二年没）」。外記は正保飢饉のとき、法度にそむいて筏場の米蔵をひらき農民に与えた為に責を負って自刃す。正音寺正保四年地蔵尊に平井太平衛、元禄十年仏像銘に飯積村平井太兵衛。明治七年船積問屋平井浜吉・但明治六年六月創立。明治十八年最上農名簿に平井才助・耕宅地四町五反歩・山林一反歩所有。私塾師匠名主平井才助・明治三十四年没六十一歳。明治三十五年議定書に平井円吉・平井園蔵・平井丑五郎・平井七右衛門・平井清吉・平井廉蔵・平井政助・平井新次郎・平井伊之助・平井熊次郎あり。十四戸現存す。

四七　同郡常木村（羽生市）　名村渋井家譜に「渋井五右衛門（延宝四年没）の弟太郎右衛門―女子（常木村名主平井与左衛門妻）」。常木神社宝暦十二年水鉢に平井忠兵衛・平井与左衛門あり。六戸現存す。

四八　同郡下村君村（羽生市）　鷲宮社宝暦十二年棟札に平井善右衛門・平井利八・大工平井忠太夫、嘉永六年御神燈に平井冠之丞・平井卯吉・平井善治郎・平井丑五郎。成就院寛政五年棟札に当村平井善右衛門。白川家門人帳に天保三年羽生領下村君村平井孫右衛門。永明寺文久二年仙元碑に当村役人平井注助・松之木平井善右衛門。元治二年油商平井孫右衛門あり。九戸現存す。

四九　同郡須影村（羽生市）　八幡社安政五年棟札に組頭平井畝太郎あり。二戸現存す。

五〇　同郡忍町　字矢場享保□年庚申塔に平井為右衛門あり。

五一　同郡袋村（吹上町）　袋神社宝永五年御神燈に平井平左衛門・平井平四郎あり。三戸現存す。

五二　足立郡赤井村（川口市）　氷川社明治二十一年絵馬に平井国五郎、明治三十四年絵馬に平井万五郎あり。一戸現存す。

五三　同郡前野宿村（川口市）　明治九年副戸長平井民之助・文政五年生あり。二戸現存す。

五四　同郡横曽根村（川口市）　衆議院議員選挙人名簿に平井清次郎・弘化四年生・納税十七円あり。一戸存す。

五五　同郡戸田村　川口町善光寺宝暦九年湯殿山碑に戸田村平井作右衛門あり。

五六　同郡下山口新田（浦和市）　稲荷社寛政八年六地蔵に当所平井与衛門あり。一戸現存す。

五七　同郡大宮町　明治三十五年味噌屋平井佐吉・酒造業平井仁助・塗物職平井久次郎あり。

五八　同郡桶川町　明治三十五年菓子商平井力蔵あり。

五九　同郡小針領家村（桶川市）　当村に此氏多く存す。鎌倉円覚寺所蔵鏧子銘に「相州円覚寺常住徳因置焉、永禄十三庚午年三月十五日、大工武州足立住人平井安重」あり、当村の鋳物師か。倉田村明星院文政六年新西国塔に領家村平井伊之助・平井四郎左衛門・平井庄右衛門・平井重右衛門・平井与右衛門・平井吉左衛門・平井久兵衛。明治九年副戸長平井庄左衛門・天保六年生。明治二十一年柴山伏越改造碑に小針領家村平井信悌・平井与市・平井吉左衛門・平井三造・平井庄左衛門。明治三十三年文書に平井伊之吉・三十三歳、平井太作・三十五歳、平井鷹七・四十五歳あり。

六〇　同郡本宿村（北本市）　明治三十四年榛名神社募金に平井茂平あり。二戸現存す。

六一　同郡吹上村　吹上神社明治四十三年碑に平井留五郎あり。

六二　新座郡上保谷新田（東京都保谷市）　新町一丁目墓地に「享保甲辰、上保谷新田発起願人、岩城平井伊左衛門平道喜（名主）」。明治九年戸長平井伊左衛門・文政二年生（名主）。其子平井週作は明治四十一年保谷村長を勤む。

六三　入間郡三ヶ島村（所沢市）　平井一法家五輪塔に「文明三年辛卯二月□七日、逆修□□禅門」あり、是以前からの土着者なり。八幡社天保十二年庚申塔に平井伝右衛門。妙善院慶応元年湯殿山碑に当所平井八郎兵衛。明治九年副戸長平井久右衛門・文政十一年生、副戸長平井甚右衛門・弘化二年生。北野村天神社明治二十九年碑に三ヶ島平井信蔵。薬王寺明治四十二年碑に一番組平井伊三郎・平井新太郎・平井虎松あり。十戸現存す。

六四　同郡川越町　風土記稿川越城下条に「鍛冶町は天文弘治の頃、鍛工平井某と云もの相模国より当所へ来りて住す。その門人、鴫惣右衛門・同内匠・加藤甚兵衛などと云もの、これかれ十余人ここに住して其業を専とせし故に鍛冶町の名あり」。三芳名勝図会に「天文弘治の頃、平井次兵衛あり」と。日蓮宗行伝寺過去帳に「道蓮・平井出羽殿。妙善・出羽殿御内。幸道・平井・卯年十一月。日奉・平井弥六郎・寅年六月。妙幸・平井母・卯年四月」。御嶽社明治三十年碑に平井光長あり。

六五　高麗郡笹井村（狭山市）　根岸村水富神社明治四十三年碑に水富村平井喜十郎。白鬚社大正元年碑に笹井・平井房五郎あり。九戸現存す。

六六　同郡原宿村（日高市）　上鹿山村高麗川神社明治十二年御神燈に原宿村平井朝吉あり。四戸現存す。

六七　同郡下高萩新田（日高市）　中富村田中文書に嘉永元年伊香保大明神剣道奉額・武州高萩平井栄吉藤原時範。女影村霞野神社文久元年甲源一刀流奉納に当所世話人平井啓次郎藤原時晴・平井秀之助藤原時武・願主平井栄吉郎藤原時範。明治九年下高萩新田戸長平井啓次郎・弘化二年生、副戸長平井栄吉郎・文政六年生あり。当村に二戸現存す。女影村に現存無し。

六八　同郡下直竹村（飯能市）　中山村智観寺宝永三年大般若経奉納に直竹村平井清左衛門・平井作左衛門。幕末の俳人平井忠右衛門・号山涛舎対鵞。明治九年副戸長平井伴治郎・安政元年生あり。六戸現存す。

六九　比企郡松山町　明治三十五年下宿業小川屋平井よし。

七〇　同郡馬場村（都幾川村）　桃木村八幡社文政七年筆子碑に馬場村平井庄吉あり。十戸現存す。

七一　同泉井村（鳩山町）　桃木村八幡社文政七年筆子碑に泉井村平井平吉あり。六戸現存す。

七二　榛沢郡上野台村（深谷市）　平井伸昭家墓碑銘（群馬県立文書館所蔵）に「家祖太郎譲邦者卜部後裔而父者藤井権六義徳之嫡子也、永正十七庚辰正月五日生、於上毛緑埜郡平井邨。（以下省略）」とあり。平井サダ家文書に「天文二十四年六月十二日、北条幻庵は、上州平井の研商源左衛門が敵方へ就いた為、国払による跡職を、研商太郎左衛門に宛行う」。「乙丑二月十一日（永禄八年）、北条氏邦の奉行三山五郎兵衛は、鉢形領内にての研商を太郎左衛門に安堵す」。「丁丑年卯月二十九日（天正五年）、北条氏邦は、西上州に出荷する砥石の売買について、太郎左衛門に手形なしで売買することを禁ず。小田原の御用を走廻り、鉢形の御用をも勤むべきことを命ず」と見ゆ。八幡社明治四十四年碑に平井久吉・平井源次郎・平井佐之吉・平井近次郎・平井勘五郎・平井徳蔵・平井幸蔵・平井丑五郎あり。十七戸現存す。

七三　同郡大谷村（深谷市）　藤沢村会議員に平井伝十郎・明治十一年生、平井福太郎・明治二十八年生あり。十五戸現存す。

七四　児玉郡本庄町　円心寺元禄八年鐘銘に平井七左衛門。明治四年諸井文書に台町平井友次郎。明治九年立会人平井七平あり。

七五　同郡児玉町　明治三十五年呉服商平井金次郎あり。

七六　同郡新里村（神川町）　三項参照。当村に此氏の旧家あり。九戸現存す。

七七　秩父郡大宮郷　明治三年荒物穀商平井善八後家・江州古保志塚村より来住す。（滋賀県八日市市破塚）。

七八　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・平井六尾・十四円、大宮町・平井保・十円、加納村（桶川市）・平井節・百五十三円、平井積一郎・五十円、旭村（吉川市）・平井伊一・六百三十一円、平井八平・十円、幸手町・平井浩治・九十円、岩槻町・平井てい・三十円・十一円、久喜町・平井良助・十九円・三十六円、樋遣川村（加須市）・平井近三・三十七円・二十五円、三ヶ島村（所沢市）・平井伊三郎・十三円、坂戸町・平井敏治・三十九円、高麗川村（日高市）・平井朝界・十円、秩父町・平井久子・十九円」あり。

平居　ヒライ　浦和、草加、三郷、所沢、狭山、飯能、神川等に存す。

平位　ヒライ　蕨、志木、鶴ヶ島、飯能、行田等に存す。

平池　ヒライケ　浦和に存す。

平石　ヒライシ　各市町村に存す。○栃木県塩谷郡氏家町二十七戸、芳賀郡二宮町十五戸。茨城県西茨城郡岩瀬町二十戸、下妻市三十六戸。○新潟県三島郡越路町三十四戸あり。

一　所沢町　薬王寺享保元年地蔵尊に平石六郎右衛門。実蔵院宝暦五年碑に所沢村平石小六右衛門あり。二戸現存す。

二　川越町　明治三十五年魚商平石岩吉あり。現存無し。

避来石　ヒライシ　埼玉郡上村君村（羽生市）鎮守飛来石社あり。小名鍛冶内などあり、鍛冶集団の奉斎神なり。風土記稿に「避来矢社、相伝ふ当社は、俵藤太秀郷を祭る所にして、古へ野州栃木村より飛来りし故、元は飛来と書しを享保十一年今の文字に改め記し来りしと云ふ」と。矢はシと読み、避来矢（ひらいし）と書いて今はヒライヤと称す。俵（たわら）はタタラの訛りにて附会なり。

平磯　ヒライソ　上福岡、富士見に存す。

一　川越町　日蓮宗行伝寺過去帳に「浄厳・平磯・未年正月。妙厳・平磯殿内方・丑年三月」あり。江戸初期なり。現存無し。

平泉　ヒライヅミ　各市町村に存す。山形市四十二戸、秋田県大館市六十三戸あり。

一　忍城士の平泉氏　成田分限帳に「五十貫文・平泉伝内、三十貫文・平泉伯耆」あり。

平出　ヒライデ　各市町村に存す。○山梨県北巨摩郡小淵沢町十八戸、甲府市四十戸。○長野県諏訪郡下諏訪町二十二戸、富士見町百九十五戸、原村四十五戸、上伊那郡箕輪町二十七戸、諏訪市四十戸あり。ヒラデ参照。

平入　ヒライリ　坂戸、三郷、騎西、本庄等に存す。茨城県下館市七戸あり。

平岩　ヒライワ　足立郡大針村字平岩、入間郡小杉村字平岩、秩父郡久長村字平岩あり。○山梨県中巨摩郡甲西町十一戸。○長野県飯田市三十六戸。○鳥取県東伯郡関金町七戸、倉吉市十六戸あり。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「三百五十石・平岩権三郎・是は忍にて罷出・三河之者、三百五十石・平岩弥五助・是は忍にて罷出・三河之者、二百五十石・平岩甚五郎・是は忍にて罷出・三河之者」あり。

二　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「百八十石・平岩喜右衛門、百石・平岩頼母、十両二人扶持・平岩兵蔵」。文化四年忍藩分限帳に「御先手銃隊・三百石・平岩頼母」あり。

三　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「七両余二人扶持・平岩金蔵」あり。

四　埼玉郡広田村（川里町）　鷺栖神社嘉永六年幟碑に平岩由蔵・平岩要右衛門あり。二戸現存す。

五　足立郡原市町（上尾市）　明治三十五年染物業平岩陸蔵。一戸現存す。

六　同郡小針新宿村（伊奈町）　小針神社天保九年水鉢に小針新宿村平岩金太郎・平岩幸蔵あり。五戸現存す。

七　入間川町（狭山市）　明治三十五年寿司や平岩権平。八幡社明治四十二年碑に入間川町平岩松吉あり。

八　川越町　信州善光寺本堂前西側安政五年宝篋印塔に武州川越町平岩屋長次郎あり。

九　飯能町　明治十三年農区委員真能寺村平岩保雄あり。

平宇　ヒラウ　川口、蕨、杉戸に存す。

平内　ヒラウチ　大宮、桶川、菖蒲、幸手、朝霞、和光、入間等に存す。

平畝　ヒラウネ　所沢に存す。

平海　ヒラウミ　入間に存す。

平江　ヒラエ　川口、北本、入間、鳩山等に存す。島根県松江市十七戸あり。

平得　ヒラエ　草加に存す。

平江川　ヒラエガワ　上尾に存す。

平生　ヒラオ　大宮、朝霞、志木に存す。

平尾　ヒラオ　各市町村に存す。○青森県上北郡横浜町二十戸、野辺地町二十戸。○鳥取県八頭郡郡家町十四戸、河原町十戸、智頭町六十九戸、気高郡気高町二十五戸、鳥取市六十四戸あり。

一　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百石・平尾源太夫」あり。

二　水戸藩家臣　水府系纂に「平尾弥藤清貞、祖父を将監某と云、姓は藤原にて小田原北条家に仕へ旗頭たり、父を右近清定と云ふ」と見ゆ。

三　葛飾郡上川崎村（鷲宮町）　百間村青林寺寛政十年文書に上川崎村平尾清吉。香取社明治三年庚申塔に平尾儀左衛門あり。一戸現存す。

四　入間郡扇町屋村（入間市）　明治三十五年金物卸問屋平尾政吉あり。現存無し。

五　浦和町　昭和三年興信録に「平尾鹿之助・所得税十八円」あり。

平岡　ヒラオカ　河内国讃良郡枚岡郷（四条畷市附近）の讃良（さらら）郡は百済族の渡来地なり、姓氏録河内諸蕃に「佐良々連、百済国の人・久末都彦（くまつひこ）より出づる也」と。此の地より中臣氏族平岡氏が移住した河内郡平岡郷の枚岡神社（東大阪市出雲井町）は、中臣宮處氏本系帳に「封地を賜りき云々。氏神を大川内国神津の平岡の里に奉祀る。此は即ち中臣平岡連らが斎ひ祭る中臣御祖の神宮なり」。姓氏録河内神別に「平岡連。津速魂十四世孫鯛身臣の後也」。津速魂命―市千魂命―居々登魂命―天児屋根命（中臣、藤原の祖）の後裔なり。大和国春日大社は神護景雲二年に藤原氏（中臣氏）が当社を分祀す。平岡は百済族中臣氏の居住地なり。葛飾郡下高野村（杉戸町）永福寺伝に「明徳二年辛未年、木之子沼南方平岡の地に於て伽藍を建立す」とあり。○茨城県稲敷郡阿見町四十戸、結城郡八千代町十五戸。○新潟県西蒲原郡中之口村十二戸、巻町十二戸。○宮城県柴田郡村田町十八戸。○秋田県仙北郡田沢湖町三十戸。○青森県西津軽郡深浦町十五戸あり。

一　金窪城士の平岡氏　賀美郡金窪城主斎藤摂津守定盛の家臣なり。多摩郡横山町江来住人名前書写に「天正十八年、金久保より平岡源右衛門来る」と見ゆ。駒衣村出身か。

二　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「二百五十石・平岡半九郎・是は忍にて罷出・駿河之者」あり。

三　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御家老・六百五十石・平岡宇右衛門、御目付・百石・平岡善右衛門」あり。

四　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「十石・平岡八十郎」。

五　甲斐国御代官　寛政呈譜に「清和源氏頼光流。家紋、丸に十文字。寛永系図に良清より系を起こして、其祖の出るところをいはず。平岡因幡守良清（武田信虎に仕ふ）―内記頼成（信玄、勝頼に仕ふ）―岡右衛門道成（号樵雲、法名宗寿、勝頼に仕ふ。天正十年東照宮に仕へ、甲斐国の御代官を勤め千俵を賜ふ。元和九年死す、年七十余、甲斐国岩窪村円光院に葬る。子孫は代々御代官を勤める）、弟帯刀良知（法名玄春、勝頼に仕ふ。天正十年甲斐国御代官となり二百俵を賜ふ。元和五年死す、円光院に葬る）―次郎右衛門和由（御代官、寛永十八年死す）―勘三郎良時（御代官、寛文三年死す。子孫代々御代官を勤める）。和由の弟七兵衛良豊（甲斐国に住して御代官を勤む、寛永十二年死す）―六郎右衛門安久―三郎右衛門尚宣―三郎右衛門頼久」と。岩窪郷（甲府市）は武田館の地で家臣団の屋敷地があり、円光院は信玄妻の三条夫人の墓あり。御坂町二宮文書に「慶長六年、平岡樵雲斎宗寿、平岡勘三郎」あり。

六　足立郡原村（川口市）　前項の甲斐国御代官平岡七兵衛の後裔説は附会なり。風土記稿原村条に「旧家七兵衛、氏を平岡と称す。家譜及び古文書を蔵す。其の譜によれば此の家・山内の上杉より出でたり。上杉憲房が子憲寛が時に至り、二男某・家名を鶴岳と称せしが、其の孫対馬守義政・平岡氏に改めしより、三代の孫七兵衛光長・当村に住せし後、子孫連綿して、今の七兵衛まで七代爰に住する由を載す。されど此の家系は全く後人の手に成しものにて、ことごとく信ずべきものにあらず。按ずるに系譜に載たる憲寛が二男は鶴岳三郎左衛門と云しにや、此の人・文書によれば、永禄の頃、下総国小金の城主高城下野守胤辰に仕へ、同国葛飾郡矢切村を領せし人と見ゆ。又其の後は太田三楽の家人となりしにや、資正が文書に平岡孫六殿と載せたるあり。この孫六は前に出したる義正が子にして、家系には孫六郎義行と見えたり。当時のものなりとて、朱札の具足一領、阿字の捺物、及び古文書などを蔵す。これ等によりても、古き家なることは知るべし。されどこの家一度御当家へ召出され御代官など勤めしが、後故ありて子孫当村に土着せしにや。寛永十一年酒井因幡守へ甲州に於て千石賜はりし時、御勘定奉行より同国を支配せし御代官へ出せし證状あり、其宛に平岡二郎右衛門、同七兵衛、松木七郎兵衛と見ゆ。これによれば当村に来り住するは寛永より後なるべし」と見ゆ。平岡文書に「太田三楽斎資正は、家臣平岡孫六の長瀬における戦功を賞す」。「戊子四月十八日（天正十六年）、飯塚不作の田畠の事、七年荒野に相定め候、屋敷ともに何事も不入にて出し申し候。ひらおか対馬守殿、松千代丸印」とあり。平岡氏は原村出身の出稼衆にて岩槻領飯塚村に屋敷を構えて、同村鶴岡氏宛ての永禄九年文書は姻戚関係などにより平岡氏所蔵となったのであろう。岩槻落城後は原村へ帰農す。立野村西福寺弘化三年百番観音に原村平岡七兵衛。明治九年戸長平岡七兵衛・天保三年生。明治二十九年地租二百五十円以上大地主名簿に平岡七兵衛。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年農業平岡賢三郎・明治十二年生・国税八百八十三円・県下七十四位、大正十四年平岡賢三郎・国税千八十二円・県下百六十八位あり。九戸現存す。鶴岡条参照。

七　同郡川面村（鴻巣市）　清滝寺天明五年地蔵尊に川面村平岡次六あり。現存無し。

八　埼玉郡岩瀬村（羽生市）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

九　入間郡所沢町　久米村永源寺明治四十年地蔵尊に所沢町平岡浅吉。明治四十四年上仲町織物商平岡徳次郎あり。十五項参照。

一〇　同郡下富村（所沢市）　明治二十年茶業に平岡慶蔵・平岡平右衛門・平岡忠之助・平岡長吉・平岡市五郎・平岡仙蔵。中富村神明社明治三十九年碑に下富平岡幸太郎・平岡幸七あり。十二戸現存す。

一一　同郡北岩岡村（所沢市）　明治五年岩岡新田葺屋根職平岡倉吉あり。五戸現存す。

一二　同郡三ヶ島村（所沢市）　北野村天神社明治二十九年碑に三ヶ島平岡伊左衛門。薬王寺明治四十二年碑に二番組平岡半蔵、七番組平岡仲蔵あり。十戸現存す。

一三　同郡黒須村（入間市）　笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、黒須村平岡市太郎」あり。現存無し。

一四　同郡寺竹村（入間市）　当村文化元年地蔵尊に金子寺竹村平岡喜右衛門。慶応元年加藤義快翁石碑造立連名帳に寺竹村平岡喜右衛門あり。一戸現存す。

一五　高麗郡仏子村（入間市）　当村に此氏多く存す。風土記稿仏子村条に「村の草創の頃は民家僅に四軒、大久保、平岡、石井、宮岡を氏とすありし。その家、今も存せり。天正慶長の比には十五軒となり、今は八十軒となれり」。宮岡条参照。多摩郡高尾山薬王院延宝元年文書に仏子村平岡平七.。当村元文四年供養塔に平岡平七.。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、仏子村平岡平左衛門・平岡清兵衛」。慶応元年取締名主格平岡甚蔵。明治九年副戸長平岡甚蔵・弘化四年生、副戸長平岡甘平・天保六年生、副戸長平岡五平。明治二十一年納税書に平岡浦次郎・平岡与五郎・平岡佐重郎・平岡喜代次郎・平岡徳次郎・平岡和三郎・平岡甘平・平岡五平・平岡兼吉・平岡甚蔵・平岡広吉。明治四十四年織物製造業に平岡仙吉・平岡万蔵・平岡喜三郎・平岡芳太郎・平岡福太郎・平岡常太郎。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年織物商平岡徳次郎・慶応二年生・国税七百五十四円・県下百三位、大正十四年平岡徳次郎・国税二千八百七十三円・県下四十位。県会議員織物業平岡仙太郎・明治二十六年生。其の弟県会議員・衆議院議員織物業平岡良蔵・明治三十年生あり。

一六　那賀郡駒衣村（美里町）　一項参照。当村に此氏の旧家あり。十七戸現存す。

一七　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「安行村（川口市）・平岡賢三郎・五百六十九円、所沢町・平岡友次郎・百三十三円、平岡半三郎・三十二円、元加治村（入間市）・平岡徳次郎・三千九十円・四百十六円、平岡仙太郎・千五百二十四円・四百二十円、平岡万蔵・四百三十一円、平岡兼吉・三百十五円・四十円、平岡福三・百十六円、平岡芳太郎・九十六円・五十四円、平岡経作・三十九円・十六円」あり。

比羅岡　ヒラオカ　川口、上尾に存す。

平沖　ヒラオキ　吉川に存す。

平鹿　ヒラガ　秋田県仙北郡田沢湖町十二戸あり。

一　比企郡表村（川島町）　吉原村宮原神社文政十三年御神燈に表村平鹿長右衛門あり。一戸現存す。

平賀　ヒラガ　○茨城県東茨城郡桂村十九戸。○千葉県山武郡大網白里町三十戸、夷隅郡岬町十五戸。○山梨県中巨摩郡竜王町二十戸、韮崎市百四十戸。○新潟県南魚沼郡塩沢町百十四戸、六日町十五戸。○岩手県花巻市三百五十戸あり。

一　忍城士の平賀氏　成田記に「成田親泰の臣平賀弥刑部、その子平賀某」。成田分限帳に「二十八貫文・平賀筑前、十三貫文・平賀大炊」あり。

二　児玉郡御嶽城主長井氏系図に「長井実治（天文六年卒。母平賀権左衛門尉光吉女）」と見ゆ。

三　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永七年忍藩分限帳に「御物頭・百九十石・平賀仁蔵、御寄合・百三十石・平賀栄作、小普請・八十石・平賀喜市」。明治四年忍藩士族名簿に「百石・平賀幹造、八十石・平賀藤三郎」あり。

四　埼玉郡騎西町　明治三十五年糸繭商平賀カネ。現存無し。

五　同郡下手子林村（羽生市）　天保九年戸賀崎入門帳に手子林村平賀忠松。平賀平兵衛は地頭山高氏と共に上京し、鳥羽伏見合戦に参加す。明治四年油商平賀忠右衛門。八幡社明治三十四年筆子碑に下手子林・平賀清三郎・平賀孝七あり。三戸現存す。

六　同郡忍町　明治二十二年大日本農会々員名簿に成田町平賀十兵衛。昭和三年興信録に「忍町・平賀角右衛門・所得税十三円」あり。二戸存す。

七　同郡新宿村（吹上町）　山神社明治四十二年碑に北新宿平賀次郎あり。現存無し。

八　足立郡吹上村　吹上神社明治四十三年碑に平賀倉蔵・平賀次郎八あり。二戸現存す。

九　同郡明用村（吹上町）　観音寺延享五年庚申塔に平加杢兵衛。三島社安政二年幟碑に平賀平八・平賀栄助・平賀栄蔵・平賀林蔵、文久元年道祖神に平賀加藤治。明治九年副戸長平賀勇蔵・文化十三年生（組頭）。観音堂明治二十八年碑に明用・平賀孫十郎・平賀吉之丞。十五戸現存す。

一〇　同郡箕田村（鴻巣市）　野村玉松堂入門帳に「慶応三年、道永村平賀勇八。慶応四年、道永村平賀藤治郎。明治二年、道永村平賀百助、定治郎倅平賀鷲五郎」。明治四年組頭平賀平左衛門・六十二歳。道永八幡社明治十四年幟碑に当所・平賀光之助・平賀藤吉・平賀良次郎・平賀張次郎・平賀徳次郎。氷川八幡社明治二十五年鳥居碑に平賀市蔵・平賀米太郎・平賀清次郎・平賀蓮蔵・平賀茂兵衛・平賀喜代三郎・平賀徳次郎・平賀藤次郎・平賀寅助・平賀佐吉、明治二十七年御神燈に平賀房次郎・平賀定次郎、明治四十五年碑に箕田村道永・平賀信太郎・平賀清吉・平賀民吉・平賀米吉・平賀本五郎・平賀福次郎・平賀富助・平賀新三郎。上州榛名神社明治三十三年算額に北足立郡道永・平賀喜代三郎治永あり。十戸現存す。

一一　同郡桶川町　明治三十五年小間物商平賀龍吉あり。

一二　大里郡石原村（熊谷市）　明治三十五年飲食店平賀梅三郎。現存無し。

一三　同郡佐谷田村（熊谷市）　静岡県富士山六合目休所の懸仏銘に「天文四年乙未六月一日、武州大里郡佐谷田郷住居願主、平賀十蔵」と、十三名を記すが苗字は平賀氏だけなり。現存無し。

一四　榛沢郡矢島村（深谷市）　五ヶ村用水端安政三年庚申塔に平加太左衛門あり。現存無し。

一五　同郡末野村（寄居町）　有名なる平賀源内（安永八年没）の荒川通船権を継承した屋号にて、本名は設楽氏なり。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州榛沢郡末野村平賀升五郎・平賀喜代蔵。善導寺万延元年碑に平賀市郎兵衛。諏訪社明治二十七年御嶽碑に当所平賀才次郎あり。現存無し。設楽条参照。

一六　本庄町　昭和三年興信録に「平賀実右衛門・所得税十三円・営業税三十三円」あり。五戸現存す。

平垣　ヒラガキ　桶川に存す。

平方　ヒラカタ　播磨国風土記・揖保郡枚方の里条に「枚方と名づくる所以は、河内国茨田郡枚方の里の漢人、来たりて始めてこの村に住めり、故に枚方の里と云ふ。又、佐比を作りて、佐比岡と号す」と見ゆ。漢人（あやひと）は、阿耶（百済、伽耶地方）ノ国の渡来人にて、鋤（さび）・農具のスキを作る鍛冶師なり。百済人の渡来地を枚方、平方と称す。男衾郡平方郷字百済木（川本町大字本田）あり。風土記稿本田村条に「教念寺永徳二年十一月の寄附状に、平方郷の内惟永在家事とのせたり。今本田村の小名に平形あり、即其地の事なり」と。また、足立郡平方村（上尾市）は、小倉文書に「永禄四年、河窪口（平方村字川久保）、平方口の戦功を賞す」と見ゆ。埼玉郡平方村（越谷市）あり。同郡黒浜村字平方（蓮田市）は宝暦四年庚申塔に平方講中と見ゆ。葛飾郡平方新田（吉川市）あり。足立郡美女木村（戸田市）堀之内峰岸家明治十四年水鉢に願主平方村峰岸才吉と、美女木七丁目附近なり。各市町村に存す。○群馬県北群馬郡小野上村十八戸。○新潟県岩船郡山北町六十三戸あり。

一　結城氏族平方氏　男衾郡平方郷より起る。隣村は千代村なり。結城系図に「結城朝光―平方五郎朝俊（住武州平方）、弟朝広―時広―貞広―朝祐―直光（足利尊氏に仕へ、武州仙大、平方両所を賜る）」。源威集に「文和二年、結城中務大輔直光は、尊氏より武州先代・平方を賜る」と見ゆ。遊佐条参照。

二　日蓮宗信徒の平方衆　足立郡平方村（上尾市）住人なり。川越行伝寺過去帳に「妙経・ヒラカタノ者・卯年三月。妙立・ヒラカタノ者・寅年三月。妙蓮・平方ノ者・卯年九月」あり。江戸初期なり。

平形　ヒラカタ　各市町村に存す。群馬県吾妻郡高山村四十六戸、中之条町十五戸、北群馬郡子持村十二戸、渋川市四十七戸あり。

平片　ヒラカタ　上尾、新座、所沢、越谷、東松山等に存す。

平上　ヒラカミ　上福岡、草加、春日部、越谷等に存す。

平川　ヒラカワ　○山梨県東八代郡中道町二十二戸。○長野県南安曇郡穂高町二十戸。○秋田県北秋田郡合川町十八戸、能代市二百二十戸。○青森県北津軽郡金木町十七戸、西津軽郡柏村三十九戸、南津軽郡平賀町十五戸、田舎館村三十八戸あり。

一　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「小頭・二十俵二人扶持・平川市郎右衛門」。享保八年忍藩軍役帳に「郡奉行・七十石・平川市兵衛」。宝暦五年秩父御用日記に宗旨奉行平川市兵衛あり。

二　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御鷹匠・七人扶持・平川太郎八、同役・六石二人扶持・平川伝助」。明治四年忍藩士族名簿に「七人扶持・平川太郎八、五石二人扶持・平川近久」あり。

三　関東郡代伊奈氏家臣　天明六年文書に平川文平・平川嘉蔵あり。

四　埼玉郡伊勢野村（八潮市）　天神社文政頃御神燈に平川郎右衛門あり。三戸現存す。

五　同郡中馬場村（八潮市）　明治三十年人名録に平川作次郎・明治元年生・地租二十円、平川徳太郎・嘉永四年生・地租十六円あり。四戸存す。

六　同郡後谷村（越谷市）　明治三十年人名録に平川源蔵・嘉永五年生・地租二十二円あり。三戸現存す。

七　同郡高曽根村（岩槻市）　稲荷社文化十一年御神燈に平川利左衛門。薬師堂安政二年庚申塔に当所平川作兵衛あり。一戸現存す。

八　同郡菖蒲町　明治三十五年篩屋平川幸吉あり。

九　同郡三箇村（菖蒲町）　当村文化九年庚申塔に平川重左衛門、文政六年庚申塔に平川孫左衛門。三箇神社江戸末期碑に平川重左衛門・平川沖之助・平川代五郎・平川長七・平川甚蔵・平川善助。明治九年戸長平川重左衛門・天保十一年生。明治三十年所得税下調査簿に平川重左衛門・反別九町八反歩・地租百二円あり。十一戸現存す。

一〇　同郡屈巣村（川里町）　天明元年山崎文書に字新田平川彦三郎あり。二戸現存す。

一一　同郡忍町　明治三十五年書画平川音弥あり。

一二　足立郡立野村（草加市）　浄龍寺天保六年供養塔に平川勝五郎・平川勘蔵。花栗村南光院弘化四年供養塔に立野村平川勘蔵あり。五戸現存す。

一三　同郡小針内宿村（伊奈町）　江戸平河村（千代田区）より起る平河氏は在名にて苗字にあらず。太田系図に道灌の子資国は見えず。平河条二項の後裔か。平川栄昇家系図に「○太田備中守道灌―太田源三郎資国（文明十八年武蔵国豊島郡江戸平川城内に住す、因て姓を平川と更正す。天正二年三月十八日死、法名浄慶禅定門、八十九歳、小針村字戸崎に葬る。母斎藤小四郎女。妻春日八郎光行女小針村浄土宗桂全寺に葬る）―平川源五郎資吉（天文七年出生。氏房没落の後、小針村に帰農致す、慶長十九年二月十二日死、浄誉禅定門、七十七歳。妻内藤仙右衛門女）―五郎右衛門（天正十二年生、寛文元年十二月八日死、浄西禅定門、七十八歳、小針村新義真言宗東光院に葬る。妻成田下総守の長臣山田河内守貞良孫女）―五左衛門（元禄十四年死、九十二歳。寛永年中、高四十五石余）―弥兵衛（元禄二年死。弟二男長雪は医を業とす。弟三男安左衛門分家す。弟四男四郎兵衛分家す）―五左衛門（元禄七年田畑六反九畝余高五石一斗余。享保二年田畑一町六畝余高七石九斗余。元文五年死）―吉兵衛（組頭、宝暦八年死）―吉兵衛（組頭、天明四年田畑二町一反余、文化九年死）―浅右衛門（文政元年田畑三町四反余、文政六年死）―喜伝治（名主、天保三年田畑四町九畝余、文久二年死。弟幸之助分家）―大作（名主、明治六年田畑三町七反四畝高二十三石一斗余、明治十三年死）―仁作郎（嘉永二年生）―恭孝（明治十四年生）、明治十八年反別十町四反一畝歩・地租七十九円余。○安左衛門（元禄十二年死）―安左衛門（元文元年死）―十太郎（延享年中他出致し、此家亡ぶ）……幸之助（本家平川浅右衛門六男、文化元年生、天保三年亡跡相続）―大次郎（天保五年生）。○四郎兵衛（元禄十六年死）―四郎兵衛（明和四年死）―五郎右衛門（明和二年死）―四郎治（安永二年早死断絶）……弥七（寛政年中弥七夫婦共に名跡相続）―磯五郎―六左衛門―龍蔵」と見ゆ。同家文書に「天正十八年五月十五日、資吉殿、氏房花押」あり。小針神社天保二年浅間碑に内宿村平川喜伝次、天保九年水鉢に小針内宿村名主平川喜伝次・平川幸之助・平川磯右衛門。東光院天保九年筆子碑に当村筆子平川幸之助。明治九年戸長平川大作・文政九年生。明治二十年柴山伏越改造碑に小針内宿村平川仁作郎あり。六戸現存す。

一四　同郡吹上村　吹上神社明治四十三年碑に平川丹治あり。一戸現存す。

一五　幡羅郡西別府村（熊谷市）　湯殿神社嘉永元年碑に平川太郎兵衛・平川弥七、元治元年小御嶽碑に先達平川秀行、明治元年富士嶽碑に平川国吉・平川光太郎。安楽寺文久三年馬頭尊に平川鹿蔵・平川助治郎あり。九戸現存す。

一六　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「羽生町・平川喜兵衛・二百四十四円・百円、岩瀬村（羽生市）・平川亀蔵・百五十八円・百十二円、小川町・平川平蔵・十一円・三十六円」あり。

平河　ヒラカワ　大宮、所沢、三芳、越谷、春日部、東松山等に存す。

一　豊島氏族平河氏　豊島郡平河村（千代田区平河町）より起る。文明十年太田道灌が川越三芳野天神社を江戸城内に勧請し、天正十年江戸入城した徳川家康が平河門外に移してから平河天神社と呼ばれた。慶長年間に現在地の平河町一丁目に移転す。天文十七年の紀州那智山米良文書に「としま名字之かき立、さはい所在名、平河大ひやうこ」あり。平河大兵庫の本名は名主の矢部氏か。

二　鎌倉鶴岡八幡宮奉行平河氏　足立郡笹目郷白鬚社（浦和市松本三丁目）神田三反（一貫文）の地頭なり。香蔵院珎祐記録に「長禄三年十一月大、佐々目郷内白鬚神田事、前々衆中奉行仁之御恩間、平河左衛門二郎補任所、政所兎角申、平河方へ不渡、結局太田左衛門方（道灌）より吹挙取、今月執行方へ遣者也」と見ゆ。

開　ヒラキ　川口、大宮、桶川、鴻巣、蓮田、岩槻、草加、越谷、宮代、杉戸、所沢、鶴ヶ島等に存す。

平木　ヒラキ　各市町村に存す。○島根県隠岐郡西郷町十戸、西ノ島町二十六戸。○鳥取県八頭郡郡家町五十戸、米子市五十戸、鳥取市二十七戸あり。

平城　ヒラキ　川口、戸田、新座、越谷、川越等に存す。

開江　ヒラキエ　茨城県東茨城郡内原町八戸あり。

開田　ヒラキダ　川口、大宮、川本、八潮、春日部等に存す。

平久　ヒラク　浦和、大宮、草加、熊谷等に存す。タイラク参照。

一　葛飾郡不動院野村（春日部市）　本郷村雷電社文化十一年庚申塔に不動院野村平久喜三郎あり。現存無し。

平久井　ヒラクイ　三郷に存す。栃木県矢板市三十戸あり。

平久江　ヒラクエ　蓮田、草加、春日部、越谷、行田、川越、所沢等に存す。

平櫛　ヒラクシ　越谷に存す。

平口　ヒラクチ　浦和、上尾、蓮田、入間、狭山、松伏、庄和等に存す。

平国　ヒラクニ　上福岡、三芳等に存す。

平久保　ヒラクボ　入間郡水子村地蔵院安永六年六地蔵に水子村平窪と見ゆ。大宮、八潮、新座等に存す。

平熊　ヒラクマ　川口に存す。

平倉　ヒラクラ　入間郡大満村字平倉、龍ヶ谷村字平倉、男衾郡西ノ入村字平倉あり。浦和、大宮、上尾、志木、川越、所沢、飯能等に存す。長野県南安曇郡堀金村十六戸あり。

平栗　ヒラクリ　各市町村に存す。長野県飯田市八十八戸。福島県須賀川市三十戸、郡山市七十九戸あり。

平子　ヒラコ　福島県いわき市二百二十戸あり。タイラコ参照。

一　葛飾郡堤根村（杉戸町）　明治九年副戸長平子徳兵衛・天保十四年生。権現堂村堤明治十年天皇行幸碑に堤根村平子徳兵衛。諏訪社明治二十年御神燈に諏訪・平子貞次郎・平子十右衛門・平子重蔵。五戸現存す。

二　埼玉郡村国村（岩槻市）　多宝院文政十三年供養塔に村国邑平子庄蔵あり。現存無し。

平河内　ヒラコウチ　大宮、上福岡、川越、所沢、八潮等に存す。福島県田村郡三春町十戸、郡山市十一戸あり。

平越　ヒラコシ　蓮田、所沢等に存す。

平腰　ヒラコシ　吉見、岩槻等に存す。

平社　ヒラコソ　埼玉郡下須戸村（行田市）に此氏多く存す。旧家なり。

平児玉　ヒラコダマ　神川町渡瀬一戸、美里町小茂田一戸存す。

一　児玉党平児玉氏　武蔵七党系図に「遠峰―有大夫別当弘行、弟平児玉有三郎別当大夫経行―秩父平四郎行高―四郎高義（兄倉賀野三郎高俊）―八郎公行」。児玉党小代文書に「奥州征伐の後、有大夫弘行・同有三別当経行、武州児玉郡を屋敷として居住せしめ給う。右衛門佐朝政・在京の時、蓮花王院の宝蔵御絵を拝見せしめけるに、児玉の有大夫弘行の朝臣・副将軍にて八幡殿の御対座に書れ給いたるを、平児玉倉賀野の八郎公行・当座に有合いて拝見したり」と見ゆ。平児玉八郎公行は倉賀野高俊の子か。京都守護平賀朝政は北条時政婿なり。

二　児玉郡下児玉郷の平児玉氏　下児玉村と小茂田村（美里町）は下児玉郷を称す。鎌倉円覚寺明徳元年十二月文書に「寄附、武蔵国児玉郡下児玉郷内浅羽方田一町七反・坪は路北五段、路南七段、宮前五段事」とあり、小茂田村北向神社附近か。また、小茂田村勝輪寺永正十年正月法華経奥書に「下児玉勝輪寺当住持法印祐尊」と見ゆ。武蔵七党系図に「阿佐美景実（永享十三年結城戦場に於て疵を被る）―朝実―信実、弟弘実」。小茂田村小池文書に「信実・弘実・平児玉元祖。慶長年中、井上氏は下児玉小茂田両村名主」と。勝輪寺文書に「元亀天正戦国兵火為堂宇烏有に帰、児玉党一族平児玉氏慶長中・今境内七十間四方境内と成し自分堂宇移て以て再建、児玉党香花院なり。平児玉氏分家井上氏檀徒有り」と見ゆ。平児玉氏の本名は井上氏にて、小茂田村十三戸、下児玉村四戸存す。また、小平村成身院天明年度寄進帳に下児玉村平児玉仲。下児玉村天保八年下山文書に下児玉村地主平児玉琢磨助は当村地頭安藤氏の家臣となる。平児玉氏は下児玉村に現存無し、小茂田村一戸存す。

平木場　ヒラコバ　浦和、大宮等に存す。

平古場　ヒラコバ　朝霞、三郷等に存す。

平佐　ヒラサ　草加、戸田、越谷、所沢等に存す。島根県邑智郡羽須美村六戸あり。

一　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御者頭・三百石・平佐丑之助」あり。

平坂　ヒラサカ　浦和、川口、蕨、草加、越谷、新座、上福岡等に存す。

一　入間郡府川村（川越市）　当村文政三年供養塔に府川村平坂平蔵あり。現存無し。

平阪　ヒラサカ　越谷に存す。

平崎　ヒラサキ　浦和、上尾、朝霞、春日部、越谷、庄和、小川等に存す。島根県八束郡玉湯町六戸あり。

一　岩附城士の平崎氏　松隣夜話に「永禄七年五月、岩附の太田三楽、侍大将平崎大之助等は松山城を攻める」と見ゆ。

平沢　ヒラサワ　平ノ国渡来人集落を称す。沢のことは大沢条参照。広沢参照。比企郡平沢村（嵐山町）古刹平沢寺あり、吾妻鑑文治四年七月十三日条に「武蔵国平沢寺」。堂山村最勝寺至徳三年文書に比企郡平沢寺と見ゆ。高麗郡平沢村（日高市）は、新渡戸文書宝治二年に高麗郡東平沢の内経塚屋敷と見ゆ。児玉郡太駄村字平沢（児玉町）は古の村名なり、タイラサワと称す。また、新座郡岡村字平沢、秩父郡久那村字平沢あり。○群馬県勢多郡富士見村十一戸。○栃木県下都賀郡野木町十戸、足利市四十戸。○茨城県東茨城郡茨城町四十戸、西茨城郡岩間町三十六戸、ひたちなか市五十四戸。○長野県上伊那郡飯島町二十三戸、箕輪町四十七戸、宮田村六十三戸、下伊那郡高森町十八戸、豊丘村二十一戸、東筑摩郡山形村二十戸、茅野市六十八戸、伊那市二百六十戸、飯田市二百五十戸。○新潟県西蒲原郡分水町二十戸、三島郡越路町三十八戸、和島村十七戸、北魚沼郡川口町三十二戸、小出町二十戸、堀之内町四十三戸、長岡市二百戸、小千谷市百六十戸。○福島県田村郡常葉町十二戸、いわき市六十戸。○山形県東根市四十四戸。○秋田県能代市二十七戸。○岩手県稗貫郡石鳥谷町三十戸、和賀郡沢内村十二戸。○青森県西津軽郡深浦町二十戸、岩崎村二十二戸、南津軽郡田舎館村十八戸あり。

一　足利衆平沢氏　武州児玉郡及び西上州は足利長尾氏領で、両国の人々は長尾氏家臣となる。平沢氏は都賀郡小山庄友沼村（野木町）に八戸存す。当村は永禄三年までは古河公方の御料所であった。足利衆及び次項の平沢氏は友沼村出身の出稼衆か。永禄三年関東幕注文に「下野国足利衆、長尾但馬守・九ツともへにほひすそこ、家風平沢左衛門三郎・扇、同心衆安中将監・あふふの丸、同心安保次郎・月、同小幡次郎・かふ竹團、同小幡道佐・おなしもん、平沢宮内左衛門・扇」とあり。家風は平沢氏だけで姻戚関係なり。

二　児玉郡御嶽城主平沢氏　児玉郡及び西上州の神流川流域は下野国足利領であり、足利長尾氏家臣の平沢氏は御嶽城主長井氏の名跡を継承して長井氏を称す。長井氏系図に「長井左衛門実治（天文六年卒）―実氏―女子（平沢兵庫妻）、実氏の弟長井豊前介実通（古河公方足利晴氏に属す、天文二十三年古河討死。母長根次郎入道休清女、実は小幡之女）―豊前介正実（武州御嶽・上州三ツ山之両城を持ち、晴氏を去り、武田氏に属す。天正九年五月二十二日上野国鴟巣山に於て戦死、法名浄覚。母平沢八郎左衛門安元女）―与八郎実吉、弟右衛門八郎実久」と見ゆ。正実は平沢安元の子、或は孫であろう。藤岡市下日野の黒沢文書に「永禄八年四月一日、渡瀬・児玉郷を宛行う。黒沢玄蕃允殿、平左政実花押」。「永禄八年八月十六日、玄蕃に宛へた渡瀬・児玉分のほかに安保中務少輔被進置三十貫五百文の地を新恩として宛行う。黒沢源三殿、平沢政実花押」と、平沢左衛門尉政実なり。御嶽城下の金鑽寺文書に「永禄十三年庚午六月二十八日、今度当城之儀如存分達本意□然者為新寄進候、植竹村寺田之内三貫文所領□奉寄附候、豊前守政実花押」。北条氏邦宛の氏康書状（新田文庫）に「元亀元年六月二十九日、御嶽の仕置先書に申す如く、先ず当意をなだめ、小田原へ申し入るべき儀に非ざる間、平沢・浄法寺共和融致すべき由、如何にも身に成り懇に申さるべく候、猶致し様は使を以って申すべく候」。北条氏は御嶽城主平沢政実と三ツ山城主淨法寺氏（芦田氏）を和融させて味方に引き止めようとした。安保文書に「元亀元年七月朔日、駿河国薩埵山陣以来の数度の戦功や、小幡三河守・同長根両人を引付ており、その忠信について証拠がないとして浄法寺氏が異議を申し立てている。特に其方は老母を人質として鉢形へ指し出し、さらに御嶽の本城・中城へ北条方の軍勢を駐留させたいという申し出は、一点の疑いもない。また浄法寺氏は当方より追放する。平沢左衛門尉殿、氏康花押」と見ゆ。この安保文書は平沢政実に宛てられたもので、平沢をすり消して安保と書いてある。北条氏は政実に対して様々な引き止め工作をしたが失敗し、政実は武田方についてしまった。元亀頃までは平沢氏を名乗っており、江戸時代の戦記物は長井（永井）と記してある。上野国志に「緑野郡三ツ山は長井豊前守正実が居城なり。長井は永禄十三年武田に属す」。甲陽軍鑑に「永禄十三年四月半に、信玄公は西上野に御逗留なされ候。小幡三河御味方、永井豊前又味方に罷成、武蔵の内、三千貫永井豊前、五千貫小幡三河両人に下し被る」と見ゆ。飯塚文書に「午二月二十日（天正十年）、今日敵相動候処、別而走廻無比類候、飯塚六左衛門尉殿、政実花押」と。政実は神流川合戦にて上州方に属し天正十年六月討死す。政実没後は、三ツ山城主長井右衛門大夫信実が相続す。長井条十一、十二項参照。

三　葛飾郡小平村（庄和町）　八幡社文化三年庚申塔に平沢善兵衛、文政六年庚申塔に平沢弥五郎あり。一戸現存す。

四　同郡杉戸町　明治三十五年乾物商平沢吉太郎。昭和三年興信録に「平沢吉太郎・所得税九円・営業税二十八円」あり。一戸現存す。

五　同郡神明内村（幸手市）　香取社享保十七年庚申塔に平沢幸兵衛あり。現存無し。

六　埼玉郡岩槻町　表慈恩寺村年不詳道標に岩付平沢六兵衛あり。

七　同郡平林寺村（岩槻市）　明治八年騎西町釜屋文書に平林寺村酒造業平沢平十郎あり。現存無し。

八　同郡下高柳村（加須市）　八坂社明治二十六年碑に平沢文五郎あり。二戸現存す。

九　同郡町屋新田（加須市）　当村慶応四年馬頭尊に道木沼村平沢清五郎あり。一戸現存す。

一〇　同郡川口村（加須市）　明治八年騎西町釜屋文書に川口村酒造業平沢源蔵あり。現存無し。

一一　同郡戸ヶ崎村（菖蒲町）　菖蒲神社天明八年絵馬に平沢喜兵衛。吉祥院文化九年廻国塔に菖蒲町平沢甚兵衛。文政七年戸賀崎門人帳に菖蒲町平沢敏松。菖蒲神社安政二年水鉢に平沢辰五郎、明治九年水鉢に平沢惣七・平沢惣助・平沢弥八・平沢五兵衛。明治九年戸ヶ崎村戸長平沢惣七・弘化四年生、副戸長平沢弥八・文政九年生、副戸長平沢惣助・文政十二年生、副戸長平沢文吉・嘉永四年生。菖蒲神社明治十年神道無念流奉納額に平沢金造・平沢佐太郎・平沢倉吉・平沢釣吉。明治二十一年皇国武術英名録に神道無念流菖蒲町平沢治三郎。明治三十五年営業便覧に玩際物商油屋平沢清次郎・米穀商平沢惣助・同平沢伊之助・同平沢甚三・穀仲買商平沢弥七・小間物商平沢広吉・呉服商平沢六三郎・同平沢勇吉・同平沢イノ・薬種商婦王湯本舗平沢藤兵衛・下駄商平沢文左衛門・荒物商平沢林蔵・同平沢文吉・同平沢弥太郎・質商平沢佐太郎・飲食店平沢六之助・平沢文蔵・平沢倉吉。明治三十年所得税下調査簿に平沢倉吉・反別三十九町八反歩・地租四百四十円、平沢栄蔵・反別四町一反歩・地租三十八円。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治三十年農業平沢倉吉・嘉永三年生・国税五百三十九円、大正十四年平沢三郎・明治五年生・国税九百七十七円・県下百九十七位。大正十二年大地主名簿に平沢三郎・田二十六町九反歩・畑二十五町三反歩所有。県会議員雑貨石油販売業平沢常三郎・明治十二年生。昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「菖蒲町・平沢三郎・五百九十七円、平沢栄蔵・百九十四円・九十八円、平沢常三郎・百三十二円、平沢精一郎・四十一円・五十六円、平沢弥七・二十二円」あり。十二戸現存す。

一二　秩父郡上田野村（荒川村）　秩父志に「上田野村、若御子社々司平沢豊前正」と見ゆ。現存無し。

一三　日蓮宗信徒の平沢氏　秩父郡御堂村浄蓮寺過去帳に「法祐・平サワ・寅年七月」あり。江戸初期なり。比企郡平沢村住人か。

平澤　ヒラサワ　各市町村に存す。

平沢津　ヒラサワツ　狭山に存す。

平敷　ヒラシキ　新座に存す。

平識　ヒラシキ　草加に存す。

平下　ヒラシタ　川口、浦和、和光、狭山、所沢、越谷、深谷等に存す。

平柴　ヒラシバ　川口に存す。

平島　ヒラシマ　埼玉郡百間村字平島（宮代町）は古の村名にて、彦兵衛新田最勝寺寛政八年千手観音に平島村と見ゆ。各市町村に存す。○茨城県つくば市二十五戸。○千葉県安房郡鋸南町十六戸、館山市四十九戸、富津市三十戸。○山梨県北巨摩郡長坂町三十二戸、甲府市四十戸あり。

一　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「百五十石・本国信濃生国武蔵・平島七兵衛・二十七歳」あり。

二　関東郡代伊奈氏家臣　寛政二年伊奈家中連署（杉浦文書）に「御勘定場定役・五人扶持格・平島大兵衛」。

三　足立郡横曽根村（川口市）　昭和三年興信録に「平島完市郎・所得税九円」あり。現存無し。

平嶋　ヒラシマ　各市町村に存す。

平清水　ヒラシミヅ　鷲宮に存す。

平城　ヒラシロ　大宮に存す。

平須賀　ヒラスカ　川口、伊奈等に存す。

一　小山氏族平須賀氏　葛飾郡平須賀村（幸手市）より起る。下高野村永福寺伝に「建治二年六月朔日、木立郷光明密院檀那平須賀太郎左衛門正安」と見ゆ。光明院宝聖寺は慶長十一年文書に「幸手平須賀宝聖寺」とあり、是以前に平須賀村へ移転す。

平瀬　ヒラセ　各市町村に存す。新潟県見附市十二戸あり。

一　浦和町　昭和三年興信録に「平瀬粂吉・所得税十一円」あり。

平勢　ヒラセ　上尾に存す。

平瀬戸　ヒラセト　大宮、吉見に存す。

平園　ヒラソノ　浦和、与野に存す。

平太　ヒラタ　熊谷に存す。

平多　ヒラタ　大宮に存す。

平田　ヒラタ　火ノ国は日羅、火羅と称し、平の佳字を用いる。ヒ、ヒノクマ、ヒラ参照。田は郡県・村の意味。田のことは太田条参照。阿羅（百済、伽耶地方）は新（あら）と書き、阿耶とも称し漢（あや）と書く。新漢人（いまきあやひと）にて、延暦四年六月紀に「坂上大忌寸苅田麻呂等上表して言す、臣等、本是後漢霊帝の曾孫阿智王の後なり云々。坂上、平田等、忌寸十姓十六人に、姓を宿祢と賜ふ」と見ゆ。サカノウエ参照。坂上族平田氏の渡来地を称す。埼玉郡百間領須賀村（宮代町）身代神社嘉永五年御神燈に「平田・藤城幸八」と見ゆ。須賀村の藤城家附近の小名なり。同郡佐間村字平田あり。○群馬県利根郡新治村十四戸、群馬郡群馬町二十戸、佐波郡境町十八戸、邑楽郡大泉町六十戸、伊勢崎市七十戸。○茨城県稲敷郡江戸崎町二十戸、猿島郡総和町十七戸。○千葉県安房郡鋸南町十九戸。○山梨県南巨摩郡身延町十五戸。○長野県下高井郡野沢温泉村十八戸、東筑摩郡生坂村十八戸、麻績村二十五戸、飯田市五十三戸。○新潟県岩船郡荒川町二十九戸、関川村八十戸、上越市九十戸。○山形県東置賜郡川西町二十四戸、長井市五十五戸。○宮城県亘理郡山元町三十戸。○岩手県気仙郡三陸町二十九戸。青森県南津軽郡藤崎町十七戸。○島根県邑智郡桜江町十七戸、松江市五十四戸。○鳥取県米子市四十三戸、鳥取市五十七戸あり。

一　成田氏族平田氏　佐間村字平田新地（忍城下清善寺の一廓）は平田氏の屋敷名なり。成田記に「成田資員の子六郎次郎顕忠は、忍城の南に出城を築き平田殿と称す。清善斎と号し、永正十六年五月八日没す」と見ゆ。成田条十一項、吉羽条三項参照。

二　忍城士の平田氏　成田分限帳に「七十貫文・平田駿河、三十五貫五百文・平田岡之助、二十五貫文・平田団之助」あり。

三　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御家老・二千石・平田弾右衛門、御中老・五十人扶持・平田新左衛門、御馬廻・三百石・平田治部右衛門」。享保八年軍役帳に「御家老・千石・平田弾右衛門、四百石・平田治部右衛門、五両二人扶持・平田軍右衛門」あり。

四　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・十六石四人扶持・平田豊之介」。万延二年川越藩分限帳に「御馬廻・十五石四人扶持・平田小野左衛門、惣領平田小十郎」。慶応元年前橋藩松山陣屋付に「十石二人扶持・平田近三」。

五　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・九石二人扶持・亡養父藤兵衛・平田昌蔵・三十四歳、勘定奉行支配・四石余二人扶持・平田松之助・三十三歳」あり。

六　旗本水野石見守（旧鉢形城士）家臣　水野忠貞・忠顕家中分限帳に「七両二人扶持・平田幸之助」あり。

七　葛飾郡権現堂村（幸手市）　水神社明治四十一年碑に平田半蔵あり。現存無し。

八　埼玉郡大瀬村（八潮市）　下大瀬村宝光寺明治四十四年碑に平田嘉兵衛あり。現存無し。

九　同郡越ヶ谷宿　本町浅間社延宝三年水鉢に平田三郎兵衛あり。

一〇　同郡岩槻町　浅間社文政十三年庚申塔に平田善蔵あり。

一一　同郡加倉村（岩槻市）　久伊豆社元禄十五年庚申塔に加倉村平田安兵衛あり。二戸現存す。

一二　同郡埼玉村（行田市）　紀州高野山清浄心院供養帳に「法印権大僧都□快・武州忍埼玉平田六左衛門立之・寛永十一年九月二十四日」。行田史譚に「埼玉村、寛永年中名主平田六左衛門、享保六年名主平田六左衛門、天保元年名主平田久太郎」。藤井村下組平野氏家譜に「埼玉村にて名主平野長次郎（寛文十三年没）と申候、平田六左衛門と申者に名主役迄被下候、今に平野屋敷と申埼玉村に有之由、長次郎は江戸小伝馬町へ出立す」と。盛徳寺平野家墓碑に「寛保三年、平田新内須栄、嫡子同苗枚伸謹書之」とあり。前玉神社宝暦十年常燈明に平田六左衛門。県会議員農業平田計三・慶応二年生あり。一戸現存す。

一三　同郡谷郷（行田市）　春日社文化九年水鉢に一本町・平田六右衛門あり。一戸現存す。

一四　同郡下須戸村（行田市）　上吉羽村金子家系図に「鳥海四郎左衛門尉重隆（貞享五年没。妻忍須戸村平田市兵衛息女・宝永七年没）」あり。現存無し。

一五　足立郡芝村（川口市）　当村に此氏多く存す。慈星院宝永二年文書（平田富久所蔵）に平田善右衛門所有と見ゆ。文政三年成就庵筆子帳に宮根平田伊八・平田福松。太田窪村行弘寺嘉永二年常夜燈に芝村平田清記、安政六年供養塔に芝村平田勘解由。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に芝村平田伊之助。伊刈村力神社嘉永五年鳥居碑に芝村平田源蔵。氷室社安政二年敷石碑に平田庄右衛門・平田沖右衛門妻。高木大行院万延二年不動尊に当所平田勘解由。羽尽呂神社文久元年庚申塔に平田太郎。八幡社文久三年石華表碑に当村・平田庄右衛門・平田伊之助・平田五郎兵衛・平田太郎兵衛・平田吉右衛門・平田善右衛門・平田清九郎・平田沖右衛門。明治九年芝村東組副戸長平田伊之助・文政六年生。慈星院明治十年碑に平田五郎兵衛・平田嘉七・平田清右衛門・平田清一郎・平田伊之助・平田孫市・平田沖右衛門・平田忠七・平田兵三郎・平田佐治右衛門・平田兵蔵・平田作兵衛・平田清三郎・平田茂兵衛・平田幸蔵・平田伊兵衛・平田太郎兵衛・平田勘蔵・平田吉右衛門・平田善右衛門・平田金兵衛・平田長右衛門・平田幸次郎・平田弁次郎・平田仙蔵・平田平三郎。八幡社明治四十年碑に芝村平田彦次郎・平田金吉・平田善助あり。

一六　同郡上青木村（川口市）　地蔵堂明和五年六地蔵に上青木村平田勘右衛門。氷川社天保十三年幟碑に平田六右衛門、明治二十八年碑に平田安右衛門・平田由次郎・平田安久次郎・平田亀次郎。安楽寺明治三十三年大日堂碑に平田亀五郎・平田芳次郎あり。十三戸現存す。

一七　同郡草加町　明治三十五年水菓子商平田辰五郎・薬種商酢屋平田万助あり。

一八　同郡瀬崎村（草加市）　鈎上村円福寺鐘銘に「瀬崎村平田武左衛門勝吉妻当所中村治部左衛門息女・宝永七年入寂」あり。三戸現存す。

一九　同郡原島村（草加市）　神明社天保八年御神燈に平田長左衛門・平田忠蔵。明治九年副戸長平田長左衛門・文化十五年生あり。七戸現存す。

二〇　同郡蕨町　三学院明治十五年水鉢に平田三五郎あり。

二一　同郡浦和町　明治三十五年鉄葉職平田啓吉あり。

二二　同郡三室村（浦和市）　松ノ木毘沙門堂宝暦十三年六地蔵に平田藤右衛門。文殊寺隣文政七年榛名碑に松木組平田仙之助。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に松ノ木平田富蔵・芝原平田仙吉。文殊寺安政四年筆子碑に松ノ木平田綱五郎、明治十五年水鉢に三室平田市太郎。明治九年副戸長平田藤次郎・天保十年生あり。六戸現存す。

二三　同郡川面村（鴻巣市）　字馬洗場寛延三年供養塔に川面村平田丈右衛門・平田仲右衛門・平田次郎右衛門・平田弥左衛門。清滝寺明治十四年鐘銘に平田弥左衛門・平田八百蔵・平田信次郎・平田八五郎・平田幸五郎。三ツ木村三ツ木神社明治三十年碑に川面・平田茂右衛門・平田佐四郎あり。六戸現存す。

二四　入間郡所沢町　明治十年薬品荷主平田吉五郎。神明社明治十七年富士講碑に当町平田喜太郎。明治二十一年幼稚園名簿に久米村金山平田定次郎・明治十八年生あり。

二五　同郡北野村（所沢市）　正徳四年北田文書に宮座々配・平田市郎右衛門。全徳寺文久三年地蔵尊に東内手・平田由五郎・平田文次郎・平田喜平次・平田留五郎・平田宇之助・平田清太郎。明治三年議定書に地頭小林領平田文次郎・平田太七・平田由五郎・平田卯之助・平田佐平二、地頭花井領上組平田清太郎。明治十五年北広堂碑名簿に町田向・生徒に平田亀吉・平田富太郎・平田佐吉・平田銀蔵・平田幸次郎。天神社明治四十年碑に当所平田晋五郎・平田松五郎あり。十二戸現存す。

二六　同郡北野新田（所沢市）　吉祥院開基は平田氏なり。吉祥院明和六年廻国塔に武蔵野新田・平田甚兵衛・平田甚五兵衛、文化二年供養塔に北野新田平田長吉郎母。明治十年荷車稼人平田増太郎。明治十五年北広堂碑名簿に平田久蔵。北野村天神社明治四十年碑に富岡村北中・平田長吉あり。四戸現存す。

二七　同郡中富村（所沢市）　毘沙門堂文化三年宝篋印塔に中富村平田幸七あり。現存無し。

二八　同郡川越町　神明町神明宮明治初期御神燈に松山街道平田専之助。御嶽社明治三十年碑に平田与右衛門。相州大山阿夫利神社佐藤大住家大正三年奉納額に川越境町講社平田平吉あり。

二九　同郡古市場村（川越市）　氷川社明治四十三年碑に平田長吉あり。一戸現存す。

三〇　同郡中福村（川越市）　堀兼村堀兼神社文政四年御神燈に中福村平田弥三兵衛あり。二戸現存す。

三一　同郡堀兼村（狭山市）　堀兼神社万延元年浅間碑に平田源次郎あり。現存無し。

三二　同郡下奥富村（狭山市）　川越喜多院五百羅漢像銘文に寛政頃・下奥富村平田金七.。梅宮神社前天保十二年敷石碑に下奥富村平田太右衛門。奥富神社明治三十九年碑に奥富村平田福太郎あり。七戸現存す。

三三　同郡黒須村（入間市）　明治二十二年埼玉勧業会員平田近三あり。

三四　同郡中宗岡村（志木市）　志木町不動堂明治十四年不動尊に中宗岡宿組平田吉五郎あり。二戸現存す。

三五　同郡小山村（坂戸市）　御祭礼之覚写（大徳院旧蔵文書）に「卯正月七日（天正七年か）、日さい衆、森田、山崎、平田、広沢、入」と、土豪衆なり。風土記稿小山村条に「旧家者勘次郎、先祖は平田肥前守と云ふ。此人当国の名家平山伊賀守に仕へしものなり。肥前守が手沢のものなりとて、刀一口を蔵す。上けものなれば、銘の有無知るべからず。この余、北条陸奥守氏照より平田が冤罪のことにつきて、主人伊賀守へ与えし書状を蔵す。是によれば平田氏の旧くより当所に住せしことしるべし」と。平田喜代治家文書に「天正八年十二月六日、北条氏照は、平山伊賀守の知行地小山村にておきし、平山家臣浜中氏と平田氏の訴訟につき、処理を中山大炊助に命ぜしことを、中山勘解由左衛門・平山伊賀守に伝ふ」と見ゆ。平田肥前守は多摩郡桧原城主平山伊賀守氏重の家臣なり。三福寺弘化二年巡拝塔に小山村平田五左衛門。明治九年戸長平田佐平・文政五年生、副戸長平田絹五郎・文政五年生。明治十七年戸長平田佐五郎・嘉永六年生。石坂村休山寺明治二十八年碑に小山・平田左紋司・平田新三郎あり。十一戸現存す。

三六　同郡沢木村（坂戸市）　四日市場村小鹿野家由緒書に「小鹿野庄右衛門（天和三年没）―女子（沢木村平田五左衛門室）」。岩殿村正法寺文化十五年什物帳に沢木邑平田政吉。明治九年戸長平田新造・天保七年生、副戸長平田源兵衛・文政十二年生。石坂村休山寺明治二十八年碑に沢木・平田百造・平田伝造あり。四戸現存す。

三七　高麗郡笹井村（狭山市）　広瀬神社明治二十四年碑に笹井平田幸嘉あり。一戸現存す。

三八　比企郡平村（都幾川村）　正法寺明治三十年廻国塔に平村平田辰五郎あり。現存無し・

三九　同郡松山町　文久四年松山町惣代平田宗三郎あり。

四〇　同郡毛塚村（東松山市）　明治十一年地主惣代平田直次郎あり。二戸現存す。

四一　同郡宮鼻村（東松山市）　平田惣兵衛（安永七年没）は大黒部村の大地主にて、子孫は平田菊水医院なり。字大黒部明和三年供養塔に大黒部村平田惣兵衛、寛政十二年六地蔵に平田宗五郎・平田利八、文政四年馬頭尊に大黒部平田宗兵衛。西本宿岡田文書に寛政頃伊勢参宮・大黒部村平田権四郎。岩殿村正法寺文化十五年什物帳に大黒部村平田宗兵衛。広野村川島鬼鎮神社慶応二年筆子碑に大黒部村平田酒造・平田右吉。明治九年戸長平田闊三・弘化三年生、副戸長平田宗重・天保六年生あり。五戸現存す。

四二　同郡石坂村（鳩山町）　当村寛政五年馬頭尊に平田吉蔵・平田磯八・平田孫八・平田常八・平田権右衛門。休山寺明治二十八年碑に石坂・平田宇吉・平田庫吉・平田作次郎・平田祐吉あり。十戸現存す。

四三　秩父郡大宮郷　明治三年荒物商平田新兵衛・五十一歳、貸本屋平田キンあり。

四四　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・平田弁次郎・六十一円・五十六円、平田音吉・十円・二十三円、川口町・平田善助・四十六円・三十五円、芝村（川口市）・平田八郎・二十一円・四十七円、平田驥三郎・十八円・四十三円、平田仁左衛門・十円・十六円、平田清作・十円・十一円、新郷村（川口市）・平田政之助・四十五円、草加町・平田長右衛門・四十六円、所沢町・平田勝治・十四円、松山町・平田健造・十五円、高坂村（東松山市）・平田菊水・五十四円」。

枚田　ヒラタ　浦和に存す。

平高　ヒラタカ　上尾、大井等に存す。

平竹　ヒラタケ　新座に存す。

平館　ヒラダテ　大宮、上尾、与野、川越、岩槻、吉川等に存す。岩手県紫波郡紫波町十三戸、青森県十和田市五十戸あり。

平舘　ヒラダテ　浦和、川越等に存す。

平谷　ヒラタニ　浦和、大宮、川口、上尾、桶川、上福岡、春日部、松伏等に存す。島根県益田市十三戸あり。

平地　ヒラチ　大宮、所沢、日高、三郷等に存す。宮城県古川市十六戸あり。

平津　ヒラツ　鴻巣、幸手等に存す。千葉県香取郡山田町九戸、銚子市四十戸あり。

平墳　ヒラツカ　狭山、草加等に存す。

平塚　ヒラツカ　古代朝鮮語で津は人や物の集まる所、加は村の意味。平ノ国の渡来人集落を平塚と称す。ヒ、ヒノクマ、ヒラ参照。大里郡平塚郷（熊谷市）は、春原庄万吉村字平塚放光院附近を本平塚村と称し、平塚村は今の平塚新田を称す。野原村文殊寺嘉永元年碑に平塚村小彼留五郎、明治二年碑に本平塚村放光院・平塚新田小彼留五郎とあり。鎌倉二階堂永福寺（ようふくじ）文書に「観応三年四月十三日、足利尊氏は、武蔵国春原庄内平塚郷地頭職長江八郎左衛門尉跡を鎌倉永福寺に寄進す」（京都大学所蔵文書）。足立郡平塚村（上尾市）、高麗郡平塚村（川越市）あり。入間郡上奥富村字平塚（狭山市）及び児玉郡下真下村字平塚（児玉町）は古の村名なり。○茨城県那珂郡大宮町二十戸、緒川村十八戸、美和村七十戸、行方郡麻生町二十三戸、結城郡石下町二十戸、千代川村二十戸。○山梨市三十六戸。○長野県上水内郡信濃町二十三戸。○新潟県西頸城郡能生町二十九戸。○山形県天童市三十戸。○秋田県平鹿郡平鹿町二十六戸、山本郡琴丘町三十三戸、能代市四十六戸。○宮城県桃生郡河南町二十三戸、矢本町二十二戸、牡鹿郡牡鹿町四十二戸、女川町百七戸、遠田郡涌谷町二十戸、石巻市三百四十戸。島根県八束郡鹿島町四十二戸あり。

一　豊島氏族平塚氏　豊島郡平塚郷（北区上中里一丁目平塚神社、西ヶ原、田端附近）より起る。桓武平氏諸流系図（越後中条文書）に「葛西恒将―武恒―経家―豊島三郎康家―平塚入道」。紀州那智山天文十七年米良文書に「としま名字之かき立、平つかふんこ殿」と。永禄二年小田原所領役帳に「平塚藤右衛門、二十貫文・江戸平塚内西原」と見ゆ。

二　忍城士の平塚氏　成田分限帳に「十三貫文・平塚新五左衛門」あり。

三　忍藩阿部氏家臣　享保八年忍藩軍役帳に「三両二人扶持・平塚伝之丞」。

四　埼玉郡広田村（川里町）　広田村開発者に「文禄二年、平塚仲条は引越来る」と。新井条参照。現存無し。

五　同郡加須町　明治三十五年古着商平塚久平あり。

六　同郡下須戸村（行田市）　当村に此氏多く存す。八坂社寛保元年碑に平塚十右衛門、明治六年弁財天碑に平塚与平治。医王寺宝暦十一年供養塔に平塚又市・平塚源七・平塚要左衛門・平塚政右衛門、文化八年十三仏講中に平塚音右衛門母・平塚又市伯母。御嶽社文政元年浅間碑に平塚泰助・平塚茂吉・平塚忠左衛門・平塚清兵衛・平塚伊兵衛。鷲宮村鷲宮神社文政十二年金燈籠に下須戸村平塚鷲之助。砂山村愛宕社嘉永二年二十三夜塔に下須戸平塚又市。安政三年剣術義集館（持田村三田文書）に下須戸村平塚官平。明治九年戸長平塚又市・文政八年生、副戸長平塚伊平・天保五年生、副戸長平塚林吉・嘉永元年生。八坂社明治十一年御神燈に平塚伊平・平塚林吉あり。

七　足立郡新曽村（戸田市）　観音寺天保三年庚申塔に平塚金次郎あり。三戸現存す。

八　入間郡水子村（富士見市）　天保六年般若院講中に水子村上組平塚亀之助・平塚柴蔵・平塚藤吉。明治五年大工職平塚由平・木挽職平塚安五郎・籠職平塚毎次郎・臼職平塚源平。氷川社明治九年八雲社碑に平塚源兵衛・平塚忠七・平塚源之丞・平塚清七・平塚栄吉・平塚弥治郎、明治十三年幟碑に平塚紋次郎・平塚伴次郎、明治二十九年碑に平塚安太郎・平塚岩次郎・平塚藤吉。大応寺明治二十五年碑に平塚太七・平塚辰五郎・平塚寅吉・平塚伴蔵。昭和三年興信録に「水谷村・平塚藤十郎・所得税十八円」あり。九戸現存す。

九　同郡下藤沢村（入間市）　明治二十六年霜災救助表に平塚国太郎。明治四十四年織物製造平塚兼五郎あり。七戸現存す。

一〇　同郡入間川町（狭山市）　明治三十五年竹細工商平塚弁次郎あり。

一一　同郡所沢町　明治七年議定書に平塚長左衛門。岩崎村瑞岩寺明治三十二年地蔵尊に所沢町平塚長三郎。久米村水天宮明治四十一年碑に所沢町川原宿平塚甚蔵あり。

一二　同郡久米村（所沢市）　当村に此氏多く存す。鎌倉時代以前からの土着者なり。仏眼寺延享三年千部供養塔に平塚武右衛門。当村明和三年廻国塔に平塚武右衛門・平塚源治郎。長久寺万延元年宝篋印塔に平塚彦四郎・平塚佐助・平塚宗順・平塚彦兵衛・平塚豊吉・平塚多右衛門・平塚吉蔵・平塚弁太郎・平塚佐五右衛門・平塚源之助。平塚新田は享保十四年平塚氏が開発す。明治七年平塚新田戸長平塚彦兵衛。明治九年久米村副戸長平塚豊吉・文化九年生。本郷村東福寺明治九年常夜燈に久米村平塚栄吉。明治十五年北広堂碑名簿に平塚喜三郎・平塚八重三郎。永源寺明治二十九年敷石碑に久米・平塚信吉・平塚長兵衛・平塚金蔵・平塚仁十郎・平塚仁次郎・平塚栄吉、明治四十年地蔵尊に久米・平塚吉五郎・平塚仁三郎、地蔵山平塚直吉。八幡社明治三十九年碑に平塚富次郎・平塚重三郎。水天宮明治四十一年碑に当所平塚信吉・当所鳩峰住平塚栄吉あり。

一三　久米村の平姓平塚氏　藤原道長後裔一条能保の子参議一条信能、及び大江氏流の江石見前司能行の二人は平姓にあらず。吾妻鑑巻二十五に「承久三年六月十二日、官軍一条宰相中将を山城国真木島に遣す。七月五日、一条宰相中将信能は美濃国遠山庄において首を斬らる」。巻三十五に「江石見前司能行」。巻五十一に「弘長三年十月十日、正五位下行石見守大江朝臣能行卒す」と見ゆ。二人は文永十年以前に没している。所沢村・上新井村は吾妻庄を唱え、久米村も当庄の内なり。上野国吾妻郡は無関係なり。慶長十六年久米郷旧跡誌（平塚久右衛門安定・寛永二十一年没六十三歳の記録）に「文暦元年平氏移住、平信能は一条二位中納言能保卿三代の孫一条宰相中将なり、故ありて上野国吾妻郡に住す、故に吾妻を以て姓とす。能行は信能の義弟なり、文暦元年某二人相□□□□□□国に移り□□□□信能当郷の中央に住し姓を復古して平氏といふ、是より其邸き及び連□□□地を吾妻と唱ふ、能行も同郷の東北に住す、青石塔婆に『文永十年十月十八日、平信能、平能行』とあり。能行は鎮守府将軍上総介良兼四代の孫左衛門尉致経五男秩父六郎将恒十代の孫江石見前司なり。平信能の嫡子能充、其子充親、充親の子信量。平能行の嫡子正□□□□道照、道照の子景行。康永二年春、信量・景行二人相伴って八国山に□猟せ□□□時に新田公義兵の脚跡を賞し、斯に感ありとて公の白旗を立て玉う塚の塚といふ文字を採り姓を平塚と改められたり。正徳庵は天王社の別当所なり、其庵主道照は平能行の孫某の代より修験となり嘉暦三年天王社を勧請して諸民安全を祈られたり、夫より代々修験なりしが享禄の頃子孫絶えて廃跡となり、今但天王社と正徳庵という旧地のみあり」と見ゆ。久米村の八国山は将軍塚と呼ぶ。

一四　久米村の源姓平塚氏　長久寺天明五年廻国塔に「生国入間郡久米村平塚源治子、小児婦人医師平塚宗順源常陽」。明治二年久米村神社書上に「神明宮、熊野社、氷川社、神主平塚久米之丞源茂守」あり。

一五　久米村の藤原姓平塚氏　大和国手搔郷（奈良市）は転害・手貝とも書き、東大寺転害門の刀鍛冶師門弟なり。久米村の有名なる刀鍛冶にて、「大和国手搔末・包永十一代孫、寛文十一年信濃守藤原弘包」は文殊市兵衛と云う。刀剣銘に「武州久米住平塚信濃守弘包末孫源寿次」あり、俗名平塚源重・文政十年生なり。

一六　児玉町　明治三十五年醤油商平塚定吉あり。

一七　賀美郡嘉美村（上里町）　中久城村嘉永六年庚申塔に地元平塚鶴松・立野邑平塚鶴八あり。七戸存す。

一八　同郡小浜村（神川町）　小松神社明治十四年碑に平塚兼吉、明治二十九年碑に平塚愛蔵・平塚八百吉・平塚忠平・平塚豊策・平塚玉十郎・平塚辰吉・平塚京三郎、明治四十年碑に平塚貞太郎・平塚夏十郎あり。六戸現存す。

平綱　ヒラツナ　浦和に存す。

平手　ヒラテ　各市町村に存す。

一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「坊主・五石余二人扶持・亡父勘左衛門・平手寛才・二十五歳」あり。

二　川越町　御嶽社明治三十年碑に平手清衛あり。現存無し。

平出　ヒラデ　各市町村に存す。

一　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「川俣番・御馬廻・六十石・平出甚之丞、子供・二人扶持・平出権十郎」。享保八年忍藩軍役帳に「百八十石・平出作左衛門」あり。

平戸　ヒラト　戸は処にて、平ノ国渡来人集落を称す。埼玉郡平戸村（熊谷市）の鎮守他国神社は渡来人の氏神なり。日光輪王寺応永三年大般若経に武州崎西郡成田郷内平戸村住僧と見ゆ。成田も渡来人集落なり。成田条参照。高麗郡平戸村（飯能市）あり。各市町村に存す。○茨城県ひたちなか市二十五戸、水戸市八十戸。○青森県三戸郡階上町十七戸あり。

一　成田氏族平戸氏　埼玉郡成田郷平戸村より起る。成田系図に「成田大夫助隆（八幡太郎義家の伯父）―太郎助広―平戸太郎兵衛―四郎太郎（弟七郎）―孫四郎、弟五郎」。鎌倉円覚寺文書に「建武元年七月二十七日、平戸四郎太郎藤原光行等が、武蔵恩田御厨内田島郷田在家を沙汰せしむ」。京都八坂神社文書に「暦応二年九月二十日、成田基員譲り渡す所領事。武蔵国騎西郡成田郷・箱田村・平戸村・郡司職、平戸小八郎跡事」と見ゆ。

二　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　慶安元年岩槻藩軍役積に「二百石・平戸庄兵衛」あり。

平土井　ヒラドイ　北本、行田に存す。

平藤　ヒラトウ　伊奈に存す。

平床　ヒラトコ　所沢に存す。島根県邑智郡川本町八戸あり。

平富　ヒラトミ　朝霞に存す。

平内　ヒラナイ　川口、上尾等に存す。青森県上北郡百石町十三戸、三沢市十八戸、八戸市二十四戸あり。ヘイナイ参照。

平中　ヒラナカ　川口、和光、草加、三郷等に存す。

平永　ヒラナガ　埼玉郡下之村（加須市）安政六年巡拝塔に平永村と見ゆ。下之村の古名なり。明治八年下之村と明願寺村が合併して、新しい平永村となる。熊谷に存す。

平鍋　ヒラナベ　川口、鳩ケ谷に存す。

平波　ヒラナミ　川越に存す。

平仁田　ヒラニタ　秩父郡久那村字平仁田（秩父市）は古の村名にて、平村慈光寺元禄八年棟札に「小野原村、平仁田村、長留村」と見ゆ。

平糠　ヒラヌカ　上尾、行田等に存す。

平沼　ヒラヌマ　沼（ぬ）は野（ぬ）のことで、助詞のノなり。平野（ひらの）と同じ。葛飾郡平沼村（吉川市）は太田道灌書状に禅興寺領武州平沼郷と見ゆ、金子条十五項参照。比企郡平沼村（川島町）は小田原役帳に比企郡平沼とあり。足立郡戸塚村字平沼組（川口市）は古の村名にて、弁天社寛政五年碑に平沼村とあり。小名平沼は、葛飾郡鍋小路村、埼玉郡横根村、吉羽村、青毛村、足立郡植田谷本村、曲本村等にあり。○茨城県鹿島郡鉾田町百戸あり。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十三俵二人扶持・平沼多規男」あり。

二　入間郡川越町　相州大山阿夫利神社佐藤大住家大正三年奉納額に川越境町講社平沼仙太郎あり。

三　同郡中富村（所沢市）　明治二十年茶業平沼太七あり。四戸現存す。

四　同郡北野新田（所沢市）　吉祥院明和六年廻国塔に武蔵野新田上組平沼与兵衛あり。現存無し。

五　同郡堀兼村（狭山市）　堀兼神社嘉永元年敷石碑に当邑平沼園右衛門・平沼七郎兵衛、万延元年浅間碑に平沼金兵衛。明治九年副戸長平沼七郎兵衛・文化九年生、副戸長平沼嘉平。私塾師匠平沼良三・明治三十年没九十四歳、同平沼園右衛門・明治十三年没五十七歳。明治二十二年埼玉勧業会員平沼善二郎。明治三十六年堀兼村信用組合発起人平沼正三.。川越町三芳野神社明治四十年碑に堀兼平沼敬亮あり。九戸現存す。

六　同郡成瀬村（越生町）　和田村石井家手習帳に「天保十五年、成瀬村平沼善吉。弘化五年、成瀬村平沼竹治郎。嘉永五年、成瀬村平沼茂重郎・平沼周蔵・平沼吉五郎」。見正寺明治初年筆子碑に当村平沼善吉・平沼茂重郎・平沼竹治郎・平沼周助・平沼吉五郎。明治三十四年水利組合員に平沼藤太郎・平沼吉五郎・平沼浦吉・平沼子之吉。大谷村摩多利神社明治四十一年碑に成瀬平沼子之吉あり。七戸現存す。

七　高麗郡中沢村（日高市）　根岸村明光寺寛政二年宝篋印塔に中沢平沼市郎左衛門あり。現存無し。

八　同郡栗坪村（日高市）　明治二十八年荒物商平沼丹次郎あり。現存無し。

九　同郡飯能町　平沼安兵衛の子平沼専蔵は横浜銀行を創立し、貴族院議員・衆議院議員となり、横浜に住す。明治十四年久下分村洋糸商平沼和平・同村旅籠屋平沼茂平。中山村智観寺明治十八年馬鳴菩薩信徒録に飯能町平沼茂平。明治三十五年質商平沼直吉あり。

一〇　同郡中山村（飯能市）　天保三年狭山茶場碑記に中山村平沼元右衛門恒萬。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、中山村平沼伊兵衛」。相州大山阿夫利神社下社嘉永四年御神燈に飯能町織物商講中平沼伊兵衛。明治九年副戸長平沼寅吉・天保十三年生。相州大山寺本堂明治三十四年柱碑に武州飯能町平沼伊兵衛・平沼万治。明治四十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に織物商平沼伊兵衛・天保十三年生・国税千二百十三円・県下四十七位あり。

一一　同郡中藤村下郷（飯能市）　明治九年戸長平沼栄次郎・文政十年生。明治十三年山稼議定書に平沼栄次郎・平沼倉次あり。十二戸現存す。

一二　同郡長沢村（飯能市）　明治九年戸長平沼伝平・文化二年生あり。五戸現存す。

一三　秩父郡南村（飯能市）　当村中沢組に此氏多く存す。天神社棟札に「丁天徳元年、武州秩父郡、神主平沼刑部大輔、氏子上中中沢村」。平安時代なれど、後世の作か。「延徳四年壬子二月十九日、翁上中沢道了、本願平沼兵衛次郎重政・同源六重宗、社人平沼八太夫・同子右衛門四郎太夫」。我野神社（旧妙見社）棟札に「明応四年乙卯十一月二十六日、修造奉行平沼兵衛次郎重政」。「天文十八年己酉三月日、奉行平沼兵庫助忠政」と見ゆ。天正五年創建の宗穏寺は平沼氏の開基なり。多摩郡高尾山薬王院明和六年文書に秩父郡上吾我野郷中沢村平沼利左衛門・平沼利右衛門。風土記稿南村中沢組条に「天神社の神職平沼河内」。塚越村住吉神社寛政十一年文書に秩父郡上家野南村天満宮祠官平沼若狭。当村寛政四年供養塔に秩父郡中沢村平沼文右衛門、嘉永四年碑に平沼粂治郎。明治九年副戸長平沼喜平・天保二年生あり。

一四　同郡南川村（飯能市）　当村に此氏多く存す。風土記稿南川村条に「正蔵庵の開基平沼美濃・法号長岡道久居士・文明年中とのみ勒して、没する月日を伝へず」。平村慈光寺千手観音堂元禄八年棟札に我野南川村平沼八郎左衛門。字上久通寛政六年地蔵尊に平沼浦之助。字下久通文政二年馬頭尊に平沼茂八、文政三年碑に平沼利八.。明治九年南川村副戸長平沼八郎治・嘉永六年生あり。

一五　同郡坂元村（飯能市）　中山村智観寺万延元年本堂再建覚書に畳屋我野中尾・平沼紋次郎・同所平沼佐太郎。明治九年坂元村副戸長平沼佐太郎・弘化二年生あり。現存無し。

一六　同郡上名栗村　字竹の内安永五年地蔵尊に平沼庄右衛門（子孫平沼金八郎）。字鳥居嘉永七年供養塔に原鳥居諏訪道・平沼源左衛門。明治九年戸長私塾師匠平沼源一郎（文化十一年生、明治十九年没）。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年材木商平沼源一郎・文久元年生・国税八百八十三円・県下七十四位、大正十四年平沼弥太郎・明治二十五年生・国税三千八百五十一円・県下二十三位（県会議員）あり。十戸現存す。

一七　同郡下名栗村　気楽流柔術横瀬村加藤門弟に下名栗村平沼栄次郎あり。一戸現存す。

一八　同郡横瀬村　当村に此氏多く存す。宝登山神社明治七年棟札に大工横瀬村平沼源治郎。明治十四年神輿寄附連名帳に五番耕地苅米・平沼元七・平沼治三郎・平沼源治郎・平沼安五郎・平沼甚蔵・平沼利吉、六番耕地中郷・平沼卯三郎・平沼勇太郎・平沼栄助・平沼伊勢助・平沼安五郎・平沼助治郎。猿田彦神社明治四十三年碑に平沼良助・平沼米吉・平沼清作・平沼富造・平沼卯三郎・平沼助次郎あり。

一九　同郡大宮郷　明治三年湯屋平沼勇太郎、郷宿平沼宇兵衛・四十六歳、佃作平沼新一郎。明治三十五年旅人宿平沼関三郎あり。

二〇　同郡金崎村（皆野町）　三峰神社史料集に文化十三年金崎村名主平沼右衛門あり。現存無し。

二一　同郡安戸村（東秩父村）　御堂村大霊神社明治中期碑に平沼一あり。一戸現存す。

二二　比企郡小川町　八宮社文化三年御神燈に平沼庄兵衛、同年頃石御宮寄進碑に平沼儀兵衛。信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州比企郡小川町平沼儀右衛門。明治三十五年篩絹製造緑屋平沼又造・荒物商平沼勝五郎あり。

二三　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「桶川町・平沼良助・九円・三十三円、入間村（狭山市）・平沼正三・九円、越生町・平沼静治・十九円、飯能町・平沼伊兵衛・千二百六十八円、平沼常助・八十九円、名栗村・平沼弥太郎・千四百八十五円、平沼新左衛門・四十六円、秩父町・平沼権平・二十四円、横瀬村・平沼米吉・十一円」あり。

平根　ヒラネ　川口、大宮、蕨、桶川、川越、三郷、行田等に存す。茨城県久慈郡水府村六十五戸、常陸太田市二十六戸あり。

平能　ヒラノ　秩父に存す。

平埜　ヒラノ　川口、熊谷等に存す。

平野　ヒラノ　延喜式に山城国葛野郡に平野神社（京都府北区平野宮本町）を載す。祭神は今木神・久度神・古開神・比咩神なり。今木神は桓武天皇の生母高野新笠姫の祖である百済国王を祀ったもので、久度・古開神はクド・カマドを神格化したもので火神即ち鍛冶神、比咩神は高野新笠の母方の祖神を祀る。貞観式に「平野久度古開三神」と見え、当初は今木神（平野神）・久度神・古開神の三神を祀っていた。平野神は今木ノ国（後の百済）の神である。また、百済川（大阪市）は平野川と称す。ノは助詞にて、平は今木（百済）を指す。ヒ、ヒノクマ、ヒラ参照。葛飾郡平野村（幸手市）は、文永十二年金沢実時譲状に下総国下河辺庄平野村と見ゆ。埼玉郡岩槻領平野村（岩槻市）は、延文六年市場祭文写に崎西郡平野宿市祭と見ゆ。同郡岩槻領上平野村（蓮田市）は、北条氏奉行全阿弥書状（武州文書）に「平野之内平原寺」と、当村平源寺なり。同郡向川辺領平野村（大利根町）あり。小名平野は、埼玉郡鷲宮村、佐間村、足立郡大久保領領家村、内谷村、沼影村、曲本村、入間郡堀兼村、今福村等にあり。また、小名平野原は、足立郡与野町、山久保村、本宿村、西蓮寺村、道場村、西堀村、関村、新開村等にあり。平野村及び平野氏は、平ノ国（今木ノ国）の鉱山鍛冶師にて山間部の鉱山地、砂鉄の採取できる川岸に多く存す。○栃木県那須郡烏山町七十六戸、南那須町三十二戸、塩谷郡高根沢町三十三戸、芳賀郡市貝町七十六戸、茂木町六十二戸。○茨城県那珂郡那珂町八十七戸、鹿島郡波崎町三十五戸、行方郡麻生町三十戸、稲敷郡桜川村四十六戸、ひたちなか市百八十戸。○千葉県海上郡海上町五十八戸、香取郡小見川町三十六戸、大栄町四十四戸、多古町三十七戸、山田町五十戸、長生郡長南町三十八戸、夷隅郡大原町三十二戸、安房郡白浜町四十七戸、旭市二百戸、銚子市百四十戸、木更津市二百五十戸、君津市二百六十戸、富津市三百二十戸。○新潟県北蒲原郡聖籠町五十六戸、中条町五十三戸、中頸城郡柿崎町四十四戸、西頸城郡青海町三十二戸。○福島県河沼郡会津坂下町三十六戸、南会津郡田島町四十二戸、伊南村七十八戸、南郷村三十四戸、桧枝岐村六十三戸。○岩手県上閉伊郡大槌町四十三戸、和賀郡東和町八十九戸、釜石市百二十戸、北上市百九十戸。○青森県南津軽郡浪岡町四十四戸。○島根県浜田市七十二戸、松江市六十戸あり。

一　河原党平野氏　武蔵志に「河原氏古文書に云。治承四年三月、惣侍列位・平野大三郎、是は河原太郎家の武家法令也」と見ゆ。

二　小山氏族平野氏　葛飾郡平野村より起る。下高野村永福寺伝に「建治二年六月朔日、木立郷光明密院檀那平野小五郎助弘」と見ゆ。吉羽参照。

三　松山城士の平野氏　天正庚寅松山合戦記に「外曲輪・与力平野」あり。七十六項参照。

四　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「百五十石・平野竹蔵・是は忍にて罷出・尾張之者」。

五　忍藩阿部氏家臣　慶安年中忍藩分限帳に「御中間頭・二十俵二人扶持・平野佐次右衛門、御台所役・三両一人扶持・平野武兵衛」。享保八年忍藩軍役帳に「七十石・平野武兵衛」あり。

六　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御番頭・八百石・平野仲蔵、御目付・百石・平野俊吾、御寄合・百石・平野波江、御馬廻・百石・平野次郎兵衛、御徒頭・七十六石余・平野休右衛門、御小姓・十八両三人扶持・平野岩太郎、御小姓・同高・平野信五郎、三人扶持・俊吾惣領平野仙太郎、御徒・六石二人扶持・平野藤四郎」。明治四年忍藩士族名簿に「八百石・平野操、百四十石・平野益道、百石・平野省三、百石・平野良男、八十六石余・平野良治、七十六石余・平野信、六十六石余・平野隆兵衛、四両二人扶持・平野竹次郎」あり。

七　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国三河生国同・平野次兵衛・四十歳」あり。

八川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御留守居・四百石・平野源左衛門、御武頭・百五十石・平野段右衛門」。

九　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「二十二俵二人扶持・平野右」あり。

一〇　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「大御目付・百石・山形取立・平野兵左衛門、御物頭・百石・山形取立・平野孫太夫、御馬廻・百石・村上取立・平野兵左衛門」。明治四年前橋藩職員録に「権大属・土木営繕方・平野博見」あり。

一一　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御馬廻・十五人扶持・亡父武右衛門・平野武右衛門・五十二歳、父武右衛門・平野初太郎・二十七歳、書簡次席・十人扶持・亡父無味・平野新助・四十二歳、御勘定人・五石余二人扶持・平野富右衛門・五十三歳」。明治十三年川越銀行株主に川越新田町士族平野以徳・十二株六百円所有。

一二　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「五十俵・平野又左衛門、十五俵・平野伝左衛門」。

一三　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「五十石二人扶持・平野伝左衛門、五石余・平野市郎左衛門、三両余・平野猪兵衛」あり。

一四　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御側用人・平野仁右衛門、御目付・平野右源太、御使番・平野団右衛門、御近習・平野丹治」。

一五　旗本花房氏家臣　児玉町八幡社享保十一年鳥居碑に「花房宇右衛門内、平野六郎左衛門」あり。

一六　関東郡代伊奈氏家臣　浅草旅籠町一丁目の酒造業平野甚四郎は元禄十一年伊奈半左衛門に仕へ、深川を開発し平野町（深川一丁目）と称し名主となる。寛政三年杉浦文書に「御馬役・五人扶持・平野九蔵・上屋敷住」あり。

一七　葛飾郡松伏村　明治四年文書に平野又右衛門・平野勘左衛門あり。五戸現存す。

一八　同郡上赤岩村（松伏町）　無量寿院天保七年庚申塔に平野今次郎・平野清右衛門。明治二十四年本村組中組・平野久平・平野原吉。明治三十年人名録に平野平吉・天保六年生・地租十五円あり。四戸現存す。

一九　同郡金杉村（松伏町）　覚性寺安永二年庚申塔に金杉村平野甚内・平野甚蔵あり。五戸現存す。

二〇　同郡神間村（庄和町）　西神間村文化七年庚申塔に平野伊三郎。万延元年武術英名録に岡安柳剛流下総国神間村平野仲あり。七戸現存す。

二一　同郡西宝珠花村（庄和町）　宝珠花神社元治二年狛犬に当所平埜治兵衛。明治三十年人名録に郵便局長平野元次郎・慶応元年生。現存無し。

二二　同郡上金崎村（庄和町）　香取社天保六年御神燈に上金崎村平野又吉・平野惣次郎。藤塚村香取社江戸末期御神燈に上金崎村平野利三郎・平野喜蔵あり。四戸現存す。

二三　同郡金崎村（庄和町）　香取社寛政十二年庚申塔に平野市五郎、安政二年小御嶽碑に下金崎村平野伊右衛門。藤塚村香取社江戸末期御神燈に金崎村平野政五郎あり。四戸存す。

二四　埼玉郡大曽根村（八潮市）　八幡社安政五年碑に平野由兵衛。明治九年副戸長平野忠蔵・嘉永二年生。大曽根村会議員平野磯吉・天保十年生。八幡社明治二十五年絵馬に平野喜左衛門、明治三十九年絵馬に平野八百吉。浮塚村氷川社明治三十七年絵馬に大曽根平野寅松。十二戸現存す。

二五　同郡越ヶ谷町　久伊豆社明治三十二年榛名碑に平野辰蔵あり。

二六　同郡大沢町（越谷市）　大沢猫の爪（福井文書）に「中宿元年寄平野藤右衛門は、元亀天正之頃より当町に罷在、御入国元和中多分之名所請申候、平野党之本家也、正徳年中迄は其子孫・正徳以後段々名所相減候而も、代々年寄役之家柄に而、今中宿かき屋又左衛門其末々也。下組百姓山中平野新右衛門は、古来藤右衛門之分地、今地面無之候。元禄八年検地、平野藤右衛門屋敷。宝暦七年大沢町百姓、平野本家藤右衛門、山中平野新右衛門」と見ゆ。明治三十五年時計店平野兵蔵あり。

二七　同郡砂原村（越谷市）　不動堂文化二年庚申塔に平野源兵衛・平野宇兵衛・平野吉左衛門・平野七兵衛・平野多吉・平野六右衛門、嘉永元年庚申塔に平野仁左衛門・平野仁助・平野伊兵衛・平野久蔵・平野長八・平野平次郎・平野宗左衛門。野島村浄山寺文化七年供養塔に砂原村平野喜右衛門・平野源七.。久伊豆社天保十二年御神燈に平野初五郎・平野文蔵・平野伊十郎。明治九年副戸長平野宇三郎。明治三十年人名録に平野慶治郎・弘化二年生・地租二十五円あり。十二戸現存す。

二八　同郡小曽川村（越谷市）　野島村浄山寺文化七年供養塔に小曽川村平野三左衛門。岩槻町秋葉社天保三年狛犬に小曽川村平野惣右衛門。久伊豆社明治二十九年碑に平野佐源次・平野仙蔵。明治三十年人名録に平野佐源治・嘉永三年生・地租二十五円あり。二戸現存す。

二九　同郡増林村（越谷市）　明治四年榎本文書に平野政吉。明治七年船積問屋平野源左衛門・但寛保三年三月創立。明治三十年人名録に平野兼之助・安政五年生・地租八十円。上州榛名神社大正四年御神燈に埼玉郡増林村全波平野子之吉あり。十二戸現存す。

三〇　同郡岩槻町　岩附太田氏家臣にて横町に土着し、其の後裔平野又左衛門は町名主となる。浅間社天和二年庚申塔に平野徳兵衛、文政十三年庚申塔に平野伊八・平野吉右衛門・平野熊次郎・平野忠兵衛。明治三十年所得税下調査簿に平野伝吉・反別三十六町三反歩・地租三百三十八円。貴族院多額納税者議員互選人名簿に明治四十四年足袋商平野伝吉・明治四年生・国税六百二十円・県下百三十五位、大正十四年平野伝吉・国税九百十五円・県下二百十三位あり。

三一　同郡大野島村（岩槻市）　神明社天保四年敷石碑に平野勇蔵・平野安五郎・平野富右衛門。長宮村大光寺天保九年筆子碑に大野島村平野安五郎。増長村観秀院安政二年供養塔に大野島村平野八郎兵衛・平野宗五郎・平野彦次郎。明治九年副戸長平野国太郎・天保五年生あり。四戸現存す。

三二　同郡粕壁宿　東八幡社宝暦二年庚申塔に平野喜兵衛あり。

三三　同郡中野村（春日部市）　宝性院寛政元年庚申塔に平野久五郎、寛政十二年庚申塔に平野八蔵あり。三戸現存す。

三四　同郡下野田村（白岡町）　鷲宮社文久二年鳥居碑に平野三右衛門、明治三十五年幟碑に平野六左衛門・平野長左衛門あり。三戸現存す。

三五　同郡外川村（騎西町）　宝永三年玉敷神社文書に騎西町講中・外川村平野俊庵。騎西町場条に「薬師堂は享保元年の建立なり。薬師の像は此のほとりに住し医師平野俊庵と云もの納めしと云ふ」と見ゆ。現存無し。騎西町場へ移転したか。

三六　同郡上種足村（騎西町）　中種足村雷神社寛政六年八幡碑に大塚平野与左衛門。観音堂享和二年宝篋印塔に上種足村平野善蔵・平野仁左衛門。加納村天神社嘉永二年御神燈に上種足村平野仁左衛門。明治四年名主平野仁左衛門・五十八歳。明治九年副戸長平野政次郎・文化九年生。明治二十一年皇国武術英名録に北辰一刀流上種足村平野啓十郎あり。十四戸現存す。

三七　同郡三田ヶ谷村（羽生市）　蓮台寺延享二年鐘銘に平野善兵衛あり。現存無し。

三八　同郡弥勒村（羽生市）　三田ヶ谷村史に「弥勒村に文明の頃、大久保某・平野某・大貫某の三豪族あり。名主平野五太夫は雇傭百人を使役して農事に精励し、奢侈に耽り終わりに衰減す」。四十項参照。明治九年副戸長平野源次郎・安政元年生（名主）。荻島村天満宮明治二十年碑に弥勒平野源次郎。下川上村愛染堂明治二十七年藍製講碑に弥勒平野元次郎・平野源次郎あり。二戸現存す。

三九　同郡藤井村上組（羽生市）　延享二年人別帳に「家族四十一人、平野長左衛門、父元昭、子弥市右衛門、同藤太夫、下男二十一人、下女十四人、酒造業、持高百五十六石余」。四十項参照。尾崎村遍照院文政五年廻国塔に平野長左衛門。香取社文政六年御神燈に平野長左衛門。源長寺慶応四年筆子碑に当所平野善三郎あり。一戸現存す。

四〇　同郡藤井村下組（羽生市）　平野家譜（平野宏所蔵）に「平野氏大祖多田左京は伝久常心居士実父也。忍成田下総守へ近仕之奉公の人也、成田殿小田原落城以後浪人成り被り、忍領の内埼玉村御落着名主成り被る。母方の名字取り平野と改名到候、右左京には生国紀伊国鉄砲名人にて永楽四十貫にて下総守御勤の由」。また、同家譜に「武田信玄家臣多田淡路守末裔、多田左京（埼玉村へ土着し名主を勤む、母方の姓平野に改名、異芳浄薫禅定門、元和九年没。妻埼西領平野左馬之丞娘）―平野長次郎（市左衛門、埼玉村にて名主を勤む、平田六左衛門と申者に名主役迄被下候、今に平野屋敷と申埼玉村に有之由、江戸小伝馬町へ移り、のち弥勒村で没す、伝久常心居士、寛文十三年没）―五郎左衛門長次（上藤井村へ隠居、元禄十三年没）―長女婿善兵衛（町屋村岡戸三左衛門次男、弥勒村を継ぐ、享保三年没）―五太夫（弥勒村住、享保十八年没）―養子善兵衛（上新郷須永十兵衛弟）、弟養子酒造之助（四方寺村吉田六左衛門次男、下弥勒へ分家）」。「五郎左衛門長次の二女婿五郎左衛門義久（四方寺村吉田茂左衛門三男、上藤井村へ分家）―長左衛門頼久」と見ゆ。はたして各村へ分家したか信じられず。同家墓地は埼玉村盛徳寺にあり。埼玉村時代の同家文書に「元和六年・平野五左衛門・平野七兵衛。寛永元年・平野長二郎。寛永十七年・平野市左衛門」と。また、羽生町天神社寛文九年御神燈に平野長親・平野長治あり。県会議員農業平野喜代三郎・嘉永元年生、同議員牛乳販売業平野宏・明治二十八年生あり。現存無し。

四一　同郡埼玉村（行田市）　詳細は四十項参照。一戸現存す。

四二　同郡長野村（行田市）　白山社明治十一年浅間碑に平野清次郎あり。十五戸現存す。

四三　同郡渡柳村（行田市）　常世岐姫神社文久二年水鉢に平野長次郎・平野栄五郎。明治九年副戸長平野長次郎・文政六年生あり。四戸現存す。

四四　足立郡赤井村（川口市）　円通寺延宝五年墓碑に平野三左衛門、宝暦二年十三神碑に平野三左衛門、寛政元年鐘銘に当村平野嘉右衛門、天保五年普門品に平野茂七・平野三左衛門。氷川社文久元年奉納額に平野嘉右衛門、明治八年絵馬に平野三左衛門。明治九年戸長平野茂吉・弘化元年生。氷川社明治三十九年碑に平野嘉助・平野峰次郎・平野三五郎・平野稲太郎・平野兵蔵あり。七戸存す。

四五　同郡鳩ヶ谷町　明治三十五年提灯屋平野藤太郎あり。

四六　同郡下笹目村（戸田市）　当村に此氏多く存す。宝暦十四年庚申塔に平野茂八.。平等寺天保五年供養塔に平野茂右衛門。笹目神社天保六年狛犬に平野茂右衛門あり。

四七　同郡蕨宿　和楽備神社天保三年御神燈に平野清吉・平野孫兵衛あり。

四八　同郡植田谷本村（大宮市）　県会議員平野初夫・大正十五年生あり。

四九　同郡遊馬村（大宮市）　当村に此氏多く存す。八幡社明治四年水鉢に遊馬村上サ・平野太四郎・平埜千代松・平野磯吉。歌人平野万里・昭和二十二年没あり。

五〇　同郡上村（上尾市）　氷川社明治四十二年碑に平野島太郎・平野耕造。

五一　同郡菅谷村（上尾市）　倉田村明星院文政六年新西国塔に菅ヶ谷村平野宇兵衛。明治九年副戸長平野佐惣次・天保二年生。当村明治十七年庚申塔に菅谷村平野園吉。上州榛名神社明治二十二年御神燈に武蔵国北足立郡菅谷村平野園吉あり。五戸現存す。

五二　同郡桶川町　県会議員肥料米穀商平野嘉吉・明治五年生・菅谷村出身なり。

五三　同郡鴻巣宿　野村歓喜天寛延二年常夜燈に鴻巣中宿平野忠兵衛。明治四年旅籠屋平野福蔵あり。

五四　新座郡志木町　明治三十五年酒造業平野定吉あり。

五五　同郡小榑村（練馬区大泉学園町）　志木町敷島社明治初期水車中に小榑平野留五郎。明治四十四年武蔵野軽便鉄道発起人平野平蔵・八十株所有あり。

五六　同郡上内間木村（朝霞市）　志木町敷島社明治八年志木宿河岸船中に上内間木村平野庄次郎。現存無し。

五七　多摩郡日比田村（所沢市）　薬師堂安政六年供養塔に多摩郡日比田邑平野倉之助。本郷村東福寺明治十年供養塔に日比田村平野銀蔵あり。明治十三年に入間郡へ編入す。

五八　入間郡川越町　明治三十五年足袋商平野信吉。明治四十三年川越織物市場仲買商平野寅吉あり。

五九　同郡石井村（坂戸市）　大智寺寛文十年供養塔に石井村平野孫右衛門あり。一戸現存す。

六〇　同郡毛呂本郷　出雲伊波比神社明治二十年御神燈に毛呂本郷平野歌之助・平野代八あり。

六一　同郡長瀬村（毛呂山町）　当村に此氏多く存す。明治四十年多摩郡御嶽講社に平野藤吉・平野米蔵・平野貞之丞・平野清之助・平野鶴吉あり。

六二　同郡黒岩村（越生町）　石井家筆学門人帳に「明治三年、村・平野庄吉・八歳」あり。現存無し。

六三　高麗郡下小坂村（川越市）　女影村霞野神社甲源一刀流文久元年奉納に平野万吉忠義。明治九年戸長平野徳次郎・天保十二年生（名主）。白髭社明治十六年水鉢に平野万吉・平野徳次郎・平野惣次郎・平野弥重郎・平野勇吉。川越町三芳野神社明治四十年碑に小坂平野弥重郎あり。十二戸現存す。

六四　同郡笹井村（狭山市）　当村に此氏多く存す。白川家門人帳に「文政八年、高麗郡笹井村大工彦右衛門事・平野山城」。白鬚社明治二十九年御神燈に水富村平野金造・平野喜三郎、明治四十二年御神燈に水富村平野平次郎・平野金作・平野浜・平野常造、大正元年碑に笹井・平野嘉一郎・平野仲次郎あり。

六五　同郡脚折村（鶴ヶ島市）　当村に此氏多く存す。古代以来の居住者なり。鶴ヶ島町史に「白髭神社祀職は、別当本山派修験八幡山正福院の裔、平野氏は文明二年より四代にわたり八幡山世代と称された。元亀二年より源重朝がそれを継いだ。明治二年に復職して平野姓を宮本に改めた。平野弥次郎は南北朝の頃、久米川合戦に敗れて脚折に土着す。戦国末期に平野甚右衛門が土着す」。入間郡誌に「脚折村白髭神社の錦旗二流は、元亀年間平野弥次郎源重朝の寄進なりとやら称す」。白鬚神社棟札に「天正二甲戌年九月吉日、本願良清、白鬚大明神七ヶ村惣社臑折・太田ヶ谷・針宮・和田・高倉・大六道・小六道、当所之鎮守」とあり。良清は別当修験正福院か。慶安元年検地帳に案内人平野甚左衛門。当村元禄六年庚申塔に臑折村平野六右門・平野与右門、宝暦十年庚申塔に臑折村平野助右衛門。明治四年戸籍に平野文四郎・平野善之助・平野六右衛門・平野角蔵・平野伝十郎・平野岩次郎・平野栄五郎・平野惣右衛門。明治二十年規約に平野柳蔵・平野泰次郎・平野長次郎・平野吉五郎・平野伝十郎・平野仙之助・平野弥蔵・平野慶次郎あり。

六六　横見郡久米田村（吉見町）　当村慶応元年馬頭尊に粂田村平野半蔵・平野惣吉・平野宇之五郎あり。十二戸現存す。

六七　比企郡小川町　明治三十五年餅菓子製造大平堂平野良雄あり。

六八　大里郡熊谷町　明治三十五年薬商平野儀三郎あり。

六九　榛沢郡深谷町　明治三十五年蕎麦商平野藤吉あり。

七〇　同郡宮戸村（本庄市）　当村天明八年庚申塔に平野惣右衛門あり。一戸現存す。

七一　同郡牧西村（本庄市）　上州島村の侠客伊三郎（天保五年に国定忠次に闇討ちされる）の兄弟分に平野兵衛助あり。嘉永元年牧西村絵図に平野伝七・平野伴五郎・平野徳次郎・平野平助・平野儀兵衛・平野弥次兵衛・平野茂八・平野安右衛門・平野源之助。明治九年議定連印簿に平野儀三郎・平野忠七・平野弥三郎・平野佐吉・平野文蔵・平野源七・平野源五郎・平野政吉・平野清七・立会人平野国平・立会人平野伴五郎あり。十四戸現存す。

七二　幡羅郡沼尻村（深谷市）　信州木曽御嶽山清滝不動尊弘化四年碑に武州幡羅郡沼尻村平野国八.。新戒村大林寺明治三十五年筆子碑にヌマジリ平野助松。明戸村会議員に平野留吉・安政四年生、平野元治郎・明治二十九年生あり。八戸現存す。

七三　児玉郡児玉町　古代以来の居住者にて、甲州都留郡平野郷（山中湖村）発祥説は地名附会なり。児玉党真下氏系図に「清水三郎源光行（永禄九年卒、七十歳。妻トキ・児玉村平野氏娘・永禄十五年卒）―義忠―光義―真下左京亮義政（苗字真下と改める。天正十八年卒、三十九歳。妻キャウ・児玉村平野氏娘・天正十九年卒三十八歳）」。平野家先祖書（平野陽所蔵）に「新羅三郎義光十八代裔孫大和守光明、その子土佐守光貞、その子舎人光長・甲州平野郷に住して姓を平野と改る、その子大和佐長明・父と共に児玉に来住し、雉ヶ岡城主夏目豊後守定基に仕える。先祖土佐祐（天正年中頃）―三郎兵衛（慶長元和年中）―治左衛門（寛永年中）―三郎左衛門（承応年中）―治左衛門（元禄年中）―三郎左衛門（享保年中）―麻右衛門（宝暦年中）―治左衛門（安永年中）―麻右衛門（天明寛政年中）―麻右衛門（寛政年末）―麻右衛門（享和より）―麻右衛門（当代）」。風土記稿児玉町条に「旧家徳右衛門、平野を氏とす。先祖を平野土佐と称す。家に天正十八年領主松平玄蕃頭清宗より、宿駅のことに付て出せし文書一通を蔵す」。同家文書の天正十八年十二月八日松平清宗証状に「児玉新宿并郷中江越来候者、云々、平野土佐殿」と。寛永二十一年十月十七日児玉村河原開帳（同家文書）に平野甚兵衛と見ゆ。元田村薬師堂元禄三年鰐口銘に児玉郡八幡山住平野治左衛門正重。八幡社享保十一年鳥居碑に平野麻右衛門・平野七郎左衛門・平野伝左衛門、延享二年御神燈に平野久右衛門・平野伝治郎・平野伝之助。平野家文書に「寛保元年十月大目付河野豊前守様より手前御屋敷へ被仰遣候は、其元家来武州児玉郡児玉村平野治左衛門儀今度御用之儀有之候」。本庄宿石川剣道場門下生に「天明五年、児玉郡八幡山町平野久太郎・平野伝之丞」。児玉本町寛政十二年庚申塔に身馴川平野克明。上真下村寛政十二年庚申塔に身馴川源克明。諸郡銘録（本庄宿戸谷文庫）に寛政期・武州八幡山平野庫之進・俳号凉化。浄土宗実相寺文化九年庚申塔に新宿講中・平野克明。上州東平井諏訪神社明治七年算額に武陽児玉平野光蔵包道。明治九年副戸長平野久蔵・天保四年生。明治三十五年石材商平野常三郎・平野みつ・平野伝太郎。児玉記考に「旧家平野家、平野文太郎・同久蔵・同幸作・同伝五郎・同三郎等皆一族なり。名主役を務め名門にして家系連綿たり、一族二十有五戸。秩父郡大河原村大字安戸に平野平三郎と言ひ当家の祖と其系統を同ふす、同郡に於て三万八千町歩を領せし山田伊賀守氏重の末葉にして今に至る連綿たり」と見ゆ。一族二十五戸とは、関村・阿那志村等を合計してのことか。五戸現存す。

七四　同郡関村（美里町）　当村に此氏の旧家あり。十三戸現存す。

七五　同郡阿那志村（美里町）　当村に此氏の旧家あり。八戸現存す。

七六　秩父郡安戸村（東秩父村）　山田家系記録に「山田伊賀守家老平野宮内」と。子孫は当村山田屋敷を管理している平野良慶家にて、同家五輪塔に「長享二年戊申四月十八日、妙仁善□」。「延徳四年壬子十二月八日、慈母妙詮位」。永正十五年、大永四年銘等あり。三項、七十三項参照。御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に安政二年・安戸村平野太郎左衛門。明治九年副戸長平野平三郎・万延元年生。平村萩日吉社明治二十五年筆子碑に安戸村平埜善五郎・平埜亀吉。能気神社明治二十九年碑に大河原村平野喜太郎・平野平三郎あり。二戸現存す。

七七　同郡上田野村（荒川村）　気楽流柔術加藤門弟に上田野村平野治三郎あり。六戸現存す。

七八　同郡大滝村　明治十年大滝村屋番号に大血川平野福次郎あり。二戸現存す。

七九　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・平野忠・七十八円、平野勝明・十四円、川口町・平野仙太郎・八十一円・四十七円、平野克・百十四円、大宮町・平野寅吉・十一円・三十九円、桶川町・平野嘉吉・百十七円・八十四円、宝珠花村（庄和町）・平野英一郎・五十四円、岩槻町・平野伝吉・千百九十二円、増林村（越谷市）・平野政治・十一円、川俣村（羽生市）・平野晋・四百三円、井泉村（羽生市）・平野準之助・百円、志木町・平野康司・四十八円・七十八円、川越市・平野信吉・二十三円・五十二円、名畑村（川越市）・平野良作・四十九円、平野久司・二十七円、平野弥作・十一円、飯能町・平野常造・十九円、南高麗村（飯能市）・平野げん・十九円・三十三円、熊谷町・平野烈介・十六円、児玉町・平野竹次郎・十円」あり。

平野井　ヒラノイ　志木、越谷に存す。

平ノ内　ヒラノウチ　入間に存す。

平野原　ヒラノハラ　所沢に存す。

平信　ヒラノブ　所沢に存す。鳥取県東伯郡大栄町十戸あり。

平場　ヒラバ　狭山に存す。

平葉　ヒラバ　浦和に存す。

平八重　ヒラハエ　蓮田に存す。

平橋　ヒラハシ　川口、上福岡に存す。

平畑　ヒラハタ　川口、白岡、越谷等に存す。

平畠　ヒラハタ　所沢、久喜等に存す。

平浜　ヒラハマ　戸田、川越等に存す。青森県上北郡六ヶ所村十二戸あり。

平林　ヒラバヤシ　○長野県南佐久郡臼田町二十七戸、諏訪郡原村三十三戸、東筑摩郡明科町四十二戸、波田町三十四戸、生坂村四十八戸、北安曇郡池田町六十戸、白馬村三十戸、松川村百十戸、南安曇郡豊科町八十四戸、穂高町百三十戸、堀金村三十三戸、三郷村二十四戸、更埴市七十六戸、諏訪市二百二十戸、大町市二百十戸、塩尻市七十六戸、松本市二百三十戸、上田市九十戸あり。

一　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「百石・平林十郎右衛門、二十二俵・平林四郎左衛門」。

二　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十八俵二人扶持・平林直次郎」あり。

三　葛飾郡松伏村　松伏神社寛延二年庚申塔に平林重次郎、安政五年狛犬に新田平林権兵衛あり。現存無し。

四　埼玉郡木曽根村（八潮市）　浮塚村氷川社明治三十七年絵馬に木曽根平林与郎あり。現存無し。

五　同郡増森村（越谷市）　増森公民館文化四年地蔵尊に平林浅右衛門。増林村護郷神社天保十年敷石碑に増森新田平林嘉右衛門。明治九年副戸長平林恒蔵・天保九年生あり。三戸現存す。

六　同郡青柳村（草加市）　東覚寺跡享保十年二十三夜塔に平林新左衛門、明治三十五年碑に平林留五郎・文政十二年生・年七十二才とあり。五戸現存す。

七　足立郡草加宿　成田山新勝寺享和二年奉納額に草加宿平林長兵衛。市神祠官筆学入門控に安政二年穀や長兵衛養子平林源右衛門。安政六年野島文書に六丁目穀屋長右衛門・六丁目穀屋長兵衛。明治三十五年に平林長蔵あり。

八　同郡本郷村（川口市）　明治九年副戸長平林吉右衛門・天保十二年生、副戸長平林勇助・天保十四年生。蓮沼村普門寺明治十五年普門品に平林林蔵・平林吉蔵・平林要之輔・平林長吉・平林亀治郎・平林孝三郎・平林岩治郎・平林政吉・平林庄蔵・平林吉治郎・平林為蔵、明治二十五年碑に東本郷・平林多郎兵衛・平林吉右衛門・平林仁右衛門・平林宮吉・平林与五右衛門、明治三十八年碑に平林浅之助・平林熊蔵・平林春吉・平林長次郎・平林藤太郎・平林伝之助・平林孫左衛門・平林新太郎・平林弥五郎・平林仁三郎・平林寅松・平林常次郎・平林七五郎・平林福之助・平林勇助、明治三十九年絵馬に平林亀次郎・平林幸三郎。当村氷川社明治二十四年絵馬に平林作兵衛、明治三十三年碑に平林定吉・平林要之助・平林三次郎・平林滝次郎・平林森蔵・平林孫太郎・平林文次郎・平林多郎兵衛・平林庄蔵・平林長右衛門・平林初太郎・平林岩次郎・平林亀次郎・平林仁三郎・平林勇助・平林作兵衛あり。本蓮に十八戸、東本郷に三戸現存す。

九　同郡深作村（大宮市）　氷川社安永六年水鉢に平林休トあり。五戸存す。

一〇　飯能町　諏訪八幡社正徳二年狛犬に平林丈右衛門道孝。現存無し。

平原　ヒラハラ　各市町村に存す。○新潟県西蒲原郡分水町三十七戸、巻町二十八戸、三島郡三島町十六戸、中頸城郡大潟町八十戸あり。

一　所沢町　明治七年議定書に平原伝兵衛あり。三戸現存す。

平久　ヒラヒサ　草加、菖蒲等に存す。

平吹　ヒラフキ　浦和、与野、志木、戸田、蕨、川越、小川等に存す。山形県西置賜郡白鷹町十五戸、山形市四十四戸あり。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十二俵二人扶持・平吹増治」あり。

平藤　ヒラフヂ　川口、入間、狭山等に存す。岩手県花巻市十七戸あり。

平舟　ヒラフネ　川口に存す。

平船　ヒラフネ　浦和、川口、蓮田等に存す。

平部　ヒラベ　浦和、草加、新座に存す。

平間　ヒラマ　足立郡戸塚村字平間（川口市）は古の村名にて、弁天社天明二年庚申塔に平間新田講中と見え、多摩郡青梅御嶽神社天保八年御神燈に足立郡戸塚村平間組と見ゆ。小名平間は、埼玉郡横曽根村、鷲宮村、川口村、足立郡上野田村、高畑村等にあり。各市町村に存す。○栃木県下都賀郡藤岡町十八戸。○茨城県行方郡玉造町三十三戸、結城郡石下町十八戸、真壁郡真壁町二十二戸。○山形県東置賜郡川西町二十二戸。○宮城県刈田郡蔵王町百二十四戸、柴田郡大河原町四十八戸、柴田町二百九十戸、亘理郡亘理町三十三戸、白石市九十三戸、岩沼市五十六戸あり。

一　葛飾郡千塚村（幸手市）　真乗院正徳五年鐘銘に平間新六郎・平間八郎兵衛あり。一戸現存す。

二　埼玉郡加須町　明治三十五年糸繭商平間宇吉あり。一戸現存す。

三　同郡道目村（大利根町）　鷲大神明治十二年浅間碑に平間貞三郎あり。一戸現存す。

四　足立郡鴻巣町　上谷新田浅間社明治十六年碑に上谷村新田平間要吉。明治三十五年玩弄物商平間忠右衛門・菓子店平間丑五郎・飲食店平間伊兵衛・荒物商平間彦二郎・下駄商平間与三郎・湯屋平間由五郎あり。四戸現存す。

五　横見郡田甲村（吉見町）　高負彦根神社明治三十年碑に平間仙之助あり。一戸現存す。

平正　ヒラマサ　秩父郡太田村字平正。

平増　ヒラマス　入間に存す。

平松　ヒラマツ　高麗郡平松村（飯能市）あり。大里郡中恩田村字平松（大里町）は中曽根村大日堂明和六年供養塔に平松村と見ゆ。入間郡如意村字平松、秩父郡大宮郷字平松あり。各市町村に存す。○茨城県那珂郡那珂町四十八戸。○新潟県西蒲原郡中之口村十二戸、分水町二十戸。○岩手県釜石市四十戸あり。

一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御物頭・五百石・越前取立・平松彦兵衛」。万延二年に「御鑓奉行・五百石・平松彦兵衛、惣領平松彦助」あり。

二　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「先銃隊頭・百二十石・亡養父悠二・平松吉太夫・三十七歳」。川越町吏員名簿に士族平松武太郎・元治元年生。

三　岩槻藩大岡氏家臣　天明四年岩槻藩分限帳に「御中小姓席・平松三太夫」あり。

四　旗本五味備前守家臣　入間郡小谷田村東光寺延宝二年鐘銘に「小谷田郷領主旗本五味備前守豊直家臣平松五左衛門」あり。

五　葛飾郡幸手町　神道無念流入門帳（戸島村小川文書）に元治元年・幸手宿平松金蔵。菖蒲町菖蒲神社明治十年神道無念流奉納額に平松金蔵。明治三十五年建具職平松礼太郎。幸宮神社明治四十二年碑に平松辰四郎あり。現存無し。

六　埼玉郡花崎村（加須市）　法泉寺寛政九年地蔵尊に平松庄左衛門、明治二十年文書に平松熊蔵・平松文次郎・平松柳治郎。鷲宮社天保四年水鉢に平松万七・平松丈助・平松三郎右衛門あり。一戸現存す。

七　足立郡蕨宿　三学院文久三年供養塔に蕨宿平松佐次兵衛（瓦斯双子織製造伊勢屋）あり。

八　同郡桶川町　明治三十五年籠屋平松久吉あり。

九　高麗郡飯能町　明治十四年生糸商平松幸次郎。昭和三年興信録・所得税に「飯能町・平松仙吉・二十三円、東吾野村（飯能市）・平松多十郎・十一円」あり。

一〇　比企郡小川町　明治十四年本街一丁目酒造業島屋平松庄作あり。

平丸　ヒラマル　大宮、三郷等に存す。新潟県上越市十七戸あり。

平見　ヒラミ　川口、大宮、蕨、川越、行田等に存す。

平道　ヒラミチ　上福岡、所沢等に存す。

一　足立郡松本新田（浦和市）　真乗寺嘉永四年宝篋印塔に平道清右衛門あり。現存無し。

平光　ヒラミツ　志木、岩槻、越谷、草加等に存す。

平峰　ヒラミネ　伊奈、入間等に存す。

平峯　ヒラミネ　浦和、川口等に存す。

平嶺　ヒラミネ　大宮、日高、草加、吉川等に存す。

平宮　ヒラミヤ　杉戸に存す。

平向　ヒラムキ　桶川、戸田、三郷、八潮、松伏、熊谷等に存す。山形県飽海郡松山町十六戸あり。

一　高麗郡栗坪村（日高市）　明治二十八年小間物商平向広吉。現存無し。

平村　ヒラムラ　川口、越谷等に存す。

平目　ヒラメ　新座、川越等に存す。

平元　ヒラモト　上尾、桶川、朝霞、富士見、三郷、妻沼等に存す。茨城県西茨城郡友部町九戸あり。

平本　ヒラモト　栃木県下都賀郡大平町十一戸。山梨県北都留郡上野原町十六戸あり。

一　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国常陸生国駿河・平本源兵衛・三十八歳、同高・本国三河生国同・平本八兵衛・二十二歳」。

二　川越藩松平大和守家臣　慶応元年前橋藩松山陣屋付に「八石二人扶持・平本存吾」あり。

三　鳩谷・岩槻藩阿部氏家臣　寛文二年岩槻藩分限帳に「二十二俵・平本理兵衛」あり。

四　下総国の平本氏　小金城（大谷口城）の城主高城氏の家臣田島刑部少輔は前ヶ崎城（流山市）に居城す。下花輪城（流山市）は高城氏家臣平本主膳が居城す。天正十八年に三歳の定久は主膳の子であろう。貝塚村（流山市）の蓮華山延命院は、文禄年間に火災にあい、慶長年間に堂宇を三輪野江村に移して新義真言宗定勝寺と号し、開基は平本主膳定久（寛永十三年没）なり。○下総国相馬郡中谷原主膳新田（茨城県藤代町）は三輪野井村から移住開拓した平本主膳で、寛永八年伊奈忠治から除地五石を与えられ名主役を世襲し、代々重郎右衛門を名乗る。名主平本家文書によれば寛永二十年六百石とある。現存無し。○相馬郡藤代村の内、富士代主膳新田は元禄以前に分村して片町村（藤代町）と称す。名主は開発者平本主膳の一族が世襲したが、宝暦年間には中谷原村の本家平本氏が兼帯す。一戸現存す。○相馬郡平野村（藤代町）は寛永年間に伊奈忠治が平本主膳の助成を得て開発す。現存無し。○相馬郡吉田村（取手市）は三輪野江村の平本主膳・山三郎父子が開発し、寛永八年までは当村及び中谷原・平野を主膳新田と称し、慶安二年より吉田村と称す。寛永十一年検地帳（名主平本家文書）に反別・田二十町八反・畑二十四町七反で名請人五十二名のうち、最高所持者は名主平本山三郎・九町九反である。二戸現存す。

五　日蓮宗信徒の平本氏　小金日蓮宗本土寺（松戸市）過去帳に「曜林院覚真日照・三輪ノ江平本源六・六月二十五日、舎弟三輪之江平本藤四郎所持之田地之内金高二十両之場所・兄菩提の為寄附す（宝永頃）」とあり。真言宗の定勝とは別家にて豪農なり。

六　葛飾郡三輪野江村（吉川市）　風土記稿三輪野江村条に「旧家者又吉、世々名主を勤む、氏を平本と称す。家系等に拠に先祖高城大膳亮定景が次男田島刑部少輔時定・後故ありて氏を平本と改め、下総国小金大谷口の城主高木下野守定胤に仕へて老臣たり。天正十八年、太閤秀吉相州小田原攻の時、同国山中に出張して戦死す。時に時定の子定久・三歳なりしを、母携へて下総州貝塚村に潜居し、成人の後主膳定久と称す。十八歳の時当村に来り、伊奈忠治に従ひて村内を開発せり。其の功により地所を賜ひて土着せしに、後其の子新右衛門定勝に跡を譲りて、己は同国相馬郡中谷原村に移り、次男清左衛門をして、其の家を継がしめ、今に子孫其の地に残れり。定久実は下野守定胤の三男なりとも云ふ、卒年法名は寛永十三年九月十七日卒し、延命院蓮山道範と号す。定勝は寛文二年九月終る、法号は宝善院亀屋文昭居士と号す。定勝が子新右衛門定智と云ふ、能く父祖の志を継ぎ、定勝寺の子院を開基せり。此定智までは郷士にて苗字帯刀せり。是より今の又吉に至るまで十一代に及ぶと云ふ。又、定勝が墓碑銘に『平本新右衛門尉定勝、□定久□、父宇野七郎源親治十五世之云々、下総小金之城主高城貞景□□云々』とあれば、其の先は親治に出し如くにも見ゆれど、碑文漫滅して中間読得がたき処多ければ、若くは親治に仕へし者の子孫なるも亦知べからず」と見ゆ。真言宗定勝寺鐘銘に「下総国葛飾郡桐谷郷貝塚村観音寺延命院は永正年中密家徒僧寮なり。平本定久・伊奈氏に属し慶長十七年検視、宮野井村中を賜わり、朝印と寺を此地に移す。既にして定久下総の相馬より移り、其子定勝其領を継ぐ。道遥乗蓮大姉・前小金城執事田村時定妹平本定勝母・寛永丙子四月二十三日没。亀屋文昭居士・俗名平本定勝・寛文壬寅九月二十五日没。檀那宮野井村平本新右衛門定智、檀那如月妙照尼松村勘解由女平本定智母、施主妙秀霊尼平本定勝姉川上氏妻、施主安心尼平本定久女佐倉氏□、施主平本七郎右衛門勝知。寛文九年三月十八日定智銅鐘建立す」とあり。半田村川端組天明四年水神様に三輪野江村平本要右衛門。定勝寺天保三年庚申塔に平本定賢。明治九年戸長平本新右衛門・文政八年生、副戸長平本蔵之助・嘉永三年生。三輪之江神社明治二十八年碑に平本定信・平本蔵之助、明治三十九年碑に平本定信・平本勇吉・平本橙三郎・平本長助。明治三十年人名録に定勝寺住職平本定信・安政二年生・地租八十円あり。三戸現存す。

七　入間郡新宿村（川越市）　氷川社明治三十九年碑に平本熊次郎・平本定吉・平本和吉あり。二戸現存す。

八　同郡小谷田村（入間市）　明治十六年経師平本亀吉あり。現存無し。

九　同郡入間川町（狭山市）　明治三十五年下駄製造平本松五郎あり。

一〇　同郡上奥富村（狭山市）　当村に此氏多く存す。梅宮神社前天保十二年敷石碑に上奥富村平本惣左衛門・平本源左衛門・平本儀兵衛・平本新右衛門。笹井村宗源寺文書に「弘化四年、観音堂へ大般若経寄進、上奥富村平本惣左衛門」。上広瀬村山崎文書に「安政四年梅宮神社再建帳、平塚組平本勝右衛門、かじや組平本市左衛門・平本半右衛門・平本源左衛門・平本清蔵・平本惣左衛門・平本新右衛門・平本寅蔵、淵畑組平本亀二郎・平本辰五郎。慶応二年再建帳、かじや組平本善吉・平本寅松、淵畑組平本亀蔵」。瑞光寺明治十七年筆子碑に平本仙蔵。明治三十二年白魚子織に平本浜次郎・平本民造・平本国五郎。下奥富村奥富神社明治三十九年碑に奥富村平本松五郎・平本喜八・平本泰吉あり。

平森　ヒラモリ　入間、飯能等に存す。

平谷　ヒラヤ　小名平谷は、足立郡小針内宿村、大針村、羽貫村、千駄村、西蓮寺村等にあり。浦和、大宮、蕨、与野、上福岡、川越、所沢、越谷等に存す。長野県塩尻市十九戸、岩手県久慈市十七戸あり。

平八重　ヒラヤエ　和光に存す。

平安　ヒラヤス　浦和に存す。

平柳　ヒラヤナギ　足立郡平柳村（川口市）は正保年間田園簿に平柳村と見え、元禄郷帳に元郷村と見ゆ。○群馬県安中市二十八戸、藤岡市十九戸。○千葉県安房郡三芳村十七戸。○秋田県雄勝郡羽後町二十八戸あり。

一　足立氏族平柳氏　足立郡平柳村より起る。足立氏系図に「藤原姓。足立遠元―平柳兵衛尉遠継」と見ゆ。但し、此の系図は信用できず。

二　岩附城士の平柳氏　領家村日蓮宗実相寺の信徒にて、同村出身の苗字なり。三戸文書に「天文十六年十二月十四日、山内上杉憲当（憲政）は、岩付太田氏家臣の平柳蔵人佑の山内家への忠勤を要請す」と見ゆ。永禄七年旧主上杉氏の失地回復のため鴻ノ台で北条氏と戦って討死す。

三　足立郡舎人町（足立区）　万延元年武術英名録に柳剛流千住宿在舎人・平柳米吉・平柳福太郎・平柳共十郎・平柳晴吉。明治七年製糸会社人名録に平柳儀左衛門あり。

四　同郡川口町　明治三十五年油商平柳為錯郎あり。

五　同郡平柳領領家村（川口市）　当村住人苗字平柳蔵人は日蓮宗実相寺信徒なり。実相寺過去帳に「平柳入道徳叟・永正二乙丑」。「永禄七甲子正月八日鴻台一戦、従辰刻至申刻千余人に及び討死、南方には遠山父子、房州には正木平七、其外長南□子数百人、平柳蔵人、篠田雅楽介討死」とあり。三十番神社明治三十九年絵馬に平柳磯五郎あり。九戸現存す。

六　同郡平柳領弥兵衛新田村（川口市）　当村に此氏多く存す。新義真言宗無量寺あり。天正以前からの居住者にて苗字なり。平柳図書は日蓮宗の平柳蔵人や平柳村（後の元郷村）出身説は地名附会なり。次項参照。

七　同郡平柳領元郷村（川口市）　元郷分館敷地内に平柳蔵人館跡碑があるが無関係なり。曹洞宗永喜山正覚寺の永喜居士や永正居士は当村住人の百姓某氏である。風土記稿元郷村条に「陣屋蹟、村の西の方にあり、方一町程の地なり、三重堀の跡とて廻りに小溝残れり。これ平柳蔵人が居住の地なりと云ふ。蔵人は岩槻太田氏の家人也。土人の伝へに、弥兵衛新田村名主安右衛門が先祖図書は、かの蔵人が弟にして、鴻台合戦の時こゝに残りて守りしが、北条家より焼払はれしにより、蔵人が妻子を連れ落行き、後弥兵衛新田村に土着せりと云ふ、されど證とすべきことなし。正覚寺の開基は平柳蔵人なり、法諡を柳国院覚相永正居士と号す、永禄七年正月八日下総国鴻台にて討死せりと云ふ。当寺の過去帳に『柳正院歓覚永喜居士・永禄元年正月十八日』と記せり。此人はかの蔵人の父と覚し、これらにつきても平柳氏の当村に久しく住せしこと知るべし。境内西南の方に平柳蔵人の墓あり」と見ゆ。鴻台合戦討死説は実相寺過去帳を引用している。

八　同郡岸町（浦和市）　日蓮宗円蔵寺明治十四年顕妙塔に平柳勝五郎あり。領家村出身か。

九　同郡大成村（大宮市）　八幡社安永九年庚申塔に下大成村平柳作兵衛・平柳定右衛門、文化六年水鉢に下大成村平柳孫右衛門。明治九年副戸長平柳孫三郎・天保十一年生あり。四戸現存す。

一〇　埼玉郡大竹村（越谷市）　大竹神社天保二年庚申塔に平柳元右衛門あり。三戸現存す。

一一　児玉町　八幡社明治三十五年碑に平柳浦太郎あり。現存無し。

平藪　ヒラヤブ　川口、草加、行田等に存す。島根県浜田市十三戸あり。

平山　ヒラヤマ　古代朝鮮語で山は村の意味。平ノ国の渡来人集落を平山と称す。ヒ、ヒノクマ、ヒラ参照。入間郡平山村（毛呂山町岩井字平山）、高麗郡白子村字平山あり。○栃木県那須郡那須町二百八十戸、西那須野町五十四戸、黒磯市二百四十戸、大田原市七十二戸。○茨城県久慈郡水府村四十七戸、鹿島郡波崎町三十九戸、行方郡麻生町五十戸、稲敷郡東町三十五戸、桜川村五十二戸。○千葉県香取郡小見川町三十四戸、栗源町五十戸、多古町二百二十戸、山武郡成東町三十三戸、匝瑳郡光町三十五戸、八日市場市百八十戸。○新潟県岩船郡神林村六十六戸、村上市六十八戸。○福島県いわき市百十戸。○岩手県大船渡市九十戸。○青森県五所川原市百七十戸あり。

一　日奉姓西党平山氏　多摩郡高幡郷平山村（日野市）より起る。源平時代の有名なる平山武者所季重の後裔なり。多摩郡戸倉村三島明神社（あきる野市）応永二十年文書に武州南一揆平山三河入道と見ゆ。紀州那智山米良文書に「応仁二年、旦那職、武蔵国平山一族」。「天文十七年、としま名字之かき立、在所平山・平山殿、在所平山・淨賀殿」と。永正紋譜帳に平山の紋を魚葉牡丹とあり。曹洞宗大福寺（平山四丁目）は季重の開基にて五輪塔は季重の墓碑と伝へ、当寺は明治初期に廃寺となり、墓は曹洞宗宗印寺（平山六丁目）に移転す。是は在名にて苗字にあらず。十七項大里郡樋ノ口村の本名新井氏、六項埼玉郡忍領の本名村社氏等の出稼衆が在名平山氏を称す。多摩郡に此氏の集落は無し。

二　日蓮宗信徒の平山氏　鎌倉日蓮宗妙本寺墓碑に「日奉平山弥六郎・天正十八年六月二十八日八王寺ニ而討死」とあり。前項とは別家なり。

三　勝沼衆の平山氏　多摩郡平山村より起。多摩郡青梅勝沼城主三田氏家臣にて、永禄三年関東幕注文に「勝沼衆、平山・鷹の羽」と。西党平山氏の名跡を継承するが、魚葉牡丹の家とは本名が別なり。三田氏没落後は八王寺城主北条氏照に仕へる。青梅の野村高貞軍忠覚書に「北条氏照の臣平山大学介」と。氏照朱印状に「天正八年十二月八日、高幡郷平山大学助知行・大学助屋敷」と見ゆ。

四　多摩郡桧原城主平山氏　平山村の西党平山氏の名跡を継承するが前項とは本名が別家なり。快元僧都記に「天文二年二月九日、北条氏綱は、武蔵・上野の武士に鶴岡八幡宮の奉加を求めしむ。心清斎平山伊賀、内藤左近将監、心月斎大石、小宮宗右衛門、三田弾正忠、是等は領状無之。秩父孫次郎、藤田小三郎、久下左近将監、忍杉本伊豆守、成田、高山、木部因幡守、岩下、小幡播磨守、同図書助、長野宮内大輔、長尾平五、高田伊豆守、羽尾、沼田中務少輔、吉里対馬守、諏訪左馬助、安中宮内少輔、多比良、斎藤越前守、倉賀野左衛門尉、飽間右衛門大夫、依田右衛門大夫、小菅加賀守領状、馬太刀等奉加也」と見ゆ。平山伊賀は諸大名の筆頭に記されており、北条氏の重臣なり。永禄二年小田原所領役帳に「十六貫二百二十八文・入西郡小山（坂戸市）・桧原（多摩郡）・平山（日野市）・平山長寿」。「十六貫七百文・入西郡平山分（小山村の内）・平山善九郎」。入間郡小山村平田文書に「天正八年十二月八日、知行地小山村におきし、平山家臣浜中氏と平田氏の訴訟につき処理を命ず、平山伊賀守殿、氏照花押」。風土記稿多摩郡桧原村（ひのはら）条に「城蹟あり、城山は小田原北条家の幕下平山氏の城跡にして、天正のころは平山伊賀守氏重、その子新左衛門居住せしが北条家没落のとき此城も陥り。又、五日市村の臨済宗玉林寺の開基は実際院心解了脱居士・是すなわち武州桧原城主平山新左衛門氏重なりと云ふ。平山氏世々当城に居住せしことを知るべし」。多摩郡平山村条に「天正の頃は平山伊賀守氏重、その子新左衛門居住せしが、北条家没落のとき此の城も敵の為に陥り、かの父子は此の村の内、千足と云ふ所にて、天正十八年七月十二日自殺せり」と見ゆ。是は在名にて苗字にあらず。桧原村及び平山村に平山氏は現存無し。

五　岩附城士の平山氏　太田家譜に「太田譜代之士、平山玄蕃」。松隣夜話に「永禄七年五月、岩附の太田三楽、侍大将平山勘右衛門等は松山城を攻める」と見ゆ。岩附太田氏家臣の高麗文書（家伝史料）に「永禄十年、平山越後守、平山彦右衛門、これはたの口村」。「越後やしき、不動堂山・田之口村、平山之村」と見ゆ。高幡郷は高麗氏の所領地にて、平山村の平山氏は高麗氏と共に岩附太田氏に仕える。

六　忍城士の平山氏　成田分限帳に「六十貫文・平山与左衛門、三十貫文・平山小左衛門」。上之村龍淵寺寛政八年鐘銘に「成田下総守殿家来末葉、平山小左衛門・男村社玄蕃末葉・忍御城内・村社勘蔵」あり。在名平山氏の本名は村社氏なり。文化四年忍藩阿部氏分限帳に「御乗馬御中間・二十俵二人扶持・村社勘蔵」あり。忍領に旧家村社氏（むらこそ）存す。

七　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「二百五十石・平山清右衛門・是は忍にて罷出・武蔵之者」あり。

八　忍藩阿部氏家臣　文化四年忍藩分限帳に「御馬廻・二百石・平山直吉」あり。

九　川越藩松平大和守家臣　慶応元年前橋藩松山陣屋付に「七石余二人扶持・平山忠吉、六石二人扶持・平山徳寿」。松山町箭弓神社明治三十一年碑に松山町平山忠吉あり。忠吉の子孫寿は東松山市松葉町に現存す。

一〇　足立郡平柳領辻村（鳩ケ谷市）　日蓮宗常住寺過去帳に「取要院妙玄尼・当寺旦頭平山徳右衛門祖母・元禄十三年八月七日」。明治十年文書に平山太郎右衛門あり。四戸現存す。

一一　同郡深作村（大宮市）　氷川社嘉永五年水鉢に谷ギヤ平山彦太郎あり。現存無し。

一二　同郡佐知川村（大宮市）　願満堂天和四年庚申塔に佐知川村平山四郎右衛門。原稲荷社明治三十年幟碑に平山又兵衛・平山兼吉・平山周助・平山勇蔵、明治四十五年御神燈に平山喜助・平山勘太郎あり。六戸現存す。

一三　同郡上尾下村　日の出町元文元年庚申塔に下上尾村平山兵右衛門あり。一戸現存す。

一四　入間郡金子郷木蓮寺村（入間市）　当村に此氏の旧家あり。十戸現存す。

一五　同郡平山村（毛呂山町）　当村豪農斎藤氏は明治初年に村名平山を名乗る。出雲伊波比神社御神燈に「安永八年、毛呂郷平山村前組講斎藤文右衛門。明治三十三年、子孫平山前組平山左二馬」。十一代私塾師匠名主平山左司馬富樹・明治四十年没七十六歳、十二代平山山三郎・昭和二年没、十三代平山庫治・昭和三十七年没。明治四十四年貴族院多額納税者議員互選人名簿に農業平山山三郎・安政二年生・国税五百八円・県下百七十二位あり。現存無し。斎藤条三百五十九項参照。

一六　高麗郡上広瀬村（狭山市）　明治五年田畑名寄帳に平山清造・根山組平山勘次。明治十五年北広堂碑名簿に広瀬村平山三吾。広瀬神社明治二十四年碑に当所平山重太郎。根岸村水富神社明治四十三年碑に水富村平山半一あり。三戸現存す。

一七　大里郡樋ノ口村（江南町）　在名の西党平山氏の本名は当村出稼衆新井氏なり。平山武者所季重の後裔新井豊後守は深谷城主上杉憲盛に仕へ、子孫は慶応年間に平山氏に復姓す。国指定重要文化財の平山小一郎家庭碑に「深谷上杉氏の臣平山豊後守が天正十八年深谷城落城後、当所に土着帰農し、代々名主を務む」とあり。風土記稿樋口村条に「旧家者五郎八、本氏は平山、今は新井を氏とす」と見ゆ。新居、根岸条参照。明治七年坂田文書に樋ノ口村副戸長平山仁三郎、祖父平山寛作。明治九年樋春村副戸長平山仁太郎・安政三年生。七社神社明治八年伊勢講碑に平山貞義・平山政八・平山五郎八、明治十四年御嶽碑に平山八百次郎。古里村兵執神社明治十五年水鉢に樋春村平山兵右衛門。明治二十年樋春村連名簿に平山貞義・平山仁太郎・平山角太郎・平山重五郎。野原村文殊寺明治二十四年算額に樋春平山俊五郎あり。四戸現存す。

一八　賀美郡肥土村（神川町）　広野神社明治三十九年碑に平山フサあり。二戸現存す。

一九　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「浦和町・平山槙英・八十四円、平山昇二・十三円、平山延寿・十一円、長野村（行田市）・平山才吉・二十一円、金子村（入間市）・平山三十郎・九円、毛呂村・平山庫治・二百七十一円・三十一円、秩父町・平山権五郎・九円」あり。

比良山　ヒラヤマ　川越に存す。

平湯　ヒラユ　蕨、狭山、春日部、越谷等に存す。

平吉　ヒラヨシ　上尾に存す。

平良　ヒラヨシ　上尾に存す。

平良木　ヒララギ　川越、日高、松伏等に存す。秋田県平鹿郡増田町二十四戸あり。

平脇　ヒラワキ　桶川に存す。青森県三戸郡南郷村六戸あり。

平分　ヒラワケ　昭和三年興信録に「浦和町・平分徳太郎・所得税十一円・営業税十二円」あり。現存無し。

平綿　ヒラワタ　川口、北本等に存す。神奈川県藤沢市三十三戸あり。

平渡　ヒラワタリ　町屋新田慶応四年馬頭尊に埼玉郡広川村（加須市）・平渡清太郎あり。六戸現存す。

日比生　ヒルウ　東松山に存す。

昼岡　ヒルオカ　草加、飯能、松伏等に存す。

晝岡　ヒルオカ　川口、所沢等に存す。

昼神　ヒルガミ　深谷に存す。

昼川　ヒルカワ　与野に存す。

一　埼玉郡神明下村（越谷市）　四町野村迎摂院享保七年庚申塔に神明下村昼川新右衛門あり。現存無し。

蛭川　ヒルカワ　児玉郡蛭川村（児玉町）は応永二十五年安保文書に児玉郡蛭川郷と見ゆ。○群馬県勢多郡富士見村十七戸。○茨城県久慈郡大子町十七戸あり。

一　児玉党蛭河氏　児玉郡蛭川村より起る。庄三郎河内守忠家（忠広）、庄四郎高家の兄弟は下野国都賀郡出身の出稼衆なり。児玉、富野条参照。中興武家諸系図（宮内庁書陵部所蔵）に「蛭川、藤姓、本国下野、児玉広行四代河内守忠広・之を称す」。「蛭河、藤姓、四郎高家・之を称す」と見ゆ。武蔵七党系図に「有大夫弘行―河内権守家行―児玉庄大夫家弘―庄四郎刑部丞高家（一谷合戦の時、但馬守経正を討取。承久二年出家）―蛭河太郎定重（師行トモ）―小太郎左衛門尉家氏（兄家重）―太郎左衛門尉泰家―又二郎泰氏（弟六郎家綱、七郎経家）―太郎家国、弟彦太郎入道某、其の弟範家―孫太郎家高。泰家の弟二郎光弘、其の弟三郎光綱―三郎太郎家光―三郎兵衛尉貞家。光綱の弟四郎忠氏―九郎某、弟孫九郎行家、其の弟十郎家国法名明心」と見ゆ。吾妻鑑巻二十五に「承久三年六月十四日、宇治合戦に手負の人々に蛭河刑部三郎・同三郎太郎」。巻三十二に「嘉禎四年二月十七日、蛭河四郎左衛門尉」。鎌倉円覚寺文書に「徳治二年五月、北条時宗の法要のとき、蛭河四郎左衛門尉」。巻四十に「建長二年三月一日、蛭河刑部丞が跡」。典籍古文書に「建治元年五月、武蔵国・蛭河刑部丞跡七貫を京都六条八幡宮の造営役に負担す」。三重県桑名市竹内文書に「建武二年八月九日、遠江国橋本合戦にて、北条時行に属せし児玉党蛭河彦太郎入道・松野又二郎等が足利尊氏軍に捕わる」。松野氏は蛭河氏と同じく下野国の出稼衆にて、那須郡松野村（馬頭町）出身なり。

二　但馬国の蛭河氏　高家は一ノ谷合戦で但馬国司平経正を討取り、相博保（兵庫県城崎町）を賜る。弘安八年但馬国大田文に「城崎郡相博保・三十九町四反二百四分・地頭蛭河左衛門尉、任建久・建治之帳」あり。

三　北条氏家臣の蛭川氏　児玉郡蛭川村より起る。万治三年伝書之事（下真下村坂本文書）に「真下源左衛門藤原光俊は北条氏康の為に空しく亡ぶる事我残念成りと申ければ、先手に進み来たる蛭川円性と浅見治郎と申者を切殺し大勢を追払ふ」と。

四　榛沢郡柏合村（深谷市）　当村に此氏多く存す。古老の話に通称蛭川と云う場所に蛭川一族居住すと云う。上野台村八幡社明治五年筆子碑に北柏合村蛭川儀八・蛭川昌吉・蛭川固三郎。幡羅郡田島村明治八年富士嶽碑に柏合村蛭川米。八王子神社明治十三年八海山講碑に蛭川権蔵・蛭川弘行・蛭川儀八・蛭川桂次郎・蛭川勇八・蛭川佐吉・脇先達蛭川幸作・三世先達蛭川長五郎。戸森村明治十四年福田家門人碑にキタカシアイ蛭川新次郎・蛭川竹松・蛭川長太郎。深谷町呑龍院明治四十五年馬頭尊に柏合蛭川庄吉。県会議員農業蛭川勇八・安政三年生あり。

五　同郡下手計村（深谷市）　鹿島社文政五年御神燈に蛭川由松・蛭川市兵衛・蛭川文蔵。字宿蛭川甚五郎の次男宗吉（天保十一年生）は川上邦之助と改名して皇宮警察署長を務む。九戸現存す。

六　幡羅郡東方村（深谷市）　熊野社明治三十年碑に蛭川初五郎・蛭川竹次郎・蛭川和三郎・蛭川清吉・蛭川房吉あり。七戸現存す。

七　同郡新井村（深谷市）　中瀬村字向島不動堂明治四十四年従軍馬匹碑に大字新井蛭川仙次郎。一戸現存す。

八　同郡上増田村（深谷市）　賀美郡四軒在家村延宝四年松原文書に増田村蛭川喜兵衛。薬師堂嘉永四年馬頭尊に蛭川清兵衛。深谷町安政二年田中文書に上増田村蛭川専五郎。万延元年武術英名録に甲源一刀流本庄宿在増田村蛭川一.。諏訪社文久二年御神燈に蛭川要之助・蛭川藤五郎・蛭川為吉・蛭川半蔵・蛭川安五郎・蛭川林之助・蛭川藤太郎・蛭川長太郎あり。十二戸現存す。

日留川　ヒルカワ　坂戸、飯能に存す。

比留川　ヒルカワ　浦和、蓮田、岩槻、久喜、朝霞、志木、狭山等に存す。神奈川県綾瀬市百五十戸あり。

一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「御馬廻・百石・前橋取立・比留川彦九郎」。万延二年に「御馬廻・百石・比留川彦九郎、同人三男比留川連之介、御馬廻・十人扶持・比留川志津馬」あり。

肥畄川　ヒルカワ　大宮に存す。

肥留川　ヒルカワ　群馬県富岡市九戸。

一　埼玉郡不動岡町（加須市）　昭和三年興信録に「肥留川鷲雄・所得税三十三円」あり。現存無し。

二　同郡町屋村（羽生市）　西福寺明和四年供養塔に肥留川浅五郎あり。現存無し。

三　同郡郷地村（鴻巣市）　上谷新田金剛院元治元年碑に郷地村肥留川喜兵衛。明治四年上郷地村名主肥留川喜兵衛・七十歳、組頭喜兵衛倅肥留川次郎右衛門・三十四歳、小宮組・組頭肥留川栄次郎・六十一歳、組頭肥留川長兵衛・六十歳。明治九年戸長肥留川大太郎・安政五年生。明治十四年埼玉銀行発起人郷地村肥留川次郎右衛門・三十五株千七百五十円所有。明治十八年最上農名簿に肥留川次郎右衛門・耕宅地二十八町歩・山林一反歩所有。久伊豆社明治三十九年碑に肥留川豊吉・肥留川治平・肥留川常吉あり。十二戸現存す。

四　同郡下川上村（熊谷市）　代々名主肥留川長兵衛―喜四郎―友三郎―喜藤次―唯次郎―喜四郎―亀四郎―長次郎―只次郎。行田史譚に「下川上村。寛永年中名主肥留川喜四郎、享保六年名主肥留川喜四郎、天保元年名主肥留川喜四郎」。当村嘉永六年御嶽碑に肥留川喜四郎あり。二戸現存す。

五　比企郡羽尾村（滑川町）　羽尾七騎来歴書に「先地頭北条陸奥守殿より上田能登守殿迄、山崎家来松山へ出勤・肥留兵庫」。小林文書に「山崎家来紀留川玄庫」と見ゆ。紀留川は肥留川の書誤りか。現存無し。

尾留川　ビルカワ　浦和、戸田、鳩ケ谷、草加、越谷等に存す。秋田県由利郡由利町三十戸、本荘市三十七戸あり。

蛭子　ヒルコ　葛飾郡長間村字蛭子（幸手市）は香取社文政十三年庚申塔に長間之内蛭子株と見ゆ。所沢に存す。青森県三戸郡階上町九戸、八戸市十六戸あり。

昼沢　ヒルサワ　鶴ヶ島に存す。

蛭沢　ヒルサワ　那賀郡小平村字蛭沢、秩父郡太田村字蛭沢あり。

昼田　ヒルタ　大里郡吉所敷村字昼田あり。春日部、志木、入間、坂戸等に存す。茨城県牛久市十七戸あり。

蛭田　ヒルタ　埼玉郡蛭田村（春日部市）あり。小名蛭田は、埼玉郡笹久保新田、中妻村、足立郡蓮沼村、八王子村、入間郡宗岡村、中寺山村、福田村、比企郡中山村等にあり。各市町村に存す。○茨城県北茨城市百六戸、日立市百五十戸。○神奈川県三浦市八十戸。○福島県東白川郡棚倉町三十五戸、鮫川村三十九戸、西白河郡矢吹町五十三戸、いわき市七百四十戸あり。

一　足立郡倉田村（桶川市）　明星院文政六年新西国塔に倉田村蛭田三郎右衛門あり。一戸現存す。

比留田　ヒルタ　鳩ケ谷に存す。

蛭薙　ヒルナギ　川口に存す。

蛭波　ヒルナミ　川口に存す。

蛭沼　ヒルヌマ　入間郡大久保村字蛭沼、渋井村字蛭沼あり。群馬県桐生市二十戸あり。

一　埼玉郡大越村（加須市）　当村文政八年巡拝塔に上大越村蛭沼又右衛門。鷲尾神社嘉永七年敷石供養塔に別所蛭沼磯五郎・笹道蛭沼重兵衛、明治十八年敷石碑に蛭沼忠三郎。昭和三年興信録に「大越村・蛭沼七蔵・所得税十八円」。九戸現存す。

蛭野　ヒルノ　川口に存す。

昼場　ヒルバ　浦和、花園等に存す。岩手県二戸郡一戸町六戸あり。

晝場　ヒルバ　川口、岩槻等に存す。

昼間　ヒルマ　蛭間、比留間の佳字なり。武蔵国に多く存す。

一　葛飾郡茂田井村（三郷市）　阿弥陀堂貞享二年地蔵尊に茂田井村昼間伝十郎あり。現存無し。

二　同郡幸房村（三郷市）　幸房村開発人書上に「慶長十年より延宝元年迄、当村興禅寺旦那昼間又兵衛」あり。三戸現存す。松浦条参照。

三　同郡狐塚村（栗橋町）　私塾師匠名主昼間順左衛門・文化三年没。鹿島社嘉永四年御嶽碑に昼間源左衛門。千塚村宝蔵寺慶応二年筆子碑に狐塚村昼間安五郎・昼間甚助。幸手町雷電社明治十七年御嶽碑に狐塚昼間順左衛門あり。二戸現存す。

四　埼玉郡大曽根村（八潮市）　福寿院文化九年六地蔵に昼間彦兵衛。八幡社安政五年碑に組頭昼間伝兵衛・昼間弥五右衛門・昼間七郎右衛門。明治九年副戸長昼間佐兵衛・享和三年生。大曽根村会議員昼間彦兵衛・天保二年生、同昼間文吉・弘化二年生。明治二十四年頃消防夫人名記に昼間文吉・昼間貞吉・昼間久四郎・昼間福次郎・昼間源八・昼間弥七・昼間兼松。八幡社明治二十九年絵馬に昼間福太郎、明治三十九年絵馬に昼間元次郎。浮塚村氷川社明治三十七年絵馬に大曽根昼間橋太郎あり。十六戸現存す。

五　同郡木曽根村（八潮市）　明治三十年人名録に昼間熊次郎・嘉永六年生・地租十九円あり。四戸現存す。

六　同郡中馬場村（八潮市）　浜野家天満宮明治二十二年絵馬に中馬場・昼間由蔵・昼間吉五郎・昼間八十吉・昼間音吉・昼間弥五右衛門。明治三十年人名録に昼間由蔵・天保七年生・地租十五円。諏訪社明治三十九年碑に昼間源之助・昼間吉五郎・昼間八五郎・昼間文蔵・昼間八十吉あり。九戸現存す。

七　同郡浮塚村（八潮市）　明治三十年人名録に昼間彦兵衛・天保三年生・地租八十円。氷川社明治三十九年絵馬に当村昼間坊太郎あり。三戸存す。

八　足立郡川口町　川口神社明治三十九年碑に昼間清吉あり。

九　同郡鳩ヶ谷町　剣術家木原周軒門人帳に鳩ケ谷宿昼間政吉。明治九年副戸長昼間重右衛門・文政三年生。明治三十五年呉服商万屋昼間新蔵・荒物瀬戸物商竹屋昼間重右衛門・荒物商昼間松五郎。県会議員陶器商昼間吉太郎・明治二十一年生あり。九戸現存す。

一〇　同郡瀬崎村（草加市）　草加宿大川系図に「大川清左衛門勝吉（宝永三年没）、其の五男勝友（瀬崎村昼間仁左衛門）」。当村宝篋印塔に「光正院涼運元休居士・瀬崎村住昼間仁左衛門勝□入道元休・元禄十五年六十六歳而卒去」。草加宿浅間社天明元年算額に昼間義高。当村浅間社天明七年水鉢に昼間仁左衛門、天保十三年擬宝珠銘に瀬崎村名主昼間弥五兵衛・昼間武左衛門・昼間新左衛門、安政四年玉垣碑に当村昼間助右衛門。足立区花畑大鷲神社天保四年算額に瀬崎村昼間要助義高・昼間弥五兵衛保高。明治九年戸長昼間好蔵・嘉永四年生。明治二十二年大日本農会々員名簿に瀬崎村昼間仁左衛門。浅間社明治二十七年碑に昼間菊蔵、明治三十四年碑に昼間善蔵・昼間新五郎・昼間紋蔵・昼間好太郎あり。十戸現存す。

一一　同郡苗塚村（草加市）　地蔵堂跡宝暦四年鐘銘に昼間仁左衛門・昼間彦三郎。瀬崎村住人か。現存無し。

一二　同郡谷塚村（草加市）　当村に此氏の旧家あり。六戸現存す。

一三　同郡大谷村（大宮市）　氷川社前文化三年庚申塔に昼間甚蔵・昼間武八、天保二年庚申塔に蛭間儀左衛門・蛭間勇右衛門・蛭間弥三郎・蛭間彦兵衛・蛭間勘蔵・蛭間弥兵衛。私塾師匠名主昼間弥兵衛。氷川社天保四年水鉢に昼間儀左衛門、明治三十九年碑に昼間勇吉・昼間音吉・昼間文次郎・昼間勇右衛門・昼間軍次郎・昼間徳次郎・昼間万治郎。蓮沼村神明社明治三十一年松沢碑に大谷昼間谷三郎。大谷場村御嶽山明治三十四年碑に大谷昼間万次郎あり。十八戸現存す。

一四　同郡飯田新田（大宮市）　旧荒川の船渡橋附近にあった船渡を昼間渡と云う。篝火をたいて白昼のごとき故に昼間と称す云々は附会なり。対岸の大久保村に字蛭沼あり、近村の渋井村に字蛭沼、宗岡村に字蛭田あり。前項の如く昼間は蛭間の佳字なり。風土記稿飯田新田条に「昼間渡は、一に船戸渡と云、荒川の渡なり。ここを渡れば入間郡大久保村に至る。渡し船一艘あり。何の頃より渡し初めしや年代詳ならず。昔天正年中東照宮河越より岩槻へ渡御あらんとて、夜中此渡津に臨ませ玉いしとき、村民等川上に篝をたき、松明をとぼして迎え奉りけるに、さながら白昼に異ならざりければ、御喜悦斜ならず。是より渡名を昼間と改むべきとの上意ありて、渡し守へ川の辺二町余の地を賜われりと云。因て彼等が氏を昼間と改めしよし。今に豊次郎・平次郎とて二人の渡し守あり」と見ゆ。稲荷社明治二十七年水天宮碑に飯田新田昼間宗吉あり。四戸現存す。

一五　入間郡金子郷（入間市）　峰村に多く存し、寺竹村に十一戸存す。木蓮寺村を合わせて金子三ヶ村と称す。笹井村篠井文書に「慶長十四年、金子三ヶ村之内、比留間四郎兵衛尉花押」。宮寺村おまん坂元禄十五年供養塔に金子村昼間与左衛門。泉蔵院万延二年地蔵尊に昼間丑兵衛母とあり。

一六　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「谷塚村（草加市）・昼間直臣・十二円・三十三円、昼間松作・十六円・十六円、鳩ケ谷町・昼間松五郎・十六円・十九円、昼間吉太郎・四十四円・十一円、昼間繁三郎・十四円・三十円、八幡村（八潮市）・昼間坊太郎・十八円、昼間熊蔵・十五円、潮止村（八潮市）・昼間惣次郎・十八円・十四円」あり。

晝間　ヒルマ　入間郡峰村に存す。

蛙間　ヒルマ　浦和に存す。

蛭間　ヒルマ　群馬県桐生市八十五戸。

一　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「十五俵二人扶持・蛭間宇平治」あり。

二　葛飾郡松永村（栗橋町）　松永神社文化七年狛犬に蛭間兵右衛門あり。二戸現存す。

三　埼玉郡新方袋村（春日部市）　満蔵寺文化四年庚申塔に蛭間甚八・蛭間武右衛門。小溝村長命寺慶応二年供養塔に新方袋村蛭間宗吉あり。三戸現存す。

四　同郡百間西原組（宮代町）　字前原神外坊慶長七年不動明王銘に昼間半衛門あり。現存無し。

五　同郡国納村（宮代町）　須賀村身代神社明和四年稲荷碑に国・蛭間千代松あり。現存無し。

六　同郡東粂原村（宮代町）　鷲宮社文化八年庚申塔に蛭間勘右衛門母・蛭間兵左衛門妻。明治九年副戸長蛭間兵橘・天保五年生。明治三十年人名録に蛭間兵橘・地租二十一円あり。三戸現存す。

七　同郡高岩村（白岡町）　忠恩寺宝永五年供養塔に蛭間荘衛門、文化十四年供養塔に蛭間源太郎。字野中文政七年庚申塔に蛭間源太郎・蛭間利右衛門・蛭間重治郎。字上宿天保十一年聖徳太子碑に蛭間十次郎。天満社天保十一年敷石碑に蛭間作左衛門あり。八戸現存す。

八　同郡上高柳村（騎西町）　諏訪社文化七年御神燈に新田・船橋講中・蛭間定八・蛭間五助・蛭間喜七あり。四戸現存す。

九　同郡不動岡町（加須市）　明治三十五年菓子商蛭間五助あり。

一〇　同郡上三ツ俣村（加須市）　諏訪社享和二年御神燈に三俣村蛭間仲五郎、文化四年水鉢に七釜戸・蛭間佐兵衛。諏訪町嘉永元年馬頭尊に三ツ俣村蛭間又右衛門。菊地家筆子控に「元治元年、当村七釜戸・半兵衛倅蛭間勘五郎」あり。一戸現存す。

一一　同郡大越村（加須市）　伊奈利社寛政九年塞神碑に笹道村蛭間藤助あり。現存無し。

一二　同郡馬内村（加須市）　諏訪社明治二十二年伊勢講碑に蛭間久治郎あり。二戸現存す。

一三　同郡秀安村（羽生市）　鷺宮社明治三十年石華表碑に蛭間留十郎・蛭間道之助・蛭間利助・蛭間市十郎あり。五戸現存す。

一四　同郡荒木村（行田市）　天満宮元治元年御神燈に蛭間栄吉あり。四戸現存す。

一五　足立郡片柳村（大宮市）　万年寺天保十二年庚申塔に蛭間吉兵衛、明治四十四年碑に蛭間林蔵・蛭間権次郎あり。三戸現存す。

一六　同郡膝子村（大宮市）　八幡社文政十一年力石碑に蛭間吉左衛門・蛭間孫左衛門・蛭間伝五郎、弘化四年庚申塔に蛭間幸蔵あり。八戸現存す。

一七　同郡小室本村（伊奈町）　当村寛政六年庚申塔に小室本村蛭間伊兵衛、文政三年庚申塔に小室本村蛭間喜左衛門、天保十三年庚申塔に小室本村蛭間常次郎。氷川社安政三年御神燈に本村蛭間友次郎あり。二戸現存す。

一八　新座郡菅沢村（新座市）　明治五年馬持蛭間重五郎、農車持蛭間平五郎。明治十四年戸長蛭間重次郎・万延元年生あり。十二戸現存す。

一九　横見郡上細谷村（吉見町）　氷川社明治三十四年幟碑に蛭間清吉・蛭間美三郎・蛭間弥兵衛あり。十戸現存す。

比留間　ヒルマ　東京都武蔵村山市二百三十戸、府中市八十戸あり。

一　松山城士の比留間氏　天正庚寅松山合戦図に「本郷・町屋・原・野久・野本方面城方・比留間五郎左衛門」あり。

二　新座郡岡村（朝霞市）　当村に此氏多く存す。新倉村明治初年富士講碑に岡・比留間甚蔵。明治九年戸長比留間弥平治・天保元年生（名主）。志木町立善講寺明治十九年題目塔に岡村比留間庄右衛門・比留間倉之助・比留間権蔵。明治三十一年演劇寄附に岡村比留間弥太郎。氷川社明治四十一年碑に岡・比留間常二郎・比留間政吉。溝沼村泉蔵寺明治四十四年馬頭尊に岡・比留間寅之助。根岸村御嶽社明治期に岡村比留間兼吉あり。

三　同郡台村（朝霞市）　根岸村御嶽社明治三十二年碑に台・比留間藤造。台雲寺明治三十四年供養塔に比留間藤蔵・比留間弥助あり。九戸存す。

四　入間郡鶴馬村（富士見市）　新倉村明治初年富士講碑に鶴馬比留間栄吉あり。現存無し。

五　同郡山口村（所沢市）　笹井村篠井文書に「慶長十四年、入間郡山口村に宝智坊と申方の檀那御座候、比留間四郎兵衛あり」と見ゆ。現存無し。

六　同郡三ヶ島堀之内村（所沢市）　当村に此氏多く存す。石井文書に宝永六年村役座配順・昼間伝右衛門。三ヶ島村薬王寺明治四十二年碑に四番組比留間林蔵・比留間長之助あり。

七　同郡宮寺村（入間市）　中野村安政五年中村筆子碑に小ヶ谷戸村比留間辰五郎保高。明治二十二年宮寺村三番消防組比留間小三郎。三戸存す。

八　同郡上谷ヶ貫村（入間市）　嘉永四年縞座之儀油単衆・谷ヶ貫村比留間柳蔵。明治十一年比留間文書に戸長比留間善三・副戸長比留間久造・副戸長比留間幸吉・比留間卯之吉・比留間茂吉・比留間弥吉・比留間幾太郎・比留間周蔵・比留間粂吉・比留間新右衛門・昼間斧次郎・昼間米吉・昼間熊次郎・昼間幸太郎・昼間佐平。金子村会議員比留間豊三郎・安政元年生あり。十四戸現存す。

九　同郡寺尾村（川越市）　大仙波村浅間社文化十一年水鉢に寺尾村肥留間伴治郎あり。四戸現存す。

一〇　同郡長岡村（坂戸市）　明治九年戸長比留間周次郎・天保十一年生あり。九戸現存す。

一一　同郡上野村（越生町）　当村に此氏多く存す。毛呂山田系図（嘉永七年記）に「入間郡上野村比留間糸吉先祖は、毛呂家の臣下の節目の者の由」。桃木村八幡社文政七年筆子碑に上野村下分比留万金蔵。多門寺天保二年盤子銘に毛呂郷上野邑比留間新兵衛・比留間兵助・比留間藤助。文久三年聖天宮棟札に当所大工比留間新蔵・氏子世話人比留間新兵衛。明治九年副戸長比留間而耕・文政十二年生。明治二十九年越生町農会発起人比留間総吉あり。

一二　同郡成瀬村（越生町）　明治三十四年水利組合員比留間利衆あり。一戸現存す。次項参照。

一三　高麗郡梅原村（日高市）　甲源一刀流比留間新兵衛、其子与八郎利恭（明和五年生、天保十一年没）、其子半蔵利充（文化二年生、明治二十年没）、長男良八利衆（天保十一年生、弟国造に家督を譲り、成瀬村に移り道場を設ける。明治四十五年没）、次男国造利暠（弘化元年生、明治三十八年生）。万延元年武術英名録に甲源一刀流武州梅原村比類間範造。明治九年誓約書に副戸長質や比留間国造・比留間栄八・比留間岩蔵・比留間松五郎・比留間千太郎あり。十五戸現存す。

一四　同郡栗坪村（日高市）　高麗神社高麗家系図に「高麗良伝（文亀十六年卒。母比留間与作女）」、当村住人か。高麗家門人帳に「嘉永元年、栗原村政蔵倅比留間亀三郎・九歳。嘉永二年、栗原村与左衛門倅比留間豊三郎・十二歳。嘉永三年、栗原曲橋比留間宇太郎・十歳、栗原比留間繁蔵・九歳。安政四年、栗原豊三郎弟比留間和三郎・九歳、同所宇太郎弟比留間庄吉・九歳。文久二年、同所亀三郎弟比留間松三郎・九歳。元治元年、同所亀三郎弟比留間周蔵・八歳。慶応元年、栗原村小菅与左衛門二男比留間直三郎・十一歳」。明治十三年戸長代理比留間豊三郎。明治十七年文書に比留間忠三郎・股引脚絆商比留間茂吉・水車業比留間七郎右衛門・質屋比留間政郎右衛門・小間物商比留間鶴吉。明治二十二年埼玉勧業会員比留間政太郎。県会議員医師比留間高次郎・明治十八年生あり。十三戸現存す。

一五　同郡高萩村（日高市）　文久二年名主質屋比留間重五郎。明治九年下高萩村戸長比留間重五郎・天保元年生、副戸長比留間善太郎・弘化四年生。明治二十四年地租軽減請願人に比留間万蔵・比留間善太郎・比留間藤七・比留間音八あり。十九戸存す。

一六　同郡猿田村（日高市）　明治九年副戸長比留間五兵衛・文政十二年生あり。六戸現存す。

一七　同郡楡木村（日高市）　入間郡誌に「楡木村八幡社は元文五年二月比留間儀右衛門有志により再建す」。上広瀬村信立寺嘉永三年文書に楡木村比留間儀左右衛門。明治七年願書に比留間儀右衛門・比留間栄蔵あり。八戸現存す。

一八　同郡上鹿山村（日高市）　女影村霞野神社甲源一刀流奉納額に教師比留間和十郎源信治。明治四十一年氏子惣代比留間和十郎。五戸現存す。

一九　同郡馬引沢村（日高市）　観音堂弘化三年馬頭尊に比留間吉五郎あり。現存無し。

二〇　同郡中山村（飯能市）　智観寺宝永三年大般若経奉納に中山町昼間与右門あり。一戸現存す。

二一　比企郡大塚村（川島町）　諏訪社天保三年御神燈に河岸比留間庄兵衛あり。三戸現存す。

二二　同郡鳥羽井村（川島町）　当村嘉永三年庚申塔に比留間左膳・比留間勝五郎。鳥羽井新田文久二年馬頭尊に鳥羽井両村比留間丹次郎・比留間文吉あり。二戸現存す。

二三　同郡玉川郷　鎌形村八幡社安政五年文書に玉川村比留間孫左衛門は幡再興す、明治十六年筆子碑に玉川郷比留間権平。平村正法寺明治三十年廻国塔に玉川比留間権平。春日社明治四十年碑に比留間政五郎、和田・比留間春吉・比留間豊吉・比留間権平あり。五戸現存す。

二四　同郡泉井村（鳩山町）　平村萩日吉社明治二十五年筆子碑に泉井村比留間権右衛門あり。四戸現存す。

二五　横見郡田甲村（吉見町）　請負山新田は寛文年間に多摩郡の比留間治郎右衛門が開墾す。現存無し。

二六　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「膝折村（朝霞市）・比留間計広・八十九円、宮寺村（入間市）・比留間友吉・二十三円・十九円、越生町・比留間快三郎・十三円、高萩村（日高市）・比留間音八・十一円、高麗村（日高市）・比留間高次郎・五十二円、比留間実造・十五円」あり。

肥留間　ヒルマ

一　足立郡三室村（浦和市）　当村に此氏多く存す。宝暦六年肥留間仁右衛門事・善明房は羽黒山結縁房号を受ける。松ノ木毘沙門堂宝暦十三年六地蔵に肥留間仁右衛門・肥留間専右衛門・肥留間助右衛門・肥留間卯右衛門。文殊寺隣文政七年榛名碑に松木組肥留間万蔵・肥留間酉之助。大牧村清泰寺嘉永五年供養塔に松ノ木肥留間専右衛門・肥留間五郎右衛門・肥留間万蔵、万延元年庚申塔に松ノ木肥留間新太郎。文殊寺安政四年筆子碑に松ノ木肥留間源兵衛・肥留間惣治郎・肥留間半蔵・肥留間太郎吉・肥留間秀蔵・肥留間浅五郎・肥留間徳左衛門・肥留間佐吉・肥留間与四郎。明治九年戸長肥留間慶作・嘉永二年生。氷川女体社明治二十五年御神燈に肥留間万吉。本太村山神社明治三十年碑に三室松ノ木肥留間儀兵衛あり。

二　同郡平柳領辻村（鳩ケ谷市）　川口宿善光寺元禄七年碑に辻村肥留間四郎右衛門。下青木村西方寺寛保二年筆子碑に肥留間四郎右衛門。真福寺文化二年廻国塔に肥留間幸右衛門（名主）。文化二年文書に名主肥留間幸七.。明治九年副戸長肥留間己之助・文政四年生あり。二戸現存す。

蛭町　ヒルマチ　入間郡古谷本郷字蛭町あり。鳩ケ谷に存す。茨城県東茨城郡桂村六戸あり。

美留町　ビルマチ　鶴ヶ島に存す。茨城県西茨城郡岩間町五十二戸あり。

蛭谷　ヒルヤ　所沢に存す。

鰭崎　ヒレサキ　川越に存す。千葉県安房郡鋸南町八戸あり。

比連崎　ヒレサキ　寄居に存す。千葉県木更津市十五戸あり。

広　ヒロ　新羅の首都慶州は斯羅（しら）、或は斯廬（しろ）と云う。広は平（ひら）の転訛にて、平ノ国を指す。淡路国津名郡広石村は貞応二年淡路国大田文に枚石庄（ひらいし）と見ゆ。摂津国住吉郡平野庄は広野を改めて平野と云う。川越、狭山、三郷等に存す、

廣　ヒロ　草加、熊谷等に存す。

博　ヒロ　富士見に存す。

広明　ヒロアケ　草加に存す。

広井　ヒロイ　続日本紀・延暦十年八月二十四日条に「摂津国百済郡人（大阪市）正六位上広井造真成に姓を連と賜ふ」。姓氏録・摂津諸蕃に「広井連。百済国避流王より出づる也」と見ゆ。各市町村に存す。○新潟県北魚沼郡川口町四十二戸、長岡市八十戸、小千谷市百六十戸あり。

一　忍藩松平下総守（奥平）家臣　嘉永六年忍藩分限帳に「御鷹匠・七人扶持・広井磯右衛門、同役・六石三人扶持・広井左六、同役同高・広井大助、同役・二人扶持・広井半之助、同役同高・広井桂三郎」。明治四年忍藩士族名簿に「七人扶持・広井弥惣治、六石四人扶持・広井十内、同高・広井時長」あり。

二　行田町　秩父郡三峰神社安政五年文書に行田町広井定吉。二戸現存す。

三　蕨町　明治三十五年米穀商広井源次郎あり。

廣井　ヒロイ　浦和、川口、蕨、草加、白岡、鶴ヶ島、三芳等に存す。

広居　ヒロイ　浦和、大宮、川越、吉川、熊谷等に存す。

廣居　ヒロイ　入間に存す。

弘井　ヒロイ　川越、鶴ヶ島等に存す。

広池　ヒロイケ　蕨、越谷等に存す。

廣池　ヒロイケ　朝霞、越谷等に存す。

広石　ヒロイシ　伊奈、朝霞、川越、三芳、岩槻、八潮、越谷等に存す。神奈川県小田原市五十戸あり。

廣石　ヒロイシ　上福岡に存す。

弘岩　ヒロイワ　川越に存す。

樋籠　ヒロウ　葛飾郡樋籠村（春日部市）。足立郡中曽根村字樋籠あり。渋谷区広尾は樋籠・広野と呼ばれ、元禄検地の頃に広尾と改称した。

広内　ヒロウチ　川口、朝霞等に存す。岩手県下閉伊郡田野畑村七戸あり。

広海　ヒロウミ　宝亀十一年五月紀に「正八位上韓男成等二人に、姓を広海造と賜ふ」。延暦十二年に広海連男成。姓氏録・右京諸蕃に「広海連。韓王信の後須敬より出づる也」と見ゆ。与野、狭山、久喜に存す。

弘海　ヒロウミ　千葉県印旛郡栄町五戸あり。

広浦　ヒロウラ　川口、大宮等に存す。

広工　ヒロエ　川口に存す。

広江　ヒロエ　各市町村に存す。○茨城県結城市二十二戸。○島根県隠岐郡西郷町十三戸、八束郡東出雲町二十五戸、安来市三十戸、松江市百二十戸あり。

一　本庄町　明治三十五年木炭商豆屋広江安吉あり。現存無し。

廣江　ヒロエ　浦和、川口、白岡、毛呂山等に存す。

廣恵　ヒロエ　朝霞に存す。

広尾　ヒロオ　戸田、所沢、大井に存す。

廣尾　ヒロオ　大宮、大井に存す。

広岡　ヒロオカ　各市町村に存す。群馬県高崎市四十五戸、長野県佐久市十七戸、福島県大沼郡会津高田町二十四戸、鳥取市三十戸あり。

一　新羅族広岡造　新羅郡は、古代の豊島郡の内にて、天平宝字二年に始めて新羅人を移して新羅郡を建置す。阿部条十二項、アラハバキ条二十一項参照。和名抄の豊島郡広岡郷は隣接地にて、此地より起る。板橋区元滝野川字平尾、或は渋谷区広尾に比定するが遠方すぎる。続日本紀・宝亀十一年五月十一条に「武蔵国新羅郡人沙良・真熊等二人に広岡造の姓を賜ふ」。また、嘉祥三年十一月条に「興世朝臣書主卒す。書主は右京の人也。本姓吉田連、其の先百済より出づ。承和四年上請して、姓を改めて興世朝臣と為る」。日本文徳天皇実録巻二に「嘉祥三年十一月、従四位下治部大輔興世朝臣書主卒す。新羅人の沙良と真熊は善く新羅琴を弾く、書主相い随って伝習し、遂に秘道を得る」と見ゆ。

二　高麗郡上広瀬村（狭山市）　信立寺明治十四年筆子碑に下郷広岡忠四郎。根岸村水富神社明治四十三年碑に水富村広岡源助あり。四戸現存す。

廣岡　ヒロオカ　桶川、戸田、狭山、所沢、坂戸等に存す。

廣奥　ヒロオク　浦和に存す。

広賀　ヒロガ　戸田、鳩ケ谷に存す。

廣賀　ヒロガ　草加に存す。

広海渡　ヒロカイド　大井に存す。

広利　ヒロカガ　所沢に存す。

広垣　ヒロガキ　朝霞、狭山、所沢、草加等に存す。

広方　ヒロカタ　川越に存す。

廣方　ヒロカタ　川越に存す。

広門　ヒロカド　浦和、杉戸に存す。

廣門　ヒロカド　白岡に存す。

広金　ヒロカネ　新座に存す。

広兼　ヒロカネ　浦和、大宮、狭山、所沢、飯能、行田等に存す。島根県美濃郡美都町八戸、益田市十戸あり。

廣兼　ヒロカネ　大宮、所沢等に存す。

弘兼　ヒロカネ　入間に存す。

広上　ヒロカミ　浦和、川口、北本、戸田、狭山等に存す。

廣上　ヒロカミ　鴻巣、入間等に存す。

広神　ヒロカミ　大宮、北本、吹上、草加、春日部、和光等に存す。群馬県群馬郡榛名町五十四戸あり。

広ヶ谷戸　ヒロガヤト　足立郡広ヶ谷戸村（浦和市）、入間郡城村字広ヶ谷戸あり。

広川　ヒロカワ　埼玉郡広川村（加須市）、三田ヶ谷村字広川あり。各市町村に存す。○新潟県北蒲原郡水原町十五戸、京ヶ瀬村十五戸、西蒲原郡黒埼町十八戸、刈羽郡西山町二十四戸、刈羽町四十五戸、三条市五十戸、柏崎市六十戸、糸魚川市四十三戸、長岡市百六十戸あり。

一　葛飾郡神明内村（幸手市）　明治三十年人名録に淨誓寺住職広川皆順・明治二年生あり。一戸現存す。

二　埼玉郡加須町　明治十九年神沢文書に上組広川長吉。明治三十五年豆腐商広川栄吉。昭和三年興信録に「広川嘉一郎・所得税二百二円・営業税二十八円」あり。現存無し。

三　同郡小松村（羽生市）　須影村八幡社安政五年棟札に棟司三村門人・小松村広川長吉・広川半蔵。現存無し。

四　浦和町　明治三十五年湯屋広川滝次郎あり。

五　大宮町　昭和三年興信録に「広川平五郎・所得税十五円」あり。

六　入間郡大類村（毛呂山町）　当村に此氏の旧家あり。四戸現存す。

七　幡羅郡下増田村（熊谷市）　明治九年副戸長広川佐平・天保元年生あり。二戸現存す。

廣川　ヒロカワ　各市町村に存す。

弘川　ヒロカワ　所沢、大利根に存す。

裕川　ヒロカワ　秩父に存す。

広河原　ヒロカワラ　川口、小鹿野等に存す。

広木　ヒロキ　那賀郡広木村（美里町）あり、和名抄に那珂郡弘紀郷と見ゆ。鎌倉建長寺宝珠院応永十二年十二月文書に「建長寺宝珠庵雑掌申、武蔵国広木郷秋山村（児玉町）」と見ゆ。○群馬県群馬郡榛名町十七戸。○茨城県久慈郡金砂郷町三十三戸、那珂郡大宮町九十五戸、東茨城郡御前山村二十戸、桂村六十五戸、水戸市六十戸あり。

一　葛飾郡長沼村（三郷市）　彦倉村延命院宝暦九年勧進帳に長沼村広木四郎左衛門。白山社文化二年御神燈に広木新蔵。明治三十年人名録に広木四郎吉・天保十三年生・地租五十円、広木友吉・嘉永五年生・地租四十三円あり。四戸現存す。

二　同郡平方新田（吉川市）　神明社明治三十九年碑に広木喜助・広木喜太郎あり。二戸現存す。

三　越ヶ谷宿　本町浅間社延宝三年水鉢に広木忠左門あり。

四　川越町　御嶽社明治三十五年碑に広木隆寿あり。

五　児玉郡関村（美里町）　明治七年中沢文書に関村西組広木銀平。用土村明治十三年仙元碑に関村広木六太郎あり。現存無し。

廣木　ヒロキ　浦和、川口、狭山、吉川等に存す。

尋木　ヒロキ　川口に存す。

広郡　ヒロコオリ　入間に存す。

広坂　ヒロサカ　春日部に存す。

広阪　ヒロサカ　入間に存す。

広崎　ヒロサキ　浦和、川口、新座、所沢、岩槻、草加、三郷等に存す。岩手県九戸郡野田村十四戸、久慈市五十六戸あり。

廣崎　ヒロサキ　浦和、春日部等に存す。

広佐古　ヒロサコ　春日部に存す。

広里　ヒロサト　和光に存す。

広実　ヒロサネ　行田、加須等に存す。

広沢　ヒロサワ　平沢の転訛にて、沢は新羅の匝羅（さわら）の羅を略して云う。慶尚南道梁山の古名を草羅城（さわらのさし）と称す。平ノ国の匝羅の渡来人集落を平沢、広沢と称す。沢条参照。和名抄に「幡羅郡上秦郷、下秦郷、広沢郷、荏原郷（飯塚村字江原）、幡羅郷（原郷）、那珂郷（八木田村字那加）、霜見郷」と載す。広沢郷は熊谷市別府・玉井附近か。また、新座郡広沢庄あり、二十三ヶ村（埼玉県側十七ヶ村、東京都練馬区側六ヶ村）が唱える。紀州那智大社潮崎文書に「就広沢名字、文明十三年三月二十八日仁尊勝院ニ御着候、彼武蔵広沢支證尊勝院の星坊へ持参候」と。文明十八年廻国雑記に「むさしのの広沢にいづる月と日をあわせ鏡や二かけの松」と。福徳二年辛亥（延徳三年）鰐口銘に「奉懸氷河之大明神御宝前之鰐口武州新座之郡広沢之郷浜崎之宮（朝霞市浜崎氷川社）」。練馬区南大泉五丁目妙福寺寛文四年鐘銘に武州新倉郡広沢庄小榑村妙福寺と見ゆ。入間郡北野村字広沢あり。また、豊島郡坂本村（台東区）は二葉郷広沢村と唱え、小田原役帳に江戸広沢内代山根岸（東叡山附近）と見ゆ。○群馬県甘楽郡下仁田町二十二戸。○栃木県芳賀郡二宮町二十二戸、真岡市三十七戸。○茨城県西茨城郡岩瀬町四十四戸、真壁郡協和町六十七戸、大和村二十八戸あり。

一　波多野氏流広沢氏　新座郡広沢庄より起る。備後国三谷郡和智村（広島県三次市）へ移住し、和智村より起る和智系図（萩藩譜録）に「波多野二郎義通―広沢余三実方（保元元年冬十月十日賜武蔵国広沢、故号広沢与三、初波多野与三.。建久三年七月二日賜備後国三谷郷十二郷）―三郎左衛門尉実高―新三郎実村―和智三郎二郎実成（嘉元二年死）」と見ゆ。新座郡広沢庄根岸村（朝霞市）に和智氏九戸現存す、関係あるか。典籍古文書に「建治元年五月、武蔵国・広沢左衛門尉跡二十貫を京都六条八幡宮の造営役に負担す」と見ゆ。

二　太田氏家臣の広沢氏　広沢家系別録（内閣文庫）に「広沢義綱―兵庫頭大和守重家―兵庫頭元家（河越合戦討死）―尾張守忠信（法名道正。松山之城主難波田善吟は、道正を招て軍事并諸事を相談し朝夕念比に相伴ふ、二之丸に道正を置く、依て二之丸を広沢曲輪と云ふ）」。風土記稿松山城条に「広沢系図に広沢曲輪と云ふ名見ゆ、何れの曲輪なる事をしらず、尾張守忠信が居跡なるべし。太田美濃守資時岩槻に在しが、上田又次郎政広が足戸砦に蟄居せしを語らいて、天文十五年八月二日夜に乗て北条方より取返し、太田下総守・広沢尾張守を本丸に籠め、上田政広をば二丸に置ける」。太田家譜に「永禄二年、氏康・謀をめぐらし、太田三楽松山城に籠置所の上田闇礫斎逆心させ、氏康に心を通じ、氏康之人数を引入て松山落城す。其時家臣広沢尾張守忠信入道道正も討死す。広沢尾張守信秀は忠信嫡子なり」。永禄三年関東幕注文に「岩付衆、広沢尾張守・いしたゝみに三ともへ」。関八州古戦録に「永禄六年、北条氏は松山城の二丸に広沢兵庫助信秀を居しめて堅く守しむ」。北越軍談に「永禄九年八月二十三日上総国三船の戦に岩附太田氏の臣広沢尾張守信秀討死す」と見ゆ。

三　広沢氏の本名　関八州古戦録に「元亀三年、氏房の家人広沢三郎豊信（重信、後兵庫介）十八歳たりしが、小山城攻めに粉骨の働をなす。天正十年沼田攻めに広沢兵庫介先登して、其時兵庫介・弟の軽卒隊長関根織部正勝直に相談して、両人の差物を抜き取放す」。相模国風土記稿に「天正十八年七月十二日秀吉は、北条氏直を紀州高野山に送る。太田十郎氏房、広沢尾張守重信、弟関根織部勝直等長臣三十人、従て共に高野山に行く」。道祖土系図に「道祖土下総守康成（比企郡老袋城主、北条氏康に仕ふ）―女子（広沢織部妻・越前居）」と見ゆ。下老袋村に関根氏二十八戸存す。当村関根氏は名門広沢氏の名跡を継承して広沢氏を名乗る。関根条八十項、百一項、二百六十一項の関根氏は広沢織部（本名関根織部）に附会す。

四　越前松平氏家臣　太田氏房に従い高野山へ登るが、後に従者を連れて松平秀康に仕える。源秀康公御家中分限帳に「馬乗改衆・二千八百石（内二千二百石・与力）・武蔵・広沢兵庫。四百石・広沢久太夫。四百石・関根織部」あり。

五　徳川忠長家臣　幕臣松野家譜に「松野摂津守助正（北条十郎氏房に仕へ。のち東照宮に仕ふ。妻は氏房が家臣広沢尾張守信秀女）―資信（寛永十年卒）―女子（駿河大納言忠長の家臣広沢門之丞重勝妻）」あり。

六　深谷・川越藩酒井讃岐守忠勝家臣　寛永十四年小浜藩分限帳に「二百石・広沢十郎兵衛、百五十石・広沢作十郎」あり。

七　埼玉郡青柳村（久喜市）　県会議員農業広沢弥三郎・嘉永六年生あり。現存無し。関根条百三十一項参照。

八　同郡与兵衛新田村（羽生市）　名主広沢啓蔵（子孫広沢照）あり。六戸現存す。

九　入間郡入間川町（狭山市）　明治三十五年婦人科医師広沢増五郎。昭和三年興信録に「入間川町・広沢増五郎・所得税十三円」あり。

一〇　同郡南入曽村（狭山市）　明治九年地租改正確定書に広沢浜吉・広沢与三郎・広沢金太郎・広沢与吉・広沢直蔵改名梅五郎あり。九戸現存す。

一一　同郡水野村（狭山市）　昭和三年興信録に「入間村・広沢新五郎・所得税十四円」あり。八戸現存す。

一二　同郡善能寺村（坂戸市）　当村に此氏多く存す。風土記稿善能寺村条に「昔、広沢善応（文和年中の人）と云者、此地に住し、一寺を建立して善能寺と号せしが、後終に村名と成れり」。御祭礼之覚写（大徳院旧蔵文書）に「卯正月七日（天正七年か）、日さい衆・森田・山崎・平田・広沢・入」と。浅羽村森田氏・小山村平田氏・善能寺村広沢氏なり。曹洞宗善能寺過去帳に「前住玉芳菊和尚・天正五年八月十日寂、前開基広沢太郎兵衛・広沢勘左衛門。前住禅興中英性和尚・天正十四年十一月六日寂、中興開基広沢太郎兵衛其子」と見ゆ。長岡村薬師堂明和八年地蔵尊に善能寺村広沢理太夫。当村文政五年庚申塔に善能寺村広沢磯右衛門。明治九年戸長広沢磯吉・文政九年生、副戸長広沢宇三郎・嘉永四年生。明治十七年戸長広沢勘十郎あり。

一三　比企郡増尾村（小川町）　寄居村極楽寺元治二年比企郡増尾村講中に広沢梅吉あり。現存無し。

一四　大里郡熊谷宿　熊谷宿百石組に「慶安元年、広沢重兵衛」。高城神社寛文十年三月文書に「熊谷町広沢三郎右衛門は同社に病気祈願をす」と見ゆ。

一五　同郡成沢村（江南町）　赤城社天保十一年御神燈に広沢清左衛門・広沢惣兵衛、安政二年水鉢に広沢藤次郎・広沢市五郎あり。五戸現存す。

一六　本庄町　明治三十五年貸座敷嬋娼楼広沢亀寿。昭和三年興信録に「広沢てい・所得税三十四円」あり。

広澤　ヒロサワ　各市町村に存す。

廣沢　ヒロサワ　各市町村に存す。

廣澤　ヒロサワ　善能寺村に存す。

廣　ヒロシ　上尾に存す。

寛　ヒロシ　志木、三芳等に存す。

広司　ヒロシ　岩槻に存す。

寛司　ヒロシ　日高に存す。

広重　ヒロシゲ　各市町村に存す。

廣重　ヒロシゲ　北本、新座等に存す。

広繁　ヒロシゲ　所沢に存す。

弘重　ヒロシゲ　川口に存す。

広島　ヒロシマ　平島の転訛にて、島は村の意味。平ノ国渡来人集落を称す。葛飾郡松伏領広島村（吉川市）、島中川辺領広島村（栗橋町）あり。小名広島は、葛飾郡栗橋宿、堤根村、埼玉郡牛重村、戸崎村、上高柳村、辻村、広田村、下須戸村等にあり。各市町村に存す。○新潟県中蒲原郡亀田町二十戸、青森県南津軽郡大鰐町二十二戸あり。

一　鴻巣町　大間村久保寺明治十四年筆子碑に鴻巣広島万右衛門。明治三十五年籠屋広島忠三郎。一戸現存す。

二　高麗郡大塚野新田（鶴ヶ島市富士見町）　小名新井（新井氏居住）・小名馬橋（馬橋氏居住）・小名鈴木（鈴木氏居住）・小名藤井（紫藤・井上両氏居住）・小名須島（須沢・広島両氏居住）は村草分けなり。当所御嶽社は戸宮村へ移転し、同社明治十三年水鉢に当所広島平五郎、明治三十年碑に当所広島半三郎、明治期不動尊に当所広島熊造あり。現存無し。

広嶋　ヒロシマ　各市町村に存す。

廣島　ヒロシマ　浦和、川口、桶川、草加、幸手、入間、狭山等に存す。

廣嶋　ヒロシマ　上尾、川越、狭山、鶴ヶ島、富士見、秩父等に存す。

広住　ヒロスミ　茨城県牛久市十戸。

広世　ヒロセ　行田に存す。

広瀬　ヒロセ　大和国広瀬郡広瀬村と百済村が明治二十二年合併して百済村（広陵町）となる。応神天皇七年九月紀に「高麗人・百済人・任那人・新羅人、並に来朝（まうけ）り」と見ゆ、平ノ国の渡来人集落なり。高麗郡広瀬村（狭山市）は、元は入間郡に属す。大伴条十項参照。仁和寺文書に「貞観寺田地目録帳、貞観十四年三月九日、武蔵国広瀬庄地三十三町五段二百八十八歩・在入間郡」。和名抄に入間郡広瀬郷を載せ、比呂世と註す、延喜式に入間郡に広瀬神社（上広瀬村）を載す。報恩寺年譜に宝治元年・入西郡春原庄広瀬郷と見ゆ。長享三年渋垂文書に武州高麗郡広瀬郷内大谷沢村（日高市）と見ゆ。また、大里郡広瀬村（熊谷市）あり。比企郡中尾村字広瀬（滑川町）は明和四年碑に比企郡広瀬谷戸と見ゆ。高麗郡仏子村字上広瀬、横手村字広瀬、秩父郡下吉田村字広瀬あり。○栃木県安蘇郡葛生町八十五戸、田沼町六十八戸、佐野市百二十戸、真岡市九十五戸。○茨城県新治郡八郷町九十八戸、稲敷郡阿見町三十二戸、結城郡八千代町五十五戸、真壁郡明野町百二十戸、協和町五十戸、真壁町六十四戸、大和村三十戸、下館市百十戸、つくば市百八十戸、土浦市百十戸、水戸市百戸。○山梨県東八代郡一宮町四十九戸、中巨摩郡竜王町三十二戸、東山梨郡牧丘町五十四戸、三富村三十五戸、塩山市四百八十戸、富士吉田市百戸、山梨市百三十戸、甲府市二百戸。○長野県下水内郡栄村四十九戸。○新潟県中頸城郡大潟町四十戸。○島根県益田市四十戸あり。

一　忍藩松平下野守忠吉家臣　慶長十二年清洲藩分限帳に「百五十石・広瀬久太輔・是は忍にて罷出・三州之者」あり。

二　川越藩柳沢出羽守保明（松平吉保）家臣　元禄七年川越藩分限帳に「御奥御玄関番・五両二人扶持・広瀬孫兵衛」あり。

三　川越藩秋元氏家臣　明治四年館林藩士族帳に「五両余二人扶持・広瀬練三郎、同高・広瀬源八」あり。

四　川越藩松平大和守家臣　慶応元年前橋藩松山陣屋付に「八石二人扶持・広瀬利寛」あり。子孫正夫は東京都北区に存す。

五　騎西・川越藩松平周防守（松井）家臣　明治元年川越藩分限帳に「御徒銃隊・八石二人扶持・亡養父登三右衛門・広瀬登三右衛門・四十五歳」。

六　岩槻藩松平伊賀守（藤井）家臣　元禄七年岩槻藩分限帳に「十五石五人扶持・広瀬八郎左衛門、同高・広瀬重五郎」あり。

七　日蓮宗信徒　川越日蓮宗行伝寺過去帳に「日源・広瀬源設・未年五月。長惺院日忍・広瀬ノ自按斎・寅年十月。道泉・広瀬ノ善左衛門。妙安・広瀬ノ善左衛門母。宗好・ヒロセノ所左衛門メイ」。高麗郡広瀬村忍田三河守自按斎一族なり。オンダ参照。

八　葛飾郡藤塚村（春日部市）　香取社江戸末期御神燈に広瀬段助あり。六戸現存す。

九　埼玉郡西袋村（八潮市）　安政三年小沢筆子碑に広瀬卯之助・広瀬亀吉。安政五年水神宮碑に広瀬半兵衛。柳之宮村氷川社嘉永七年御神燈に西袋村広瀬庄右衛門・広瀬半兵衛・広瀬武左衛門、明治十九年絵馬に西袋村広瀬太右衛門・広瀬沙の・広瀬武左衛門・広瀬松蔵あり。九戸現存す。

一〇　同郡上馬場村（八潮市）　天神社明治三十九年碑に広瀬喜三郎あり。三戸現存す。

一一　同郡大沢町（越谷市）　大沢猫の爪（福井文書）に「下組今百姓橘屋広瀬権右衛門祖父弥七、享保中何国より来候者哉、中宿に店持、二代安兵衛代明和安永之頃半軒、夫より文化二年権右衛門代地所持。宝暦七年大沢町百姓、橘屋安兵衛。明和五年帳面表、広瀬安兵衛」と見ゆ。明治九年副戸長広瀬弥七・文化二年生。明治三十五年料理店橘屋広瀬佐伝次。昭和三年興信録に「広瀬佐平次・所得税十二円」あり。

一二　同郡北根村（川里町）　薬師堂享保十六年常夜燈に広瀬六兵衛あり。現存無し。

一三　同郡加須町　明治三十五年に広瀬鶴蔵あり。

一四　同郡上樋遣川村（加須市）　浅間社嘉永七年仙元碑に稲荷台・大先達広瀬庚行、明治十二年鳥居碑に稲荷台・広瀬兵右衛門・広瀬藤五郎・広瀬久三郎あり。六戸現存す。

一五　同郡南篠崎村（加須市）　明治八年騎西町釜屋文書に南篠崎村酒造業広瀬与兵衛あり。一戸現存す。

一六　同郡下川崎村（羽生市）　下川上村愛染堂天明三年奉額に下川崎村広瀬伝吉。円福寺天保十四年供養塔に広瀬善右衛門。元治二年油商広瀬栄蔵あり。四戸現存す。

一七　足立郡川口町　上青木村安楽寺明治三十三年大日堂碑に広瀬久蔵（米穀商）。川口神社明治三十九年碑に広瀬福太郎。昭和三年興信録に「広瀬福太郎・所得税二十二円・営業税二十八円」あり。

一八　同郡浦和町　明治三十五年飲食店広瀬長蔵。昭和三年興信録に「広瀬弥太郎・所得税八十七円」あり。

一九　同郡草加町　成田山新勝寺享和二年奉納額に草加宿広瀬儀右衛門。明治三十五年に広瀬栄太郎あり。

二〇　同郡蕨町　元禄八年岡田文書に葺師広瀬忠右衛門あり。

二一　新座郡志木町　明治三十五年市場組広瀬長作あり。

二二　入間郡所沢町　明治三十五年に広瀬伊之助。昭和三年興信録に「広瀬芳蔵・所得税十円」あり。

二三　同郡藤久保村（三芳町）　広源寺安政七年普門品に広瀬吉左衛門。木宮稲荷社明治六年山神社碑に広瀬文蔵あり。九戸現存す。

二四　大里郡熊谷町　明治三十五年酒醤油卸商山屋広瀬菊太郎あり。

二五　同郡成沢村（江南町）　上岡妙安寺観音堂明治三十一年碑に成沢・広瀬仁三郎あり。現存無し。

二六　幡羅郡玉井村（熊谷市）　天和二年切支丹信徒広瀬四郎兵衛ら三人は捕えられる。二戸現存す。

二七　同郡三ヶ尻村（熊谷市）　延命寺寛政六年供養塔に広瀬新蔵。幸安寺嘉永六年碑に広瀬浅五郎・広瀬勇吉、慶応二年権田門人碑に広瀬常吉・広瀬平重郎・広瀬甚之助・広瀬滝蔵・広瀬磯五郎・広瀬左馬之助。龍泉寺元治元年馬頭尊に広瀬長蔵・広瀬滝三郎。八幡社慶応二年碑に広瀬新右衛門あり。九戸現存す。

二八　榛沢郡上野台村（深谷市）　用土村明治十三年仙元碑に上野台村広瀬順蔵。八幡社明治四十四年碑に広瀬健次郎・広瀬三吉・広瀬松五郎・広瀬新吉あり。三戸現存す。

二九　児玉郡本庄町　明治四年諸井文書に台町広瀬良平。明治三十五年書画広瀬庄衛・玩具商広瀬栄吉あり。

三〇　同郡金屋村（児玉町）　当村に此氏の旧家あり。十三戸現存す。

三一　那賀郡秋山村（児玉町）　当村林道工事中に出土した鰐口銘に「武州那珂郡十二天鰐口、神主広瀬平左衛門尉行久永、応永二十四年六月二十九日諸旦那等」あり。現存無し。

三二　秩父郡大滝村　明治八年生徒取調に原滝小学校・栃本広瀬角蔵三男軍治・元治元年生。明治十年屋番号に栃本広瀬久八あり。三戸現存す。

三三　同郡三峰村（大滝村）　明治五年三峰山取調に社務雇広瀬清人・二十二歳、父観音院家来当村広瀬嘉衛門・六十六歳。明治三十年三峰神社々掌広瀬清人あり。一戸現存す。

廣瀬　ヒロセ　各市町村に存す。

弘瀬　ヒロセ　浦和、朝霞、志木、大井、岩槻等に存す。

広清　ヒロセ　志木、坂戸等に存す。

広田　ヒロタ　平田の転訛にて、平ノ国の渡来人集落を広田と称す。和名抄に摂津国武庫郡広田郷あり。日本書紀・神功皇后摂政元年条に「わが荒魂（天照大神）をば、広田国に居らしむべし」と。延喜式の広田神社（兵庫県西宮市大社町）なり。此地を本貫地とする百済族広田氏あり。天平宝字二年九月紀に「右京人辛男床等十六人に姓を広田連と賜ふ」。姓氏録・右京諸蕃に「広田連。百済国人辛臣君の後也」。左京諸蕃に「広田連。百済国人辛国君より出づる也」と見ゆ。埼玉郡広田村（川里町）あり、当村開発のことは新井条百七十項参照。小名広田は、埼玉郡飯塚村、大泊村、犬塚村、足立郡赤井村、高麗郡勝呂郷上広谷村、五味ヶ谷村（広谷村より分村）、青木村等にあり。○群馬県邑楽郡邑楽町二十三戸。○栃木県上都賀郡粟野町二十戸、鹿沼市百五十戸。○神奈川県高座郡寒川町五十戸。○長野県上水内郡牟礼村二十五戸、更級郡大岡村十六戸。○新潟県北蒲原郡安田町二十五戸、中魚沼郡津南町十六戸、中里村四十七戸、南魚沼郡六日町八十九戸、燕市四十八戸、柏崎市四十戸。○福島県岩瀬郡長沼町二十二戸。○岩手県紫波郡矢巾町四十六戸。○鳥取県東伯郡三朝町十六戸あり。

一　児玉党広田氏　埼玉郡広田村より起る。小代文書（肥後古記集覧）に「小代八郎行平が曽祖父児玉の有大夫弘行の所領武蔵一ヶ国の分には、児玉、入西両郡并に久下、村岡、中条、忍、津戸、野村、広田、屈須、小見野、三尾乃野、弘行の所領なり」と見ゆ。

二　豊島氏族広田氏　高麗郡勝呂郷広田村（上広谷村字広田）より起る。紀州那智山米良文書に「文安五年、那智社領豊島年貢目録、六貫五百文・広田・勝・ふるや」と見ゆ。当村並びに勝呂郷（坂戸市）、古谷郷（川越市）等なり。

三　菅原姓広田氏　埼玉郡広田村より起る。正能氏系図（正能村の正能文覚所蔵）に「聖廟（菅原道真）―高視―雅規―資忠―孝標―為実（於上野国早死）―忍太郎為重―広田次郎為景―刑部丞景重―右馬助景忠―太郎兵衛尉景基―兵衛太郎景資（妹尼円心）―景氏―六郎太郎宗景法名崇舜―勘解由左衛門景家法名崇景―左近将監景胤法名希胤―尊日法印（兄漢阿は糯田道場聖）―元景―乗景―弥二郎景助―式部少輔景朝―泰景法名徳音―藤四郎朝景―二郎四郎朝景―小次郎朝景。景資の妹尼円心―尼浄音（円心姪）―新左衛門景季（浄音孫）―四郎左衛門家景―左衛門四郎景泰―弥太郎行景法名弥高―弥次郎貞景」と見ゆ。時衆過去帳に「漢阿弥陀仏・武州糯田・文和四年二月十八日」とあり。

四　広田氏の名は、曽我物語（彰考館所蔵）に「御屋形にならべて候なり。東には比企・中条・三田・ひろたの人々」と、みな武蔵武士なり。承久記に「北条時房は、六月十二日近江勢多の橋近く野路に陣をとる。其中に熊谷平内左衛門、久目左近、岩瀬左近、同五郎兵衛、肥塚太郎、吉見十郎、子息小次郎、広田小次郎等は太刀を抜て責よする」と、みな武蔵武士なり。典籍古文書に「建治元年五月、武蔵国・弘田人々五貫を京都六条八幡宮の造営役に負担す」と。信濃国高井郡中野郷（中野市）及び同郡志久見郷（下水内郡栄村）の地頭中野忠能に実子が無く、一族中野仲能と武蔵国広田為泰を養子とす。実子の女子袈裟は市河重房の妻となり、この三人が遺領を相論す。市河文書に「信濃国中野弥五郎藤原仲能、亡父中野右馬次郎忠能法師法名法蓮・弘長四年死去」。「文永二年閏四月十八日、中野次郎太郎為泰、宝蓮遺領信濃国中野郷并志久見郷等地頭職の事。為泰始は広田弥二郎為村嫡子、彼遺領を相伝す。今亦号宗蓮の嫡子となる。以て一身両父を兼る。為泰・武州広田之時、馬人召具之上当知行也」と見ゆ。

五　羽生城主広田氏　菅原姓にて前項の後裔なり。埼玉郡小松村（羽生市）鎮守熊野白山神社の末社に小松明神あり、熊野白山神社は明治に小松神社と改称す。小田原安楽寺懸仏銘に「天文五丙申年五月吉日、武州大田庄小松末社三宝荒神、願主両人直繁・忠朝」。小松神社阿弥陀如来座像銘に「大願主月窓正幸、同子息広田式部大輔直繁、小松寺□□□本持堂本尊」。下妻城主多賀谷系図に「多賀谷重政（永禄九年没）―経長（羽生式部大輔之嗣）」とあり、羽生の広田式部大輔の養子か。永禄三年関東幕注文に「羽生之衆、広田式部大輔・梅之紋、河田谷右衛門大夫・かたはミ」。梅紋は菅原氏の紋なり。河田谷右衛門大夫（木戸伊豆守忠朝）は足立郡河田谷村（かわたがい）を領す。下村君村永明寺文書に「永禄六年五月二十八日、広田式部大輔直繁花押」。羽生村正覚院文書に「永禄九年正月二十六日、正覚院御同宿中殿、広田式部大輔直繁花押」。深谷城主上杉憲盛書状に「永禄十二年七月十五日、広田出雲守」。上杉輝虎書状（歴代古案）に「永禄十三年庚午二月二十八日、館林城知行共出置候、館林領之内羽根田之郷・飯富之郷（佐野市）、佐藤筑前守・小安隠岐守に出置候也、広田出雲守殿、輝虎花押」。出雲守の臣佐藤と小安の両人に与える。広田出雲守は元亀二年館林領土橋村善長寺（館林市当郷）に於て長尾顕長のために謀殺される。上杉謙信書状に「八月二十二日（元亀三年）、木戸伊豆守殿、同右衛門大夫殿、菅原左衛門殿（広田出雲子、木戸伊豆婿）」と見ゆ。木戸条参照。広田式部大輔直繁（出雲守と同人説あり）の子広田隼人正道真は武州世田谷城主吉良氏の将江戸（喜多見）刑部頼忠・朝忠父子に仕え、子孫は世田谷区喜多見町に居住す。

六　忍・川越藩松平伊豆守信綱（大河内）家臣　万治元年川越藩分限帳に「五両二人扶持・本国上総生国同・広田源左衛門・三十四歳」あり。川越日蓮宗行伝寺過去帳に「法金・広田内」と、当藩士か。

七　葛飾郡八丁目村（春日部市）　香取社文政十年御神燈に広田常七あり。現存無し。

八　同郡千塚村（幸手市）　真乗院正徳五年鐘銘に広田兵助。千塚神社天保十四年幟碑に広田佐吉。一戸現存す。

九　埼玉郡今泉村（羽生市）　明治八年騎西町釜屋文書に中新井村酒造業広田常吉。明治十二年今泉村酒造業近江屋広田常吉。両村に現存無し。

一〇　同郡新宿村（吹上町）　山神社明治十一年浅間碑に広田多平、明治四十二年碑に北新宿広田唯一あり。現存無し。

一一　比企郡上小見野村（川島町）　松山町箭弓神社明治三十一年碑に小見野村広田茂市あり。二戸現存す。

一二　同郡松山町　明治三十五年酒商広田和助・白米酒商高橋屋広田治三郎あり。

一三　大里郡万吉村（熊谷市）　観音堂正徳四年地蔵尊に広田佐衛門、明和八年供養塔に広田儀右衛門・広田佐右衛門、文化九年湯殿山碑に広田佐右衛門あり。四戸現存す。

一四　深谷町　深谷町会議員広田馬次郎・明治三十年生あり。

一五　雑載　昭和三年興信録・所得税及び営業税（下段）に「木崎村（浦和市）・広田富太郎・九円、蕨町・広田与作・百八円・百六円、志多見村（加須市）・広田吉五郎・三百五十円・百四十円、忍町・広田しん・二十一円・三十六円、小見野村（川島町）・広田金治・百十四円・五十八円、吉岡村（熊谷市）・広田之準・十三円」あり。

廣田　ヒロタ　各市町村に存す。

広多　ヒロタ　久喜に存す。

弘田　ヒロタ　各市町村に存す。

尋田　ヒロタ　浦和に存す。

広滝　ヒロタキ　大宮、川越、日高、三郷等に存す。

広谷　ヒロタニ　各市町村に存す。鳥取県岩美郡岩美町十二戸あり。

廣谷　ヒロタニ　戸田、三郷等に存す。

広地　ヒロチ　蓮田、越谷、草加、狭山、朝霞等に存す。コウチ参照。

廣地　ヒロチ　所沢に存す。

広津　ヒロツ　津は人や物の集まる所。平ノ国の渡来人集落を称す。姓氏録・右京諸蕃に「広津連。百済国近貴首王より出づる也」と見ゆ。浦和、上尾、狭山、富士見、川島、吉川、鷲宮等に存す。

弘津　ヒロツ　与野、朝霞、富士見、大井、行田等に存す。

廣塚　ヒロツカ　川越に存す。

広辻　ヒロツジ　幸手に存す。

広恒　ヒロツネ　熊谷に存す。

広津留　ヒロツル　戸田に存す。

広戸　ヒロト　葛飾郡広戸沼村（杉戸町）は正保年間田園簿に広戸新田と見ゆ。大宮、坂戸等に存す。出雲市三十六戸あり。小藤（ことう）参照。

広富　ヒロトミ　鳥取県気高郡青谷町二十三戸、鳥取市九戸あり。

廣富　ヒロトミ　入間、草加等に存す。

広内　ヒロナイ　上尾、鳩ケ谷、富士見等に存す。岩手県九戸郡野田村十七戸あり。

広中　ヒロナカ　各市町村に存す。島根県益田市十戸あり。

廣中　ヒロナカ　浦和、与野、和光、所沢、狭山、三芳、三郷等に存す。

広仲　ヒロナカ　志木、川越等に存す。

弘中　ヒロナカ　各市町村に存す。島根県益田市八戸あり。

広長　ヒロナガ　三芳、越谷等に存す。

広永　ヒロナガ　戸田、新座、入間、坂戸、日高、滑川等に存す。

廣永　ヒロナガ　幸手に存す。

広西　ヒロニシ　朝霞、東松山等に存す。

廣西　ヒロニシ　坂戸に存す。

広庭　ヒロニワ　狭山に存す。

廣庭　ヒロニワ　久喜に存す。

広根　ヒロネ　坂戸に存す。

広野　ヒロノ　平野の転訛にて、平ノ国の渡来人集落を平野・広野と称す。承和二年五月紀に「右京人丹波権大目昆解宮継、内竪同姓河継等に姓を広野宿祢と賜ふ。百済国人夫子の後也」と見ゆ。比企郡広野村（嵐山町）あり、南吉見村大野文書に「天正十二年三月二十五日、広野之内慶眼院・同万福寺、此二ヶ所之寺領没倒に付而、現栄院と宝泉院に寺領を宛う、上田上野介憲定印」と見ゆ。上野国神名帳の緑野郡従三位広野明神は武蔵国賀美郡肥土村に鎮座し、江戸初期に武蔵国に属す。各市町村に存す。○茨城県鹿島郡波崎町三十戸。○新潟県白根市二十五戸。○福島県伊達郡川俣町四十五戸、南会津郡田島町四十六戸。○山形県新庄市三十戸。○岩手県江刺市五十戸。○島根県大原郡加茂町二十三戸あり。

一　松山城士の広野氏　秩父郡御堂村日蓮宗浄蓮寺過去帳に「妙秋・ヒロノ・文禄元年七月。広野又十郎母・慶長六年七月」。鎌倉日蓮宗妙本寺過去帳に「日恩・武州ヒロノ」あり。

二　岩槻藩板倉氏家臣　天和二年岩槻藩分限帳に「五石余・広野磯右衛門」。

三　足立郡市ノ縄村（鴻巣市）　八幡社慶応三年水鉢に広野喜兵衛・広野柿蔵あり。二戸現存す。

四　児玉町　明治三十五年荒物煙草塩油商広野政吉。八幡社明治三十五年碑に広野太吉あり。一戸現存す。

廣野　ヒロノ　浦和、大宮、川口、坂戸、所沢、加須、羽生等に存す。

博野　ヒロノ　川口に存す。

日露野　ヒロノ　浦和、草加等に存す。

広延　ヒロノブ　日高に存す。

広場　ヒロバ　日高、富士見等に存す。

広羽　ヒロバ　浦和、大宮等に存す。

一　川越藩松平大和守家臣　天保十二年川越藩分限帳に「小組頭・二十石四人扶持・前橋取立・広羽三八」。

広橋　ヒロハシ　各市町村に存す。群馬県北群馬郡榛東村七戸、渋川市七戸。新潟県長岡市十八戸あり。

廣橋　ヒロハシ　大宮、鳩ケ谷等に存す。

広畑　ヒロハタ　浦和、大宮、蕨、新座、上福岡、川越、所沢、越谷に存す。

一　児玉町　八幡社享保十一年鳥居碑に広畑幸助あり。現存無し。

廣畑　ヒロハタ　川越に存す。

広畠　ヒロハタ　入間に存す。

廣畠　ヒロハタ　入間に存す。

広幡　ヒロハタ　平ノ国（伽耶）、今の慶尚南道金海地方より渡来した秦人にて、百済の勢力が強い時は百済族と称し、新羅が強い時は新羅族と称す。天平二十年紀に「正七位下広幡牛養に秦姓を賜ふ」。姓氏録・山城国に「広幡公。百済国津王の後てへり、見えず」と。戸田、川越、越谷、吉川等に存す。

一　忍城士の広幡氏　成田分限帳に「十八貫文・広幡右京」あり。

廣幡　ヒロハタ　川越に存す。

広鰭　ヒロハタ　所沢に存す。

弘畑　ヒロハタ　越谷に存す。

広浜　ヒロハマ　所沢に存す。

廣濱　ヒロハマ　所沢に存す。

広林　ヒロバヤシ　川口、大宮、志木、所沢等に存す。

一　川越藩松平大和守　万延二年川越藩分限帳に「御馬廻・五人扶持・広林良作」あり。

広原　ヒロハラ　各市町村に存す。茨城県那珂郡東海村二十戸、新治郡霞ヶ浦町二十二戸、石岡市十九戸あり。

廣原　ヒロハラ　浦和、川島等に存す。

広引　ヒロビキ　岩槻に存す。

広福　ヒロフク　入間郡小杉村字広福。

広藤　ヒロフヂ　狭山に存す。

廣藤　ヒロフヂ　所沢、深谷等に存す。

広船　ヒロフネ　富士見に存す。青森県西津軽郡鯵ヶ沢町十二戸あり。

広辺　ヒロベ　白岡、三郷等に存す。

廣辺　ヒロベ　白岡に存す。

廣部　ヒロベ　狭山に存す。千葉県木更津市五十戸、君津市二十二戸あり。

広間　ヒロマ　浦和、大宮、春日部、越谷等に存す。

一　鴻巣町　鴻神社明治十五年御神燈に広間惣吉あり。現存無し。

廣間　ヒロマ　大宮に存す。

廣前　ヒロマエ　所沢、深谷等に存す。

広政　ヒロマサ　越谷に存す。

広町　ヒロマチ　浦和、大宮、春日部、上里等に存す。群馬県新田郡藪塚本町十四戸、太田市十六戸あり。

廣町　ヒロマチ　浦和に存す。

広松　ヒロマツ　川口、大宮、朝霞、草加、三郷、庄和、本庄等に存す。

廣松　ヒロマツ　浦和、上尾、鶴ヶ島、草加、松伏等に存す。

弘松　ヒロマツ　川越、狭山、所沢、越谷等に存す。

広見　ヒロミ　入間郡古谷上村字広見、小中居村字広見、高麗郡清流村字広見あり。浦和に存す。

広美　ヒロミ　入間郡大満村字広美。

弘実　ヒロミ　大宮、熊谷等に存す。

広光　ヒロミツ　蕨、新座等に存す。

廣光　ヒロミツ　蕨に存す。

弘光　ヒロミツ　浦和、蕨、桶川、志木、越谷等に存す。

広村　ヒロムラ　川口、朝霞、和光、狭山等に存す。

広本　ヒロモト　浦和、大宮、上尾、北本、蓮田、所沢、坂戸、深谷に存す。

廣本　ヒロモト　浦和、飯能等に存す。

弘本　ヒロモト　浦和、所沢等に存す。

広守　ヒロモリ　三郷に存す。

広盛　ヒロモリ　浦和に存す。

広森　ヒロモリ　浦和、上尾、狭山、草加等に存す。

一　小川町　白木屋広森喜代三郎・享和元年没。明治十四年本街一丁目楮商広森藤吉あり。現存無し。杉田参照。

廣森　ヒロモリ　戸田に存す。

広谷　ヒロヤ　高麗郡上広谷村（鶴ヶ島市）、下広谷村（川越市）は一村にて広谷郷を唱える。川越日蓮宗行伝寺過去帳に「妙林・ヒロヤノ者・戌年十一月」あり、広谷郷住人なり。浦和、川口、桶川、新座、所沢、草加、岩槻、庄和等に存す。山形県東村山郡山辺町三十二戸あり。

一　村山党広屋氏　高麗郡広谷郷より起る。コウヤ条参照。

二　新座郡野火留宿村（新座市）　当村に此氏の旧家あり。五戸現存す。

廣谷　ヒロヤ　新座、児玉等に存す。

広保　ヒロヤス　鶴ヶ島に存す。

広山　ヒロヤマ　島根県大田市八戸。

一　比企郡石橋村（東松山市）　定宗寺宝暦四年供養塔に広山伝七郎。唐子神社忠魂碑に広山弥太吉あり。四戸現存す。

廣山　ヒロヤマ　大宮、熊谷、東松山、滑川等に存す。

弘山　ヒロヤマ　大宮、所沢等に存す。

広吉　ヒロヨシ　大宮に存す。

廣吉　ヒロヨシ　蕨、新座等に存す。

広芳　ヒロヨシ　鶴ヶ島に存す。

広渡　ヒロワタリ　浦和、大宮、上尾、川口、蓮田、久喜、入間等に存す。

廣渡　ヒロワタリ　川口、戸田等に存す。

日和　ヒワ　川口に存す。

琵琶　ビワ　風土記稿入間郡中神村（入間市）条に「三輪明神社は、往古は琵琶明神と唱へしが、万治年中に吉田家より命じて、今の如く改めし由。その所以はしらず」と見ゆ。

日脇　ヒワキ　大宮、毛呂山等に存す。岩手県九戸郡軽米町八戸あり。

樋脇　ヒワキ　入間、所沢等に存す。

枇杷木　ビワキ　川越に存す。

日和佐　ヒワサ　川口、蕨、川越、所沢、春日部、三郷、吉川、熊谷に存す。

琵琶坂　ビワサカ　志木に存す。

鶸田　ヒワタ　幸手、庄和、八潮に存す。

檜皮　ヒワダ　越谷、深谷等に存す。

日和田　ヒワダ　川口、新座、熊谷、深谷等に存す。

一　秩父郡別所村（秩父市）　紀州高野山清浄心院供養帳に「霊位妙善・逆修道久・逆修道円・武州秩父別所村ヒワ田小右衛門立之・寛永十二年八月二日」あり。現存無し。

一　秩父郡野上村（長瀞町）　昭和三年興信録に「野上村・日和田清七・所得税十五円・営業税五十八円」あり。現存無し。

桧和田　ヒワダ　鴻巣、入間等に存す。

檜和田　ヒワダ　鴻巣に存す。

檜皮田　ヒワダ　越生に存す。

枇杞田　ビワタ　所沢に存す。

枇杷田　ビワタ　大宮、岩槻等に存す。

日渡　ヒワタリ　浦和、川口、上尾、草加、八潮、川島等に存す。栃木県芳賀郡益子町十二戸、青森県三戸郡名川町十戸あり。ヒワタシとも称す。

飛渡　ヒワタリ　川口、朝霞、坂戸、所沢、越谷等に存す。山形県北村山郡大石田町十二戸あり。

樋渡　ヒワタリ　各市町村に存す。○山形県西村山郡河北町十二戸、東田川郡余目町四十戸、最上郡金山町三十三戸、新庄市五十戸。○秋田県平鹿郡十文字町三十戸、平鹿町十一戸、雄勝郡稲川町二十二戸、湯沢市四十二戸あり。ヒワタシとも称す。

比和野　ヒワノ　入間に存す。

備海　ビンカイ　茨城県西茨城郡岩瀬町二十七戸あり。

備後　ビンゴ　埼玉郡備後村（春日部市）あり。和光、越谷等に存す。秋田県河辺郡河辺町九戸あり。

ヒの部　苗字数千百二十八